JP2011006896A - 建築物およびその耐震補強方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】4つの壁面部・上面部・下面部の6つの面部を有して直方体形状に形成される立体ユニットを1つ以上備える建築物において、前記立体ユニットの6つの面部のうちの、少なくとも1つの壁面部を含む面部に対して、強度補強手段を適用し、前記強度補強手段として、前記面部の内部空間に発泡ポリウレタンを注入する手段、前記面部の外面に発泡ポリウレタンを吹き付ける手段、前記面部の外面から所定寸法を設けて前記外面を覆う外枠部材を取り付けて、前記面部の外面と前記外枠部材との空間に発泡ポリウレタンを注入する手段、のいずれかを適用して、建築物の耐震強度を向上させた建築物。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、地震の際の衝撃によって、筋交が所定の位置から外れたり、補強金具を取り付けたジョイント部が破壊されたりする虞があり、筋交や補強金具だけでは十分な耐震効果が発揮されないという問題点がある。
また、既存の建物に、筋交や補強金具を取り付ける場合には、壁面を壊してから施工しなければならないので、工事や破壊箇所の修復に多くの手間や費用がかかる、という問題点もある。
この出願の目的は、「住んだまま、産業廃棄物もほとんど出さずに、既設木造建築物の気密断熱化、高耐久化、省エネルギー化、快適化、等が実現できる気密断熱化工法を提供する」ことである。
4つの壁面部・上面部・下面部の6つの面部を有して立体形状に形成される立体ユニットを1つ以上備える建築物において、
前記立体ユニットの6つの面部のうちの、少なくとも1つの壁面部を含む面部に対して、強度補強手段を適用し、
前記強度補強手段として、
前記面部の内部空間に発泡ポリウレタンを注入する手段、
前記面部の外面に発泡ポリウレタンを吹き付ける手段、
前記面部の外面から所定寸法を設けて前記外面を覆う外枠部材を取り付けて、前記面部の外面と前記外枠部材との空間に発泡ポリウレタンを注入する手段、
のいずれかが用いられる。
前記建築物は、所定の耐震強度に基づく壁面部の必要壁倍率を有し、
強度補強された前記壁面部の壁倍率が、必要壁倍率を満足するように設定される。
(3)(1)または(2)の建築物において、
前記発泡ポリウレタンは、所定の密度を有するように設定される。
建築物に耐震補強を施す方法であって、
前記建築物は、4つの壁面部・上面部・下面部の6面の面部を有して立体形状に形成される立体ユニットを1つ以上備え、
前記立体ユニットの6つの面部のうちの、少なくとも1つの壁面部を含む面部に対して、強度を補強するステップを行い、
前記強度を補強するステップとして、
前記面部の内部空間に発泡ポリウレタンを注入するステップ、
前記面部の外面に発泡ポリウレタンを吹き付けるステップ、
前記面部の外面から所定寸法を設けて前記外面を覆う外枠部材を取り付けて、前記面部の外面と前記外枠部材との空間に発泡ポリウレタンを注入するステップ、のいずれかが用いられる。
本発明による建築物は、所定の耐震強度に基づく壁面部の必要壁倍率を有し、強度補強された前記壁面部の壁倍率が、必要壁倍率を満足するように設定され、また、発泡ポリウレタンは所定の密度を有するように設定されるので、正確に計算された強度設計が実行されて、希望の耐震強度に基づく建築物を得ることができる。
そして、発泡ポリウレタンの注入については、面部または外枠部材の側端部にある隙間を用いて注入することにより、面部に穴をあけたり、その一部を破壊したりする必要が無くなり、施工工事の手間や費用を大幅に軽減することができる。
さらに、本発明は、既設の木造建築物に適用すれば、中古住宅の評価価値を上げることにもなり、今後の国策である耐震強度が高くて良質な住宅のストック経済の構築と、中古住宅流通の推進にも大きく貢献できる。
また、本発明の発泡ポリウレタン注入/吹付手段を用いれば、既設の木造建築物の改修工事において、壁に穴を開けることもなく、現状の建築物をほとんど傷つけることがなく、原則として、充填済みの断熱材等は撤去しない施工方法であるので、産業廃棄物が発生することもない。しかも、住んだまま施工が可能なので住人の移動も不要である。
図1は、本発明による既設木造の建築物100における施工例を示す全体図である。
まず、屋根部分については、屋根垂木1の下面に下地材4として厚さ3mm程度の合板もしくはシートを打ち付け、その下面より現場発泡ウレタン5を吹き付けて屋根部分の施工を行う。
また、屋根部分については、建築物100の上部を示す図2のように、母屋2の下面に下地材4として3mm程度の合板もしくはシートを打ち付け、その下面より現場発泡ウレタン5を吹き付けて屋根部分の施工を実施することができる。
なお、天井の発泡ウレタンの吹き付け施工については、屋根の施工を行わない場合にも有効であるが、屋根の施工と天井の施工の両方を行ってもよい。
図1において、左側の壁体内の充填断熱材7と外壁材8との隙間、もしくは、右下側の充填断熱材7と内装材9の隙間には、図6に示すように、各注入個所17より現場発泡ウレタン5を注入し、壁体内の施工を行う。
また、図1の右上のように、壁体内に充填断熱材が無い場合は、壁体内の空間全体に現場発泡ポリウレタン5を注入し、壁体内の施工を行う。
なお、図1に示すように、本施工工事と平行して、開口部に気密断熱サッシ16と換気装置15を設けることにより、より快適な省エネルギー建築が実現できる。
また、図4の床下部分のように、土間コンクリートが無く、床下土壌12が露出している場合は、湿気防止の為土壌表面に防湿層13を施し、その上面および基礎10の内側に現場発泡ウレタンを吹き付ける施工を行い、床下部分の気密断熱を確保するとよい。
さらに、床下部分に土間コンクリートが無く、床下土壌12が露出している場合であっても、図5の例のように、布基礎10の内側と土間コンクリート11表面もしくは床下土壌12表面には処理をせず、床板14の下面に現場発泡ウレタンを吹き付けて、床部分の気密断熱を確保することもできる。
図7の上図に示すように、建築物200は、4つの壁面部・天井部・床面部の6面の平面を有して直方体形状に形成された立体ユニットを1つ以上備えており、その立体ユニットU1の6面の平面部のうちの一つを「壁面部S1」としている。
なお、破線で記載されているのは、壁面部S1に隣接する「別の壁面部」である。
また、図7の下図の壁面部S1には、その外面g1から所定寸法h1の間隔を設けるように、壁面部S1の左右端部に縦横方向の介在部材(nb1,nb2)を設けて、その壁面部S1の外面g1を覆う平板な外枠部材W1を取り付けている。
こうして、壁面部s1と外枠部材W1との間には、内部空間nk1が確保されているので、その内部空間nk1の中に発泡ポリウレタンを注入すればよい。
これにより、発泡ポリウレタンの注入に際して、平面部または外枠部材に穴をあけたり、その一部を破壊したりする必要が無くなる。
この住宅200は、4つの壁面部(S1,S2,S3,S4)、天井部T1、床面部Y1の6面の平面部を有して、「壁面部(S1,S2,S3,S4)−天井部T1−床面部Y1」の6面の平面部によって、直方体の立体形状に形成された「立体ユニットU1」を備えている。
また、この住宅200では、天井部T1の上部に屋根部YN1があるタイプとしているが、別の例として、天井部T1と屋根部YN1とが一体のもの、天井部T1がなく屋根部YN1のみがあるもの、などもあり、本発明では、天井部T1と屋根部YN1とは、両方とも「上面部(平面部)」とみなすことができる。
また、本発明は、住宅以外にも、会社事務所、倉庫、店舗、高層ビルディングなどの建築物について適用することができ、既築および新築のいずれの建築物についても適用することができることは勿論、建築物としては木造に限らず、鉄骨系、鉄筋コンクリート(RC構造)の建築物などについても適用することができる。
そして、鉄筋コンクリート(RC構造)の壁部では、壁部の外面から所定寸法を設けて外面を覆う外枠部材を取り付けておき、壁の外面と外枠部材との空間に発泡ポリウレタンを注入することにより、坐屈に強い耐震構造を構築することができる。
本発明の建築物では、立体ユニットU1の6面の平面部である「壁面部(S1,S2,S3,S4)、天井部T1、床面部Y1」のうちの、少なくともひとつの壁面部を含む平面部に対して、発泡ポリウレタンによる強度補強手段を施すことにより、建築物の耐震強度を向上させる構成としている。
本発明では、壁面部S1の1箇所のみ、壁面部S1とそこから離れた壁面部S3の2箇所、などのように強度補強しても耐震強度は向上するが、ひとつの壁面部に隣接する2つ以上の面部に対して、発泡ポリウレタンによる強度補強手段を施すことにより、建築物の耐震強度をさらに向上させることができる。
とりわけ、立体ユニットU1のすべての平面部の「天井部T1、壁面部S1,壁面部S2,壁面部S3,壁面部S4、床面部Y1」に、発泡ポリウレタンによる強度補強手段を施すこととすれば、6つの平面部で支える安定した6面体の立体構造となるので、建築物の耐震強度を理想的に高めることができる。
この実験に用いた「壁材(壁面部)」は、「縦2.5m×横0.9m(約半間)×幅10.5cm(約3.5寸)」の寸法からなる板状体(ボード体)として形成したものであり、(1)2つの平行する壁面間に発泡ポリウレタンを注入する、(2)外面に発泡ポリウレタンを吹き付ける、(3)外面から所定寸法を設けてその外面を覆う外枠部材を取り付けて、外面と外枠部材との空間に発泡ポリウレタンを注入する、のいずれかの手段を用い、また、このとき、注入または吹き付けられる発泡ポリウレタンの密度は「42kg/cm3」として統一している。
そして、「壁材の壁仕上げ」については、「仕上げなし」は発泡ポリウレタンの板状体そのままのものを示し、「両面プラスターボード」は発泡ポリウレタンの板状体の2つの壁面にプラスターボードを貼り付けたものを示している。
ここで、「変形角」とは、水平力よる壁の変形から、脚部変形と頭部変形の差を階高で割った角度(ラジアン)である。
「壁倍率」とは、長さ1mあたりの壁の水平強度を1.96kN/m の基準強度で割った値である。
下記表の仕上げなしの壁材(壁面部)は、変形角1/100の壁倍率の「平均値1.8」を有しており、長さ1m当り3.53kN(1.8×1.96=3.53)の地震力に耐えることを表している。
そこで、実験結果から、仕上げなしの断熱材だけの壁の壁倍率は1.01、両面プラスターボードの間に断熱材を充填した壁の壁倍率は2.49となる。
A棟 X方向 外壁 0.15m/m2 内壁 0.14m/m2 計 0.29m/m2
Y方向 外壁 0.21m/m2 内壁 0.10m/m2 計 0.31m/m2
B棟 X方法 外壁 0.17m/m2 内壁 0.12m/m2 計 0.29m/m2
Y方向 外壁 0.23m/m2 内壁 0.08m/m2 計 0.31m/m2
C棟 X方法 外壁 0.19m/m2 内壁 0.16m/m2 計 0.35m/m2
Y方向 外壁 0.20m/m2 内壁 0.08m/m2 計 0.28m/m2
阪神大震災の結果、建物の地震時強度が建物重量の0.46倍以上有った建物の被害は少ない、との報告があった。
そこで、阪神大地震で被害にあわない、「床面積当りの壁量と壁倍率の関係」は、次のようになる。
平家軽い屋根 必要耐力 1.07×0.46=0.492kN
必要壁耐力 0.492/0.28=1.76kN/m
必要壁倍率 1.76/1.96=0.9 全ての壁が0.9以上の壁倍率
平家重い屋根 必要耐力 1.47×0.46=0.676kN
必要壁耐力 0.676/0.28=1.42kN/m
必要壁倍率 2.42/1.96=1.23 全ての壁が1.23以上の壁倍率
2階建軽い屋根 必要耐力 2.78×0.46=1.279kN
必要壁耐力 1.279/0.28=4.57kN/m
必要壁倍率 4.57/1.96=2.33 全ての壁が2.33以上の壁倍率
2階建重い屋根 必要耐力 3.14×0.46=1.444kN
必要壁耐力 1.444/0.28=5.16kN/m
必要壁倍率 5.16/1.96=2.63 全ての壁が2.63以上の壁倍率
このように、本発明による発泡ポリウレタンを注入(充填)した壁材を用いることにより、阪神大地震程度の震度7クラスの地震を受けてもほとんど被害の生じない建物を作ることが出来る。
調査した建物は最近の建物で壁量が多いことが予想されるが、発泡ポリウレタンが注入された壁材では、壁倍率が大きいので、壁量が半分程度になっても安全である。
また、壁量の多い建物では外壁のみを発泡ポリウレタン入りの壁として、間仕切り壁には発泡ポリウレタンを入れなくても、建物は安全であるともいえる。
ただし、床の強度(床倍率)や、偏心率については検討が必要である。
ここでの「角柱体」は、発泡ポリウレタンの注入または吹き付けにより形成された「壁材の模擬体」であり、発泡ポリウレタンの密度が「28kg/cm3」と「42kg/cm3」の2種類のものを用い、ここではそれを「KGK28とKGK42」としている。
実験結果の「応力度−ひずみ度」の関係から、次のようなことが得られた。
・弾性範囲 KGK28:0.12N/mm2程度まで弾性
KGK42:0.16N/mm2程度まで弾性
・圧縮強度 KGK28:0.23N/mm2では破壊しない
KGK42:0.36N/mm2では破壊しない
実験結果からヤング係数E,せん断弾性係数G,を求める。(実験の弾性範囲と思われる値から求めた)。
「壁材」が「壁倍率1(巾1mの壁が1.96kNの地震力に耐える)」であるとして、変形を求める。
この場合は、壁倍率は上記の半分になり、KGK28で0.65程度、KGK42で0.85程度になる。
ここでの「壁材」は、圧縮にも引張にも耐えるように設計するので、実際の耐力は今回の実験結果より大きくなると考えられる。
また、「壁材」の壁両面の材料と接着することにより、壁倍率はさらに増加することが予想される。
壁倍率は小さくても、「発泡ポリウレタン」を入れた壁材が全て有効であるので、新築建物全体の耐震性能は大きく向上することが予想される。
本発明を適用して、建築物の面部に発泡ポリウレタンを注入または吹き付けするにあたっては、発泡ポリウレタンの密度としては「10kg/cm3 (低密度)〜250kg/cm3 (高密度)」の範囲において適宜に調整して用いることができ、発泡ポリウレタンの密度を適切に選定するにより、建築物に合わせた正確で強力な耐震設計が可能となる。
S1、S2、S3、S4 壁面部(側面部、平面部、面部)
T1 天井部(上面部、平面部、面部)
YN1 屋根部(上面部、平面部、面部)
Y1 床面部(下面部、平面部、面部)
W1 外枠部材(平面部、面部)
1 屋根垂木
2 母屋
3 桁
4 下地材
5 発泡ポリウレタン(現場発泡ポリウレタン)
6 天井板
7 充填断熱材
8 外壁材
9 内装材
10 布基礎
11 土間コンクリート
12 土壌
13 防湿層
14 床板
15 換気装置
16 気密断熱サッシ
17 発泡ウレタン注入個所
Claims (4)
- 4つの壁面部・上面部・下面部の6つの面部を有して立体形状に形成される立体ユニットを1つ以上備える建築物において、
前記立体ユニットの6つの面部のうちの、少なくとも1つの壁面部を含む面部に対して、強度補強手段を適用し、
前記強度補強手段として、
前記面部の内部空間に発泡ポリウレタンを注入する手段、
前記面部の外面に発泡ポリウレタンを吹き付ける手段、
前記面部の外面から所定寸法を設けて前記外面を覆う外枠部材を取り付け、前記面部の外面と前記外枠部材との空間に発泡ポリウレタンを注入する手段、
のいずれかが用いられる、ことを特徴とする建築物。 - 請求項1に記載の建築物において、
前記建築物は、所定の耐震強度に基づく壁面部の必要壁倍率を有し、
強度補強された前記壁面部の壁倍率が、前記必要壁倍率を満足するように設定される、ことを特徴とする建築物。 - 請求項1または2に記載の建築物において、
前記発泡ポリウレタンは、所定の密度を有するように設定される、ことを特徴とする建築物。 - 建築物に耐震補強を施す方法であって、
前記建築物は、4つの壁面部・上面部・下面部の6つの面部を有して立体形状に形成される立体ユニットを1つ以上備え、
前記立体ユニットの6つの面部のうちの、少なくとも1つの壁面部を含む面部に対して、強度を補強するステップを行い、
前記強度を補強するステップとして、
前記面部の内部空間に発泡ポリウレタンを注入するステップ、
前記面部の外面に発泡ポリウレタンを吹き付けるステップ、
前記面部の外面から所定寸法を設けて前記外面を覆う外枠部材を取り付けて、前記面部の外面と前記外枠部材との空間に発泡ポリウレタンを注入するステップ、
のいずれかが用いられる、ことを特徴とする建築物の耐震補強方法。
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