JP2011004771A - タンパク質産生方法および使用するための改変細胞 - Google Patents
タンパク質産生方法および使用するための改変細胞 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】細胞寿命を延長するための方法を同定すること。
【解決手段】増大した量のBcl−xLタンパク質を有する細胞およびタンパク質産生におけるそれらの使用を開示する。本発明は、タンパク質が細胞によって天然に産生されるタンパク質であるか、またはタンパク質が細胞に対して異種のタンパク質であるかに関わらず、細胞のタンパク質産生を増強するための手段として、細胞寿命を延長するための方法を提供する。従って、1つの局面において、本発明は、細胞によるタンパク質産生を増加させるための方法を提供し、この方法は、この細胞中で抗アポトーシス遺伝子の発現を増加させる工程を包含する。特定の実施形態において、この細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない。特定の実施形態において、この細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、昆虫細胞、または両生類細胞である。
【選択図】図17
【解決手段】増大した量のBcl−xLタンパク質を有する細胞およびタンパク質産生におけるそれらの使用を開示する。本発明は、タンパク質が細胞によって天然に産生されるタンパク質であるか、またはタンパク質が細胞に対して異種のタンパク質であるかに関わらず、細胞のタンパク質産生を増強するための手段として、細胞寿命を延長するための方法を提供する。従って、1つの局面において、本発明は、細胞によるタンパク質産生を増加させるための方法を提供し、この方法は、この細胞中で抗アポトーシス遺伝子の発現を増加させる工程を包含する。特定の実施形態において、この細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない。特定の実施形態において、この細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、昆虫細胞、または両生類細胞である。
【選択図】図17
Description
(発明の背景)
本発明は、細胞生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は、真核生物細胞によるタンパク質産生に関する。
本発明は、細胞生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は、真核生物細胞によるタンパク質産生に関する。
真核生物細胞によって産生されるタンパク質は、有意な治療的価値を有し得る。このようなタンパク質は、真核生物細胞によって天然に産生され得るか、または真核生物細胞が、組換え分子生物学技術によって操作されて、異種タンパク質を産生し得る。天然または人工のいずれかによって産生されるタンパク質の非限定的な例としては、エリスロポエチン、インシュリン、および第IX因子が挙げられる。
真核生物細胞培養物において、培養された細胞からのタンパク質の産生は、比活性(すなわち、細胞当たりに産生されるタンパク質の量)およびバイオリアクター実施の過程にわたる生細胞質量の合計(ICA)の関数である。しかし、培養細胞によるタンパク質の産生は、バイオリアクター中での細胞死によって制限される。2つの形態の細胞死(壊死およびアポトーシス)が存在する。壊死は、代表的に細胞に対する外傷性損傷または傷害に起因する細胞死の1つの形態である。剪断力および気泡は、バイオリアクターにおける壊死の推定される原因である。アポトーシス(プログラム細胞死としても公知)は、種々のシグナル伝達経路によって、細胞自体が破壊する細胞死の1つの形態である。アポトーシス刺激の例としては、増殖因子の除去、種々の栄養の制限および毒素への曝露が挙げられる。バイオリアクターにおける細胞死の問題についての最近の文献は、主要な寄与としてアポトーシスの概念を支持する(Moore Aら、”Apoptosis in CHO cell batch cultures:examination by flow cytometry”,Cytotechnology 17:1−11,1995;Goswami Jら、”Apoptosis in Batch Cultures of Chinese Hamster Ovary Cells”,Biotechn.&Bioeng.62:632−640,1999)。
タンパク質が細胞によって天然に産生されるタンパク質であるか、またはタンパク質が細胞に対して異種のタンパク質であるかに関わらず、細胞のタンパク質産生を増強するための手段として、細胞寿命を延長するための方法を同定する必要がある。
(発明の要旨)
本発明は、タンパク質が細胞によって天然に産生されるタンパク質であるか、またはタンパク質が細胞に対して異種のタンパク質であるかに関わらず、細胞のタンパク質産生を増強するための手段として、細胞寿命を延長するための方法を提供する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
増加した量のBcl−x L を含む細胞であって、該細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない、細胞。
(項目2)
前記細胞が、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、昆虫細胞または両生類細胞である、項目1に記載の細胞。
(項目3)
前記細胞が、ヒト細胞、マウス細胞またはハムスター細胞である、項目2に記載の細胞。
(項目4)
前記細胞が、ハムスター細胞である、項目3に記載の細胞。
(項目5)
前記細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞である、項目4に記載の細胞。
(項目6)
前記細胞が、懸濁液中での増殖のために適応される、項目1〜5のいずれか1項に記載の細胞。
(項目7)
前記細胞が、無血清培養液中での増殖のために適応される、項目1〜6のいずれか1項に記載の細胞。
(項目8)
前記培養液がブチレートを含む、項目7に記載の細胞。
(項目9)
前記Bcl−x L タンパク質が、細胞中へと導入される発現ベクターから発現される、項目1〜8のいずれか1項に記載の細胞。
(項目10)
前記Bcl−x L タンパク質が、前記細胞以外の異なる種である、項目1〜9のいずれか1項に記載の細胞。
(項目11)
前記Bcl−x L タンパク質がヒトである、項目1〜10のいずれか1項に記載の細胞。
(項目12)
前記細胞が、ポリペプチドをコードする第1の発現ベクターをさらに含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の細胞。
(項目13)
前記ポリペプチドが分泌されたタンパク質である、項目12に記載の細胞。
(項目14)
前記ポリペプチドが、抗体の軽鎖または重鎖、項目12に記載の細胞。
(項目15)
前記第1の発現ベクターが、前記抗体の前記軽鎖および前記重鎖の両方をコードする、項目14に記載の細胞。
(項目16)
前記細胞が、前記抗体の前記軽鎖または前記重鎖をコードする第2の発現ベクターをさらに含み、前記第1のおよび該第2の発現ベクターが、該細胞中で該抗体を一緒に発現する、項目14に記載の細胞。
(項目17)
ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、項目1〜9のいずれか1項に記載の細胞を培養する工程および細胞培養物から該ポリペプチドを精製する工程を包含する、方法。
(項目18)
ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、以下:
増大した量のBcl−x L タンパク質を含む細胞を提供する工程であって、該細胞が、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない、工程;
ポリペプチドをコードする第1の発現ベクターを該細胞中に導入する工程;および
該細胞中で該ポリペプチドを発現する工程
を包含する、方法。
(項目19)
前記細胞の培養物から前記ポリペプチドを単離する工程をさらに包含する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ポリペプチドが、前記細胞培養物の培地から単離される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記細胞が、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、昆虫細胞または両生類細胞である、項目18〜20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記細胞が、ヒト細胞、マウス細胞またはハムスター細胞である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記細胞が、ハムスター細胞である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記細胞が、培養液中での増殖のために適応される、項目18〜24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記細胞が、無血清培養液中での増殖のために適応される、項目18〜25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記培養液が、ブチレートを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記Bcl−x L タンパク質が、前記細胞中へと導入される発現ベクターから発現される、項目18〜27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記Bcl−x L タンパク質が、前記細胞以外の異なる種である、項目18〜28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記Bcl−x L タンパク質がヒトである、項目18〜29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記ポリペプチドが、分泌されたタンパク質である、項目18〜30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記ポリペプチドが、抗体の軽鎖または重鎖である、項目18〜31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記第1の発現ベクターが、前記抗体の前記軽鎖および前記重鎖の両方をコードする、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記抗体の軽鎖または重鎖をコードする第2の発現ベクターを細胞中に導入する工程をさらに包含し、前記第1および該第2の発現ベクターが、該細胞中で該抗体を一緒に発現する、項目32に記載の方法。
本発明は、タンパク質が細胞によって天然に産生されるタンパク質であるか、またはタンパク質が細胞に対して異種のタンパク質であるかに関わらず、細胞のタンパク質産生を増強するための手段として、細胞寿命を延長するための方法を提供する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
増加した量のBcl−x L を含む細胞であって、該細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない、細胞。
(項目2)
前記細胞が、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、昆虫細胞または両生類細胞である、項目1に記載の細胞。
(項目3)
前記細胞が、ヒト細胞、マウス細胞またはハムスター細胞である、項目2に記載の細胞。
(項目4)
前記細胞が、ハムスター細胞である、項目3に記載の細胞。
(項目5)
前記細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞である、項目4に記載の細胞。
(項目6)
前記細胞が、懸濁液中での増殖のために適応される、項目1〜5のいずれか1項に記載の細胞。
(項目7)
前記細胞が、無血清培養液中での増殖のために適応される、項目1〜6のいずれか1項に記載の細胞。
(項目8)
前記培養液がブチレートを含む、項目7に記載の細胞。
(項目9)
前記Bcl−x L タンパク質が、細胞中へと導入される発現ベクターから発現される、項目1〜8のいずれか1項に記載の細胞。
(項目10)
前記Bcl−x L タンパク質が、前記細胞以外の異なる種である、項目1〜9のいずれか1項に記載の細胞。
(項目11)
前記Bcl−x L タンパク質がヒトである、項目1〜10のいずれか1項に記載の細胞。
(項目12)
前記細胞が、ポリペプチドをコードする第1の発現ベクターをさらに含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の細胞。
(項目13)
前記ポリペプチドが分泌されたタンパク質である、項目12に記載の細胞。
(項目14)
前記ポリペプチドが、抗体の軽鎖または重鎖、項目12に記載の細胞。
(項目15)
前記第1の発現ベクターが、前記抗体の前記軽鎖および前記重鎖の両方をコードする、項目14に記載の細胞。
(項目16)
前記細胞が、前記抗体の前記軽鎖または前記重鎖をコードする第2の発現ベクターをさらに含み、前記第1のおよび該第2の発現ベクターが、該細胞中で該抗体を一緒に発現する、項目14に記載の細胞。
(項目17)
ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、項目1〜9のいずれか1項に記載の細胞を培養する工程および細胞培養物から該ポリペプチドを精製する工程を包含する、方法。
(項目18)
ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、以下:
増大した量のBcl−x L タンパク質を含む細胞を提供する工程であって、該細胞が、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない、工程;
ポリペプチドをコードする第1の発現ベクターを該細胞中に導入する工程;および
該細胞中で該ポリペプチドを発現する工程
を包含する、方法。
(項目19)
前記細胞の培養物から前記ポリペプチドを単離する工程をさらに包含する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ポリペプチドが、前記細胞培養物の培地から単離される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記細胞が、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、昆虫細胞または両生類細胞である、項目18〜20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記細胞が、ヒト細胞、マウス細胞またはハムスター細胞である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記細胞が、ハムスター細胞である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記細胞が、培養液中での増殖のために適応される、項目18〜24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記細胞が、無血清培養液中での増殖のために適応される、項目18〜25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記培養液が、ブチレートを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記Bcl−x L タンパク質が、前記細胞中へと導入される発現ベクターから発現される、項目18〜27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記Bcl−x L タンパク質が、前記細胞以外の異なる種である、項目18〜28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記Bcl−x L タンパク質がヒトである、項目18〜29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記ポリペプチドが、分泌されたタンパク質である、項目18〜30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記ポリペプチドが、抗体の軽鎖または重鎖である、項目18〜31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記第1の発現ベクターが、前記抗体の前記軽鎖および前記重鎖の両方をコードする、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記抗体の軽鎖または重鎖をコードする第2の発現ベクターを細胞中に導入する工程をさらに包含し、前記第1および該第2の発現ベクターが、該細胞中で該抗体を一緒に発現する、項目32に記載の方法。
従って、1つの局面において、本発明は、細胞によるタンパク質産生を増加させるための方法を提供し、この方法は、この細胞中で抗アポトーシス遺伝子の発現を増加させる工程を包含する。特定の実施形態において、この細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない。特定の実施形態において、この細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、昆虫細胞、または両生類細胞である。
別の局面において、本発明は、細胞による異種タンパク質の産生を増加させるための方法を提供し、この方法は、この細胞中で抗アポトーシス遺伝子の発現を増加させる工程を包含し、ここで、この細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない。
さらなる局面において、本発明は、細胞によるタンパク質産生を増加させるための方法を提供し、この方法は、この細胞中でのBcl−xL遺伝子の発現を増加させる工程を包含し、ここで、この細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない。
特定の実施形態において、この細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、昆虫細胞、または両生類細胞である。
別の局面において、本発明は、細胞による異種タンパク質の産生を増加させるための方法を提供し、この方法は、この細胞中でのBcl−xL遺伝子の発現を増加させる工程を包含し、ここで、この細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない。
さらなる局面において、本発明は、抗アポトーシス遺伝子の増加した発現を含むが、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない細胞を提供し、ここで、この細胞は、抗アポトーシス遺伝子の増加した発現を含まない細胞と比較して、増加した量のタンパク質を産生する。
さらなる局面において、本発明は、Bcl−xL遺伝子の増加した発現を含むが、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない細胞を提供し、ここで、この細胞は、Bcl−xL遺伝子の増加した発現を含まない細胞と比較して、増加した量のタンパク質を産生する。
別の局面において、本発明は、抗アポトーシス遺伝子および目的のタンパク質をコードする遺伝子の増加した発現を含むが、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない細胞を提供し、ここで、この細胞は、抗アポトーシス遺伝子の増加した発現を含まない細胞と比較して、増加した量の目的のタンパク質を産生する。
さらなる局面において、本発明は、Bcl−xL遺伝子および目的のタンパク質をコードする遺伝子の増加した発現を含むが、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない細胞を提供し、ここで、この細胞は、Bcl−xL遺伝子の増加した発現を含まない細胞と比較して、増加した量の目的のタンパク質を産生する。
本発明は、増加した量のBcl−xLタンパク質を含む細胞を提供し、ここで、この細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない。この細胞は、哺乳動物、げっ歯類、昆虫、または両生類の細胞(例えば、ヒト、マウスまたはハムスターの細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞))であり得る。さらに、この細胞は、懸濁液中での増殖または無血清培地(例えば、ウシ胎仔血清)中での増殖のために適合され得る。無血清であるか否かに関わらず、細胞を培養するために使用される培地は、さらに、タンパク質の収量を増加させるために、ブチレート(例えば、酪酸ナトリウム)を含み得る。
Bcl−xLタンパク質は、細胞内に導入される発現ベクターから発現され得るか、または例えば、遺伝子の内因性プロモーターを導入することによって、細胞の内因性Bcl−xL遺伝子を過剰発現するように作製され得る。Bcl−xLタンパク質は、細胞の種とは異なる種であり得る。例えば、以下に示されるように、ヒトBcl−xLタンパク質は、細胞を得るために、チャイニーズハムスター卵巣細胞中で、本発明の方法で発現され得る。
本発明の細胞は、すぐ上に記載されるように、細胞によって既に産生されているか、またはタンパク質(例えば、分泌タンパク質)をコードする発現ベクターを誘導することによって外来的に発現されるかのいずれかである、タンパク質の力強い産生に特に有用である。本発明の細胞がクローン化されたモノクローナル抗体を発現するために使用される場合、この細胞は、重鎖および軽鎖の両方、または2つのベクターを発現する1つのベクターを含み得、各々が、重鎖または軽鎖を発現する。
従って、本発明は、さらに、本発明の細胞を培養することによってポリペプチドを産生し、そして細胞培養物からポリペプチドを精製する方法を包含する。
本開示において引用される全ての刊行物または他の文書は、本明細書によって参考として援用される。
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(好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書中で引用される特許および科学的文献は、当業者に利用可能である知識を確立する。本明細書中で引用されるGenBankデータベース配列を含む発行された米国特許、認可された出願、公開された外国出願、および参考文献が、各々が具体的にかつ個別に参考として援用されるように示されるのと同じ程度に、参考として本明細書により援用される。
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本発明は、抗アポトーシス遺伝子(例えば、Bcl−xL)が細胞中で発現される場合、この細胞はより多くのタンパク質を産生するという発明者の予期されない発見から生じた。驚くべきことに、抗アポトーシス遺伝子および第2のタンパク質(例えば、異種タンパク質)を同時発現する細胞は、生存細胞数の増大を示さない。本発明は、インビトロ(すなわち、組織培養物中)およびインビボの両方において、細胞によるタンパク質産生を増大させる方法を可能にする。
多くの異なる遺伝子が、アポトーシスおよび壊死を含む細胞死の誘導および予防に関する。2つの遺伝子(Bcl−2およびBcl−xL)が、抗アポトーシス活性を有すると同定された。例えば、Fusseneggerら(Nature Biotechnology 16(5):468−72,1998)は、3つの異なるタンパク質(Bcl−xL、p27(サイクリン依存キナーゼインヒビター)およびSEAP(分泌型アルカリンホスファターゼ))を誘導性により発現するよう操作された、操作されたチャイニーズハムスター卵巣細胞を記載する。これらのタンパク質発現の誘導において、これらの細胞は、p27によりG1期に保たれ、これは、SEAP産生における増大を可能にした。Mastrangelo A.J.ら(Biotech.Bioeng.67(5):544−554,2000)は、IL−12タンパク質を発現するよう操作された組換えαウイルスベクターでの感染によりBHK細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の細胞死の誘導を記載する。これらの感染した細胞の寿命は、これらの細胞におけるBcl−2またはBcl−xLの過剰発現により延長され、これにより細胞がより多くのIL−12を産生することを可能にする。実際、他の非αウイルス感染が細胞死刺激(cell death stimuli)を誘導した後に、BHK細胞およびCHO細胞におけるBcl−2またはBcl−xLの過剰発現が、グルコース欠乏の期間延長、血清投与中止および塩化アンモニウムでの処置を含めて、細胞の寿命を延長することが出来た(Mastrangelo A.J.ら、Biotech.Bioeng.67(5):555−564,2000)。
従って、本発明に従って使用されるように、「抗アポトーシス遺伝子」は、遺伝子が由来する種に関わらず、Bcl−2タンパク質をコードする遺伝子もしくはBcl−xLタンパク質をコードする遺伝子(または、Bcl−2タンパク質もしくはBcl−xLタンパク質をそれぞれコードする、他の核酸(例えば、cDNAもしくはmRNA))を意味する。例えば、Bcl−xL遺伝子は、ヒト由来であり得る(GenBank登録番号Z23115またはL20121;Boiseら、Cell 74(4):597−608,1993)。本発明の他の非限定的なBcl−xL抗アポトーシス遺伝子としては、ネコBcl−xL遺伝子(GenBank登録番号AB080951);ウシBcl−xL遺伝子(GenBank登録番号AF245489);イヌBcl−xL遺伝子(GenBank登録番号AB073983);Xenopus laevis Bcl−xL遺伝子(GenBank登録番号NP_494134);ブタBcl−xL遺伝子(GenBank登録番号AF216205またはAJ001203);マウスBcl−xL遺伝子(GenBank登録番号U51278,Yangら、Immunity 7(5):629−639,1997;GenBank登録番号X83574;およびGenBank登録番号L35049);ならびにラットBcl−xL遺伝子(GenBank登録番号U34963;Tillyら、Endocrinology 136(1):232−241,1995)が挙げられる。
同様に、Bcl−2遺伝子は、ヒト由来であり得る(GenBank登録番号M14745;Clearyら、Cell 47(1):19−28,1986)。本発明の他の非限定的な抗アポトーシスBcl−2遺伝子としては、ラットBcl−2遺伝子(GenBank登録番号U34964;Tillyら、Endocrinology 136(1):232−241,1995);ウシBcl−2遺伝子(GenBank登録番号U92434);ニワトリBcl−2遺伝子(GenBank登録番号Z11961;Cazals−Hatemら、Biochim.Biophys.Acta 1132(1):109−113,1992);ならびにネズミBcl−2遺伝子(GenBank登録番号NM_009741,M16506,およびL31532;Negrini,Cell 49(4):455−463,1987)が挙げられる。
生物薬剤学の分野において、培養された細胞の死滅期の遅延についていくつかの利点が存在する。1つのこのような利点が産物を収集する機会である一方、細胞生存能力は依然として高く、これにより産物の破片(debris)および細胞溶解により産生される分解酵素に対する露出を減少させる。他の利点としては、より高い力価の結果として、高価なバイオリアクターの減少、スケールアップにおけるより良好な効率、単純化した下流プロセス、および改善した費用効果が挙げられる。
さらに、本発明は、化学的に規定された培地(CDM)またはPFMタンパク質非含有培地(PFM)(これらは、細胞により産生されるタンパク質を精製するのに有用であるが、タンパク質非含有培地または化学的に規定された培地において増殖した細胞がアポトーシスに高度に感受性であるために、好まれない)のいずれかにおいて頑健であり得る細胞株の作製を可能にする。このような培地においてより頑健である細胞株の使用は、これが培地の費用に影響を与え、従って、現在の処方物においてより高価な(かつ規定の厳しい)培地成分を、除外するために、非常に好ましい。
従って、1つの局面において、本発明は、細胞によるタンパク質の産生を増大させるための方法を提供し、この方法は、細胞中の抗アポトシース遺伝子の発現を増大させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、細胞は、異種サイクリン依存キナーゼインヒビターを発現しない。特定の実施形態において、細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、昆虫細胞、または両性類細胞である。
別の局面において、本発明は、細胞による異種タンパク質の産生を増大するための方法を提供し、この方法は、細胞中の抗アポトーシス遺伝子の発現を増大させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、細胞は、異種サイクリン依存キナーゼインヒビターを発現しない。
本明細書中で使用されるように、用語「細胞」は、哺乳動物(例えば、ヒトまたはマウス)、昆虫、両生類(例えば、Xenopus laevis)、およびトリ由来の細胞を含むが、これらに限定されない全ての真核生物細胞を包含することに留意のこと。本発明における使用のための細胞の非限定的な実施例としては、CHO細胞、NSO細胞、BHK細胞、NIH−3G3細胞、HEK−293細胞、COS細胞、CV1細胞、HeLa細胞、Jurkat細胞、Raji細胞、Daudi細胞、Sf9細胞およびA549細胞(これら全ては、American Type Culture Collection(ATCC),Manassas,VAから市販されている)が挙げられる。
本明細書中で使用されるように、「発現を増大する」は、細胞中の抗アポトーシス遺伝子の発現レベルが最初の細胞中の発現レベルと比較して増大されることを意味する。例えば、抗アポトーシス遺伝子の発現が、抗アポトーシス遺伝子によりコードされる任意のタンパク質も発現しない細胞(例えば、以下に記載される親CHO DG44細胞を参照のこと)において、抗アポトーシス遺伝子によりコードされるタンパク質の任意の発現が、抗アポトーシス遺伝子の発現を増大している。しかし、親細胞が抗アポトーシス遺伝子によりコードされるタンパク質のあるレベルを自然に発現する場合、アポトーシス遺伝子の「発現を増大する」と、親細胞により発現されたレベルと比較してタンパク質の増大したレベルを生じる。
本明細書中で使用されるように、「発現する」または「発現」は、抗アポトーシス遺伝子が細胞に転写され、および/または翻訳されてタンパク質を産生することを意味する。例えば、ヒトBcl−xL遺伝子がマウス細胞中で発現される場合、このマウス細胞は、ヒトBcl−xLタンパク質を産生する。当然、細胞が、本発明に従って、細胞における抗アポトーシス遺伝子の発現を増大させることによりタンパク質の産生を増大するように誘導される場合、細胞がその産生を増大させているタンパク質は、抗アポトーシス遺伝子によりコードされないことが理解される。例えば、ネイティブBcl−xL遺伝子が、マウス細胞中で発現される場合、本発明に従って、そのネイティブなマウスBcl−xLタンパク質の増大したレベルを発現するマウス細胞がまた、非Bcl−xLタンパク質の産生を増大する。
従って、本発明に従って、本発明の細胞が目的のタンパク質の産生を増大させる場合、このタンパク質は、この細胞中で発現される抗アポトーシス遺伝子によりコードされるタンパク質を除く任意のタンパク質であり得る。タンパク質は、分泌型タンパク質、膜貫通タンパク質、または細胞内タンパク質であり得る。従って、タンパク質の非限定的な例としては、抗体、ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン)、インスリン、核タンパク質、リボソームタンパク質、エリスロポエチン、サイトカイン(例えば、インターロイキン−2またはβ−インターフェロン)、および血液因子(例えば、第IX因子)が挙げられる。このタンパク質は、細胞に対してネイティブなタンパク質であり得るか、または細胞に対して異種のタンパク質であり得る。
本明細書中で使用されるように、用語「ネイティブなタンパク質」は、細胞中で自然に生じる核酸分子によりコードされるタンパク質を意味する。従って、細胞がヒト細胞である場合、ヒトタンパク質は、細胞に対してネイティブなタンパク質であり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「異種タンパク質」は、細胞中で自然に生じる核酸分子によりコードされないタンパク質を意味する。例えば、細胞がマウス細胞である場合、ヒト化マウス抗体は、その細胞に対して異種である抗体である。本発明の異種タンパク質の1つの非限定的な例は、AQC2抗体であり、これは、細胞表面タンパク質、VLA−1(例えば、ヒトVLA−1)と特異的に結合する。ACQ2抗体は、好ましくは、以下のハイブリドーマ細胞株の1つにより産生される抗体と同じ重鎖配列および/または軽鎖配列を含み、この全てが、ブダペスト条約に従ってAmerican Type Culture Collection(Manassas,Virginia,USA)に寄託された:mAQC2(ATCC寄託番号PTA3273、2001年4月18日に寄託された);hAQC2(ATCC寄託番号PTA3275、2001年4月18日に寄託された);haAQC2(ATCC寄託番号PTA3356、2001年5月4日に寄託された);およびhsAQC2(ATCC寄託番号PTA3274、2001年4月18日に寄託された)。これらの抗体は、PCT公開番号WO02/083854に記載される。
本発明が、ハイブリドーマ細胞を含む細胞による抗体の増加した産生を包含することに留意のこと。例えば、ハイブリドーマ細胞が特定のモノクローナル抗体をコードする核酸分子を含む場合、この細胞によるモノクローナル抗体の改善された産生が、このハイブリドーマ細胞中の抗アポトーシス遺伝子の発現により、本発明に従って達成され得る。
非限定的な例において、ヒトB細胞は、特定の抗体をコードする核酸を含むと同定される。このB細胞は、当該分野で公知の標準的方法(例えば、Epstein Barrウイルスでの感染)に従って不死化される。次に、ここで不死化されたB細胞による抗体の産生を改善するために、抗アポトーシス遺伝子が、B細胞中で発現され得る。例えば、抗アポトーシス遺伝子をコードする発現プラスミドが、細胞中に導入され得る。このようなプラスミドは、以下の実施例に記載される。あるいは、ネイティブなタンパク質が、細胞中で発現され、これにより、抗体の増大した産生を生じるように、B細胞自身の抗アポトーシス遺伝子によりコードされるタンパク質が、アップレギュレートされ得る。
本発明に従って、抗アポトーシス遺伝子を発現する細胞は、異種サイクリン依存キナーゼインヒビター(すなわち、細胞中で自然に発生しない核酸分子によりコードされるサイクリン依存キナーゼインヒビター)を発現しない。特定の実施形態において、異種サイクリン依存キナーゼインヒビターは、p27である。特定の実施形態において、異種サイクリン依存キナーゼインヒビターは、p21である。
本発明に従って、2つの非限定的な異なるアプローチが、タンパク質の産生を増大するために採られ得る。1つのアプローチにおいて、新しい細胞株が作製され、これは抗アポトーシス遺伝子の増大した発現を有する。以下に記載されるように、1つのこのような非限定的な細胞株、チャイニーズハムスター卵巣細胞を、作製した。抗アポトーシスヒト遺伝子、Bcl−xLが、これらの細胞において発現させ、安定にBcl−xLを発現する細胞株を作製した。
このような細胞を作製する別の非限定的なアプローチにおいて、抗アポトーシス遺伝子がまた、この遺伝子を有する細胞中で見られ得るが、この遺伝子によりコードされるタンパク質を発現しない。例えば、ヒト細胞は、ヒトBcl−xL遺伝子を含むが、ヒトBcl−xLを発現せず、ヒトBcl−xLを発現するよう誘導され得る。このようなヒト細胞は、本発明の範囲内に含まれる。
一旦このような抗アポトーシス遺伝子を発現する細胞株が確立されると、そのタンパク質が細胞に対して異種であるかまたは細胞に対してネイティブであるかに関わらず、増大した量のタンパク質を発現する状態である。例えば、Bcl−xLを発現するCHO細胞を使用して、増大した量のハムスタータンパク質を産生し得る。あるいは、異種タンパク質をコードする(例えば、ヒトβ−インターフェロンをコードする)核酸分子が、Bcl−xLを発現するCHO細胞中に(例えば、トランスフェクション、感染または形質転換によって)導入され得、ここで、Bcl−xLを発現しないCHO細胞と比較して、より多くの異種タンパク質がBcl−xL発現細胞により産生される。
従って、さらなる局面において、本発明は、抗アポトーシス遺伝子の増大した発現を含み、異種サイクリン依存キナーゼインヒビターを発現しない細胞を提供し、ここでこの細胞は、抗アポトーシス遺伝子の増大した発現を含まない細胞と比較して増大した量のタンパク質を産生する。
本発明の第2のアプローチにおいて、抗アポトーシス遺伝子の発現が、既に目的のタンパク質を産生している細胞において増大される。本発明の1つの非限定的な実施例において、ネズミBcl−xL遺伝子は、細胞がより多くのインスリンを産生するように、ヒトβ島細胞中で発現され得る(すなわち、既にヒトインスリンを産生している)。別の非限定的な実施例において、抗アポトーシス遺伝子が、異種タンパク質を既に発現している細胞(例えば、ヒトβ−インターフェロンを発現しているCHO細胞)中で発現され得、その結果、抗アポトーシス遺伝子の増大した発現を有する細胞が、抗アポトーシス遺伝子の増大した発現を有さない細胞よりもより多くの異種タンパク質を産生する。
従って、さらなる局面において、本発明は、抗アポトーシス遺伝子および目的のタンパク質をコードする遺伝子の増大した含む細胞を提供し、そして異種サイクリン依存キナーゼインヒビターを発現せず、ここで細胞は、抗アポトーシス遺伝子の増大した発現を含まない細胞と比較して、増大した量の目的のタンパク質を産生した。
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態をさらに例示するよう意図され、本質的には限定しない。当業者は、慣習的に過ぎない実験法のみを使用して、本明細書中に記載される特定の物質および手順に対する多数の等価物を認識し、または確かめ得る。
(実施例I)
(高められたCHO細胞宿主の作製)
異種タンパク質の改善された発現のために潜在的に使用され得る、改善した増殖特性を有するCHO宿主を作製するために、Bcl−xLを、CHO細胞中で発現させた。
(高められたCHO細胞宿主の作製)
異種タンパク質の改善された発現のために潜在的に使用され得る、改善した増殖特性を有するCHO宿主を作製するために、Bcl−xLを、CHO細胞中で発現させた。
これを行うために、Bcl−xL遺伝子を、Boise L.H.ら、Cell 74:597−608:1993(GenBank登録番号Z23115をまた参照のこと)において提供されるBcl−xLの配列に基づくオープンリーディングフレーム(ORF)の5’末端および3’末端にアニールするように設計されるオリゴヌクレオチドを使用することにより、単離した。使用されるオリゴヌクレオチドの配列は、以下の通りである:5’PCRプライマー
Bcl−xL遺伝子(ヒト脳由来、全Marathon−ReadyTMcDNA(Clontech Laboratories,Palo Alto,CA))を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;Stratageneから市販のPfuTurbo DNAポリメラーゼ、カタログ番号600250を使用する)を使用して作製した。発現ベクターである、発現ベクターpcDNA3.1(+)(Promega,Madison,WIから市販されている)を、XhoIおよびXbaIで消化し、そしてBcl−xL PCRフラグメントを、直鎖状ベクター(linearized vector)中に連結した。これは、図1Aに模式的に描かれるプラスミドpBcl−xL−neoを生じる。
pBcl−xL−neoプラスミドを使用して、標準的技術(例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons INc.,New York City,NY,1993を参照のこと)に従うエレクトロポレーションを使用してCHO−DG44宿主細胞をトランスフェクトした。CHO細胞が、ATCCから市販されていることに留意のこと。CHO−DG44細胞は、Urlaubら、Cell 33:405−412,1983に記載されている通りである。コントロールとして、空のpcDNA3.1(+)ベクターをまた、CHO細胞中にトランスフェクトした。
エレクトロポレーション後、細胞を、G418非含有培地にて48時間増殖させ、次いで400μg/ml G418(ネオマイシン)の存在下で選択した。培地を変えたときに、接着生細胞を選択した一方、非接着性の死細胞を除去した。およそ2週間後、安定な単離株(isolate)を、選択した。
(実施例II)
(高められたCHO細胞宿主の改善した増殖)
実施例Iに記載されるこれらのBcl−xLトランスフェクト化細胞の細胞死速度論(kinetics)を、次に元の改変されていない宿主細胞と比較した。
(高められたCHO細胞宿主の改善した増殖)
実施例Iに記載されるこれらのBcl−xLトランスフェクト化細胞の細胞死速度論(kinetics)を、次に元の改変されていない宿主細胞と比較した。
これを行うために、50の単離株からの10のDG44/Bcl−xL、空のベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を、代表的にG418の非存在下で培養されたトランスフェクトされていない宿主CHO細胞と並行して、G418を補充した無血清培地中で培養した。細胞を10日間培養し、毎日計数した。流加様式について、培養物を、培養懸濁物を除去することなく、基質の容積の15分の1を1日おきに供給した。図2A(生存細胞濃度)および図2B(生存率パーセンテージ)に示されるように、両方のコントロール(すなわち、トランスフェクトされていないDG44宿主および空のベクターでトランスフェクトされたDG44)が、4日目におよそ2.6×106/mlの最大VCDを示した。これに比べて、DG44/Bcl−xLクローン番号2、3、8および9が、5日目に3.0×106/ml〜3.9×106/mlにわたるピークVCDに達し、クローン番号5が、6日目に3.1×106/mlのピークに達した。クローン番号2、3および5に対する生存率パーセンテージが、6日目でそれぞれ95%、96%および87%と高く保たれる一方、DG44(すなわち、トランスフェクトされていない宿主)およびDG44ベクターのみ(すなわち、空のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞)コントロールについての生存率パーセンテージは、それぞれ59%および54%に落ちた。8日目までに、クローン番号2、3および5についての生存率パーセンテージは、それぞれ76%、79%および81%であった一方、DG44/neo(すなわち、空のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞)およびDG44コントロール(すなわち、トランスフェクトされていない宿主)についての生存率は、それぞれ46%および14%であった。
積分細胞面積(ICA)は、一連の培養実験(run)中の生存細胞の総数を表す成長プロフィール曲線より下の面積として定義される。8日目のICAの推定値(生存可能な細胞密度データに基づく)は、単離体#2、#3、#5、および#8が、ベクターコントロール(すなわち、空のベクターでトランスフェクトした宿主細胞)に対して、それぞれ、38%、51%、52%、および51%の増加したICAを有したことを示した。単離体#2、#3、#5、および#8について、コントロール培養物に対して上記で観察された増強した生存率の安定性は、少なくとも10継代まで再現されかつ一貫していた(図5および図6における単離体#8についてのデータを参照のこと)。平均して、ベクターのみのコントロールに対するDG44/Bcl−xL細胞のICAにおける増加は、トランスフェクトしていないDG44宿主コントロールに対して40〜75%、および30〜100%であった。増加した最大細胞密度および延長した細胞生存率のいずれも、増強したICAに寄与した。
次に、G418の存在または非存在が、Bcl−xLトランスフェクト細胞の増殖に何らかの効果を有するかどうかを決定するために、この細胞をG418の非存在下で培養した。これを行うために、DG44/Bcl−xL単離体および空のベクターでトランスフェクトしたコントロールならびにトランスフェクトしていないコントロールを、G418の非存在下で培養した。再度、時間に対する生存可能な細胞密度(VCD)を表す成長曲線および時間に対する百分率生存率(%生存率)をモニターした。
図3Aに示したように、DG44/Bcl−xLクローン#3(1つの例示的なDG44/Bcl−xL単離体)は、8日目まで、4×106細胞/mlの高くかつ延長した最大細胞密度を維持した。さらに、パーセント生存率は、10日目に、ベクターコントロールにおいて25%であったのと比較して、90%であり(図3B)、そしてICA(11〜12日間の実験について約30×106細胞/ml)は、最大でDG44宿主より3倍高かった。この特性は、単離体#2、#3、および#5について少なくとも7継代まで安定したが、#8については安定しなかった(以下を参照のこと)。
(実施例III)
(増強したCHO細胞宿主のさらなる特徴付け)
アポトーシスを検出し定量するための1つの手段は、サンプル溶解物におけるカスパーゼ−3のタンパク質分解活性の測定によるものである。カスパーゼ−3は、細胞のタンパク質分解性の分解によってアポトーシスの実行において重要な役割を果たす1つのカスパーゼである。アポトーシスを阻害することに対するBcl−xLの公知の能力を考慮して、次に、Bcl−xLでトランスフェクトしたCHO細胞を、カスパーゼ−3アッセイを使用してカスパーゼ活性について試験した。
(増強したCHO細胞宿主のさらなる特徴付け)
アポトーシスを検出し定量するための1つの手段は、サンプル溶解物におけるカスパーゼ−3のタンパク質分解活性の測定によるものである。カスパーゼ−3は、細胞のタンパク質分解性の分解によってアポトーシスの実行において重要な役割を果たす1つのカスパーゼである。アポトーシスを阻害することに対するBcl−xLの公知の能力を考慮して、次に、Bcl−xLでトランスフェクトしたCHO細胞を、カスパーゼ−3アッセイを使用してカスパーゼ活性について試験した。
カスパーゼタンパク質は、アスパラギン酸の後ろでタンパク質を切断する。アスパラギン酸より前の3つまたは4つのアミノ酸が、特異性を与えることが公知である。このことは、4つのアミノ酸を標識化したペプチドを、カスパーゼについての基質として使用することを可能にする。カスパーゼアッセイについて、使用したペプチド基質は、蛍光定量マーカーAMC(カタログ番号P−411、BIOMOL Research Labs,Inc.、Plymouth Meeting、PA)で標識化したD(すなわち、アスパンラギン酸残基)を有する、アミノ酸配列DEVDを有した。一旦切断が生じると、このマーカーは蛍光を発する。従って、切断がなければ、シグナルはほとんど観察されないか、または全く観察されなかった。
カスパーゼ−3タンパク質分解活性を、実施例IIで記載したように培養したCHO細胞の溶解物から、12日間、毎日決定した。サンプルからのAMCの蛍光を、切断不可能なアナログDEVD−CHO(BIOMOL カタログ番号P−410)で処理したサンプルと比較し、カスパーゼ−3活性における増加の決定を可能にした。
DG44/Bcl−xL#3(実施例IおよびIIに従って生成した非制限Bcl−xLトランスフェクトCHO細胞)は、空のベクターコントロール細胞(すなわち、空のベクターでトランスフェクトしたDG44 CHO細胞)およびDG44 CHOコントロール細胞(すなわち、トランスフェクトしていない細胞)と比較した場合、最大カスパーゼ−3タンパク質分解活性の遅れた開始を示した。図4に示したように、DG44/Bcl−xL#3における最大カスパーゼ−3タンパク質分解活性の開始は、11日目に生じ、他の日では最小限の活性を示した。対照的に、DG44宿主単独は、早くも5日目に2倍以上の高い最大活性を示したが、DG44/ベクター単独コントロールは、開始8日目に最大に近い活性を示した(図4を参照のこと)。これらの結果は、抗アポトーシス遺伝子を用いる宿主細胞株の遺伝子操作が、延長した細胞生存率を導くことを実証した。
次に、Bcl−xLが実際にDG44/Bcl−xL#3において発現したか否かを決定するために、ウェスタンブロット分析を実施した。Bcl−xLの存在を、DG44/Bcl−xL#3と同時に生成したDG44/Bcl−xL#8、G418耐性DG44
CHOクローンにおいてもまた、評価した。これを行うために、ウェスタンブロットを、標準的な方法(例えば、Ausubelら、前出、を参照のこと)に従って実施した。簡単に述べると、細胞溶解物を、SDS−Pageによって分解し、ニトロセルロース膜またはPVDF膜へ転写した。この膜を、ヒトBcl−xLに対して特異的に結合するマウスモノクローナル抗体(Clone 2H12、Oncogene Research
Sciences、San Diego、CAから市販)を使用してブロットした。
CHOクローンにおいてもまた、評価した。これを行うために、ウェスタンブロットを、標準的な方法(例えば、Ausubelら、前出、を参照のこと)に従って実施した。簡単に述べると、細胞溶解物を、SDS−Pageによって分解し、ニトロセルロース膜またはPVDF膜へ転写した。この膜を、ヒトBcl−xLに対して特異的に結合するマウスモノクローナル抗体(Clone 2H12、Oncogene Research
Sciences、San Diego、CAから市販)を使用してブロットした。
図5に示したように、左のレーンで、Bcl−xLは、DG44/Bcl−xL#3においてはっきりと発現された。しかし、DG44/Bcl−xL#8(図5、中央のレーン)と、空のベクターでトランスフェクトしたDG44 CHO細胞(図5、右のレーン)のいずれによっても、Bcl−xLは発現されなかった。この結果は、G418選択の存在下または非存在下のいずれかで増殖させた単離体からの結果と同一であった。
実際に、DG44/Bcl−xL#8を、選択についてG418の非存在下で増殖させた場合、トランスフェクトしていないDG44 CHOコントロール細胞と比較して、増強した生存を示さなかった。これを行うために、DG44/Bcl−xL#8を、G418選択から取り出し、DG44/Bcl−xL#3およびDG44宿主コントロールに対して評価した。時間に対する生存可能な細胞密度(VCD)を表す成長曲線および百分率生存率(%生存率)を、実施例Iに記載したように評価した。DG44/Bcl−xL#8は、約50%の向上したICAを伴ってG418耐性であり、同じ細胞を選択の非存在下で培養した場合、ICAにおける増加は、有意ではなかった(図6Aを参照のこと)。さらに、時間に対するパーセント生存率は、向上されず、実際にはコントロールよりも悪くなった(図6Bを参照のこと)。
これらの結果は、発現がはっきりと検出されたDG44/Bcl−xL#3のような他の単離体と比較した場合、DG44/Bcl−xL#8における検出不可能なBcl−xL発現と、ICAにおける増強の欠如との間の相関を実証する。この結果はまた、Bcl−xL発現が増強した増殖および増強した生存率と結び付けられることを実証する。選択的条件下でのDG44/Bcl−xL#8について、ICAにおいて観察された増加は、G418富化のプロセスが、G418の存在下での生存のためにさらなる強力な増殖伴って、ネオマイシン遺伝子(しかし、常にBcl−xL遺伝子ではない)を発現する細胞を生成することを示す。
(実施例IV)
(異種タンパク質を分泌するBcl−xLトランスフェクト細胞株の作製)
上記の実施例は、細胞中に抗アポトーシス遺伝子であるBcl−xLを発現することによる細胞死の遅延を介して、延長した細胞生存率を有するより強力なCHO宿主を生成することの実行可能性を確立した。Bcl−xLの用途をさらに拡大するために、次なる目標は、Bcl−xL遺伝子を用いて異種タンパク質を発現する確立したCHO−DG44細胞株をトランスフェクトし、そして予期された延長した生存率に起因する異種タンパク質の増加した生成について、Bcl−xLトランスフェクト細胞を試験することであった。
(異種タンパク質を分泌するBcl−xLトランスフェクト細胞株の作製)
上記の実施例は、細胞中に抗アポトーシス遺伝子であるBcl−xLを発現することによる細胞死の遅延を介して、延長した細胞生存率を有するより強力なCHO宿主を生成することの実行可能性を確立した。Bcl−xLの用途をさらに拡大するために、次なる目標は、Bcl−xL遺伝子を用いて異種タンパク質を発現する確立したCHO−DG44細胞株をトランスフェクトし、そして予期された延長した生存率に起因する異種タンパク質の増加した生成について、Bcl−xLトランスフェクト細胞を試験することであった。
これを行うために、第2の構築物を上記実施例Iに記載したように生成したが、ゼオシン耐性遺伝子を用いた。簡単に述べると、Bcl−xL PCRフラグメント(実施例Iを参照のこと)を、発現ベクターpcDNA3.1/Zeo(+)(Promega、Madison、WI)のXhoI部位およびXbaI部位中にクローン化して(ここで、発現は、CMV最初期プロモーター(immediate−early promoter)によって駆動され、ゼオシン遺伝子は選択マーカーを提供する)、最終的なプラスミドpBcl−xL−zeoを得た。このプラスミドの概略図を、図7Aに示す。
pBcl−xL−zeoプラスミドは、細胞株100AB−37を(エレクトロポレーションによって)トランスフェクトするために使用し、この細胞株100AB−37は、モノクローナル抗体であるAQC2をコードする核酸分子で予めトランスフェクトしたDG44 CHO細胞である。100AB−37親は、10pg/細胞/日の比生産性(s.p.)でAQC2モノクローナル抗体を分泌する。
Bcl−xL−zeoプラスミドでトランスフェクトした100AB−37細胞を、600μg/mlのゼオシンの存在下で培養した。次に、ウシ胎仔血清(FBS)の非存在下で培養したトランスフェクト体のプール、および選択的ゼオシンの存在下で培養したトランスフェクト体のプールを、AQC2分泌について分析した。フローサイトメトリー分析を、結合抗体を使用してAQC2に対して実施した。図7Bに示したように、Bcl−xLトランスフェクト体から分泌されたAQC2(太い黒のヒストグラム)を、トランスフェクトしていない親(灰色)のAQC2およびコントロール(黒色)のAQC2と比較した。図7Bに示した結果は、AQC2を発現しかつ分泌する能力は、Bcl−xLの存在によって抑制されなかったことを実証した。上記の細胞からサンプリングした馴化培地のELISAによる力価分析は、フローサイトメトリーのデータを追認した。実際に、生産性は、改変していない親株(2.1×106細胞/ml)について105μg/mlであったのに対して、100AB−37/Bcl−xLプール(2.24×106/mlの細胞)について150μg/mlで、Bcl−xLトランスフェクト細胞について高かった。
Bcl−xL−zeoプラスミドでトランスフェクトした100AB−37細胞を、600μg/mlのゼオシンの存在下で培養した。次に、ウシ胎仔血清(FBS)の非存在下で培養したトランスフェクト体のプール、および選択的ゼオシンの存在下で培養したトランスフェクト体のプールを、AQC2分泌について分析した。フローサイトメトリー分析を、結合抗体を使用してAQC2に対して実施した。図7Bに示したように、Bcl−xLトランスフェクト体から分泌されたAQC2(太い黒のヒストグラム)を、トランスフェクトしていない親(灰色)のAQC2およびコントロール(黒色)のAQC2と比較した。図7Bに示した結果は、AQC2を発現しかつ分泌する能力は、Bcl−xLの存在によって抑制されなかったことを実証した。上記の細胞からサンプリングした馴化培地のELISAによる力価分析は、フローサイトメトリーのデータを追認した。実際に、生産性は、改変していない親株(2.1×106細胞/ml)について105μg/mlであったのに対して、100AB−37/Bcl−xLプール(2.24×106/mlの細胞)について150μg/mlで、Bcl−xLトランスフェクト細胞について高かった。
次に、Bcl−xLトランスフェクト100AB−37細胞の個々の単離体を生成し、AQC2の分泌についてスクリーニングし、AQC2力価(すなわち、単離体によって分泌されたAQC2抗体の量)に従って順位付けした。最も高い力価を発現する8つの100AB−37/Bcl−xL単離体を、ゼオシン選択から取り出し、そしてスピナーフラスコ中での増殖および力価(以下を参照のこと)についての試験の前に、安定のためにさらに培養した。実施例Iに記載したように、フィードバッチモード(fed batch
mode)(上記)において14日間の期間にわたり、成長曲線および%生存率を細胞死動力学のパラメーターとしてモニターし、親コントロールと比較した。図8Aに示したように、6日目に、親株の%生存率は95%であり、これは徐々に減少して13日目に62%であったが、上位3つのBcl−xL単離体(#11、#21、および#25)は、84%〜96%の範囲にわたる高い%細胞生存率を維持した。興味深いことに、保持された高い%生存率は、全体の細胞密度が増加しなかったため、改変していない親に対してICAにおける有意な増加を生じなかった(図8B)。Bcl−xLクローン#25のみが、ICAにおいて中程度の20%の増加を示した(図8Bを参照のこと)。
mode)(上記)において14日間の期間にわたり、成長曲線および%生存率を細胞死動力学のパラメーターとしてモニターし、親コントロールと比較した。図8Aに示したように、6日目に、親株の%生存率は95%であり、これは徐々に減少して13日目に62%であったが、上位3つのBcl−xL単離体(#11、#21、および#25)は、84%〜96%の範囲にわたる高い%細胞生存率を維持した。興味深いことに、保持された高い%生存率は、全体の細胞密度が増加しなかったため、改変していない親に対してICAにおける有意な増加を生じなかった(図8B)。Bcl−xLクローン#25のみが、ICAにおいて中程度の20%の増加を示した(図8Bを参照のこと)。
生存率が保持されたことが理由で生産性が向上したのかどうかを評価するために、分泌されたAQC2の力価を、上記のように評価した8つの100AB−37/Bcl−xL単離体上に結合するプロテインA−HPLCによってアッセイした。試験した8つの単離体のうち5つもの多くが、培養の12日目に、親コントロールの236μg/mlと比較して、306〜434μg/mlの範囲にわたる向上した力価を有した(以下を参照のこと)。図9に示したように、予めより高い%生存率を維持することを示したクローン11、21、および25からのプロテインA力価データ(図8Aおよび8Bを参照のこと)は、生産性において有意な増強を示した。
14日目のプロテインA力価データは、以下の表Iに示したようであった。
(表1)
表Iが実証するように、100AB−37/Bcl−xL単離体#11、#21、および#25(84%以上の%生存率)は、親(%生存率 62%)からの288μg/mlと比較して、それぞれ、368μg/ml、441μg/ml、および522μg/mlの力価を生じた。クローンのスループット(すなわち、力価)における増加は、単離体#11についての28%から最高値の単離体#21についての81%までの範囲であった。比生産性もまた、100AB−37/Bcl−xL単離体において増強された(9pg/細胞/日と比較して12〜14pg/細胞/日)。
力価において特徴的な増加を示す先の結果の妥当性を評価するために、2L規模のバイオリアクターの制御した環境下で、評価を繰り返した。このサイズのバイオリアクターは、代表的には、200Lの製造規模のバイオリアクターをモデルとするために使用される。最も望ましい100AB−37/Bcl−xL単離体である#21を、100AB−37親と並んで二連のバイオリアクター中で実験した。成長曲線および%生存率を、フィードバッチモードで実験した培養物において13日間の期間にわたり、親コントロールと比較した細胞死動力学のパラメーターとしてモニターした。Bcl−xL含有細胞は、13日目に、依然として84〜89%で%生存率が高かったが、親細胞株生存率は、すでに減少しており、13日目に60〜66%であった(図10B)。上記のスピナーデータ(図8Aおよび図8Bを参照のこと)から予測されるように、維持されたより高い%生存率は、全体の細胞密度が増加しなかったため、改変していない親に対してICAにおける有意な増加を生じなかった(図10A)。
さらに、小規模のスピナーデータ(図9を参照のこと)と一致して、100AB−37.21/Bcl−xL単離体#21はまた、プロテインA結合によって決定されるように、有意に高い力価および2Lバイオリアクター中で増殖されたスループットにおいて60%までの増加を生じた(図11)。
14日目でのプロテインA力価データは、以下の表IIに示すようであった。
(表2)
さらに、ウェスタン分析(非還元SDS−PAGE分析および還元SDS−PAGE分析)およびこれらのバイオリアクター実験に由来するAQC2 mAB生成物の糖質分析は、生成物の質における変化を示さなかった。
(実施例V)
(異種タンパク質を分泌するBcl−xLトランスフェクト細胞株のさらなる特徴づけ)
100AB−37.21/Bcl−xL分離株(#21)を、クローンであると確認しなかったので、ΔBcl−xL100AB−37分離株とこの100AB−37.21/Bcl−xL分離株(#21)との両方をさらにサブクローニングすると、このΔBcl−XL100AB−37分離株は、トランスフェクトされていない親100AB−37細胞株でのサブクローンであった。これを行ったのは、各々の細胞から最も所望されるサブクローンの比較によって、Bcl−xL分離株とΔBcl−xL分離株との間のより厳密の比較が提供されるからである。これを行うために、等価な数のサブクローンを、細胞株の各々についてスクリーニングした。生成し、そして、より優れた増殖性および高い力価を生じる能力にしたがって順位付けした、選択されたサブクローンについて比活性を決定した(データ示さず)。次いで、このリードサブクローンBcl−XL分離株#21、すなわち、21.15を、スピナー管(spinners vessel)中の非改変親100AB−37のリードサブクローン37.32に対して、評価および比較した。この評価のために選択された増殖培地は、殆ど動物由来成分を有さない化学規定増殖培地(chemically defined growth media;CDM)であった。CDMは、規定されていない成分の除去、原料の変化量の低減、下流プロセスの複雑性の低減、および動物起源の潜在的な夾雑物の除去のために、大規模製造に所望される(Jayme and Smith,Cytotechnology 33:27−36,2000)。さらに、タンパク質含有量が著しく低減された環境によって、細胞を前処理してアポトーシスさせることが可能である(Moore A.ら、Cytotechnology 17:1−11,1995 and Zhangiら、Biotech Bioeng.64:108−119,1999)。したがって、Bcl−xL発現の存在によって、このような培地条件の下でも頑強であることが維持される細胞株を提供し得る。
(異種タンパク質を分泌するBcl−xLトランスフェクト細胞株のさらなる特徴づけ)
100AB−37.21/Bcl−xL分離株(#21)を、クローンであると確認しなかったので、ΔBcl−xL100AB−37分離株とこの100AB−37.21/Bcl−xL分離株(#21)との両方をさらにサブクローニングすると、このΔBcl−XL100AB−37分離株は、トランスフェクトされていない親100AB−37細胞株でのサブクローンであった。これを行ったのは、各々の細胞から最も所望されるサブクローンの比較によって、Bcl−xL分離株とΔBcl−xL分離株との間のより厳密の比較が提供されるからである。これを行うために、等価な数のサブクローンを、細胞株の各々についてスクリーニングした。生成し、そして、より優れた増殖性および高い力価を生じる能力にしたがって順位付けした、選択されたサブクローンについて比活性を決定した(データ示さず)。次いで、このリードサブクローンBcl−XL分離株#21、すなわち、21.15を、スピナー管(spinners vessel)中の非改変親100AB−37のリードサブクローン37.32に対して、評価および比較した。この評価のために選択された増殖培地は、殆ど動物由来成分を有さない化学規定増殖培地(chemically defined growth media;CDM)であった。CDMは、規定されていない成分の除去、原料の変化量の低減、下流プロセスの複雑性の低減、および動物起源の潜在的な夾雑物の除去のために、大規模製造に所望される(Jayme and Smith,Cytotechnology 33:27−36,2000)。さらに、タンパク質含有量が著しく低減された環境によって、細胞を前処理してアポトーシスさせることが可能である(Moore A.ら、Cytotechnology 17:1−11,1995 and Zhangiら、Biotech Bioeng.64:108−119,1999)。したがって、Bcl−xL発現の存在によって、このような培地条件の下でも頑強であることが維持される細胞株を提供し得る。
増殖曲線および生存率を、フェドバッチ形式で実施した培養物中で14日間の期間に亘って親コントロールと比較する細胞致死速度論のパラメーターとして参照した(図12A)。しかし、図12Bに示されるように、21.15 Bcl−xL細胞は、14日目までの培養の期間全体に亘って90%を超える十分に高い生存率を維持したが、他方、37.32Bcl−XLサブクローンにおいて細胞死が、第9日目で起こり(72%生存率)、そして、第14日目までに43%まで著しく低下した。これらの結果によって、Bcl−XL過剰発現によって、特に細胞がアポトーシスを受けやすい培地条件の下で細胞死の時期を遅らせる。上述の観察から予測されるように、ICAにおいて有意な差異は存在しなかった。
次に、細胞生産性を評価するために、この分泌AQC2の力価を、プロテインA−HPLC結合によって評価した。図13に示されるように、リードサブクローン100AB−37/21.15Bcl−XLは、化学規定増殖培地(CDM)中で培養した場合でさえ、著しく高い力価を生じ、リードサブクローン37.32ΔBcl−xLと比較して89%までのスループット(すなわち、力価)の増加を生じた。
第14日目におけるプロテインA力価データを、以下に表IIIに示す。
Bcl−xLの過剰発現が、力価において観察された強化について原因となっている否かについて言及するために、Bcl−xL発現およびカスパーゼ−3活性の検出および定量を含むアッセイを、実施した。フローサイトメトリーおよびウェスタン分析の両方によって、100AB−37/21.15Bcl−xL細胞における第3日の発現の増加から第5日における定常レベルの発現(データ示さず)を実証した。次に、100AB−37/21.15Bcl−xLおよび37.32ΔBcl−xLにおけるカスパーゼ活性を、評価した。カスパーゼ3アッセイは、図13において記載されるように培養した(カスパーゼ3アッセイは、上述のように実施した)。
これらの結果は、カスパーゼ−3を、クローン21.15BCl−xLの産生の実施に亘りコントロールレベルと比較して劇的に抑制したが、他方、37.32における活性は、14日間において、21.15における活性のほぼ10倍に増大した(図14を参照のこと)。21.15Bcl−xL発現細胞は、最小限のカスパーゼ−3活性をCDMでの産生実行に亘って提示し、アポトーシスの活性抑制を実証した。このデータは、明らかに、Bcl−xLを過剰発現する細胞株におけるアポトーシスにおいて有意な遅延を示した。
(実施例VI)
(酪酸ナトリウムを含む培地中で培養された、異種タンパク質を分泌する細胞株をトランフェクトしたBcl−xLの増加した生産性および生存率)
酪酸ナトリウム(NaBu)を、試みとして一般的に使用して、転写を増大することによって、特定の異種タンパク質発現を増大させる(Changら、Free Rad.Es.30:85−91,1999;Palermoら、J.Biotech.19:35−47,1991;およびLaubach,V.E.ら、Biochem.Biophy.Res.Commun.218:802−807,1996)。しかし、増大した発現に必要なNaBuの高い濃度に対する重大な欠点は、CHO細胞中に生じることが公知のアポトーシスの迅速な誘発のネガティブな競合的効果である(Changら、Free Rad Es 30:85−91,1999;ならびにKimおよびLee,Biotech.Bioeng.71:184−193,2000−2001)。この結果について、NaBuは、全ての細胞株において増大した力価に一般的に効果的でない。
(酪酸ナトリウムを含む培地中で培養された、異種タンパク質を分泌する細胞株をトランフェクトしたBcl−xLの増加した生産性および生存率)
酪酸ナトリウム(NaBu)を、試みとして一般的に使用して、転写を増大することによって、特定の異種タンパク質発現を増大させる(Changら、Free Rad.Es.30:85−91,1999;Palermoら、J.Biotech.19:35−47,1991;およびLaubach,V.E.ら、Biochem.Biophy.Res.Commun.218:802−807,1996)。しかし、増大した発現に必要なNaBuの高い濃度に対する重大な欠点は、CHO細胞中に生じることが公知のアポトーシスの迅速な誘発のネガティブな競合的効果である(Changら、Free Rad Es 30:85−91,1999;ならびにKimおよびLee,Biotech.Bioeng.71:184−193,2000−2001)。この結果について、NaBuは、全ての細胞株において増大した力価に一般的に効果的でない。
Bcl−xLが成熟前のアポトーシスから細胞を保護する能力をさらに分析するために、細胞を、2mM NaBuを含むか含まないCDM懸濁培養液に培養した振盪フラスコ中で4日間まで評価した。図15に示されるように、付加的なNaBuが、親100AB−37および単離物を発現する#21のBcl−xLならびにそれぞれのサブクローン(37.32ABcl−xLおよび21.15)の両方のAQC2生産性を実際に増大した。
さらに、上記の条件下で4日間、NaBuは、親および37.32ΔBc1−xLサブクローン中の力価を増大させたが、生存率の割合は、それぞれ、41%および46%まで有意に減少した(図16を参照のこと)。対照的に、#21のBCl−xLについての生存率の割合は、80%以上のままであり、Bcl−xL21.15細胞における生存率は、未変化の96%のままであった(図16を参照のこと)。これらの生存率の割合の結果は、#21のBcl−xL単離物およびサブクローン21.15Bcl−xLにおけるBcl−xLの発現によるNaBu誘導性アポトーシスの活性抑制を示す。
培養3日目に(すなわち、振盪フラスコ中CDM懸濁培養物中)、アポトーシスのマーカーであるカスパーゼ3活性を、細胞中で測定した。図17に示されるように、アポトーシスの有意な遅延が、Bcl−xLを発現する細胞株中で観察された。#21および21.15Bcl−xL中のカスパーゼ活性が、2mMブチレートの存在下で完全に抑制されなかったが、100AB−37および37.32ΔBcl−xLと比較して有意に減少され、これは、4倍多い活性を示した(図17)。これらの結果は、Bcl−xL発現とNaBuによって化学的に誘導されるアポトーシスの活性遅延との間のポジティブな相関を示す。
(等価物)
当業者は、通常の実験法しか使用せずに、本明細書中に詳細に記載される特定の実施形態に対する多数の等価物を、認識するかまたは確認し得る。このような等価物は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
当業者は、通常の実験法しか使用せずに、本明細書中に詳細に記載される特定の実施形態に対する多数の等価物を、認識するかまたは確認し得る。このような等価物は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
Claims (31)
- 増加した量のBcl−x L タンパク質を含む細胞であって、該細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない、細胞。
- 前記細胞が、ヒト細胞、マウス細胞またはハムスター細胞であり、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項1に記載の細胞。
- 前記細胞が、懸濁液中での増殖のために適応され、そして/または無血清培地中での増殖のために適応される、請求項1または2に記載の細胞。
- 前記Bcl−x L タンパク質が、ヒト、ネコ、ウシ、イヌ、Xenopus laevis、ブタ、またはネズミBcl−x L タンパク質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞。
- 前記細胞が、該細胞中へと導入される第1の発現ベクター上でコードされるポリペプチドを発現する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
- 前記ポリペプチドが、前記細胞中にトランスフェクトされる第1の発現ベクター上でコードされる、請求項5に記載の細胞。
- 前記ポリペプチドに対する前記細胞の特異的産生性が、前記増加した量のBcl−x L タンパク質を含まない対応する細胞の特異的産生性よりも大きい、請求項5または6に記載の細胞。
- 前記ポリペプチドが分泌されたタンパク質である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の細胞。
- 前記第1の発現ベクターが、抗体の軽鎖および/または重鎖をコードする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の細胞。
- 前記細胞が、前記抗体の軽鎖または重鎖をコードする第2の発現ベクターをさらに含み、前記第1の発現ベクターおよび該第2の発現ベクターが、該細胞中で該抗体を一緒に発現する、請求項9に記載の細胞。
- ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞を培養する工程、細胞培養物内で該ポリペプチドを発現する工程、および該細胞培養物から該ポリペプチドを精製する工程を包含する、方法。
- ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、以下:
増加した量の抗アポトーシス遺伝子を発現する細胞を提供する工程、
ポリペプチドをコードする第1の発現ベクターを該細胞中に導入する工程、および
該細胞中で該ポリペプチドを発現する工程
を包含し、該抗アポトーシス遺伝子は、好ましくはBcl−x L である、方法。 - 前記方法が、前記細胞を前記第1の発現ベクターでトランスフェクトする工程を包含する、請求項12に記載の方法。
- 細胞によるポリペプチド産生を増加させるための方法であって、該方法は、該細胞中で抗アポトーシス遺伝子の発現を増加させる工程を包含し、該抗アポトーシス遺伝子は、好ましくはBcl−x L である、方法。
- 前記方法は、抗アポトーシス遺伝子をコードする発現ベクターで前記細胞をトランスフェクトする工程を包含する、請求項14に記載の方法。
- 前記細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記細胞は、前記細胞培養物から前記ポリペプチドを精製する工程をさらに包含する、請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ポリペプチドに対する前記細胞の特異的産生性が、前記抗アポトーシス遺伝子の前記増加した発現を含まない対応する細胞の特異的産生性よりも大きい、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 前記細胞が、ヒト細胞、マウス細胞またはハムスター細胞であり、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項12〜18のいずれか1項に記載の方法。
- 前記細胞が、懸濁液中での増殖のために適応され、そして/または無血清培地中での増殖のために適応される、請求項12〜19のいずれか1項に記載の方法。
- 前記Bcl−x L 遺伝子が、ヒト、ネコ、ウシ、イヌ、Xenopus laevis、ブタ、またはネズミBcl−x L タンパク質をコードする、請求項12〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ポリペプチドが分泌されたタンパク質である、請求項12〜21のいずれか1項に記載の方法。
- 前記細胞が、抗体の軽鎖および/または重鎖をコードする第1の発現ベクターを含む、請求項12〜22のいずれか1項に記載の方法。
- 前記細胞が、前記抗体の軽鎖または重鎖をコードする第2の発現ベクターをさらに含み、前記第1の発現ベクターおよび該第2の発現ベクターが、該細胞中で該抗体を一緒に発現する、請求項23に記載の方法。
- 細胞により産生されるポリペプチドの量を増加させるための、抗アポトーシス遺伝子の増加した発現の使用。
- 細胞により産生されるポリペプチドの量を増加させるための、抗アポトーシス遺伝子をコードするベクターの使用。
- 前記細胞は、異種サイクリン依存性キナーゼインヒビターを発現しない、請求項25または26に記載の使用。
- 前記抗アポトーシス遺伝子は、Bcl−x L 遺伝子である、請求項25〜27のいずれか1項に記載の使用。
- 前記細胞が、ヒト細胞、マウス細胞またはハムスター細胞であり、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項25〜28のいずれか1項に記載の使用。
- 前記ポリペプチドに対する前記細胞の特異的産生性を増加させる、請求項25〜29のいずれか1項に記載の使用。
- 前記細胞が、前記ポリペプチドをコードする発現ベクターを含む、請求項25〜30のいずれか1項に記載の使用。
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