JP2011013675A - 楽音信号合成方法、プログラムおよび楽音信号合成装置 - Google Patents

楽音信号合成方法、プログラムおよび楽音信号合成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】弦および本体を有する3次元構造の楽器から発せられる音が有する特質をリアルに表現した疑似楽器音を生成することができる楽音信号合成方法、プログラムおよび楽音信号合成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態に係る楽音信号合成装置は、ピアノの弦に及ぼされる力から前記弦の振動を計算し、前記振動に応じて前記ピアノから発生する音を模擬した波形を示す楽音信号を生成する楽音信号合成装置であって、前記ピアノのシフトペダルの踏込量に対応する演奏情報を取得し、前記弦に対してハンマが及ぼす力を計算する際に用いる弾性係数に対応する数値を、前記取得した演奏情報に応じて時間変動させるハンマモデル計算手段を具備する。
【選択図】図2

Description

本発明は、自然楽器における発音機構(発音メカニズム)に立脚した所定の物理モデルに従って、シミュレーションを行うことにより楽音信号を合成する技術に関する。特に、弦および本体(弦を支持し、空気中に音響を放射する部品)を有する3次元構造の楽器から発せられる音が有する特質をリアルに表現した疑似楽器音を生成するのに好適な楽音信号合成方法、プログラムおよび楽音信号合成装置に関する。
従来から、汎用コンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等のディジタル信号処理装置、集積回路、大規模集積回路等を含んで構成された専用ハードウエア装置において、自然楽器の発音機構(発音メカニズム)に立脚した所定の物理モデルに従って、シミュレーションを行うことにより、自然楽器の楽音を疑似的(仮想的)に合成する方法が知られている。例えば、疑似ピアノ音を発生させたい場合、弦の振動をシミュレートする弦モデル部と、前記弦の振動に応じて弦とともに振動する駒や響板などの振動をシミュレートする響板モデル部とを設けた所定の物理モデルに従って、DSP等からなる物理モデル音源にシミュレーション演算を実行させることにより、楽音信号を合成するということが行われている。このような方法を用いた楽音合成装置は、例えば、特許文献1に記載されている。また、特許文献2には、疑似ピアノ音の合成時に「弦の非線形振動機構」を取り入れることを試みた例が記載されている。
特開平10−63270号公報 特開平06−83363号公報
ピアノの弦は、その一端が本体の一部であるフレーム上のベアリングで支持され、他の一端が本体の一部である響板上の駒で支持されている。鍵を押すと、対応する弦がダンパから解放されると同時に、ハンマに運動エネルギが与えられる。ハンマが弦を打つことによって弦の中に励起した波動のエネルギは、一部がこれらの支持端を介して本体に透過し、残りが支持端で反射されることによって弦の中に留まる。弦の中に生まれた波動が弦支持端間の往復を繰り返すことによって、振動が生まれる。弦の軸方向に直交する方向の振動、即ち、曲げ振動は、最初、ハンマによって打たれた方向に生じるが、3次元運動を行う駒の影響により、それと直交する方向にも生じる。弦は、上記2方向の曲げ振動の他に弦軸方向の振動、即ち、縦振動も行う。
ダンパペダルを踏み込むことによって、全ての弦がダンパから解放されるとき、ハンマに打たれていない弦までもが、本体からエネルギをもらうことによって振動を始める。このように、ピアノの発音は、弦が本体を振動させるだけでなく、本体も弦を振動させる3次元連成振動機構によっている。そして、響板、フレーム、支柱、側板などから構成される複雑な3次元形状を有する本体の全表面から空気中に音響が放射されることによって、豊かで立体的なピアノ特有の楽音が生成される。
ところで、標準的な88鍵ピアノのおよそ第40鍵より下の音域においては、「リンリン」、「ヒンヒン」、あるいは「ヒーン」、「キーン」といった、鈴がなるような、あるいは金属的な非調和音(以下、リンギングサウンドという)が発生する場合がある。この特徴的なリンギングサウンドは、強打時ほど際立って発生し、そのレベルが大きすぎると不快に感じられることもあるが、逆にそれが全く聴こえないとするとピアノ音は単調でつまらないものとなってしまう。このピアノ特有のリンギングサウンドの発生には、弦の非線形(有限振幅)振動が寄与している。
要するに、音階を生成する部品である弦と、弦を支持し、空気中に音響を放射する部品である本体とを有する3次元構造体であるピアノから発せられる楽音の特徴をリアルに表現するためには、「弦と本体との3次元連成振動機構」、「本体の3次元音響放射機構」、「弦の非線形(有限振幅)振動機構」の3点を考慮した上で高精度のシミュレーションを行う必要があるが、これを実現するための方法(計算アルゴリズム)は未だ提案されていない。
ピアノでは、鍵の押し込み深さ、あるいは、ダンパペダルの踏み込み深さを時間軸上でコントロールすることによって、多彩な音楽的ニュアンスを表現することができる。例えば、打鍵後、押し込んだ鍵をゆっくり離すか急に離すかによって音の止まり方のニュアンスは全く異なったものになる。また、ピアノでは、ダンパペダルを全ストロークの途中まで踏み込む「ハーフペダル」と呼ばれる奏法を用いることで、弦を「最大限共鳴させる」のではなく「適度に共鳴させる」といったことが可能となる。従来の電子音源では、上記のような多彩な止音および弦共鳴の効果を生成することはできない。
一般的なグランドピアノには、シフトペダルと呼ばれるペダルが備わっている。このペダルを踏み込むことで全てのハンマの位置が高音側にシフトし、ハンマの普段弦にあたっていない相対的に柔らかい部分が弦にあたるようになる。更に、それを完全に踏み込むとき、例えば、1個の鍵に対応して3本の弦が備わっている音域では、ハンマは3本中2本の弦のみを打つようになり、残りの1本は共鳴弦として働くようになる。従来の電子音源では、シフトペダルの踏み込み加減によって得られるきめ細かな音楽的ニュアンスを表現することはできない。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、弦および本体を有する3次元構造の楽器から発せられる音が有する特質をリアルに表現した疑似楽器音を生成することができる楽音信号合成方法、プログラムおよび楽音信号合成装置を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明は、ピアノの弦に及ぼされる力から前記弦の振動を計算し、前記振動に応じて前記ピアノから発生する音を模擬した波形を示す楽音信号を生成する楽音信号合成方法であって、前記ピアノのシフトペダルの踏込量に対応する演奏情報を取得し、前記弦に対してハンマが及ぼす力を計算する際に用いる弾性係数に対応する数値を、前記取得した演奏情報に応じて時間変動させるハンマモデル計算過程を備えることを特徴とする楽音信号合成方法を提供する。
また、本発明は、コンピュータに、ピアノの弦に及ぼされる力から前記弦の振動を計算し、前記振動に応じて前記ピアノから発生する音を模擬した波形を示す楽音信号を生成させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、前記ピアノのシフトペダルの踏込量に対応する演奏情報を取得し、前記弦に対してハンマが及ぼす力を計算する際に用いる弾性係数に対応する数値を、前記取得した演奏情報に応じて時間変動させるハンマモデル計算手段として機能させるためのプログラムを提供する。
また、本発明は、ピアノの弦に及ぼされる力から前記弦の振動を計算し、前記振動に応じて前記ピアノから発生する音を模擬した波形を示す楽音信号を生成する楽音信号合成装置であって、前記ピアノのシフトペダルの踏込量に対応する演奏情報を取得し、前記弦に対してハンマが及ぼす力を計算する際に用いる弾性係数に対応する数値を、前記取得した演奏情報に応じて時間変動させるハンマモデル計算手段を具備することを特徴とする楽音信号合成装置を提供する。
本発明によれば、弦および本体を有する3次元構造の楽器から発せられる音が有する特質をリアルに表現した疑似楽器音を生成することができる楽音信号合成方法、プログラムおよび楽音信号合成装置を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る楽音信号合成部の構成を示すブロック図である。 標準的なグランドピアノの構成を説明する図である。 本発明の第2実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態に係る楽音信号合成部の構成を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態に係る楽音信号合成部の構成を示すブロック図である。 本発明の第4実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。 本発明の第4実施形態に係る楽音信号合成部の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子楽器1の構成を示すブロック図である。電子楽器1は、例えば、電子ピアノであり、制御部11、記憶部12、ユーザ操作部13、演奏操作部15および放音部17を有している。これらの各部は、バス18を介して互いに接続されている。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)11a、DSP11b、他の図示しない周辺回路、ROM(Read Only Memory)11c、RAM(Random Access Memory)11d、信号インターフェイス11eおよび内部バス11fを有する。DMA(Direct Memory Access)コントローラ、ビデオプロセッサは他の周辺回路として含まれていてもよい。CPU11aは、ROM11cに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAM11dにロードして実行することにより、電子楽器1の各部について、バス18を介して制御し、後述する楽音信号合成処理を行う楽音信号合成部100などを実現する。また、RAM11dは、CPU11aが各データの加工などを行う際のワークエリアとして機能する。
記憶部12は、例えば、ハードディスクなどの大容量記憶手段であって、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)データなどの楽音制御データ、後述する楽音信号合成処理により生成した楽音信号などを記憶する。楽音制御データは、この例においては、鍵の押込量、ハンマ速度、ダンパペダル踏込量、シフトペダル踏込量の時刻の進行に応じた変化を示すデータを含んでいる。これらのデータは、情報記憶媒体DP(例えば、コンパクトディスク)からロードされたり、ネットワークを介してサーバからダウンロードされたりしたものであってもよい。
ユーザ操作部13は、操作パネル13aおよび表示部14を有する。操作パネル13aには、例えば、マウス13b、操作スイッチ13c、キーボード13dなどである。ユーザがマウス13b、操作スイッチ13c、キーボード13dを操作するとその操作内容を表すデータが制御部11へ出力される。これにより、ユーザは電子楽器1に指示を行う。表示部14は、映像を画面に表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスであって、制御部11に制御され、メニュー画面などの各種画面を表示する。メニュー画面は、電子楽器1に電力が供給されると、自動的に表示されるようにしてもよい。
演奏操作部15は、鍵盤部15aおよびペダル部16を有する。鍵盤部15aは、電子ピアノなどの鍵盤部分に相当するものであって、複数の鍵(黒鍵15b、白鍵15c)が並べられた鍵盤を有する。また、鍵盤部15aにおける各鍵15b、15cには、各鍵を押し込まれると、その鍵の押込量を表す情報を出力する鍵位置センサ15d、および押込速度を表す情報を出力する鍵速度センサ15eが設けられている。鍵盤部15aは、鍵の押込量を表す情報をアナログ形式からデジタル形式に変換した情報KSを出力し、また、押込速度を表す情報をアナログ形式からデジタル形式に変換した情報KVを、バス18を介して制御部11の信号インターフェイス11eまで定期的に出力する。鍵盤部15aは、これらの情報KS、KVを、押し込まれた鍵を表す情報KC(例えば、鍵番号)とともに出力する。このとき、ハンマ速度は、制御部11において、鍵盤部15から出力される情報をもとに算出される。なお、押込速度については、鍵位置センサ15dから出力される鍵の押込量から算出されるようにして、鍵速度センサ15eについては設けられていなくてもよい。この場合には、鍵盤部15に鍵の押込量から押込速度を算出する算出部を設けてもよい。また、制御部11のCPU11aにおいて、情報KSから押込速度を算出するようにしてもよい。
ペダル部16は、ダンパペダル16aおよびシフトペダル16bに相当する複数のペダルを有する。また、ダンパペダル16aおよびシフトペダル16bには、ペダルが踏み込まれると、そのペダルの踏込量を表す情報を出力するペダル位置センサ16cが設けられている。ペダル部16は、ペダルの踏込量を表す情報をアナログ形式からデジタル形式に変換した情報PSを、バス18を介して制御部11の信号インターフェイス11eまで定期的に出力する。ペダル部16は、この情報PSを、踏込まれたペダルを表す情報PCとともに出力する。このように、鍵盤部15およびペダル部16は、その操作により、各演奏情報を出力する。
放音部17は、デジタルアナログ変換器17a、図示しないアンプおよびスピーカ17bを有する。制御部11の制御により入力される楽音信号は、デジタルアナログ変換器17aにおいてデジタル形式からアナログ形式に変換され、アンプで増幅され、スピーカ17bから音として出力される。この楽音信号は、この例においては、後述する楽音信号合成処理の結果生成されるものである。以上が、電子楽器1の構成の説明である。次に、制御部11が制御プログラムを実行することによって実現される楽音信号合成部100について図2を用いて説明する。なお、以下に説明する楽音信号合成部100については、それぞれの各機能をハードウエアによって実現してもよい。
図2は、楽音信号合成部100の構成を示すブロック図である。楽音信号合成部100は、以下で説明する複数モデル(ダンパモデル、ハンマモデル、弦モデル、本体モデル、空気モデル)から構成される物理モデルにより、擬似ピアノ音を示す楽音信号を合成する。標準的なピアノは、鍵盤には88個の鍵が備わっており、各鍵に対応して、ハンマが1個、弦が1〜3本、ダンパが0〜複数個(弦と複数点で接触することを意味する)、備わっている。なお、弦の本数、ダンパの個数については、音域毎に異なるものとなっている。
図3は、標準的なグランドピアノの構成を説明する図である。上記複数のモデルは、図3に示す標準的なグランドピアノ(アコースティックピアノ)21を前提としている。グランドピアノ21は、88の鍵21aを含む鍵盤21b、アクション機構21dを介して鍵21aと接続されたハンマ21c、弦21e、および弦21eと接触可能なダンパ21fを有する。弦21eは、その一端で駒21eaと、他端でベアリング21ebと接続されている。鍵21a、ハンマ21c、アクション機構21d、弦21e、ダンパ21fは、大部分がキャビネット21h内に収められている。弦21eの数およびダンパ21fの接触点の数は、音域によって変化する。キャビネット21h、フレーム、木製フレーム、駒21ea、ベアリング21ebおよびピアノ音を放射する他の振動部分は、本体21jを構成する。以下の説明において、弦、ハンマ、ダンパおよび本体は、標準的なグランドピアノ21における構成を示し、電子楽器1に含まれている構成を示すものではない。
図2に示す楽音信号合成部100は、比較部101、ダンパモデルを対応する弦毎に計算するダンパモデル計算部102−1、102−2、ハンマモデルを計算するハンマモデル計算部103、弦モデルを弦毎に計算する弦モデル計算部104−1、104−2、本体モデルを計算する本体モデル計算部105、および空気モデルを計算する空気モデル計算部106を有する。
ダンパモデル計算部102−1、102−2は、ダンパモデルにより、ある弦21eの振動を計算する。弦モデル計算部104−1、104−2は、弦モデルにより、ある弦21eの振動を計算する。ハンマモデル計算部103、本体モデル計算部105および空気モデル計算部106は、それぞれハンマモデル、本体モデル、空気モデルにより、ある弦21eの振動を計算する。
比較部101は、ダンパモデル計算部102−1、102−2に接続されている。ダンパモデル計算部102−1、102−2は、それぞれ、弦モデル計算部104−1、104−2に接続されている。ハンマモデル計算部103は、弦モデル計算部104−1,104−2の双方に接続されている。弦モデル計算部104−1、104−2は、本体モデル計算部105と接続されている。本体モデル計算部105は、空気モデル計算部106と接続されている。楽音信号は、空気モデル計算部106から出力される。
楽音信号合成部100の楽音信号合成処理によって得られる楽音信号は、特定の鍵において、対応する弦が2本である場合の物理モデルによるものである。即ち、本体モデルを計算する本体モデル計算部105に対して、弦モデルを計算する弦モデル計算部104−1、104−2が並列に接続されている。ここで、弦が3本以上であれば、本体モデル計算部105に対して、並列に接続される弦モデル計算部104−iw(iw=3,4,・・・)および弦モデルに接続されるダンパモデル計算部102−iw(iw=3,4,・・・)を増やせばよい。また、鍵が複数存在する場合には、鍵の数に応じて、ダンパモデル計算部102、ハンマモデル計算部103および弦モデル計算部104の組を増やして、各鍵に対応する弦モデル計算部104を本体モデル計算部105に接続すればよい。したがって、図2に示す楽音信号合成部100は、一般性を有している。
楽音信号合成部100における入力信号としては、制御部11によって生成される各信号であって、鍵盤部15から出力される鍵の押込量を表す情報に応じて生成される信号(以下、入力信号1(e(nΔt))という)、鍵の押込速度および押込加速度を表す情報に応じて生成されるハンマ速度を表す信号(以下、入力信号2(V(nΔt))という)、ペダル部16から出力されるダンパペダルの踏込量を表す情報に応じて生成される信号(以下、入力信号3(e(nΔt))という)、シフトペダルの踏込量を表す情報に応じて生成される信号(以下、入力信号4(e(nΔt))という)の4信号である。これらの4信号はそれぞれ、離散時間軸(t=nΔt; n=0,1,2,・・・)上の信号として、上述した情報KS、KV、PSに基づいて楽音信号合成部100に入力されるものとする。なお、これらの4信号は、制御部11が記憶部12に記憶されている楽音制御データを読み出すことによって生成されるものであってもよい。
一方、楽音信号合成部100における出力信号としては、空気モデル計算部106から出力される「空気中の観測点における音圧」の波形を示す楽音信号(以下、楽音信号(P(nΔt))という)である。
まず、この例における楽音信号合成部100における楽音信号合成処理の物理モデルにおいては、以下に示す28の仮定がなされている。
(仮定1)重力は無視する。
(仮定2)軸力を受けて真っ直ぐに静止している状態(以下、静的平衡状態という)にある弦は細長い円柱形状であるものとする。
(仮定3)弦の太さは不変であるものとする。即ち、はり理論を採用するものとする。
(仮定4)弦の中心軸に垂直な断面は、変形後も平面を保ち、かつ中心軸に垂直であるものとする。即ち、ベルヌイ・オイラーの仮定を採用するものとする。
(仮定5)弦の振幅は小さいが、必ずしも微小ではないものとする。
(仮定6)弦は均質であるものとする。
(仮定7)弦の応力は、ひずみに比例する成分とひずみ速度に比例する成分の和として与えられるものとする。即ち、弦には内部粘性減衰(剛性比例粘性減衰ともいう)が働くものとする。
(仮定8)弦の軸方向には外部粘性減衰(質量比例粘性減衰ともいう)が働くものとする。
(仮定9)弦の一端は本体の一部であるベアリング上の点で支持され、他の一端は本体の一部である駒上の点で支持されているものとする。(弦は支持端において回転を拘束されないものとする。)
(仮定10)弦と空気との間の作用・反作用は無視する。
(仮定11)ハンマの弦に接触する部分(以下、ハンマ先端という)の形状は、円柱状であるものとし、その円柱の底面半径は無限小であるとし、その円柱の高さは他の弦と干渉しない程度であるものとする。
(仮定12)1個のハンマに対応する弦が複数本ある場合には、それらの弦の静的平衡状態における中心軸は、同一平面上にあるものとする。
(仮定13)1個のハンマに対応する弦が複数本ある場合には、その1個のハンマは、それらの弦の数と同じ数のハンマ先端を有するものとする。
(仮定14)ハンマ先端(円柱)の中心軸の方向は、静的平衡状態にある弦(円柱)の中心軸の方向に直交するものとする。
(仮定15)ハンマ重心は1つの直線上でのみ運動するものとする。
(仮定16)ハンマ重心の運動方向は、ハンマ先端(円柱)の中心軸の方向と静的平衡状態にある弦(円柱)の中心軸の方向の両方に直交するものとする。
(仮定17)ハンマの変形する方向は、ハンマ重心の運動方向に一致しているものとする。
(仮定18)ハンマの圧縮力-圧縮量関係式は、指数を正の実数とするべき関数で与えら
れるものとする。
(仮定19)ハンマ先端と弦表面との間には摩擦は無いものとする。
(仮定20)ハンマと空気との間の作用・反作用は無視する。
(仮定21)ダンパが備わっている弦については、弦の曲げ振動を静止させようとするダンパによる抵抗力が、弦の中心軸上の点(以下、止音点という)に作用するものとする。(仮定22)ダンパの抵抗力-速度関係式は、1次式で与えられるものとする。
(仮定23)本体の振幅は微小であるものとする。
(仮定24)本体は近似的に比例粘性減衰系として扱えるものとする。
(仮定25)本体が空気から受ける反作用は無視する。
(仮定26)空気は均質であるものとする。
(仮定27)空気の圧力-体積ひずみ関係式は、1次式で与えられるものとする。
(仮定28)空気は渦無しであるとする。
また、この例における弦の物体座標の表現には、右手系(x,y,z)を用いる。ここで、静的平衡状態にある弦の中心軸にx軸を一致させ、ベアリング側支持端を原点(0,0,0)とし、駒側支持端がx>0なる領域に含まれる様にx軸の方向を定め、ハンマ重心の打弦時運動方向をz軸の正方向と定める。また、本体および空気の物体座標の表現には、右手系(X,Y,Z)を用いる。時刻の進行(時間変数)はtで表す。
以下、この例において説明する各パラメータを表す記号について説明する。
以下の「数1」から「数5」については、各モデルの計算にあたって入力される情報である。「数1」は、時刻の進行に伴い変動するパラメータ(時間変動パラメータ)である。一方、「数2」から「数5」は、時刻の進行に伴う変動が無いパラメータ(時間不変パラメータ)であって、予め設定されるものである。
以下の「数1」は、演奏に関するパラメータ、即ち、楽音信号合成部100における入力信号に相当するものを示している。鍵、弦、ハンマ、ダンパ、本体は、それぞれ、標準的なグランドピアノ21の構成要素21a、21e、21c、21f、21jを示す。
Figure 2011013675
以下の「数2」は、設計に関するパラメータである。
Figure 2011013675
以下の「数3」は、本体の設計および空気中観測点の位置に関するパラメータである。
Figure 2011013675
以下の「数4」は、調律に関するパラメータである。
Figure 2011013675
以下の「数5」は、数値計算に関するパラメータである。
Figure 2011013675
以下の「数6」は、各モデルの計算により出力される情報、即ち、楽音信号である。
Figure 2011013675
以下の「数7」、「数8」、「数9」は、各モデルの計算上必要なその他のパラメータである。
Figure 2011013675
ここで、1個のハンマに対応する弦が1本の場合には、Z、X、Y、およびθが与えられると、βkk’は一意に定まる。1個のハンマに対応する弦が複数本ある場合には、Z、X、Yが与えられると、βkk’は一意に定まる。
Figure 2011013675
Figure 2011013675
以下の「数10」は、上記各パラメータにおいて上付き文字として記載されているインデックスの説明である。
Figure 2011013675
以下、この例における楽音信号合成部100の各部の処理内容について、図2を用いて順に説明する。なお、以後の説明においては、インデックスを全て書くと式が煩雑になって読みづらくなるため、説明上不可欠な場合を除いて、省略することとする。
また、変数e(t)、e(t)、e(t)には初期値(t=0における値)として「1」が設定されている。即ち、鍵(黒鍵15b、白鍵15c)の押し込み、ダンパペダル16a、シフトペダル16bの踏み込みはされていない状態として設定されている。また、その他の全ての「t」に関する変数には、初期値として「0」が設定されているものとする。
比較部101は、入力される鍵押込量入力信号1(e(nΔt))およびダンパペダル踏込量入力信号3(e(nΔt))を取得し、小さい方の値をe(nΔt)として出力する。これは、以下の式(1)で表される。
Figure 2011013675
ダンパモデル計算部102は、1番目の弦(iw=1)に対応するダンパについて計算するダンパモデル計算部102−1、2番目の弦(iw=2)に対応するダンパについて計算するダンパモデル計算部102−2を有する。以下の説明においては、弦のインデックスが異なるだけであるから、ダンパモデル計算部102として説明する。なお、弦が3本以上存在する場合には、上述したように、ダンパモデル計算部102−iw(iw=3,4,・・・)を弦(iw=3,4,・・・)に対応させて設ければよい。
弦モデル計算部104は、1番目の弦(iw=1)について計算する弦モデル計算部104−1、2番目の弦(iw=2)について計算する弦モデル計算部104−2を有する。以下の説明においては、弦のインデックスが異なるだけであるから、弦モデル計算部104として説明する。なお、弦が3本以上存在する場合には、上述したように、弦モデル計算部104−iw(iw=3,4,・・・)を、本体モデル105に対して並列に設ければよい。(弦モデル計算部104の計算については、後述する。)
ダンパモデル計算部102は、比較部101から出力されるeD(nΔt)、および後述するようにして弦モデル計算部104から出力されるuk(xD,nΔt)(k=1,3)を取得して、これらを用いて、以下に示す計算を行った結果得られるfDk(nΔt)を弦モデル計算部104に出力する。
以下、ダンパモデル計算部102における計算について説明する。
初期状態におけるピアノの弦は、ダンパによって振動を抑制された状態にある。ピアノの鍵を押し込んでいくと、対応するダンパが対応する弦から徐々に離れ出し、やがて弦はダンパの抵抗から完全に解放され、ハンマによる打弦に備える。また、ピアノにおいては、鍵の押込量だけでなくダンパペダルの踏込量によってもダンパと弦との接触度合を変えることができ、音の止まり方や弦共鳴の度合をきめ細かく制御することができる。
このようなピアノにおけるダンパのメカニズムは、以下の式(2)に示すダンパの抵抗力fDk(t)とダンパ変形量u(x,t)との関係式をもって簡潔に表現することができる。
Figure 2011013675
この例においては、比較部101から出力されるe(nΔt)を式(2)に代入することで、ダンパの粘性係数に相当する量「b(nΔt)」を離散時間軸(t=nΔt; n=0,1,2,・・・)上で逐次変化させるというアイデアにより、自然楽器のピアノと同様な自然で連続的な止音および弦共鳴の制御を可能にしている。
実際の計算において、式(2)は、後述する弦モデル計算部104における弦のモード毎の運動方程式(式(16)、式(18))の中に組み込まれる。以上が、ダンパモデル計算部102の説明である。
ハンマモデル計算部103は、入力信号2(V(nΔt))および入力信号4(e(nΔt))を取得し、また、後述するようにして弦モデル計算部104から出力されるu(x,nΔt)を取得し、これらを用いて、以下に示す計算を行った結果得られるf(nΔt)を弦モデル計算部104に出力する。
以下、ハンマモデル計算部103における計算について説明する。
上述した物理モデルに関する仮定に、ニュートンの運動の法則を適用するとハンマの運動方程式は、式(3)のように書かれる。
Figure 2011013675
また、ハンマ先端が弦表面に及ぼす力とハンマ圧縮量の関係式は、式(4)のようになる。
Figure 2011013675
ただし、ハンマ先端が弦表面に接触しているときは式(5)、ハンマ先端が弦表面から離れているときは式(6)、(7)が適用される。
Figure 2011013675
いま、式(3)の右辺をf(t)、dw(t)/dtをv(t)とそれぞれ書くことにすれば、変数tに関する2階常微分方程式(式(3))は、次に示す前進オイラー公式と台形公式を用いることで、離散時間軸(t=nΔt; n=1,2,3,・・・)上で、式(8)に示すように数値的に解くことができる。
Figure 2011013675
即ち、「0」より大きいハンマ速度V((n−1)Δt)が与えられるとき、式(8)のv((n−1)Δt)、f((n−1)Δt)、w((n−1)Δt)に、それぞれV((n−1)Δt)、「0」、Wを代入することにより、ハンマ重心変位w(nΔt)が直ちに算出される。やがて、ハンマ接触の条件、即ち、式(5)が満たされるとき、式(4)より、弦モデルへの出力f [iw](nΔt)が算出される。
さて、ピアノにおけるシフトペダルのメカニズムとは、それを踏み込むとハンマの位置が高音側へシフトし、ハンマの弦に接触する部分を変化させる、あるいは、ハンマと一部の弦との接触を不完全な状態にすることによって音色を制御するという機構であるが、この例においては、入力信号4(e [iS](nΔt))を式(4)に代入することにより、ハンマの弾性係数に相当する量K [iS](nΔt)を離散時間軸(t=nΔt; n=0,1,2,・・・)上で逐次変化させるというアイデアにより、自然楽器のピアノと同様な自然で連続的な音色の制御を可能にしている。以上が、ハンマモデル計算部103の説明である。
弦モデル計算部104は、弦に及ぼす力となる、ダンパモデル計算部102から出力されるfDk(nΔt)(k=1,3)およびハンマモデル計算部103から出力されるf(nΔt)、また、後述するようにして本体モデル計算部105から出力されるuBk(nΔt)(k=1,2,3)をそれぞれ取得し、これらを用いて、以下に示す計算を行った結果得られるFBk(nΔt)(k=1,2,3)を本体モデル計算部105に出力し、また、u(x,nΔt)(k=1,3)をダンパモデル計算部102に出力する。
以下、弦モデル計算部104における計算について説明する。
上述した物理モデルに関する仮定において、ニュートンの運動の法則を適用すると弦の運動方程式は、式(9)、(10)、(11)のように書かれる。
Figure 2011013675
ただし、式(9)および式(11)において、有限振幅に起因する非線形項は、それによる効果が小さいため省略してある。同様に、式(10)において、ハンマが弦軸方向に与える力についても、それによる効果が小さいため省略してある。なお、式(9)はハンマ重心の運動方向に対応する弦の曲げ振動に、式(11)はハンマ重心の運動方向とは直交する方向に対応する弦の曲げ振動に、式(10)は弦の縦振動に、それぞれ対応している。
また、弦の境界条件は、式(12)、(13)のように書かれる。
Figure 2011013675
さて、従来より、両端を単純支持された弦(支持端が運動しない弦)の非定常振動問題を解くための方法として、「弦の変位」を「任意の時間関数を係数とするフーリエ正弦級数」で表すという方法が知られている(例えば参考文献1: D.E.Hall. Piano strings excitation. VI: Nonlinear modeling. J.Acoust.Soc.Am, Vol.92, No.1, pp.95-105,1992.)。
これを式で書くと式(14)のようになる。
Figure 2011013675
式(14)の正弦関数は、両端単純支持という境界条件に対応する弦の固有振動モードである。一方、ピアノがそうであるように弦の支持端が運動する場合には、弦の固有振動モードが簡単には求められないため、有限要素法や差分法のような空間的離散化を必要とする解法に頼るというのが一般的である。しかしながら、これらの解法(空間関数と時間関数が分離されていない解法)は、固有振動モードを用いる解法(空間関数と時間関数が分離されている解法)に比べ、数値計算の誤差が時間軸上で蓄積されやすいため、これらの解法を用いて長時間に及ぶ楽音を高い精度で合成することは困難である。
ここでは、支持端が運動する場合の弦の非定常振動問題を高精度かつ高速に解く方法として、「弦の変位」を「任意の時間関数を係数とするフーリエ正弦級数」と「2つの支持
端を結んだ直線の変位」との和によって表す、即ち、式(15)により表現するという新しいアイデアを提示する。
Figure 2011013675
このとき、式(15)は任意のtについて境界条件式(12)、(13)を満足している。なお、式(15)中の正弦関数は、厳密な意味での固有振動モードではないが、ここでは、便宜上、固有振動モードと呼ぶことにする。
偏微分方程式(式(9)、(10)、(11))に式(15)を代入してから、sin(ikπx/l)(ik=1,2,・・・,Mk; k=1,2,3)をそれぞれ掛けて区間「0≦x≦l」で積分すると、以下に示す2階常微分方程式(式(16)、(17)、(18))が導かれる。
Figure 2011013675
Figure 2011013675
更に、弦のモード毎の運動方程式(式(16)、(17)、(18))は、双一次s-z変換を用いることによって、IK×IW [iK]×(2×M1 [iK]+M2 [iK])個(iK=1,2,・・・,IK)の並列化された2次IIR(Infinite Impulse Response)フィルタとして、それぞれ記述できるから、離散時間軸(t=nΔt; n=0,1,2,・・・)上で、Ak [iK][iW][mk](nΔt)(iK=1,2,・・・,IK; iW=1,2,・・・,IW [iK]; mk=1,2,・・・,Mk [iK]; k=1,2,3)の値を各モード毎に逐次算出することができる。ただし、各タイムステップにおいて、式(16)および式(18)の計算を式(17)の計算に先行させ、式(17)の右辺に含まれる非線形項Ak [mk](t) Ak [m'k](t)(k=1,3)を外力項のように扱うようにする。
弦が弦支持端に及ぼす力と支持端変位との関係式は、式(28)、(29)のように書かれる。
Figure 2011013675
更に、式(28)、(29)に式(15)を代入することによって、式(30)、(31)が導かれる。ただし、非線形項と回転慣性に関する項は省略した。
Figure 2011013675
式(30)、(31)を次に示す本体−弦物理座標変換式(式(32))に代入することによって得られる式に、前述の方法で算出されたAk [mk](nΔt)(mk=1,2,・・・,Mk; k=1,2,3)の値を代入すれば、弦が弦支持端に及ぼす力FBk [iB](nΔt)、即ち、弦モデル計算部104から本体モデル計算部105への出力を算出することができる。
Figure 2011013675
また、打弦点および止音点の変位は、式(15)より得られる式(33)、(34)にAk [mk](nΔt)(mk=1,2,・・・,Mk; k=1,2,3)の値を代入することによって算出される。
Figure 2011013675
ここで得られたu1(xH,nΔt)は、ハンマモデル計算部103に出力され、式(5)へ再帰的に代入される。同様に、uk(xD [iD],nΔt)は、ダンパモデル計算部102に出力され、式(2)を介して、再び、弦モデル計算部104における式(16)、(18)へ再帰的に代入される。以上が、弦モデル計算部104の説明である。
本体モデル計算部105は、弦モデル計算部104から出力されるFBk(nΔt)を取得し、これを用いて、以下に示す計算を行った結果得られるA(nΔt)を空気モデル計算部106に出力する。
以下、本体モデル計算部105における計算について説明する。
上述した物理モデルに関する仮定により、本体の運動方程式は、弦モデルからの出力FBk [iK] [iW] [iB](t)(iK=1,2,・・・,IK; iW=1,2,・・・,IW [iK]; iB=0,1; k=1,2,3)を入力とする以下のようなモード毎の2階常微分方程式(式(35))として記述することができる。
Figure 2011013675
ところで、ピアノの本体は、木材や金属などから構成されるが、このうち、木材は「低周波成分に比べ高周波成分の振動減衰能が大きい」という特徴を有しており、このことがピアノ(あるいは木材で本体を構成された楽器)特有の「耳に心地よく温かい響き」の原因ともなっている。このような木材の音響的性質は、木材を「弾性係数と構造減衰係数の両方に3次元直交異方性を有する材料」としてモデル化することによって説明することができる(例えば参考文献2:日本機械学会(編) 先端複合材料,pp.68-70. 技報堂出版,1990.)。
「弾性係数と構造減衰係数の両方に3次元直交異方性を有する材料」を含むように構成された本体モデルは、一般構造減衰系(非比例構造減衰系、あるいは、一般ヒステリシス減衰系ともいう)となるため、実固有値解析によって減衰行列を対角化することができない(参考文献3)が、ここでは、減衰行列の非対角項を無視することによって、近似的に比例構造減衰系(比例ヒステリシス減衰系ともいう)とみなすことにする。
(参考文献3:長松昭男 モード解析. 培風館,1985.)
更に、比例構造減衰系を比例粘性減衰系で近似する、即ち、「モード構造減衰係数/2」でモード減衰比を表すこととする。このとき、式(35)に含まれる固有角振動数、モード減衰比、固有振動モードは、任意3次元形状の本体に対し、商用の有限要素法ソフトを用いた実固有値解析を行うことによって算出することができる。ここで、モード減衰比は、近似的モード減衰比というべきものであるが、ここでは、便宜上、単にモード減衰比ということとする。
本体のモード毎の運動方程式(式(35))も、弦と同様に、双一次s-z変換を用いることによって、M個の並列化された2次IIRフィルタとして、それぞれ記述できるから、離散時間軸(t=nΔt; n=0,1,2,・・・)上で、AC [m](nΔt)(m=1,2,・・・,M )の値をモード毎に逐次算出することができ、空気モデル計算部106に出力される。
弦支持端の変位は、上述の方法で算出されたAC [m](nΔt)(m=1,2,・・・,M )の値を、物理座標−モード座標変換式(式(36))を介して、弦−物理座標変換式(式(37))に代入することによって算出できる。
Figure 2011013675
ここで得られたuBk [iB](nΔt)は、弦モデル計算部104へ出力され、式(16)、(17)、(18)および式(30)、(31)、(33)、(34)に再帰的に代入される。以上が、本体モデル計算部105の説明である。
空気モデル計算部106は、本体モデル計算部105から出力されるA(nΔt)を取得し、これを用いて、以下に示す計算を行った結果得られるP(nΔt)を出力する。
以下、空気モデル計算部106における計算について説明する。
任意形状の3次元構造物から放射される空気中の任意の観測点における非定常音圧は、原理的には、次式に示すような方法、即ち、構造物の全表面を十分に細かい音響放射要素(境界要素)に分割した上で、「構造物の各音響放射要素の速度と空気中の観測点における音圧との間のインパルス応答関数」と「構造物の各音響放射要素の速度」との畳み込み積分を要素毎に行い、それらの総和を計算するという方法(式(38))によって算出することができる。
Figure 2011013675
しかしながら、高品質な疑似ピアノ音を合成するために必要な本体の音響放射要素数Iは通常膨大な数になるため、式(38)の計算には膨大な時間を要してしまうことになる。そこで、式(38)に式(39)、(40)を代入して、固有振動モードM個の総和を計算する順番と音響放射要素数I個の総和を計算する順番を入れ替える、即ち、式(41)のような計算を行うことにする。
Figure 2011013675
Figure 2011013675
高品質な疑似ピアノ音を合成するために必要な本体の固有振動モード数Mは、音響放射要素数Iに比べ、普通は、はるかに小さいから、式(38)のかわりに式(41)を用いる、即ち、「本体の各音響放射要素の速度と空気中の観測点における音圧との間のインパルス応答」(式(40)左辺において「t」は「nΔt」(n=0,1,・・・,N[iP]−1))ではなく、「本体の各固有振動モードのモード座標上での速度と空気中の観測点における音圧との間のインパルス応答」(式(42)左辺において「t」は「nΔt」(n=0,1,・・・,N[iP]−1))を予め計算しておくことによって、疑似ピアノ音の合成に要する時間を飛躍的に短縮させることができる。
式(43)に含まれるH[iP][iG](ω)、即ち、「本体の各音響放射要素の速度と空気中の観測点における音圧との間の周波数応答関数」は、任意3次元形状の本体に対し、商用の境界要素法ソフトを用いた周波数応答解析を離散周波数軸上で行うことによって算出することができる。また、式(42)は一般的なIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)演算によって計算することができる。
式(41)に含まれる微分係数、即ち、「本体の各固有振動モードのモード座標上での速度」は、本体モデルより出力されるAC [m](nΔt)(m=1,2,・・・,M)、即ち、「本体の各固有振動モードのモード座標上での変位」を数値的に微分することによって、式(41)に含まれる積分は一般的なFIR(Finite Impulse Response)フィルタの方法によって、計算することができる。
かくして、式(41)より、空気モデルからの出力信号、即ち、離散時間軸(t=nΔt; n=0,1,2,・・・)上における音圧P[iP](nΔt)(iP=1,2,・・・,IP)を逐次算出し、楽音信号として出力することができる。
ここで、式(41)中の畳み込み演算を時間領域ではなく周波数領域で行う「高速畳み込み」と呼ばれている手法を用いることによって、更に飛躍的な高速化をはかることができる。以上が、楽音信号合成部100の構成の説明である。
このように、楽音信号合成部100は、楽器全体が3次元的に振動することによって生み出される豊かで立体的な響き、中低音域の弦を強打したときに聴こえるリンギングサウンド、鍵押し込み深さやペダル踏み込み深さに連動した多彩な音楽的ニュアンスなど、自然楽器のピアノ音が有する特質をリアルに表現する擬似ピアノ音を生成することができる。また、それらの特質を自然楽器のピアノと同じように、制御することが可能となる。
具体的には、以下のようなものがある。例えば、弦長(=弦支持点間の距離)あるいは打弦比(=「弦長」/「ベアリング側弦支持端と打弦点との距離」)などのパラメータを
変更することにより、リンギングサウンドのレベルをコントロールすることが可能となる。以下では、特に、このリンギングサウンドについて、式(17)を用いて説明する。ただし、ここでは説明を理解しやすくするために、式(17)において、弦支持端の変位、弦y方向の変位および弦の内部粘性減衰係数を省略した式(44)に従って説明すること
とする。
Figure 2011013675
式(44)は、弦の縦振動第i2次固有振動の運動方程式であるが、右辺を周期的外力とみなすことにより、1自由度粘性減衰強制振動系の運動方程式として考えることができる。よく知られているように、この方程式の一般解は、減衰する自由振動解(斉次方程式の一般解)と持続する強制振動解(非斉次方程式の特解)の和によって構成されるが、強制振動解の性質とは、系が周期的外力の振動数で振動し、その振動数が系の固有振動数に近づくにつれ振幅が大きくなり、一致すると共振するというものである。いま、弦の曲げ振動に関する各固有振動が調和振動であると仮定する、即ち、式(45)のように書くことにする。
Figure 2011013675
このとき、式(44)の右辺{ }内は、式(46)として導かれる。
Figure 2011013675
いま、i2を固定して、式(46)に含まれる項cos2π(f1 [m1]+f1 [m1+i2])tがつくる系列に着目し、「この系列の第(2m1+i2)次振動数f1 [m1]+f1 [m1+i2]の倍音系列周波数からのずれ」を計算すると、i2が小さいとき、その値が、「曲げ振動第(2m1+i2)次固有振動数f1 [2m1+i2]の倍音系列周波数からのずれ」の約1/4であることが確認できる。自然楽器のピアノ音を分析することにより「ピアノの部分音の系列には、倍音系列からの周波数のずれが主系列の約1/4である副系列が存在する」ことが知られており、従って前記項がつくる系列こそが前記副系列にあてはまる。なお、i2が大きくなるにつれ、この“ずれ量”は少しずつ大きくなる。
また、式(46)に含まれる項cos2π(f1 [m1]+f1 [i2m1])tがつくる系列も上記副系列の形成に寄与していること、ただし、その寄与度は先の項よりも小さいことが理解できる。
式(44)に式(46)を代入した式は、副系列の第(2m1+i2)次の振動数f1 [m1]+f1 [m1+i2]が弦の縦振動の第i2次固有振動数に一致したとき共振現象が起こることを表している。これは、自然楽器のピアノ音が有する特徴的な現象である、「ピアノの部分音の系列には、倍音系列からの周波数のずれが主系列の約1/4である副系列が存在する」ことに加えて、「副系列の奇数次部分音の周波数が、弦の縦振動の奇数次固有振動数に一致するとき、又は、副系列の偶数次部分音の周波数が、弦の縦振動の偶数次固有振動数に一致するとき、副系列部分音のレベルが増大し、これがリンギングサウンドとなる」こと、より分析的な表現に変えると「弦の曲げ振動の奇数次固有振動数と偶数次固有振動数の和が、弦の縦振動の奇数次固有振動数に一致するとき、又は、弦の曲げ振動の1組の奇数次固有振動数の和、あるいは、1組の偶数次固有振動数の和が弦の縦振動の偶数次固有振動数に一致するとき、リンギングサウンドが生成される」こと(参考文献4)に対する、数学的な説明を与えるものである。
(参考文献4: J.Ellis. Longitudinal model in piano strings: Results of new research. Piano Technicians journal, pp.16-23, May 1998.)
更に、「リンリン」、「ヒンヒン」といった唸り現象については、例えば、副系列第15(=7+8=2×7+1)次と副系列第15(=6+9=2×6+3)次とでは、振動数が僅かに異なるために、その振動数差が唸りを生むとして説明することができる。なお、式(44)に含まれる項cos2π(f1 [m1]−f1 [m1+i2])tおよびcos2π(f1 [m1]−f1 [i2m1])tは、曲げ振動の固有振動数よりも僅かに高い周波数を有する部分音の存在を示すものである。
さて、弦の材料定数を固定して考えるとき、式(20)より、弦の縦振動固有振動数は、弦長にのみ依存する。なお、ピアノの低音域に通常使用される、巻弦(鋼鉄の芯線に銅線が巻かれている弦)については、この限りではない。
標準的な88鍵ピアノのおよそ第30鍵からおよそ第40鍵までの音域においては、弦長の設定が原因となって、副系列第15(=7+8=2×7+1)次の振動数と弦の縦振動基本固有振動数が近接している場合がある。そのような場合でも、打弦比を「7」または「8」に設定することで、リンギングサウンドの過剰なレベル増大を回避することができる。
なぜならば、副系列第15(=7+8=2×7+1)次は、曲げ振動の第7次固有振動と第8次固有振動による生成物であるが、打弦比を「7」または「8」に設定すると曲げ振動の第「7」次または第「8」次の固有振動は欠落してしまうため、副系列第15(=7+8=2×7+1)次は生成されないからである。この場合でも、依然として副系列第15(=6+9=2×6+3)次などは存在するが、これらが縦振動の基本固有振動と共振することは無い。なお、自然楽器のピアノ音の時間周波数分析を行うと、副系列と一致しない場合の縦振動の固有振動のピーク(これは、式(17)において右辺を「0」とした場合の自由振動解に相当する)は、急速に減衰してしまい、持続的なものとしては観測されない。この減衰の原因としては、弦支持部での摩擦による部分が大きいものと推測される。本発明の弦モデルにおいては、「弦全体に分布する外部摩擦」、即ち、式(10)における外部粘性減衰係数bを含む項で、「弦支持部における局所的な外部摩擦」を代用している。
以上、リンギングサウンドの発生メカニズムとそのレベルを制御する設計因子(弦長、打弦比)について説明したが、弦の縦振動そのものは、空気中に音響を放射する能力をほとんど持ち合わせていないから、リンギングサウンドが音として聴こえるためには、いま説明した「弦の非線形(有限振幅)振動機構」に加え、「弦と本体との3次元連成振動機構」(「弦の本体に対する取り付け角度」や「駒の形状」などの設計因子がこれに含まれる)および「本体の3次元音響放射機構」(「駒の形状」はこれにも含まれる)の考慮が不可欠であることは言うまでもない。
ところで、自然楽器のピアノの開発現場において、ピアノ音の改良とは、ピアノという複雑なシステムの全体最適解を求めることに他ならないが、従来行われてきた試行錯誤的方法による最適解の模索は、ピアノのような多くの設計因子と誤差因子(天然材料の物性のばらつきや整音など人間による作業のばらつきなど)を有する巨大な音響構造体にとっては、特に、効率が悪い。本発明は、ピアノの仕様(原因)と音(結果)との因果関係を定量的に明らかにするものであるから、設計シミュレータとしてピアノ開発効率の向上にも貢献するものである。上記に加え、物理モデルによる楽音合成方法の利点は、現実のシミュレーションを超えた超自然的効果(例えば、現実には製作が困難な著しく大きなピアノなど)を仮想的に生成できる点にある。
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態に係る電子楽器1Aの構成を示すブロック図である。電子楽器1Aは、例えば、電子ピアノであり、制御部11A、記憶部12A、ユーザ操作部13A、演奏操作部15Aおよび放音部17Aを有している。これらの各部は、バス18Aを介して互いに接続されている。ユーザ操作部13A、放音部17Aおよびバス18Aは、第1実施形態に係る電子楽器1におけるユーザ操作部13、放音部17およびバス18と同様な機能を有するため、説明を省略する。
演奏操作部15Aは、第1実施形態における演奏操作部15とは異なり、シフトペダル16bが取り除かれている。そのため、ペダル位置センサ16Acは、ダンパペダル16aの踏込量を検出する。演奏操作部15Aにおける他の構成は、第1実施形態における演奏操作部15と同様な機能を有するため、説明を省略する。
記憶部12Aは、第1実施形態における記憶部12とは異なり、ハンマ先端が弦表面に及ぼす力f(t)を記憶している。この値は、第1実施形態におけるシフトペダル16bが踏込まれていない状態(レスト位置)における値を示す。
制御部11Aは、第1実施形態における制御部11とは異なり、制御プログラムを実行して実現される楽音信号合成部100のうち、ハンマモデル計算部103を用いない楽音信号合成部100Aを実現する。
図5は、楽音信号合成部100Aの構成を示すブロック図である。図5に示すように、楽音信号合成部100Aには、ハンマモデル計算部103がない。弦モデル計算部104A−1、104A−2は、ハンマモデル計算部103から出力されるf(t)を取得するのではなく、記憶部12Aに記憶されたf(t)を取得する。楽音信号合成部100Aにおける他の構成については、第1実施形態における楽音信号合成部100と同様の機能を有するため、説明を省略する。
上述のように、第2実施形態における電子楽器1Aは、ペダルとしてダンパペダル16aだけを備えている電子ピアノの場合を想定したものである。
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態に係る電子楽器1Bの構成を示すブロック図である。電子楽器1Bは、例えば、電子ピアノであり、制御部11B、記憶部12B、ユーザ操作部13B、演奏操作部15Bおよび放音部17Bを有している。これらの各部は、バス18Bを介して互いに接続されている。ユーザ操作部13B、放音部17Bおよびバス18Bは、第1実施形態に係る電子楽器1におけるユーザ操作部13、放音部17およびバス18と同様な機能を有するため、説明を省略する。
演奏操作部15Bは、第1実施形態における演奏操作部15とは異なり、ダンパペダル16aが取り除かれている。そのため、ペダル位置センサ16Bcは、シフトペダル16bの踏込量を検出する。演奏操作部15Bにおける他の構成は、第1実施形態における演奏操作部15と同様な機能を有するため、説明を省略する。
記憶部12Bは、第1実施形態における記憶部12とは異なり、ダンパの抵抗力fDK(t)を記憶している。この値は、第1実施形態におけるダンパペダル16aが踏込まれていない状態(レスト位置)における値を示す。
制御部11Bは、第1実施形態における制御部11とは異なり、制御プログラムを実行して実現される楽音信号合成部100のうち、比較部101およびダンパモデル計算部102−1、102−2を用いない楽音信号合成部100Bを実現する。
図7は、楽音信号合成部100Bの構成を示すブロック図である。図7に示すように、楽音信号合成部100Aには、比較部101およびダンパモデル計算部102−1、102−2がない。弦モデル計算部104B−1、104B−2は、ダンパモデル計算部102から出力されるfDK(t)を取得するのではなく、記憶部12Bに記憶されたfDK(t)を取得する。楽音信号合成部100Bにおける他の構成については、第1実施形態における楽音信号合成部100と同様の機能を有するため、説明を省略する。
上述のように、第3実施形態における電子楽器1Bは、ペダルとしてシフトペダル16bだけを備えている電子ピアノの場合を想定したものである。
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態に係る電子楽器1Cの構成を示すブロック図である。電子楽器1Cは、例えば、電子ピアノであり、制御部11C、記憶部12C、ユーザ操作部13C、演奏操作部15Cおよび放音部17Cを有している。これらの各部は、バス18Cを介して互いに接続されている。ユーザ操作部13C、放音部17Cおよびバス18Cは、第1実施形態に係る電子楽器1におけるユーザ操作部13、放音部17およびバス18と同様な機能を有するため、説明を省略する。
演奏操作部15Cは、第1実施形態における演奏操作部15とは異なり、ペダル部16が取り除かれている。そのため、ペダル位置センサも存在しない。演奏操作部15Cにおける他の構成は、第1実施形態における演奏操作部15と同様な機能を有するため、説明を省略する。
記憶部12Cは、第1実施形態における記憶部12とは異なり、ダンパの抵抗力fDK(t)、およびハンマ先端が弦表面に及ぼす力f(t)を記憶している。これら値は、第1実施形態におけるダンパペダル16aおよびシフトペダル16bが踏込まれていない状態(レスト位置)における値を示す。
制御部11Cは、第1実施形態における制御部11とは異なり、制御プログラムを実行して実現される楽音信号合成部100のうち、比較部101、ダンパモデル計算部102−1、102−2、およびハンマモデル計算部103を用いない楽音信号合成部100Cを実現する。
図9は、楽音信号合成部100Cの構成を示すブロック図である。図9に示すように、楽音信号合成部100Cには、比較部101、ダンパモデル計算部102−1、102−2およびハンマモデル計算部103がない。弦モデル計算部104C−1、104C−2は、ダンパモデル計算部102から出力されるfDK(t)およびハンマモデル計算部103から出力されるf(t)を取得するのではなく、記憶部12Cに記憶されたfDK(t)およびf(t)を取得する。楽音信号合成部100Cにおける他の構成については、第1実施形態における楽音信号合成部100と同様の機能を有するため、説明を省略する。
上述のように、第3実施形態における電子楽器1Cは、ダンパペダル16aおよびシフトペダル16bを備えていない電子ピアノの場合を想定したものである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
<変形例1>
上述した実施形態においては、例えば、鍵盤部15、ペダル部16の操作に応じて発音させる電子楽器1として機能させるために、リアルタイムに楽音信号合成処理を行っていたが、楽音制御データに応じて発音させる場合などにおいては、非リアルタイム処理としてもよい。
この場合には、例えば、1曲分の楽音制御データを用いて、「楽器本体の各固有振動モードのモード座標上での速度の時間軸上変動データ」の算出を先に行っておき、そのデータと「本体の各固有振動モードのモード座標上での速度と空気中の観測点における音圧との間のインパルス応答または周波数応答のデータ」との畳み込み演算を後から行うということもできる。これは、観測点の位置のみ変更した場合の楽音合成が容易に行えることを意味する。
<変形例2>
上述した実施形態においては、楽音信号合成処理は、ピアノの音を模擬した楽音信号を合成処理するものであったが、ピアノに限らず、振動する弦と、弦を支持し、弦の振動が伝達されることによって空気中に音響を放射する本体とを有する3次元構造の楽器であれば、どのような楽器(例えば、チェンバロ、琴、ギターなど)であってもよい。なお、琴のように弦が張られた両端の間に柱(ピアノの駒に相当)が設けられるような場合には、弦支持端の一端は柱となる。
<変形例3>
上述した実施形態における制御プログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、ネットワークと接続可能な通信部を設け、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。
1…電子楽器、11,11A,11B,11C…制御部、11a…CPU、11b…DSP、11c…ROM、11d…RAM、11e…信号インターフェイス、11f…内部バス、12,12A,12B,12C…記憶部、13,13A,13B,13C…ユーザ操作部、13a…操作パネル、13b…マウス、13c…操作スイッチ、13d…キーボード、14…表示部、15,15A,15B,15C…演奏操作部、15a…鍵盤部、15b…黒鍵、15c…白鍵、15d…鍵位置センサ、15e…鍵速度センサ、16…ペダル部、16a…ダンパペダル、16b…シフトペダル、16c,16Ac,16Bc…ペダル位置センサ、17,17A,17B,17C…放音部、17a…デジタルアナログ変換器、17b…スピーカ、18,18A,18B,18C…バス、21…グランドピアノ、21a…鍵、21b…鍵盤、21c…ハンマ、21d…アクション機構、21e…弦、21ea…駒、21eb…ベアリング、21f…ダンパ、21h…キャビネット、21j…本体、100,100A,100B,100C…楽音信号合成部、101…比較部、102−1、102−2…ダンパモデル計算部、103…ハンマモデル計算部、104−1,104A−1,104B−1,104C−1,104−2,104A−2,104B−2,104C−2…弦モデル計算部、105…本体モデル計算部、106…空気モデル計算部

Claims (3)

  1. ピアノの弦に及ぼされる力から前記弦の振動を計算し、前記振動に応じて前記ピアノから発生する音を模擬した波形を示す楽音信号を生成する楽音信号合成方法であって、
    前記ピアノのシフトペダルの踏込量に対応する演奏情報を取得し、前記弦に対してハンマが及ぼす力を計算する際に用いる弾性係数に対応する数値を、前記取得した演奏情報に応じて時間変動させるハンマモデル計算過程
    を備えることを特徴とする楽音信号合成方法。
  2. コンピュータに、ピアノの弦に及ぼされる力から前記弦の振動を計算し、前記振動に応じて前記ピアノから発生する音を模擬した波形を示す楽音信号を生成させるためのプログラムであって、
    前記コンピュータを、
    前記ピアノのシフトペダルの踏込量に対応する演奏情報を取得し、前記弦に対してハンマが及ぼす力を計算する際に用いる弾性係数に対応する数値を、前記取得した演奏情報に応じて時間変動させるハンマモデル計算手段
    として機能させるためのプログラム。
  3. ピアノの弦に及ぼされる力から前記弦の振動を計算し、前記振動に応じて前記ピアノから発生する音を模擬した波形を示す楽音信号を生成する楽音信号合成装置であって、
    前記ピアノのシフトペダルの踏込量に対応する演奏情報を取得し、前記弦に対してハンマが及ぼす力を計算する際に用いる弾性係数に対応する数値を、前記取得した演奏情報に応じて時間変動させるハンマモデル計算手段
    を具備することを特徴とする楽音信号合成装置。
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