JP2011023253A - 殺菌用紫外線ランプ - Google Patents
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Abstract
【課題】 波長254nmの紫外線強度を弱めずに、オゾン生成量の抑制が可能であり、しかも長時間使用の場合でも高い紫外線強度が維持される殺菌用紫外線ランプを提供する。
【解決手段】 紫外線ランプを、波長254nmの紫外線を透過し、内部に希ガス及び水銀が封入され、内部両端にそれぞれ電極を備えた直管型石英ガラス製バルブから成る高圧水銀ランプで構成すると共に、前記バルブの外表面に1層目として形成された酸化ジルコニウム膜と、2層目として形成された酸化ケイ素膜とから成る2層構造の被膜を備え、この被膜を備える前記バルブの光透過率が、200nm以下の波長領域で2%以下であり、波長254nmにおいて75%以上95%以下であり、かつ220〜235nmの波長領域で50%であるように構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】 紫外線ランプを、波長254nmの紫外線を透過し、内部に希ガス及び水銀が封入され、内部両端にそれぞれ電極を備えた直管型石英ガラス製バルブから成る高圧水銀ランプで構成すると共に、前記バルブの外表面に1層目として形成された酸化ジルコニウム膜と、2層目として形成された酸化ケイ素膜とから成る2層構造の被膜を備え、この被膜を備える前記バルブの光透過率が、200nm以下の波長領域で2%以下であり、波長254nmにおいて75%以上95%以下であり、かつ220〜235nmの波長領域で50%であるように構成する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、主に波長254nmの紫外線を利用した食品包装材料の表面殺菌等に用いられる紫外線ランプに関する。
波長254nm(殺菌線)の紫外線を利用する殺菌方法は、有害物質を発生する危険性が無く、安全性の高い殺菌手段として近年特に利用が進んでいる。
しかし、発光管バルブの材料として普通石英を使用した紫外線ランプは、殺菌線の他に波長185nmの紫外線も放射される為、空気中の酸素分子を解離して酸素原子を生成し、さらにこの酸素原子が酸素分子と結合してオゾンを生成する。オゾンは殺菌作用があるため、使用条件によっては有用であるが、処理装置の近くに人がいるような場合はその臭いが問題となる。さらに、オゾン濃度が0.1ppm以上になると、人体に有害となるので、オゾン濃度を0.1ppm以下に抑制する必要がある。
オゾン生成を防止する方法として、従来は発光管バルブにオゾンレス石英を使用したランプを用いる方法、あるいは発光管は普通石英を採用し、紫外線ランプを組み込んだ紫外線照射器の前面ガラスに酸化チタンがドープされたオゾンレス石英を用いて該照射器外にオゾンが生成されないようにする方法が挙げられる。この種の技術に関して記載された文献としては、例えば特許文献1がある。
しかし、オゾンレス石英を発光管バルブに使用した場合、点灯による経時変化で該石英の透過率吸収端が長波長側にシフトする為、254nmの透過率が低下するという問題がある。特に高圧水銀ランプの場合、発光管外表面は動作時に約800℃の高温になることが知られている。また、照射器前面ガラスにオゾンレス石英を使用する場合は、照射器筐体と外部とを繋ぐ通気口に触媒などのオゾン除去手段を設置する必要が生じる。
本発明の目的は、上記課題を解決し、波長254nmの紫外線強度を弱めずに、オゾン生成量の抑制が可能であり、しかも長時間使用の場合でも高い紫外線強度が維持される殺菌用紫外線ランプを提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、動作時に発光管バルブ表面が高温になる高圧水銀ランプの特性を考慮して、耐熱性の高い紫外線遮断材料としての酸化ジルコニウムを膜物質として用い、さらに、この酸化ジルコニウムに対して熱膨張緩和の作用があり、且つ低屈折率物質でもある酸化ケイ素を膜物質として用い、この両者の薄膜を2層に積層し、光干渉作用を利用して所定波長領域における発光管バルブの光透過率を向上させることを想起した。
そこで、請求項1記載の本発明の殺菌用紫外線ランプは、波長254nmの紫外線を透過し、内部に希ガス及び水銀が封入され、内部両端にそれぞれ電極を備えた直管型石英ガラス製バルブから成る高圧水銀ランプを具備すると共に、前記バルブの外表面に1層目として形成された酸化ジルコニウム膜と、2層目として形成された酸化ケイ素膜とから成る2層構造の被膜を備え、この被膜を備える前記バルブの光透過率が、200nm以下の波長領域で2%以下であり、波長254nmにおいて75%以上95%以下であり、かつ220〜235nmの波長領域で50%であることを特徴とする。
なお、ここで、「酸化ジルコニウム」及び「酸化ケイ素」なる用語は、ジルコニウム及びケイ素の各金属がそれぞれ、酸素と種々の組成比で化合して構成される酸化物すべてを含めて総称的に用いている。従って、「酸化ジルコニウム」及び「酸化ケイ素」とは、それぞれ各金属が最高の酸化状態となる二酸化ジルコニウム(ZrO2)及び二酸化ケイ素(SiO2)だけでなく、金属原子に対して酸素原子が幾分不足した中間の酸化状態にある酸化物も含んでいる。
請求項1記載の本発明によれば、オゾン発生量を規定範囲内に抑制しつつ、殺菌に必要な波長254nmの紫外線強度を1000時間点灯後も確保することが可能な殺菌用紫外線ランプを提供することができる。
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1はこの発明の殺菌用紫外線ランプの一実施形態について説明する為の外観概要図である。図1において、11は、外径23.3mmの透光性の石英ガラス製の発光管バルブである。このバルブ11の両端には、先端がコイル状に巻回された構造を有する電極121,122がそれぞれ対向配置される。電極121,122は、材料としてタングステン(W)を使用する。
図1はこの発明の殺菌用紫外線ランプの一実施形態について説明する為の外観概要図である。図1において、11は、外径23.3mmの透光性の石英ガラス製の発光管バルブである。このバルブ11の両端には、先端がコイル状に巻回された構造を有する電極121,122がそれぞれ対向配置される。電極121,122は、材料としてタングステン(W)を使用する。
電極121,122は、それぞれ金属箔151,152の一端に溶着される。金属箔151,152の他端は、例えばモリブデン製の引出し線161,162の一端と電気的に接続する。電極121,122の溶接部から引出し線161,162の一端まで、シール管14を加熱して封止する。金属箔151,152は、シール管14を形成する石英ガラスの熱膨張率に近い材料であれば何でもよいが、この条件に適ったものとしてモリブデンを使用する。バルブ11内部には、例えば1.3μg/mm3の水銀と2.7kPaの圧力のアルゴンガスが封入される。
引出し線161,162の他端は、例えばセラミック製の口金171,172の内部で電気的に接続された耐紫外線を有する例えばフッ素樹脂で被覆された電線181,182を介して図示しない電源回路に接続される。
また、バルブ11の外表面には、バルブ11の光透過率を調整する被膜13が形成されている。
こうして高圧水銀ランプから構成される殺菌用紫外線ランプ100が作製される。
また、バルブ11の外表面には、バルブ11の光透過率を調整する被膜13が形成されている。
こうして高圧水銀ランプから構成される殺菌用紫外線ランプ100が作製される。
次に、このような構成の殺菌用紫外線ランプについて、バルブ11の紫外線透過率だけが異なる殺菌用紫外線ランプ100を用意し、ランプ評価実験を行った。
バルブ11の仕様は次の4通りである。仕様1は普通石英バルブ、仕様2は石英ガラスに酸化チタンをドープさせたオゾンレス石英バルブである。仕様3は、普通石英バルブ11の外表面に膜厚50nmの酸化ジルコニウム膜131を成膜したものである。仕様4は、本発明の構成に対応するものであり、仕様3の酸化ジルコニウム膜131の上に更に膜厚25nmの酸化ケイ素膜132を成膜し、2層構造の被膜としたもので、この2層膜が被膜13を構成する(図1のA部部分切欠き拡大断面図参照)。
なお、酸化ジルコニウム膜と酸化ケイ素膜の成膜方法は、真空蒸着法、イオンスパッタリング法等、薄膜形成に用いられる既存の方法を採用できるが、例えばイオンスパッタリング法を用いる場合、ジルコニウム金属とケイ素金属をそれぞれターゲット材とし、各金属の酸化度が可能な限り最大となるように、適宜成膜速度と酸素ガス導入圧を調整して成膜を行なえばよい。
酸化ジルコニウム膜131の膜厚は、薄すぎると波長185nmの紫外線を透過してしまいオゾン生成を促進し、逆に厚すぎると波長254nmの紫外線の透過率が低下し殺菌効果が低減することので、30から80nmの範囲が望ましい。また酸化ケイ素膜132の膜厚も、同様に10から30nm程度が望ましい。
本実験における各仕様のバルブの分光透過率曲線を図2に示す。分光透過率曲線は、各バルブ試料の光透過率を分光光度計で測定して得られたものである。ここで、バルブ試料の光透過率とは、円筒状バルブ外表面に被膜が形成された部位を管軸に沿って切り出した半円筒状試料片について、バルブ内表面あるいは膜面に垂直に光を入射させて測定された光透過率を指す。光透過率の測定は、バルブ内表面あるいは膜面上の、塵、汚れ物質等の異物が除去された状態で行なう。
仕様1のバルブは通常の石英ガラスであるから、260nm以上の波長領域で90%以上、200〜260nmの波長領域でおよそ70〜90%の光透過率を示す。仕様2のバルブは、波長254nmにおける透過率が85%弱であり、波長240nmから短波長に向けて透過率が急激に低下する。酸化チタンが含まれているため、その経時変化により分光透過率曲線が長波長方向へシフトし、波長254nmにおける光透過率が低下することになる。仕様3のバルブは、光透過率が波長280nm付近で最大値(85%)を持ち、波長254nmで約78%、波長225nm付近で50%となり、200nm以下の波長領域では2%以下となる。仕様4のバルブは、光透過率が波長280nm付近で最大値(88%)を持ち、波長254nmで80%強、波長222nm付近で50%となり、200nm以下の波長領域では2%以下となる。波長254nm付近の光透過率は、仕様3のバルブよりも数%向上している。
仕様3及び仕様4の膜付きバルブの分光透過率曲線の実測値は、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素の化学組成がそれぞれ理論上の最高の酸化状態に対応するZrO2、SiO2であるとしたときの計算値と一致しないことが経験的に知られている。これは、通常、成膜時には各金属を完全に酸化することが難しく、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素がそれぞれ、例えばZrO1.5、SiO1.5等、金属原子に対して酸素原子が幾分不足した中間の酸化状態で成膜されるためと考えられている。しかし、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素がこのような中間の酸化状態を取る場合でも、膜付きバルブとして、紫外線ランプの性能に何ら支障が生じないことを確認している。そこで、本発明は、ランプバルブ外表面に形成される2層膜において、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素がこのような中間の酸化状態を取る場合も含む。勿論、可能であるならば、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素がそれぞれ完全に酸化されZrO2、SiO2の化学組成の状態で成膜されるのが最も好ましい。
次に、これら仕様1から4までの各バルブを備える紫外線ランプの評価結果について説明する。
表1は、各仕様のバルブを用いた紫外線ランプ100を専用点灯容器内でランプ電力1.6kWにて点灯した時の、波長254nmにおける照度と発生オゾン濃度を示したものである。なお、照度は仕様1のランプの照度を100とした相対値で示している。
表1は、各仕様のバルブを用いた紫外線ランプ100を専用点灯容器内でランプ電力1.6kWにて点灯した時の、波長254nmにおける照度と発生オゾン濃度を示したものである。なお、照度は仕様1のランプの照度を100とした相対値で示している。
表1の結果からも分かる通り、普通石英バルブ11外表面に酸化ジルコニウム膜131を形成しただけでも、発生オゾン濃度を0.1ppm以下に抑制しながら比較的高い照度が得られていることがわかる。さらに、酸化ジルコニウム膜131の上に酸化ケイ素膜132を重層して成膜することにより、更なる高照度化が実現できた。これは、低屈折率の酸化ケイ素膜132(屈折率=1.46)を適当な厚さで成膜することにより、高屈折率の酸化ジルコニウム膜131(屈折率=2.2)との光干渉作用により、酸化ジルコニウム膜131だけを形成した場合より光透過率が向上しているためと考えられる。
ここでさらに、本発明(仕様4)の膜付きバルブ試料を多数作製し分光透過率を測定して、分光透過率曲線のバラツキとランプ性能との関係を調査した。図3は、この膜付きバルブのすべての試料の分光透過率曲線を一つの図にプロットしたものである。同図から、仕様4の成膜条件、すなわち酸化ジルコニウム膜、酸化ケイ素膜の膜厚をそれぞれ約50nm、約25nmと設定して成膜を行なった場合は、これらの試料の分光透過率曲線に多少のバラツキが生じているが、いずれの試料も、波長254nmにおける光透過率が75%以上95%以下の範囲内に、光透過率が50%となる波長が220nm以上235nm以下の範囲内に収まっており、波長200nm以下の領域では光透過率が2%以下であることが分かる。図2、図3中には、これらの境界値が黒丸(●)で示されている。一方、分光透過率測定前に、これら試料から作製した紫外線ランプによる殺菌作用等のランプ性能の調査では、いずれの試料の場合も、同等の高い性能を示した。
逆に、分光透過率曲線がこの光透過率範囲、波長範囲から外れている場合には、波長185nmの紫外線の透過率が増大し、あるいは波長254nmの紫外線の透過率が低下するため、オゾン生成等の弊害、あるいは殺菌作用等のランプ性能の低下が生じ、好ましくない。
さらに、これらのランプを2000時間点灯し、特性の変化を確認した。図4は、仕様1から4の各バルブを備える紫外線ランプの、波長254nmにおける照度維持率の推移を示したものである。
図4に示す結果から、酸化ジルコニウム膜131および酸化ケイ素膜132を成膜したランプの照度維持率が、仕様1の普通石英品とほぼ同等の高い値を示すことがわかった。
これは酸化ジルコニウム膜131の上に酸化ケイ素膜132が成膜されることにより普通石英バルブ11との膨張率の差から起こる膜のクラックなど、酸化ジルコニウム膜131の点灯中に進行する膜劣化を抑制しているためと推察される。なお、仕様2から4の各ランプの点灯時間2000時間後における発生オゾン濃度は初期と同様に0.1ppm以下であった。
これは酸化ジルコニウム膜131の上に酸化ケイ素膜132が成膜されることにより普通石英バルブ11との膨張率の差から起こる膜のクラックなど、酸化ジルコニウム膜131の点灯中に進行する膜劣化を抑制しているためと推察される。なお、仕様2から4の各ランプの点灯時間2000時間後における発生オゾン濃度は初期と同様に0.1ppm以下であった。
ここで、普通石英バルブ11の外表面に形成される酸化ジルコニウム膜131と酸化ケイ素膜132の果たす作用を総括すると、それぞれ次の通りである。すなわち、酸化ジルコニウム膜131は、膜厚50nm程度の適度な膜厚で形成されることにより、必要な波長254nmの紫外線を最大限透過しつつ、不要な波長185nmの紫外線を完全に遮断している。一方、酸化ジルコニウム膜131の上に形成される酸化ケイ素膜132は、酸化ジルコニウム膜131と石英バルブ11との熱膨張率差を緩和し酸化ジルコニウム膜131の膜劣化を抑制すると共に、酸化ジルコニウム膜131との光干渉作用により石英バルブ11の光透過率を最大限に引き上げている。
以上の結果から、本発明によれば、波長254nmの紫外線強度を弱めずに、しかも生成するオゾンの濃度を規定内に押さえながら高い殺菌効果を得ることのできる紫外線ランプを提供することができる。
本発明は、食品包装材料の表面殺菌等に用いる紫外線ランプに利用可能である。
100…紫外線ランプ
11…発光管バルブ
121、122…電極
13…被膜
131…酸化ジルコニウム膜
132…酸化ケイ素膜
14…シール管
151、152…金属箔
161、162…引出し線
171、172…口金
181、182…電線
11…発光管バルブ
121、122…電極
13…被膜
131…酸化ジルコニウム膜
132…酸化ケイ素膜
14…シール管
151、152…金属箔
161、162…引出し線
171、172…口金
181、182…電線
Claims (1)
- 波長254nmの紫外線を透過し、内部に希ガス及び水銀が封入され、内部両端にそれぞれ電極を備えた直管型石英ガラス製バルブから成る高圧水銀ランプを具備する殺菌用紫外線ランプにおいて、前記バルブの外表面に1層目として形成された酸化ジルコニウム膜と、2層目として形成された酸化ケイ素膜とから成る2層構造の被膜を備えると共に、この被膜を備える前記バルブの光透過率が、200nm以下の波長領域で2%以下であり、波長254nmにおいて75%以上95%以下であり、かつ220〜235nmの波長領域で50%であることを特徴とする殺菌用紫外線ランプ。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009168358A JP2011023253A (ja) | 2009-07-17 | 2009-07-17 | 殺菌用紫外線ランプ |
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JP2009168358A JP2011023253A (ja) | 2009-07-17 | 2009-07-17 | 殺菌用紫外線ランプ |
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Publication Number | Publication Date |
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-
2009
- 2009-07-17 JP JP2009168358A patent/JP2011023253A/ja active Pending
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