JP2011021265A - プラズマ蒸着方法及び該方法により形成された蒸着膜 - Google Patents

プラズマ蒸着方法及び該方法により形成された蒸着膜 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の方法に比べて低電流で蒸着することができ、低エネルギー化を図ることが可能であり、成膜ダメージを低減し、かつ基材への輻射熱の低減が可能な、プラズマ蒸着方法及び該方法により形成された蒸着膜を提供する。
【解決手段】蒸着材を用いてプラズマ蒸着法により基材上に蒸着膜を成膜するためのプラズマ蒸着方法において、プラズマ放電電流を1〜30アンペア/分の範囲内の一定勾配αで40〜120アンペアの範囲内のA値まで増加させることにより蒸着材の昇華を開始させ、続いてA値よりも低い電流値である10〜80アンペアの範囲内のB値まで低下させて基材への蒸着膜の成膜を継続することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、低エネルギー化が可能なプラズマ蒸着方法及び該方法により形成された蒸着膜に関する。
プラズマ式蒸着法はプラズマ発生電極に高電圧を印加し、Ar等のガスを電離してプラズマを発生させる。発生させたプラズマ放電をハース(hearth)に導き、ハースに載置された膜形性材料(蒸着材)を加熱して蒸着材を昇華させてイオン化し、イオン化した材料をハースと対向させて配置された基板の表面に付着させるものである。
このプラズマ式蒸着法の改良技術として、プラズマの安定放電のために、圧力勾配型プラズマガンによる放電中のプラズマ電流を検出し、この検出プラズマ電流値と設定プラズマ電流値とを比較し、その偏差に基づき定常放電用電源の電流を制御するプラズマ放電方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。上記特許文献1によれば、この方法によって、プロセスガスの導入等によるプラズマ電流の変動が防止でき、安定したプラズマを発生させることができる結果、基板に均一な成膜を形成することができる。
また、ある基板に対して成膜を行っている間は、プラズマビームをハース側に導いてプラズマビームの電流を流すようにし、ある基板への成膜が終了して次の基板に対する成膜が始まるまでの間は、プラズマビームをハース近傍に設けられた補助陽極に導いてプラズマビームの電流を流すようにしたイオンプレーティング装置の運転方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。上記特許文献2によれば、この方法によって、被処理基板の搬送タイミングに合わせて、蒸着物質の蒸発を間欠的に行うことができるようにしたことにより、蒸発物質の歩留まりを向上させ、また真空容器内のメインテナンスインターバルを長くすることができる。
更に、成膜する際のバイアス電圧の規定として、イオン化した膜材料を基材に向けて移動させるバイアス電圧を特定のパルス状に印加する成膜方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。上記特許文献3によれば、この方法によって、基材上における成膜とエッチングとの配分を波形により調整してボイドの発生を防止しつつ成膜することが可能となり、従来の方法よりもバイアス電圧の印加方法を簡素化できる。
特開平5−86468号公報(請求項1、段落[0016]) 特開平10−176263号公報(請求項1、段落[0025]、図1) 特開2004−214487号公報(請求項10、段落[0014])
このようなプラズマ式蒸着法において、初期の昇華を促進するために高エネルギーが必要であり、高エネルギーによって蒸着膜にダメージが生じたり、生じる輻射熱で基材を傷める問題があった。
本発明の目的は、従来の方法に比べて低電流で蒸着することができ、低エネルギー化を図ることが可能な、プラズマ蒸着方法及び該方法により形成された蒸着膜を提供することにある。
本発明の別の目的は、成膜ダメージを低減し、かつ基材への輻射熱の低減が可能な、プラズマ蒸着方法及び該方法により形成された蒸着膜を提供することにある。
本発明の第1の観点は、蒸着材を用いてプラズマ蒸着法により基材上に蒸着膜を成膜するためのプラズマ蒸着方法において、プラズマ放電電流を1〜30アンペア/分の範囲内の一定勾配αで40〜120アンペアの範囲内のA値まで増加させることにより蒸着材の昇華を開始させ、続いてA値よりも低い電流値である10〜80アンペアの範囲内のB値まで低下させて基材への蒸着膜の成膜を継続することを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更にA値とB値との差が10〜50アンペアの範囲であることを特徴とする。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく蒸着方法により形成された蒸着膜である。
本発明のプラズマ蒸着方法によれば、プラズマ放電電流を1〜30アンペア/分の範囲内の一定勾配αで40〜120アンペアの範囲内のA値まで増加させることにより蒸着材の昇華を開始させ、続いて上記A値よりも低い電流値である10〜80アンペアの範囲内のB値まで低下させて基材への蒸着膜の成膜を継続することで、従来の方法に比べて低電流での蒸着が可能となるため、低エネルギー化が図られる。また、成膜を従来よりも低いエネルギーで行うことができるため、成膜ダメージが低減され、基材への輻射熱も低減できる。
本発明の蒸着方法を説明するためのプラズマ放電電流と放電時間との関係を示す図である。 本発明の蒸着方法に使用するRPD装置を示す図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明のプラズマ蒸着方法は、蒸着材を用いてプラズマ蒸着法により基材上に蒸着膜を成膜するものである。
本発明の方法に用いる反応性プラズマ蒸着法(以下、RPD法という。)とは、通常の蒸着装置にプラズマビーム発生器を設置してアーク放電を起こし、アークプラズマ中を通過して昇華した粒子をイオン化し加速して陰極に蒸着する方法であり、通常の蒸着法に比べて高速の成膜が可能となる。通常の蒸着法の飛来粒子の運動エネルギーは0.1eVであり、スパッタリング法のそれは100eV程度であるのに対して、RPD法のそれは数十eVであり、蒸着法とスパッタリング法の中間に属する。従って、RPD法は通常の蒸着法に比べ基材との密着性が良好な薄膜を形成することができ、またスパッタリング法に比べ高密度、低欠陥な成膜が可能であり基材温度を上げなくても結晶性の良い膜が得られる。しかしながら、基材が高温のプラズマに晒される場合、温度上昇などで膜がダメージを受ける問題点がある。
次に、本発明で用いるRPD装置について説明する。図2に示すように、本発明のRPD装置10は、真空チャンバ11とチャンバ11側壁に設けられたプラズマビーム発生器12とを備える。チャンバ11は導電性部材で構成され接地されている。チャンバ11内の底部には、蒸着材13を載置するハース14と、ハース14側にプラズマビームを導くプラズマビームコントローラ16が設けられる。プラズマビームコントローラ16は、ハース14と同心でハース14を囲む環状形状を有し、磁界を形成するために、その内部に磁石16aやコイル16bが配置されている。チャンバ11内の上部には、ハース14と対向するように配置された、基材17を保持する基材ホルダ18が設けられる。基材ホルダ18は導電性部材で構成され、図示しないバイアス制御手段を介して接地されている。なお、基材ホルダ18は、複数の基材をチャンバ内に搬送可能な構成としてもよい。またチャンバ11の側壁にはアルゴンガス等を導入及び排出するガス導入口11a及びガス排出口11bが設けられる。プラズマビーム発生器12は圧力勾配型であり、発生したプラズマビームを収束させる磁石12aやコイル12bが配置され、熱電子放出素子としてLaB6及びTaが用いられる。また、このプラズマビーム発生器12の周囲にはプラズマビームをチャンバ11内に導くビームガイド用のステアリングコイル12cが設置されている。なお、プラズマビーム発生器12は2基以上用いてもよい。例えば、プラズマビーム発生器を3基用いる場合は、2基を共蒸着用に用い、残りの1基をプラズマアシスト用として用いることもできる。
本発明のプラズマ蒸着方法に使用する蒸着材としては、ZnO純度が98%以上のZnO粉末から作られたZnOのペレットからなり、Y、La、Sc、Ce、Pr、Nd、Pm又はSmからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素を含む、透明導電膜を成膜するために用いられるZnO蒸着材が一例として挙げられる。
このペレットは直径が5〜50mmであって、厚さが2〜30mmであることが好ましい。ペレットの直径を5〜50mmとするのは安定かつ高速な成膜の実施のためであり、その直径が5mm未満ではスプラッシュ等が発生する不具合があり、50mmを越えるとハース(蒸着材溜)への充填率が低下することに起因する蒸着における膜の不均一及び成膜速度の低下をもたらす不具合がある。また、その厚さを2〜30mmとするのは安定かつ高速な成膜の実施のためであり、その厚さが2mm未満ではスプラッシュ等が発生する不具合があり、30mmを越えるとハース(蒸着材溜)への充填率が低下することに起因する蒸着における膜の不均一及び成膜速度の低下をもたらす不具合がある。
また、このZnO蒸着材は、ZnO純度が98%以上、好ましくは98.4%以上のZnO粉末から作られた多結晶ZnOのペレットからなる。ここで、ZnO粉末におけるZnO純度を98%以上に限定したのは、98%未満では不純物の影響でZnO膜の導電性の低下をもたらすからである。また、このZnO蒸着材は、相対密度が90%以上、好ましくは95%以上の多結晶ZnOのペレットであることが好ましい。相対密度を90%以上とするのは、90%未満では成膜時のスプラッシュが増大するからである。なお、この実施の形態では、ZnOのペレットの組織を多結晶としたが、単結晶であってもよい。
ZnO蒸着材中における上記Y、La、Sc、Ce等の元素は、2〜20質量%、好ましくは3〜6質量%であることが好ましい。上記Y、La、Sc、Ce等の元素を2〜20質量%とするのはZnO膜の導電性の向上のためであり、その元素が2質量%未満ではZnO膜の導電性の向上に寄与しない、20質量%を越えるとZnO膜の導電性の低下及び透過率の悪化等の不具合が発生する。一方、これらの元素が微量である場合には、ZnOマトリックスの粒界や粒内に粒状の析出物として存在するのではなく、ZnO蒸着材中に均一に分散している。また上記元素はZnO蒸着材中に酸化物として存在する。例えば、Yは、Y23の形態で存在し、Laは、La23の形態で存在する。またScは、Sc23の形態で存在し、Ceは、CeO2又はCe23の形態で存在すると考えられる。Prは、Pr612の形態で存在すると考えられ、Ndは、Nd23の形態で存在すると考えられる。更にPmは、Pm23の形態で存在すると考えられ、Smは、Sm23の形態で存在すると考えられる。
このように構成されたZnO蒸着材では、3価或いは4価以上の希土類元素を添加するので、2価であるZnに対して過剰のキャリア電子を発生させることができる。また、希土類はZnO蒸着材に添加した場合、蒸着時の組成ずれを起こし難い材料であり、膜で所望の組成比率を維持することができる。また、導電の機構としては、キャリア電子の強制投入以外に酸素欠損によるものがある。通常蒸着法では酸素ガスを導入するが、一般的には膜組成において酸素が不足状態となる。透明導電膜形成において酸素欠損を生成させ抵抗を下げる手法が採られるけれども、希土類元素を添加する場合、蒸発(昇華)性能に優れるため制御し易いといった特徴がある。この特徴を利用してAlやGa以外の添加元素を用いて、ITO並みの導電性を得ることができる。
次に、ZnO蒸着材の製造方法を添加元素がCeであり、焼結法により作製する場合を代表して説明する。
先ず純度が98%以上の高純度ZnO粉末と、酸化セリウム粉末と、バインダと、有機溶媒とを混合して、濃度が30〜75質量%のスラリーを調製する。好ましくは40〜65質量%のスラリーを調製する。ここで酸化セリウム粉末はCeの濃度が後述する多結晶ZnO蒸着材となったときに2〜20質量%の範囲になるように添加混合される。スラリーの濃度を30〜75質量%に限定したのは、75質量%を超えると上記スラリーが非水系であるため、安定した混合造粒が難しい問題点があり、30質量%未満では均一な組織を有する緻密なZnO焼結体が得られないからである。ZnO粉末の平均粒径は0.1〜5.0μmの範囲内にあることが好ましい。ZnO粉末の平均粒径を上記範囲内に規定したのは、下限値未満であると粉末が細かすぎて凝集するため、粉末のハンドリングが悪くなり、高濃度スラリーを調製することが困難となる問題点があり、上限値を越えると、微細構造の制御が難しく、緻密なペレットが得られない問題点があるからである。
酸化セリウム粉末はCe存在量の偏在の防止とZnOマトリックスとの反応性及びCe化合物の純度を考慮した場合、1次粒子径がナノスケールの酸化セリウム粒子を添加することが好ましい。
バインダとしてはポリエチレングリコールやポリビニールブチラール等を、有機溶媒としてはエタノールやプロパノール等を用いることが好ましい。バインダは0.2〜5.0質量%添加することが好ましい。
また高濃度粉末とバインダと有機溶媒との湿式混合、特に高純度粉末と分散媒である有機溶媒との湿式混合は、湿式ボールミル又は撹拌ミルにより行われる。湿式ボールミルでは、ZrO2製ボールを用いる場合には、直径5〜10mmの多数のZrO2製ボールを用いて8〜24時間、好ましくは20〜24時間湿式混合される。ZrO2製ボールの直径を5〜10mmと限定したのは、5mm未満では混合が不十分となることからであり、10mmを越えると不純物が増える不具合があるからである。また混合時間が最長24時間と長いのは、長時間連続混合しても不純物の発生が少ないからである。
撹拌ミルでは、直径1〜3mmのZrO2製ボールを用いて0.5〜1時間湿式混合される。ZrO2製ボールの直径を1〜3mmと限定したのは、1mm未満では混合が不十分となることからであり、3mmを越えると不純物が増える不具合があるからである。また混合時間が最長1時間と短いのは、1時間を越えると原料の混合のみならずボール自体が摩損するため、不純物の発生の原因となり、また1時間もあれば十分に混合できるからである。
次に上記スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜250μm、好ましくは50〜200μmの混合造粒粉末を得る。この造粒粉末を所定の型に入れて所定の圧力で成形する。上記噴霧乾燥はスプレードライヤを用いて行われることが好ましく、所定の型は一軸プレス装置又は冷間静水圧成形装置(CIP(Cold Isostatic Press)成形装置)が用いられる。一軸プレス装置では、造粒粉末を750〜2000kg/cm2(73.55〜196.1MPa)、好ましくは1000〜1500kg/cm2(98.1〜147.1MPa)の圧力で一軸加圧成形し、CIP成形装置では、造粒粉末を1000〜3000kg/cm2(98.1〜294.2MPa)、好ましくは1500〜2000kg/cm2(147.1〜196.1MPa)の圧力でCIP成形する。圧力を上記範囲に限定したのは、成形体の密度を高めるとともに焼結後の変形を防止し、後加工を不要にするためである。
更に成形体を所定の温度で焼結する。焼結は大気、不活性ガス、真空又は還元ガス雰囲気中で1000℃以上、好ましくは1200〜1400℃の温度で1〜10時間、好ましくは2〜5時間行う。これにより相対密度が90%以上のペレットが得られる。上記焼結は大気圧下で行うが、ホットプレス(HP)焼結や熱間静水圧プレス(HIP、Hot Isostatic Press)焼結のように加圧焼結を行う場合には、不活性ガス、真空又は還元ガス雰囲気中で1000℃以上の温度で1〜5時間行うことが好ましい。このようにして得られたペレットの多結晶ZnO蒸着材が得られる。
なお、添加元素としてCeを代表して説明したが、Y、La、Sc、Pr、Nd、Pm又はSmを用いる場合には、上記Ceに代えてY、La、Sc、Pr、Nd、Pm又はSmを用い、上記と同一の方法でZnO蒸着材を製造する。
本発明のプラズマ蒸着方法では、先ず、上記例示したような蒸着材13をハース14に装填し、基材ホルダ18に基材17を装着する。基材17としては、ガラス基板、半導体ウェーハ、樹脂フィルム等が例示される。次に、図示しないターボ分子ポンプによりチャンバ11内を真空引きする。その後、Arガスをガス供給口11aからチャンバ11内に供給し、チャンバ11内の全圧を5×10-3〜3×10-2Paに制御する。また、必要に応じて酸素ガスを混合しても良い。またバイアス制御手段を稼働させ、基材ホルダ18に所定のバイアス電圧を印加して、基材ホルダ18をチャンバ11に対し負の電位に保持する。次に、プラズマビーム発生器12からアーク放電を行い、プラズマビームコントローラ16により磁界を発生させ、アークプラズマをハース14に装填した蒸着材13側へと導く。
本発明の蒸着方法では、プラズマビーム発生器12からアーク放電を行う際、図1に示すように、プラズマ放電電流を一定勾配αでA値まで増加させることにより蒸着材13の昇華を開始させる。このように、蒸着材13の昇華が開始するまで一定勾配αでプラズマ放電電流を増加させるのは、初期段階の昇華を促進するための高エネルギーを投入する必要があるためである。プラズマ放電電流を増加させる一定勾配αは、その蒸着材13の種類にもよるが、1〜30アンペア/分の範囲内で選択される。一定勾配αを1〜30アンペア/分の範囲内としたのは、1アンペア/分未満であると熱が逃げてしまい、蒸着材13の昇華が開始せず、30アンペア/分を越えると急激な加熱となって蒸着材13に割れが生じてしまう不具合を生じるためである。このうち、10〜20アンペア/分が特に好ましい。
続いてA値よりも低い電流値であるB値まで低下させて基材17へ蒸着膜の成膜を継続する。ここでB値まで電流値を低下させても安定成膜が行われるのは、一度蒸着材表面から蒸発又は昇華が行われると、表面が活性状態となり少ない電流でも蒸発又は昇華が可能となるためである。A値としては40〜120アンペアの範囲内が、B値としてはA値よりも低い電流値である10〜80アンペアの範囲内で選択される。A値を上記範囲内としたのは、下限値未満では蒸着材13の昇華が開始せず、上限値を越えると成膜初期の膜質が不安定になるためである。またB値を上記範囲内としたのは、下限値未満では蒸発又は昇華が停止してしまって成膜されず、上限値を越えると安定した成膜を維持することができない、また成膜速度の制御が困難になる等の不具合を生じるためである。そして、A値とB値との差が10〜50アンペアの範囲となるように設定することが好適である。このうち、A値が70〜90アンペアの範囲内、B値がA値よりも低い電流値である30〜60アンペアの範囲内が特に好ましい。
蒸着材13はアークプラズマに晒され昇華すると同時にプラズマ中でイオン化し、イオン化した蒸着材料は、バイアス電圧による電界によって加速され、基材17に向かい、高エネルギーで基材17表面に蒸着する。
以上のような方法で蒸着膜を成膜することにより、従来の方法に比べて低電流での蒸着となるため、低エネルギー化が図られる。また、成膜を従来よりも低いエネルギーで行うことができるため、成膜ダメージが低減され、基材への輻射熱も低減できる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1〜実施例6、比較例1〜10>
先ず、基材としてガラス基板を、蒸着材として相対密度が95%であり、このZnO蒸着材中に含まれるCeの濃度が5質量%である多結晶ZnOのペレットを用意した。このZnO蒸着材の直径及び厚さはそれぞれ5mm及び1.6mmであり、ペレット作製に使用したZnO粉末のZnO純度は99%であった。
次に、図2に示す、RPD装置10のハース14に上記蒸着材13を装填し、基材ホルダ18にガラス基板を装着した。続いて、図示しないターボ分子ポンプによりチャンバ11内を真空引きし、その後、Arガスと酸素ガスをガス供給口11aからチャンバ11内に供給して、チャンバ11内の全圧が8×10-3Paになるように酸素ガスを供給した。また、バイアス制御手段を稼働させ、基材ホルダ18に所定のバイアス電圧を印加して、基材ホルダ18をチャンバ11に対し負の電位に保持した。
次に、プラズマビーム発生器12からアーク放電を行い、プラズマビームコントローラ16により磁界を発生させ、アークプラズマをハース14に装填した蒸着材13側へと導いた。ここで、次の表1に示す条件で、プラズマ放電電流を一定勾配αでA値まで増加させ、続いてB値まで低下させ、電流値をB値に固定する操作を行った。
各実施例及び比較例における蒸着の可否を目視により観察した。その結果を表1にそれぞれ示す。
Figure 2011021265
表1から明らかなように、比較例2,9及び10は、A値設定が低すぎたためか蒸着材の昇華が開始せず、蒸着できなかった。比較例6及び8は、電流値をA値にまで増加させることで蒸着材の昇華が開始し、イオン化した蒸着材料がガラス基板表面に蒸着したが、続くB値設定が低すぎたためか、電流値をB値に変更した後は蒸着が停止してしまった。比較例1,3〜5,7は、A値設定或いはB値設定が高すぎたためか、成膜初期の膜質が不安定になった。一方、実施例1〜6では、電流値をA値まで増加させることで蒸着材の昇華が開始し、続いて、電流値をB値にまで低下させても安定成膜が行われた。このような成膜条件で蒸着を行うことにより、従来の方法に比べて低エネルギー化を図ることができ、また、成膜時のダメージが生じていない良好な蒸着膜が得られた。

Claims (3)

  1. 蒸着材を用いてプラズマ蒸着法により基材上に蒸着膜を成膜するためのプラズマ蒸着方法において、
    プラズマ放電電流を1〜30アンペア/分の範囲内の一定勾配αで40〜120アンペアの範囲内のA値まで増加させることにより前記蒸着材の昇華を開始させ、続いて前記A値よりも低い電流値である10〜80アンペアの範囲内のB値まで低下させて前記基材への蒸着膜の成膜を継続する
    ことを特徴とするプラズマ蒸着方法。
  2. A値とB値との差が10〜50アンペアの範囲である請求項1記載の蒸着方法。
  3. 請求項1又は2記載の蒸着方法により形成された蒸着膜。
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