JP2010536766A - γ−セクレターゼ阻害剤 - Google Patents

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Abstract

次式の化合物、
Figure 2010536766

これらを含む医薬組成物、およびそれらの使用方法が記載される。

Description

本発明は、γ−セクレターゼの阻害剤に関する。
アルツハイマー病は、その後期段階における認知性および行動性の痴呆によって特徴付けられ、著しく社会的かつ財政的な関心として現れている。神経原線維タングルおよび老人斑は、一般的に、アルツハイマー病に苦しめられている者の記憶および認知に関連する脳領域で見出される。これらの斑はまた、ダウン症候群、オランダ型遺伝性脳出血の遺伝性脳出血、および他の神経変性疾患の個体の脳で見出される。老人斑は、主に、アミロイドβ(Aβ)ペプチド(アミロイド前駆体タンパク質(APP)の神経毒性があり、高度に凝集したペプチド分節)からなる。Aβペプチドは、β−セクレターゼ(BACE)によるAPPのタンパク質切断、次いで、γ−セクレターゼによる少なくとも1つの引き続くC末端の切断によって形成される。そのため、γ−セクレターゼの阻害は、アルツハイマー病およびアミロイド斑によって特徴付けられる他の疾病の治療または予防に対する魅力的な標的である。アルツハイマー病および他の疾患の治療に有用であると教示されているγ−セクレターゼの阻害剤は、当該技術分野で公知である(特許文献1および特許文献2)。本発明は、さらなるγ−セクレターゼの阻害剤を与える。本発明の特定の化合物は、好ましい治療の指標を示す。
国際公開第98/28268号パンフレット 国際公開第04/080983号パンフレット
本発明は、式Iの化合物を与える。
Figure 2010536766
式中、Rはヒドロキシまたはフルオロであり、
はC−Cアルキルであり、
は水素またはフェニルであり、
は水素、フェニル、またはC−Cアルキルであり、Rは水素またはフェニルであるが、ただし、R、R、およびRのうち1つは、水素以外であり、かつ、他の2つは水素である。
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物および薬理学的に許容できる希釈剤を含む医薬組成物を与える。本発明はまた、医薬品としての式の化合物の使用を与える。
その方法の態様の1つでは、本発明は、患者に有効量の式Iの化合物を投与する工程を含む、患者におけるアミロイドβペプチドを低減させる方法に向けられる。本発明はまた、アミロイドβタンパク質を低減させるための薬物の調製のための式Iの化合物の使用を与える。
特定の方法の実施形態では、本発明は、治療が必要な患者に、有効量の式Iの化合物を投与する工程を含む、アルツハイマー病の治療方法を与える。本発明はまた、アルツハイマー病の治療用の薬物の調製のための式Iの化合物の使用を与える。
本発明はまた、治療が必要な患者に有効量の式Iの化合物を投与する工程を含む、アルツハイマー病の進行の予防または阻害する方法を与える。本発明はまた、アルツハイマー病の進行の予防または阻害のための薬物の調製のための式Iの化合物の使用を与える。
上記の式において使用される一般的な化学用語は、それらの通常の意味を有する。例えば、用語「C−Cアルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルを含む。
用語「窒素保護基」は、計画された反応条件に対して安定であるが、再生されるアミンと適合する試薬および反応条件によって選択的に除去されてもよい部分を意味するように解釈される。このような基は、当業者に周知であり、文献に記載されている(例えば、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、第7章、John Wiley and Sons社(1999)参照)。考えられる窒素保護基は、適したカルバミン酸エステル(tert−ブトキシカルボニルなど)を含む。
当業者は、式Iの化合物の全てが、下記の構造物において「*」の印を付された少なくとも3つのキラル中心を有することを理解するだろう。
Figure 2010536766
本発明は、全ての個々のジアステレオマー、およびラセミ化合物を含む前記化合物のジアステレオマーの混合物を考慮するが、式Iの化合物について好ましいジアステレオマーは、図(i)に図示される通りである。
Figure 2010536766
式Iの化合物は有用なγ−セクレターゼの阻害剤であるが、化合物のあるクラスが好ましい。この段落には、このような好ましいクラスが記載されている。
a)Rはヒドロキシである。
b)Rはメチルである。
c)Rは水素またはフェニルである。
d)Rはフェニルである。
e)Rがメチルであり、かつRがフェニルである式Iの化合物。
f)Rがヒドロキシであり、Rがメチルであり、かつRがフェニルである式Iの化合物。
g)式(ii)の化合物。
Figure 2010536766
式Iの化合物はγ−セクレターゼの阻害剤である。従って、本発明はまた、治療が必要な哺乳動物に、γ−セクレターゼを阻害する量の式Iの化合物を投与する工程を含む、哺乳動物のγ−セクレターゼを阻害する方法を与える。式Iの化合物の投与によって治療される哺乳動物はヒトであることが好ましい。
γ−セクレターゼの阻害剤として、本発明の化合物は、A−βペプチドの生成を抑制するのに有用であり、従って、過剰なAβペプチドレベルから生じた障害の治療に有用である。式Iの化合物は、従って、アルツハイマー病、軽度の認知性機能障害、ダウン症候群、オランダ型アミロイド症の遺伝性脳出血、大脳アミロイド血管障害、他の変性性認知症(混合型血管および変性起点の認知症、パーキンソン病に関連する認知症、進行性核上麻痺に関連する認知症、皮質の基底の変性に関連する認知症、およびびまん性レビー小体型のアルツハイマー病など)の治療または予防に有用であると考えられる。
本発明の化合物は、様々な手順(いくつかは下記のスキームに図示される)によって調製されてもよい。下記のスキームの個々の工程は、式Iの化合物を用意するために変更されていてもよいことは、当業者によって認識されるだろう。式Iの化合物を生成するために必要とされる工程の特定の順序は、合成される特定の化合物、出発化合物、および置換された部分の相対的な不安定性に依存する。さらに、個々の異性体、鏡像異性体、またはジアステレオマーは、式Iの化合物の合成におけるいずれの便宜な時点で分離されてもよい。
式Iの化合物は、下記のスキーム(可変のR、R、R、およびRは上記のように定義され、かつ、可変のPgは窒素保護基である)に記載されたように調製されてもよい。
Figure 2010536766
アミン(a)は、当業者に周知の、標準的なアミド形成条件下で、アミド(b)を与えるために反応させる。適切に窒素が保護されたアラニン(例えば、N−(tert−ブトキシカルボニル)−アラニンまたはその等価物(カルボン酸ナトリウム塩またはカルボン酸カリウム塩など))は、ペプチドカップリング剤(ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、またはn−プロピルホスホン酸無水物など)、および適切なアミン(N−メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンなど)と、適した溶媒(ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)またはテトラヒドロフラン(THF)など)中で、アミド(b)を与えるために反応させる。必要である場合、または要求される場合、添加剤(4−(ジメチルアミノ)ピリジンおよび/もしくは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールまたはそれらの等価物など)は、反応を促進するために、反応混合物に加えてもよい。あるいは、他のカルボン酸等価物(アシル化剤(適切なアシルイミダゾールまたは適切な酸ハロゲン化物など)を含む)は、所望のアミド(b)を与えるために、アミン(a)と直接的に反応させてもよい。次いで、アミド(b)は、当業者に周知の条件下で脱保護される(例えば、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、第2および7章、John Wiley and Sons社(1999)参照)。次いで、この得られたアミンは、2−ヒドロキシイソ吉草酸または2−フルオロ吉草酸のいずれかと、前述の標準的なアミドカップリング条件下で、式Iの化合物を与えるために反応させる。
必要なアミン(a)は、下記のスキーム(可変のR、R、R、およびRは、上記で定義された通りであり、Xは、−NRまたは−ORであり、かつ、可変のRおよびRは独立にC−Cアルキルである)に記載される通りに調製されてもよい。
Figure 2010536766
適切に置換されたニトロベンゼン(c)は、適切なアミンおよびリン酸トリアミドのいずれかと、上昇した温度で、密封したチューブ中で、中間体(d)(Xは−NR)を与えるために反応させ、または適切なC−Cアルコール、およびトリアルキルホスフィンは、上昇した温度で、密封したチューブ中で、中間体(d)(Xは−OR)を与えるために反応させる。次いで、中間体(d)は、ラクタム(e)を与えるために水と反応させる。次いで、このラクタムは、標準的な条件下で(例えば、適した塩基(カリウム tert−ブトキシドまたは炭酸セシウムなど)の存在下でハロゲン化アルキルと反応させる)と、N−アルキル化ラクタム(f)を調製するためにN−アルキル化される。必要なアミン部分は、ラクタム(f)と適した塩基(カリウム tert−ブトキシドなど)との反応、次いで、亜硝酸イソアミルとの反応によって、オキシム(g)を与えるために導入されてもよい。次いで、このオキシムは、標準的な条件下で、例えば、酢酸中の亜鉛末との反応によって還元され、所望のアミン(a)を与える。
(調製1)
(ジエチル−(5−フェニル−3H−アゼピン−2−イル)−アミン)
4−ニトロ−ビフェニル(26.35g、132.3mmol)、ジエチルアミン(137.0mL、1.32mol)、およびヘキサエチルリン酸トリアミド(72.6mL、265.0mmol)の混合物を、2つの圧力管に分けた。当該管を密封し、内容物を120〜125℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、圧力管の内容物を合わせ、真空中で濃縮した。残渣を水で洗浄した(2×100mL)。水に不溶性な物質をジクロロメタンで希釈し、水(100mL)で洗浄し、1N HClで抽出した(2×150mL)。水性の酸層をジクロロメタンで洗浄した(3×200mL)。当該水性の酸層をNaOHペレットでアルカリ性(pH 12)にし、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮し、6.89g(22%)の標記の中間体を、少量のヘキサエチルホスホロアミドが混入した濃褐色の油状固形物として得た。酸層からのジクロロメタン洗浄物をMgSOで乾燥し、真空中で濃縮し、約66%のヘキサエチルホスホラミドおよび34%のHCl塩としての標記の中間体からなる80gの濃褐色の液体を得た。この物質をジクロロメタン(100mL)で希釈し、1N HCl(2×100mL)で抽出した。合わせた水層を、NaOHペレットでアルカリ性(pH 13)にし、ジクロロメタン(2×300mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮し、18.81gの標記の中間体を、約30%のヘキサエチルホスホラミドが混入した濃褐色の結晶として得た。当該標記の化合物は、さらに精製することなく、次反応に持ち越した。MS:(m/z)=241.2(M+1)。下記の化合物は、基本的に、調製1の方法によって調製した。
Figure 2010536766
(調製4)
(5−フェニル−1,3−ジヒドロ−アゼピン−2−オン)
粗のジエチル−(5−フェニル−3H−アゼピン−2−イル)−アミン(12.47g)を、水(10.0mL)および2−メトキシ−エタノール(40.0mL)に加え、生じた混合物を加熱還流し、4日間撹拌した。揮発物を真空中で除去し、残渣をジクロロメタンで希釈し、0.1N HCl(2×200mL)、および飽和NaHCO水溶液(2×200mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、真空中で濃縮し、粗の標記の化合物を、濃褐色の固形物(9.63g)として得た。この物質は、さらに精製することなく、次反応に持ち越した。MS:(m/z)=186.1(M+1)。下記の化合物は、基本的に、調製4の方法によって調製した。
Figure 2010536766
(調製7)
(2−ブトキシ−5−フェニル−3H−アゼピン)
22リットルの反応フラスコに、加熱マントル、オーバーヘッド撹拌装置、冷却器、滴下ロート、温度計プローブ、および窒素導入口/排気口を装填した。当該フラスコを、窒素で完全にパージし、反応中ずっと窒素下に維持した。当該フラスコに、4−ニトロビフェニル(1700g、8.53モル)および1−ブタノール(3793g、51.2モル)を入れた。得られた混合物を加熱還流し、透明な溶液を形成させた。トリブチルホスフィン(3500g、17.3モル)を滴下ロートに入れ、当該熱した4−ニトロビフェニル溶液に滴下した。温度を、還流の維持に必要な温度まで徐々に上昇させた。当該反応は、ガスクロマトグラフィー分析によって、完了までモニターした。当該反応物を冷却し、これに水を加えた(500mL)。当該反応物を、油状物になるまで濃縮し、次いで、石油エーテル(8.0L)を加えた。得られた混合物を−40℃まで冷却し、望まないトリブチルホスフィンオキシドを除去するために濾過した。当該濾液を再度濃縮し、石油エーテル(8.0L)を加えた。当該混合物を冷却して濾過した。得られた濾液を油状物になるまで濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、標記の化合物を得た(908g、44%)。MS:(m/z)=242.1(M+1)。
(調製8)
(5−フェニル−1,3−ジヒドロ−アゼピン−2−オン)
2−ブトキシ−5−フェニル−3H−アゼピン(908g、3.42モル)を、2B−3 エタノール(8172mL)および脱イオン水(2724mL)に溶解させた。当該溶液をオートクレーブに入れ、150℃まで20時間加熱した。当該溶液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。共沸蒸留によって、トルエン(2×2L)から、残った水を除去した。残った固形物をトルエン(1.7L)に溶解させ、95〜100℃の間で加熱した。当該溶液を90℃未満まで冷却し、ヘプタン(約4.8mL/g)を加えた。当該溶液を室温まで冷却させ、次いで、氷浴を使用して0〜5℃まで冷却した。固形物を濾過し、ヘプタンで洗浄し、乾燥して、標記の化合物(559g、88%)を淡褐色の固形物として得た。MS(EI):(m/z)=185.1。
(調製9)
(1−メチル−5−フェニル−1,3−ジヒドロ−アゼピン−2−オン)
5−フェニル−1,3−ジヒドロ−アゼピン−2−オン(168.5g、911.3mmol)をテトラヒドロフラン(1300mL)と混合し、当該溶液を約−30℃まで冷却した。カリウム第三級ブトキシド(107.4g、956.9mmol)を一度に加えた。発熱が認められ、反応物が−12℃まで加温された。当該発熱が静まった後、内容物を−25℃まで再冷却し、ヨードメタン(113.5mL、1.823mol)を加えたところ、わずかな発熱が生じた。当該反応物を室温まで加温し、撹拌した。10時間後、当該反応混合物をメチル第三級ブチルエーテル(1300mL)で希釈し、飽和塩化アンモニウム溶液(2×250mL)、水、および飽和塩化ナトリウム水溶液で抽出した。合わせた水層を、メチル第三級ブチルエーテル(200mL)で逆抽出した。当該メチル第三級ブチルエーテル抽出物を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過した。当該溶液をロータリーエバポレーションで濃縮し、標記の化合物(185g、100%)を褐色の粉状の残渣として得た。当該物質は、精製することなく、次工程で直接使用した。下記の化合物は、基本的に、調製9の方法によって調製した。
Figure 2010536766
(調製13)
(1−メチル−5−フェニル−1H−アゼピン−2,3−ジオン 3−オキシム)
1−メチル−5−フェニル−1,3−ジヒドロ−アゼピン−2−オン(183g、918.4mmol)をテトラヒドロフラン(1500mL)と混合し、当該溶液を−25℃〜−30℃まで冷却した。亜硝酸イソアミル(148.1mL、1.102mol)、次いでカリウム第三級ブトキシド(108.2g、964.4mmol)を加えたところ、発熱し、約−5℃になった。当該溶液を−10℃まで再冷却し、次いで、ゆっくり室温まで加温させた。当該反応物を一晩撹拌した。当該反応物を3N HCl水溶液(300mL)で希釈し、pHを約2にした。次いで、メチル第三級ブチルエーテル(4L)で希釈し、当該内容物を0.5〜1.0N HCl(2×600mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。暗色の有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して、テトラヒドロフランで湿った残渣を得た。当該残渣をシクロヘキサン(300mL)で希釈し、濃縮して、メチル第三級ブチルエーテル(450mL)およびシクロヘキサン(1000mL)中でスラリーになった約275gの粗製残渣を得た。当該スラリーを約40℃まで加熱し、室温まで冷却し、濾過し、シクロヘキサンでリンスした。40℃での真空乾燥によって、標記の化合物(169g、81%)を褐色の粉末として得た。下記の化合物は、基本的に、調製13の方法によって調製した。
Figure 2010536766
(調製17)
(3−アミノ−1−メチル−5−フェニル−1,3−ジヒドロ−アゼピン−2−オン)
1−メチル−5−フェニル−1H−アゼピン−2,3−ジオン 3−オキシム(25g、109mmol)を、酢酸(80mL)、メタノール(80mL)および水(40mL)と混合し、当該スラリーを約5℃まで冷却した。亜鉛末(29.81g、436mmol)を、数度に分けて加えた。反応物を室温まで放冷した。2時間後、当該反応物をセライト(登録商標)パッドで濾過し、メタノールでリンスした。当該濾液を、ロータリーエバポレーションで、大部分のメタノールが除去されるまで濃縮した。次いで、油状の紫色の溶液を、ジクロロメタン(200mL)で希釈すると、即時にいくらかの沈殿が生じた。当該濃いスラリーを濾過し、酢酸亜鉛(白色粉末)を除去した。得られた紫色の濾液を、さらに、ジクロロメタン(200mL)で希釈し、水酸化アンモニウム溶液で抽出した(2×100mL)。当該有機抽出物をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して21.5g(92%)の紫色の油状物を得た。加温した酢酸エチル(200mL)で希釈した後、微細な沈殿物が認められ、濾過によって除去した。残っている酢酸エチル溶液をガス状の塩化水素(約5g、137mmol)で処理し、初期に濃いスラリーを得て、これに塩化水素を大量に加えて薄めた。スラリーを室温で2時間撹拌後、当該内容物を濾過し、45℃で真空乾燥し、標記の中間体のHCl塩(22.9g、94%)を褐色の粉末として得た。22.9gのHCl塩を、150mLの1N 水酸化ナトリウムおよびジクロロメタンで処理した。層を分離させ、ジクロロメタン層を、さらに、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。次いで、当該ジクロロメタン溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、19.6gの標記の化合物を赤褐色の油状物として得た。下記の化合物は、基本的に、調製17の方法によって調製した。
Figure 2010536766
(調製21)
((S)−[1−(1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン−3−イルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル)
3−アミノ−1−メチル−5−フェニル−1,3−ジヒドロ−アゼピン−2−オン(330g、1.54mol)を、ジクロロメタン(3L)、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニン(291.4g、1.54mol)、およびヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(259.5g、1.617mol)と混合した。当該溶液を約10℃まで冷却した。この溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(335.4mL、1.925mol)、次いで1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(310.1g、1.617mol)を加え、当該内容物を徐々に室温まで加温した。3.5時間後、当該反応物を水(1000mL)に注ぎ、層を分離させた。有機層を、さらに、水(1000mL)、0.1N HCl(1000mL)、飽和NaHCO溶液(1000mL)および最後に飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。ジクロロメタン層をNaSOで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーションで濃縮して、標記の化合物(約574g、97%)を黄褐色のフォームとして得た。当該物質は、次工程で直接使用するのに十分な純度だった。下記の化合物は、基本的に、調製21の方法で調製した。
Figure 2010536766
(調製25)
((S)−2−アミノ−N−(1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン−3−イル)−プロピオンアミド)
−5℃に冷却したトリフルオロ酢酸(800mL)の溶液に、(S)−[1−(1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン−3−イルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル(564g、1.46mol)のジクロロメタン(2L)溶液を、滴下ロートで加えた。当該反応物を、0℃で2時間撹拌し、その時点で、反応物の一定分量には、ごく微量の出発物質が残っていることを示していた。当該反応物は、ロータリーエバポレーションで濃縮し、ジクロロメタンで再希釈し、再濃縮し、シロップを得た。当該シロップ状の油状物を、ジクロロメタン(2〜3L)で希釈し、10% 炭酸ナトリウム溶液(2L)に加えた。水層が塩基性のpHとなるのに、さらに10% 炭酸ナトリウム溶液(2L)を必要とした。当該層を分離し、水層をジクロロメタン(600mL)で逆抽出した。次いで、合わせた有機層を、飽和炭酸水素ナトリウム(1000mL)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーションで濃縮して、標記の中間体(約435g)を、油状のフォーム(そのうち標記の化合物は約406g(97%))として得た。下記の化合物は、基本的に、調製25の方法によって調製した。
Figure 2010536766
(調製29)
((S)−2−フルオロ−3−メチル−酪酸)
3ガロン(約11355cm)のナルゲン(Nalgene)(登録商標)容器に、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(4.06L、25.1mol)、(S)−2−アミノ−3−メチル−ブタン酸(147.9g、1.26mol)および亜硝酸ナトリウム(113g、1.64mol)を入れた。室温で12〜15時間撹拌した。冷水(5L)およびジエチルエーテル(7L)を、ナルゲン(登録商標)容器に注いだ。撹拌し、次いで、層を分離させた。有機層を水(3L)で洗浄した。合わせた水層をジエチルエーテル(3L)で抽出した。合わせた有機層を水(3L)、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液層のpHを、1N 硫酸でpH4未満に調整した。ジエチルエーテル(2×2L)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下でロータリーエバポレーションによって、槽の温度が30℃を超えないことを確かめながら濃縮し、60gの標記の化合物を油状物(純度 約85〜90%、鏡像体過剰率 約60%)として得た。
(調製30)
((S)−2−フルオロ−3−メチル−酪酸の鏡像体過剰率の濃縮)
2−フルオロ−3−メチル酪酸(約235.5g、1.96mol)を、酢酸エチル(2.9L)に取り込み、R−(+)−α−メチルベンジルアミン(237.5g、1.96mol)を滴下ロートで滴下した。40℃までの温度上昇が認められた。当該溶液を冷却させた後、スラリーが生じ、これを室温で45分間撹拌した。次いで、当該スラリーを、濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(300mL)でリンスした。当該湿ったケーキを酢酸エチル(4.5L)に懸濁し、加熱還流した。溶液を得るために、さらに酢酸エチル(450mL)を加え、次いで、当該溶液を室温で一晩、放置した。得られたスラリーを濾過し、当該濾過ケーキを酢酸エチル(200mL)でリンスした。当該濾過ケーキを40℃で真空乾燥し、262.3gの(S)−2−フルオロ−3−メチル酪酸の(R)−+−α−メチルベンジルアミン塩を粉末として得た。この塩の鏡像体過剰率は、キラルキャピラリー電気泳動解析によって、所望の(S)異性体について94%超であることが見出された。
(S)−2−フルオロ−3−メチル酪酸(252g、1.044mol)の(R)−+−α−メチルベンジルアミン塩を、1N 塩酸(1472mL)に加え、ジエチルエーテル(2×2.5L)に抽出した。有機層を合わせ、1N 塩酸(600mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、ロータリーエバポレーションによって、槽の温度が30℃を超えないことを確かめながら濃縮し、122gの(S)−2−フルオロ−3−メチル酪酸(収率97.2%)を透明な油状物として得た。酸の鏡像体過剰率は、キラルキャピラリー電気泳動解析によって、96%であることが見出された。
(実施例1)
Figure 2010536766
((S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−N−[(S)−1−((S)−1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン−3−イルカルバモイル)−エチル]−ブチルアミド)
(S)−2−アミノ−N−(1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン−3−イル)−プロピオンアミド(406g、1.423mol)を、ジクロロメタン(3L)と混合し、当該溶液を0〜2℃まで冷却した。この溶液に、(S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−酪酸(168.1g、1.423mol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(239.7g、1.565mol)およびジイソプロピルエチルアミン(310mL、1.779mol)を加えたところ、わずかな発熱が生じた。当該内容物を約4℃まで冷却し、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(286.5g、1.494mol)を加えた。当該反応物を、室温まで徐々に加温した。4.5時間(温度 14℃)での高速液体クロマトグラフィー分析は、約5%の未反応の出発アミンが存在することを示した。さらに1〜1.5時間の撹拌後、反応物を水(1000mL)でクエンチし、層を分離した。ジクロロメタン層は、さらに、水(1000mL)、0.1N HCl(1000mL)、飽和炭酸水素ナトリウム(1000mL)および最後に飽和塩化ナトリウム水溶液で抽出した。次いで、ジクロロメタン層を、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーションで濃縮し、結合した生成物の粗のジアステレオマーの混合物(505g)を、黄褐色のフォームとして得た。100%メタノールで溶出するキラルパック(Chiralpak)(登録商標)ADカラムを使用し、キラルクロマトグラフィーで当該異性体を分離した。溶出溶媒を異性体画分から除去した後、約210gの第1に溶出した異性体を、黄褐色フォームとして回収し、所望の異性体2については、約220g(44%)を、これもまた黄褐色粉末として回収した。第2に溶出した異性体は、所望の(S,S,S)−ジアステレオマーである。約140gの標記の化合物を、アセトン(1000mL)および水(95mL)に取り込ませた。当該溶液を、ロータリーエバポレーター上で、懸濁した粒子が認められなくなるまで、加熱した。当該溶液を、オーバーヘッド撹拌を備えたフラスコに移し、水(2750mL)を徐々に、15分間かけて加えた。得られたスラリーは、室温まで冷却させ、次いで、濾過し、ケーキを20% アセトン/水 溶液(650mL)でリンスした。40℃で一晩真空乾燥した後、約102gの標記試料を回収した。MS(m/z):386.2(M+1)。下記の化合物は、基本的に、実施例1の方法によって調製した。
Figure 2010536766
(実施例7)
(S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−N−[(S)−1−((S)−1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン−3−イルカルバモイル)−エチル]−ブチルアミドの絶対配置の決定
結晶は、ジクロロメタンに溶解させた(S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−N−[(S)−1−((S)−1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン−3−イルカルバモイル)−エチル]−ブチルアミド(実施例1、第2に溶出した画分)の溶液へのn−ペンタンの蒸気拡散によって成長した。(S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−N−[(S)−1−((S)−1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン−3−イルカルバモイル)−エチル]−ブチルアミドの単結晶を薄いガラス繊維上に載せ、−173℃の窒素に浸漬した。データは、MoKα 放射線源(λ=0.71073Å)、およびSMART 1000CCDエリア検出器を備えた、P4回折計(ブルカー(Bruker)−AXS、米国、ウィスコンシン州、マディソン)を使用して収集した。格子定数の精密化およびデータリダクションは、SAINTプログラム(Sheldrick、GM.SHELXS86、Acta Cryst.A46、467〜473(1990))を使用して行った。単位格子には、斜方晶のパラメータ(a=8.010(5)Å、b=20.345(15)Å、c=25.513(19)Å)を有する指標を付した。結晶構造の格子体積は、4157(5)Å3であり、1.232g/cm3の密度を有し、その単位格子中に2つの分子を有していた。当該構造は、直接法によって解析した(Sheldrick、G.M.、SHELXS93、Institute fur anorg chemie、ドイツ、ゲッティンゲン)。全ての原子パラメータは、独立に精密化した。空間群の選択(P2)は、完全マトリックス最小二乗精密化の成功した収束(最終適合度が1.297であるF2)によって確かめた。最終的な残余要因(R1)は、=0.1905であり、最終的な精密化サイクル後の最も大きい相違のピークおよび正格子点は、それぞれ0.988および−0.754(e.A−3)であった。
不斉中心のうち2つは、立体化学が定められた市販の物質の購入によって設定された(N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニン(調製21)および(S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−酪酸(実施例1))。その合成中の、これら2つの不斉中心のいずれかにおける著しい立体化学的侵食の証拠はなく、従って、結晶構造の相対的な立体化学を使用して、実施例1の第2に溶出したジアステレオマー中で、第3の不斉中心を(S)として定めた。
(実施例A)
(β−アミロイド生成のin vitroでの阻害)
β−アミロイド生成を阻害する化合物の能力を、スウェーデン変異を有する細胞株で評価した。このスクリーニングアッセイは、二重の変異(Lys651Met652からAsn651Leu652)(APP751ナンバリング)を含むアミロイド前駆体タンパク質751(APP751)の遺伝子を安定して形質移入(国際公開第94/10569号パンフレットに記載された方法)した細胞(HEK293=ヒト腎臓細胞株)を使用した。この変異は、通常、スウェーデン変異と呼ばれ、当該細胞(「293 751 SWE」と名付けられた)を、コーニング(Corning)96ウェル プレートに、2〜4×10細胞/ウェル(10% ウシ胎児血清を加えた、ダルベッコの最小基礎培地(シグマ、ミズーリ、セントルイス)中)で播種した。細胞数は、アッセイの線形範囲内(約0.03から1.0ng/mL)でβ−アミロイドのELISA結果を達成するために重要である。
5% 二酸化炭素で平衡化した恒温器で一晩のインキュベーション(37℃)後、培地を除去し、2時間のインキュベーション期間の間に、試料化合物のストック溶液(200μL/ウェル)で置き換えた。薬剤のストックは、処理で使用される最終薬剤濃度において、ジメチルスルホキシドの濃度が、0.5%を超えず、通常、0.1%に等しくなるように、100% ジメチルスルホキシド中で調製した。
インキュベーション期間の終了時に、各ウェルから100μLの条件培地または適切なその希釈物を、ELISAプレート(β−アミロイドペプチドのアミノ酸13〜28に対する抗体 266(P.Seubert、Nature(1992)359:325〜327)(国際公開第94/10569号パンフレットに記載される)でプレコートされている)に移し、4℃で一晩保存した。β−アミロイドペプチドのアミノ酸1〜5に対する標識抗体 3D6(P.Seubert、Nature(1992)359:325〜327)を使用しているELISAアッセイを、生成されたβ−アミロイドペプチド量を測定するため、次の日に行った。β−アミロイドペプチドELISAの結果は、標準曲線に適合させ、ng/mL β−アミロイドペプチドとして表され、β−アミロイドペプチド生成の50%阻害を生じる試料化合物の濃度(IC50)は、グラフパッドプリズム(Graph Pad Prism)(カリフォルニア州、サンディエゴ)内で、4 パラメータ ロジスティックモデルを使用して評価した。
細胞性タンパク質合成に対する化合物の効果は、化合物で処理した293 751 SWE細胞中の総細胞性タンパク質への[35S]メチオニンの取り込みを評価することで判定した。ポリ−D−リジンでコートしたサイトスター(Cytostar)−T(登録商標)マイクロタイタープレート(アマシャム、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)中の、2〜4×10 293 751 SWE細胞/ウェルを、2時間、様々な濃度の試料化合物(1% FBS、20mM HEPES、および1μCi[35S]メチオニン(43.5TBq/mmol;ニューイングランドニュークリアー(New England Nuclear)、マサチューセッツ州、ボストン)を含む、メチオニンフリーのDMEM中で調製されている)で処理した。試料化合物とのインキュベーション後、[35S]−メチオニンの総細胞性タンパク質への取り込みを、メタノールで固定し、PBSで洗浄した細胞中で、ウォラックマイクロベータ(Wallac Micobeta)シンチレーションカウンタ(パーキンエルマー社、マサチューセッツ州、ボストン)を使用して判定した。
例証された化合物の少なくとも1つのジアステレオマーは、基本的に上記の通りに試験した場合、IC50≦1μMを示した。下記の化合物は、基本的に上記の通り試験され、下記の活性を有することが見出された。
Figure 2010536766
*本願明細書で使用される場合、語句「ジアステレオマー1」は、第1に溶出したジアステレオマーを意味し、かつ、「ジアステレオマー2」は、特定の実施例の番号によって言及された化合物の第2に溶出したジアステレオマーを意味する。
(実施例B)
(β−アミロイド放出および/または合成のin vivoでの抑制)
この実施例は、本発明の化合物が、どのようにβ−アミロイド放出および/または合成のin vivoでの抑制について試験され得るかを示している。これらの実験については、3〜4ヶ月齢のPDAPP マウスを使用した(Gamesら、(1995)Nature 373:523〜527)。試験される化合物に応じて、当該化合物は、通常、1〜10mg/mLの間で処方した。当該化合物の低い溶解度の要因のため、これらは、様々な媒体(コーン油、コーン油中の10% エタノール、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(リサーチバイオケミカルズインターナショナル(Research Biochemicals International)、マサチューセッツ、ナティック)、およびカルボキシメチルセルロース(シグマケミカル社、ミズーリ、セントルイス)など)とともに処方されてもよい。
著効研究のため、PDAPP マウスに、胃管栄養法によって経口で投薬し、3時間後に、当該動物をCO麻酔で安楽死させた。亜慢性研究のため、PDAPP マウスに、1日1回または1日2回、7日間投薬し、最終の投薬の3時間後に屠殺した。血液は、心穿刺によって、1cc 25G 5/8インチ(約20センチ)のツベルクリン注射器(針は、0.5M EDTA、pH8.0の溶液でコートされている)を使用して採取した。当該血液を、ベクトンディッキンソン(Becton−Dickinson)バキュテナーチューブ(EDTAを含む)に入れ、15分間、1500×g、5℃でスピンダウンした。次いで、当該マウスの脳を取り出し、皮質および海馬を分け、ラベルをしたエッペンドルフチューブに入れ、迅速にドライアイス上で冷凍した。
(脳のアッセイ)
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)用に海馬組織および皮質組織を調製するため、各脳領域を、10倍量の氷冷グアニジン緩衝液(5.0M グアニジン−HCl、50mM トリス−HCl、pH 8.0)中で、ポリトロンを使用して、ホモジナイズした。ホモジネートを、穏やかに、回転台上で、3〜4時間、室温で揺らし、β−アミロイドの定量化まで−20℃で保存した。
脳のホモジネートを、氷冷したカゼイン緩衝液(0.25% カゼイン、リン酸緩衝食塩水(PBS)、0.05% アジ化ナトリウム、20 μg/ml アプロチニン、5mM EDTA、pH 8.0、10μg/ml ロイペプチン)で1:10に希釈することによって、0.5 Mまでグアニジンの最終濃度を低下させ、その後遠心分離(16,000×g、20分間、4℃)した。ELISA測定の最適範囲を達成するため、必要に応じて0.5M グアニジン塩酸塩を加えたカゼイン緩衝液を添加して試料をさらに希釈した。β−アミロイド標準物質(1〜40または1〜42アミノ酸)は、最終組成が、0.1% ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下で、0.5M グアニジンと等しくなるように調製した。
総β−アミロイド 1〜xサンドウィッチELISA(基本的に全種のβ−アミロイド(β−アミロイド 1〜40およびβ−アミロイド 1〜42を含む)を定量化する)では、2つのモノクローナル抗体(mAb)を、β−アミロイドに対して使用した。捕獲抗体 266(P.Seubert、Nature(1992)359:325〜327)は、β−アミロイドのアミノ酸 13〜28に特異的である。抗体 3D6(Johnson−Woodら、PNAS USA(1997)94:1550〜1555)は、β−アミロイドのアミノ酸 1〜5に特異的であり、ビオチン化され、当該アッセイにおいてレポーター抗体としての役割を果たす。3D6 ビオチン化の手順は、免疫グロブリンのNHS−ビオチン標識についての製造者(ピアース(Pierce)、イリノイ州、ロックフォード)の手順を利用した(100mM 炭酸水素ナトリウム(pH 8.5)緩衝液を使用したことを除く)。3D6 抗体は、分泌されたアミロイド前駆体タンパク質(APP)または全長のAPPを認識しなかったが、アスパラギン酸のアミノ末端を持つ種のβ−アミロイドのみを検出した。当該アッセイは、感度の下限が約50pg/ml(11pM)であり、内在性のマウスのβ−アミロイドペプチド(最大1ng/mlの濃度)に対する交差反応性を示さなかった。
β−アミロイド(aa 1〜42)のレベルを定量化するサンドウィッチELISAの構造は、mAb 21F12(Johnson−Woodら、PNAS USA(1997)94:1550〜1555)(β−アミロイドのアミノ酸 33〜42を認識する)を、捕獲抗体として利用する。ビオチン化された3D6はまたこのアッセイにおけるレポーター抗体(感度の下限が〜125pg/ml(28pM))である。
266および21F12の捕獲 mAbを10μgで、96ウェル イムノアッセイプレート(コースター(Costar)、マサチューセッツ州、ケンブリッジ)に、一晩、室温でコートした。次いで、当該プレートを吸引し、0.25% ヒト血清アルブミン(PBS緩衝液中)で、少なくとも1時間、室温でブロックし、次いで、4℃で、使用まで乾燥させて保存した。当該プレートは、洗浄緩衝液(トリス緩衝生理食塩水、0.05% ツイーン 20)で、使用の前に再水和された。試料および標準物質を、当該プレートに加え、一晩、4℃でインキュベーションした。当該プレートを、3回、洗浄緩衝液で、アッセイの各工程の間に洗浄した。ビオチン化された3D6(カゼインインキュベーション緩衝液(0.25% カゼイン、PBS、0.05% ツイーン 20、pH 7.4)で、0.5μg/mlまで希釈されている)を、ウェル中で1時間、室温でインキュベーションした。アビジン−HRP(ベクター(Vector)、カリフォルニア州、バーリンゲーム)(カゼインインキュベーション緩衝液で、1:4000に希釈されている)を、当該ウェル中で1時間、室温で加えた。発色(colormetric)基質、スロウ(Slow)TMB−ELISA(ピアース、マサチューセッツ州、ケンブリッジ)を加え、15分間反応させ、その後、当該酵素反応を、2N HSOを加えて停止した。反応生成物は、450nmおよび650nmでの吸光度の相違を測定するモレキュラーデバイス(MoLecular Devices)Vmax(モレキュラーデバイス(Molecular Devices)、カリフォルニア州、メンロパーク)を使用して定量化した。
実施例1の化合物(第2に溶出したジアステレオマー)を、基本的に上記の通り試験し、下記の活性を有することを見出した。
(海馬の総A−βの減少)*
Figure 2010536766
*若齢(8〜13週齢)ヘテロ接合体PDAPPマウス、経口投与、投与3時間後に屠殺。
**平均値+標準偏差(1〜5回の実験のn、それぞれ、nは6〜8マウス/用量)。
(血液アッセイ)
EDTA血漿を、1:1で、検体希釈剤(0.2グラム/l リン酸ナトリウム・HO(一塩基性)、2.16グラム/l リン酸ナトリウム・7HO(二塩基性)、0.5グラム/l チメロサール、8.5グラム/l 塩化ナトリウム、0.5mL トリトン X−405、6.0g/l グロブリンフリーのウシ血清アルブミン、および水)で希釈した。検体希釈剤中の試料および標準物質を、脳アッセイのための上記総β−アミロイドアッセイ(266 捕獲/3D6 レポーター)を使用して(検体希釈剤が、記載されたカゼイン希釈剤の代わりに使用されたことを除く)、アッセイした。
実施例1の化合物(第2に溶出したジアステレオマー)は、基本的に上記の通りに試験され、血漿A−βを54%(媒体対照に対してp<0.001)減少させることを見出した(3mg/kgの投薬(1日2回、7日間))。
当業者は、疾病に現在苦しめられている患者の治療、または疾病の発生のリスクがある患者の予防的な治療によって、アルツハイマー病に影響を及ぼすことも認識されるだろう。従って、用語「治療(treatment)」および「治療(treating)」は、アルツハイマー病の進行の緩慢化、中断、抑止、制御、または停止などの全ての工程を意味することを意図するが、必ずしも全ての症状の全除去を示すものではない。そのため、本発明の方法は、アルツハイマー病の発症のリスクがある患者のアルツハイマー病の発症の予防、アルツハイマー病の進行の阻害、および進行したアルツハイマー病の治療を含む。
本願明細書で使用される場合、式Iの化合物の「有効量」と言う用語は、Aβペプチドレベルを、患者において、特異的に、アルツハイマー病の治療で低下させるのに有効な量を意味する。
本発明の化合物の経口投与は好ましい。しかし、経口投与は、唯一の経路ではなく、唯一の好ましい経路でさえもない。例えば、経皮投与は、経口医薬の摂取を忘れやすい患者、またはそれを厭う患者にとって大変望ましいものであり得、静脈内経路は、利便性のため、または経口投与に関連する潜在的な煩雑さを避けるために好ましいかも知れない。式Iの化合物はまた、特定の状況において、経皮、筋肉、鼻腔内または直腸内経路によって投与されてもよい。投与経路は、どのように変化してもよく、薬物の物性、患者および介護者の便宜、ならびに他の関連する状況によって制限され得る(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing社(1990))。
当該医薬組成物は、医薬品技術分野において周知の方法で調製される。担体または賦形剤は、有効成分の媒体または媒介物として役立ち得る固形物、半固形物、または液体物質であってもよい。適した担体または賦形剤は、当該技術分野で周知である。医薬組成物は、経口、吸入、非経口、または局所使用に適合されてもよく、患者に、錠剤、カプセル剤、エアロゾル、吸入剤、座剤、溶剤、懸濁剤、などの形態で投与されてもよい。
本発明の化合物は、経口的に、例えば、不活性希釈剤またはカプセル剤とともに投与されてもよく、または錠剤に圧縮されていてもよい。経口治療投与の目的のため、当該化合物は、賦形剤に取り込まれ、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、ウェーハ、チューインガムなどの形態で使用されてもよい。これらの調製物は、少なくとも4%の本発明の化合物(有効成分)を含むべきであるが、特定の形態次第で変化してもよく、利便性のため、その単位の重量の4%〜約70%の間であってもよい。組成物に存在する当該化合物の量は、適した投薬量が得られるような量である。本発明の好ましい組成物および調製物は、当業者に周知の方法によって決定され得る。
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、また、1以上の下記のアジュバントを含んでいてもよい:結合剤(ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、またはゼラチンなど)、賦形剤または希釈剤(デンプン、乳糖、結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウムなど)、崩壊剤(例えば、クロスカルメロース、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、コーンデンプンなど)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルクまたは硬化植物油など)、滑沢剤(glidant)(コロイド性二酸化ケイ素など)、湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート 80など)、および、甘味剤(ショ糖、アスパルテームまたはサッカリンなど)を添加してもよく、または香味料(ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料など)でもよい。投薬単位の形態がカプセル剤である場合、これに、上記の型の物質に加えて、液状担体(ポリエチレングリコールまたは脂肪油など)を含んでもよい。他の投薬単位の形態は、投薬単位の物理的形状を改変する他の様々な物質(例えば、コーティングなど)を含んでいてもよい。従って、錠剤または丸剤は、糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリメタクリレート、または他のコーティング剤によってコートされていてもよい。シロップは、本発明の化合物に加えて、甘味剤としてのショ糖、ならびにある保存剤、染料および着色料および香料を含んでもよい。これらの様々な組成物の調製に使用される物質は、薬剤的に純粋、かつ、使用量において無毒性であるべきである。
式Iの化合物は、一般的に、広い投薬量の範囲にわたって有効である。例えば、1日あたりの投与量は、通常、約0.001〜約30mg/kg(体重)の範囲内に収まる。いくつかの例では、上記範囲の下限を下回る投薬量レベルは、十分以上であり得、一方、他の場合では、さらにより多量の用量が、治療の休止が必要となるほどの副作用をもたらすことなく、使用されてもよく、従って、上記の投薬量の範囲は、本発明の範囲を多少なりとも制限することを意図したものではない。実際に投与される当該化合物の量は、医師によって、関連する状況の観点(治療される症状、選択された投与経路、投与された実際の化合物(単数または複数)、個々の患者の年齢、体重、および反応、ならびに患者の症状の重症度を含む)から、決定されることが理解されるだろう。

Claims (11)

  1. 式Iの化合物
    Figure 2010536766
    (式中、Rはヒドロキシまたはフルオロであり、
    はC−Cアルキルであり、
    は水素またはフェニルであり、
    は水素、フェニル、またはC−Cアルキルであり、
    は水素またはフェニルであるが、ただし、R、R、およびRのうち1つは水素以外であり、かつ、他の2つは水素である)。
  2. は水素またはフェニルのいずれかである請求項1記載の化合物。
  3. はフェニルである請求項1または2記載の化合物。
  4. はヒドロキシであり、かつ、Rはメチルである請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
  5. 次式の化合物。
    Figure 2010536766
  6. 請求項1〜5いずれか1項記載の化合物および薬理学的に許容できる希釈剤を含む医薬組成物。
  7. 医薬品としての、請求項1〜5いずれか1項記載の化合物の使用。
  8. アルツハイマー病の治療に有用な薬物の調製における、請求項1〜5いずれか1項記載の化合物の使用。
  9. アルツハイマー病の進行の阻害に有用な薬物の調製における、請求項1〜5いずれか1項記載の化合物の使用。
  10. 治療が必要な患者に、有効量の、請求項1〜5いずれか1項記載の化合物を投与する工程を含むアルツハイマー病の治療方法。
  11. 治療が必要な患者に、有効量の、請求項1〜5いずれか1項記載の化合物を投与する工程を含むアルツハイマー病の進行の阻害方法。
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