JP2006249559A - ステンレス鋼製面受け板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 C:0.09〜0.17質量%,Si:1.0質量%以下,Mn:1.5質量%以下,Ni:4.0〜7.0質量%,Cr:14.0〜17.0質量%,N:0.10質量%以下,B:0.001〜0.010質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記(1),(2)式で定義されるAHV値及びSHV値が、それぞれAHV値≦250及びSHV値≧350の範囲になるように調整された成分組成を有し、拘束状態で深冷処理された後に表面にショットピーニングが施されて500HV以上の表面硬さに調整されたステンレス鋼板。
AHV値=985‐135C‐14Si‐30Mn‐43Ni‐29Cr‐265N ・・・(1)
SHV値=1882‐255C‐43Si‐101Mn‐70Ni‐55Cr‐921N ・・・(2)
【選択図】 なし
Description
この面受け板には、裁断精度を高いレベルで保持するために厳しい平坦度が要求されるとともに、裁断の圧力を受けるための剛性も必要である。鉄系材料においては300HV以上の表面硬さを備えていれば、剛性は確保できる。しかしながら、トムソン刃や裁断物の接触による疵付きや摩耗を防止するためには、500HV以上の表面硬さを呈する高強度が要求される。
また、食品パック用素材を裁断するときには衛生面も重視されるため、従来の特殊鋼にCrめっき等が施されたものに替わって、耐食性に優れるステンレス鋼が用いられるようになってきた。
一方、形状面からは、冷間圧延時に板切れを防止しようとすると、コイルエッジに耳伸びと称されるウェーブ状の形状不良が現れた冷延板が得られるのが一般的である。この圧延形状を面受け板に要求される平坦形状に矯正しようとすると、コイル状態もしくは切り板状態で形状修正を行う必要がある。しかしながら、冷間圧延により加工硬化された鋼板は剛性が高くなっているため、軟質材の形状矯正ラインでの形状修正は困難であるため、圧延形状のままで使用されることが一般的である。
圧延形状の良否が、冷間圧延の設備及びオペレータの技術に依存するところが大きく、使用できる製品の歩留まりが低下するといった問題がある。
そこで、本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、形状修正の必要がなく、耐食性に優れるとともに必要な剛性と平坦度及び耐摩耗性,耐疵付き性を備えたステンレス鋼製面受け板を提供することを目的とする。
AHV値=985‐135C‐14Si‐30Mn‐43Ni‐29Cr‐265N ・・・(1)
SHV値=1882‐255C‐43Si‐101Mn‐70Ni‐55Cr‐921N ・・・(2)
上記ショットピーニングが施された板は、表面からの距離において5〜40μmの厚さで500HV以上の表面硬さを有しているものが好ましい。
平坦度は、軟質な状態であれば形状修正が可能であり、高強度・高硬度化はいずれの成分においてもマルテンサイト相を多くすることが有効である。本発明におけるような深冷処理して高強度・高硬度を発揮させるステンレス鋼の成分は、焼鈍状態ではマルテンサイト相の生成量を少なくして、換言すればオーステナイト相を主体として比較的軟質な状態を保って形状修正しやすく、深冷処理によってマルテンサイト相の生成量を増大させて高強度・高硬度化を図るように調整される。
したがって、ステンレス鋼板を面受け板に適用する際には、拘束状態で深冷処理された板の表面にショットピーニングを施して表面硬さをさらに上昇させることが有効である。
Siは、マルテンサイト相の硬度を上昇させる元素である。Si含有量が1.0%以下に限定されるのは、上限値を超えるSi%では、焼鈍後の強度が高くなって、焼鈍材を定盤で挟んで形状修正することが困難になる。Siは、マルテンサイト相の硬度上昇元素及び脱酸剤として0.05%以上含まれることが好ましい。
Niはオーステナイト生成元素であり、焼鈍状態でオーステナイト相を得るのに必要である。また、焼鈍後及び深冷処理後の硬さ、すなわちAHV値及びSHV値を調整するために重要な元素である。Ni含有量が4.0〜7.0%の範囲に限定されるのは、下限値未満のNi%では、オーステナイト相が不安定になり過ぎ、上限値を超えるNi%では、オーステナイト相が安定になり過ぎるおそれがあるためである。
Nは、Cと同様にマルテンサイト相を高強度化する元素である。0.10%を超えるNを含有すると、窒化物の形成量が増大し、表面欠陥が発生しやすくなる。Nは、マルテンサイト相の強化のために0.005%以上含まれることが好ましい。
Bは、熱間加工性及び焼入れ性の改善に有効な元素である。0.001%に満たないB含有量では熱間加工割れの発生するおそれがあり、逆に0.010%を超えるBを含有させると硼化物等の形成量が増大し、表面欠陥が発生しやすくなる。
所定の化学成分を有する鋼を、好ましくは真空溶解炉で溶製後、鋳造する。鋳造方法に限定はないが、連続鋳造法を採用することが効率的である。その後、必要に応じて熱間鍛造した後熱間圧延する。熱間圧延条件は特に規定する必要はない。通常の準安定オーステナイト系ステンレス鋼を熱処理する際と同じ条件の範囲内で行えばよい。熱間圧延鋼板を溶体化処理した後、冷間圧延する。冷延材を焼鈍し、オーステナイト単相もしくはオーステナイト相中にマルテンサイト相が少量生成した焼鈍組織を形成する。この焼鈍条件も通常の範囲内で十分である。冷間圧延及び焼鈍を、冷間圧延鋼板の板厚が面受け板としての目標板厚になるまで繰り返して行う。なお、焼鈍の後にスケール除去を目的として通常の酸洗工程を介在させている。
次に、定盤に挟んで拘束した状態で深冷処理を施す。深冷処理は−50℃以下の温度で行うことが好ましい。−50℃以下なる条件を容易に確保する意味では、専用冷媒や液体窒素の気化を利用した極低温槽、あるいはドライアイスとアルコールの混合液中に浸漬することが好ましい。また変態を完全に行わせるためには、1時間以上浸漬することが好ましい。
拘束深冷処理を施した板材の表面に、ガラス球や金属球を用いてショットピーニングを施す。この際、硬質層は、表面から5〜40μmの厚さで形成することが好ましい。5μmに満たないと所望の耐疵付き性や耐磨耗性が得られない場合がある。また40μmを超えて厚くすると、特に片面にショットピーニングを施した場合に、表面歪みが大きくなって平坦度が低下する場合がある。
表1に示す化学成分を有するステンレス鋼を供試材として用いた。なお、表中、発明鋼A〜Cが本発明の請求項に記載の条件を満たす成分組成を有するものであり、比較鋼Dが市販のSUS304を、比較鋼Eが同じくSUS430を用いたものである。
これらの鋼を、それぞれ80tを電気炉で真空溶解した後、厚さ200mmのスラブに鋳造し、熱間圧延を施して板厚3.0mmの熱延板を製造した。
この冷延焼鈍板に拘束深冷処理を施した。拘束深冷処理として、本発明ステンレス鋼板体を、5mmのステンレス鋼板に挟んで専用冷媒を用いて−70℃に設定した冷凍庫内に6時間装入した。
鋼種A〜Eから切り出した1m×1mの切板にショットピーニングを施した。
ショットピーニングには、直径0.5mmのガラスビーズを用い、2kg/cm2の圧力で同一箇所に5〜60秒均一に噴霧されるように調整し、片面の全面に施した。
平坦度の測定は、ショットピーニング前後の板を定盤に載せ、すきまゲージを用いて反り量を測定した。
これに対して、本発明鋼を用いた試験No.6は、ショットピーニング後の硬化層の厚さが薄いために表面の硬さが500HV以上になっていない。また、同じく試験No.7は、ショットピーニング後に500HV以上の表面硬さが得られているが、硬化層の厚さが厚くなりすぎているために、平坦度が0.7mmにもなっており、面受け板としての特性は不十分であった。
また、試験No.9はSUS430を用いた例である。ショットピーニング後の硬さの上昇はほとんどなく、形状も悪化しており、面受け板として使用できるものではなかった。
Claims (2)
- C:0.09〜0.17質量%,Si:1.0質量%以下,Mn:1.5質量%以下,Ni:4.0〜7.0質量%,Cr:14.0〜17.0質量%,N:0.10質量%以下,B:0.001〜0.010質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記(1),(2)式で定義されるAHV値及びSHV値が、それぞれAHV値≦250及びSHV値≧350の範囲になるように調整された成分組成を有し、拘束状態で深冷処理された板の両面にショットピーニングが施されて500HV以上の表面硬さを有していることを特徴とするステンレス鋼製面受け板。
AHV値=985‐135C‐14Si‐30Mn‐43Ni‐29Cr‐265N ・・・(1)
SHV値=1882‐255C‐43Si‐101Mn‐70Ni‐55Cr‐921N ・・・(2) - C:0.09〜0.17質量%,Si:1.0質量%以下,Mn:1.5質量%以下,Ni:4.0〜7.0質量%,Cr:14.0〜17.0質量%,N:0.10質量%以下,B:0.001〜0.010質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記(1),(2)式で定義されるAHV値及びSHV値が、それぞれAHV値≦250及びSHV値≧350の範囲になるように調整された成分組成を有し、拘束状態で深冷処理された後にショットピーニングが施されて表面から5〜40μmの厚さで500HV以上の表面硬さを有していることを特徴とするステンレス鋼製面受け板。
AHV値=985‐135C‐14Si‐30Mn‐43Ni‐29Cr‐265N ・・・(1)
SHV値=1882‐255C‐43Si‐101Mn‐70Ni‐55Cr‐921N ・・・(2)
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