JP2011033744A - 光ケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】通線ロッドを用いることなくスペースの狭い既設の電話等の管路内に容易に挿通させることができ、しかも、耐衝撃性、収納性を損なうことなく、ケーブル部および端末部での伝送損失増のない光ケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線2の両側にテンションメンバ3を配し、断面が矩形状の外被4で被覆した光ケーブルであって、外被4は、高密度ポリエチレンに分子量が300以上のシリコン系滑剤を添加した樹脂からなることを特徴とする。なお、シリコン系滑剤の添加量は0.3〜1.0重量%が好ましい。また、光ファイバ心線2の外周に、滑剤を含まない外被4と同種の樹脂からなるオーバーコート層を備えた構成としてもよい。
【選択図】図1
【解決手段】光ファイバ心線2の両側にテンションメンバ3を配し、断面が矩形状の外被4で被覆した光ケーブルであって、外被4は、高密度ポリエチレンに分子量が300以上のシリコン系滑剤を添加した樹脂からなることを特徴とする。なお、シリコン系滑剤の添加量は0.3〜1.0重量%が好ましい。また、光ファイバ心線2の外周に、滑剤を含まない外被4と同種の樹脂からなるオーバーコート層を備えた構成としてもよい。
【選択図】図1
Description
本発明は、既設の管路に挿通させて布設するのに適したインドア光ケーブルで、光ファイバ心線の両側にテンションメンバを配し、断面が矩形状の外被で被覆した光ケーブルに関する。
近年のFTTH(Fiber To The Home)の本格的な導入に伴い、既設のマンションのような集合住宅においても、各戸まで光ケーブルの配線を望む要求が高くなっている。既設のマンション等では、光ファイバ布設用の管路を配設しているところは少なく、既設の電話線が入っている管路を利用して光ケーブルを布設する方法が考えられている。建物内に布設される光ケーブルは、通常、インドア光ケーブルとも言われ、光ファイバ心線や光ファイバテープ心線の両側に鋼線等のテンションメンバ(抗張力体ともいう)を配し、外被(シースともいう)で一括被覆して構成されている。
管路内に通線して布設する光ケーブルとして、例えば、特許文献1に開示のように、光ケーブルの外被に脂肪酸系の滑剤を含ませることにより、その外被表面の動摩擦係数を0.15〜0.40にすることが開示されている。また、特許文献2には、脂肪酸系滑剤を0.18〜0.32重量%を含ませて、動摩擦係数を0.09〜0.12にすることが開示され、これにより、管路などへの挿通が容易で、布設の作業効率の向上が図るとされている。
電話配線用の管路を利用して光ケーブルを布設する場合、管路内には既設の電話線に加えて複数の光ケーブルを通線する必要があり、十分なスペースがあるとは言えない。このような、狭い管路内に光ケーブルを挿通させる場合、通線工具を用いて挿通すると既設のケーブル等を損傷させる恐れがある。そこで、通線工具を使わずに光ケーブル単体で管路内に挿通することが望まれるが、光ケーブルに細径のものを用いる(例えば、断面幅3mm×厚さ2mm)だけでは、挿通は容易でない。
そこで、特許文献1,2のように、光ケーブルの外被に脂肪酸系の滑剤を含有させたものを用いることで、管路内への通線性を改善することが考えられる。しかしながら、脂肪酸系の滑剤はブリードが生じやすく、光ファイバとファイバ被覆との間にまで滑剤が浸透してくる可能性がある。外被の滑剤が、ファイバ被覆の内面にまで侵入してくると、光ファイバの伝送損失増加の要因となる。また、光ケーブルの外被をあまり細径にすると、耐衝撃性が悪化して亀裂が生じやすく、鋼線を太くして曲げにくくすると、撥ね性が強くなって収納性が悪く束ねにくくなるという問題がある。
また、光ケーブルの外被に滑剤を含有させると、光ファイバ心線との間でも滑りやすくなって、外被による光ファイバ心線に対する保持力が低下する。このため、温度変化で光ケーブルの外被が伸縮すると、光ケーブルの端末部で、光ファイバ心線が突き出たり引っ込んだりして、光コネクタ等の端末部で伝送損失増加が生じる恐れがある。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、通線ロッドを用いることなくスペースの狭い既設の電話等の管路内に容易に挿通させることができ、しかも、耐衝撃性、収納性を損なうことなく、ケーブル部および端末部での伝送損失増のない光ケーブルの提供を目的とする。
本発明による光ケーブルは、光ファイバ心線の両側にテンションメンバを配し、断面が矩形状の外被で被覆した光ケーブルであって、前記外被は、高密度ポリエチレンに分子量が300以上のシリコン系滑剤を添加した樹脂からなることを特徴とする。なお、シリコン系滑剤の添加量は0.3〜1.0重量%が好ましい。
また、前記外被の樹脂は、シリコン系滑剤に加えて、さらに常温で固体状の脂肪酸系滑剤が添加されていてもよい。なお、テンションメンバは、外径が0.4mm〜0.5mmの鋼線で、外被は、矩形状の短辺(厚さ)が1.4mm〜2.0mm、長辺(幅)が1.8mm〜2.4mmの断面とされる。
また、光ファイバ心線の外周に、滑剤が添加されていない前記外被と同種の樹脂からなるオーバーコート層を備えた構成としてもよい。
また、前記外被の樹脂は、シリコン系滑剤に加えて、さらに常温で固体状の脂肪酸系滑剤が添加されていてもよい。なお、テンションメンバは、外径が0.4mm〜0.5mmの鋼線で、外被は、矩形状の短辺(厚さ)が1.4mm〜2.0mm、長辺(幅)が1.8mm〜2.4mmの断面とされる。
また、光ファイバ心線の外周に、滑剤が添加されていない前記外被と同種の樹脂からなるオーバーコート層を備えた構成としてもよい。
本発明による光ケーブルによれば、通線ロッドを用いることなくスペースの狭い既設の管路内に、複数本の光ケーブルを容易に挿通させることが可能となる。また、光ケーブル自体の耐衝撃性、収納性を損なうことなく、ケーブル部および端末部で伝送損失増のない光ケーブルとすることができる。
図1により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)は本発明による光ケーブルの横断面を示す図、図1(B)は、既設の電話管路への光ケーブルの挿通状態を示す図である。図中、1は光ケーブル、2は光ファイバ心線、3はテンションメンバ、4は外被、5はノッチ、6は電話管路、7は電話線を示す。
本発明による光ケーブル1は、図1(A)に示すような一般的に知られる断面矩形状のもので、光ファイバ心線2の両側に1対のテンションメンバ3を平行に配し、外被4で一体に被覆し、外被4の両側面には、例えば、ノッチ5を設けて構成される。この光ケーブル1は、図1(B)に示すように、例えば、すでに電話線7が挿通されている既設の管路6(内径22mmΦ程度)内に20本以上を通線することが要望されている。また、この管路6は、通常、5箇所程度の曲がりを有し、通線ロッド等を用いることなく、光ケーブル単体での押し込みで通線させるものとする。
本発明は、上述したような管路6への挿通を可能とする光ケーブルを提供するものである。なお、光ケーブル内の光ファイバ心線2は、例えば、ガラスの裸ファイバ径が標準の125μm、ファイバ被覆の外径が250μm前後のもので、1または2芯で配設される。テンションメンバ3には単心鋼線を用い、光ファイバ心線を両側から挟むようにして設けられる。外被4の形状は断面が長方形状で、可能な限り細径化したもので、短辺側(厚さT)が2.0mm以下、長辺側(幅D)が3.0mm以下として、管路内への押し込み本数を多くすることが好ましい。また、外被4の両側面には、光ケーブルの端末を形成する際に、手で外被4を長手方向に引裂いて内部の光ファイバ心線2を取り出しやすくするためにノッチ5を設けることができる。
光ケーブル1の外被4は、ポリエチレン樹脂で形成され、本発明では、特に高密度ポリエチレン(HDPE)が用いて構成される。外被に高密度ポリエチレンを用いることにより、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)に比べて、外被の密度が高く硬く形成することができるので、管路内への通線性を高めることができる。
また、外被4には、HDPEに分子量が300以上のシリコン系滑剤を添加させた樹脂が用いられる。HDPEに添加されるシリコン系滑剤は、脂肪酸系の滑剤に比べてブリードし難くい。しかし、シリコン系滑剤であっても、その分子量が300未満では、滑剤がファイバ被覆内に浸透しやすく、光ファイバとの境界面にブリードしてくる可能性がある。後述するように、この場合、ケーブル部の伝送損失が増加し、0.1dB/kmを超えてしまう。シリコン系滑剤の分子量が300以上であれば、滑剤のブリード発生は少なく、光ファイバの伝送損失の増加を抑制することができる。
また、外被のHDPEに添加されるシリコン系滑剤の添加量は、0.3重量%〜1.0重量%が好ましい。シリコン系滑剤の滑剤の添加割合が0.3重量%未満では、外被表面の動摩擦係数が十分でなく、管路内に光ケーブルを容易に押し込むことが難しくなる。一方、滑剤の添加割合が1.0重量%を超えると、管路内に光ケーブルを容易に押し込むことは可能となるが、光ケーブルの巻き崩れや巻き緩みが生じやすく、また、光ファイバ心線に対する保持力が低下し、温度変化による光ファイバの突き出しという問題が生じる恐れがある。
また、上記のシリコン系滑剤の添加に加えて、従来用いられている脂肪酸系滑剤(分子量100程度のものを、0.3重量%程度)も添加するようにしてもよい。しかし、シリコン系滑剤と同様に常温で液体状のものを用いると、ブリードが生じやすく、ケーブル部の伝送損失が増加し、0.1dB/kmを超える恐れがある。したがって、常温で固体状の脂肪酸系滑剤を添加することが望ましい。
テンションメンバ3は、細くて抗張力が大きいものが望ましく、これには単心鋼線が適している。また、この単心鋼線の外径としては、0.4mmΦ〜0.5mmΦとするのが好ましい。テンションメンバの外径が0.4mmΦ未満では、折れ曲がりやすく通線性が十分ではなく、0.5mmΦを超えると抗張力が大きく撥ね性が強く、ドラムへの束巻きが難しくなり、収納性がよくない。
外被4の形状は、短辺側(厚さT)が1.4mm〜2.0mm、長辺側(幅D)が1.8mm〜2.4mmの断面で形成することが好ましい。厚さが1.4mm未満または幅が1.8mm未満では、テンションメンバ3の被覆厚さが少なく、衝撃等を受けたときに外被に亀裂が入りやすい。また、外被の厚さが2.0mmを超えあるいは外被の幅が2.4mmを超えると管路内での通線性が悪くなる。
上述した光ケーブルによれば、通線ロッドを用いることなくスペースの狭い既設の電話線等の管路内に、複数本の光ケーブルを容易に挿通させることが可能となる。また、光ケーブル自体の耐衝撃性、収納性を損なうことなく、さらに、外被に添加した滑剤が光ファイバとファイバ被覆の間にブリードせず、光ケーブルの伝送損失が増加しないようにすることができる。
図2は、他の実施形態を示す図である。この実施形態による光ケーブル1’は、光ファイバ心線2の両側に1対のテンションメンバ3を平行に配し、断面がほぼ矩形状の外被4で一体に被覆し、外被4の両側面にノッチ5を設けて構成する点では、図1の実施形態と同じである。ただ、図1の実施形態では、光ファイバ心線2を外被4に直に接触するように被覆しているのに対し、光ファイバ心線2と外被4の間に、オーバーコート層8(厚さ125μm程度)を備えている点が異なる。なお、オーバーコート層8は、タンデムあるいは非タンデムで押出成形により形成される。
図1の実施形態で説明したように、外被4に所定のシリコン滑剤を添加することにより、狭い管路内への通線性を高めることができる。しかしながら、シリコン滑剤の添加により、外被4と光ファイバ心線2との密着性も低下する。このため、温度変化により光ファイバ心線が光ケーブルの端末部(コネクタ部)で、突き出たり引っ込んだりしてコネクタ部で伝送損失が増加する恐れがある。
図2の光ケーブル1’は、上述の点を改善するもので、光ファイバ心線2の外周に、上述した滑剤が添加されていない前記外被と同種の樹脂からなるオーバーコート層8を配して構成される。光ファイバ心線2と外被4との間に、滑剤が添加されていない外被と同種の材料からなるオーバーコート層8を備えることにより、外被4の光ファイバ心線に対する保持力が高められる。この結果、上記の光ケーブル1’は、図1の例と同様に管路内への挿通性を高めることができると共に、温度変化による光ケーブルに伸縮で、光ファイバ心線が外被からの突き出しまたは引っ込みが抑制されて、伝送損失の増加を抑えることができる。
図3は、上述した光ケーブルを試験し評価した結果を示す図である。試験した光ケーブルの光ファイバ心線には、標準外径125μmのガラスファイバに、外径250μmのファイバ被覆を施したものを用いた。そして、外被の材料、外被の外寸、テンションメンバの鋼線径を変えた光ケーブル(試料No.1〜28)について検証した。検証の内容は、管路への通線性、耐衝撃性、収納性、ケーブル部ロス(損失)、コネクタ部ロス(損失)で評価した。
(1)通線性(押込み本数):検証に用いた管路は、内径22mmΦ、長さ20m、途中に曲がり5箇所を有する。通線性は、光ケーブルの押込み本数で評価し、20本以上で適(○)とし、それ未満を不適(×)とした。
(2)耐衝撃性:300gの錘を1mの高さから光ケーブル状に落下させ、外被に亀裂が生じていない場合を適(○)、亀裂がある場合を不適(×)とし、また、亀裂がなくても伝送損失の増加が0.2dB以上生じた場合は不適(×)とした。
(2)耐衝撃性:300gの錘を1mの高さから光ケーブル状に落下させ、外被に亀裂が生じていない場合を適(○)、亀裂がある場合を不適(×)とし、また、亀裂がなくても伝送損失の増加が0.2dB以上生じた場合は不適(×)とした。
(3)収納性:光ケーブルを100mmΦで束取りしたときに、撥ねずに収納できた場合を適(○)、撥ねて収納し難い場合を不適(×)とした。
(4)ケーブル部ロス:−10℃〜+40℃の温度範囲で、ケーブル損失が0.1dB/km以下を適(○)、0.1dB/kmを超える場合を不適(×)とした。
(5)コネクタ部ロス:−10℃〜+40℃の温度範囲で、コネクタ損失が0.2dB以下を適(○)、0.2dBを超える場合を不適(×)とした。
(6)総合判定:上記の(1)〜(5)のいずれか1つでも「×」の場合は、不適(×)とした。
(4)ケーブル部ロス:−10℃〜+40℃の温度範囲で、ケーブル損失が0.1dB/km以下を適(○)、0.1dB/kmを超える場合を不適(×)とした。
(5)コネクタ部ロス:−10℃〜+40℃の温度範囲で、コネクタ損失が0.2dB以下を適(○)、0.2dBを超える場合を不適(×)とした。
(6)総合判定:上記の(1)〜(5)のいずれか1つでも「×」の場合は、不適(×)とした。
No.1〜9の外被材料としては、LDPE,L−LDPE,MDPE,HDPEで滑剤を添加しないものとした。No.10〜28の外被材料は、種々の滑剤を添加したものとした。添加する滑剤の種類としては、滑剤A(シリコン系滑剤,分子量300,液体)、滑剤B(シリコン系滑剤、分子量250,液体)、滑剤C(シリコン系滑剤、分子量200,液体)、滑剤D(シリコン系滑剤、分子量100,液体)、滑剤E(シリコン系滑剤、分子量1000,液体)、滑剤G(脂肪酸系滑剤、分子量100,固体)、滑剤H(脂肪酸系滑剤、分子量100,液体)とし、これらを単独または組合わせて、外被材料のHDPEに添加させた。なお、試料No.17については、光ファイバ心線の外周を外被材料と同系の樹脂でオーバーコートとした。
試料No.1〜4は、外被をLDPE,L−LDPE,MDPE,HDPEのそれぞれで形成すると共に、外寸を2.0mm×3.mmしたものである。管路への通線性は、試料No.1〜3が押込み本数0〜1本で、HDPEを用いた試料No.4が5本であった。この結果からは、外被にHDPEを用いた場合は、他の外被より通線性は良くなることが判明した。また、外被の外寸が大きいことと、外被に滑剤が入っていないことで、試料No.1〜4の通線性は、いずれも「×」であった。
試料No.4以下は、外被の樹脂材料として、全てHDPEを用いたものである。試料No.5〜8において、外寸の幅をいずれも2.0mmとし、外寸の厚さを2.0mm〜1.0mmへと順次小さくして検証したが、外寸に関係なく押込み本数は、5本〜7本であった。この結果からは、外被に滑材が添加されていない場合は、外寸を小さくしても通線性についての改善は難しく、期待することはできないことが判明した。なお、試料No.7〜8については、外被に亀裂が入り、耐衝撃性についても「×」であった。これは、外被の厚さを小さくしたことにより、テンションメンバの鋼線に対する被覆厚さが、薄くなり過ぎた結果であると考えられる。
試料No.9以下は、外被(HDPE)に滑材を全てに添加させたもので、試料No.9〜17は、外寸を1.6×2.0mmとして滑材Aのみを添加させ、その添加量を0.2重量%〜2.0重量%の範囲で変えると共に、テンションメンバの鋼線径を変えてある。この結果をみると、試料No.9は、押込み本数が12本と、目標の20本を挿通させることができなかった。これは、外被への滑材Aの添加量が0.2重量%と少なく、管路内に挿通させるに外被表面の動摩擦係数が十分に小さくなっていないことによるものと考えられる。
また、試料No.11は、テンションメンバの鋼線径を0.6mmΦとし、通常より太くしたものである。この試料は、抗張力が大きくなった分だけ、押込み本数は30本と通線性は著しく向上したが、束巻きで撥ねが強く収納性という点で「×」であった。他方、試料No.14は、テンションメンバの鋼線径を0.25mmΦとし、通常より細くしたものである。この試料は、試料No.11とは反対に抗張力が小さくなった分だけ曲がりやすくない、押込み本数は14本と低下し、通線性は「×」であった。
試料No.16は、外被への滑剤Aの添加量を2重量%と、多目にしたものである。この試料は、外被への滑剤Aが多目に添加されていることから、動摩擦係数が十分に小さくされ、押込み本数は30本と通線性は著しく向上したが、コネクタ部でのロスが増加し、結果としては「×」となった。これは、光ファイバ心線と外被との間でも動摩擦係数が小さくなって、光ファイバの伸縮が生じたことによるものと考えられる。
しかし、試料No.17は、試料No.16と同じく外被への滑剤Aの添加量を2重量%と、多目にすると共に、光ファイバ心線の外周に外被材料と同じ滑剤無しのHDPEでオーバーコート層を配したものである。この場合、コネクタ部でのロスの増加はなく、「○」となった。これは、光ファイバ心線と外被との間に配したHDPEにより、光ファイバ心線と外被とは、十分な密着力で一体化されていることによるものと考えられる。
試料No.18〜23は、外被に添加する滑剤Aの0.3重量%に加えて、滑剤G(常温で固体状の脂肪酸系滑剤で分子量が100)を0.3重量%を添加し、鋼線径を0.5mmΦで一定とし、外寸を種々変えて検証したものである。このうち、試料No.20は、外被の外寸を1.6mm×1.6mmで、外被の幅寸法を小さくしている。この結果、外被に亀裂が入り、耐衝撃性が「×」であった。これは、外被の幅寸法を小さくしたことにより、テンションメンバの鋼線に対する被覆厚さが、薄くなり過ぎた結果である。
また、試料No.22は、外被の外寸が1.6mm×2.6mmで、外被の幅寸法大きくしている。この結果、押込み本数は、19本で規定本数をクリアすることができず「×」であった。また、試料No.23は、外被の外寸を2.0mm×3.0mmで、試料No.1〜4と同じにした。この結果、押込み本数は10本で、滑剤を添加しても通線性が大幅に低下している。試料No.22および23は、外寸が大きいことによるものと考えられる。
試料No.24〜27は、外寸を1.6mm×2.0mm、鋼線径を0.5mmΦで一定とし、外被に添加する滑剤の種類を滑剤B〜滑剤Eと変えたものである。これらの滑剤B〜滑剤Eは、いずれもシリコン系滑剤で、試料No.24の滑剤の分子量が250、試料No.25の滑剤の分子量が200、試料No.26の滑剤の分子量が100で、押込み本数は21〜22本で、いずれも通線性はよいものの、ケーブル部のロスがいずれも0.1dB/kmを超え、結果として「×」であった。これは、シリコン系滑剤の分子量が小さく、滑剤がファイバ被覆内に浸透しやすくなって、光ファイバの表面にブリードした結果であると考えられる。
試料No.28は、外被に添加する滑剤を滑剤Aの0.3重量%に加えて、滑剤H(常温で液体状の脂肪酸系滑剤で分子量が100)を0.3重量%追加して検証したものである。押込み本数は30本で通線性はよいが、ケーブル部のロスがいずれも0.1dB/kmを超え、結果として「×」であった。これは、試料18の外被に添加する滑剤を滑剤Aの0.3重量%に加えて、滑剤G(常温で固体状の脂肪酸系滑剤で分子量が100)を0.3重量%を追加したものと比べると、脂肪酸系滑剤が固体状と液体状の違いだけである。この結果から、シリコン系滑剤に追加して添加する脂肪酸系の滑剤が液体状のものであると、ブリードしやすいと考えられ、脂肪酸系の滑剤には固体状のものを用いるのが好ましいといえる。
1,1’…光ケーブル、2…光ファイバ心線、3…テンションメンバ、4…外被、5…ノッチ、6…電話管路、7…電話線、8…オーバーコート層。
Claims (5)
- 光ファイバ心線の両側にテンションメンバを配し、断面が矩形状の外被で被覆した光ケーブルであって、
前記外被は、高密度ポリエチレンに分子量が300以上のシリコン系滑剤を添加した樹脂からなることを特徴とする光ケーブル。 - 前記シリコン滑剤の添加量は、0.3〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル。
- 前記樹脂は、さらに常温で固体状の脂肪酸系滑剤が添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ケーブル。
- 前記テンションメンバは外径が0.4mm〜0.5mmの鋼線であり、前記外被は、矩形状の短辺側(厚さ)が1.4mm〜2.0mm、長辺側(幅)が1.8mm〜2.4mmの断面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ケーブル。
- 前記光ファイバ心線の外周に、前記滑剤が添加されていない前記外被と同種の樹脂からなるオーバーコート層を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ケーブル。
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