JP2011021147A - バイオディーゼル燃料組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)動植物油から得られる脂肪酸のアルキルエステルを主成分とするヨウ素価が65g/100g以下のバイオディーゼル燃料基材と、(B)2−ブチルアルコール若しくはイソブチルアルコールを含有することを特徴とするバイオディーゼル燃料組成物である。
【選択図】なし
Description
特に、温室効果ガスである二酸化炭素の発生を低減することが求められていることに関し、カーボンニュートラルの概念、すなわち、植物中の炭素は比較的近い過去の大気中の二酸化炭素から固定されたものであることを考慮すれば、植物由来の燃料は全体として大気中の二酸化炭素濃度を増加させることにならないと考えられることから、植物由来の基材を用いた、いわゆるバイオディーゼル燃料の開発が注目されている。
また、植物由来の基材とともに、動物由来の基材を用いた燃料を含めたバイオディーゼル燃料は、将来枯渇するとも言われている化石燃料を原料とする従来の燃料とは対照的に、再生可能なエネルギー源として持続的に使用が可能であるという利点もある。
このような背景から、地球温暖化に資する燃料として、動植物由来のバイオディーゼル燃料の開発熱が世界的に広まっている。
一方、ディーゼルエンジンに対する排ガス規制が一層厳しくなりつつある中で、例えば、コモンレール式電子制御が取り入れられるなど、燃料噴射圧が特に高いエンジンが用いられることが多くなってきている。そのため、燃料がさらに厳しい断熱圧縮を受けて温度が上昇し燃料油の劣化が一層進みやすい状況になってきている。
このような状況から、バイオディーゼル燃料の酸化安定性を高めるべく、研究、開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、特許文献3では、バイオディーゼル燃料にアミン系の化合物を酸化防止剤とすることが提案されている。この酸化防止剤は、常温で液体であるためバイオディーゼル燃料との混合も容易であるものの、酸化防止の効果そのものが小さく、バイオディーゼル燃料に十分な酸化安定性を付与するためには、それらを1,000ppm以上の多量に添加することが必要となる(特許文献3)。その結果、酸化防止剤の配合量が多くなることによるエンジン中での燃焼不良や排出ガスの発生などによる悪影響が生ずるなどの恐れがある。
以上の背景から、酸化安定性の向上効果が大きく、また、その配合量が多い場合でもエンジン中での燃料の燃焼不良や有害な排出ガスの発生による悪影響が無く、かつ地球温暖化の緩和にも貢献できるバイオディーゼル燃料の開発が切望されている。
すなわち、本発明は、
[1](A)動植物油から得られる脂肪酸のアルキルエステルを主成分とするヨウ素価が65g/100g以下のバイオディーゼル燃料基材と、(B)2−ブチルアルコール若しくはイソブチルアルコールを含有するバイオディーゼル燃料組成物、
[2]前記(A)の動植物油から得られる脂肪酸のアルキルエステルが、炭素数が4〜25の脂肪酸メチルエステルである上記[1]に記載のバイオディーゼル燃料組成物、
[3]前記(B)の2−ブチルアルコール及びイソブチルアルコールがバイオマス由来のものである上記[1]又は[2]に記載のバイオディーゼル燃料組成物、
[4]前記(B)の2−ブチルアルコール若しくはイソブチルアルコールの含有量が、組成物全量基準で1〜50容量%である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料組成物、
[5]前記(A)のバイオディーゼル燃料基材のヨウ素価が60g/100g以下である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料組成物、
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料組成物を石油系軽油に配合してなるバイオディーゼル燃料組成物、
を提供するものである。
本発明は、(A)成分として、動植物油から得られる脂肪酸(以下、「動植物油脂肪酸」と称することがある。)のアルキルエステルを主成分とするバイオディーゼル燃料基材を用いる。これによって地球温暖防止に貢献することができる。
これらの中でも、原料の入手性の観点から植物油が好ましく、特に、大豆油、パーム油、ココナッツ油などが好適である。
このような動植物油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
バイオディーゼル燃料基材のヨウ素価が65g/100gを超える動植物油脂肪酸のアルキルエステルを用いると、(B)成分を配合しても動植物油脂肪酸のアルキルエステルの酸化安定性を改善することは困難である。したがって動植物油脂肪酸のアルキルエステルは、ヨウ素価が60g/100g以下であることが好ましく、55g/100g以下であることがより好ましい。
なお、このヨウ素価は、JIS K 0070「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」により測定した値である。
動植物油にメタノールなどのアルコールと触媒を加えてエステル交換反応をさせ、これに酸を加えて中和し、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンに分離する。次いで、分離した脂肪酸アルキルエステルを水洗処理や蒸留処理を行って触媒やアルコールなどを除去して、目的物を得ることができる。
本発明は、上記(A)成分のバイオディーゼル燃料基材とともに含有する(B)成分として、(b−1)2−ブチルアルコール若しくは(b−2)イソブチルアルコールを用いる。
このような(B)成分を配合することによって、バイオディーゼル燃料基材の酸化安定性を良好に高めることができる。また、これらは酸素含有化合物であるから、エンジン中における燃焼性を低下させたり、有害な排ガスによる悪影響を及ぼす恐れはない。
例えば、2−ブチルアルコールの製造法として、2−ブテンの水和による方法が、また、イソブチルアルコールの製造法として、プロピレンのオキソ合成後にイソブチルアルデヒドを水素化する製造方法などが挙げられる。
また、これら2−ブチルアルコール、イソブチルアルコールは、いずれもバイオマスから製造されたもの、例えば、とうもろこし、さとうきび等を発酵し蒸留して得られる2−ブチルアルコール、イソブチルアルコールであれば、カーボンニュートラルの観点から、地球温暖化緩和の面でより好ましい。
また、(B)成分の(b−1)2−ブチルアルコールと(b−2)イソブチルアルコールを混合して用いる場合、(b−1)と(b−2)との混合割合は特に制限はなく任意の割合で使用できる。
本発明のバイオディーゼル燃料組成物には、(A)成分と、(B)成分を含有するが、更に必要に応じて各種の添加剤を適宜配合することができる。
このような添加剤としては、例えば、流動性向上剤、潤滑性向上剤、清浄剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、セタン価向上剤、消泡剤などが挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上添加することができる。また、その添加量は状況に応じて適宜選定すればよいが、通常は添加剤の合計量として燃料組成物に対して5質量%以下とすることが好ましい。
本発明のバイオディーゼル燃料組成物は、以上の成分を含有するものであり、その性状及び性能は、以下のものが好ましい。
(1)ヨウ素価が50g/100g以下であること
燃料組成物のヨウ素価が50g/100gであれば、酸化安定性を良好に保つ効果が得られる。
(2)酸化安定度が600時間以上であること
酸化安定度が600時間以上であれば、厳しい断熱圧縮を受けるディーゼル燃料として、良好に使用できる。
なお、酸化安定度は、JIS K 2287「ガソリン酸化安定性試験法(誘導期間)」法に基づいて測定したものである。
(3)蒸留性状:90%留出温度(T90)が300〜370℃であること
(4)セタン価が45〜65であること
上記(3)〜(4)を満たすことにより、運転性能などディーゼル燃料が有すべき基本性能を確保できる。
本発明のバイオディーゼル燃料組成物は、上記組成物自体100%をそのまま使用することができるが、それをさらに石油系軽油に配合して使用してもよい。これによって、ディーゼル燃料としての酸化安定性をさらに高める効果が得られる。
この場合、石油系軽油に対するバイオディーゼル燃料組成物の配合割合は、目的に応じて任意であるが、配合済みのバイオディーゼル燃料組成物基準で0.5〜50容量%が好ましく、1〜30容量%がより好ましい。
(1)ヨウ素価
JIS K 0070に準拠して測定した。
(2)酸化安定度試験
JIS K 2287「ガソリン酸化安定性試験法(誘導期間)」に準拠して測定した。
第1表に示す組成を有する動植物油脂肪酸のメチルエステル(FAME)と2−ブタノール(2−BuOH)、イソブタノール(i−BuOH)を基材として用いて、第2表に示す割合で配合してバイオディーゼル燃料組成物を調製し、バイオディーゼル燃料組成物の性状、性能を測定した。その結果を第2表に示した。
なお、RMEは菜種油から得られた脂肪酸のメチルエステル、PMEはパーム油から得られた脂肪酸のメチルエステル、CMEはココナッツ油から得られた脂肪酸のメチルエステルである。
例えば、ヨウ素価が51.6g/100gのFAME(PME)に2−ブタノール若しくはイソブタノールを配合した本発明のバイオディーゼル燃料組成物は、2−ブタノール若しくはイソブタノールを配合することによって酸化安定度が500時間以上向上し、かつ燃料組成物の酸化安定度も極めて高い(実施例1、2と比較例1との対比)。
これに対し、ヨウ素価が65g/100gを超えるFAME(RME)に2−ブタノール若しくはイソブタノールを配合することによる酸化安定度の向上は殆ど認められず、組成物の酸化安定度も極めて低い(比較例2〜4)。
Claims (6)
- (A)動植物油から得られる脂肪酸のアルキルエステルを主成分とするヨウ素価が65g/100g以下のバイオディーゼル燃料基材と、(B)2−ブチルアルコール若しくはイソブチルアルコールを含有することを特徴とするバイオディーゼル燃料組成物。
- 前記(A)の動植物油から得られる脂肪酸のアルキルエステルが、炭素数が4〜25の脂肪酸メチルエステルである請求項1に記載のバイオディーゼル燃料組成物。
- 前記(B)の2−ブチルアルコール及びイソブチルアルコールがバイオマス由来のものである請求項1又は2に記載のバイオディーゼル燃料組成物。
- 前記(B)の2−ブチルアルコール若しくはイソブチルアルコールの含有量が、組成物全量基準で1〜50容量%である請求項1〜3のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料組成物。
- 前記(A)のバイオディーゼル燃料基材のヨウ素価が60g/100g以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料組成物を石油系軽油に配合してなるバイオディーゼル燃料組成物。
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