JP2011042811A - 軟磁性材料の製造方法、軟磁性材料、および圧粉磁心 - Google Patents
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Abstract
【課題】軟磁性金属粒子の外周に健全なシリコーン被膜が形成され、優れた磁気特性を備える圧粉磁心を製造することができる軟磁性材料の製造方法と、その製造方法により得られた軟磁性材料を提供する。
【解決手段】軟磁性金属粒子からなる材料粉末を用意する。また、縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーンとなる第1樹脂材料と、縮重合反応により硬化して直鎖型のシリコーンとなる第2樹脂材料を用意する。材料粉末と第1樹脂材料と第2樹脂材料とを適宜混合して熱処理することで、3次元型のシリコーンと直鎖型のシリコーンとで構成されるシリコーン被膜を備える軟磁性材料を作製できる。
【選択図】なし
【解決手段】軟磁性金属粒子からなる材料粉末を用意する。また、縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーンとなる第1樹脂材料と、縮重合反応により硬化して直鎖型のシリコーンとなる第2樹脂材料を用意する。材料粉末と第1樹脂材料と第2樹脂材料とを適宜混合して熱処理することで、3次元型のシリコーンと直鎖型のシリコーンとで構成されるシリコーン被膜を備える軟磁性材料を作製できる。
【選択図】なし
Description
本発明は、圧粉磁心の材料であり、軟磁性金属粒子の外周にシリコーン被膜を有する複合磁性粒子からなる軟磁性材料の製造方法、その製造方法により得られた軟磁性材料、およびその軟磁性材料を用いて作製された圧粉磁心に関するものである。
ハイブリッド自動車などは、モータへの電力供給系統に昇圧回路を備えている。この昇圧回路の一部品として、コアにコイルを巻回した構成のリアクトルが利用されている。このようなリアクトルを交流磁場で使用した場合、コアに鉄損と呼ばれるエネルギー損失が生じる。鉄損は、概ね、ヒステリシス損と渦電流損との和で表され、特に、高周波での使用において顕著になる。
リアクトルのコアにおける鉄損を低減するために、圧粉磁心でできたコアを用いることがある。圧粉磁心は、軟磁性金属粒子の表面に絶縁被膜を形成した複合磁性粒子からなる軟磁性材料を加圧して形成され、金属粒子同士が絶縁被膜により絶縁されているので、特に、渦電流損を低減する効果が高い。
しかし、圧粉磁心は、加圧成形を経て作製されるため、この加圧成形時の圧力により複合磁性粒子の絶縁被膜が損傷する虞がある。その結果、圧粉磁心における軟磁性金属粒子同士が接触して渦電流損の増大を招き、圧粉磁心の高周波特性が低下する虞がある。
また、加圧成形後に軟磁性金属粒子に導入された歪みや転移は、ヒステリシス損を増加させる要因となるため、この歪みや転移を除去するために加圧成形体を熱処理しなければならない。しかし、絶縁被膜を劣化させる虞があるため、高温での熱処理を行うことが難しい。熱処理温度が十分でないと、金属粒子に導入された歪みなどを十分に除去することができず、その結果、ヒステリシス損の増大を招き、圧粉磁心の高周波特性が低下する虞がある。
このような問題に対して、例えば、特許文献1に記載の技術は、軟磁性金属粒子の表面に多層の絶縁被膜を形成することで、加圧成形および熱処理による問題を解決している。この文献の技術では、内側にある絶縁被膜としてリン化合物やケイ素化合物などを、外側にある絶縁被膜としてシリコーンなどを利用できるとしている。
ここで、組成の異なる複数層の絶縁被膜を形成するのは生産性が悪く、層間で剥離が生じる虞もあるため、出来れば単一組成の絶縁被膜を備える複合磁性粒子からなる軟磁性材料が望まれている。その絶縁被膜として、可撓性と耐熱性に優れるシリコーン被膜が好適であると考えられる。一般に、シリコーン被膜を形成するには、被膜対象となる軟磁性金属粒子とシリコーンとを混合した後、乾燥処理にてシリコーンを加水分解・縮重合反応により硬化させる。
しかし、上記のようなシリコーン被膜の形成方法では、軟磁性金属粒子にシリコーン被膜が形成されていない箇所が生じ易く、この磁性粒子を使用した圧粉磁心において鉄損(特に、渦電流損)が十分に低減されない虞がある。例えば、生産性に優れる水アトマイズ法で作製された軟磁性金属粒子は、非常に凹凸の大きな形状であり、特に、金属粒子の凸部の先端にシリコーン被膜が形成され難い。これは、金属粒子とシリコーンとを混合する際、金属粒子の凸部が別の金属粒子に接触するからであると推察される。加えて、加水分解・縮重合の過程で、シリコーンが凝集したり、加水分解の生成物である有機物が離脱することでシリコーン被膜にピンホールができたりすることもシリコーン被膜が形成されていない箇所が生じる原因ではないかと推察される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、軟磁性金属粒子の外周に健全なシリコーン被膜が形成され、優れた磁気特性を備える圧粉磁心を製造することができる軟磁性材料の製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、本発明軟磁性材料の製造方法により得られた軟磁性材料、およびその軟磁性材料を用いて作製された圧粉磁心を提供することにある。
本発明は、軟磁性金属粒子の外周にシリコーン被膜を備える複合磁性粒子からなる軟磁性材料の製造方法であって、以下の工程を備えることを特徴とする。
(A)軟磁性金属粒子からなる材料粉末を用意する工程。
(B)加水分解・縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーンとなる第1樹脂材料、および、加水分解・縮重合反応により硬化して直鎖型のシリコーンとなる第2樹脂材料を用意する工程。
(C)前記材料粉末と第1樹脂材料とを混合する第1混合工程。
(D)前記第1混合工程で得られた混合物に熱処理を施して、第1樹脂材料の縮重合反応を進行させる第1熱処理工程。
(E)前記材料粉末と第2樹脂材料とを混合する第2混合工程。
(F)前記第2混合工程で得られた混合物に熱処理を施して、第2樹脂材料の縮重合反応を進行させる第2熱処理工程。
(A)軟磁性金属粒子からなる材料粉末を用意する工程。
(B)加水分解・縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーンとなる第1樹脂材料、および、加水分解・縮重合反応により硬化して直鎖型のシリコーンとなる第2樹脂材料を用意する工程。
(C)前記材料粉末と第1樹脂材料とを混合する第1混合工程。
(D)前記第1混合工程で得られた混合物に熱処理を施して、第1樹脂材料の縮重合反応を進行させる第1熱処理工程。
(E)前記材料粉末と第2樹脂材料とを混合する第2混合工程。
(F)前記第2混合工程で得られた混合物に熱処理を施して、第2樹脂材料の縮重合反応を進行させる第2熱処理工程。
一般に、3次元架橋型のシリコーンとなる第1樹脂材料は比較的均一な薄いシリコーン被膜を形成することに向いており、直鎖型のシリコーンとなる第2樹脂材料は変形性に優れ、割れ難いシリコーン被膜を形成することに向いている。そのため、本発明軟磁性材料の製造方法のように、シリコーン被膜を3次元型のシリコーンと直鎖型のシリコーンとで構成することにより、軟磁性金属粒子の表面を実質的に覆うと共に、損傷し難いシリコーン被膜を有する複合磁性粒子を製造することができる。このような複合磁性粒子からなる軟磁性材料で圧粉磁心を作製すれば、軟磁性金属粒子同士の絶縁を確保することができ、鉄損の少ない圧粉磁心となる。
以下、本発明軟磁性材料の製造方法を詳細に説明する。本発明の方法の説明にあたっては、用意する材料について最初に説明し、次いで、用意した材料からシリコーン被膜を形成する処理である混合工程と熱処理工程について述べる。
[軟磁性材料の製造方法]
<材料粉末>
用意する材料粉末は、軟磁性金属粒子を集合したものである。軟磁性金属粒子としては、鉄を50質量%以上含有するものが好ましく、例えば、純鉄(Fe)が挙げられる。その他、鉄合金、例えば、Fe−Si系合金、Fe−Al系合金、Fe−N系合金、Fe−Ni系合金、Fe−C系合金、Fe−B系合金、Fe−Co系合金、Fe−P系合金、Fe−Ni−Co系合金、及びFe−Al−Si系合金から選択される1種からなるものが利用できる。特に、透磁率及び磁束密度の点から、99質量%以上がFeである純鉄が好ましい。
<材料粉末>
用意する材料粉末は、軟磁性金属粒子を集合したものである。軟磁性金属粒子としては、鉄を50質量%以上含有するものが好ましく、例えば、純鉄(Fe)が挙げられる。その他、鉄合金、例えば、Fe−Si系合金、Fe−Al系合金、Fe−N系合金、Fe−Ni系合金、Fe−C系合金、Fe−B系合金、Fe−Co系合金、Fe−P系合金、Fe−Ni−Co系合金、及びFe−Al−Si系合金から選択される1種からなるものが利用できる。特に、透磁率及び磁束密度の点から、99質量%以上がFeである純鉄が好ましい。
軟磁性金属粒子の平均粒径は、1μm以上70μm以下とすると良い。軟磁性金属粒子の平均粒径を1μm以上とすることによって、軟磁性材料の流動性を落とすことがなく、軟磁性材料を用いて製作された圧粉磁心の保磁力およびヒステリシス損の増加を抑制できる。逆に、軟磁性金属粒子の平均粒径を70μm以下とすることによって、1kHz以上の高周波域において発生する渦電流損を効果的に低減できる。より好ましい軟磁性金属粒子の平均粒径は、40μm以上70μm以下である。この平均粒径の下限が40μm以上であれば、渦電流損の低減効果が得られると共に、軟磁性材料の取り扱いが容易になり、より高い密度の成形体とすることができる。なお、この平均粒径とは、粒径のヒストグラム中、粒径の小さい粒子からの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径をいう。
また、軟磁性金属粒子は、その円形度が1.0に近ければ、後工程におけるシリコーン被膜の形成が容易であるが、本発明軟磁性材料の製造方法によれば、金属粒子の円形度が0.8以下であっても健全な樹脂被膜を形成できる。円形度は、粒子の断面における面積と周囲長に基づいて粒子の形状の複雑さを測る指標であって、「4πS/L2(S:面積、L:周囲長)」で表される。測定対象が真円の場合、円形度は1.0となり、測定対象が真円から遠ざかる複雑形状になるほど円形度は低くなる。円形度を算出するには、粒子を撮影した画像を2値化処理し、粒子に相当する部分の面積と周囲長を測定することにより求めれば良い。
上記円形度が0.8以下である軟磁性金属粒子は、円形度が1.0に近いもの(真円に近いもの)に比べて、圧粉磁心にしたときに反磁界係数を大きくでき、高周波特性に優れた圧粉磁心とすることができる。また、円形度が0.8以下の軟磁性金属粒子は、圧粉磁心にしたときに圧粉磁心の強度を向上させる効果も有する。このような円形度の軟磁性金属粒子は、水アトマイズ法により得ることができる。水アトマイズ法は、軟磁性金属粒子を製造する一般的な手法であり、金属粒子の生産効率が良い。
<樹脂材料>
第1混合工程と第2混合工程で用意する第1樹脂材料と第2樹脂材料はそれぞれ、加水分解・縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーン(以下、3Dp)になるものと、直鎖型のシリコーン(以下、2Dp)になるものであれば特に限定されない。樹脂材料が3Dpとなるか2Dpとなるかは、主として樹脂材料を構成する化合物に備わる官能基(加水分解基)の数に依存する。化合物の加水分解基が多いと、化合物における各加水分解基の配置が立体的になるため、3Dpとなり易い。なお、第1樹脂材料(第2樹脂材料)は、3Dp(2Dp)となるものであれば単独種の化合物からなっていても良いし複数種の化合物からなっていても良い。
第1混合工程と第2混合工程で用意する第1樹脂材料と第2樹脂材料はそれぞれ、加水分解・縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーン(以下、3Dp)になるものと、直鎖型のシリコーン(以下、2Dp)になるものであれば特に限定されない。樹脂材料が3Dpとなるか2Dpとなるかは、主として樹脂材料を構成する化合物に備わる官能基(加水分解基)の数に依存する。化合物の加水分解基が多いと、化合物における各加水分解基の配置が立体的になるため、3Dpとなり易い。なお、第1樹脂材料(第2樹脂材料)は、3Dp(2Dp)となるものであれば単独種の化合物からなっていても良いし複数種の化合物からなっていても良い。
上記化合物として代表的には、Sim(OR)n(m、nは自然数)で表される化合物を挙げることができる。ORは、加水分解基であり、例えば、アルコキシ基やアセトキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基、ヒドロキシル基などを挙げることができる。アルコキシ基(−OR)としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシを挙げることができる。特に、加水分解後の反応生成物を除去する手間を考慮すると、加水分解基はメトキシが良い。
<シリコーン被膜の形成>
軟磁性金属粒子の表面にシリコーン被膜を形成するには、上述した材料粉末と樹脂材料とを混合し、加熱処理により樹脂材料をシリコーンにする必要がある。既に述べたように混合工程には第1混合工程と第2混合工程があり、熱処理工程には第1熱処理工程と第2熱処理工程がある。第1混合工程と第1熱処理工程は組で行われ、第2混合工程と第2熱処理工程は組で行われる。また、組となる混合工程と熱処理工程は同時に行っても良いし、時間をずらして行っても良い。これらの工程の具体的な実施手順を以下に示す。
軟磁性金属粒子の表面にシリコーン被膜を形成するには、上述した材料粉末と樹脂材料とを混合し、加熱処理により樹脂材料をシリコーンにする必要がある。既に述べたように混合工程には第1混合工程と第2混合工程があり、熱処理工程には第1熱処理工程と第2熱処理工程がある。第1混合工程と第1熱処理工程は組で行われ、第2混合工程と第2熱処理工程は組で行われる。また、組となる混合工程と熱処理工程は同時に行っても良いし、時間をずらして行っても良い。これらの工程の具体的な実施手順を以下に示す。
以下の手順中の「+」は同時に行うことを示し、「→」は時間的にズレていることを示す。
(1)第1混合工程+第2混合工程→第1熱処理工程(※1)
(2)第1混合工程+第2混合工程+第1熱処理工程(※1)
(3)第1混合工程+第2混合工程→第1熱処理工程→第2熱処理工程(※2)
(4)第1混合工程+第2混合工程+第1熱処理工程→第2熱処理工程(※2)
(5)第1混合工程→第1熱処理工程→第2混合工程→第2熱処理工程
(6)第1混合工程+第1熱処理工程→第2混合工程+第2熱処理工程
(7)第2混合工程→第2熱処理工程→第1混合工程→第1熱処理工程
(8)第2混合工程+第2熱処理工程→第1混合工程+第1熱処理工程
※1:第1熱処理工程が第2熱処理工程を兼ねる
※2:第1熱処理工程と第2熱処理工程とは順番を入れ替え可能
(1)第1混合工程+第2混合工程→第1熱処理工程(※1)
(2)第1混合工程+第2混合工程+第1熱処理工程(※1)
(3)第1混合工程+第2混合工程→第1熱処理工程→第2熱処理工程(※2)
(4)第1混合工程+第2混合工程+第1熱処理工程→第2熱処理工程(※2)
(5)第1混合工程→第1熱処理工程→第2混合工程→第2熱処理工程
(6)第1混合工程+第1熱処理工程→第2混合工程+第2熱処理工程
(7)第2混合工程→第2熱処理工程→第1混合工程→第1熱処理工程
(8)第2混合工程+第2熱処理工程→第1混合工程+第1熱処理工程
※1:第1熱処理工程が第2熱処理工程を兼ねる
※2:第1熱処理工程と第2熱処理工程とは順番を入れ替え可能
上記手順(1)、(2)は、材料粉末と第1樹脂材料と第2樹脂材料とを混合容器で混合し、熱処理により両樹脂材料を一体にポリマー化してシリコーン被膜を形成する手順である。この手順(1)、(2)によれば、3次元架橋型のシリコーンと直鎖型のシリコーンとが互いに縮重合して一体となった1層のシリコーン被膜(結合型混成被膜)を形成することができる。但し、第1樹脂材料と第2樹脂材料の官能基を互いに反応しない異種の官能基とすれば、3次元架橋型(直鎖型)のシリコーンは、他の3次元架橋型(直鎖型)のシリコーンとは結合するが、直鎖型(3次元架橋型)のシリコーンとは実質的に結合しないようにすることもできる。この場合、3Dpからなる1層のシリコーン被膜中に、この被膜を繊維補強するように配される2Dpが存在するシリコーン被膜(非結合型混成被膜)を形成することができる。
次に、手順(3)、(4)は、材料粉末と両樹脂材料とを混合容器で混合し、熱処理温度に差を設けた2種類の熱処理を時期をずらして行う手順である。この手順を行った場合、第1樹脂材料同士が主として縮重合すると共に、第2樹脂材料同士が主として縮重合する。この手順(3)、(4)によれば、3Dpからなるシリコーン被膜を2Dpが繊維補強したような1層のシリコーン被膜(非結合型混成被膜)を形成することができる。
ここで、時期をずらした2回の熱処理工程を行う場合、先に行う熱処理工程の温度は、一方の樹脂材料の縮重合を進行させるが、他方の樹脂材料の縮重合を進行させないように設定する、あるいは、進行の度合いを一方の樹脂材料よりも小さくなるように設定する。そして、後に行う熱処理工程の温度は、先に行う熱処理工程の温度よりも高い温度であって、一方の樹脂材料の縮重合をほぼ完全に進行させるように設定する。先に行う熱処理工程の温度が高いと、熱処理を2回行うにも関わらず、結局は上記(1)、(2)の欄で説明した結合型混成被膜となってしまう。
また、熱処理にあたっては、2Dpが先に形成され、後から3Dpが形成されるようにすることが好ましい。網の目状の構造を持つ3Dpが、2Dpとなる第2樹脂材料同士の縮重合を阻害するので、単位長の長い2Dpが形成され難いからである。
次に、手順(5)、(6)は、材料粉末と第1樹脂材料とを混合・熱処理して軟磁性金属粒子の表面にシリコーン被膜を形成した粒子(3Dp被膜付き前駆粒子)からなる粉末を得、その後、さらにこの粉末と第2樹脂材料とを混合・熱処理して3Dp被膜付き前駆粒子の表面にシリコーン被膜を形成する手順である。この手順(5)、(6)によれば、シリコーン被膜は、内周側に配される3Dpからなる被膜(3Dp被膜)と、外周側に配される2Dpからなる被膜(2Dp被膜)の2層構造となる。
上記のような2層構造のシリコーン被膜は、比較的厚さの均一な内側の3Dp被膜と、その外周側で内側の被膜を補うように配される2Dp被膜とを備えるため絶縁性に優れる。また、この2重のシリコーン被膜を備える複合磁性粒子に圧力をかけて変形させた際、変形性に優れる外周側の2Dp被膜が変形による応力を緩和するので、当該2重のシリコーン被膜に割れなどの損傷が生じ難い。
また、手順(5)、(6)により得られたシリコーン被膜は、2層構造であっても両層間の密着性は高い。これは、3Dp被膜も2Dp被膜もシリコーン被膜であるからである。両層の密着性をさらに高めたいのであれば、第1熱処理工程の温度を、第1樹脂材料の縮重合が完全に進行しきらない温度に設定すれば良い。このような温度設定にすれば、2Dp被膜の形成時に、3Dp被膜の未反応基と2Dpの反応基とが縮重合し、両被膜間が強固に接合される。
最後に、手順(7)、(8)は、材料粉末と第2樹脂材料とを混合・熱処理して軟磁性金属粒子の表面にシリコーン被膜を形成した粒子(2Dp被膜付き前駆粒子)からなる粉末を得、その後、さらにこの粉末と第1樹脂材料とを混合・熱処理して2Dp被膜付き前駆粒子の表面にシリコーン被膜を形成する手順である。この手順(7)、(8)によれば、シリコーン被膜は、内周側に配される2Dp被膜と、外周側に配される3Dp被膜の2層構造となる。
上記のような2層構造のシリコーン被膜は、内側の2Dp被膜と、その外周側で内側の被膜を補うように配される3Dp被膜とを備えるため絶縁性に優れる。また、この2重のシリコーン被膜を備える複合磁性粒子に圧力をかけて変形させた際、変形性に優れる内周側の2Dp被膜が複合磁性粒子の芯となる軟磁性金属粒子の変形に追従して変形するので、当該2重のシリコーン被膜に割れなどの損傷が生じ難い。
以上説明した手順(1)〜(8)を基本として、第1混合工程と第1熱処理工程の組み合わせ、および、第2混合工程と第2熱処理工程の組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせを複数回行っても良い。その場合、1層の被膜中で3次元架橋型と直鎖型のシリコーンとが縮重合した結合型混成被膜や、1層の被膜中で両型のシリコーン同士が実質的に結合しない非結合型混成被膜を複数形成しても良いし、3Dp被膜と2Dp被膜の少なくとも一方を複数形成しても良いし、結合型混成被膜、非結合型混成被膜、3Dp被膜および2Dp被膜を組み合わせて形成しても良い。以下に、被膜の組み合わせを例示する。
・結合型混成被膜(非結合型混成被膜)―結合型混成被膜(非結合型混成被膜)
・結合型混成被膜(非結合型混成被膜)―3Dp被膜
・結合型混成被膜(非結合型混成被膜)―2Dp被膜
・3Dp被膜―3Dp被膜―2Dp被膜
・3Dp被膜―2Dp被膜―3Dp被膜
もちろん、上記の被膜の組み合わせは例示に過ぎず、これらの組み合わせに限定されるわけではない。
・結合型混成被膜(非結合型混成被膜)―3Dp被膜
・結合型混成被膜(非結合型混成被膜)―2Dp被膜
・3Dp被膜―3Dp被膜―2Dp被膜
・3Dp被膜―2Dp被膜―3Dp被膜
もちろん、上記の被膜の組み合わせは例示に過ぎず、これらの組み合わせに限定されるわけではない。
<その他>
本発明軟磁性材料の製造方法において、以下に示すように樹脂材料の使用量を規定しても良い。
本発明軟磁性材料の製造方法において、以下に示すように樹脂材料の使用量を規定しても良い。
まず、本発明の製造方法において軟磁性材料を完成させるまでに使用する第1樹脂材料と第2樹脂材料の合計量は、作製する圧粉磁心に要求される特性を満たす厚さのシリコーン被膜が形成できるように適宜選択することが好ましい。つまり、不必要にシリコーン被膜が厚くならないように用意する樹脂材料の量を調節する。上記合計量は、軟磁性金属粒子の表面を実質的に覆うことができるように、金属粒子(材料粉末)の特徴量(代表的には比表面積(cm2/cm3)や粒径など)から決定すると良い。但し、用途が概ね限定されている軟磁性材料において、使用する金属粒子の粒径も比表面積もある程度決まった範囲に収まるので、材料粉末の質量を材料粉末の特徴量としてもかまわない。例えば、樹脂材料の量を、材料粉末に対する質量比で決定すると良い。具体的には、用意する樹脂材料の量は、材料粉末の質量の0.1〜2.5質量%とすると良い。樹脂材料の量がこの範囲であれば、軟磁性金属粒子の表面全体を実質的にシリコーン被膜で覆うことができるので、軟磁性金属粒子間の絶縁性を高めることができる。
その他、混合工程において、樹脂材料の加水分解・縮重合反応を促進する触媒を添加しても良い。触媒により縮重合の速度を調節することで、均一なシリコーン被膜を形成することができる。触媒としては、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸などの有機酸や、塩酸、リン酸、硝酸、ほう酸、硫酸などの無機酸などを用いることができる。触媒の添加量は、多すぎると樹脂材料のゲル化を招くので、適切な量を選択すると良い。
[軟磁性材料]
以上のような本発明軟磁性材料の製造方法で作製された本発明軟磁性材料は、軟磁性金属粒子の表面全体を実質的に覆うようにシリコーン被膜が形成された複合磁性粒子からなるので、この軟磁性材料を加圧して成形しても、軟磁性金属粒子同士が直接接触することが殆どない。
以上のような本発明軟磁性材料の製造方法で作製された本発明軟磁性材料は、軟磁性金属粒子の表面全体を実質的に覆うようにシリコーン被膜が形成された複合磁性粒子からなるので、この軟磁性材料を加圧して成形しても、軟磁性金属粒子同士が直接接触することが殆どない。
[圧粉磁心]
また、本発明圧粉磁心は、本発明軟磁性材料の製造方法により得られた軟磁性材料を加圧して成形する工程と、この工程の後に行われる熱処理工程とを経ることにより得ることができる。
また、本発明圧粉磁心は、本発明軟磁性材料の製造方法により得られた軟磁性材料を加圧して成形する工程と、この工程の後に行われる熱処理工程とを経ることにより得ることができる。
加圧成形工程は、代表的には、所定の形状の成形金型内に本発明軟磁性材料を投入し、圧力をかけて押し固め、粉末成形体を作製するために行う。このときの圧力は、適宜選択することができるが、例えば、リアクトルのコアとなる圧粉磁心を製造するのであれば、約900〜1300MPa(好ましくは、960〜1280MPa)程度とすることが好ましい。
熱処理工程は、加圧成形工程で軟磁性金属粒子に導入された歪みや転移などを除去すると共に、シリコーン被膜をシリカ化して圧粉磁心の形状を固定するために行う。つまり、シリコーン被膜は、圧粉磁心を製造する際のバインダーとして機能する。
上記熱処理温度は、400℃以上、特に550℃以上、さらに650℃以上が好ましい。金属粒子の歪みなどを除去する観点から、熱処理の上限は約800℃程度とする。このような熱処理温度であれば、歪みの除去と共に、加圧時に金属粒子に導入される転移などの格子欠陥も除去できるし、シリコーン被膜中の有機物を効果的に除去することができる。
加圧成形後に熱処理することで完成した本発明圧粉磁心は、磁気特性に優れた圧粉磁心、特に、高周波での使用においてエネルギー損失の少ない圧粉磁心となる。これは、加圧成形を行ったときに損傷し難いシリコーン被膜が、軟磁性金属粒子同士の絶縁を確保した状態でシリカ化するためである。
本発明軟磁性材料の製造方法によれば、軟磁性金属粒子と、この金属粒子の表面全体を実質的に覆うシリコーン被膜とを備える複合磁性粒子からなる軟磁性材料を製造することができる。製造された軟磁性材料は、シリコーン被膜により、加圧成形のときにも、加圧成形後の熱処理のときにも、各金属粒子間の絶縁を確保することができる。その結果、高周波での使用においてエネルギー損失が少ない圧粉磁心となるので、例えば、この圧粉磁心をリアクトルのコアとして利用した場合、優れた磁気特性を有するコアとなる。この圧粉磁心は直流重畳特性に優れるため、ギャップレスのコアとすることも可能である。
本発明軟磁性材料の製造方法を含む種々の製造方法により作製した軟磁性材料を使用して圧粉磁心(試料1〜5)を作製し、その物理特性を測定した。そして、これら試料1〜5の物理特性を比較した。試料1〜5の具体的な作製手順は次の通りである。
<試料1の作製>
(a)軟磁性金属粒子を集合した材料粉末を用意する。
(b)水分子の存在下で加水分解・縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーン(3Dp)となる第1樹脂材料、および直鎖型のシリコーン(2Dp)となる第2樹脂材料を用意する。
(c)粉末材料、第1樹脂材料、および第2樹脂材料を大気雰囲気下で混合する。
(d)工程(c)で得られた粉末を大気雰囲気下で加熱し、軟磁性金属粒子の表面にシリコーン被膜を形成する。
(e)軟磁性材料を加圧して成形する。
(f)加圧成形時に軟磁性金属粒子に導入される歪みを取り除く。
(a)軟磁性金属粒子を集合した材料粉末を用意する。
(b)水分子の存在下で加水分解・縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーン(3Dp)となる第1樹脂材料、および直鎖型のシリコーン(2Dp)となる第2樹脂材料を用意する。
(c)粉末材料、第1樹脂材料、および第2樹脂材料を大気雰囲気下で混合する。
(d)工程(c)で得られた粉末を大気雰囲気下で加熱し、軟磁性金属粒子の表面にシリコーン被膜を形成する。
(e)軟磁性材料を加圧して成形する。
(f)加圧成形時に軟磁性金属粒子に導入される歪みを取り除く。
≪工程a≫
軟磁性金属粒子として、水アトマイズ法により作製された、純度が99.8%以上である異形状の鉄粉を用意した。鉄粉の平均粒径は57μmであった。平均粒径は50%粒径により求めた。
軟磁性金属粒子として、水アトマイズ法により作製された、純度が99.8%以上である異形状の鉄粉を用意した。鉄粉の平均粒径は57μmであった。平均粒径は50%粒径により求めた。
≪工程b≫
加水分解・縮重合反応により硬化するシリコーンとして、分子末端がアルコキシシリル基(≡Si−R)で封鎖されたアルコキシレジンタイプのシリコーンであって、加水分解基(−R)がメトキシである樹脂を用意した。これら第1樹脂材料と第2樹脂材料との相違点は、縮重合した際、3次元架橋型となるか、それとも直鎖型となるかの違いである。このような相違点は、主として樹脂材料に備わる官能基(加水分解基)の数に依存する。
加水分解・縮重合反応により硬化するシリコーンとして、分子末端がアルコキシシリル基(≡Si−R)で封鎖されたアルコキシレジンタイプのシリコーンであって、加水分解基(−R)がメトキシである樹脂を用意した。これら第1樹脂材料と第2樹脂材料との相違点は、縮重合した際、3次元架橋型となるか、それとも直鎖型となるかの違いである。このような相違点は、主として樹脂材料に備わる官能基(加水分解基)の数に依存する。
第1樹脂材料と第2樹脂材料の合計量は、材料粉末の全量の質量を100としたとき、0.7質量%とした。また、第1樹脂材料と第2樹脂材料の質量比は、およそ1:1とした。
≪工程c≫
工程aで用意した材料粉末を混合容器であるミキサーに投入すると共に、工程bで用意した樹脂材料を一度に投入し、60℃で15分間、混合した。樹脂材料が縮重合反応を起こす温度以下の低温で混合することで、樹脂材料を凝集させることなく、各軟磁性金属粒子の表面に樹脂材料がまぶされた状態とすることができる。
工程aで用意した材料粉末を混合容器であるミキサーに投入すると共に、工程bで用意した樹脂材料を一度に投入し、60℃で15分間、混合した。樹脂材料が縮重合反応を起こす温度以下の低温で混合することで、樹脂材料を凝集させることなく、各軟磁性金属粒子の表面に樹脂材料がまぶされた状態とすることができる。
≪工程d≫
工程cを経ることで軟磁性金属粒子の表面にまぶされた状態にある樹脂材料を加熱によりシリコーンに変化させる。加熱条件は、200℃×1時間とした。この加熱条件であれば、投入した樹脂材料はほぼ完全に加水分解・縮重合してシリコーン被膜となる。
工程cを経ることで軟磁性金属粒子の表面にまぶされた状態にある樹脂材料を加熱によりシリコーンに変化させる。加熱条件は、200℃×1時間とした。この加熱条件であれば、投入した樹脂材料はほぼ完全に加水分解・縮重合してシリコーン被膜となる。
以上の工程を経て得られた軟磁性材料におけるシリコーン被膜は、比較的均一な厚さを有し、適度な変形追従性を持っており、3次元架橋型と直鎖型の中間の性質を示すシリコーン被膜(混成被膜)である。これは、シリコーン被膜が、第1樹脂材料と第2樹脂材料とが互いに縮重合により結合することでできた結合型混成被膜だからである。
≪工程e≫
工程dで得られた軟磁性材料を所定の形状の金型内に注入し、1cm2あたり13tonの面圧(約1275MPa)をかけて加圧成形することで、リング状の試験片と棒状の試験片を得た。試験片のサイズは以下の通りである。
リング状の試験片…鉄損の評価用
外形34mm、内径20mm、厚み5mm
工程dで得られた軟磁性材料を所定の形状の金型内に注入し、1cm2あたり13tonの面圧(約1275MPa)をかけて加圧成形することで、リング状の試験片と棒状の試験片を得た。試験片のサイズは以下の通りである。
リング状の試験片…鉄損の評価用
外形34mm、内径20mm、厚み5mm
≪工程f≫
工程eで得られた各試験片を窒素雰囲気下で500℃×1時間、熱処理した。熱処理を終えた試験片が、いわゆる圧粉磁心である。
工程eで得られた各試験片を窒素雰囲気下で500℃×1時間、熱処理した。熱処理を終えた試験片が、いわゆる圧粉磁心である。
<試料2の作製>
試料2の製造方法は、次の点が試料1と異なる。
工程bで第1樹脂材料のみを用意し、工程cにおいて第1樹脂材料のみを投入した。投入量は、材料粉末の質量を100としたとき、0.7質量%とした。このようにして作製された軟磁性材料のシリコーン被膜は、3次元架橋型のシリコーン被膜(3Dp被膜)である。
試料2の製造方法は、次の点が試料1と異なる。
工程bで第1樹脂材料のみを用意し、工程cにおいて第1樹脂材料のみを投入した。投入量は、材料粉末の質量を100としたとき、0.7質量%とした。このようにして作製された軟磁性材料のシリコーン被膜は、3次元架橋型のシリコーン被膜(3Dp被膜)である。
<試料3の作製>
試料3の製造方法は、次の点が試料1と異なる。
工程bで第2樹脂材料のみを用意し、工程cにおいて第2樹脂材料のみを投入した。投入量は、材料粉末の質量を100としたとき、0.7質量%とした。このようにして作製された軟磁性材料のシリコーン被膜は、直鎖型のシリコーン被膜(2Dp被膜)である。
試料3の製造方法は、次の点が試料1と異なる。
工程bで第2樹脂材料のみを用意し、工程cにおいて第2樹脂材料のみを投入した。投入量は、材料粉末の質量を100としたとき、0.7質量%とした。このようにして作製された軟磁性材料のシリコーン被膜は、直鎖型のシリコーン被膜(2Dp被膜)である。
<試料4の作製>
試料4の製造方法は、次の点が試料1と異なる。
工程cと工程dを2回繰り返し、3次元架橋型と直鎖型の中間的な構造を有するシリコーン被膜を2層形成した。より具体的に説明すると、まず、1回目の工程cにおいて、工程bで用意した第1樹脂材料と第2樹脂材料をそれぞれ半分ずつ混合容器に投入し、1回目の工程dにより1層目のシリコーン被膜を完成させた。そして、2回目の工程cにおいて、残しておいた第1樹脂材料と第2樹脂材料を混合容器に投入し、2回目の工程dにより2層目のシリコーンを完成させた。
試料4の製造方法は、次の点が試料1と異なる。
工程cと工程dを2回繰り返し、3次元架橋型と直鎖型の中間的な構造を有するシリコーン被膜を2層形成した。より具体的に説明すると、まず、1回目の工程cにおいて、工程bで用意した第1樹脂材料と第2樹脂材料をそれぞれ半分ずつ混合容器に投入し、1回目の工程dにより1層目のシリコーン被膜を完成させた。そして、2回目の工程cにおいて、残しておいた第1樹脂材料と第2樹脂材料を混合容器に投入し、2回目の工程dにより2層目のシリコーンを完成させた。
<試料5の作製>
試料5の作製方法は、次の点が試料4と異なる。
1回目と2回目の工程cにおいて、2Dpとなる第2樹脂材料のみを混合容器に投入した。つまり、試料5の軟磁性材料は、3次元架橋型の構造を持つ2層のシリコーン被膜を有する複合磁性粒子からなる。
試料5の作製方法は、次の点が試料4と異なる。
1回目と2回目の工程cにおいて、2Dpとなる第2樹脂材料のみを混合容器に投入した。つまり、試料5の軟磁性材料は、3次元架橋型の構造を持つ2層のシリコーン被膜を有する複合磁性粒子からなる。
以上説明した試料1〜5の製造条件を表1にまとめる。
<評価>
作製した各試料について、以下に列挙する特性値を測定した。各試料の構成と特性値の測定・算出結果を後段の表2にまとめて記載する。
作製した各試料について、以下に列挙する特性値を測定した。各試料の構成と特性値の測定・算出結果を後段の表2にまとめて記載する。
≪磁気特性≫
試験片に巻線を施し、試験片の磁気特性を測定するための測定部材を作製した。この測定部材について、AC−BHカーブトレーサを用いて、励起磁束密度Bm:2kG(=0.2T)、測定周波数f:10kHzにおける鉄損W2/10k(W/kg)を測定した。
試験片に巻線を施し、試験片の磁気特性を測定するための測定部材を作製した。この測定部材について、AC−BHカーブトレーサを用いて、励起磁束密度Bm:2kG(=0.2T)、測定周波数f:10kHzにおける鉄損W2/10k(W/kg)を測定した。
≪比抵抗≫
試験片を用いて四端子法により電気抵抗(Ω)を測定し、その結果に基づいて比抵抗(μΩ・m)を求めた。
試験片を用いて四端子法により電気抵抗(Ω)を測定し、その結果に基づいて比抵抗(μΩ・m)を求めた。
≪評価結果≫
表2から明らかなように、試料1の比抵抗は、試料2および3の比抵抗よりも高かった。そのため、試料1を、例えば、リアクトル用のコアに利用すれば優れた磁気特性を発揮することが期待できる。
表2から明らかなように、試料1の比抵抗は、試料2および3の比抵抗よりも高かった。そのため、試料1を、例えば、リアクトル用のコアに利用すれば優れた磁気特性を発揮することが期待できる。
また、試料1と試料4とを比較すると、同じ混成被膜を備えるものであっても複数層の混成被膜を備える試料4の方が優れた特性値を有することが分かった。これは、複数層の被膜とすると、1層目の被膜で覆いきれなかった軟磁性金属粒子の部分を2層目の被覆が補うように覆っているからではないかと推察される。
さらに、試料4と試料5とを比較すると、同じように2層の被膜を持つ場合であれば、混成被膜を備える試料4の方が優れた特性値を有していた。
なお、本発明の実施形態は、上述したものに限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
本発明の軟磁性材料の製造方法により製造された軟磁性材料は、高周波特性に優れた圧粉磁心の作製に好適に利用可能である。
Claims (11)
- 軟磁性金属粒子の外周にシリコーン被膜を備える複合磁性粒子からなる軟磁性材料の製造方法であって、
軟磁性金属粒子からなる材料粉末を用意する工程と、
加水分解・縮重合反応により硬化して3次元架橋型のシリコーンとなる第1樹脂材料、および、加水分解・縮重合反応により硬化して直鎖型のシリコーンとなる第2樹脂材料を用意する工程と、
前記材料粉末と第1樹脂材料とを混合する第1混合工程と、
前記第1混合工程で得られた混合物に熱処理を施して、第1樹脂材料の縮重合反応を進行させる第1熱処理工程と、
前記材料粉末と第2樹脂材料とを混合する第2混合工程と、
前記第2混合工程で得られた混合物に熱処理を施して、第2樹脂材料の縮重合反応を進行させる第2熱処理工程と、
を備えることを特徴とする軟磁性材料の製造方法。 - 前記第1混合工程と第2混合工程とを同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の軟磁性材料の製造方法。
- 前記第1熱処理工程の熱処理温度と第2熱処理工程の熱処理温度に差を設け、混ざり合った第1樹脂材料と第2樹脂材料中で、第1樹脂材料同士を縮重合させると共に、第2樹脂材料同士を縮重合させることを特徴とする請求項2に記載の軟磁性材料の製造方法。
- 前記第1混合工程と第1熱処理工程を行った後、第2混合工程と第2熱処理工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の軟磁性材料の製造方法。
- 前記第2混合工程と第2熱処理工程を行った後、第1混合工程と第1熱処理工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の軟磁性材料の製造方法。
- 前記第1混合工程と第1熱処理工程を別個に行うと共に、前記第2混合工程と第2熱処理工程を別個に行うことを特徴とする請求項2,4,5のいずれか一項に記載の軟磁性材料の製造方法。
- 前記第1混合工程と第1熱処理工程を同時に行うと共に、前記第2混合工程と第2熱処理工程を同時に行なうことを特徴とする請求項2,4,5のいずれか一項に記載の軟磁性材料の製造方法。
- 第1混合工程と第1熱処理工程の組み合わせ、および、第2混合工程と第2熱処理工程の組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせを複数回行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の軟磁性材料の製造方法。
- 軟磁性材料の製造の際に使用される樹脂材料の合計量は、前記材料粉末の特徴量に応じた量であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の軟磁性材料の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の軟磁性材料の製造方法により得られたことを特徴とする軟磁性材料。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の軟磁性材料の製造方法により得られた軟磁性材料を加圧成形することで得られたことを特徴とする圧粉磁心。
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