JP2011026255A - 肝炎の治療剤もしくは予防剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、肝炎、特にCD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎に対して有効に作用しうる新規な治療剤もしくは予防剤を提供することを課題とする。
【解決手段】CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを有効成分として含有する肝炎治療剤又は予防剤による。CCL2に対する抗体の投与により、動物モデルでの生存率および病理所見において改善が認められ、肝炎に対する予防効果および治療効果が認められた。
【選択図】図5

Description

本発明はCCL2抗体を有効成分とする肝炎の治療剤もしくは予防剤に関する。特にCD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎に有効な治療剤もしくは予防剤に関する。
肝炎はウイルス感染、アルコール摂取、薬剤または自己免疫等が原因で肝臓に炎症が起こる病気である。
肝炎の中でも、C型肝炎ウイルスによる肝炎は自然治癒することがなく、感染すると約70%が慢性肝炎に移行し、その後肝硬変に至る。そして、ウイルスの持続感染によってALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)値の高値が持続すると徐々に肝線維化が進行し、肝がんの発生率が上昇する(非特許文献1)。日本において約90%の肝がんがC型肝炎ウイルスが原因とされている。しかし、血中のウイルス量は肝臓の炎症の程度とは相関せず、C型肝炎の発症機序には宿主であるヒト免疫機構の関与が大きいと考えられており、強い肝臓の臓器障害の発生にCD8陽性T細胞が重要な役割を果たしていることが報告されている(非特許文献2)。また、薬剤の使用やウイルスの感染などにより誘引され、自己リンパ球が肝細胞と免疫反応を起こす自己免疫性肝炎(Autoimmune hepatitis:AIH)や薬剤の使用によるアレルギー反応で誘引される薬剤性肝炎においても、同様に強い肝臓の臓器障害の発症にCD8陽性T細胞が重要であることが報告されている(非特許文献3、4)。
このような肝炎の治療薬としては、C型肝炎の場合には現在インターフェロンと抗ウイルス剤が用いられているが、日本において最も多数をしめるGenotype1bの慢性C型肝炎においては、約50%の有効性しかなく、炎症が持続する例では肝硬変、さらには肝癌に進展し、生命予後に重大な影響を及ぼす。また、自己免疫性肝炎ではステロイド剤が用いられているが、ステロイドの長期の使用が余儀なくされ、炎症コントロールができずに肝硬変、さらには肝移植が必要とされる状態にいたる例も少なくない。以上の医療背景から、新しい肝炎治療薬の開発が望まれている。
抗体関連産業は、従来細胞融合によるモノクローナル抗体作製技術を基盤として発展してきた。近年、ファージディスプレイ系を用いた抗体ライブラリー作製技術が開発され、とりわけヒト抗体単離に大きな力を発揮している。基盤技術としてファージディスプレイ系を駆使することで、臨床に役立つ各種感染症に対するヒト抗体の単離が可能となった。例えば、インフルエンザウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスに対して非常に強い中和活性を示すヒト抗体をそれぞれ数種類作製することに成功している(第24回日本分子生物学会年会で発表「抗体ライブラリーからのヒト型抗インフルエンザウイルス中和抗体の単離」、第50回日本ウイルス学会で発表「ヒト抗体ライブラリーからの水痘帯状疱疹ウイルス中和抗体の単離」)。近年では、モノクローナル抗体は、短期間で且つ効率的に調製することが可能であり、ヒト型化抗体についても容易に調製することができる。このような抗体は研究用試薬、診断用試薬、各種物質モニター用試薬として多数開発販売されており、更には治療用抗体の開発、生産が進められている。
本発明者らは、先に自己免疫性肝炎を自然発症するモデル動物として、新生仔期胸腺切除(neonatal thymectomy:NTx)したBALB/c系統のPD−1遺伝子欠損マウス(NTx・PD−1KOマウス)を作製し、報告した(非特許文献5)。
単核走化性タンパク質−1(MCP1)は、ケモカイン受容体CCR2の高選択性、高親和性ケモカインリガンド(CCL2)である。CCR2保有細胞、例えば、単球及び記憶T細胞をひきつけるために炎症組織によって局所的に分泌される。MCP1は、CCL2と同義であり、以下本明細書では「CCL2」というが、背景技術の欄では、MCP1若くはMCP−1で表現する場合もある。
マウスIgGとヒトMCP1をリンカーで結合した物質(MCP1融合物)によりCCR2を脱感作して、CCR2媒介性の炎症を抑制することについて開示がある(特許文献1)。特許文献1のMCP1融合物は抗体ではないが、その用途として数多くの炎症疾患が挙げられ、その1つとして肝炎が例示されているが、実施例に開示されている疾病モデルは関節炎であり、肝炎との関連を実証するデータは無い。他の報告では、抗MCP1ヒトモノクローナル抗体について開示がある(特許文献2)。特許文献2では単球やマクロファージの走化性の亢進と活性化を促すヒトMCP−1に結合してその働きを抑制する抗MCP1ヒトモノクローナル抗体、及び該ヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株、ならびに該ヒトモノクローナル抗体を含有する炎症を伴う疾患に対する薬剤を提供することが開示されている。さらに他の報告で、新規MCP−1抗体について開示がある(特許文献3)。特許文献3ではMCP−1抗体の用途として、癌、代謝性疾患、免疫疾患、炎症疾患、心疾患、感染症、神経性疾患など数多くの一般的な疾病が羅列されている。そして、炎症疾患の多数の例示の中の1つとして肝炎も挙げられているが、実施例では膵臓がんについて開示されているのみであり、肝炎との関連を実証するデータは何ら示されていない。このように、MCP1(CCL2)に対する抗体について開示があるものの、具体的に肝炎に使用されたという報告はない。
国際公開2007/021807号パンフレット(特開2008-239633号公報) 特開平09-67399号公報 国際公開2007/146857号パンフレット、"ANti-MCP-1 antibodies expressed in Lemna, compositions, methods and uses"
新潟医学会雑誌、第119巻、第7号、411頁 (2005) Clinical Science, 112: 141-155 (2007) Autoimmunity Reviews, 3: 207-214 (2004) Nature Reviews, 4: 489-499 (2005) Gastroenterology, 135: 1333-1343 (2008)
本発明は、肝炎、特にCD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎に対して有効に作用しうる新規な治療剤もしくは予防剤を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために既存の肝炎モデル動物を用いて検討し、当該モデル動物の肝細胞に浸潤している細胞障害性T細胞に多く発現している分子CCR2に着目して更に鋭意検討を重ねた結果、そのリガンドであるCCL2に対する抗体(抗CCL2抗体)が肝炎の予防/治療に効果があることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、以下よりなる。
1.CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを有効成分として含有する肝炎治療剤又は予防剤。
2.CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントが該CCL2に特異的に反応するモノクローナル抗体又はその活性フラグメントである前項1記載の肝炎治療剤又は予防剤。
3.肝炎が、CD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎である前項1又は2記載の肝炎治療剤又は予防剤。
4.肝炎が、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎又は自己免疫性肝炎である前項1又は2記載の治療剤又は予防剤。
5.CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを有効成分とする肝組織へのCD8陽性T細胞浸潤抑制剤。
6.CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを投与することにより肝組織へのCD8陽性T細胞の浸潤を抑制する方法。
また、本発明は、CCL2に対する抗体またはその活性フラグメントの、肝炎治療剤の調製のための使用及びCCL2に対する抗体またはその活性フラグメントを肝炎治療が必要な対象に有効量で投与することを含む肝炎治療方法に関する。
本発明の抗CCL2抗体は、CD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎モデル動物に予防的もしくは治療的に使用することで、当該肝炎による死亡率を改善することができた。また、生存モデル動物の肝臓を摘出し、ホルマリン固定後、ヘマトキシリン・エオジン染色し、病理学的検索を行った結果、コンロトールのアイソタイプ抗体投与モデルでは肝臓門脈域を中心に高度に浸潤する単核球細胞と正常肝細胞の壊死が認められるのに対し、本発明の抗CCL2抗体の投与モデルでは、単核球細胞の浸潤や正常肝細胞の壊死などのいずれの所見も著明に改善した。
NTx・PD−1KOマウスの脾臓又は肝臓におけるCD4陽性T細胞又はCD8陽性T細胞でのCCR2の発現を確認した図である。(参考例1) NTx・PD−1KOマウスの肝臓又は脾臓におけるCCL2、CCL7、CCL8又はCCL12発現を確認した図である。(参考例1) 抗CCL2抗体を予防的にNTx・PD−1KOマウスに投与し、肝炎発症予防効果を生存率により確認した図である。(実施例1) 抗CCL2抗体を予防的にNTx・PD−1KOマウスに投与したときの生後28日目のマウス肝臓の病理的検索を行なった結果を示す写真図である。(実施例1) 抗CCL2抗体を治療的にNTx・PD−1KOマウスに投与し、肝炎治療効果を生存率により確認した図である。(実施例2) 抗CCL2抗体を治療的にNTx・PD−1KOマウスに投与したときの生後28日目のマウス肝臓の病理的検索を行なった結果を示す写真図である。(実施例2) 抗CCL2抗体を治療的にNTx・PD−1KOマウスに投与し、肝炎治療効果を生存率により確認した図である。(実施例3) 抗CCL2抗体を治療的にNTx・PD−1KOマウスに投与し、肝炎治療効果を生存率により確認した図である。(実施例3)
本発明は、CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを有効成分として含有する肝炎治療剤又は予防剤に関する。本発明者らは既存の肝炎モデル動物において肝細胞に浸潤している細胞障害性T細胞に多く発現している分子CCR2のリガンドであるCCL2に対する抗体(抗CCL2抗体)又はその活性フラグメントが、肝炎の予防/治療に効果があることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
背景技術の欄でも説明したように、本発明者らは先に自己免疫性肝炎を自然発症する新生仔期胸腺切除(neonatal thymectomy:NTx)したNTx・PD−1KOマウスについて報告した(非特許文献5)。このマウスは、血清中のAST(アスパルテートアミノトランスフェラーゼ)、ALT及び総ビリルビンが高値を示し、また、胸腺切除によるTreg(CD4陽性CD25陽性制御性T細胞)の減少と共に、肝浸潤免疫担当細胞のCD8T陽性細胞が顕著に増加している。
今般、本発明者らは、この肝炎モデルマウスを用いて肝細胞に浸潤している細胞障害性T細胞の発現分子について解析を行った。当該細胞に多く発現している分子のうちCCR2に着目し、そのCCR2のリガンドであるCCL2の抗体を用いて、NTx・PD−1KOマウスにおいて、自己免疫性肝炎の発症の抑制及び治療効果を検討したところ、CCL2の抗体が自己免疫肝炎の予防/治療に効果があることを見出した。
本明細書において、CCL2の抗体とは、CCL2タンパク質を特異的に認識することができる免疫グロブリン(抗CCL2抗体)をいう。本発明における抗体とは、ポリクローナル抗体(抗血清)あるいはモノクローナル抗体の何れであってもよく、特に限定されないが、好ましくはモノクローナル抗体である。また、本発明の抗体は、例えば、天然型抗原、遺伝子組換抗原又は抗原を発現している細胞等からなる抗原を哺乳動物に免疫して得られる天然型抗体や遺伝子組換技術を用いて製造され得るモノクローナル抗体も包含する。
抗CCL2抗体を製造するための抗原は、CCL2の抗原性を有していれば良く、例えばCCL2タンパク質を公知の方法に従って精製した抗原、又は遺伝子工学的に調製し、精製した抗原であればよい。当該抗原は、抗原性を有するのであれば、例えばCCL2タンパク質のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸残基が欠失、挿入、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよいし、CCL2タンパク質の一部であってもよい。抗CCL2抗体は、上記抗原を用いて自体公知の方法で作製することができ、例えば特許文献2や特許文献3に開示する方法により作製することができる。
上記抗体の活性フラグメントとは、当該抗体の抗原結合部位を含むフラグメントであって、フラグメント自体でCCL2タンパク質を特異的に認識することができるものをいう。具体的には、抗CCL2抗体の抗体フラグメントF(ab’)若しくはFab’が挙げられる。活性フラグメントは、自体公知の方法により作製することができる。
本発明における抗体又はその活性フラグメントは、CCL2タンパク質に特異的に結合し、CCL2タンパク質の機能に影響を与えるものであることが好ましい。CCL2タンパク質の機能に影響を与えるとは、例えば、当該抗体がCCL2タンパク質と結合することにより、CCL2タンパク質とCCR2との結合を阻害したり、又は該抗体がCCL2タンパク質と結合することにより、CCR2の活性化を介した細胞遊走を阻害すること等が挙げられる。
本発明は、CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを有効成分とする肝炎治療剤又は予防剤に関する。肝炎としては、例えば、B型或いはC型などのウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性肝炎、薬剤性肝炎、自己免疫性肝炎などが挙げられる。病態としては、急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎のいずれにも適用し得る。
特に、本発明においてCD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎、例えば、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎、自己免疫性肝炎に好適に適用できる。肝炎動物モデルでは、肝臓及び脾臓のCD8陽性T細胞において、網羅的遺伝子発現解析により解析を行なったところケモカインレセプターであるCCR2の発現が確認された。例えば、NTx・PD−1KOマウス、及びコントロールの新生仔期胸腺切除をしていないPD−1KOマウスから採取した肝臓及び脾臓のCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞について、網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、PD−1KOマウスでは、肝臓CD4陽性T細胞においてのみCCR2の発現が上昇していたが、NTx・PD−1KOマウスでは、肝臓CD4陽性T細胞において、PD−1KOマウスよりさらにCCR2の発現が上昇しているのに加え、脾臓、肝臓のCD4陽性及びCD8陽性T細胞のすべてで発現上昇が認められた。さらに、CCR2のリガンドの発現を解析したところ、自己免疫性肝炎を発症したNTx・PD−1KOマウスにおいて、CCL2の発現上昇を認めた。そこで、CCR2のリガンドであるCCL2の抗中和抗体を用いて、NTx・PD−1KOマウスの自己免疫性肝炎の発症の抑制及び治療効果を検討したところ、CCL2中和抗体が自己免疫肝炎の予防/治療に効果があることを見いだした。これらの結果から、本発明のCCL2に対する抗体又はその活性フラグメントは、CD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎、例えば自己免疫性肝炎に対して効果的に作用しうる。
CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントは、上述の肝炎の治療薬又は予防薬として使用することができる。また、本発明のCCL2に対する抗体又はその活性フラグメントは、肝組織へのCD8陽性T細胞浸潤抑制作用を有することから、肝組織へのCD8陽性T細胞浸潤抑制剤としても使用することができる。また、本発明はCCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを投与することにより肝組織へのCD8陽性T細胞の浸潤を抑制する方法にも及ぶ。これらより、本発明の抗体又はその活性フラグメントを含む組成物は、肝炎の治療剤若しくは予防剤としての医薬組成物として使用することができる。
本発明による治療剤若しくは予防剤の投与形態は、特に制限されず、経口投与、非経口投与(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、局所投与)のいずれかの投与経路でヒトを含む哺乳類に投与することができるが、非経口投与、特に静脈注射、が好ましい。経口投与及び非経口投与のための剤形及びその製造方法は当業者に周知であり、本発明による抗体を、薬学的に許容される坦体等と混合等することにより、常法に従って製造することができる。
非経口投与のための剤型は、注射用製剤(例えば、点滴注射剤、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等が挙げられる。例えば、注射用製剤は、通常、本発明による抗体を注射用蒸留水に溶解して調製するが、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、安定化剤等を添加することができる。また、用事調製用の凍結乾燥製剤とすることもできる。
経口投与のための剤型は、固体又は液体の剤型、具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、トローチ剤等が挙げられる。
本発明による医薬組成物は、治療上有効な他の薬剤を更に含有していてもよく、また、必要に応じて血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分を配合することもできる。このときの有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。
これらの製剤の製剤化に用いる担体には、例えば通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。使用可能な無毒性のこれらの成分としては、例えば大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えばミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えばセトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えばグルコース、ショ糖等の糖;例えば無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩;精製水等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミン等が、崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が、それぞれ用いられる。上記の成分は、その塩又はその水和物であってもよい。
例えば経口製剤は、有効成分に、賦形剤、さらに必要に応じて例えば結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等を加えた後、常法により例えば散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤等とする。錠剤・顆粒剤の場合には、例えば糖衣、その他必要により適宜コーティングすることはもちろん差支えない。シロップ剤や注射用製剤等の場合は、例えばpH調整剤、溶解剤、等張化剤等と、必要に応じて溶解補助剤、安定化剤等とを加えて、常法により製剤化する。また、外用剤の場合は、特に製法が限定されず、常法により製造することができる。使用する基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能であり、例えば動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、精製水等の原料が挙げられ、必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐防黴剤、着色料、香料等を添加することができる。さらに、必要に応じて血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分を配合することもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。本発明に使用する化合物類、本発明に使用するペプチド類又は本発明に使用するポリヌクレオチド類を前記治療に使用する場合は、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
本発明による抗体の投与量は、例えば、投与経路、疾患の種類、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、疾患の重篤度、薬物動態及び毒物学的特徴等の薬理学的知見、薬物送達系の利用の有無、並びに他の薬物の組合せの一部として投与されるか、など様々な因子を元に、臨床医師により決定することができるが、通常、成人(体重60kg)あたり、経口投与では1〜5000mg/日、好ましくは5〜2000mg/日、さらに好ましくは10〜1000mg/日を、注射投与では1〜5000mg/日、好ましくは5〜2000mg/日、さらに好ましくは50〜1000mg/日を、1回又は数回に分けて投与することができる。小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。実際に用いられる投与法は、臨床医師の判断により大幅に変動することもあり、上記の投与範囲から逸脱することがある。
本発明の理解をさらに進めるために、以下に参考例及び実施例を示してより具体的に説明する。まず、本発明を完成するに至ったNTx・PD−1KOマウスを用いた検討結果を参考例に示し、本発明のCCL2に対する抗体を有効成分として含有する肝炎治療剤又は予防剤を用いた結果を各実施例に示す。本発明は、これらの実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
(参考例)肝臓及び脾臓のT細胞におけるCCR2の発現及び肝臓でのCCL2の発現の解析(網羅的遺伝子発現解析)
自己免疫性肝炎を自然発症する新生仔期胸腺切除を行ったBALB/c系統のPD−1遺伝子欠損マウス(NTx・PD−1KOマウス:非特許文献5参照)とコントロールの新生仔期胸腺切除をしていないPD−1KOマウスから肝臓及び脾臓を摘出し、CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞を精製し、RNAを抽出、cDNAを合成し、GeneChip(R) Mouse Genome 430A 2.0 Array(Affimetrix社製)を用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。
PD−1KOマウスでは、肝臓CD4陽性T細胞においてのみCCR2の発現が上昇していたが、NTx・PD−1KOマウスでは、肝臓CD4陽性T細胞において、PD−1KOマウスよりさらにCCR2の発現が上昇しているのに加え、脾臓、肝臓のCD4陽性及びCD8陽性T細胞のすべてで発現上昇が認められた。さらに、PD−1KOマウスから肝臓及び脾臓を摘出し、CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞を精製し、RNAを抽出、cDNAを合成し、RT(real-time)−PCRにて、以下のCCR2特異的プライマーを用いて、T細胞のCCR2のmRNAの発現を検討した。NTx・PD−1KOマウスでは、肝臓CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞において、発現上昇が認められた(図1参照)。
CCR2特異的プライマー
CCR2F: ACC TGT AAA TGC CAT GCA AGT(配列番号1)
CCR2R: TGT CTT CCA TTT CCT TTG ATT TG(配列番号2)
次に、同系等の非遺伝子改変BALB/cマウス、PD−1KOマウス、NTx・PD−1KOマウスから肝臓を摘出し、肝組織よりRNAを抽出、cDNAを合成し、RT−PCRにて、CCR2のリガンドであるCCL2、CCL7、CCL8、CCL12特異的な以下の各プライマーを用いて、これらのCCR2のリガンドの mRNAの発現を検討した。同系等の非遺伝子改変BALB/cマウス、PD−1KOマウスに比較して、NTx・PD−1KOマウスの肝組織でのCCR2のリガンドのなかでCCL2のmRNA発現が相対的に最も上昇していた(図2参照)。
各種CCR2リガンド特異的プライマー
CCL2F: CAT CCA CGT GTT GGC TCA(配列番号3)
CCL2R: GAT CAT CTT GCT GGT GAA TGA GT(配列番号4)
CCL7F: TTC TGT GCC TGC TGC TCA TA(配列番号5)
CCL7R: TTG ACA TAG CAG CAT GTG GAT(配列番号6)
CCL8F: TTC TTT GCC TGC TGC TCA TA(配列番号7)
CCL8R: GCA GGT GAC TGG AGC CTT AT(配列番号8)
CCL12F: CCA TCA GTC CTC AGG TAT TGG(配列番号9)
CCL12R: CTT CCG GAC GTG AAT CTT CT(配列番号10)
(実施例1)抗CCL2抗体による肝炎発症抑制効果
次に、CCL2を阻害することで肝への肝炎惹起性T細胞の浸潤を阻害し、肝炎発症を抑制できるか検討した。自己免疫性肝炎を引き起こすNTx・PD−1KOマウスは、生後約4週後には、ほぼ全例で高度の肝炎から死亡する。そこで、NTx・PD−1KOマウスの生後3日目、10日目、17日目、21日目にマウスCCL2中和抗体(anti-mCCL2, purified rat monoclonal IgG2b, R&D, clone: 1123616)、又はコントロール抗体としてIsotype contorol monoclonal rat IgG2b(FG Purified rat IgG2b, eBioscience, Cat No. 16-4031-85)を投与し、CCL2中和抗体の肝炎発症予防効果を確認した。
各回、50μlのリン酸緩衝液に溶解した100μgの各抗体を、上述の投与スケジュールでNTx・PD−1KOマウスに計4回腹腔内注入を行い、生後28日目における生存率の比較を行なった。コントロール抗体投与群では、生存率が20%であるのに比較して、CCL2抗体投与群では、生存率が50%と生存率の改善を認めた(図3参照)。また、生存マウスの肝臓を摘出し、ホルマリン固定後、ヘマトキシリン・エオジン染色し、病理学的検索を行った。その結果、CCL2抗体投与群では肝臓に浸潤する単核球細胞が著明に減少し、正常肝組織構造の破壊も軽度となっていた(図4参照)。以上の結果から、CCL2中和抗体の投与によって、NTx・PD−1KOマウスの肝炎発症が抑制できることが明らかとなった。
(実施例2)抗CCL2抗体による肝炎の治療効果
CCL2を阻害することで発症した肝炎の治療効果が得られるかを検討した。実施例1でも述べたが、自己免疫性肝炎を引き起こすNTx・PD−1KOマウスは、生後約10日頃から肝内に炎症細胞浸潤が生じ、生後約4週後には、ほぼ全例で高度の肝炎から死亡する。そこで、NTx・PD−1KOマウスの生後17日目、21日目に、実施例1と同様にマウスCCL2中和抗体、又はコントロール抗体を投与し、CCL2中和抗体の肝炎治療効果を確認した。
各回、50μlのリン酸緩衝液に溶解した100μgの各抗体を、上述の投与スケジュールでNTx・PD−1KOマウスに計2回腹腔内注入を行い、生後28日目における生存率の比較を行なった。コントロール抗体投与群では、生存率が33%であるのに比較して、CCL2抗体投与群では、生存率が80%と生存率の改善を認めた(図5参照)。また、生存マウスの肝臓を摘出し、ホルマリン固定後、ヘマトキシリン・エオジン染色し、病理学的検索を行った。その結果、CCL2抗体投与群では肝臓に浸潤する単核球細胞が著明に減少し、正常肝組織構造の破壊も軽度となっていた。以上の結果から、CCL2中和抗体の投与によって、NTx・PD−1KOマウスの肝炎の治療が可能であることが明らかとなった(図6参照)。
(実施例3)抗CCL2抗体による肝炎の治療効果2
CCL2を阻害することで発症した肝炎の治療効果が得られるかを検討した。NTx・PD−1KOマウスの生後24日目に、実施例1と同様にマウスCCL2中和抗体、又はコントロール抗体を投与し、CCL2中和抗体の肝炎治療効果を確認した。
50μlのリン酸緩衝液に溶解した100μgの各抗体を、上述の投与スケジュールでNTx・PD−1KOマウスに腹腔内注入を行い、生後28日目における生存率の比較を行なった。コントロール抗体投与群では、生存率が0%であるのに比較して、CCL2抗体投与群では、生存率が60%と生存率の改善を認めた(図7参照)。また、生存マウスの肝臓を摘出し、ホルマリン固定後、ヘマトキシリン・エオジン染色し、病理学的検索を行った。その結果、CCL2抗体投与群では肝臓に浸潤する単核球細胞が著明に減少し、正常肝組織構造の破壊も軽度となっていた。以上の結果から、CCL2中和抗体の投与によって、NTx・PD−1KOマウスの肝炎の治療が可能であることが明らかとなった(図8参照)。
以上詳述したように、 本発明の抗CCL2抗体は、肝炎、特にCD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎に対して、治療剤又は予防剤として利用することができる。

Claims (6)

  1. CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを有効成分として含有する肝炎治療剤又は予防剤。
  2. CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントが該CCL2に特異的に反応するモノクローナル抗体又はその活性フラグメントである請求項1記載の肝炎治療剤又は予防剤。
  3. 肝炎が、CD8陽性T細胞による肝細胞障害により惹起される肝炎である請求項1又は2記載の肝炎治療剤又は予防剤。
  4. 肝炎が、ウイルス性肝炎、薬剤性肝炎又は自己免疫性肝炎である請求項1又は2記載の治療剤又は予防剤。
  5. CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを有効成分とする肝組織へのCD8陽性T細胞浸潤抑制剤。
  6. CCL2に対する抗体又はその活性フラグメントを投与することにより肝組織へのCD8陽性T細胞の浸潤を抑制する方法。
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