JP2011047323A - ベーンポンプ - Google Patents

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山本  憲
Tsukasa Hojo
司 法上
Masaaki Nishikata
政昭 西方
Takeshi Kusakabe
毅 日下部
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Abstract

【課題】寸法精度や組み付け精度を過度に要求することなく、高いポンプ効率を達成することができ、しかも運転中の振動や騒音を防止することのできるベーンポンプを提供する。
【解決手段】本発明のベーンポンプでは、ロータ3の回転軸方向の両端面に、ガイド蓋15を一体に設ける。このガイド蓋15は、各ベーン溝9の回転軸方向の開口を塞ぐとともに、該ベーン溝9内に配置されるベーン4と摺接するものである。ガイド蓋15とポンプ室2内面との間には、各作動室5に連通する連通スペース12を形成し、該連通スペース12内に、作動流体の漏れを防止するためのシール部材1を配置する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ベーンポンプの漏れ損失を防止するための技術に関する。
小型に形成できるポンプとして、ベーンポンプが好適に用いられる。従来のベーンポンプは、図10に示すように、ポンプ室2を有するケース10と、ポンプ室2に偏心させて収納したロータ3と、ロータ3の径方向及び回転軸方向に開口するように該ロータ3に形成した複数のベーン溝9と、ポンプ室内周面2bにその先端が摺接するように各ベーン溝9内にて径方向にスライド自在に配置されたベーン4とを、備えている(例えば、特許文献1参照)。
このベーンポンプにおいては、ポンプ室2内面とロータ3とベーン4とで囲まれる複数の作動室5が、ロータ3の回転駆動によりその容積を大小変化させる。そして、容積拡大過程にある作動室5に対して吸入路6を通じて作動流体を流入させ、容積縮小過程にある作動室5から吐出路7を通じて作動流体を排出させる。
上記構成のベーンポンプにおいて、ポンプ効率を高めるためには、作動流体の漏れを防止する必要がある。ここでの作動流体の漏れとは、高圧側である作動室5内の作動流体が他の低圧側の作動室5内に流入するような漏れである。
漏れ防止の第一の手段としては、ベーン溝9内にある各ベーン4を、ロータ3の回転軸方向にガタツキが生じないように組み付けることが考えられる。これにより、ベーン4の径方向への円滑なスライドを確保し、ベーン4の先端全体をポンプ室内周面2bに対して確実に密着させることができる。さらに、ベーン4のガタツキ防止によって、運転中の振動や騒音も防止される。
また、漏れ防止の第二の手段として、ポンプ室2内面とロータ3との間に隙間が極力できないように、ロータ3やケース10等の各部材の平面度や平行度を厳しく設定し、この各部材を精密に組み付けることも考えられる。
しかし、上記第一、第二の手段のいずれにおいても、これを達成するためには、ロータ3と、これを組み込むケース10との間で、厳しい寸法精度が要求される。また、ロータ3とケース10の組み付け精度についても厳しいものが要求される。そのため、製造コストの増大を招く結果となる。
特開昭62−291488号公報
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、ロータとケースとの間で過度の寸法精度や組み付け精度を要求することなく、漏れ損失を防止して高いポンプ効率を達成することができ、しかも運転中の振動や騒音も防止することができるベーンポンプを提供することを、課題とする。
上記課題を解決するため、本発明のベーンポンプは、以下の構成を具備したものとする。
本発明のベーンポンプは、ケース10内に形成されるポンプ室2と、ポンプ室2に偏心させて収納したロータ3と、ロータ3の回転軸を中心として径方向に伸びるとともに径方向及び回転軸方向の外方に開口する複数のベーン溝9と、ポンプ室内周面2bにその先端が摺接するように各ベーン溝9内にて径方向にスライド自在に配置されるベーン4と、ポンプ室2内面とロータ3とベーン4とで囲まれてロータ3の回転駆動によりその容積を大小変化させる複数の作動室5と、容積拡大過程にある作動室5に対して作動流体を流入させる吸入路6と、容積縮小過程にある作動室5から作動流体を排出させる吐出路7とを備えている。さらに、ロータ3の回転軸方向の両端面には、各ベーン溝9の回転軸方向の開口を塞ぐとともに該ベーン溝9内に配置されるベーン4と摺接するガイド蓋15を一体に設ける。ガイド蓋15の回転軸方向をむく外底面15bとこれに対向するポンプ室内底面2aとの間には、各作動室5に連通する連通スペース12を形成し、該連通スペース12内に、作動流体の漏れを防止するためのシール部材1を配置する。
上記構成からなる本発明のベーンポンプによれば、ロータ3の回転軸方向の両側にガイド蓋15を一体に設けておくことで、両ガイド蓋15によって各ベーン4のガタツキを防止して円滑なスライドを確保し、各ベーン4の先端全体をポンプ室内周面2bに対して確実に密着させることができる。さらに、各ベーン4のガタツキ防止によって、運転中の振動や騒音も防止される。そして、この両側のガイド蓋15の外底面15bとポンプ室内底面2aとの間に連通スペース12を形成し、該連通スペース12にシール部材1を配置することによって、作動流体の漏れを効率的に防止することができる。つまり、本発明のベーンポンプによれば、ロータ3とケース10の間で過度の寸法精度や、過度の組み付け精度を要求することなく、高いポンプ効率を達成することができる。
また、本発明のベーンポンプにあっては、上記シール部材1として、ガイド蓋15の外底面15bとポンプ室内底面2aとの間で押圧される可撓性仕切部材20を配することも好適である。このように、可撓性仕切部材20が押圧変形した状態で連通スペース12を仕切るように設けることで、可撓性仕切部材20がある程度まで磨耗した段階に至っても、十分な仕切り性能を確保することができる。
上記可撓性仕切部材20は、その一端部をポンプ室内底面2aに固定し、他端部をガイド蓋15の外底面15bに摺接させるものであることが好適である。このように、可撓性仕切部材20をポンプ室内底面2a側に固定させることで、可撓性仕切部材20の固着箇所を高い自由度で設定することができる。
また、上記可撓性仕切部材20は、その一端部をガイド蓋15の外底面15bに固定し、他端部をポンプ室内底面2aに摺接させるものであることも好適である。このように可撓性仕切部材20をガイド蓋15側に固定させることで、特にガイド蓋15の外底面15b上で生じる漏れ損失を、さらに確実に防止することができる。
これらの場合、上記可撓性仕切部材20を、ロータ3の回転軸方向から視たときにその外周端部20aがガイド蓋15の外周面15aよりも内側に位置することがないように配することがこのましい。このようにすることで、作動流体の漏れ損失をさらに確実に防止することができる。
さらに、上記可撓性仕切部材20を、放射状に複数配することも好適である。このようにすることで、連通スペース12を多数の空間に仕切ることができ、連通スペース12での漏れ損失はさらに確実に防止されることになる。
また、上記可撓性仕切部材20を、ガイド蓋15の外底面15bとポンプ室内底面2aとの間での押圧により、ロータ3の周方向に屈曲させて配置することも好適である。このようにすることで、可撓性仕切部材20の屈曲した凸曲面側を摺接させることができ、摺動時の抵抗が極小化される。
本発明にあっては、ロータの回転軸方向の両側にガイド蓋を設けておくことで、各ベーンのガタツキを防止して該ベーンがポンプ室内周面に対して確実に密着するようにでき、また、運転中の振動や騒音も防止することができる。そして、この両側のガイド蓋の外底面とポンプ室内底面との間に連通スペースを形成し、該連通スペースにシール部材を配置するといった構成を採用することによって、作動流体の漏れを効率的に防止することができる。つまり、ロータとケースの間で寸法精度や組み付け精度を過度に要求することなく、高いポンプ効率を達成することができ、しかも運転中の振動や騒音も防止できるという効果を奏する。
また、シール部材として、ガイド蓋の外底面とポンプ室内底面との間で押圧される可撓性仕切部材を配した場合には、可撓性仕切部材がある程度まで磨耗しても仕切り性能を確保できるという効果を奏する。
また、可撓性仕切部材が、その一端部をポンプ室内底面に固定し、他端部をガイド蓋の外底面に摺接させるものである場合には、可撓性仕切部材の固着箇所を高い自由度で設定できるという効果を奏する。
また、可撓性仕切部材が、その一端部をガイド蓋の外底面に固定し、他端部をポンプ室内底面に摺接させるものである場合には、特にガイド蓋の外底面上で生じる漏れ損失をさらに確実に防止できるという効果を奏する。
また、可撓性仕切部材を、ロータの回転軸方向から視たときにその外周端部がガイド蓋の外周面よりも内側に位置することがないように配した場合には、作動流体の漏れ損失をさらに確実に防止できるという効果を奏する。
また、可撓性仕切部材を放射状に複数配した場合には、連通スペースを多数の空間に仕切ることにより、連通スペースでの漏れ損失をさらに確実に防止できるという効果を奏する。
また、可撓性仕切部材を、ガイド蓋の外底面とポンプ室内底面との間での押圧により、ロータの周方向に屈曲させて配置した場合には、可撓性仕切部材の屈曲した凸曲面側を摺接させ、摺動時の抵抗を極小化できるという効果を奏する。
本発明の実施形態における第1例のベーンポンプの概略的な側面断面図である。 同上のベーンポンプの概略的な平面断面図である。 同上のベーンポンプの要部斜視図である。 同上のベーンポンプの変形例を示す概略的な側面断面図である。 本発明の実施形態における第2例のベーンポンプの概略的な平面断面図である。 同上のベーンポンプの要部斜視図である。 同上のベーンポンプの変形例を示す要部斜視図である。 同上のベーンポンプの他の変形例を示す概略的な側面断面図である。 本発明の実施形態における第3例のベーンポンプの要部斜視図である。 従来のベーンポンプの説明図である。
本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1〜図4には、本発明の実施形態における第1例のベーンポンプを示している。図1はベーンポンプの概略的な側面断面図であり、図2はベーンポンプの概略的な平面断面図であり、図3はベーンポンプの要部斜視図である。図4には、駆動手段の変形例を示している。なお、本文中で用いる平面視とは、ロータ3の回転軸方向(以下、単に「軸方向」という。)から視た場合を意味する。
図1〜図3に示すように、第1例のベーンポンプは、上ケース10aと下ケース10bとから成るケース10内にポンプ室2を形成し、該ポンプ室2内にロータ3を偏心させて収納したものである。ロータ3には、該ロータ3の回転軸を中心として、径方向にむけて放射状に伸びるようにベーン溝9を複数条設けている。各ベーン溝9は、径方向外方にむけて開口し、且つ、軸方向の両外方にむけても開口するように形成してある。
ロータ3の各ベーン溝9内には、ベーン4を径方向にスライド自在に配置している。各ベーン4は、配置されるベーン溝9の径方向外方をむく開口を通じて、該ベーン溝9から径方向に突没自在であり、遠心力によって径方向外方に押し出された際に、その先端がポンプ室内周面2bに摺接するようになっている。さらに上記ケース10には、ポンプ室2に至るように吸入路6及び吐出路7を設けている。
これにより、ケース10内には、ポンプ室2の内面とロータ3の外周面3aとベーン4の外面とで囲まれる作動室5が、複数形成される。ロータ3を回転駆動させると作動室5の容積が大小し、容積拡大過程にある作動室5に対しては吸入路6を通じて作動流体が流入し、容積縮小過程にある作動室5からは吐出路7を通じて作動流体が排出される(図2中の矢印参照)。
ロータ3の軸方向の両端面には、全てのベーン溝9の軸方向開口を塞ぐように平板(円板)状のガイド蓋15を固定させ、ロータ3と軸方向両側のガイド蓋15を一体に設けている。各ベーン溝9内のベーン4は、ガイド蓋15の軸方向内側をむく内底面に対して摺接し、スライドをガイドされるように設けている。
そして、各ガイド蓋15の軸方向外側をむく平坦な外底面15bと、この外底面15bに対向する同じく平坦なポンプ室内底面2aとの間には、シール部材1を配置するための連通スペース12を形成している。両側の連通スペース12は各作動室5に連通する部分であるが、この部分を、弾性を有するシール部材1によって塞ぐのである。
以下においては、ベーンポンプの各構成について、さらに詳細に述べる。
ロータ3は、平面視円形状の外形を有しており、ケース10の外部に設置してあるモータにより回転駆動される駆動軸14によって、回転軸中心に回転駆動される構造となっている。なお、後述するように、ガイド蓋15に磁性体を設けることで駆動手段を構成してもよい。
上記ロータ3には、ベーン溝9を放射状に四条形成しており、各ベーン溝9の軸方向両側の開口を、一対のガイド蓋15により封止している。上記ロータ3は、両ガイド蓋15の軸方向外側をむく外底面15bがポンプ室内底面2aと対向し、且つ、両ガイド蓋15の径方向外側をむく外周面15aがポンプ室内周面2bと対向する姿勢にて、ポンプ室2内に回転自在に配置される。
ロータ3の各ベーン溝9には、ロータ3の径方向を長手方向とする棒状のベーン4を、ロータ3の径方向にスライド自在となるように収納配置している。ベーン4は、その径方向のスライドによってロータ3の外周面3aから突没自在となる。
ポンプ室2に収納したロータ3を回転駆動させると、各ベーン4はロータ3が回転することによる遠心力を受け、ロータ3の外周面3aから外方に突出する。外方に突出したベーン4は、その先端をポンプ室内周面2bに摺接させ、上記したように、ポンプ室内周面2bとロータ3の外周面3aとベーン4の外面とで囲まれた複数の作動室5を形成する。
ここで、ロータ3の回転軸はポンプ室2の偏心位置にあるので、ロータ3を回転駆動させることで、各作動室5はロータ3の回転方向に移動しながらその容積を大小に変化させる。各作動室5は、吸入路6と連通する位置にある時には、ロータ3の回転に伴い容積が増大する。また、吐出路7と連通する位置にある時には、ロータ3の回転に伴い容積が減少する。そのため、ロータ3を回転駆動すれば、作動流体が吸入路6から作動室5内に流入し、この作動室5内で圧縮された後に吐出路7から吐出される。
ポンプ室2内においては、軸方向両側に配置してある一対のガイド蓋15の軸方向外側に、それぞれ連通スペース12を設けている。連通スペース12は、軸方向に一定幅を有するスペースであって、各連通スペース12に、作動流体の漏れを防止するためのシール部材1を配置している。
シール部材1は、軸方向の一端部(つまり、ガイド蓋15の外底面15bと対向する端面)をガイド蓋15の外底面15bに固定し、軸方向の他端部(つまり、ポンプ室内底面2aと対向する端面)をポンプ室内底面2aに摺接させるものであるが、これに限定されず、軸方向の一端部(この場合、ポンプ室内底面2aと対向する端面)をポンプ室内底面2aに固定し、軸方向の他端部(この場合、ガイド蓋15の外底面15bと対向する端面)をガイド蓋15の外底面15bに摺接させるものであってもよい。
また、シール部材1は、連通スペース12の全部又は略全部を塞ぐように、軸挿通用の中央空所を除くリング状に形成してあるが、後述するように、作動室5間の作動流体の漏れを防止できるものであれば他の形状であっても構わない。
上記構成からなる第1例のベーンポンプにおいては、ロータ3の軸方向両側にガイド蓋15を一体に設けておくことで、両ガイド蓋15によって各ベーン4のガタツキを防止し、各ベーン4の先端全体をポンプ室内周面2bに対して確実に密着させることが可能となる。さらに、各ベーン4のガタツキ防止によって、運転中の振動や騒音も防止される。
そして、ガイド蓋15に対して更にシール部材1を固着又は摺接させることにより、該シール部材1によって連通スペース12を封止し、作動流体の漏れを効率的に防止することができる。
つまり、上記構成からなる第1例のベーンポンプにおいては、例えばガイド蓋15の平坦な外底面15bにシール部材1を固着させておき(図3参照)、ロータ3を組み入れる際に該シール部材1をポンプ室内底面2aに押し当てることで、作動流体の漏れを効率的に防止することができる。したがって、ロータ3やケース10等の各構成部品に対する寸法精度や組み付け精度を過度に要求することなく、高いポンプ効率を達成することができるのである。
図4には、ロータ3を回転駆動させる駆動手段の変形例を示している。図4の変形例では、図中上下一対のガイド蓋15のうち、下方のガイド蓋15の下側部分に、マグネットから成る磁性体11を一体に装着している。ロータ3中央部の軸受部8には、ポンプ室2を上下に貫く固定軸13を回転自在に挿通させている。この固定軸13の挿通により、ロータ3はポンプ室2内に回転自在に配置される。
ケース10の下部には、ポンプ室2内に配置されるガイド蓋15の磁性体11と隣接するように、ステータ(図示せず)を配置させている。この隣接する磁性体11とステータとが、ロータ3を回転駆動させる駆動手段を構成する。
また、図4の変形例においては、磁性体11を挿着してない側(つまり、図中上側)のガイド蓋15の軸方向外側にのみ、連通スペース12を形成している。言い換えれば、駆動手段を構成するための磁性体11を装着してある側(つまり、図中下側)のガイド蓋15には、シール部材1を固着又は摺接させない構造である。なお、この変形例において、下側のガイド蓋15の外底面15bに適宜のシール部材1を固着又は摺接させる構造としても構わない。
図5〜図8には、本発明の実施形態における第2例のベーンポンプを示している。図5はベーンポンプの概略的な平面断面図であり、図6はベーンポンプの要部斜視図である。図7にはシール部材1の配置を変更した例を示しており、図8には駆動手段の変形例を示している。以下においては、第1例で既述した構成と同様の構成については詳しい説明を省略し、第2例の特徴的な構成についてのみ詳述する。
図5や図6に示すように、第2例においては、連通スペース12に配置するシール部材1として、作動流体の漏れを防止するための棒状の可撓性仕切部材20を配置している。
可撓性仕切部材20は、軸方向の一端部をポンプ室内底面2aに固着させることで、連通スペース12に配置される。可撓性仕切部材20は、ガイド蓋15の外底面15bとポンプ室内底面2aとの間で、軸方向に押圧変形されるように設けている。可撓性仕切部材20は、弾性変形により撓みを生じた状態で、軸方向の他端部をガイド蓋15の外底面15bに摺接させる。可撓性仕切部材20は、軸方向の押圧によりその他端部側がガイド蓋15の回転方向に撓みやすくなるよう、その他端部側(つまり摺接側)の厚みを一端部側(つまり固着側)の厚みよりも薄く成形してある。
棒状の可撓性仕切部材20は、その長手方向がロータ3及びガイド蓋15の径方向と一致または略一致するように連通スペース12に配置する。このとき、可撓性仕切部材20の外周端部20aは、平面視において該外周端部20aがガイド蓋15の外周面15aよりも内側に位置することがないように配置する。言い換えれば、可撓性仕切部材20は、平面視においてその外周端部20aがガイド蓋15の外周面15a上に位置するか、または、ガイド蓋15の外周面15aよりも外方に位置するように配置する。
さらに、可撓性仕切部材20は、ガイド蓋15のリング状を成す外底面15bの半径方向の幅全体と摺接するように配置することが好ましい。第2例では、可撓性仕切部材20の長手方向の寸法を、ガイド蓋15の外底面15bの半径方向の幅と一致又は略一致させ、可撓性仕切部材20の外周端部20aが、平面視にてガイド蓋15の外周面15a上に位置するように設けている。
ポンプ室2に対する可撓性仕切部材20の固定箇所は、図5に示す箇所とすることが好ましい。具体的には、可撓性仕切部材20を吐出路7近傍に設け、吐出路7とポンプ室2の連通箇所から僅かに回転方向にずれた箇所にて、可撓性仕切部材20がガイド蓋15の外底面15bと摺接するように設けている。
上記構成からなる第2例のベーンポンプにおいては、可撓性仕切部材20をケース10に固着させておき、ロータ3を組み入れる際に該可撓性仕切部材20を軸方向に押圧変形させることで、連通スペース12を仕切り、作動流体の漏れを効率的に防止することができる。したがって、ロータ3やケース10等の部品に対して過度の寸法精度や組み付け精度を要求することなく、高いポンプ効率が達成できる。
さらに、第2例では可撓性仕切部材20を、その外周端部20aがガイド蓋15の外周面15aよりも内側に位置することがないように(つまり、ガイド蓋15の外周面15a上またはそれより外側に位置するように)配してあるので、連通スペース12での漏れの低減がさらに確実なものとなっている。可撓性仕切部材20の外周端部20aは、ポンプ室内周面2bに当接するまで突出させてあってもよい。
また、第2例では、可撓性仕切部材20を、軸方向の押圧変形によってロータ3及びガイド蓋15の周方向に(回転方向に)屈曲するように設けている。したがって、図6に示すように、円弧状に屈曲した可撓性仕切部材20の凸曲面側が、ガイド蓋15の外底面15bと摺接するようになっている。これにより摺動時の抵抗を極小化させることができる。
なお、可撓性仕切部材20を配置する数は、各連通スペース12に一つと限定される訳ではなく、各連通スペース12に複数配してあっても構わない。可撓性仕切部材20を複数配するにあたっては、図7に示すように、径方向へと放射状に伸びるように可撓性仕切部材20を分散配置することが好ましい。この場合、連通スペース12は放射状の可撓性仕切部材20によって多数の空間に仕切られるので、高圧側の作動室5から低圧側の作動室5への作動流体の漏れは、さらに確実に防止される。
図8には、ロータ3を回転駆動させる駆動手段の変形例を示している。図8に示す駆動手段は、第1例において図4に示した駆動手段と同様である。つまり、一方のガイド蓋15に磁性体11を配置し、該磁性体11と隣接するようにケース10側にステータ(図示せず)を配置することで、ロータ3とガイド蓋15を一体に回転駆動させる駆動手段を構成している。この変形例においては、磁性体11を配置しない側(図中上側)のガイド蓋15の軸方向外側にのみ連通スペース12を形成し、可撓性仕切部材20を配置している。なお、両側のガイド蓋15の軸方向外側に連通スペース12を形成し、可撓性仕切部材20等の適宜のシール部材1を配置する構造であってもよい。
次に、本発明の実施形態における第3例のベーンポンプについて、図9に基づいて述べる。なお、第3例の構成のうち第1例や第2例の構成と同様のものについては詳しい説明を省略し、第3例特有の構成についてのみ以下に詳述する。
第3例のベーンポンプにおいては、一対の可撓性仕切部材20を、ガイド蓋15の外底面15b側に固着させている。つまり、第3例では、可撓性仕切部材20の軸方向の一端部をガイド蓋15の外底面15b上に固着させ、可撓性仕切部材20の軸方向の他端部をポンプ室内底面2aに摺接させる構成となっている。
ここでの可撓性仕切部材20の押圧変形は、ポンプ室内底面2aに摺接する他端部が、ロータ3及びガイド蓋15の回転方向と逆方向に屈曲するように行われる。これにより、円弧状に屈曲した可撓性仕切部材20の凸曲面側をポンプ室内底面2aに摺接させ、摺動時の抵抗を極小化させる。
可撓性仕切部材20の配置は、平面視においてその外周端部20aがガイド蓋15の外周面15aよりも内側に位置することがないように行う。つまり、可撓性仕切部材20の外周端部20aは、平面視においてガイド蓋15の外周面15a上またはそれよりも外方に位置するように設ける。可撓性仕切部材20の外周端部20aをガイド蓋15の外周面15aよりも外方に突出させる場合、その外周端部20aがポンプ室内周面2bに摺接するように設けても構わない。
可撓性仕切部材20は、ガイド蓋15のリング状を成す外底面15bの半径方向の幅全体に固着させることが好ましい。第3例では、可撓性仕切部材20の長手方向の寸法をガイド蓋15の外底面15bの半径方向の幅と略一致させ、可撓性仕切部材20の外周端部20aを、平面視においてガイド蓋15の外周面15a上に位置させている。
可撓性仕切部材20は、3以上の複数を配置してあってもよい。可撓性仕切部材20を複数配置する場合には、周方向に等間隔を隔てて放射状に配置することが好ましい。
上記構成からなる第3例のベーンポンプにおいては、可撓性仕切部材20をガイド蓋15に固着させておき、ロータ3を組み入れる際に該可撓性仕切部材20を軸方向に押圧変形させることで、作動流体の漏れを効率的に防止することができる。したがって、ロータ3やケース10等の部品に対する過度の寸法精度や、過度の組み付け精度を要求することなく、高いポンプ効率が達成できる。
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記各例の実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、各例において適宜の設計変更を行うことや、各例の構成を適宜組み合わせて適用することが可能である。
1 シール部材
2 ポンプ室
2a ポンプ室内底面
3 ロータ
4 ベーン
5 作動室
6 吸入路
7 吐出路
9 ベーン溝
10 ケース
12 連通スペース
15 ガイド蓋
15b 外底面
20 可撓性仕切部材
20a 外周端部

Claims (7)

  1. ケース内に形成されるポンプ室と、ポンプ室に偏心させて収納したロータと、ロータの回転軸を中心として径方向に伸びるとともに径方向及び回転軸方向の外方に開口する複数のベーン溝と、ポンプ室内周面にその先端が摺接するように各ベーン溝内にて径方向にスライド自在に配置されるベーンと、ポンプ室内面とロータとベーンとで囲まれてロータの回転駆動によりその容積を大小変化させる複数の作動室と、容積拡大過程にある作動室に対して作動流体を流入させる吸入路と、容積縮小過程にある作動室から作動流体を排出させる吐出路とを備えたベーンポンプにおいて、ロータの回転軸方向の両端面には、各ベーン溝の回転軸方向の開口を塞ぐとともに該ベーン溝内に配置されるベーンと摺接するガイド蓋を一体に設け、ガイド蓋の回転軸方向をむく外底面とこれに対向するポンプ室内底面との間には、各作動室に連通する連通スペースを形成し、該連通スペース内に、作動流体の漏れを防止するためのシール部材を配置したことを特徴とするベーンポンプ。
  2. 上記シール部材として、ガイド蓋の外底面とポンプ室内底面との間で押圧される可撓性仕切部材を配したことを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
  3. 上記可撓性仕切部材は、その一端部をポンプ室内底面に固定し、他端部をガイド蓋の外底面に摺接させるものであることを特徴とする請求項2に記載のベーンポンプ。
  4. 上記可撓性仕切部材は、その一端部をガイド蓋の外底面に固定し、他端部をポンプ室内底面に摺接させるものであることを特徴とする請求項2に記載のベーンポンプ。
  5. 上記可撓性仕切部材を、ロータの回転軸方向から視たときにその外周端部がガイド蓋の外周面よりも内側に位置することがないように配したことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のベーンポンプ。
  6. 上記可撓性仕切部材を、放射状に複数配したことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のベーンポンプ。
  7. 上記可撓性仕切部材を、ガイド蓋の外底面とポンプ室内底面との間での押圧により、ロータの周方向に屈曲させて配置したことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載のベーンポンプ。
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