JP2011020883A - 軽量気泡コンクリート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】珪酸質原料である珪石の鉱床枯渇に対応し、珪酸質原料の代替えとして銅スラグ細骨材に置換することにより、天然資源の使用を削減させたALCを提供する。
【解決手段】珪酸質原料の30%以下を銅スラグ細骨材で置換する。銅スラグ細骨材の含有量が3.9〜15.8%のALCとする。少なくても珪砂70%以上と銅スラグ30%以下とを含む細骨材主原料に、生石灰、普通ポルトランドセメント、石膏、繰り返し原料を配合する。
【選択図】なし

Description

本発明は建築物の壁、屋根、床などに使用される軽量気泡コンクリート(以下、ALCと言う。)に関するものである。
ALCは内部に気泡と細孔を含む絶乾かさ比重が0.5程度と非常に軽量でありながら、強度も比較的高いという優れた性質を持つ。この強度を発現させているのが、オートクレーブによる高温高圧水蒸気養生であり、この養生過程において珪石等の高品位な珪酸質原料とセメントや生石灰等の石灰質原料から、珪酸カルシウム水和物のトバモライトが生成する。
トバモライトは化学式では5CaO・6SiO・5HOであり、Ca/Siモル比の理論値は5/6=0.83である。ALCの工業生産では、オートクレーブ養生に要する時間を短縮する為に珪酸質原料は該理論値よりも大きめに設定されることがほとんどであり、Ca/Siモル比は0.3〜0.7程度の範囲である。この理由は、トバモライトの生成に寄与しなかった未反応分の珪酸質原料は、ALCマトリックス中にそのまま残存し、特に骨材効果によって強度物性面に寄与するからである。従って、骨材として残る珪酸質原料は高品位なものである必要はない。
一方、銅スラグは銅精錬に伴って生成されるFeO、SiO、CaOを主体とする溶融スラグを、水冷却により水砕破砕物とする方法で生産されている。強度が高く、物理的・化学的に安定で、主な用途はセメント原料、土木工事用原料(中詰め材など)、サンドブラスト用研磨剤、コンクリート用細骨材である。
近年の天然資源の減少はその速度を増すばかりで、ALC製造に最適な鉱床も枯渇してきている。環境破壊の問題も資源枯渇の顕在化に拍車をかけており、採取規制が除々に広がりをみせるとともに、再生原料、産業副産物の使用も進んできている(例えば、非特許文献1,非特許文献2、非特許文献3等参照。)。
現在、銅スラグをコンクリート用骨材として利用する場合の規格は、JIS A5011−3「コンクリート用骨材 第3部 銅スラグ」(1997年)に規定されている。しかし、ALC原料としての使用例はなく、最適な銅スラグの配合を規定したALCの製造方法については提案されていない。
本発明者らはALC製造において珪酸質原料を性状の安定した銅スラグ骨材へと置換して天然資源の使用の削減を図ることを試みた。
銅スラグ細骨材を用いたコンクリートの施工指針、土木学会、1998年 コンクリート技士研修テキスト、日本コンクリート工学協会、2008年 コンクリート細骨材向け銅スラグの評価、2008年
近年、ALC製造に必要な珪酸質原料である珪石の鉱床が枯渇してきている。本発明者らは、珪酸質原料の配合に銅スラグ骨材を置換することにより天然資源の使用を削減したALCを提供することを目的とした。
本発明は、ALC製造において珪酸質原料の配合の内、30%以下を銅スラグ骨材で置換したものである。
すなわち本発明のALCは、前記銅スラグ骨材の含有量が3.9〜15.8%のALCである。
本発明のALCの製造方法は、少なくとも珪砂70%以上と銅スラグ30%以下とを含む細骨主原料に、生石灰、普通ポルトランドセメント、石膏、繰り返し原料を配合し、これらの固体原料合計の100重量部に対して、水60重量部とアルミニウム粉末及び界面活性剤を加えて混練してスラリーを作成し硬化させた後、オートクレーブ中で高温高圧水蒸気養生を施すALCの製造方法である。
本発明はALCに関するものであり、珪酸質原料の30%以下を銅スラグ骨材で置換することにより、天然資源の使用を削減し、産業副産物を有効利用した環境問題に対応したALCを得ることが出来る。
ALCコンクリートの製造に際しては、通常珪石砂、生石灰、普通ポルトランドセメント、石膏、繰り返し原料をCa/Siモル比が0.3〜0.7程度になるように混合する。これらの固体原料合計の100重量部に対して、水60重量部と少量のアルミニウム粉末及び界面活性剤を加えて混練してスラリーを作成する。該スラリーがアルミニウム粉末との反応により気泡を生成して膨張し、石灰質原料の水和により硬化する。その後、180℃、10気圧のオートクレーブにおいて6時間程度高温高圧水蒸気養生を施してALCコンクリートを得る。
ここで珪石砂に代えて銅スラグが使用できれば、天然資源の大幅な節約が期待できる。
コンクリート用骨材としては、JIS A 5005(1993)に「コンクリート用砕石及び砕砂」として規定されている。ここでは原石としては材質として「表土、及び不純物を除去したもので、強硬で耐久性のあるもの」と規定し、アルカリシリカ反応性と粒径によって区分している。粒径は5mm以下のものを砕砂とし、粒径5mmを越え80mm以下のものを砕石としている。
また、一般に珪砂とはSiO成分を90%以上含むものを指すが、近年川砂等の天然資源は少なくなり、殆どが岩石を砕いた砕砂である。そこで本発明では、珪砂を含めた砕砂を「珪酸質原料」と呼ぶこととする。
本発明で使用する銅スラグとは、銅を精錬する工程において銅精鉱中の鉄分と石灰石、珪石等が結合してなるもので、水によって水砕および冷却し、粒状に固化させたものをいう。銅スラグ粒体は、(1)鉄分が多いため、天然砂と比べて密度が高い、(2)硬度が非常に大きい、(3)成分の溶出がほとんどなく、化学的に安定している、(4)固結することがない等の特性を有するため、コンクリートにおける細骨材の一部として好適に用いられる。
銅スラグの組成は、例えば、酸化鉄(FeO)45〜55重量%、珪酸(SiO)30〜36重量%、酸化カルシウム(CaO)2〜7重量%、酸化アルミニウム(Al)3〜6重量%等から構成される。前記トバモライトの構成成分の珪酸(SiO)と酸化カルシウム(CaO)を含んでおり、珪石砂の代用として利用できると推定できる。
銅スラグ粒体の粒度分布の一例を示すと、粒度5.0mm以上のものが1重量%、粒度2.5mm以上5.0mm未満のものが10重量%、粒度1.2mm以上2.5mm未満のものが42重量%、粒度0.6mm以上1.2mm未満のものが37重量%、粒度0.3mm以上0.6mm未満のものが7重量%、粒度0.15mm以上0.3mm未満のものが3重量%、粒度0.15mm未満のものが0重量%である。このように、銅スラグ粒体の粒度分布は、通常、95重量%以上が0.15〜5.0mmの範囲内に収まり、かつ、0.6〜2.3mmの粒度の割合が高い(80重量%以上)という特徴がある。JIS A 5005(1993)に規定する「砕砂」の粒度と、JIS A 5011−3(1997)に規定する「銅スラグ細骨材」の粒度は、いずれも5mm以下である。銅スラグ粒体は粒度の点からもコンクリート用砕砂のJIS規格を満たしている。また、銅スラグ粒体の粗粒率(FM)は、4.0〜4.7程度である。
なお、本明細書中において「粒度」とは、粒体の最大寸法をいい、具体的には種々の目開き寸法を有する篩を通過させることによって定められる。
銅スラグ以外の主要原料である、珪石砂、生石灰、普通ポルトランドセメント、石膏、繰り返し原料等は、通常使用しているものが同様に使用できる。
銅スラグをALCに利用する場合に問題となるのは、得られるALCの発泡状態と強度である。そこで銅スラグ粒体の配合量について、次に説明する特定の粒度を有する砂の配合割合を変えてALCを作成して調査した。
以下、実施例及び比較例により詳細に説明する。
[実施例・比較例]
主骨材原料の珪石砂に変えて、10、20、25、30、35、40重量%の珪石砂を銅スラグ細骨材でそれぞれ置換した主骨材原料を準備した。すなわち、珪石砂と銅スラグ細骨材を表1に示すように混合して主骨材原料とした。
配合CaO/SiOモル比は、0.44、0.48、0.53、0.57、0.60、0.64、0.68となるように調整した。ここで、 CaO/SiOモル比はALCを構成する原料である珪石・セメント・生石灰などに含まれるCaOとSiOの割合を計算している。但し、銅スラグを置換することで珪石の増減が発生し、CaO/SiOが変化するが、銅スラグ自体の化学成分はCaO/SiOの算出に関与していない。
Figure 2011020883
表1に示す主骨材原料1370gに、生石灰120g、普通ポルトランドセメント800g、石膏180g、繰り返し原料1000gを配合し、3470gの固体原料を調整した。この固体原料に発泡剤としてのアルミニウム粉末2.55gと気泡安定剤としての面活性剤1gを添加し、水2250g(水比=0.758)を加えて混練してスラリーを作成した。
上記スラリーがアルミニウム粉末との反応により気泡を生成して膨張し、石灰質原料の水和により硬化した後、180℃、10気圧のオートクレーブ中で6時間高温高圧水蒸気養生を施した。このような製作工程から、珪酸質原料を銅スラグ細骨材で置換したALCブロック(No.2〜No.7)と、比較の為に銅スラグ細骨材と置換していないALCブロック(No.1)を作製した。
アルミニウム粉の発泡方向(鉛直方向)の中央部から、JIS A 1132(コンクリート強度試験用供試体の作り方)に従い円柱状の立方体に成形してJIS A 5416に準じて圧縮強度を測定した。また、発泡状態を比較するため、ALCブロックのかさ比重を測定した。
圧縮強度については、珪砂原料を銅スラグ細骨材と置換していない基準配合のALC圧縮強度(No.1)を100とし、銅スラグ置換配合の圧縮強度(No.2〜No.7)の数値を比較補正して圧縮強度比を求めた。すなわち、

圧縮強度比=(置換配合の圧縮強度/基準配合の圧縮強度)×100

である。
補正後の数値、すなわち基準配合に対して強度が90%以上あれば銅スラグ細骨材と置換したALCは強度上問題はなく、使用が可能と判断した。
これらの測定結果を表2に示す。
Figure 2011020883
表2に示すとおり、基準配合の圧縮強度を100とした場合の置換配合の圧縮強度比は、10%置換が100、20%置換が102、25%置換が97、30%置換が94、35%置換が88、40%置換が85であった。
また、かさ比重はいずれのALCブロックとも0、45〜0、55g/cm以内で、十分発泡していることが判明した。
よって、珪酸質原料の30%まで銅スラグ細骨材で置換しても基準配合と同等の物性であることが判明した。珪酸質原料の30%以下を銅スラグ細骨材で置換したALCの製造は可能と判断した。
本発明は、建築物の壁や屋根、床などに使用されるALCに関するものであり、天然資源使用の削減を可能とするALCを提供するものである。
本発明によれば省資源化に寄与する点がまことに大である。

Claims (3)

  1. 珪酸質原料の30%以下を銅スラグ細骨材で置換してなることを特徴とする軽量気泡コンクリート(ALC)。
  2. 前記銅スラグ細骨材の含有量が3.9〜15.8%であることを特徴とする請求項1に記載の軽量気泡コンクリート(ALC)。
  3. 少なくとも珪砂70%以上と銅スラグ30%以下とを含む細骨主原料に、生石灰、普通ポルトランドセメント、石膏、繰り返し原料を配合し、これらの固体原料合計の100重量部に対して、水60重量部とアルミニウム粉末及び界面活性剤を加えて混練してスラリーを作成し硬化させた後、オートクレーブ中で高温高圧水蒸気養生を施すことを特徴とする軽量気泡コンクリート(ALC)の製造方法。
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