JP2011006577A - ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた耐熱性を有して成形性を損なうことがなく、結晶化度が20%以下で且つ嵩密度が0.05〜0.02g/cm3のポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 例えば乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、97/3〜94/6、又は3/97〜6/94であるポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を、示差走査熱量測定に基づくポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の結晶融解開始温度〜融点+40℃の水蒸気で発泡させることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法に従って、示差走査熱量測定において、式1(結晶化度Xc(%)=(結晶融解熱量(ΔHm)−結晶化熱量(ΔHc))/93×100)で表される結晶化度が20
%以下、且つ嵩密度が0.02〜0.05g/cm3であるポリ乳酸系樹脂発泡粒子を作製すること。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその製造方法に関する。
近年、石油事情、また環境問題といった観点から、従来の合成樹脂製品はリサイクル、リユースされるようになってきている。主に魚箱、家電緩衝材、食品用トレー等に使用される発泡スチロール(発泡ポリスチレン)も例外ではなく、破砕減容して主にマテリアルリサイクルされるようになってきている。
しかし、こういったマテリアルリサイクルの試みは卸売市場で発生する使用済み魚箱、大型家電の緩衝材等、使用済みのものの回収が容易なものに限られており、一般小売業者、飲食店で発生するものや末端消費者が直接自宅に持ち帰る商品に使用されているものの回収率は極めて低い。回収が困難な発泡スチロール製品は一般ゴミと一緒に廃棄されることが多いが、相応の設備を有しない焼却処分場では、その高い燃焼熱ゆえに焼却炉を傷めてしまう。
これらの状況に鑑み、燃焼熱が低く炉を傷めず、しかも微生物による分解が可能な発泡成形体として、ポリ乳酸系樹脂発泡体及びその成形体が、特許文献1で開示されている。この発泡成形体は、非石油資源である澱粉を出発原料としており、近年の石油事情、環境保全の見地から見て非常に望ましいものであると言える。
しかしながら、特許文献1の実施例におけるポリ乳酸系樹脂に含有される乳酸成分の異性体比率(L体/D体)のうちD体のモル比が5モル%の場合、発泡倍率が15倍であり、さらなる高倍率化が望まれるものであった。
特許文献2には、150℃の加熱寸法変化率が5%未満であるポリ乳酸系発泡成形体について開示されている。特許文献2の基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂は、その構成モノマー成分としてD体およびL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体の含有量が5モル%未満であると共に、上記ポリ乳酸系樹脂における融点と動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度が一定の条件を満たすことを特徴としている。
しかしながら、特許文献2のポリ乳酸系樹脂からなる発泡成形体は、耐熱性には優れるが、実施例における見掛け密度は0.041g/cm3以上であり、更なる高発泡倍率化が望まれるものであった。
また特許文献3には、乳酸成分単位を50モル%以上含むポリ乳酸からなる発泡粒子であって、該発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定における吸熱量(ΔHendo:Bead)と発熱量(ΔHex:Bead)との差(ΔHendo:Bead−ΔHexo:Bead)が0J/g以上30J/g未満であり、且つ該吸熱量(ΔHendo:Bead)が15J/g以上であることを特徴とするポリ乳酸発泡粒子について開示されている。
しかしながら、特許文献3においても、実施例における見掛け密度は0.048g/cm3以上であり、更なる高発泡倍率化が望まれるものであった。
以上のように、優れた耐熱性を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造するためには、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度を低くする必要があるが、発泡倍率を上げることが困難といった問題点があった。
特開2000−17039号公報 特開2007−100025号公報 特開2004−83890号公報
本発明の目的は、優れた耐熱性を有して成形性を損なうことがなく、結晶化度が20%以下で且つ嵩密度が0.02〜0.05g/cm3のポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、97/3〜94/6、又は3/97〜6/94であるポリ乳酸系発泡性樹脂粒子を、常圧で且つ示差走査熱量測定に基づくポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を特定温度の水蒸気で発泡させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は特定の結晶化度であり、そのような発泡粒子は優れた耐熱性を有し且つ発泡倍率を高くできる、即ち嵩密度が低いことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第一は、乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、97/3〜94/6、又は3/97〜6/94であるポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を発泡させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子であって、示差走査熱量測定において式1(結晶化度Xc(%)=(結晶融解熱量(ΔHm)−結晶化熱量(ΔHc))/93×100)で表される結晶化度が20%以下、且つ嵩密度が0.02〜0.05g/cm3であるポリ乳酸系樹脂発泡粒子に関する。好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を、示差走査熱量測定に基づくポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の結晶融解開始温度〜融点+50℃の水蒸気で発泡させてなる上記記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子に関する。より好ましくは、ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を発泡させた直後に、40℃以下の空気又は水と接触させることによってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を急冷させてなる上記記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子、に関する。本発明の第二は、乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、97/3〜94/6、又は3/97〜6/94であるポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を、示差走査熱量測定に基づくポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の結晶融解開始温度〜融点+50℃の水蒸気で発泡させることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。好ましい実施態様は、ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を発泡させた直後に40℃以下の空気又は水と接触させることによってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を急冷することを特徴とする請求項4に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
本発明に従えば、優れた耐熱性を有して成形性を損なうことがなく、結晶化度が20%以下で且つ嵩密度が0.02〜0.05g/cm3のポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、結晶化度が低くても、嵩密度が低いことが特徴である。
本発明のポリ乳酸系樹脂とは、ポリ乳酸を主たる成分とする樹脂組成物であり、本発明の効果を阻害しない範囲でポリ乳酸系樹脂に他の樹脂を添加して基材樹脂とすることができる。
なお前記ポリ乳酸系樹脂の主成分であるポリ乳酸は、乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、97/3〜94/6、又は3/97〜6/94であり、一部モノマーが乳酸と交換可能な脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族多価アルコール等で置き換わってもよく、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油で一部架橋されていてもよい。異性体比率が上記範囲であれば、高い結晶化度による成形性の阻害や、低い結晶化度による耐熱性の悪化がない。
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、少なくとも1種含有される。また、前記脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられ、少なくとも1種含有される。また、前記脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種含有される。
前記ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度は、JIS K 7210(荷重2.16kg)に準拠したメルトインデックス(MI)値で0.1〜10g/10分であることが好ましい。MI値がこの範囲にあれば、生産性に優れ、発泡倍率の高い発泡成形体を得やすい傾向にあり、本発明の目的・効果を発現しやすい。
前記他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、前記ポリエステル系樹脂としては、生分解性の観点からは脂肪族ポリエステル成分単位を少なくとも35モル%以上含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましく、該生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族カルボン酸との重縮合物が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本発明においては、ポリ乳酸系樹脂をゲル化処理することが、発泡性、成形性の観点から好ましい。ゲル化処理により、ポリ乳酸系樹脂を発泡に適する前記溶融粘度領域まで増粘させることができる。該ゲル化処理には、従来公知の各種の方法、例えば、ポリイソシアネート化合物、過酸化物、酸無水物、エポキシ化合物等、一般的な架橋剤を少なくとも1種選択して用いる方法、電子線架橋方法、シラン架橋方法等が包含されるが、架橋剤を用いる方法が好ましい。
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂環族、脂肪族系のポリイソシアネート化合物が使用可能であり、芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。また、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロン、水酸化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられ、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。
前記過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン等の有機化酸化物が挙げられる。
前記酸無水物としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、エチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
前記エポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン−ブチルアクリレート共重合体、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等の各種グリシジルエーテル及び各種グリシジルエステル等が挙げられる。
これら架橋剤のうち、ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。その理由は、ポリイソシアネート化合物を用いれば、混練時の架橋増粘によるトルクアップが少なく、混練後に水分の存在下で加熱することで尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合などによる後増粘が可能だからである。ポリイソシアネート化合物の中でも、汎用性、取り扱い性、耐候性等の観点からトリレン、ジフェニルメタン骨格とするポリイソシアネート化合物が好ましく、その中でもジフェニルメタンのポリイソシアネートを使用することがより好ましい。
前記架橋剤の添加量は、任意に選定することが可能であるが、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1重量部〜6.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2重量部〜5.0重量部、更に好ましくは0.5重量部〜4.0重量部である。添加量が0.1重量部〜6.0重量部であれば、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を発泡に適した領域まで上昇させることができる。
前記ポリ乳酸系樹脂中には、例えば、黒、灰色、茶色、青色、緑色等の着色顔料や染料などの着色剤を添加してもよい。着色した基材樹脂を用いれば着色された発泡粒子及び発泡成形体を得ることができる。着色剤としては、有機系、無機系の顔料、染料などが挙げられる。このような顔料及び染料としては、従来公知の各種のものを用いることができる。着色剤の添加量は着色の色によっても異なるが、通常、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.001重量部〜5重量部が好ましく、0.02重量部〜3重量部とすることがより好ましい。
また前記ポリ乳酸系樹脂中には、本発明の効果を損なわない程度であれば必要に応じて、気泡調整剤、末端封鎖剤、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤などの添加剤を添加しても良い。
前記気泡調整剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ほう酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の無機物が挙げられ、それらを予めポリ乳酸系樹脂中に添加することができる。気泡調整剤の添加量は、所望の発泡倍率によって適宜決めればよいが、通常、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.001〜5.0重量部が好ましい。
基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂に着色顔料、染料又は無機物等の添加剤を添加する場合は、添加剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、通常は分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作り、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量測定において式1で表される結晶化度が20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下である。結晶化度20%以下であれば成形時の発泡及び融着を阻害することがない。
結晶化度Xc(%)=(結晶融解熱量(ΔHm)−結晶化熱量(ΔHc))/93×100 (式1)
また本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は、0.02〜0.05g/cm3であり、好ましくは0.02〜0.045g/cm3、より好ましくは0.02〜0.040g/cm3である。嵩密度がこの範囲であれば、優れた緩衝性能を有する成形体が製造可能となる。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、包材や緩衝材、断熱材、農業資材などの用途に用いることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法では、以下のように、まずポリ乳酸系樹脂粒子を製造し、次いで該樹脂粒子に発泡性ガスを含浸させてポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を得、更にこれを発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得る方法を例示するが、本特許はこのポリ乳酸系樹脂粒子やポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の作製方法に何ら限定されるものではない。
<ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の作製>
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得るには、特に新規な装置及び方法を用いて行う必要はなく、公知の装置及び方法が利用可能であるが、以下に例示する。
(ポリ乳酸系樹脂粒子の作製)
本発明においてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を好ましく製造するには、まずポリ乳酸系樹脂粒子を作製する。このポリ乳酸系樹脂粒子は従来公知の方法で作ることができ、例えば、ペレット状のポリ乳酸系樹脂、及び必要に応じて架橋剤、発泡核剤、各種添加剤を一緒に単軸及び二軸押出機で加熱・混練しつつ押出した後、水中カッターやストランドカッター等でカットすることで得ることができる。カット後のポリ乳酸系樹脂粒子の1個当りの重量は、0.05〜10mgが好ましく、より好ましくは0.1〜4mgである。1個当りの粒子重量が前記範囲であれば、樹脂粒子の生産性が良好であり、発泡粒子の充填性が良好になる傾向である。
(ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の作製)
次いで、ポリ乳酸系樹脂粒子と発泡剤を密閉容器内に充填し、ポリ乳酸系樹脂組成物粒子の軟化温度以上に加熱した後、常温まで冷却後取り出すことにより発泡剤が含浸されたポリ乳酸系発泡性樹脂粒子を得ることができる。
前記発泡剤としては、従来公知のもの、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソヘキサン、ノルマルヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン等の炭化水素系発泡剤や、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素系発泡剤、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル系発泡剤、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機系発泡剤が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
発泡剤の含浸量としては、発泡剤の種類や所望の発泡倍率により調整すれば良いが、嵩密度0.02〜0.05g/cm3発泡粒子を得るためには、発泡性粒子を構成する基材樹脂100重量部に対して、5重量部以上が好ましい。
なお、発泡剤の含浸では、安定した含浸性、発泡性を得るために含浸助剤、分散剤などを使用しても良い。含浸助剤としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類に代表されるプロトン系溶剤,アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類,酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルプロピルアセテートなどのエステル類,トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、などに代表される非プロトン系溶剤、などが挙げられるが、水性媒体で含浸する場合はポリ乳酸系樹脂の加水分解を助長しない、非プロトン系溶剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
また、発泡剤の含浸を水性媒体で行う場合には、樹脂中への水の浸透を抑制する目的で、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム等1価の金属塩、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の2価の金属塩、硫酸アルミニウム等の3価の金属塩等の水溶性塩類などを添加することが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を得る方法として、単軸及び二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム押出機でポリ乳酸系樹脂と発泡剤、必要に応じて架橋剤、発泡核剤、各種添加剤を加熱・混練しつつ押出し、水を供給しながら球状にカットしてポリ乳酸系発泡性樹脂粒子を得る方法も挙げることができる。
(ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の作製)
次に、前記ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を示差走査熱量測定に基づくポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の結晶融解開始温度〜融点+50℃の水蒸気で加熱し発泡させる。その際、発泡ムラや発泡粒子の収縮の発生を抑制することが好ましく、そのためには発泡時間が長くなりすぎないようにコントロールすればよい。
前記水蒸気の温度は、示差走査熱量測定に基づくポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の結晶融解開始温度〜融点+50℃が好ましく、より好ましくは結晶融解開始温度+5℃〜融点+45℃である。水蒸気の温度がこの範囲であれば、結晶化度が低く且つ嵩密度の低いポリ乳酸系樹脂発泡粒子を安定して製造することができる。
本発明に使用する水蒸気は、取り出し時に常圧に戻す時間がかかり過ぎなければ特に限定はないが、常圧で100℃以上の水蒸気が得られることから、過熱水蒸気を用いることが好ましい。過熱水蒸気は従来公知の方法で供給される。例えば、ボイラー等から得られた水蒸気を誘導加熱やヒーターによって加熱することによって得られる。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、発泡させた直後に40℃以下の空気又は水と接触させ急冷することが好ましい。さらに好ましくは35℃以下の空気又は水と接触させ急冷する。空気又は水の温度が40℃以下であれば、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度を高くすることなく冷却できる。
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造工程)
本工程では、上記で得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を型内成形することでポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得る。成形は通常発泡スチロールの成形に用いられる成形機やポリオレフィン系発泡粒子の成形に用いられる成形機を用いることができ、通常、蒸気圧力0.03〜0.3MPa、好ましくは0.05〜0.20MPaで行う。成形時の2次発泡力が乏しい場合は、一般的な発泡成形に用いられる加圧充填、圧縮充填の方法のほか、空気、窒素、二酸化炭素などの無機ガスをポリ乳酸系樹脂発泡粒子に付与してもよい。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
<ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子、発泡粒子の示差走査熱量測定>
100℃×24時間結晶化処理したポリ乳酸系樹脂、又はポリ乳酸系樹脂発泡性粒子のサンプル5mgを、パーキンエルマー社製DSCにセットし、10℃/分の速度で0〜200℃まで昇温し、結晶化熱量(ΔHc)、融解開始温度、融点、結晶融解熱量(ΔHm)を測定した。結晶化度は、結晶化度Xc(%)=(ΔHm−ΔHc)/93×100、の式により算出した。
<発泡粒子の嵩密度の測定方法>
まず、内容積2000cm3のポリエチレン製カップに発泡粒子を擦切り一杯量り取り、重量を測定し、カップ重量を差引いて発泡粒子の重量を求めた。得られた発泡粒子の重量と見かけ体積(2000cm3)から下記の式により求められた。
嵩密度(g/cm3)=発泡粒子の重量/見かけ体積(2000cm3
(実施例1)
乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が95.6/4.4であるポリ乳酸樹脂100重量部に対してポリイソシアネート化合物「ミリオネートMR−200」(日本ポリウレタン工業(株)製)を2重量部添加しつつ、2軸混練機「TEM−35B」(東芝機械(株)製)にてシリンダ温度210℃で溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφに粒子化されたポリ乳酸系樹脂粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂粒子100重量部とともに、発泡剤として混合ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30)25重量部を密閉容器に充填し、130℃で30分間保持し、発泡剤を含浸させた。冷却水を用いて十分に冷却した後取り出し、ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の融解開始温度は129℃であり、融点は151℃であった。次いでポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を常圧下で130℃の過熱水蒸気を用いて発泡させ、発泡させた直後に20℃の空気中にて冷却しポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は0.037g/cm3であり、結晶化度は14.0%であった。結果を表1に示す。
(実施例2)
過熱水蒸気の温度を170℃にして発泡させたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。結果を表1に示す。
(実施例3)
過熱水蒸気の温度を190℃にして発泡させたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。結果を表1に示す。
(実施例4)
発泡直後に35℃の水で冷却したこと以外は実施例3と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。結果を表1に示す。
(実施例5)
発泡直後に10℃の水で冷却したこと以外は実施例3と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。結果を表1に示す。
(実施例6)
乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が94.2/5.8であるポリ乳酸樹脂を使用したこと以外は実施例2と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が98.6/1.4であるポリ乳酸樹脂を使用し、過熱水蒸気の温度を210℃にして発泡させたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化速度が早く結晶化度が高い発泡粒子となった。結果を表1に示す。
(比較例2)
過熱水蒸気の温度を110℃にして発泡させたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は発泡する途中で結晶化が起こり嵩密度及び結晶化度が高い発泡粒子となった。結果を表1に示す。
(比較例3)
過熱水蒸気の温度を220℃にして発泡させたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、結晶化度は低いものの収縮していまい嵩密度が高い発泡粒子となった。結果を表1に示す。
(比較例4)
発泡直後に60℃の水で冷却してこと以外は実施例4と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は低いものの冷却速度が遅くなったために結晶化度が高い発泡粒子となった。
Figure 2011006577

Claims (5)

  1. 乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、97/3〜94/6、又は3/97〜6/94であるポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を発泡させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子であって、示差走査熱量測定において式1で表される結晶化度が20%以下、且つ嵩密度が0.02〜0.05g/cm3であるポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
    結晶化度Xc(%)=(結晶融解熱量(ΔHm)−結晶化熱量(ΔHc))/9
    3×100 (式1)
  2. ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を、示差走査熱量測定に基づくポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の結晶融解開始温度〜融点+50℃の水蒸気で発泡させてなる請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
  3. ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を発泡させた直後に、40℃以下の空気又は水と接触させることによってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を急冷させてなる請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
  4. 乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、97/3〜94/6、又は3/97〜6/94であるポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を、示差走査熱量測定に基づくポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の結晶融解開始温度〜融点+50℃の水蒸気で発泡させることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
  5. ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を発泡させた直後に40℃以下の空気又は水と接触させることによってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を急冷することを特徴とする請求項4に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
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