JP2011030773A - 上顎洞底挙上用部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の上顎洞底挙上用部材1は、口腔側から顎骨2に固定される支持体3と、この支持体3に螺合されると共に回転により顎骨2の一部を上顎洞4側に押圧可能な押圧体5と、を備え、押圧体5によって顎骨2の一部を上顎洞側に徐々に押し出すことにより顎骨2を僅かに破壊して増生させ、その繰り返しにより上顎洞底を隆起させる。
【選択図】図1
Description
例えば、上顎洞底粘膜を剥離して挙上し上顎洞底と粘膜との間に空間を形成し、この空間に骨補填材を埋め込んで固化させるサイナスリフト術が知られている(例えば、特許文献1参照)。骨補填材としては、自己の骨や人工骨、代替骨、培養骨等の各種の材料が使用される。
また、顎骨側から上顎洞底を外科的に鎚打して挙上するソケットリフト術が、知られている。
また、骨補填材として自己の他の部位の骨を使用する場合は、他の部位を切開して採取しなければならず、これについても同様に手術が大掛かりになる上、熟練の技術も必要になる。しかも、切開術を行うことは感染症に罹患する可能性が増加してしまうので、これを極力低減することが望まれる。
また、ソケットリフト術では、上顎洞底を挙上できる量が数mm程度と限定される上、明視下で行うことが難しく、更に、上顎洞底粘膜を破ってしまう等の恐れがあり、熟練の技術が必要とされる。従って、安全に、且つ大きく上顎洞底を挙上できるものが求められている。
[1]口腔側から顎骨に固定される支持体と、該支持体に螺合されると共に回転により前記顎骨の一部を上顎洞側に押圧可能な押圧体と、を備え、
前記押圧体によって前記顎骨の一部を上顎洞側に徐々に押し出すことにより該顎骨を僅かに破壊して増生させ、その繰り返しにより上顎洞底を隆起させることを特徴とする上顎洞底挙上用部材。
[2]前記押圧体は、前記支持体に対して螺合して回転により軸方向に移動可能なねじ部材と、該ねじ部材の前記上顎洞側に回転可能に取り付けられると共に前記顎骨に接触して前記上顎洞側に押圧する押圧部材と、を備える前記[1]に記載の上顎洞底挙上用部材。
[3]前記押圧部材の径は、前記ねじ部材の径以下である前記[2]に記載の上顎洞底挙上用部材。
[4]前記押圧部材の先端部の径は前記ねじ部材の径よりも大きく、且つ前記先端部を支持すると共に前記支持体に螺合により支持される補助支持部材を備える前記[2]に記載の上顎洞底挙上用部材。
[5]前記補助支持部材は円筒形状であり、前記支持体は、中心部に形成された押圧体を収容する押圧体収容穴と、その同心の円筒形状に形成された前記補助支持部材が螺合される補助支持部材収容穴と、を備える前記[4]に記載の上顎洞底挙上用部材。
[6]前記補助支持部材は、ボルトであり、前記支持体は、中心部に形成された押圧体を収容する押圧体収容穴と、その周囲に形成された前記補助支持部材が螺合される補助支持部材収容穴と、を備える前記[4]に記載の上顎洞底挙上用部材。
[7]前記押圧部材はチタン合金製である前記[2]又は[3]に記載の上顎洞底挙上用部材。
[8]前記押圧部材はステンレス鋼製である前記[4]乃至[6]のいずれかに記載の上顎洞底挙上用部材。
[9]前記支持体は前記顎骨に埋め込まれて固定される前記[1]乃至[8]のいずれかに記載の上顎洞底挙上用部材。
[10]前記支持体の前記口腔側の端部には、前記顎骨にねじ止めされると共に前記支持体が口腔側に突出することを防止する押さえ部材が設けられる請求項9に記載の上顎洞底挙上用部材。
[11]前記支持体は前記顎骨の表面に設けられると共に、前記支持体を前記顎骨にねじ止めする支持体固定手段を備える前記[1]乃至[8]のいずれかに記載の上顎洞底挙上用部材。
[12]前記支持体の前記顎骨側にはフランジ部を備え、前記支持体固定手段は円環形状で前記フランジ部を押さえた状態で前記顎骨にねじ止めされる前記[11]に記載の上顎洞底挙上用部材。
[13]前記支持体固定手段は、前記支持体の前記顎骨側に形成されると共に前記顎骨にねじ止めされるフランジである前記[11]に記載の上顎洞底挙上用部材。
更には、従来のように上顎骨を切開したり、他の部位から骨を採取することがないので、大掛かりな手術が不要となり、患者の負担を少なくできると共に感染症に罹患する可能性を低減できる。更に、施術が簡易で熟練の技術が不要となるので、費用を低額に抑えると同時に、施術者が多くなるので施術の機会を増加させることができる。
更に、押圧部材の径がねじ部材の径以下である場合は、顎骨が十分に厚くなった後、ねじ部材を逆回転させて押圧部材を顎骨から取り外すことができる。これにより、顎骨には穴が形成され、この穴にインプラントを埋設することができる。
押圧部材の先端部の径がねじ部材の径よりも大きい場合、顎骨から押圧部材を取り出すことはできない。このため、押圧部材を顎骨に埋め込んだまま支持部材にインプラントを螺合して取り付けるようにする。
ここで、補助支持部材は円筒形状であり、支持体は、中心部に形成された押圧体を収容する押圧体収容穴と、その同心の円筒形状に形成された補助支持部材が螺合される補助支持部材収容穴と、を備える場合は、押圧部材を所定位置まで突出させた後に補助支持部材を回転させて押圧部材を支持させることができるので、補助支持部材を顎骨と癒着させて上顎洞底挙上用部材を顎骨に強固に固定することができる。これにより、インプラント埋設時の強度を高めることができる。
また、補助支持部材がボルトであり、支持体は、中心部に形成された押圧体を収容する押圧体収容穴と、その周囲に形成された補助支持部材が螺合される補助支持部材収容穴と、を備える場合は、より簡易な構造で押圧部材を支持させることができる。
更に、押圧部材がチタン合金製である場合は、顎骨内に押圧部材が残されても、顎骨との生体親和性が高く、安全にインプラントを行うことができる。
ここで、支持体の口腔側の端部に、顎骨にねじ止めされると共に支持体が口腔側に突出することを防止する押さえ部材が設けられる場合は、支持体の顎骨への固着が不完全な状態であっても押圧体を押し出した際に支持体が口腔側にずれてしまうことを防止できる。これにより、支持体を埋設してから完全に固着する前に押圧体を押し出すことができるので、施術期間の短縮化を図ることができる。
ここで、支持体の顎骨側にはフランジ部を備え、支持体固定手段は円環形状でフランジ部を押さえた状態で顎骨にねじ止めされる場合は、支持体固定手段として、単純な円環形状で円環上の数箇所でねじ止めするものや、円環の周囲に十字形に突出した4箇所でねじ止めするものや、1本の径方向に突出した2箇所でねじ止めするもの等、各種形状を用意しておき、顎骨の表面の状況や隣接する他の歯の存在等によって適宜な形状の支持体固定手段を選択して利用することができる。
また、支持体固定手段が支持体の顎骨側に形成されると共に顎骨にねじ止めされるフランジである場合は、部品点数を増やすことなく簡易な構造で支持体を固定することができる。
前記「顎骨」は、特に上顎骨のうちで上顎洞の下方に位置するもの、即ち主として上顎奥歯の顎骨を意味し、歯の抜けた直後の歯槽骨も含まれる。
支持体は、顎骨に埋め込まれて固定されてもよい。この場合、支持体の口腔側の端部に、顎骨にねじ止めされると共に支持体が口腔側に突出することを防止する押さえ部材を設けることができる。
押さえ部材の形状としては、円環状でねじ止め部を円周上の数箇所に配置した形状(図6(B)参照)や、十字形状で各先端部の4箇所にねじ止め部を配置した形状(図6(C)参照)や、径方向のベルト状で各先端部の2箇所にねじ止め部を配置した形状(図6(D)参照)とすることができる。
ここで、上顎洞底挙上用部材の全体の長さとしては、例えば、8〜15mmが好ましい。このため、押圧体の長さとしては、例えば、8〜15mm程度とすることが好ましい。また、押圧体の径としては、例えば、3.5〜6mm程度が好ましい。
前記「ねじ部材」は、支持体に対して螺合して回転により軸方向に移動可能である限り、その形状、大きさ、材質、構造等は特に問わない。
ねじ部材としては、外周に雄ねじ部を有し、支持体の中心に形成された雌ねじ部に螺合するものとできる。
押圧部材の材質としては、インプラントの埋設時に取り外す場合は顎骨との癒着が比較的弱くアレルギー反応を起こしにくいステンレス鋼、チタン合金(純チタンを含む)、金合金、白金、樹脂、セラミック等が好ましい。
また、インプラントの埋設後も顎骨に残す場合には、骨との癒着も期待でき、生体親和性が高いチタン合金が好ましい。
また、押圧部材の先端部の径はねじ部材の径よりも大きく、且つ先端部を支持すると共に支持体に螺合により支持される補助支持部材を備えるようにできる。
ここで、補助支持部材を円筒形状とし、支持体は、中心部に形成された押圧体を収容する押圧体収容穴と、同心の円筒形状に形成された補助支持部材を収容する補助支持部材収容穴と、を備えるようにできる。
また、補助支持部材をボルトとし、支持体は、中心部に形成された押圧体を収容する押圧体収容穴と、その周囲に形成された補助支持部材が螺合される補助支持部材収容穴と、を備えるようにできる。
(1)上顎洞底挙上用部材の構成
本実施例に係る上顎洞底挙上用部材1は、図1及び図2に示すように、口腔側から顎骨2に埋め込まれて固定される支持体3と、この支持体3に螺合されると共に回転により顎骨2を上顎洞4側に押圧可能な押圧体5と、を備えるものである。
支持体3は、チタン合金製で中心に押圧体収容穴6を有する略円筒形状であり、外周面に形成された雄ねじ部7と、押圧体収容穴6の内周面に形成された雌ねじ部8と、口腔側端部に形成されたフランジ状の拡径部9と、を備えている。押圧体5は、支持体3の雌ねじ部8に螺合して回転により軸方向に移動可能なねじ部材10と、このねじ部材10の上顎洞4側に回転可能に取り付けられると共に顎骨2に接触して上顎洞4側に押圧する押圧部材11と、を備えている。
ねじ部材10はステンレス鋼製で、外周面に形成された雄ねじ部12と、押圧部材11側に形成された球形状の支持突起13と、を備えている。押圧部材11は表面が円滑なステンレス鋼製で、ねじ部材10の径と同等の径を有する球面から成る先端部14と、ねじ部材10側に形成された球形状の支持穴15と、を備えている。ねじ部材10の支持突起13と、押圧部材11の支持穴15と、は回転可能に係合されている。
次に、前記構成の上顎洞底挙上用部材1の作用について説明する。
本実施例の上顎洞底挙上用部材1によると、押圧体5により顎骨2を僅かに破壊して自己の骨増生作用により顎骨2を厚くすることができるので、一旦薄くなった顎骨2でも厚くしてインプラントを埋設することができるようになる。また、従来のように上顎骨を切開したり、他の部位から骨を採取することがないので、大掛かりな手術が不要となり、患者の負担を少なくできると共に、感染症に罹患する可能性を低減できる。更に、施術が簡易で熟練の技術が不要となるので、費用を低額に抑えると同時に施術者が多くなるので施術の機会を増加させることができる。
そして、押圧体5が互いに回転可能なねじ部材10及び押圧部材11から成るので、ねじ部材10を回転させた際に押圧部材11は顎骨2に対しては摩擦により回転することなく直進する。これにより、顎骨2の破壊を最小限に抑えることができ、顎骨2の増生を早めることができる。
更に、押圧部材11が表面が円滑なステンレス鋼製であるので、押圧部材11が顎骨2に対して癒着しにくいことから、押圧部材11に癒着した顎骨2を押圧時に一気に破壊してしまうようなことはない。
また、押圧体5の突出量は上顎洞底粘膜17と押圧部材11との間に常に薄い顎骨2が介在する量としているので、粘膜17の破れを抑制することができる。
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、前記実施例では、押圧体5の突出量は上顎洞底粘膜17と押圧部材11との間に常に薄い顎骨2が介在する量としたが、これに限定されず、例えば図5に示すように、押圧部材11が上顎洞底粘膜17を直接押圧するようにしてもよい。この場合、粘膜17が顎骨2から剥離して隙間25ができ(図5(B))、その隙間25で骨増生がなされる(図5(C))。そして、押圧部材11を更に押し出すことにより、更なる骨増生を図ることができる。
(1)上顎洞底挙上用部材の構成
本実施例に係る上顎洞底挙上用部材1は、図6(A)(B)に示すように、上述した上顎洞底挙上用部材1の支持体3の拡径部9に押さえ部材26を設けている。押さえ部材26は、顎骨2にねじ止めされると共に、支持体3が口腔側に突出することを防止する。ここでは押さえ部材26はステンレス鋼製で、円環状でねじ止め部27を円周上の90度おきの4箇所に配置した形状としている。各ねじ止め部27は、マイクロスクリュー28により顎骨2にねじ止めされている。また、押さえ部材26の中心孔29は押圧体5よりも大径としている。
他の構成については、第1の実施例と同様であるので符号を同じくして詳細な説明を省略する。
次に、前記構成の上顎洞底挙上用部材1の作用について説明する。
そして、第1の実施例と同様にして、上顎洞底18を隆起して顎骨2を厚くする。その後、押圧体5及び押さえ部材26を外し、空洞19にインプラントの人工歯根本体20を螺合により埋設することができる。
本実施例の上顎洞底挙上用部材1によると、支持体3の口腔側の端部に押さえ部材26が設けられているので、支持体3の顎骨2への固着が不完全な状態であっても押圧体5を押し出した際に支持体3が口腔側にずれてしまうことを防止できる。これにより、支持体3を埋設してから顎骨2に完全に固着する前に押圧体5を押し出すことができるので、施術期間の短縮化を図ることができる。
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、前記実施例では、押さえ部材26として円環状でねじ止め部27を円周上の4箇所に配置した形状としたが、これに限定されず、例えば、十字形状で各先端部の4箇所にねじ止め部27を配置した形状(図6(C))や、径方向のベルト状で各先端部の2箇所にねじ止め部27を配置した形状(図6(D))とすることができる。
(1)上顎洞底挙上用部材の構成
本実施例に係る上顎洞底挙上用部材1は、図7及び図8に示すように、口腔側から顎骨2に埋め込まれて固定される支持体3と、この支持体3に螺合されると共に回転により顎骨2を上顎洞4側に押圧可能で先端部14が拡径した押圧体5と、この先端部14を支持すると共に支持体3に螺合により支持される補助支持部材30と、を備えたものである。
支持体3は、チタン合金製で、円筒形状の内径部材31と、この内径部材31と同心状に設けられた外径部材32と、口腔側端面で内径部材31及び外径部材32を連結する連結部材33と、を備えている。内径部材31の中心は押圧体収容穴6とされていて、内周面には雌ねじ部8が形成されている。外径部材32は、外周面に形成された雄ねじ部7と、内周面に形成された雌ねじ部34と、口腔側端部に形成されたフランジ状の拡径部9と、を備えている。連結部材33は、内径部材31及び外径部材32を周方向90度おきの4箇所で接合されている。内径部材31及び外径部材32の間の円筒状の空間は補助支持部材収容穴35としている。補助支持部材30はチタン合金製の円筒形状で、外周面に形成された雄ねじ部36と、口腔側端面に形成された工具に係合する係合穴37と、を備えている。この補助支持部材30の雄ねじ部36は、支持体3の外径部材32の雌ねじ部34に螺合する。
押圧体5は、第1の実施例と同様の機構であり、支持体3の雌ねじ部8に螺合して回転により軸方向に移動可能なねじ部材10と、このねじ部材10の上顎洞4側に回転可能に取り付けられると共に顎骨2に接触して上顎洞4側に押圧する押圧部材11と、を備えている。ねじ部材10はステンレス鋼製で、外周面に形成された雄ねじ部12と、押圧部材11側に形成された球形状の支持突起13と、を備えている。押圧部材11はチタン製で、ねじ部材10よりも大径でドーム状に突出した先端部14と、ねじ部材10側に形成された球形状の支持穴15と、を備えている。ねじ部材10の支持突起13と、押圧部材11の支持穴15と、は回転可能に係合されている。
次に、前記構成の上顎洞底挙上用部材1の作用について説明する。
ねじ部材10を僅かに回転させて押圧部材11を顎骨2に向けて僅かに押し出す(図7(B))。これにより、顎骨2が僅かに破壊され、当該部位で骨増生がなされる。押圧部材11の押し出しと骨増生を繰り返すことにより、押圧部材11の先端側の部分で上顎洞底18が隆起して顎骨2が厚くなる(図7(C))。
顎骨2の厚さが、例えば15mm程度になったら、補助支持部材30を回転させて押圧部材11の先端部14側に押し出す(図7(D))。この回転は、連結部材33の隙間から工具を差し入れて係合穴37に係合させて行う。補助支持部材30が押し出されることにより、当該部位の顎骨2は破壊される。補助支持部材30が押圧部材11の先端部14に達したら回転を停止する(図7(E))。
押圧部材11及び補助支持部材30のいずれもチタン製であるので、このまま顎骨2と癒着して固着される。固着後に、押圧体収容穴6にインプラントの人工歯根本体20を螺合により埋設する。また、連結部材33を取り外し、補助支持部材収容穴35には円筒形状の穴埋めリング38を螺合させる(図7(F))。
尚、この人工歯根本体20に対する歯冠23の固定構造は第1の実施例と同様である。
本実施例の上顎洞底挙上用部材1によると、押圧部材11の先端部14の径がねじ部材10の径よりも大きいので、比較的広い範囲で顎骨2を厚くすることができ、インプラント埋設時の強度を高めることができる。
また、円筒形状の補助支持部材30を備えているので、補助支持部材30を顎骨2と癒着させて上顎洞底挙上用部材1を顎骨2に強固に固定することができる。これにより、インプラント埋設時の強度を高めることができる。
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、前記実施例では、補助支持部材30を円筒形状としたが、これに限定されず、例えば、ボルトとしてもよい。この場合、支持体3の補助支持部材収容穴35はボルトを螺合する形状にする。これによると、より簡易な構造で押圧部材11を支持させることができる。
(1)上顎洞底挙上用部材1の構成
本実施例に係る上顎洞底挙上用部材1は、図9に示すように、口腔側から顎骨2の表面に固定される支持体3と、この支持体3を顎骨2にねじ止めする支持体固定手段39と、支持体3に螺合されると共に回転により顎骨2を上顎洞4側に押圧可能な押圧体5と、を備えたものである。
支持体3は、ステンレス鋼製で中心に押圧体収容穴6を有する略円筒形状であり、押圧体収容穴6の内周面に形成された雌ねじ部8と、顎骨2側に形成されたフランジ部40と、を備えている。支持体固定手段39はステンレス鋼製の円環形状で、フランジ部40を押さえた状態で顎骨2にねじ止めされる。支持体固定手段39は、円環形状でねじ止め部41を円周上の90度おきの4箇所に配置した形状としている。各ねじ止め部41は、マイクロスクリュー42により顎骨2にねじ止めされている。
押圧体5は、第1の実施例と同様に、支持体3の雌ねじ部8に螺合して回転により軸方向に移動可能なねじ部材10と、このねじ部材10の上顎洞4側に回転可能に取り付けられると共に顎骨2に接触して上顎洞4側に押圧する押圧部材11と、を備えている。ねじ部材10はステンレス鋼製で、外周面に形成された雄ねじ部12と、押圧部材11側に形成された球形状の支持突起13と、を備えている。押圧部材11は表面が円滑なステンレス鋼製で、ねじ部材10の径と同等の径を有する球面から成る先端部14と、ねじ部材10側に形成された球形状の支持穴15と、を備えている。ねじ部材10の支持突起13と、押圧部材11の支持穴15と、は回転可能に係合されている。
次に、前記構成の上顎洞底挙上用部材1の作用について説明する。
そして、ねじ部材10を僅かに回転させて押圧部材11を顎骨2に向けて僅かに押し出す(図9(B)(C))。これにより、顎骨2が僅かに破壊され、当該部位で骨増生がなされる。押圧部材11の押し出しと骨増生を繰り返すことにより、押圧部材11の先端側の部分で上顎洞底18が隆起して顎骨2が厚くなる(図9(D))。
顎骨2の厚さが、例えば15mm程度になったら、ねじ部材10を逆回転させて押圧体5を取り外す。また、支持体固定手段39のねじを取り外して、支持体3を取り外す。これにより、顎骨2に空洞19が形成される(図9(E))。この空洞19にインプラントの人工歯根本体20を螺合により埋設する(図9(F))。この人工歯根本体20は押圧部材11より僅かに大径とし、螺合による固定の強化を図る。
尚、この人工歯根本体20に対する歯冠23の固定構造は第1の実施例と同様である。
本実施例の上顎洞底挙上用部材1によると、顎骨2の厚さに関係なく支持体3を取り付けることができるので、顎骨2が支持体3を埋設できない程度に薄い場合、例えば厚さ1mm程度であっても支持体3を設けて顎骨2を厚くすることができる。
また、支持体固定手段39は円環形状でフランジ部40を押さえた状態で顎骨2にねじ止めされる別部材であるので、各種形状の支持体固定手段39を用意しておき、顎骨2の表面の状況や隣接する他の歯の存在等によって適宜な形状の支持体固定手段39を選択して利用することができる。
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、前記実施例では、支持体固定手段39は円環形状でねじ止め部41を円周上の90度おきの4箇所に配置した形状としたが、これに限定されず、円環の周囲に十字形に突出した4箇所にねじ止め部を有する形状や、1本の径方向に突出した2箇所にねじ止め部を有する形状としてもよい。
また、前記実施例では、支持体固定手段39は支持体3と別部材としたが、これに限定されず、支持体3の顎骨2側に一体形成されたフランジであるようにしてもよい。この場合、部品点数を増やすことなく簡易な構造で支持体3を固定することができる。
Claims (13)
- 口腔側から顎骨に固定される支持体と、該支持体に螺合されると共に回転により前記顎骨の一部を上顎洞側に押圧可能な押圧体と、を備え、
前記押圧体によって前記顎骨の一部を上顎洞側に徐々に押し出すことにより該顎骨を僅かに破壊して増生させ、その繰り返しにより上顎洞底を隆起させることを特徴とする上顎洞底挙上用部材。 - 前記押圧体は、前記支持体に対して螺合して回転により軸方向に移動可能なねじ部材と、該ねじ部材の前記上顎洞側に回転可能に取り付けられると共に前記顎骨に接触して前記上顎洞側に押圧する押圧部材と、を備える請求項1に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記押圧部材の径は、前記ねじ部材の径以下である請求項2に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記押圧部材の先端部の径は前記ねじ部材の径よりも大きく、且つ前記先端部を支持すると共に前記支持体に螺合により支持される補助支持部材を備える請求項2に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記補助支持部材は円筒形状であり、前記支持体は、中心部に形成された押圧体を収容する押圧体収容穴と、その同心の円筒形状に形成された前記補助支持部材が螺合される補助支持部材収容穴と、を備える請求項4に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記補助支持部材は、ボルトであり、前記支持体は、中心部に形成された押圧体を収容する押圧体収容穴と、その周囲に形成された前記補助支持部材が螺合される補助支持部材収容穴と、を備える請求項4に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記押圧部材はステンレス鋼製である請求項2又は3に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記押圧部材はチタン合金製である請求項4乃至6のいずれか一項に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記支持体は前記顎骨に埋め込まれて固定される請求項1乃至8のいずれか一項に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記支持体の前記口腔側の端部には、前記顎骨にねじ止めされると共に前記支持体が口腔側に突出することを防止する押さえ部材が設けられる請求項9に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記支持体は前記顎骨の表面に設けられると共に、前記支持体を前記顎骨にねじ止めする支持体固定手段を備える請求項1乃至8のいずれか一項に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記支持体の前記顎骨側にはフランジ部を備え、前記支持体固定手段は円環形状で前記フランジ部を押さえた状態で前記顎骨にねじ止めされる請求項11に記載の上顎洞底挙上用部材。
- 前記支持体固定手段は、前記支持体の前記顎骨側に形成されると共に前記顎骨にねじ止めされるフランジである請求項11に記載の上顎洞底挙上用部材。
Priority Applications (2)
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