JP2011011745A - 分配包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面の中央部にハーフカット部を設けた折り曲げ線を有し、吐出口を形成する突部を有する硬質材の蓋に、可撓性部材の容器体が融着された構造を有する分配包装体において、開口性を損なわずに、より高いレベルで蓋からの酸素透過を防止する。
【解決手段】表面の中央部に表面側から形成されたハーフカット部を有する折り曲げ線と折り曲げたときに吐出口を形成する突部とを有する硬質蓋体、及び内容物を収容するためのポケット部を有する可撓性容器体を有し、硬質蓋体の裏面に可撓性容器体の周縁部が融着されてなる分配包装体において、前記硬質蓋体を、印刷受容層、硬質中間層および蓋体シール層をこの順に積層してなる硬質複合シートから形成する。前記硬質中間層は、ポリスチレン樹脂層と印刷受容層側に配置されたエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種液状物やペースト状物を包装するための分配包装体に関する。
片手で蓋を折り曲げてそのまま押しつぶすという簡単な操作により、充填された内容物(例えば、ジャム、ケチャップ、ドレッシング等の液状食品)を押し出すことができる分配包装体が知られている(特許文献1)。この分配包装体は、表面の中央部にハーフカット部を設けた折り曲げ線と、使用時に折り曲げられた際に吐出口を形成する突部とを有する硬質材の蓋に、内容物を収容するためのポケット部が形成されるように可撓性部材の容器体が融着された構造を有する。また、この蓋を構成する硬質材の具体例として、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレン共重合体が挙げられている。
しかしながら、具体例として挙げられるこれらの合成樹脂は酸素バリア性が十分とはいえず、このため、分配包装体の内容物が蓋から透過してくる酸素により酸化劣化することが懸念されるという問題があった。
そこで、蓋からの酸素透過を防止するために、良好な酸素バリア性を示す2〜15μm厚のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)層を、良好な開口性を示すポリスチレン樹脂(PS)層と併用することが提案されている(特許文献2)。この場合、蓋の表面側からハーフカット部を設けて折り曲げ線を形成する際に、EVOH層の酸素バリア性が損なわれないようにするために、蓋の表面側にPS層、内容物側にEVOH層を配置し、ハーフカットがEVOH層に到達しないように設計している。
特許第3140016号 特開2006−35449号公報
しかしながら、特許文献2に開示の分配包装体は、確かに良好な開口性を有し、しかも蓋からの酸素透過をある程度防止することができるが、非常に酸化され易い内容物を充填して長期間放置した場合には酸素による内容物の品位劣化が生じるという問題があった。このため、分配包装体の蓋からの酸素透過をより高いレベルで防止することが求められている。
本発明の目的は、以上の従来技術の課題を解決しようとするものであり、表面の中央部にハーフカット部を設けた折り曲げ線を有し、折り曲げられた際に吐出口を形成する突部を有する硬質材の蓋に、内容物を収容するためのポケット部が形成されるように可撓性部材の容器体が融着された構造を有する分配包装体において、開口性を損なわずに、蓋からの酸素透過をより高いレベルで防止できるようにすることである。
本発明者らは、EVOH層の層厚が厚くなればその酸素バリア性が向上するとの仮定の下、分配包装体の蓋を構成するEVOH層の層厚を特許文献2の15μmより厚くすることを試みた。しかしながら、EVOH層を15μmより厚くすると、蓋を折り曲げたとき、EVOH層が伸びてハーフカット部に割れが生じず、開口性が逆に損なわれることとなり、分配包装体として実使用することができないという問題に直面した。このため、PS層とEVOH層との位置関係を逆転させ、内容物側にPS層を配置するようにしたところ、EVOH層にハーフカット部が形成されているにも関わらず、予想外にも分配包装体の蓋の酸素バリア性が向上し、しかもEVOH層にハーフカット部が形成されているために、分配包装体の開口性も低下しないことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、表面の中央部に表面側から形成されたハーフカット部を有する折り曲げ線と折り曲げたときに吐出口を形成する突部とを有する硬質蓋体、及び内容物を収容するためのポケット部を有する可撓性容器体を有し、硬質蓋体の裏面に可撓性容器体の周縁部が融着されてなる分配包装体において、
前記硬質蓋体は、印刷受容層、硬質中間層および硬質蓋体の裏面となるべき蓋体シール層をこの順に積層してなる硬質複合シートから形成されており且つ250μm以上700μm以下の厚みを有しており、
前記硬質中間層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層と厚さ150μm以上500μm以下のポリスチレン樹脂層とを有し、
少なくともエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層がポリスチレン樹脂層よりも印刷受容層側に配置されていることを特徴とする分配包装体を提供する。
また、本発明は、上述の分配包装体の可撓性容器体のポケット部に液状又はペースト状物が充填されてなる分配包装体詰め製品を提供する。
本発明の分配包装体を構成する硬質蓋体は、印刷受容層、硬質中間層および硬質蓋体の裏面となるべき蓋体シール層をこの順に積層してなる硬質複合シートから形成されており、その硬質中間層が、ポリスチレン樹脂層と、ポリスチレン樹脂層よりも印刷受容層側に配置されているエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層とを有する。従って、ポリスチレン樹脂層がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層よりも印刷受容層側に配置されている場合よりも、硬質蓋体の酸素バリア性が向上する。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層自体がハーフカットにより切断されるので、その厚みを厚くしても分配包装体の開口性が低下することはない。
本発明の分配包装体の斜視図である。 本発明の分配包装体の硬質蓋体を形成するための硬質複合シートであって、ハーフカット部が設けられているものの断面図である。 本発明の分配包装体の可撓性容器体を形成するための可撓性複合フィルムの断面図である。 本発明の分配包装体の可撓性容器体を形成するための可撓性複合フィルムの断面図である。
以下、本発明の分配包装体を図面を参照しながら説明する。
本発明の分配包装体は、図1に示すように、本発明の分配包装体100は、硬質蓋体10と可撓性容器体20とから構成されており、硬質蓋体10は、その表面11の中央部に表面側から形成されたハーフカット部を有する折り曲げ線12と折り曲げたときに吐出口を形成する突部13とを有する。なお、本発明の分配包装体の外観形状としては、従来の分配包装体の外観形状と同様とすることもできる。
ここで、硬質蓋体10の「硬質」とは、可撓性容器体20よりも相対的に硬く、分配包装体100を指でつまんで折り曲げ線で折り曲げることができ且つ突部13を開口させるようにできる硬さを意味する。また、可撓性容器体20の「可撓性」とは、硬質蓋体10よりも相対的に可撓性を示し、分配包装体100を指でつまんで折り曲げ線で折り曲げたときに、折れ曲がった硬質蓋体10の押圧で潰れて内容物を開口した突部13から吐出できるように変形することを意味する。
また、硬質蓋体10の表面11の「中央部」とは、例えば、硬質蓋体10が長方形の場合には、対向する長辺の中点を結んだ線を含む領域であり、正方形の場合には、対向する辺の中点を結んだ線を含む領域または一つの対角線を含む領域であり、菱形の場合には、短対角線を含む領域であり、円の場合には、円の中心を通る一つの直線を含む領域であり、楕円の場合には、長径の中心を通り、長径に対して垂直な直線を含む領域であるが、これらに限定されるものではない。
硬質蓋体10は、図2に示すように、印刷受容層14、硬質中間層15および硬質蓋体10の裏面となるべき蓋体シール層16をこの順に積層してなる硬質複合シート200から形成されている。硬質中間層15は、ポリスチレン樹脂層(PS層)15aとエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層(EVOH層)15bとを有する。ハーフカット部17は、硬質蓋体10の表面側から形成されており、EVOH層15bを超えてPS層15aまで及んでいる。即ち、少なくともEVOH層15bは、PS層15aよりも印刷受容層14側に配置されている。なお、硬質中間層15のPS層15aと蓋体シール層16との間には、開口性等の本発明の効果を損なわない範囲で、任意の樹脂層を挟持させてもよい。
また、可撓性容器体20は、食品などの内容物を収容するためのポケット部21を有し、硬質蓋体10の裏面に可撓性容器体20の周縁部(図示せず)が融着されている。ポケット部21を形成する可撓性容器体20は、分配包装体100の使用目的に応じ、例えば、折り曲げ線12を跨いで1個、折り曲げ線12の両側にそれぞれ1個、あるいはその他複数個設けることができる。また、折り曲げ線12の両側にあるポケット部21を連通させてもよい。
このような可撓性容器体20は、図3に示すように、表面保護層22、酸素バリア層23および内容物に接し且つ硬質蓋体10に溶着させるべき容器体シール層24をこの順に積層してなる可撓性複合フィルム300から形成されている。なお、この酸素バリア層23は、図4に示すように、介在層23cを挟んで表面保護層22側に酸素バリアアウター層23aと容器体シール層24側に酸素バリアインナー層23bとから構成してもよい。酸素バリア層23を複層化することにより、酸素バリア性をより向上させることができる。
なお、ハーフカットの意味は従来からの意味と同義である。また、ハーフカット部17の形成は、例えば、特開2001−328095号公報に開示されているような公知のハーフカット装置により行うことができる。本発明においては、硬質蓋体10の印刷受容層14側からPS層15aにカットを入れてあり、良好な開口性を実現するために、通常、PS層15aの全層厚の表層側から10〜90%の深さまでカットを入れることが好ましい。
突部13は、好ましくはハーフカット部17を設けた折り曲げ線12上に設ければ良く、分配包装体100の使用目的に応じ、1個または複数個設けてもよい。突部13の形状は、分配包装体100の硬質蓋体10を下側に向けてその両端を折り曲げ線を中心として指でつまんでV字型に折り曲げることにより、突部13の頂点より開口していくような形状であればよい。例えば、図1のように突条帯形状でもよく、三角錐形状、四角錐形状、半円球形状などでもよい。突部13の形成は、通常、ハーフカット処理の後に、金型成形法で加熱変形させることにより形成することができる。
硬質蓋体10の厚みは、分配包装体の蓋体として通常用いられている蓋体の厚み範囲と同様とすることができ、具体的には250μm以上700μm以下、好ましくは250μm以上500μm以下である。このようにすれば、分配包装体100の蓋体としての良好な開口性や硬質複合シート200の成形性を損なうことなく、適度なシートのコシ及び触感を持たせて、分配包装体としての商品価値を保持することができる。
次に、硬質蓋体10を構成する印刷受容層14、硬質中間層15および硬質蓋体10の裏面となるべき蓋体シール層16について、詳細に説明する(図2)。
硬質蓋体10を構成する印刷受容層14は、硬質蓋体10の外側(可撓性容器体20と反対側)に配置される層であり、グラビア印刷法やフレキソ印刷法などにより印刷インクを受容し、印刷層が形成される層である。また、硬質中間層15を保護する機能も有する層である。このような印刷受容層14は、良好な印刷適性、印刷安定性を示す熱可塑性樹脂層から構成することができ、中でもそれらの特性について特に優れているポリエステル樹脂層を有することが好ましい。通常、印刷受容層14は、ポリエステル樹脂単層からなるが、同種、異種のポリエステル樹脂層を2層以上、ドライラミネーション法や共押出法などにより積層してもよい。
ポリエステル樹脂層としては、従来の分配包装体で用いられているものと同様のものを使用することができ、例えば、多価アルコール成分100モル%中に1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を5モル%以上、好ましくは10〜50モル%、より好ましくは15〜45モル%含む非結晶性の共重合ポリエステル樹脂を使用することができる。この場合、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が少なすぎると共重合ポリエステル樹脂の非晶化度を高め難く、一方、多すぎるとフィルムの耐衝撃強度が低下する傾向があることに留意する必要がある。
また、硬質蓋体10の耐熱性、印刷特性などを考慮し、ポリエステル樹脂を構成するユニット100モル%中にエチレンテレフタレートユニットが好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上となるようにする。他方、多価カルボン酸成分100モル%中にテレフタル酸成分を好ましくは50モル%以上とし、多価アルコール成分100モル%中にエチレングリコール成分を好ましくは50〜95モル%、より好ましくは60〜90モル%とする。
上記多価アルコール成分を構成する多価アルコール類としては、上述した1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールの他に、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物なども併用できる。
多価カルボン酸成分を構成する多価カルボン酸類としては、上述のテレフタル酸およびそのエステルの他に、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸などが利用可能である。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸などや、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
印刷受容層14(通常は、ポリエステル樹脂単層)の厚みは、分配包装体100の硬質蓋体10として通常用いられている印刷受容層の厚みの範囲であればよく、印刷受容層14の厚みが薄すぎると、分配包装体100の硬質蓋体10を形成するための硬質複合シート200の表面強度が低下し、印刷受容層14と共に印刷層が剥落してしまうことが懸念され、一方、印刷受容層14の厚みが厚すぎる場合には、PS層15aに入れるハーフカットの調整が難しくなる傾向があるので、好ましくは10μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下である。
硬質蓋体10を構成する硬質中間層15は、硬質蓋体10に酸素バリア性と良好な開口性を付与するための層であり、内容物側からPS層15aとEVOH層15bとを有する。また、EVOH層15bには、その機能を失わない範囲で接着性樹脂など他の熱可塑性樹脂を適宜必要に応じて添加することができる。接着性樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有するオレフィン系共重合体が好ましく、特にエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリン酸共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレンなどがポリオレフィン系樹脂層との接着に適している。ガスバリア性を失わない範囲としてEVOH層15bに添加される接着性樹脂の添加量は20wt%以下が好ましい。
PS層15aは、硬質蓋体10に強度と開口性とを付与する層である。PS層15aを構成するPSとしては、従来の分配包装体で使用されているPSを利用することができ、具体的には、汎用ポリスチレン(以下において「GPPS」という。)、耐衝撃性ポリスチレン(以下において「HIPS」という。)、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー(ブタジエン系化合物)の配合品の単体あるいは、それらのブレンドを挙げることができる。ここで、GPPSは、ゴム成分を含まず、きわめて割れやすい特性を有する。一方、HIPSは、ゴム成分がブレンドされているので、割れにくい性質を持っている。したがって、GPPSとHIPSとのブレンド比を適切にコントロールすることによって、パッケージを開口する際の蓋体に生じる割れ性を調節することができる。GPPSとHIPSの配合比は、質量比で好ましくは10:90〜80:20、さらに好ましくは10:90〜70:30とすることが望ましい。
PS層15aの厚みは、分配包装体の蓋体に通常用いられているPS層の厚み範囲と同様とすることができ、薄すぎると分配包装体100の蓋体として使用した際に良好な開口性を得ることが困難となり、必要以上に厚くする必要性もないことから、通常150μm以上500μm以下、好ましくは200μm以上400μm以下である。なお、硬質蓋体10を形成するための硬質複合シート200の好ましい厚みが250μm以上700μm以下であることから、硬質複合シート200においてPS層15aは主構成層となっている。
また、PS層15aは、硬質蓋体10に生じる割れ性を調節するものでもあるので、ハーフカット部17を設けた折り曲げ線12を有する分配包装体100においては、通常、ハーフカット部17を表層側からPS層15aに形成する際に、ハーフカット部17の深さをPS層15aの印刷受容層14側から10〜90%の深さとなるまでカットを入れることが好ましい。
EVOH層15bは、酸素バリア性を示す層である。このEVOH層15bはPS層15aにドライラミネーション法や共押出法等により積層される。前述したように印刷受容層14側からPS層15aに達するハーフカットが形成されるので、EVOH層15b自体は、ハーフカット部17で厚さ方向に切断されていることになる。よって、EVOH層15bは、分配包装体100の開口の際に生じる割れには関与しない。従って、EVOH層15bの層厚を、従来(5〜15μm厚)よりも厚くして硬質蓋体10の酸素バリア性を向上させることができるが、厚過ぎてもそれに見合った酸素バリア性が得られにくくなるので、印刷受容層側に配置されているEVOH層15bの層厚は、好ましくは15μm超50μm以下、より好ましくは15μm超40μm以下である。
EVOH層15bを構成するEVOHとしては、エチレン含有量29〜47モル%のものが好ましく、32〜44モル%のものがより好ましく、また、そのケン化度は90モル%以上のものが好ましく、95モル%以上のものがより好ましい。
硬質蓋体10の裏面となるべき蓋体シール層16は、後述する可撓性容器体20と溶着するためのものであり、従来の分配包装体の蓋体のシール層と同様の構成とすることができ、ポリオレフィン樹脂、好ましくはポリエチレン(PE)から形成することが好ましい。この場合、ポリオレフィン樹脂層は同種又は異種のもの2層以上から構成してもよい。具体的には、蓋体シール層16をPE層から形成する際に、内容物側のPEアウター層とその内側のPEインナー層との複層構造としてもよい。かかる二層構造のPE層としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、あるいはLDPEとHDPEをブレンドしたものを使用することができる。
蓋体シール層16として、LDPEとHDPEとのブレンド物を用いる場合、ブレンド比率の決定は、層厚と、PEアウター層及びPEインナー層のそれぞれに要求される特性とを考慮した上で行うことが好ましい。即ち、PEアウター層は、蓋体シール層16の内容物側に位置するから、可撓性容器体20とのシール性および適度な開口性を確保する必要があり、そのため、LDPEの配合比を高くすることが好ましい。一方、PEインナー層は、硬質中間層15のPS層15aの割れに伴って、層(膜)の「切れ」の伝播が良好に行われる必要があり、そのため、HDPEの配合比を高くすることが好ましい。一般的には、LDPEとHDPEの配合比は、質量比で40:60〜80:20、好ましくは50:50〜80:20、さらに好ましくは60:40〜80:20とする。このような構成とすることによって、LDPEとHDPEとの配合比率を自由にコントロールして、分配包装体100を開口する際の蓋体に生じる割れ性や、PS層15aとの接着強度を調節することができる。また、両者の配合によって、LDPEによりメルトテンションを高めることができ、製膜性の安定化を図るとともに、HDPEによる開口時の易割性に優れた蓋体を得ることが可能になる。
なお、 LDPEは、密度が0.92以上のものが好ましく、HDPEは、密度0.95以上のものが好適に使用される。密度を高くすることにより、PE層により良好な裂け性を付与することができる。
蓋体シール層16の厚みは、薄すぎると良好なシール性を実現することが困難となり、厚すぎると開口時の良好な切れを実現することが困難になるので、好ましくは10μm以上40μm以下である。特に、蓋体シール層16をPEアウター層とPEインナー層とから構成した場合、それぞれの厚さを好ましくは5μm以上20μm以下とする。これにより、開口時の切れを良好に保ちつつ、同時に良好なシール性も保持することが可能となる。
以上説明した硬質蓋体10を形成するための硬質複合シートや後述する可撓性容器体20は、ドライラミネート法、共押出法あるいはこれらを組み合わせた方法により製造することができる。また、共押出法により前後の層を接着する際、当該前後の樹脂層が接着し難い場合は貼り合わせる素材に応じて種々の接着性樹脂から適切なものを選択して接着させることができる。
また、硬質蓋体10は、例えば、硬質複合シート200に対し常法に従ってハーフカット処置を行い、170〜220℃の温度でオスメス金型成形により、折り曲げた際に応力が集中する突部13を形成し、必要に応じて個々の硬質蓋体10に切断することにより製造することができる。なお、シートのまま、あるいは複数個が連結したままで分配包装体100の製造工程に投入し、最後に切り分けてもよい。
本発明の分配包装体100を構成する可撓性容器体20を形成するための可撓性複合フィルム300は、既に説明したとおり、図3に示すように、表面保護層22、酸素バリア層23および硬質蓋体10側に配置されるべき容器体シール層24から形成されている。
可撓性容器体20を構成する可撓性複合フィルム300の厚みは、従来の分配包装体の可撓性容器体を形成するための可撓性複合フィルムの厚みと同様とすることができ、通常、当該複合フィルムを熱成形により深絞りしてポケット部を成形することから、フィルム強度や成形性を考慮し、好ましくは100μm以上300μm以下、より好ましくは150μm以上250μmである。
可撓性複合フィルム300を構成する表面保護層22は、内容物を外的応力から保護するものであり、延伸性に優れ、フィルム強度にも優れた熱可塑性樹脂から形成することができる。そのような熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂も使用できるが、ポリオレフィン樹脂よりも酸素バリア性に優れ且つフィルム強度も優れているポリアミド樹脂を好ましく使用することができる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン4−6などの脂肪族ポリアミド;ナイロン6/6、ナイロン6/6,10、ナイロン6/6,12などの脂肪族共重合ポリアミド;ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド;ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド;キシレン基含有ポリアミドなどの芳香族ポリアミド等を使用することができる。中でもナイロン6、ナイロン6−6を好ましく使用することができる。
表面保護層22の厚さは、薄すぎると可撓性容器体20が破け易くなり、厚すぎると厚さに見合った性能が得られる訳ではないので、好ましくは10μm以上30μm以下である。
可撓性複合フィルム300を構成する酸素バリア層23は、酸素バリア能を有する熱可塑性樹脂、酸化珪素蒸着膜、アルミニウム箔などから構成することできるが、本発明では材料コストが低く、内容物の視認性や成形加工性にも優れているEVOH層から構成することが好ましい。EVOH層を形成するEVOHとしては、硬質蓋体10で説明したものと同様のものを使用することができる。
また、酸素バリア層23を、図4に示すように複層化とした場合にも、表面保護層22側の酸素バリアアウター層23a及び容器体シール層24側の酸素バリアインナー層23bの双方をEVOH層(即ち、それぞれEVOHアウター層及びEVOHインナー層)とすることが好ましい。
なおEVOHとしては、硬質蓋体10において説明したものと同じものの中から適宜選択して使用することができる。
酸素バリア層23の厚さは、薄すぎると所期の酸素バリア性を得ることが困難となり、厚すぎると成形性が低下するので、酸素バリア能を有する熱可塑性樹脂を使用した場合には好ましくは30μm以上100μm以下である。
酸素バリア層23がEVOH等の酸素バリア能を有する熱可塑性樹脂から構成されている場合には、その酸素バリア性を向上させるために、酸素吸収性樹脂を含有させることが好ましい。従って、好ましい酸素バリア層23の態様として、酸素吸収性樹脂を含有するEVOH層を挙げることができる。
酸素吸収性樹脂としては、公知の酸素吸収性樹脂を用いることができ、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、特に主鎖に三級炭素原子を有するポリオレフィン系樹脂、ポリアミドとポリアミド反応性の被酸化性ポリジエンもしくは被酸化性ポリエーテルとの反応生成物又はその混合物などの酸化触媒の存在下において酸化され易く空気中の酸素と反応して酸素吸収能を発現する酸化性樹脂、金属原子であるケイ素原子に、ハロゲン原子、アルコキシ基、メルカプト基および水酸基から選ばれる少なくとも一つの基を有する有機基が結合したシラン化合物の加水分解縮合物を含有した樹脂を好ましく使用することができる。
なお、酸素吸収性樹脂として、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の添加剤、着色剤、耐熱・耐候剤、帯電防止剤、酸化触媒などを添加したものを使用していてもよい。特に、酸素吸収性樹脂の酸素吸収性能を向上させるために、酸化触媒として遷移金属塩を金属原子重量で5000ppm以下の範囲で添加することが好ましい。この目的で使用できる遷移金属塩としては、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、さらには銅、チタン、クロム、マンガン、ルテニウムなどの遷移金属の無機塩、有機塩または錯塩であり、特にカルボン酸塩、スルホン酸塩などの有機塩が好ましく、具体的には、酢酸塩、ステアリン酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ネオデカン酸塩などが挙げられる。
酸素バリア層23への酸素吸収性樹脂の配合量は、酸素吸収性、可撓性複合フィルムの製膜性、その後のポケット部への充填性などを考慮し、好ましくは5〜50wt%、より好ましくは5〜30wt%である。
また、酸素バリア層23には、その機能を失わない範囲で接着性樹脂など他の熱可塑性樹脂を適宜必要に応じて添加することが出来る。接着性樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有するオレフィン系共重合体が好ましく、特にエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリン酸共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレンなどがポリオレフィン系樹脂層との接着に適している。ガスバリア性を失わない範囲として酸素バリア層23に添加される接着性樹脂の添加量は20wt%以下が好ましい。
また、既に説明したように、酸素バリア層を、図4に示すように、表面保護層22側に酸素バリアアウター層23aと、容器体シール層24側に酸素バリアインナー層23bと、それらに挟持された介在層23cとから構成してもよい。これにより、EVOH単層の場合よりも、酸素バリア性が良好となる。この場合、複層構造の酸素バリア層23(図4)は、可撓性複合フィルム300の全厚に対し表面保護層22の外表面から50%以下(外表面から一番離れたところ)、好ましくは45%以下とすることが好ましい。また、表面保護層22と酸素バリア層23との層間剥離を考慮し、酸素バリア層23を可撓性複合フィルム300の厚さに対し表面保護層22の外表面から5%以上(外表面から一番近いところ)とすることが好ましい。
また、複層構造の酸素バリア層23(図4)の酸素バリアアウター層23a及び酸素バリアインナー層23bが酸素バリア能を有する熱可塑性樹脂(好ましくは、EVOH)から形成されている場合、酸素バリアアウター層23a及び酸素バリアインナー層23bの双方に酸素吸収性樹脂を含有させることができるが、酸素バリアインナー層23bに酸素吸収性樹脂を含有させると、充填する内容物に酸素吸収性樹脂由来の異臭が移行することが懸念されるので、酸素バリアインナー層23bには、酸素吸収性樹脂の10質量%以下を配合することが好ましく、特に酸素バリアアウター層23aのみに酸素吸収性樹脂を配合することが好ましい。
図4の態様において、酸素バリア層23における、EVOHアウター層23aの層厚をEVOHインナー層23bの層厚よりも大きくすることが好ましい。これにより、表面保護層22の外表面から内容物への酸素の浸入を効率的に阻害することができる。
介在層23cとしては、可撓性複合フィルム300を構成する表面保護層22に使用できるものから適宜選択して使用することができ、延伸性に優れ、フィルム強度にも優れた熱可塑性樹脂のうち、ポリアミド樹脂を特に好ましく使用することができる。
介在層23cの厚さは、薄すぎても厚すぎても良好な酸素バリア性を実現しにくくなるので、可撓性複合フィルムの厚さに対し好ましくは1〜20%、より好ましくは5〜15%となる厚さである。
容器体シール層24は、ポケット部21の内壁となると共に、硬質蓋体10の裏面に溶着させられる層であり、従来の分配包装体の可撓性容器体のシール層や硬質蓋材10の蓋体シール層16の場合と同様の構成とすることができ、好ましくは少なくとも1層のPE層からなる。好ましいPE層として、シール性を確保すべくLDPEを使用することができる。
以上説明した可撓性容器体20を形成するための可撓性複合フィルム300は、ドライラミネート法、共押出法あるいはこれらを組み合わせた方法により製造することができる。また、共押出法により前後の層を接着する際、当該前後の樹脂層が接着し難い場合は貼り合わせる素材に応じて種々の接着性樹脂から適切なものを選択して接着させることができる。
また、可撓性容器体20は、可撓性複合フィルム300を常法に従って深絞り加工によりポケット部を形成し、必要に応じて個々の可撓性容器体20に切断することにより製造することができる。深絞り加工としては、可撓性複合フィルム300を、例えば、熱板へ接触させて加熱した後に、圧空・真空成形の方式で行うことが一般的である。加熱温度としては、100〜170℃である。なお、フィルムのまま、あるいは複数個が連結したままで分配包装体100の製造工程に投入し、最後に切り分けてもよい。
本発明の分配包装体100は、以上説明した硬質蓋体10と可撓性容器体20とを用意し、可撓性容器体20のポケット部21に内容物を充填したのち、可撓性容器体20の容器体シール層24の周縁部を硬質蓋体10の裏面にヒートシールし、必要に応じて個々の分配包装体100に切り分けることにより製造することができる。
本発明の分配包装体100は、内容物の観点から捕らえると、分配包装体100のポケット部に液状又はペースト状物が充填されてなる分配包装体詰め製品として表現することができ、これも本願発明の一部である。分配包装体詰め製品の具体例は、以下に説明する充填物に応じて、分配包装体詰め食品、分配包装体詰め皮膚・毛髪化粧料、分配包装体詰め医薬品等が挙げられる。
充填すべき液状またはペースト状物としては、酸素により品質が劣化し易い成分を含有したものであれば好ましく使用することができ、例えば、ソース、タルタルソース、ドレッシング、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、練り芥子、マスタード、たれなどの液状もしくはペースト状食品、クリーム、乳液、化粧水、美容液、シャンプー、リンス、コンディショナー、毛染め剤、美白化粧料、化粧オイルなどの液状もしくはペースト状化粧料、軟膏などの液状医薬品などが挙げられる。特に、液状食品は、酸素により品質が劣化し易いので好適である。また、液状又はペースト状物には、分配包装体100を折り曲げて内容物の吐出を損なわない範囲で、固形物、例えば、液状食品の場合、野菜などの具材を含有させてもよい。
本発明の分配包装体及び分配包装体詰め製品は、硬質蓋体を下側に向けてその両端を折り曲げ線を中心として指でつまんでV字型に折り曲げることにより、突部が開口して吐出口を形成し、内容物をその吐出口から分配包装体の外部へ吐出させることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下の実施例及び比較例で使用した硬質複合シートと可撓性複合フィルムの層構成を表1に示す。層構成における表記「//」はその前後に記載されている層がドライラミネート法により接合されていることを示し、「/」はその前後に記載されている層が共押出法により接合されていることを意味する。
実施例1
<硬質蓋体用の硬質複合シート>
PET(20μm)/AD(10μm)/EVOH(20μm)/AD(10μm)/HIPS[50質量%]+GPPS[50質量%](300μm)/AD(10μm)/LDPE[50質量%]+HDPE[50質量%](10μm)/LDPE(10μm)
<可撓性容器体用の可撓性複合フィルム>
Ny(20μm)/EVOH(50μm)/AD(20μm)/LDPE(20μm)
上記層構成の硬質複合シートおよび可撓性複合フィルムを共押出法により作成した。
次に、硬質複合シートの所定の位置に、PET層側からPS層にその厚さの50%の深さまでカットし、硬質複合シートにハーフカットを施した。次いで、ハーフカットを施した硬質復合シートを金型成形法により加熱成形し、内容物を吐出するための吐出口を形成する突条帯を形成した。
一方、可撓性複合フィルムを深絞り成形し、ポケット部を形成した。このポケット部に液状食品としてマヨネーズ(キユーピー(株)製)を充填後、突条帯が形成された硬質複合シートと合わせヒートシールした。その後、個々の分配包装体に切断し、分配包装体詰め食品(マヨネーズ)を製造した。
比較例1
実施例1の硬質複合シートにおいて、「EVOH」と「HIPS+GPPS」との位置関係を入れ替えること以外は、実施例1と同様にして分配包装体詰め食品(マヨネーズ)を製造した。使用した硬質複合シートの層構成は以下のとおりである。
<硬質複合シート>
PET(20μm)/AD(10μm)/HIPS[50質量%]+GPPS[50質量%](300μm)/AD(10μm)/EVOH(20μm)/AD(10μm)/LDPE[50質量%]+HDPE[50質量%](10μm)/LDPE(10μm)
実施例2
実施例1の硬質複合シートにおいて、EVOHの厚さを20μmから10μmに変更した以外は、実施例1と同様にして分配包装体詰め食品(マヨネーズ)を製造した。使用した硬質複合シートの層構成は以下のとおりである。
<硬質複合シート>
PET(20μm)/AD(10μm)/EVOH(10μm)/AD(10μm)/HIPS[50質量%]+GPPS[50質量%](300μm)/AD(10μm)/LDPE[50質量%]+HDPE[50質量%](10μm)/LDPE(10μm)
比較例2
比較例1の硬質複合シートにおいて、EVOHの厚さを20μmから10μmに変更した以外は、実施例1と同様にして分配包装体詰め食品(マヨネーズ)を製造した。使用した硬質複合シートの層構成は以下のとおりである。
<硬質複合シート>
PET(20μm)/AD(10μm)/HIPS[50質量%]+GPPS[50質量%](300μm)/AD(10μm)/EVOH(10μm)/AD(10μm)/LDPE[50質量%]+HDPE[50質量%](10μm)/LDPE(10μm)
実施例3
<硬質複合シート>
PET(20μm)//EVOH(20μm)//HIPS[80質量%]+GPPS[20質量%](300μm)/AD(10μm)/LDPE(10μm)/LDPE(10μm)
<可撓性複合フィルム>
Ny(20μm)/EVOH[92質量%]+酸素吸収性樹脂[8質量%](50μm)/AD(20μm)/LDPE(20μm)
上記層構成の硬質複合シートを共押出法とドライラミネート法を組み合わせて作成した。また、可撓性複合フィルムを共押出法により作成した。可撓性複合フィルムの酸素バリア層は、当該可撓性複合フィルムの厚さに対して表面保護層の外表面から18〜64%の範囲に位置していた。
上記硬質複合シートおよび可撓性複合フィルムを用いて、実施例1と同様の方法で、分配包装体詰め食品(マヨネーズ)を製造した。
実施例4
実施例3の可撓性複合フィルムにおいて、EVOH層の酸素吸収性樹脂の総量をほぼ一定とし、LDPEの厚さを20μmから100μmに変更し、さらに以下の層構成の可撓性複合フィルムを共押出法により作成した。この可撓性複合フィルムと実施例3の硬質複合シートとを用いて、実施例1と同様の方法で、分配包装体詰め食品(マヨネーズ)を製した。なお、可撓性複合フィルムの酸素バリア層(EVOH[92質量%]+酸素吸収性樹脂[8質量%](50μm))は、当該可撓性複合フィルムの厚さに対して表面保護層の外表面から10〜40%の範囲に位置していた。
<可撓性複合フィルム>
Ny(20μm)/EVOH[85質量%]+酸素吸収性樹脂[15質量%](25μm)/Ny(10μm)/EVOH(25μm)/AD(20μm)/LDPE(100μm)
比較例3
実施例3の硬質複合シートにおいて、「EVOH」と「HIPS+GPPS」との位置関係を入れ替えること以外、実施例4と同様にして分配包装体詰め食品(マヨネーズ)を製造した。使用した硬質複合シートの層構成は以下のとおりである。
<硬質複合シート>
PET(20μm)//HIPS[80質量%]+GPPS[20質量%](300μm)//EVOH(20μm)/AD(10μm)/LDPE(10μm)/LDPE(10μm)
実施例5
実施例4の可撓性複合フィルムにおいて、酸素バリア層(EVOH[85質量%]+酸素吸収性樹脂[15質量%](25μm)/Ny(10μm)/EVOH(25μm))のEVOHアウター層(EVOH[85質量%]+酸素吸収性樹脂[15質量%](25μm))の酸素吸収性樹脂総量をほぼ一定とし、それとEVOHインナー層(EVOH(25μm))のそれぞれの厚さを変更し、以下の可撓性複合フィルムを作成した。この可撓性複合フィルムおよび実施例3の硬質複合シートを用いて、実施例1と同様の方法で、分配包装体詰め食品(マヨネーズ)を製造した。その層構成は以下のとおりである。なお、可撓性複合フィルムの酸素バリア層は、当該フィルムの厚さに対して表面保護層の外表面から10〜40%の範囲に位置していた。
<可撓性複合フィルム>
Ny(20μm)/EVOH[90質量%]+酸素吸収性樹脂[10質量%](40μm)/Ny(10μm)/EVOH(10μm)/AD(20μm)/LDPE(100μm)
実施例6
実施例5の硬質複合シートおよび可撓性複合フィルムを用い、内容物をマヨネーズからシャンプーに変更することにより、実施例1と同様の方法で分配包装体詰め毛髪化粧料(シャンプー)を製造した。
試験例1:開口試験
実施例1〜6および比較例1〜3で得られた分配包装体(即ち、分配包装体詰め食品、分配包装体詰め毛髪化粧料)の開口性を次に説明するように評価した。即ち、各実施例及び比較例の分配包装体について、それぞれ100個を準備し、各分配包装体を指でつまんでV字型に折り曲げ線に沿って折り曲げ、目視で開口性を評価した。その結果、実施例1〜6および比較例2で得られた分配包装体は、いずれも問題なく開口できた。一方、比較例1および3で得られたものは、開口できないものがあった。
試験例2:酸素バリア性試験
<酸素バリア性試験評価用のロイコメチレンブルー寒天溶液の調製>
まず、0.01Mメチレンブルー水溶液(A液)10mL、0.01MSnCl・0.01MHCl水溶液(B液)50mLおよび2wt%寒天水溶液1L(C液)を調製した。次いで、上記A液10mLおよび上記B液20mLをビーカーに入れてA液による青色を消失させた。すなわち、ロイコメチレンブルー水溶液(D液)を調製し、その後、あらかじめ煮沸しておいた上記C液に上記B液の30mLを加え、更に煮沸を続け、これに上記D液を加え、直ちに約70〜80℃に冷却し、ロイコメチレンブルー寒天溶液を調製した。分配包装体に充填密封したゲル化したロイコメチレンブルー寒天溶液は、酸素が浸入すると白色から青色へと変色する。
<ロイコメチレンブルー寒天溶液を充填密封した分配包装体の製造>
実施例1〜5および比較例1〜3で用いた内容物(マヨネーズ)に代えてロイコメチレンブルー寒天溶液を用いた。つまり、可撓性複合フィルムのポケット部に、ゲル化前のロイコメチレンブルー寒天溶液をできる限り満注充填し、吐出口となる突条帯を形成した硬質複合シートと合わせ一部を除きヒートシールした。次いで、個々の分配包装体に切断し、未シール部分よりエアーを除いた後、完全にヒートシールした。次いで、これを冷蔵庫内に入れ、寒天溶液を固化させた。
<評価方法>
各分配包装体を35℃、未加湿状態の環境下(dry)で保管し、色の状態により評価した。表1中の下線は複合フィルムの特徴的部分を示す。また表2中「1」は白色、「5」は青色、数値が大きいほど酸素が進入していることを意味し、「−」はその後の保管を中止したことを意味する。
Figure 2011011745
Figure 2011011745
<結論>
表2からわかるように、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3のそれぞれの対比において、各実施例の分配包装体は、蓋体におけるEVOH層にハーフカットが施されているにも関わらず、EVOH層をPS層より印刷受容層側に配置すること(換言すれば、PS層をEVOH層よりも内容物側に配置すること)により、比較例1の分配包装体に比べ、酸素バリア性が向上していた。
なお、EVOH層をPS層より内容物側とした比較例2の分配包装体は、蓋体におけるEVOH層にハーフカットが及んでいないので、開口性に問題が生じないように、EVOH層の厚みを15μm以下とする必要があった。これに対し、実施例の分配包装体は、EVOH層をPS層より印刷受容層側に配置しているので、ハーフカット処理でEVOH層が完全に切断されてしまい、開口性に問題が生じず、しかも、酸素バリア性を向上させるためにEVOH層の厚みを15μm超とすることが可能となっていることがわかる(実施例1または3と比較例2との対比)。
さらに可撓性複合フィルムにおいて、当該フィルムの酸素バリア層を、EVOH層インナー層とEVOHアウター層とそれらに挟持される介在層との3層構成とし、且つ酸素バリア層を、フィルムの厚さに対し表面保護層の外表面から5〜50%の範囲に位置させ、更にフィルムの酸素バリア層におけるEVOH層インナー層及びEVOHアウター層のうち、少なくともEVOHアウター層に酸素吸収性樹脂を含有させている分配包装体は、酸素バリア性がさらに向上していた(実施例1または3と実施例4または5との対比)。特に、酸素バリア層におけるEVOHアウター層の厚さをEVOHインナー層の厚さより大にしてある実施例5の分配包装体は優れていた。
本発明の分配包装体は、それを構成する硬質蓋体が、印刷受容層、硬質中間層および硬質蓋体の裏面となるべき蓋体シール層をこの順に積層してなる硬質複合シートから形成されており、その硬質中間層が、ポリスチレン樹脂層と、ポリスチレン樹脂層よりも印刷受容層側に配置されているエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層とを有する。従って、ポリスチレン樹脂層がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層よりも印刷受容層側に配置されている場合よりも、硬質蓋体の酸素バリア性が向上する。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層自体がハーフカットされるので、その厚みを厚くしても開口性が低下することはない。よって、酸素に対してデリケートな内容物を包装する場合に有用である。
10 硬質蓋体
11 硬質蓋体の表面
12 折り曲げ線
13 突部
14 印刷受容層
15 硬質中間層
15a ポリスチレン樹脂層(PS層)
15b エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層(EVOH層)
16 蓋体シール層
17 ハーフカット部
20 可撓性容器体
21 ポケット部
22 表面保護層
23 酸素バリア層
23a 酸素バリアアウター層(EVOHアウター層)
23b 酸素バリアインナー層(EVOHインナー層)
23c 介在層
24 容器体シール層
100 分配包装体
200 硬質複合シート
300 可撓性複合フィルム

Claims (10)

  1. 表面の中央部に表面側から形成されたハーフカット部を有する折り曲げ線と折り曲げたときに吐出口を形成する突部とを有する硬質蓋体、及び内容物を収容するためのポケット部を有する可撓性容器体を有し、硬質蓋体の裏面に可撓性容器体の周縁部が融着されてなる分配包装体において、
    前記硬質蓋体は、印刷受容層、硬質中間層および硬質蓋体の裏面となるべき蓋体シール層をこの順に積層してなる硬質複合シートから形成されており且つ250μm以上700μm以下の厚みを有しており、
    前記硬質中間層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層と厚さ150μm以上500μm以下のポリスチレン樹脂層とを有し、
    少なくともエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層がポリスチレン樹脂層よりも印刷受容層側に配置されていることを特徴とする分配包装体。
  2. 前記印刷受容層がポリエステル樹脂層を有し、蓋体シール層がポリエチレン樹脂層を有する請求項1記載の分配包装体。
  3. 前記硬質中間層において、ポリスチレン樹脂層よりも印刷受容層側に配置されているエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層の厚みが15μm超50μm以下である請求項1または2記載の分配包装体。
  4. 前記可撓性容器体は、表面保護層、酸素バリア層および硬質蓋体側に配置されるべき容器体シール層をこの順に積層してなる可撓性複合フィルムから形成されており、前記酸素バリア層が、酸素吸収性樹脂を含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の分配包装体。
  5. 前記酸素バリア層が、表面保護層側にエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂アウター層と、容器体シール層側にエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂インナー層と、それらに挟持された介在層とを有し、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂インナー層及びエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂アウター層のうち少なくともエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂アウター層が酸素吸収性樹脂を含有する請求項4記載の分配包装体。
  6. 前記エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂アウター層の厚さが、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂インナー層の厚さよりも大きい請求項5記載の分配包装体。
  7. 前記酸素バリア層が、表面保護層の表面から可撓性複合フィルムの全厚の5〜50%の範囲に位置する請求項5又は6記載の分配包装体。
  8. 前記介在層が、ポリアミド樹脂層を有する請求項5〜7のいずれかに記載の分配包装体。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の分配包装体の可撓性容器体のポケット部に液状又はペースト状物が充填されてなる分配包装体詰め製品。
  10. 液状またはペースト状物が、液状食品またはペースト状食品である請求項9記載の分配包装体詰め製品。
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