JP2011026146A - 軽量気泡コンクリートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】例えば建築物の壁材や屋根または床材などとして使用される軽量気泡コンクリート(以下、ALCという)に充分な撥水および防水性能が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】粉末状の珪酸質原料及び石灰質原料とを主原料としたスラリーを所定の形状に成形したのち高温高圧にて水蒸気養生して製造される軽量気泡コンクリートの製造方法において、上記スラリーに、ジメチルシロキサン又はその誘導体からなるシリコーンオイルを、スラリー混合物中の全固形分に対して0.02〜5重量%、より好ましくは0.02〜0.2重量%の割合で添加して上記の成形を行うと共に、水蒸気養生後の成形体外表面に、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を、その有効成分換算で0.05〜6.0g/m、より好ましくは0.05〜0.25g/mの割合で塗布することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば建築物の壁材や屋根または床材などとして使用される軽量気泡コンクリート(以下、ALCともいう)の製造方法に関する。
ALCは珪石等の珪酸質原料とセメントや生石灰等の石灰質原料を主原料とし、これらの微粉末に水とアルミニウム粉末等の添加物を加えてスラリー状とし、これを予め補強用鉄筋が並べられた型枠内に流し込む。その型枠内に流し込まれたスラリーは、アルミニウム粉末の反応によって発泡すると共に、石灰質原料の反応によって徐々に硬化し、半硬化状態となったところで、ピアノ線等の切断用ワイヤにより所定の大きさ形状に切断する。その後、オートクレーブにより高温高圧(約180℃、10気圧)の水蒸気養生を行うことによって製造される。
上記のようにして製造されるALCは軽量で、耐火性、断熱性、施工性に優れているため、建築材料として広く使用されている。しかし、ALCは表面及び内部に無数の気泡や気孔を有しているため吸水性が高く、しかも一般に製品寸法が大きいため、工場等で製造してから出荷までの間は屋外で保管される場合が多い。そのため、保管時に降雨によって濡れ、表面に濡れ色がついたり、内部に吸水されてしまうことがある。表面の濡れ色は、変色による外観体裁や品質の低下を招き、内部への吸水は汚れやカビなどの発生や、一時的な表面強度の低下、パネルの重量増加などを招く。
そこで、従来ALCには撥水性や防水性を付与させる技術が実用化されてきた。例えばパネル全体に撥水性と防水性を付与する技術としては、粉体原料混合時にシリコーンオイル等の撥水性物質を添加する、いわゆる内添型の技術がある。例えば下記特許文献1にはシリコーンオイル等を全固形分に対し0.2〜10重量%添加する技術が、また下記特許文献2にはシリコーンオイル等を全固形分に対し0.1〜5重量%添加する技術が、さらに下記特許文献3にはシリコーンオイル等を全固形分に対し0.05〜10重量%添加する技術が、それぞれ開示されている。
一方、成形後のパネル表面に撥水性と防水性を付与する、いわゆる外添型の技術としては、例えば下記特許文献4に、高温高圧での水蒸気養生後にアルキルアルコキシシラン等の撥水剤を、その有効成分換算で0.3〜6.0g/mの範囲内で塗布する技術が提案されている。また、アルコキシシラン撥水剤のメーカー推奨値として、東レダウコーニングシリコーン株式会社製ドライシールSのカタログ値における標準塗布量は、原液で10〜30g/mであり、有効成分が16〜20%であるため標準塗布量の有効成分換算は1.6〜6.0g/mである。
特開昭55−42272号公報 特公昭62−14514号公報 特公平1−58148号公報 特許3902339号公報
ところで、昨今の建築物の施工期間の短縮化や仕上げの簡素化に伴い、ALCには表面と内部の撥水性・防水性の両方を兼ね備える必要が出てきた。これに対して、前記のパネル全体の撥水性・防水性付与技術においては、撥水性物質を内添しているために内部への水の侵入は防げるものの、表面の撥水性は十分といえるレベルではなく、降雨による変色は防ぐことができなかった。その理由としては、撥水性物質を原料混合段階で混合するため、その後の高温高圧水蒸気養生によって、パネル表面の撥水性物質が温度および圧力による分解や飛散、溶け出しなどが起こるためと考えられる。
一方、前記のパネル表面の撥水性・防水性付与技術においては、撥水作用はごく薄い表面層に限られるために、その撥水層を通り抜けて浸入した水は容易に内部に進行し、場合によっては吸水した反対側の裏面にまで浸水が及ぶこともあった。特に、撥水層は雨粒のような小さな水滴については顕著な撥水作用が認められるが、水圧の高い水や大きな水滴は容易に撥水層を通り抜けることが分かった。その理由として、撥水性物質の撥水作用は固体表面への接触角を大きくする作用によるものであるが、接触角は水に与えられる圧力によって容易に変化し、大きな水滴では固体表面との接触部分で水圧が大きくなるため、吸水を生じる接触角にまで低下してしまうため、と考えられる。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、ALC全体に撥水性・防水性を付与すると共に、ALC表面にも撥水性・防水性を付与することが有効であると想到するに至った。特に、ALC全体とALC表面でそれぞれ単独でも充分な撥水および防水性能を、両方に持たせることは製造コストの面で不利であるため、単独では必ずしも充分な撥水および防水性能が得られない範囲であっても両者を組み合わせることで、充分な性能が得られることがわかり、これらの研究およびそれに基づく種々の実験等を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明による軽量気泡コンクリートの製造方法は、粉末状の珪酸質原料及び石灰質原料とを主原料としたスラリーを所定の形状に成形したのち高温高圧にて水蒸気養生して製造される軽量気泡コンクリートの製造方法において、上記スラリーに、ジメチルシロキサン又はその誘導体からなるシリコーンオイルを、スラリー混合物中の全固形分に対して0.02〜5重量%の割合で添加して上記の成形を行うと共に、水蒸気養生後の成形体外表面に、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を、その有効成分換算で0.05〜6.0g/mの割合で塗布することを特徴とする。
なお、撥水性材料の添加コストと性能とを精査した結果、より好ましくは、上記ジメチルシロキサンまたはその誘導体からなるシリコーンオイルを、原料のスラリー混合物中の全固形分に対して0.02〜0.2重量%添加するとともに、水蒸気養生後の外表面にアルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を、その有効成分換算で0.05〜0.25g/m塗布するのが望ましい。
上記のように構成された本発明による軽量気泡コンクリートの製造方法によれば、いわゆる内添型のシリコーンオイルと、外添型の撥水剤とを併用することによって、それぞれの使用量を極力少なくした上で充分な撥水および防水性能を有するALCを容易・安価に得ることが可能となる、その結果、ALCの表面及び内部に無数の気泡や気孔を有して生来吸水性が高いALCに対して、降雨による変色や外観品質低下、吸水による汚れやカビなどの発生や一時的な表面強度の低下、パネルの重量増加などの不具合のない耐久性および品質性能のよいALCを低コストで提供できる等の効果がある。
以下、本発明による軽量気泡コンクリートの製造方法を具体的に説明する。本発明による軽量気泡コンクリートは、上記のように粉末状の珪酸質原料及び石灰質原料とを主原料としたスラリーを所定の形状に成形したのち高温高圧にて水蒸気養生して製造されるものであって、上記スラリーに、ジメチルシロキサン又はその誘導体からなるシリコーンオイルを、スラリー混合物中の全固形分に対して0.02〜5重量%、より好ましくは0.02〜0.2重量%の割合で添加して上記の成形を行うと共に、水蒸気養生後の成形体外表面に、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を、その有効成分換算で0.05〜6.0g/m、より好ましくは0.05〜0.25g/mの割合で塗布することを特徴とする。
上記の珪酸質原料としては、例えば珪石、珪砂、シリカを用いることができ、石灰質原料としては、例えばセメントや生石灰、消石灰を用いることができる。その珪酸質原料と石灰質原料の配合割合は、生産性と製品物性が両立できるように通常はCaO/SiO=0.3〜0.8程度の範囲に決定される。なお、それらの原料の一部として前記切断用ワイヤにより切断して除去した半硬化体を繰り返し原料として使用することもできる。
上記の珪酸質原料と石灰質原料との固体原料を主原料とし、これに適当量の水と少量のアルミニウム粉末及び界面活性剤等の副原料を加え、ミキサー等で混練して原料のスラリーを作成する。その際、上記スラリー中に、ジメチルシロキサンまたはその誘導体からなるシリコーンオイルを添加する。
そのシリコーンオイルは、上記のようにジメチルシロキサンまたはその誘導体からなるものを用いるもので、そのジメチルシロキサンの誘導体としては、例えばジメチルシロキサンの構造式中のメチル基の一部または全部がアルキル基、アミノ基、ポリエーテル、オレフィン、エポキシ基、弗素、α−メチルスチレンまたはアルコールに置換された誘導体からなるもの等が使用可能である。それらのジメチルシロキサンまたはその誘導体からなるシリコーンオイルの粘性は、例えば25℃において10000cs以下のものが好適である。
上記シリコーンオイルの添加割合は、スラリー混合物中の全固形分に対して0.02〜5重量%の範囲内とし、より好ましくは0.02〜0.2重量%の範囲内とするのが望ましい。上記の添加割合があまり少ないと、後述する撥水剤による効果をも含めた全体的な撥水および防水効果が充分に得られないおそれがあり、また添加割合があまり多いとコストが嵩み経済性が低下するからである。
上記の添加割合でジメチルシロキサンまたはその誘導体からなるシリコーンオイルを原料のスラリーに添加し、そのスラリーを用いて前記従来例と同様の要領で所望形状の軽量気泡コンクリートを製造すればよい。具体的には、例えば予め補強用鉄筋が並べられた型枠内に上記のスラリーを流し込んで、該スラリー中のアルミニウム粉末の反応で発泡させると共に、石灰質原料の反応で半硬化状態となったところで、ピアノ線等の切断用ワイヤにより所定の大きさ形状に切断した後、その成形体を前記従来例と同様にオートクレーブ等により高温高圧の水蒸気養生を行えばよい。
次いで、上記の水蒸気養生を行った成形体(ALC)の外表面にアルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を塗布する。その撥水剤としてアルキルアルコキシシランを主成分とするシリコーン系撥水剤をALCの外表面に塗布するようにしたのは、ALCの極薄い表面層に顕著な撥水作用を与えるためである。
上記撥水剤の塗布量は、その有効成分換算で0.05〜6.0g/mの範囲内とし、より好ましくは0.05〜0.25g/mの範囲内とするのが望ましい。上記撥水剤の塗布量があまり少ないと内添型のシリコーンオイルによる効果をも含めた全体的な撥水および防水効果が充分に得られないおそれがあり、撥水剤の塗布量があまり多いとコストが嵩み経済性が低下するからである。
本発明は、上記のように原料スラリー作成時すなわち粉体原料混合時に、アルキル変成シリコーンオイルを添加するとともに、高温高圧水蒸気養生後にALC表面に、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を塗布したことによって、そのシリコーンオイルと撥水剤との協働で撥水性および防水性に優れたALCを得ることができる。特に、いわゆる内添型と、外添型とを併用することで撥水剤や防水剤の使用量を極力少なくした上で撥水および防水性能を向上させることが可能となり、耐久性および品質性能のよいALCを容易・安価に提供することができる。
以下、本発明による軽量気泡コンクリートの製造方法を、具体的な実施例及び比較例により詳細に説明する。
珪酸質原料として予めボールミルにて粉砕し、比表面積3000ブレーンに粒度を調整した珪石を45重量部、石灰質原料として生石灰を5重量部、普通ポルトランドセメントを30重量部、繰り返し原料を20重量部の割合で混合し、これらの固体原料合わせて100重量部に対して水60重量部と少量のアルミニウム粉末及び界面活性剤を加えて、ミキサで混練して原料スラリーを作成し、温度を45℃に調整した。
上記原料スラリーの調整時に、アルキル変成シリコーンオイルを原料スラリー混合物中の全固形分に対してそれぞれ0(添加なし)、0.01、0.02、0.05、0.1、0.5、1.0、3.0、5.0重量%の9種類の割合で添加して混合した。その各割合でシリコーンオイルを添加して混合した原料スラリーを、それぞれ予め補強用鉄筋を配列した型枠内に流し込み、アルミニウム粉の反応による発泡で膨張し、石灰質原料の水和によって半硬化状態となったところでピアノ線等の切断用ワイヤにより所定の大きさ形状に切断した後、オートクレーブによる高温高圧水蒸気養生を行ってシリコーンオイルの添加量の異なる9種類のALCパネルを作製した。
次いで、上記9種類のALCパネルを1枚ずつ水平に静置し、外表面にアルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を水で10倍に希釈した上で1m当たり0、1、2.5、5、25、50、150、300gとなるようにスプレーにて塗布した。これは、使用したサンプルの有効成分が20%であったことから、有効成分換算では、それぞれ0、0.02、0.05、0.1、0.5、1.0、3.0、6.0g/m塗布したことになる。同様に、ALCパネルから切出した100mm角の立方体ブロックの全6面に対して、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を有効成分換算のg/mにて同量となるよう塗布した。
パネル内部への撥水性・吸水性の評価については、100mm角立方体ブロックを用いた全面吸水率により評価した。上記の撥水剤塗布済みの100mm角立方体ブロックを、その上面が水面下20mmとなるように水中に浸漬して24時間放置し、水分吸収による重量増加をブロックの容積に等しい水の重量に対する百分率で換算した。全面吸水率は、15%以下であれば十分な撥水・防水性を有することが分かっているため、15%以下を適、15%を超える場合を不適と判断した。
パネル表面の撥水性・吸水性の評価については、撥水剤塗布後のパネルを屋外に30日間保管した後に、2mlの水滴を表面に滴下し、水滴の濡れ色がパネルに無い場合を適、濡れ色が有る場合を不適と判定した。上記の結果を下記表1にまとめて示す。なお、下記表1において、上段は全面吸水率とその判定、中段は濡れ色の有無とその判定、下段は総合判定を示す。
Figure 2011026146
上記表1から明らかなように、表面撥水剤の塗布がない場合、もしくは有効成分換算で0.02g/mと少ない場合、内添型(原料スラリーに添加するタイプ)のシリコーンオイルが1.0重量%未満では充分な撥水性および防水性の性能が得られない。また内添型のシリコーンオイルの添加がない、もしくは全固体量の0.01重量%と少ない場合、表面撥水剤の塗布量が有効成分換算で1.0g/m未満では充分な性能が得られない。そして上記の表面撥水剤およびシリコーンオイルが比較的少なくても充分な性能が得られのは、内添型のシリコーンオイルの添加量が0.02〜5重量%で、かつ表面撥水剤の塗布量が有効成分換算で0.05〜6.0g/mとした場合であることが分かった。
なお、内添型のシリコーンオイルについては、その添加量が1.0重量%以上であると、表面撥水剤の量の如何に拘わらず充分な性能が得られ、また表面撥水剤については、その塗布量が有効成分換算で1.0g/m以上であると、上記シリコーンオイルの添加量の如何に拘わらず充分な性能が得られる。しかし、上記の添加量や塗布量以上であると、材料費を含めた製造コストが高くなるため、前記の好適な範囲内であっても必ずしも実用的ではない場合がある。特に、シリコーンオイルの添加量を0.02重量%以上とし、かつ表面撥水剤の塗布量を有効成分換算で1.0g/m以上とした場合、或いは表面撥水剤の塗布量を有効成分換算で0.05g/m以上とし、かつシリコーンオイルの添加量を1.0重量%以上とした場合には、製造コストが高くなるだけでなく、撥水性及び防水性も高いレベルで飽和状態となり、実用上そこまでの添加量及び塗布量は必ずしも必要でない場合がある。そのような場合には、性能とコストとを勘案して、内添型のシリコーンオイルの添加量は0.02〜0.2重量%の範囲なとし、表面撥水剤の塗布量は有効成分換算で0.05〜0.25g/mの範囲内とするのが、より好ましい。
以上のように本発明による軽量気泡コンクリートの製造方法は、原料スラリー中に添加するジメチルシロキサン又はその誘導体からなるシリコーンオイルと、水蒸気養生後の軽量気泡コンクリートの外表面に塗布するアルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤との協働によって、それらの添加量や塗布量を極力少なくした上で軽量気泡コンクリートの撥水性や防水性能を高めることが可能となる。その結果、撥水性や防水性に優れた軽量気泡コンクリートを容易・安価に提供することが可能となると共に、そのような性能の優れた軽量気泡コンクリートの製造方法として産業上も有効に利用することができるものである。

Claims (2)

  1. 粉末状の珪酸質原料及び石灰質原料とを主原料としたスラリーを所定の形状に成形したのち高温高圧にて水蒸気養生して製造される軽量気泡コンクリートの製造方法において、
    上記スラリーに、ジメチルシロキサン又はその誘導体からなるシリコーンオイルを、スラリー混合物中の全固形分に対して0.02〜5重量%の割合で添加して上記の成形を行うと共に、水蒸気養生後の成形体外表面に、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤を、その有効成分換算で0.05〜6.0g/mの割合で塗布することを特徴とする軽量気泡コンクリートの製造方法。
  2. 上記ジメチルシロキサンまたはその誘導体からなるシリコーンオイルの添加量を、上記原料スラリー混合物中の全固形分に対して0.02〜0.2重量%の割合で添加すると共に、上記アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤の塗布量を、その有効成分換算で0.05〜0.25g/mの割合で塗布することを特徴とする請求項1に記載の軽量気泡コンクリートの製造方法。
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