JP2011012334A - フォトエッチング加工用ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:5〜15%、Cr:15〜25%、N:0.02%以上0.2%以下、Mo:0〜3%、Cu:0〜3%、Ti、NbおよびVからなる群から選ばれた1種または2種以上を合計で0%以上0.5%以下、残部Feおよび不純物からなる化学成分を有するステンレス鋼板に加工率が10%以上の冷間圧延(調質圧延)を施した後、テンションレベラーで矯正を行い、張力が49MPa未満のユニットテンションを付与しながら、700℃以上800℃以下の温度域で60秒間未満の熱処理を施すことにより、ステンレス鋼板を製造する。
【選択図】図2
Description
フォトエッチング加工に供されるステンレス鋼板は、主に、SUS304系あるいはSUS301系といったばね材である。これまでにも、フォトエッチング加工用ステンレス鋼板は、平坦性が高いこと、エッチング後の反りを抑制するために残留応力が低いこと、さらにはフォトレジスト膜との密着性が高いこと等が求められる。
特許文献1には、冷間圧延ステンレス鋼帯に加工度20%以上の仕上冷間圧延を施した後、ローラーレベラーをかけることにより、ばね限界値に優れたステンレス鋼帯を製造する方法に係る発明が開示されている。
これらの本発明に係るステンレス鋼板の製造方法では、ステンレス鋼板が、C:0.15%以下(本明細書では特に断りがない限り組成に関する「%」は「質量%」を意味するものとする)、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:5%以上15%以下、Cr:15%以上25%以下、N:0.02%以上0.2%以下、必要に応じて、(i)Mo:3%以下、(ii)Cu:3%以下、および(iii)Ti、NbおよびVからなる群から選ばれた1種または2種以上:合計で0.5%以下、を少なくとも一つ、残部Feおよび不純物からなる化学成分を有することが望ましい。
本発明に係るステンレス鋼板は、冷間圧延(調質圧延)工程、矯正工程および低温焼鈍工程を経て製造されるので、これら各工程を順次説明する。
本発明に係るステンレス鋼板は、例えば、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:5%以上15%以下、Cr:15%以上25%以下、N:0.02%以上0.2%以下、必要に応じて、(i)Mo:3%以下、(ii)Cu:3%以下、および(iii)Ti、Nb、Vの1種以上:合計で0.5%以下を少なくとも一つ、残部Feおよび不純物からなる化学成分を有することが望ましい。この理由を以下に説明する。
Cは、Cr炭化物を形成して粒界析出し、エッチングの際にスマット発生の原因となるために、C含有量は少ないほうがよい。しかし、Cは、強度を上げられる元素であるため、スマットの悪影響のない0.15%以下の範囲で含有してもよい。好ましくは0.12%以下である。強度が重要視されC含有量を高めざるを得ず、炭化物の析出が懸念される場合は、Cと化合し易いTi、Nb、Vの一種以上を合計で0.5%以下含有して炭化物析出の抑制を図ることが好ましい。
Siは、脱酸剤として使用してもよいが、多量に含有するとエッチング速度を低下させる悪影響があるため、Si含有量は1%以下とする。好ましくは0.6%以下である。
Mnは、脱酸剤としてあるいは熱間加工時の脆性破壊防止と鋼板の強度確保の目的で含有するが、Mn含有量が2%を超えると耐食性を低下させるため、Mn含有量は2%以下とする。好ましくは1.5%以下である。
Pは、多量に含有させると熱間加工性を劣化させるので、P含有量は0.045%以下とする。
Sは、多量に含有すると熱間加工性を劣化させるので、S含有量は0.03%以下とする。
Niは、鋼板に耐食性や強度を付与する元素であり、Ni含有量が5%を下回ると耐食性が低下し、15%を超えるとコストアップとなるため、Ni含有量は5%以上15%以下とする。
Crは、Niと同様に鋼板に耐食性と強度を付与する元素であり、Cr含有量が、15%を下回ると耐食性が低下し、25%を超えるとコストアップとなるため、Cr含有量は15%以上25%以下とする。
Nは、鋼板の強度の向上に有効な元素であるとともにばね限界値確保に必要な元素であり、0.02%以上含有する。このような観点からは0.04%以上含有することが好ましい。しかし、Nを過剰に含有すると熱間加工性が低下するので、N含有量は0.2%以下とする。
Moは、任意元素であり、含有することによって鋼板の耐食性を向上させるのに有効であるが、多量に含有するとエッチング速度が遅くなって生産性が低下し、またコストも上昇するので、Moを含有する場合にはその含有量は3%以下とする。
Cuは、任意元素であり、含有することによってオーステナイト相を安定化させるのに有効な元素であり、加工性にも有効な元素であるが、過剰に含有すると製造コストが上昇するので、Cuを含有する場合にはその含有量は3%以下とする。
Ti、Nb、Vは、いずれも、任意元素であり、これらを1種以上含有することによってC、Nと化合物を形成し、結晶粒成長およびCr炭化物生成を抑制する効果を有するが、これらの合計の含有量が0.5%を超えるとその効果が飽和するとともにコストアップとなる。したがって、Ti、Nb、Vの1種以上を含有する場合には、これらの合計の含有量を0.5%以下とする。
本発明の製造方法に使用するSUS304、SUS301等のオーステナイトステンレス鋼帯(鋼板)は、一般的な方法で製造されるものであり、特段の方法には限定されない。すなわち、溶解後に連続鋳造法または造塊法によって製造された鋼片を、熱間圧延によって鋼帯とした後に、焼鈍、酸洗および冷間圧延を繰り返して所定の板厚とすればよい。
[矯正工程]
本発明では、必要に応じて、冷間圧延工程により加工率が10%以上の冷間圧延を行われたステンレス冷延鋼板に、テンションレベラーで矯正を行う。すなわち、調質圧延後のステンレス鋼帯には、ふち波または中伸び等の平坦性を阻害する要因が含まれているため、この要因を除去するためにテンションレベラー設備による矯正を施すことが望ましい。
その後、調質圧延およびテンションレベラーでの矯正により生じたステンレス鋼板残留応力を低減するため、比較的低温で歪取り焼鈍を行う。この歪取り焼鈍を行うことにより、調質圧延で得られた硬さを維持しながら、調質圧延およびテンションレベラー矯正により生じた残留応力を低減し、さらにばね限界値を向上する。
<測定法>
(i)硬さ測定
ステンレス鋼板より小片を採取して表面からマイクロビッカース硬度計(荷重9.8N)でJIS Z 2244に準じて測定した。
ステンレス鋼板より圧延の長さ方向にt×12mm幅×100mm長さの試験片をエッチングで抜き、その片側表面から板厚の半分まで(1/10)tずつエッチングにより溶解して、反り曲率を測定し、文献「B.B.Hundy, Journal of the iron and steel institute, Jan,1955,p23 ”Determination of Residual Stresses in Lightly Rolled Thin Strip”」に記載された下記(1)式に準じて残留応力を求めた。
鋼板より圧延の長さ方向にt×10mm幅×150mm長さの試験片を切削加工により採取し、JIS H 3130に準じてモーメント式試験機により測定した。
次に、黒四角印と白四角印により示す残留応力は、調質圧延およびテンションレベラー矯正後では700MPa超と非常に高いが、それを熱処理すると熱処理温度の上昇とともに低下し、100MPa以下とするには熱処理温度を700℃以上とすればよい。
次に、ばね限界値の影響について説明する。調質圧延およびテンションレベラー矯正後のばね限界値は、SUS304、SUS301あるいは調質仕様、試験片方向(L、T方向)等々によって多少の変動はあるが、おおよそ200MPa以上500MPa以下である。
図2は、炉内張力(U.T)を19.6MPaとして保持時間0秒間と保持時間60秒間で熱処理した場合における熱処理温度と硬さ、残留応力またはばね限界値との関係を示すグラフである。図2に示すグラフは、図1に示す結果を得られた鋼帯と同じ鋼帯(最終焼鈍されたSUS304ステンレス鋼帯に調質圧延(加工率37%)およびテンションレベラー矯正を行った板厚0.2mmのステンレス鋼帯)について調べたものである。
さらに、黒三角印により示す0秒間保持と白三角印により示す60秒間保持のばね限界値は、図1に示す、張力(U.T)を4.9MPa未満としたときのものと、ほぼ同様であり、熱処理温度が700℃から800℃の範囲で高まる。ばね限界値の最大値は、図1に示す場合よりもやや低下する。
次に、黒四角印と白四角印により示す残留応力は、張力(U.T)を49MPaとすると、例えば残留応力を100MPa以下とする熱処理温度が、張力(U.T)を4.9MPa未満または19.6MPaとするものよりも低温側へ移行し、熱処理温度が略500℃以上で100MPa以下となる。
熱処理温度は、700℃より低いと残留応力が100MPaを超えてしまい、かつばね限界値の上昇量も少ない。また、熱処理温度が800℃を超えると、調質圧延での硬さが低下し、ばね限界値も低下するため、熱処理温度は700℃以上800℃以下とする。
JIS G4313に規定されているSUS304およびSUS301のステンレス鋼帯を、表1に示す冷間圧延率(調質圧延率)で圧延し、板厚0.15mmの鋼帯を得た。これらの鋼帯の硬さ測定結果を表1に示す。
(i)平坦性
ステンレス鋼板より圧延の長さ方向にt×300mm幅×500mm長さの試験片を切り出して定盤上に置いて、ふち波、中伸びの高さhを隙間ゲージで測定し、測定値の最大値を示した。
ステンレス鋼板より圧延の長さ方向にt×12mm幅×100mm長さの試験片をエッチングで抜き、その片側表面を板厚の半分までエッチングで溶解して、定盤上に置いて反り上がり高さhを隙間ゲージで測定し、両端の反り量の最大値を示した。
表2から明らかなように、本発明に係る方法によって製造されたステンレス鋼板(試験番号1〜9)は、それぞれ調質圧延後の硬さを維持しており、残留応力も100MPa以下となっている。
Claims (11)
- ステンレス鋼板に圧下率が10%以上の冷間圧延(調質圧延)を施した後、張力が49MPa未満のユニットテンションを付与しながら、700℃以上800℃以下の温度域で60秒間未満の熱処理を施すことを特徴とするステンレス鋼板の製造方法。
- 前記ステンレス鋼板に10%以上の冷間圧延を施した後に、テンションレベラーで矯正を行う請求項1に記載されたステンレス鋼板の製造方法。
- 前記ステンレス鋼板は、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:5%以上15%以下、Cr:15%以上25%以下、N:0.02%以上0.2%以下、残部Feおよび不純物からなる化学成分を有する請求項1または請求項2に記載されたステンレス鋼板の製造方法。
- 前記ステンレス鋼板は、前記Feの一部に代えて、Mo:3質量%以下を含有する請求項3に記載されたステンレス鋼板の製造方法。
- 前記ステンレス鋼板は、前記Feの一部に代えて、Cu:3質量%以下を含有する請求項3または請求項4に記載されたステンレス鋼板の製造方法。
- 前記ステンレス鋼板は、前記Feの一部に代えて、Ti、NbおよびVからなる群から選ばれた1種または2種1種以上:合計で0.5質量%以下を含有する請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載されたステンレス鋼板の製造方法。
- 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された製造方法により製造される、優れたばね限界値を有するステンレス鋼板。
- 質量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.045%以下、S:0.03%以下、Ni:5%以上15%以下、Cr:15%以上25%以下、N:0.02%以上0.2%以下、残部Feおよび不純物からなる化学成分を有するとともに、表面からマイクロビッカース硬度計(荷重9.8N)でJIS Z 2244に準じて測定される硬度:330(HV)以上、圧延の長さ方向にt×12mm幅×100mm長さの試験片をエッチングで抜き、その片側表面から板厚の半分まで(1/10)tずつエッチングにより溶解して反り曲率を測定し、下記(1)式により求められる残留応力:100MPa以下、2.0mm以下の平坦性と、6.0mm以下のハーフエッチング後の反りと、圧延の長さ方向にt×10mm幅×150mm長さの試験片を切削加工により採取し、JIS H 3130に準じてモーメント式試験機により測定されるばね限界値:800MPa以上とを有するフォトエッチング加工用ステンレス鋼板。
・・・(1)
なお、(1)式における符号t0は初期板厚を示し、符号tは減肉後の板厚を示し、符号Eは材料のヤング率を示し、符号νはポアソン比を示し、符号C(t)は板厚tにおける反り曲率を示し、さらにS(t)は板厚tにおける表層部残留応力の算出値を示す。 - 前記Feの一部に代えて、Mo:3質量%以下を含有する請求項8に記載されたステンレス鋼板。
- 前記Feの一部に代えて、Cu:3質量%以下を含有する請求項8または請求項9に記載されたステンレス鋼板。
- 前記Feの一部に代えて、Ti、NbおよびVからなる群から選ばれた1種または2種以上:合計で0.5質量%以下を含有する請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載されたステンレス鋼板。
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