図1は、本発明の実施の形態に係る容量アレイ回路100を搭載したスイッチトキャパシタ回路300の構成図である。スイッチトキャパシタ回路300は、容量アレイ回路100および差動増幅回路200を備える。
容量アレイ回路100は、複数の差動入力信号を受け、それらを合成して一つの差動出力信号を生成する。より具体的には、容量アレイ回路100は、複数の差動入力チャネルから入力される複数の差動入力信号を容量結合により合成して、一つの差動出力信号を生成し、それを一つの差動出力チャネルから出力する。
容量アレイ回路100は、差動構成であり、正側の容量アレイ部および負側の容量アレイ部を備える。正側の容量アレイ部は、複数の差動入力信号の、正側の複数の入力信号を受け、それらを合成して差動出力信号の正側の出力信号を生成する。負側の容量アレイ部は、複数の差動入力信号の、負側の複数の入力信号を受け、それらを合成して差動出力信号の負側の出力信号を生成する。
正側の容量アレイ部は、複数の正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および少なくとも一つの正側の調整容量Cxpを含む。複数の正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)は、それらの入力側端子で、正側の複数の入力信号をそれぞれ並列に受ける。正側の調整容量Cxpは、差動出力信号のコモンモード電圧を調整するための正側の電圧(以下、正側のコモンモード調整電圧と表記する)を受ける。複数の正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および正側の調整容量Cxpのそれぞれの出力端子が一つに結合されている。
負側の容量アレイ部は、複数の負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)および少なくとも一つの負側の調整容量Cxmを含む。複数の負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)は、それらの入力側端子で、負側の複数の入力信号をそれぞれ並列に受ける。負側の調整容量Cxmは、差動出力信号のコモンモード電圧を調整するための負側の電圧(以下、負側のコモンモード調整電圧と表記する)を受ける。複数の負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)および負側の調整容量Cxmのそれぞれの出力端子が一つに結合されている。
正側の入力容量Cs1pの入力側端子には、正側の入力アナログ信号スイッチSW1Vp、高電位側基準電圧スイッチSW1Tp、および低電位側基準電圧スイッチSW1Bpが並列に接続される。正側の入力アナログ信号スイッチSW1Vpは、正側の入力アナログ信号Vinpを入力容量Cs1pに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。高電位側基準電圧スイッチSW1Tpは、高電位側基準電圧VRTを入力容量Cs1pに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。低電位側基準電圧スイッチSW1Bpは、低電位側基準電圧VRBを入力容量Cs1pに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。
正側の容量アレイ部を構成するすべての入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)が、上述した構成と同様の構成である。また、負側の容量アレイ部を構成するすべての入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)についても、負側の入力アナログ信号スイッチSW1Vmに、負側の入力アナログ信号Vinmが入力される点を除き、上述した構成と同様の構成である。
正側の調整容量Cxpの入力側端子には、正側の入力アナログ信号スイッチSWaVpおよび正側のコモンモード調整電圧スイッチSWaxpが並列に接続される。正側の入力アナログ信号スイッチSWaVpは、正側の入力アナログ信号Vinpを正側の調整容量Cxpに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。正側のコモンモード調整電圧スイッチSWaxpは、正側のコモンモード調整電圧Vxpを正側の調整容量Cxpに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。
ここで、正側のコモンモード調整電圧Vxpおよび負側のコモンモード調整電圧Vxmは、当該容量アレイ回路100より前段または後段に設けられた差動増幅回路の差動出力信号の差動値を一定に保ったまま、そのコモンモード電圧のずれを補償するための電圧である。その詳細および具体例は後述する。
負側の調整容量Cxmについても、負側の入力アナログ信号スイッチSWaVmに、負側の入力アナログ信号Vinmが入力される点、および負側のコモンモード調整電圧スイッチSWaxmに負側のコモンモード調整電圧Vxmが印加される点を除き、上述した構成と同様の構成である。
正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)のそれぞれに、高電位側基準電圧VRTおよび低電位側基準電圧VRBのいずれかが入力されるモードでは、容量アレイ回路100は、デジタル値をアナログ値に変換するデジタルアナログ変換器として機能する。
このモードでは、上述した複数の差動入力信号は、一つのデジタル値を受けて選択される、電圧の違う二種類の信号であり(ここでは、高電位側基準電圧VRTおよび低電位側基準電圧VRB)である。上述した差動出力信号は、二値信号が容量結合により合成された、一つのアナログ値を表現するアナログ信号である。当該複数の二値信号は、温度計コードで記述されたものである。また、上述した正側の容量アレイ部および負側の容量アレイ部に、第1差動入力信号(後述する、正側の入力アナログ信号Vinpおよび負側の入力アナログ信号Vinm)がサンプリングされた後、第2差動入力信号(一つのデジタル値を受けて選択される、電圧の違う二種類の信号)がリファレンス電圧として印加される。
温度計コードとは、値が大きくなるにつれて「1」の数を単調に増加させて表現するものである。たとえば、10進数の「2」は、温度計コードで「11」となり、バイナリコードで「10」となる。10進数の「3」は、温度計コードで「111」となり、バイナリコードで「11」となる。10進数の「4」は、温度計コードで「1111」となり、バイナリコードで「100」となる。
このように、温度計コードでは、扱う10進数の数値範囲の最大値と同じ値のビット数が必要となる。たとえば、3ビットのバイナリデータ(10進数で0〜7)を表現するには、温度計コードで7ビット必要となり、4ビットのバイナリデータ(10進数で0〜15)を表現するには15ビット必要となる。
一般的に、容量アレイ回路は2の乗数単位で設計、製造されることが多く、4個、8個、16個、32個の容量を備える容量アレイ回路が多い。この場合、バイナリコードで3ビットの温度計コードを扱うには、7個の容量が必要である。また、バイナリコードで4ビットの温度計コードを扱うには、15個の容量が必要である。したがって、8個、16個の容量を備える容量アレイ回路を用いる場合、1個の容量が余ることになる。本実施の形態では、その残りの容量を調整容量Cxとして使用する。なお、当該容量の個数はシングル構成の場合の数であり、差動構成の場合、その倍の個数となる。
差動増幅回路200は、正側の増幅回路と負側の増幅回路を組み合わせた擬似的差動増幅回路で構成される。正側の増幅回路および負側の増幅回路は、それぞれコンパレータ型増幅回路で構成される。ここで、コンパレータ型増幅回路とは、コンパレータの出力により定電流源から出力端子に電流を流す時間を制御して、その出力電圧を決定するタイプの増幅回路である。一般的な、仮想接地するタイプの増幅回路より消費電力が小さく、近年、注目を浴びている。
正側の増幅回路は、正側のコンパレータCPp、正側の帰還容量Cfpおよび正側の電流源ISpを含む。正側のコンパレータCPpは、容量アレイ回路100の正側の出力信号を受ける。正側の帰還容量Cfpは、当該差動増幅回路200の正側の入力端子と正側の出力端子とを結ぶ経路上に設けられる。正側の電流源ISpは、所定の第1固定電圧源(ここでは、電源電圧)と当該差動増幅回路200の正側の出力端子との間に設けられ、正側のコンパレータCPpの出力信号が変化するまで、電流を当該出力端子に供給する。
負側の増幅回路は、負側のコンパレータCPm、負側の帰還容量Cfmおよび負側の電流源ISmを含む。負側のコンパレータCPmは、容量アレイ回路100の負側の出力信号を受ける。負側の帰還容量Cfmは、当該差動増幅回路200の負側の入力端子と負側の出力端子とを結ぶ経路上に設けられる。負側の電流源ISmは、所定の第2固定電圧源(ここでは、グラウンド電圧)と当該差動増幅回路200の負側の出力端子との間に設けられ、負側のコンパレータCPmの出力信号が変化するまで、電流を当該出力端子に供給する。
図2は、差動増幅回路200の内部構成の一例を示す図である。なお、図面を簡略化するために、複数の正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および正側の調整容量Cxpの総称として、一つの正側の入力容量Cspを描いている。また、複数の正側の入力アナログ信号スイッチ(SW1Vp、SW2Vp、・・・、SWaVp)の総称として、一つの正側の入力アナログ信号スイッチSWVpを描いている。また、複数の正側の高電位側基準電圧スイッチ(SW1Tp、SW2Tp、・・・)、複数の正側の低電位側基準電圧スイッチ(SW1Bp、SW2Bp、・・・)および正側のコモンモード調整電圧スイッチSWaxpの総称として、一つの正側のリファレンス電圧スイッチSWrefpを描いている。なお、これらの前提は、負側も同様である。
当該正側のリファレンス電圧スイッチSWrefpに入力される正側のリファレンス電圧Vrefpは、上述した、デジタル値を表現する複数の二値信号が一つのアナログ値を表現するアナログ信号に変換された後の、正側の出力信号に相当する。負側も同様である。
図1の正側のコンパレータCPpは、チョッパ型のコンパレータであり、正側の第1インバータINV1p、正側の第2インバータINV2p、正側の第3インバータINV3p、正側の第4インバータINV4p、および正側のオートゼロスイッチMsazpを含む。正側の第1インバータINV1p、正側の第2インバータINV2p、正側の第3インバータINV3pおよび正側の第4インバータINV4pは、縦列接続される。
正側の第1インバータINV1pは、PチャンネルトランジスタとNチャンネルトランジスタを含む、プッシュプル構成の一般的なインバータである。より具体的には、当該Pチャンネルトランジスタは、そのソース端子が第1固定電圧源(ここでは電源電圧)に接続され、そのゲート端子が当該第1インバータINV1pの入力端子に接続され、そのドレイン端子が当該Nチャンネルトランジスタのドレイン端子と接続される。当該Nチャンネルトランジスタは、そのソース端子が第2固定電圧源(ここではグラウンド電圧)に接続され、そのゲート端子が当該第1インバータINV1pの入力端子に接続され、そのドレイン端子が当該Pチャンネルトランジスタのドレイン端子と接続される。
正側の第2インバータINV2p、正側の第3インバータINV3pおよび正側の第4インバータINV4pの構成も、正側の第1インバータINV1pの構成と同様である。
正側のオートゼロスイッチMsazpは、正側の第1インバータINV1pの入力端子と出力端子とを結ぶ経路上に設けられる。ここでは、正側のオートゼロスイッチMsazpは、Pチャンネルトランジスタで構成される。そのゲート端子には、後述するA信号が入力される。当該Pチャンネルトランジスタをオンすることにより、正側の第1インバータINV1pの入力端子と出力端子とを短絡させることができる。
これにより、正側の入力容量Cspにおいて正側の入力アナログ信号Vinpをサンプリングする際、その入力容量Cspの、サンプリング側の端子と反対側の端子に、正側の第1インバータINV1pの出力端子電圧を印加することが可能となる。増幅開始前の、当該出力端子電圧は、電源電圧とグラウンド電圧との間の中間電圧になるが、当該インバータ内のPチャンネルトランジスタとNチャンネルトランジスタの素子バラツキなどにより、その出力端子電圧にオフセット成分が含まれることがある。
正側の入力容量Cspが、そのオフセット成分の影響を加味して正側の入力アナログ信号Vinpをサンプリングすれば、それに後続する、正側の第1インバータINV1pの処理において、自動的にそのオフセット成分がキャンセルされることになる。図1の負側のコンパレータCPmも、扱う電圧が負側の電圧である点を除き、上述した正側のコンパレータCPpと同様の構成であるため、その説明を省略する。なお、本明細書では、正側の第1インバータINV1pの入力端子と、正側の第1インバータINV1pの出力端子とが電気的に接続された状態をオートゼロ状態という。負側の第1インバータINV1mについても同様である。
図1の正側の電流源ISpは、正側の定電流源Mispおよび正側の充電スイッチMscpを含む。正側の定電流源Mispおよび正側の充電スイッチMscpは、第1固定電圧源(ここでは電源電圧)と、差動増幅回路200の正側の出力端子との間に直列に接続される。
正側の定電流源Mispおよび正側の充電スイッチMscpは、それぞれPチャンネルトランジスタで構成される。正側の定電流源Mispを構成するPチャンネルトランジスタは、そのソース端子が第1固定電圧源(ここでは電源電圧)に接続され、そのドレイン端子が正側の充電スイッチMscpに接続され、そのゲート端子に所定の第1バイアス電圧Vb1が印加される。
正側の充電スイッチMscpを構成するPチャンネルトランジスタは、そのソース端子が正側の定電流源Mispに接続され、そのドレイン端子が差動増幅回路200の正側の出力端子に接続され、そのゲート端子が正側のコンパレータCPpの出力端子に接続される。
図1の負側の電流源ISmは、負側の定電流源Mismおよび負側の充電スイッチMscmを含む。負側の定電流源Mismおよび負側の充電スイッチMscmは、第2固定電圧源(ここではグラウンド電圧)と、差動増幅回路200の負側の出力端子との間に直列に接続される。
負側の定電流源Mismおよび負側の充電スイッチMscmは、それぞれNチャンネルトランジスタで構成される。負側の定電流源Mismを構成するNチャンネルトランジスタは、そのソース端子が第2固定電圧源(ここでは電源電圧)に接続され、そのドレイン端子が負側の充電スイッチMscmに接続され、そのゲート端子に所定の第2バイアス電圧Vb2が印加される。
負側の充電スイッチMscmを構成するNチャンネルトランジスタは、そのソース端子が負側の定電流源Mismに接続され、そのドレイン端子が差動増幅回路200の負側の出力端子に接続され、そのゲート端子が負側のコンパレータCPmの出力端子に接続される。
さらに、差動増幅回路200の正側の出力端子と、中間基準電圧VRB2との間に、正側の中間基準電位スイッチSWmpが接続される。正側の中間基準電位スイッチSWmpは、NチャンネルトランジスタとPチャンネルトランジスタを組み合わせた相補スイッチで構成される。当該Nチャンネルトランジスタのゲート端子には、後述するB信号が入力され、当該Pチャンネルトランジスタのゲート端子には、後述する反転B信号が入力される。なお、中間基準電圧VRB2は、上述した高電位側基準電圧VRTと低電位側基準電圧VRBとの中間電圧に設定している。
同様に、差動増幅回路200の負側の出力端子と、中間基準電圧VRB2との間に、負側の中間基準電位スイッチSWmmが接続される。負側の中間基準電位スイッチSWmmも、NチャンネルトランジスタとPチャンネルトランジスタを組み合わせた相補スイッチで構成される。当該Nチャンネルトランジスタのゲート端子には、後述するB信号が入力され、当該Pチャンネルトランジスタのゲート端子には、後述する反転B信号が入力される。
さらに、差動増幅回路200の正側の出力端子と、第2固定電圧源(ここではグラウンド電圧)との間に、正側のリセットスイッチMsrpが接続される。正側のリセットスイッチMsrpは、Nチャンネルトランジスタで構成される。当該Nチャンネルトランジスタのゲート端子には、後述するC信号が入力される。
同様に、差動増幅回路200の負側の出力端子と、第1固定電圧源(ここでは電源電圧)との間に、負側のリセットスイッチMsrmが接続される。負側のリセットスイッチMsrmは、Pチャンネルトランジスタで構成される。当該Pチャンネルトランジスタのゲート端子には、後述する反転C信号が入力される。
図3は、図2に示した差動増幅回路200の動作を示すタイミングチャートである。図3に示すように、A信号およびB信号は、デューティ比が1/2のクロック信号である。A信号とB信号とでは位相が逆である。C信号はデューティ比が非常に小さいクロック信号である。
A信号がローレベル、B信号がハイレベル、およびC信号がローレベルの第1期間では、正側の入力アナログ信号スイッチSWVpおよび負側の入力アナログ信号スイッチSWVmがオン、ならびに正側のリファレンス電圧スイッチSWrefpおよび負側のリファレンス電圧スイッチSWrefmがオフに制御される。すなわち、当該第1期間では正側の入力容量Cspに正側の入力アナログ信号Vinpが入力され、負側の入力容量Csmに負側の入力アナログ信号Vinmが入力される。
当該第1期間において、A信号がローレベルであるため、正側のオートゼロスイッチMsazpおよび負側のオートゼロスイッチMsazmがオンに制御される。すなわち、スイッチトキャパシタ回路300がオートゼロ状態に制御される。また、B信号がハイレベルおよびC信号がローレベルであるため、正側の中間基準電位スイッチSWmpおよび負側の中間基準電位スイッチSWmmがオン、ならびに正側のリセットスイッチMsrpおよび負側のリセットスイッチMsrmがオフに制御される。したがって、差動増幅回路200の正側の出力端子電圧および負側の出力端子電圧は、両方とも中間基準電圧VRB2となる。
つぎに、A信号がハイレベル、B信号がローレベル、およびC信号がハイレベルの第2期間に遷移する。当該第2期間では、正側の入力アナログ信号スイッチSWVpおよび負側の入力アナログ信号スイッチSWVmがオフ、ならびに正側のリファレンス電圧スイッチSWrefpおよび負側のリファレンス電圧スイッチSWrefmがオンに制御される。すなわち、当該第2期間では正側の入力容量Cspに正側のリファレンス電圧Vrefpが入力され、負側の入力容量Csmに負側のリファレンス電圧Vrefmが入力される。なお、これらのスイッチが切り換わる直前の値が、入力アナログ信号Vinのサンプリング値となる。
当該第2期間において、A信号がハイレベルであるため、正側のオートゼロスイッチMsazpおよび負側のオートゼロスイッチMsazmがオフに制御され、スイッチトキャパシタ回路300のオートゼロ状態が解除される。また、B信号がローレベルおよびC信号がハイレベルであるため、正側の中間基準電位スイッチSWmpおよび負側の中間基準電位スイッチSWmmがオフ、ならびに正側のリセットスイッチMsrpおよび負側のリセットスイッチMsrmがオンに制御される。したがって、差動増幅回路200の正側の出力端子電圧はグラウンド電圧となり、その負側の出力端子電圧は電源電圧となる。
つぎに、A信号がハイレベル、B信号がローレベル、およびC信号がローレベルの第3期間に遷移する。当該第3期間において、正側の入力アナログ信号スイッチSWVpおよび負側の入力アナログ信号スイッチSWVmがオフ、ならびに正側のリファレンス電圧スイッチSWrefpおよび負側のリファレンス電圧スイッチSWrefmがオンに制御された状態を維持する。
当該第3期間において、B信号がローレベルおよびC信号がローレベルであるため、正側の中間基準電位スイッチSWmpおよび負側の中間基準電位スイッチSWmmがオフ、ならびに正側のリセットスイッチMsrpおよび負側のリセットスイッチMsrmもオフに制御される。したがって、差動増幅回路200の正側の出力端子電圧は、正側の定電流源Mispにより充電される電荷に対応する電圧となり、その負側の出力端子電圧は、負側の定電流源Mismにより充電される電荷に対応する電圧となる。
上記第3期間から上記第1期間に遷移する直前の、差動増幅回路200の正側の出力端子電圧および負側の出力端子電圧が差動出力値となる。
なお、入力容量Cs(以下、正側の入力容量Cspと負側の入力容量Csmを総称して、単に入力容量Csと表記する)にサンプリングされた入力アナログ信号Vin(以下、正側の入力アナログ信号Vinpと負側の入力アナログ信号Vinmを総称して、単に入力アナログ信号Vinと表記する)の値、および差動増幅回路200の増幅期間に入力容量Csに入力されるリファレンス電圧Vref(以下、正側のリファレンス電圧Vrefpと負側のリファレンス電圧Vrefmを総称して、単にリファレンス電圧Vrefと表記する)の値により、差動増幅回路200の正側の出力端子電圧および負側の出力端子電圧の波形は異なってくる(図3参照)。
つぎに、実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300の全体動作を説明する。
図4は、実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300のオートゼロ状態の様子を示す図である。この状態では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および正側の調整容量Cxpのすべてに、正側の入力アナログ信号Vinpが入力され、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)および負側の調整容量Cxmのすべてに、負側の入力アナログ信号Vinmが入力される。
図5は、実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300の増幅状態の様子を示す図である。この状態では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)のそれぞれに、高電位側基準電圧VRTと低電位側基準電圧VRBのいずれかが入力され、正側の調整容量Cxpに正側のコモンモード調整電圧Vxpが入力される。また、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)のそれぞれに、高電位側基準電圧VRTと低電位側基準電圧VRBのいずれかが入力され、負側の調整容量Cxmに負側のコモンモード調整電圧Vxmが入力される。
なお、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)の、ある入力容量に高電位側基準電圧VRTが入力される場合、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)の、対応する入力容量には、低電位側基準電圧VRBが入力される。すなわち、正側と負側の対応する二つの容量には、反対の基準電圧が入力される。
以下、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)が15個、正側の調整容量Cxpが1個、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)が15個、負側の調整容量Cxmが1個の場合を例に、より具体的に説明する。なお、これらの容量の容量値はすべて等しいことを前提とする。
図4に示したオートゼロ状態において、正側の帰還容量Cfpおよび負側の帰還容量Cfpも含む、すべての容量に蓄積されている電荷Qは下記式1、式2により定義される。式1は正側の電荷Qpを示し、式2は負側の電荷Qmを示す。
なお、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)、正側の調整容量Cxp、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)、および負側の調整容量Cxmは、すべて容量値が同じであるため、数式を簡略する趣旨から、それらすべての容量の容量値をCsと表記する。また、正側の帰還容量Cfpおよび負側の帰還容量Cfpも、容量値が同じであるため、数式を簡略する趣旨から、それら容量の容量値をCfと表記する。
Qp=Cs*16*(Vinp−Vazp)+Cf*(VRB2−Vazp) ・・・(式1)
Qm=Cs*16*(Vinm−Vazm)+Cf*(VRB2−Vazm) ・・・(式2)
Vazpは、オートゼロ状態における、正側の第1インバータINV1pの入力端子電圧および出力端子電圧を示す。換言すれば、正側の第1インバータINV1pのオフセット成分が加味された、正側の第1インバータINV1pの出力反転電圧といえる。
Vazmは、オートゼロ状態における、負側の第1インバータINV1mの入力端子電圧および出力端子電圧を示す。換言すれば、負側の第1インバータINV1mのオフセット成分が加味された、負側の第1インバータINV1mの出力反転電圧といえる。
つぎに、図5に示した増幅状態において、正側のコンパレータCPpの入力端子電圧が正側のオートゼロ電圧Vazpに到達した時点の、正側のすべての容量に蓄積されている電荷Qpは下記式3により定義され、負側のコンパレータCPmの入力端子電圧が負側のオートゼロ電圧Vazmに到達した時点の、負側のすべての容量に蓄積されている電荷Qmは下記式4により定義される。
Qp=Cs*{n*VRT+(15−n)*VRB+Vxp−16*Vazp}+Cf*(Voutp−Vazp) ・・・(式3)
Qm=Cs*{n*VRB+(15−n)*VRT+Vxm−16*Vazm}+Cf*(Voutm−Vazm) ・・・(式4)
nは、正側の入力容量Cspにおいて、高電位側基準電圧VRTが入力される入力容量Cspの数を示す。
上述したように、差動増幅回路200の増幅開始直後に、差動増幅回路200の正側の出力端子がグラウンド電圧に、その負側の出力端子が電源電圧にリセットされる。これにより、差動増幅回路200の正側の入力端子電圧は、正側のオートゼロ電圧Vazpからグラウンド電圧方向に下降し、その負側の入力端子電圧は、負側のオートゼロ電圧Vazmから電源電圧方向に上昇する。
その後、差動増幅回路200の正側の入力端子電圧が正側のオートゼロ電圧Vazpに向けて上昇し、その負側の入力端子電圧が負側のオートゼロ電圧Vazmに向けて下降する。その正側の入力端子電圧が正側のオートゼロ電圧Vazpに到達すると、正側の第1インバータINV1pが反転する。その後、正側のオートゼロスイッチMsazpがオフすると、差動増幅回路200の正側の出力端子への充電が停止する。一方、差動増幅回路200の負側の入力端子電圧が負側のオートゼロ電圧Vazmに到達すると、負側の第1インバータINV1mが反転する。その後、負側のオートゼロスイッチMsazmがオフすると、差動増幅回路200の負側の出力端子への充電が停止する。上記式3、式4は、この状態における、すべての容量に蓄積されている電荷を示している。
オートゼロ状態とコンパレータCPの入力端子電圧がオートゼロ電圧Vazに到達した状態とにおいて電荷保存則が成り立つため、上記式1〜式4により、差動増幅回路200の出力電圧(Voup−Voutm)は、下記式5により定義される。
Voup−Voutm=Cs/Cf*{16*(Vinp−Vinm)+VRT*(15−2n)+VRB*(2n−15)+(Vxp−Vxm)} ・・・(式5)
以上の処理により、スイッチトキャパシタ回路300は、入力アナログ信号Vinと、リファレンス電圧Vrefとの差分を増幅することができる。すなわち、増幅期間に、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)に、所定の固定電圧(たとえば、グラウンド電圧)ではなく、リファレンス電圧Vrefを印加することにより、そのリファレンス電圧Vrefを入力アナログ信号Vinから減算することができる。
なお、差動増幅回路200の正側の出力電圧Voutpは、正側の第1インバータINV1pの入力電圧が正側のオートゼロ電圧Vazpに到達してから、正側の充電スイッチMscpがオフするまで上昇し続ける。この正側のオートゼロ電圧Vazpに到達してから正側の充電スイッチMscpがオフするまでに上昇した電圧分が正側のオフセット電圧となる。負側も基本的に同様である。負側のオートゼロ電圧Vazmに到達してから負側の充電スイッチMscmがオフするまでに下降した電圧分が負側のオフセット電圧となる。
図6は、実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300の動作を示すタイミングチャートである。正側のコンパレータCPpおよび負側のコンパレータCPmのオートゼロ期間では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および正側の調整容量Cxpに、正側の入力アナログ信号Vinpが入力され、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)および負側の調整容量Cxmに、負側の入力アナログ信号Vinmが入力される。なお、図6では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)を総称して、Csと描いている。また、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmを総称して、Cxと描いている。また、正側のコンパレータCPpおよび負側のコンパレータCPmを総称して、CPと描いている。
当該オートゼロ期間終了時点の、正側の入力アナログ信号Vinpおよび負側の入力アナログ信号Vinmがサンプリング値となる。正側のコンパレータCPpおよび負側のコンパレータCPmの増幅期間では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)のそれぞれに、高電位側基準電圧VRTまたは低電位側基準電圧VRBのいずれかが入力される。また、正側の調整容量Cxpに正側のコモンモード調整電圧Vxpが入力され、負側の調整容量Cxmに負側のコモンモード調整電圧Vxmが入力される。
図7は、コモンモード調整電圧Vxのレベルを説明するための図である。本実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300では、入力アナログ信号Vinと、リファレンス電圧Vrefのコモンモード電圧Vcmを合わせる必要がある。
リファレンス電圧のコモンモード電圧Vcmは、下記式6により定義される。
Vcm={(N−1)*VRT+(N−1)*VRB+Vxp+Vxm}/(2*N) ・・・(式6)
Nは、正側の入力容量Cspおよび正側の調整容量Cxpの合計数を示す。負側のそれらの合計数も同じ値となる。
正側のリファレンス電圧Vrefp、負側のリファレンス電圧Vrefm、およびリファレンス電圧Vref(より厳密には、リファレンス電圧の差動値Vref)は、下記式7〜式9により定義される。
Vrefp={n*VRT+(N−n−1)*VRB+Vxp}/N ・・・(式7)
Vrefm={n*VRB+(N−n−1)*VRT+Vxm}/N ・・・(式8)
Vref={2n−N+1)*VRT−(2n−N+1)*VRB+Vxp−Vxm}/N ・・・(式9)
nは、正側の入力容量Cspにおいて、高電位側基準電圧VRTが入力される入力容量Cspの数を示す。
まず、正側のコモンモード調整電圧Vxpおよび負側のコモンモード調整電圧Vxmがともに、電圧VR3(図7参照)のケースについて考える(ケース1)。このケースでは、リファレンス電圧のコモンモード電圧Vcm、およびリファレンス電圧の差動値Vrefは、下記式10、式11により定義される。
Vcm={(N−1)*VRT+(N−1)*VRB+2*VR3}/(2*N) ・・・(式10)
Vref={2n−N+1)*VRT−(2n−N+1)*VRB+0}/N ・・・(式11)
つぎに、正側のコモンモード調整電圧Vxpおよび負側のコモンモード調整電圧Vxmがともに、電圧VR2(図7参照)のケースについて考える(ケース2)。このケースでは、リファレンス電圧のコモンモード電圧Vcm、およびリファレンス電圧の差動値Vrefは、下記式12、式13により定義される。
Vcm={(N−1)*VRT+(N−1)*VRB+2*VR2}/(2*N) ・・・(式12)
Vref={2n−N+1)*VRT−(2n−N+1)*VRB+0}/N ・・・(式13)
ケース1とケース2を比較すると、リファレンス電圧の差動値Vrefは同じで、リファレンス電圧のコモンモード電圧Vcmが異なることが分かる。
つぎに、正側のコモンモード調整電圧Vxpが電圧VR2(図7参照)、および負側のコモンモード調整電圧Vxmが電圧VR4(図7参照)のケースについて考える(ケース3)。このケースでは、リファレンス電圧のコモンモード電圧Vcm、およびリファレンス電圧の差動値Vrefは、下記式14、式15により定義される。
Vcm={(N−1)*VRT+(N−1)*VRB+2*VR3}/(2*N) ・・・(式14)
Vref={2n−N+1)*VRT−(2n−N+1)*VRB+2*VR}/N ・・・(式15)
つぎに、正側のコモンモード調整電圧Vxpが電圧VR1(図7参照)、および負側のコモンモード調整電圧Vxmが電圧VR3(図7参照)のケースについて考える(ケース4)。このケースでは、リファレンス電圧のコモンモード電圧Vcm、およびリファレンス電圧の差動値Vrefは、下記式16、式17により定義される。
Vcm={(N−1)*VRT+(N−1)*VRB+2*VR2}/(2*N) ・・・(式16)
Vref={2n−N+1)*VRT−(2n−N+1)*VRB+2*VR}/N ・・・(式17)
ケース3とケース4を比較すると、リファレンス電圧の差動値Vrefは同じで、リファレンス電圧のコモンモード電圧Vcmが異なることが分かる。
このように、リファレンス電圧の差動値Vrefを固定したまま、リファレンス電圧のコモンモード電圧Vcmを変化させることが可能な、正側のコモンモード調整電圧Vxpおよび負側のコモンモード調整電圧Vxmの組み合わせが存在することが分かる。
図8は、コンパレータ型増幅回路の出力電位特性を説明するための図である。疑似差動型のコンパレータ型増幅回路は、増幅開始後、コモンモード電圧が確定するまでに、ある程度の時間がかかるという特質がある。上述したように、コンパレータ型増幅回路の出力電圧は、単調上昇または単調下降する。図8では、負側の出力端子電圧のセトリングが、正側の出力端子電圧のセトリングより遅れている例を示している。図8では、負側の出力端子電圧がセトリングした時点Tsで、コモンモード電圧が確定する。
図9は、正側のコモンモード調整電圧Vxpおよび負側のコモンモード調整電圧Vxmを生成するための制御回路400を説明するための図である。図9では、フィードフォワード制御について説明する。容量アレイ回路100の前段に差動増幅回路200aが接続される。差動増幅回路200aの、正側の出力電圧Voutpおよび負側の出力電圧Voutmは、容量アレイ回路100に出力されるとともに、制御回路400にも出力される。
制御回路400は、差動増幅回路200aの差動出力信号を検出して、その差動出力信号のコモンモード電圧が理想値に近づくよう制御する。そして、制御回路400は、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmに、検出したコモンモード電圧と理想値とのずれを補償するための電圧を印加するよう制御する。
より具体的には、制御回路400は、差動増幅回路200aの実際の差動出力信号のコモンモード電圧と、差動増幅回路200aの理想値のコモンモード電圧とのずれを算出する。そして、制御回路400は、そのずれを補償する補償値を算出し、その補償値またはその補償値に近似する値を、容量アレイ回路100に入力されるリファレンス電圧Vrefに加えるための、正側のコモンモード調整電圧Vxpと負側のコモンモード調整電圧Vxmとの組み合わせを特定する。
図7の例では、(2*VR1)、(2*VR2)、(2*VR3)、(2*VR4)、(2*VR5)のうち、上記補償値に最も近い値を特定し、その値を実現するための、正側のコモンモード調整電圧Vxpと負側のコモンモード調整電圧Vxmとの組み合わせを特定する。
以上説明したように本実施の形態によれば、容量アレイ回路100内に、調整容量Cxを設け、その調整容量Cxにコモンモード調整電圧を入力することにより、柔軟性の高い、コモンモード電圧の補償方法を実現することができる。たとえば、フィードフォワード制御を採用することにより、疑似差動型の増幅回路など、正側と負側の回路が独立に動作し、両者のセトリングが完了するまでコモンモード電圧を特定しにくい回路素子に対しても、有効に機能する。
図10は、実施の形態の変形例に係る容量アレイ回路100を搭載したスイッチトキャパシタ回路300の構成図である。図10に示す容量アレイ回路100は、図1に示した容量アレイ回路100と比較し、正側の容量アレイ部に正側の追加調整容量Cexpが追加され、負側の容量アレイ部に負側の追加調整容量Cexmが追加された構成である。
正側の追加調整容量Cexpの入力側端子には、正側の第1追加調整電圧スイッチSWexp1および正側の第2追加調整電圧スイッチSWexp2が並列に接続される。正側の第1追加調整電圧スイッチSWexp1は、正側の第1追加調整電圧Vexp1を正側の追加調整容量Cexpに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。正側の第2追加調整電圧スイッチSWexp2は、正側の第2追加調整電圧Vexp2を正側の追加調整容量Cexpに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。正側の追加調整容量Cexpの出力側端子は、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および正側の調整容量Cxpの出力側端子と結合している。
負側の追加調整容量Cexmの入力側端子には、負側の第1追加調整電圧スイッチSWexm1および負側の第2追加調整電圧スイッチSWexm2が並列に接続される。負側の第1追加調整電圧スイッチSWexm1は、負側の第1追加調整電圧Vexm1を負側の追加調整容量Cexmに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。負側の第2追加調整電圧スイッチSWexm2は、負側の第2追加調整電圧Vexm2を負側の追加調整容量Cexmに入力するか否かを切り換えるためのスイッチである。負側の追加調整容量Cexmの出力側端子は、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)および負側の調整容量Cxmの出力側端子と結合している。
つぎに、変形例に係るスイッチトキャパシタ回路300の全体動作を説明する。
図11は、変形例に係るスイッチトキャパシタ回路300のオートゼロ状態の様子を示す図である。この状態では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および正側の調整容量Cxpのすべてに、正側の入力アナログ信号Vinpが入力され、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)および負側の調整容量Cxmのすべてに、負側の入力アナログ信号Vinmが入力される。また、正側の追加調整容量Cexpに正側の第1追加調整電圧Vexp1が入力され、負側の追加調整容量Cexmに負側の第1追加調整電圧Vexm1が入力される。
図12は、変形例に係るスイッチトキャパシタ回路300の増幅状態の様子を示す図である。この状態では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)のそれぞれに、高電位側基準電圧VRTと低電位側基準電圧VRBのいずれかが入力され、正側の調整容量Cxpに正側のコモンモード調整電圧Vxpが入力される。また、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)のそれぞれに、高電位側基準電圧VRTと低電位側基準電圧VRBのいずれかが入力され、負側の調整容量Cxmに負側のコモンモード調整電圧Vxmが入力される。また、正側の追加調整容量Cexpに正側の第2追加調整電圧Vexp2が入力され、負側の追加調整容量Cexmに負側の第2追加調整電圧Vexm2が入力される。
以下、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)が15個、正側の調整容量Cxpが1個、正側の追加調整容量Cexpが1個、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)が15個、負側の調整容量Cxmが1個、および負側の追加調整容量Cexmが1個の場合を例に、より具体的に説明する。なお、これらの容量の容量値はすべて等しいことを前提とする。
図11に示したオートゼロ状態において、正側の帰還容量Cfpおよび負側の帰還容量Cfpも含む、すべての容量に蓄積されている電荷Qは下記式18、式19により定義される。式18は正側の電荷Qpを示し、式19は負側の電荷Qmを示す。
Qp=Cs*16*(Vinp−Vazp)+Cf*(VRB2−Vazp)+Cexp*(Vexp1−Vazp) ・・・(式18)
Qm=Cs*16*(Vinm−Vazm)+Cf*(VRB2−Vazm)+Cexm*(Vexm1−Vazm) ・・・(式19)
Vazpは、オートゼロ状態における、正側の第1インバータINV1pの入力端子電圧および出力端子電圧を示す。換言すれば、正側の第1インバータINV1pのオフセット成分が加味された、正側の第1インバータINV1pの出力反転電圧といえる。
Vazmは、オートゼロ状態における、負側の第1インバータINV1mの入力端子電圧および出力端子電圧を示す。換言すれば、負側の第1インバータINV1mのオフセット成分が加味された、負側の第1インバータINV1mの出力反転電圧といえる。
つぎに、図12に示した増幅状態において、正側のコンパレータCPpの入力端子電圧が正側のオートゼロ電圧Vazpに到達した時点の、正側のすべての容量に蓄積されている電荷Qpは下記式20より定義され、負側のコンパレータCPmの入力端子電圧が負側のオートゼロ電圧Vazmに到達した時点の、負側のすべての容量に蓄積されている電荷Qmは下記式21より定義される。
Qp=Cs*{n*VRT+(15−n)*VRB+Vxp−16*Vazp}+Cf*(Voutp−Vazp)+Cexp*(Vexp2−Vazp) ・・・(式20)
Qm=Cs*{n*VRB+(15−n)*VRT+Vxm−16*Vazm}+Cf*(Voutm−Vazm)+Cexm*(Vexm2−Vazm) ・・・(式21)
nは、正側の入力容量Cspにおいて、高電位側基準電圧VRTが入力される入力容量Cspの数を示す。
オートゼロ状態とコンパレータCPの入力端子電圧がオートゼロ電圧Vazに到達した状態とにおいて電荷保存則が成り立つので、上記式18〜式21により、差動増幅回路200の出力電圧(Voup−Voutm)は、下記式22により定義される。
Voup−Voutm=Cs/Cf*{16*(Vinp−Vinm)+VRT*(15−2n)+VRB*(2n−15)+(Vxp−Vxm)}+Cexp/Cf*(Vexp1−Vexp2)−Cexm/Cf*(Vexm1−Vexm2) ・・・(式22)
図13は、変形例に係るスイッチトキャパシタ回路300の動作を示すタイミングチャートである。正側のコンパレータCPpおよび負側のコンパレータCPmのオートゼロ期間では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および正側の調整容量Cxpに、正側の入力アナログ信号Vinpが入力され、負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)および負側の調整容量Cxmに、負側の入力アナログ信号Vinmが入力される。また、正側の追加調整容量Cexpに正側の第1追加調整電圧Vexp1が入力され、負側の追加調整容量Cexmに負側の第1追加調整電圧Vexm1が入力される。
当該オートゼロ期間終了時点の、正側の入力アナログ信号Vinpおよび負側の入力アナログ信号Vinmがサンプリング値となる。正側のコンパレータCPpおよび負側のコンパレータCPmの増幅期間では、正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)のそれぞれに、高電位側基準電圧VRTまたは低電位側基準電圧VRBのいずれかが入力される。また、正側の調整容量Cxpに正側のコモンモード調整電圧Vxpが入力され、負側の調整容量Cxmに負側のコモンモード調整電圧Vxmが入力される。また、正側の追加調整容量Cexpに正側の第2追加調整電圧Vexp2が入力され、負側の追加調整容量Cexmに負側の第2追加調整電圧Vexm2が入力される。
上述した正側の追加調整容量Cexpおよび負側の追加調整容量Cexmは、コモンモード調整に使用することができる。その場合、(Vexp1−Vexp2)と(Vexp1−Vexm2)との差分を一定のまま、Vexp1とVexp2のうちの少なくとも一方、およびVexm1とVexm2のうちの少なくとも一方を変更することができる構成を備えれば、コモンモード調整を実現することができる。
正側の追加調整容量Cexpおよび負側の追加調整容量Cexmをコモンモード調整に使用する場合、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmは別の用途に使用することができる。たとえば、差動増幅回路200のオフセット調整に使用することができる。また、正側の追加調整容量Cexpおよび負側の追加調整容量Cexmをオフセット調整に使用し、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmをコモンモード調整に使用してもよい。また、正側の追加調整容量Cexpおよび負側の追加調整容量Cexm、ならびに正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmの両方でコモンモード調整をしてもよい。
以上説明したように本変形例のように、追加調整容量Cexを追加することにより、容量アレイ回路100内において、コモンモード調整とオフセット調整の両方を実現することができる。また、コモンモード調整をより細かい単位で実行することができる。
つぎに、実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300を、アナログデジタル変換器に適用する例を説明する。とくに、入力アナログ信号を、上位ビットから下位ビットに向けて複数回の変換処理により、デジタル信号に変換するアナログデジタル変換器に適用する例を説明する。そのようなアナログデジタル変換器の例として、パイプライン型アナログデジタル変換器500aとサイクリック型アナログデジタル変換器の例を挙げる。
図14は、適用例1に係るパイプライン型アナログデジタル変換器500aの構成を示す図である。このパイプライン型アナログデジタル変換器500aは4つのステージを備え、第1ステージ10は4ビット変換し、第2ステージ20、第3ステージ30および第4ステージ40は、冗長1ビットを除き、2ビットずつ変換する。したがって、当該パイプライン型アナログデジタル変換器500aは合計10ビット変換する。なお、これらのステージ数やビット数は一例であり、これに限るものではない。
第1ステージ10は、第1サブAD変換回路12、第1DA変換回路14、第1減算回路16および第1増幅回路18を備える。第1サブAD変換回路12および第1増幅回路18は、実質的に同じタイミングで入力アナログ信号Vinをサンプリングする。なお、本パイプライン型アナログデジタル変換器500aで処理される入力アナログ信号Vinは差動信号であるが、表記を簡略するため、単に入力アナログ信号Vinと表記する。
第1サブAD変換回路12は、フラッシュ型で構成される。上述したようにその分解能は4ビットである。第1サブAD変換回路12は、サンプリングした信号のうち、上位4ビットに相当する成分をデジタル値に変換し、第1DA変換回路14および図示しないデジタル信号処理部に出力する。第1DA変換回路14は、サブAD変換回路12により変換されたデジタル値をアナログ値に変換する。このアナログ信号は、第1サブAD変換回路12による変換対象とされたアナログ信号から除去すべき信号となる。
第1減算回路16は、第1増幅回路18によりサンプリングされた入力アナログ信号Vinから、第1DA変換回路14により変換されたアナログ信号を減算する。第1増幅回路18は、前者から後者が除かれた残差信号を所定の増幅率で増幅し、第2ステージ20に出力する。ここでは、4倍に増幅する。その増幅された残差信号は、第2ステージ20の変換対象となる。
第2ステージ20は、第2サブAD変換回路22、第2DA変換回路24、第2減算回路26および第2増幅回路28を備える。第2サブAD変換回路22および第2増幅回路28は、実質的に同じタイミングで、第1ステージ10からの残差信号をサンプリングする。
第2サブAD変換回路22は、フラッシュ型で構成される。上述したようにその分解能は冗長1ビットを含めると3ビットである。第2サブAD変換回路22は、サンプリングした信号のうち、上位から5ビット目および6ビット目に相当する成分をデジタル値に変換し、冗長1ビットを加えて、第2DA変換回路24および図示しない上記デジタル信号処理部に出力する。第2DA変換回路24は、第2サブAD変換回路22の出力デジタル値をアナログ値に変換する。
第2減算回路26は、第2増幅回路28によりサンプリングされた第1ステージ10からの残差信号から、第2DA変換回路24により変換されたアナログ信号を減算する。第2増幅回路28は、前者から後者が除かれた残差信号を所定の増幅率で増幅し、第2ステージ20に出力する。ここでは、4倍に増幅する。
第3ステージ30は、第3サブAD変換回路32、第3DA変換回路34、第3減算回路36および第3増幅回路38を備える。第3ステージ30は、上位から7ビット目および8ビット目に相当する成分をデジタル値に変換する。第3ステージ30は第2ステージ20と同じ構成であるため、説明を省略する。
第4ステージ40は、第4サブAD変換回路42を備える。第4サブAD変換回路42は、第3ステージ30から入力された残差信号をデジタル値に変換する。すなわち、上位から9ビット目および10ビット目に相当する成分をデジタル値に変換する。
図示しない上記デジタル信号処理部は、全ステージ、すなわち第1ステージ10、第2ステージ20、第3ステージ30および第4ステージ40の出力デジタル値を受け、冗長ビットを分離して、10ビットのデジタル値に組み立てる。また、各ステージから出力された温度計コードのデジタル値をバイナリコードのデジタル値に変換する。
ここで、第1DA変換回路14、第1減算回路16および第1増幅回路18を組み合わせた回路ブロックは、実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300により構成可能である。すなわち、第1DA変換回路14および第1減算回路16の機能を容量アレイ回路100が担い、第1増幅回路18の機能を差動増幅回路200が担うことが可能である。なお、第2DA変換回路24、第2減算回路26および第2増幅回路28を組み合わせた回路ブロック、ならびに第3DA変換回路34、第3減算回路36および第3増幅回路38を組み合わせた回路ブロックについても、実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300により構成可能である。
制御回路400は、第1増幅回路18から出力される第1ステージの残差信号を検出して、その残差信号のコモンモード電圧が理想値に近づくよう制御する。制御回路400は、第2DA変換回路24として機能する容量アレイ回路に含まれる、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmに、検出したコモンモード電圧と上記理想値とのずれを補償するための電圧を印加するよう制御する。
図14の下側に、第1ステージ10のコモン入力許容電圧レンジar1、第2ステージ20のコモン入力許容電圧レンジar2、第3ステージ30のコモン入力許容電圧レンジar3および第4ステージ40のコモン入力許容電圧レンジar4を描いている。ここで、コモン入力許容電圧レンジarとは、各ステージに含まれる回路が正常に動作可能なコモンモード電圧のレンジをいう。各ステージへの差動入力信号のコモンモード電圧が各ステージのコモン入力許容電圧レンジarを外れてしまうと、各ステージでの正常動作が保証されなくなる。各ステージの許容電圧レンジarは、各ステージに含まれる、サブAD変換回路のコモン入力許容電圧レンジおよび増幅回路のコモン入力許容電圧レンジのうち、狭いほうに対応する。
斜線の丸印は、各ステージへの差動入力信号のコモンモード電圧の、理想的な推移を示している。黒塗りの丸印は、各ステージへの差動入力信号のコモンモード電圧にずれが発生し、それを補正しない場合の推移を示している。コモンモード電圧のずれは、後段にいくにしたがって大きくなる。
第1増幅回路18に入力される差動信号に小さなコモンモード電圧のずれがあった場合、第1増幅回路18から出力される差動信号では、そのずれが4倍になってしまう。さらに、第2増幅回路28から出力される差動信号では、当初のずれが16倍になってしまう。図14では、第3ステージ30に入力される差動信号は、第3ステージのコモン入力許容電圧レンジar3を外れてしまっている。
白塗りの丸印は、各ステージへの差動入力信号のコモンモード電圧にずれが発生し、それを補正した場合の推移を示している。上述したように、第2ステージ20内の第2DA変換回路24でコモンモード電圧を補償した例である。この例では、第3ステージ30に入力される差動信号は、第3ステージのコモン入力許容電圧レンジar3に収まっている。
図15は、図14に示したパイプライン型アナログデジタル変換器500aの動作例を示すタイミングチャートである。第1サブAD変換回路12、第1増幅回路18、第2サブAD変換回路22、第2増幅回路28、第3サブAD変換回路32、第3増幅回路38、および第4サブAD変換回路42は、それぞれ、オートゼロ期間の終了時点をサンプリングポイント(図15では黒丸で描写)とする。
図15のタイミングチャートでは、第1サブAD変換回路12および第1増幅回路18は、クロック信号CLKの2周期に1回、入力アナログ信号Vinをサンプリングする。クロック信号CLKの奇数周期のローレベル期間、第1サブAD変換回路12および第1増幅回路18は、オートゼロ状態であり、そのローレベルからハイレベルへの立ち上がりエッジタイミングで、入力アナログ信号Vinをサンプリングする。
続く、クロック信号CLKの奇数周期のハイレベル期間、第1サブAD変換回路12は、サンプリングした入力アナログ信号Vinを所定ビット数(ここでは、4ビット)のデジタル値に変換する。第1増幅回路18は、サンプリングした入力アナログ信号Vinをそのまま一時的に保持する。
続く、クロック信号CLKの偶数周期のローレベル期間、第1DA変換回路14は、第1サブAD変換回路12により変換されたデジタル値をアナログ信号に変換し、第1増幅回路18は、サンプリングした入力アナログ信号Vinから、第1DA変換回路14により変換されたデジタル値を減算増幅する。上述した、入力容量Csにリファレンス電圧Vrefが入力され、差動増幅回路200が増幅している状態に対応する。
また、このクロック信号CLKの偶数周期のローレベル期間、第2サブAD変換回路22および第2増幅回路28は、オートゼロ状態であり、そのローレベルからハイレベルへの立ち上がりエッジタイミングで、第1増幅回路18の出力アナログ信号をサンプリングする。
続く、クロック信号CLKの偶数周期のハイレベル期間、第2サブAD変換回路22は、サンプリングした第1増幅回路18からのアナログ信号を所定ビット数(ここでは、2ビット)のデジタル値に変換する。第2増幅回路28は、サンプリングした第1増幅回路18からのアナログ信号をそのまま保持する。
続く、クロック信号CLKの偶数周期のローレベル期間、第2DA変換回路24は、第2サブAD変換回路22により変換されたデジタル値をアナログ信号に変換し、第2増幅回路28は、サンプリングした第1増幅回路18からのアナログ信号から、第2DA変換回路24により変換されたデジタル値を減算増幅する。
また、このクロック信号CLKの偶数周期のローレベル期間、第3サブAD変換回路32および第3増幅回路38は、オートゼロ状態であり、そのローレベルからハイレベルへの立ち上がりエッジタイミングで、第2増幅回路28の出力アナログ信号をサンプリングする。
続く、クロック信号CLKの偶数周期のハイレベル期間、第3サブAD変換回路32は、サンプリングした第2増幅回路28からのアナログ信号を所定ビット数(ここでは、2ビット)のデジタル値に変換する。第3増幅回路38は、サンプリングした第2増幅回路28からのアナログ信号をそのまま保持する。
続く、クロック信号CLKの奇数周期のローレベル期間、第3DA変換回路34は、第3サブAD変換回路32により変換されたデジタル値をアナログ信号に変換し、第3増幅回路38は、サンプリングした第2増幅回路28からのアナログ信号から、第3DA変換回路34により変換されたデジタル値を減算増幅する。
また、このクロック信号CLKの奇数周期のローレベル期間、第4サブAD変換回路42は、オートゼロ状態であり、そのローレベルからハイレベルへの立ち上がりエッジタイミングで、第3増幅回路38の出力アナログ信号をサンプリングする。
続く、クロック信号CLKの奇数周期のハイレベル期間、第4サブAD変換回路42は、サンプリングした第3増幅回路38からのアナログ信号を所定ビット数(ここでは、2ビット)のデジタル値に変換する。
以上の処理が、クロック信号CLKの2周期分ずれて、同時並行して実行される。図15のタイミングチャートでは、2系統の処理が同時並行して実行されている。
以上説明したように適用例1によれば、パイプライン型アナログデジタル変換器500aにおけるコモンモード電圧のずれを抑制することができ、高精度なアナログデジタル変換が可能となる。
なお、図14に示す例では、第1ステージ10の第1増幅回路18の差動出力電圧を検出して、第2ステージ20の第2DA変換回路24でコモンモード電圧を補償する例を示したが、この構成に限るものではない。
たとえば、第1ステージ10の第1増幅回路18の差動出力電圧を検出して、第3ステージ30の第3DA変換回路34でコモンモード電圧を補償してもよい。また、第1ステージ10の第1増幅回路18の差動出力電圧を検出して、第2ステージ20の第2DA変換回路24でコモンモード電圧を補償するとともに、第2ステージ20の第2増幅回路28の差動出力電圧を検出して、第3ステージ30の第3DA変換回路34でコモンモード電圧を補償してもよい。また、第1ステージ10の第1増幅回路18の差動出力電圧を検出して、第1ステージ10の第1DA変換回路14でコモンモード電圧を補償してもよい。
このように、実施の形態に係るコモンモード電圧の補償方法を採用すれば、パイプライン型アナログデジタル変換器500aにおけるコモンモード電圧のずれを柔軟に補償することができる。また、すべての増幅回路にコモンモードフィードバック回路を搭載する必要がなく、実施の形態に係るコモンモード電圧の補償方法のほうが、コモンモード電圧補償に必要な回路面積を削減しやすい。なお、従来のコモンモードフィードバック回路による補償方法と、実施の形態に係るコモンモード電圧の補償方法とを併用してもよい。
図16は、適用例2に係るサイクリック型アナログデジタル変換器500bの構成を示す図である。このサイクリック型アナログデジタル変換器500bは2つのステージを備え、第1ステージ10は4ビット変換し、第2ステージ20は、冗長1ビットを除き2ビット変換する。第2ステージ20は、第1ステージ10からの残差信号を3回に分けて変換し、合計6ビット変換する。したがって、当該サイクリック型アナログデジタル変換器500bは、第1ステージ10で4ビットおよび第2ステージ20で6ビット変換し、合計10ビット変換する。なお、これらのステージ数やビット数は一例であり、これに限るものではない。
第1ステージ10の構成は、適用例1と同様であるため、説明を省略する。第2ステージ20は、第2−1増幅回路21、第2サブAD変換回路22、第2DA変換回路24、第2減算回路26、および第2−2増幅回路28を備える。第2−1増幅回路21および第2サブAD変換回路22は、第1ステージ10からの残差信号または第2ステージ20の出力から帰還される残差信号を、実質的に同じタイミングでサンプリングする。
第2−1増幅回路21は、サンプリングした残差信号を所定の増幅率で増幅する。図16では2倍に増幅する。第2サブAD変換回路22は、フラッシュ型で構成される。上述したようにその分解能は冗長1ビットを含めると3ビットである。第2サブAD変換回路22は、サンプリングした信号のうち、上位から5ビット目および6ビット目(1回目)、上位から7ビット目および8ビット目(2回目)、または上位から9ビット目および10ビット目(3回目)に相当する成分をデジタル値に変換し、冗長1ビットを加えて、第2DA変換回路24および図示しないデジタル信号処理部に出力する。第2DA変換回路24は、第2サブAD変換回路22の出力デジタル値をアナログ値に変換する。
第2減算回路26は、第2−1増幅回路21により増幅された、第1ステージ10からの残差信号または第2ステージ20の出力から帰還された残差信号から、第2DA変換回路24により変換されたアナログ信号を減算する。第2−1増幅回路28は、前者から後者が除かれた残差信号を所定の増幅率で増幅し、第2ステージ20に出力する。ここでは、2倍に増幅し、第2ステージ20の入力に帰還する。
なお、本適用例では、第2−1増幅回路21が、サンプリングした信号を2倍に増幅しているため、第2サブAD変換回路22および第2DA変換回路24の経路中で、第2DA変換回路24から出力される信号も2倍に増幅する必要がある。なお、第2−1増幅回路21の増幅率を1倍、および第2−2増幅回路28の増幅率を4倍に設定すれば、第2DA変換回路24から出力される信号をそのまま使用することができる。
第1ステージ10と第2ステージ20との間に、第1スイッチSW10および第2スイッチSW20が設けられる。第1スイッチSW10および第2スイッチSW20は、相補的にオンオフする。
第1スイッチSW10がオン、第2スイッチSW20がオフ状態で、第2−1増幅回路21および第2サブAD変換回路22に、第1ステージ10からの残差信号が入力される。一方、第1スイッチSW10がオフ状態、第2スイッチSW20がオン状態で、第2−1増幅回路21および第2サブAD変換回路22に、第2ステージ20の出力から帰還される残差信号が入力される。
図17は、適用例2に係るサイクリック型アナログデジタル変換器500bの第1増幅回路18および第2−1増幅回路21の動作を示すタイミングチャートである。第2−1増幅回路21のオートゼロ状態では、第2−1増幅回路21に、第1増幅回路18の増幅状態の出力電圧が入力され、第2−1増幅回路21の増幅状態では、第2−1増幅回路21に、第1増幅回路18のオートゼロ状態の出力電圧が入力される。すなわち、第2−1増幅回路21のリファレンス電圧として、第1増幅回路18のオートゼロ状態の出力電圧が入力される。上述した例では、中間基準電圧VRB2が入力される。
図18は、第2−1増幅回路21を構成するスイッチトキャパシタ回路300の構成例1を示す図である。このスイッチトキャパシタ回路300の構成は、図1に示したスイッチトキャパシタ回路300と比較し、複数の正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および複数の負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)の入力側端子に接続されるスイッチが省略された構成である。ここでは、複数の正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)は、それぞれ第1増幅回路18の正側の出力端子に接続される。複数の負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)は、それぞれ第1増幅回路18の正側の出力端子に接続される。上述したように、第2−1増幅回路21は、入力電圧もリファレンス電圧も第1増幅回路18から供給されるため、入力経路を切り替えるためのスイッチは不要である。
正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmは、図1に示したスイッチトキャパシタ回路300と同様に、増幅時に正側のコモンモード調整電圧Vxpおよび負側のコモンモード調整電圧Vxmが入力されることにより、コモンモード電圧のずれを補償することができる。また、オフセット電圧の補償に用いてもよい。なお、図17に示したスイッチトキャパシタ回路300では、複数の正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および複数の負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)は、減らしてもよい。それぞれ一つでもよい。また、減らした分の容量を調整容量Cxに転用してもよい。
図19は、第2−1増幅回路21を構成するスイッチトキャパシタ回路300の構成例2を示す図である。このスイッチトキャパシタ回路300の構成は、図10に示したスイッチトキャパシタ回路300と比較し、複数の正側の入力容量(Cs1p、Cs2p、・・・)および複数の負側の入力容量(Cs1m、Cs2m、・・・)の入力側端子に接続されるスイッチ、ならびに正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmが省略された構成である。このように、入力アナログ信号Vinが入力された容量で、コモンモード調整やオフセット調整をする構成であってもよい。
ここで、第1DA変換回路14、第1減算回路16および第1増幅回路18を組み合わせた回路ブロック、および第2DA変換回路24、第2減算回路26および第2−2増幅回路28を組み合わせた回路ブロックは、それぞれ、実施の形態に係るスイッチトキャパシタ回路300により構成可能である。第2−2増幅回路28を図1に示したスイッチトキャパシタ回路300した場合、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmは、オートゼロ状態でも増幅状態でも、第2−1増幅回路21の出力電圧を受けることも可能である。この場合、コモンモード電圧やオフセット電圧が調整されない。また、上述したように、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmは、オートゼロ状態では第2−1増幅回路21の出力電圧を受け、増幅状態では正側のコモンモード調整電圧Vxpおよび負側のコモンモード調整電圧Vxmを受けてもよい。
制御回路400は、第1増幅回路18の残差信号を検出して、その残差信号のコモンモード電圧が理想値に近づくよう制御する。制御回路400は、第2DA変換回路24として機能する容量アレイ回路に含まれる、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmに、検出したコモンモード電圧と上記理想値とのずれを補償するための電圧を印加するよう制御する。
より具体的には、制御回路400は、第2DA変換回路24における、1回目の変換時、2回目の変換時および3回目の変換時の少なくとも1回において、その補償するための電圧を印加するよう制御する。また、制御回路400は、回数毎に、正側の調整容量Cxpおよび負側の調整容量Cxmに入力する、正側のコモンモード調整電圧Vxpおよび負側のコモンモード調整電圧Vxmの値を変更してもよい。
以上説明したように適用例2によれば、適用例1に係るパイプライン型アナログデジタル変換器500aと同様に、サイクリック型アナログデジタル変換器500bにおけるコモンモード電圧のずれを抑制することができ、高精度なアナログデジタル変換が可能となる。
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
図14、図16では、第1増幅回路18の差動出力電圧を、図9に示した制御回路400により検出する手法を説明した。この点、その差動出力電圧の検出手法は、それに限るものではない。
図20は、サブAD変換回路のデジタル値を検出することにより、コモンモード電圧のずれを検出する手法を説明するための図である。図20では、第1増幅回路18の正側の出力端子と、第2サブAD変換回路22の正側の入力端子との間に、正側の第3スイッチSW30pが設けられ、第1増幅回路18の負側の出力端子と、第2サブAD変換回路22の負側の入力端子との間に、負側の第3スイッチSW30mが設けられる。また、正側のテスト参照電圧Vtpを供給する電圧源と、第2サブAD変換回路22の正側の入力端子との間に、正側の第4スイッチSW40pが設けられ、負側のテスト参照電圧Vtmを供給する電圧源と、第2サブAD変換回路22の負側の入力端子との間に、負側の第4スイッチSW40mが設けらる。
制御回路400は、第1増幅回路18の正側の出力電圧のオフセット成分と、負側の出力電圧のオフセット成分を測定することにより、第1増幅回路18の差動出力電圧のコモンモード電圧を推測することができる。以下、具体的に説明する。まず、正側の第3スイッチSW30pをオン、正側の第4スイッチSW40pをオフ、負側の第3スイッチSW30mをオフ、および負側の第4スイッチSW40mをオンする。この状態で、第1増幅回路18の正側の入力端子に正側のテスト入力電圧を入力する。
制御回路400は、正側のテスト入力電圧、負側のテスト参照電圧Vtm、高電位側基準電圧VRTおよび低電位側基準電圧VRBが既知であるため、第1増幅回路18の正側の出力電圧を測定することができる。
つぎに、正側の第3スイッチSW30pをオフ、正側の第4スイッチSW40pをオン、負側の第3スイッチSW30mをオン、および負側の第4スイッチSW40mをオフする。この状態で、第1増幅回路18の負側の入力端子に負側のテスト入力電圧を入力する。
制御回路400は、負側のテスト入力電圧、正側のテスト参照電圧Vtp、高電位側基準電圧VRTおよび低電位側基準電圧VRBが既知であるため、第1増幅回路18の負側の出力電圧を測定することができる。
ここで、第1増幅回路18の正側の入力端子に正側のテスト入力電圧、およびその負側の入力端子に負側のテスト入力電圧を入力した場合における、第1増幅回路18の正側の理想的な出力電圧、およびその負側の理想的な出力電圧を、それそれ正側の理想出力電圧および負側の理想出力電圧と表記する。
制御回路400は、測定した第1増幅回路18の正側の出力電圧と、正側の理想出力電圧との差分を、正側の出力電圧のオフセット成分とする。また、測定した第1増幅回路18の負側の出力電圧と、負側の理想出力電圧との差分を、負側の出力電圧のオフセット成分とする。
なお、正側のテスト参照電圧Vtpおよび負側のテスト参照電圧Vtmは、第2サブAD変換回路22内で使用される、高電位側基準電圧VRTおよび低電位側基準電圧VRBから生成されてもよい。また、上述した、正側のテスト入力電圧および負側のテスト入力電圧は、第1DA変換回路14により生成されて、第1増幅回路18に入力されてもよいし、第1DA変換回路14以外の構成要素により生成されて、入力されてもよい。ここまで、第1増幅回路18のコモンモード電圧のずれを検出する例を説明したが、他の増幅回路のコモンモード電圧のずれも同様の手法により検出することができる。