JP2010524969A - 標的マイクロバブルでの超音波画像 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 標的を定めたマイクロバブルによる様々な疾患検出のための組成物および方法を開示する。具体的には、糖タンパク質Ib(Glycoprotein Ib:GPIb)、VCAM−1に対するリガンド、およびPSGL−1等のP−セレクチンに対するリガンドを含むマイクロバブルを開示する。さらに開示するところのものは、開示したマイクロバブルの被験者への投与、および超音波を用いた血管系中のマイクロバブル検出を含む、循環器疾患検出のための標的を定めたマイクロバブルの利用方法である。
【選択図】 図1
【選択図】 図1
Description
本明細書は、2007年4月20日に出願した米国仮出願第60/913,086号、及び2007年7月3日に出願した米国仮出願第60/947,844号に対して、35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものである。前述の明細書は、この参照によって本明細書に組み込まれるものである。
35U.S.C.セクション202(c)に準じて、米国政府は、国立衛生研究所/米国心臓、肺、血液研究所からの基金(グラントNos.R01−HL074443及びR01−HL078610)で一部行われている本明細書に記載された発明において特定の権利を有するということが理解される。
技術分野
本発明は、画像の分野に関連している。特に、様々な疾患を標的マイクロバブルで検出するための組成物及び方法が開示される。
本発明は、画像の分野に関連している。特に、様々な疾患を標的マイクロバブルで検出するための組成物及び方法が開示される。
いくつかの刊行物及び特許文献は、本発明に関連する分野の技術を記載するために本明細書を通じて引用される。それぞれのこれら引用は、この参照によって完全に本明細書に組み込まれるものである。
超音波造影剤は、心臓内輪郭及び腫瘤をより良く規定するために、組織灌流を評価するために、及び(肝臓内などの)実質腫瘤を評価するために開発された。これらの造影剤は、タンパク質、脂質或いは生体適合性ポリマーで被包されたマイクロバブル或いはナノ−スケール(1ミクロン直径以下)で満たされた空気或いはガスから成る。
さらに、組織炎症は、活性化白血球によって保持されたマイクロバブルの超音波画像によって非侵襲的に評価できることも実証された(Lindner et al.(2000) Circulation 102:531−538;Lindner et al.(2000) Circulation 102:2745−2750)。アルブミン及び脂質マイクロバブルは、細静脈内皮へ接着している白血球へ付着し、数分以内に無傷で貪食される(Lindner et al.(2000)Circulation 102:531−538;Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745−2750;Lindner et al.(2000)Circulation 101:668−675)。しかしながら、保持されたマイクロバブルの割合が少ない、及び一度貪食されたマイクロバブルの粘弾性減衰のために、これらマイクロバブルからの超音波シグナルは相対的に低エコーとなる。このシグナルは、活性化白血球に対するマイクロバブル結合活性を増強するマイクロバブルシェルにおける特定の脂質部位の取り込みによって増強される(Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745−2750)。
微小血管炎症反応を評価するためのより直接的な方法は、マイクロバブルシェルへ特定の内皮細胞接着分子に対するリガンドを共役させることによって可能である(Villanueva et al.(1998)Circulation 98:1−5)。この戦略の有望な利点には、大量のマイクロバブルが保持される、前記マイクロバブルが細胞外に保持されるため超音波減衰が少ない、及び特定の接着分子の発現を定量化する能力を有するということである。
本発明によると、対象における心血管疾患及び障害を検出するための方法が提供される。特定の実施形態において、前記方法は、標的リガンドを有するマイクロバブルを対象に投与する工程と、心血管疾患或いは障害の存在を決定するために前記マイクロバブルの血管滞留をモニタリングする工程とを有するものである。標的リガンドには、これに限定されるものではないが、GPIb、P−セレクチンに特異的な標的リガンド、及びVCAM−1に特異的な標的リガンドが含まれる。心血管疾患及び障害には、これに限定されるものではないが、アテローム性動脈硬化、虚血、心筋損傷、虚血仲介性血管新生、左心室虚血、炎症、血栓症、及び血栓形成促進性環境が含まれる。
本発明の別の観点によると、標的リガンド及び担体を有するマイクロバブルを有する組成物が提供される。標的リガンドは、GPIb、VCAM−1に特異的な標的リガンド、及びP−セレクチンに特異的な標的リガンドを含む。
本発明に従うと、特異的な基質へ結合することを標的としたマイクロバブル組成物が提供される。本発明のマイクロバブルを用いた様々な疾患の検出、診断及び予後に対する方法も提供される。
I.定義
以下の定義は、本発明の理解を容易にするために提供される。
以下の定義は、本発明の理解を容易にするために提供される。
本明細書で用いられる「機能的」という用語は、核或いはアミノ酸配列は列挙したアッセイ或いは目的に対して機能的であるということを意味している。
「実質的に純粋」という用語は、既知の物質(例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質など)の少なくとも50から60重量%を有する調合物を意味する。より好ましくは、前記調合物は、少なくとも75重量%を有し、最も好ましくは、既知の化合物の90から95重量%を有するものである。純度は、既知の化合物に対して適切な方法(例えばクロマトグラフィー法、アガロース或いはポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC解析、及びそれらと同等法)によって測定される。
「単離タンパク質」或いは「単離され精製されたタンパク質」という用語は、しばしば本明細書で使用されている。この用語は第一に、本発明の単離された核酸分子の発現によって産生されたタンパク質を意味する。或いは、この用語は、自然では関連している他のタンパク質から十分に分離され、「実質的に純粋な」形態で存在するタンパク質を意味する。「単離された」とは、他の化合物或いは物質との人工的或いは合成混合物、或いは基本的な活性を阻害せず、例えば不完全な精製、安定剤の添加、或いは例えば免疫原性標本或いは薬学的に許容可能な標本への配合物のせいで存在する不純物の存在を除外することを意味するものではない。
「抗体」或いは「抗体分子」は、あらゆる免疫グロブリンであり、特異的な抗原に結合する抗体及びその断片を含む。その用語は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単一ドメイン(Dab)及び二重特異性抗体を含む。本明細書で用いられたように、抗体或いは抗体分子は、組換えで産生された無傷免疫グロブリン分子、及びこれに限定されるものではないが:Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、scFv2、scFv−Fc、ミニ抗体、二重特異的抗体、三重特異的抗体、単一可変ドメイン(例えば、可変重ドメイン、可変軽ドメイン)、二重特異的抗体、Affibody(登録商標)分子(Affibody,Bromma,Sweden)及びペプタ抗体(peptabodies)(Terskikh et al.(1997)PNAS 94:1663−1668)などの免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部位も考えられる。組換えで産生する抗体は、本分野でよく知られている。
抗体の観点において、「免疫学的に特異的」という用語は、目的のタンパク質或いは化合物の1若しくはそれ以上のエピトープに結合するが、抗原性の生物分子の混合体を含むサンプルにおいて他の分子を実質的に認識し結合しない抗体を意味する。
「共役した」或いは「結合した」という用語は、本発明の2つの化合物或いは薬剤の共有結合性或いは非共有結合性手段による連結を意味している。
本明細書で用いられる「診断」という用語は、あらゆるタイプの診断的情報を提供することを意味し、これに限定されるものではないが、対象が病状を有しているかどうか、病状の特性或いは分類に関連した情報、予後に関連した情報及び/若しくは適切な治療を選択するのに有用な情報などを含む。本明細書で用いられる「診断情報」或いは診断で使用するための情報は、患者が疾患或いは病状を有するかどうかを決定する、及び/若しくは前記疾患或いは病状を表現型カテゴリー、若しくは前記疾患或いは病状の予後に関連した有意差を有するあらゆるカテゴリー、或いは前記疾患或いは病状の治療(一般的な治療或いはあらゆる特異的な治療)に対する反応を有するあらゆるカテゴリーへ分類するのに有用なあらゆる情報である。
本明細書で用いられる「虚血」とは血流の減少である。虚血は、血餅(血栓)によって或いは外来性循環物質(塞栓)による動脈或いは静脈の閉塞によって、若しくはアテローム性動脈硬化などの血管障害によって引き起こされる。血流の減少は、突発性で短時間であるか(急性虚血)、若しくは長時間或いは頻回再発する遅発性(慢性虚血)である。
本明細書で用いられる「血栓」とは、フィブリンに巻き込まれている血球及び固相剤へ活発に結合する血小板に由来する血小板の凝集塊のあらゆる半流動性凝集体を意味する。血栓症とは、血管内の血栓の形成を意味する。血栓形成促進環境とは、血栓症になる傾向が増加することを意味する。
一般的に、心血管疾患或いは障害とは、心臓及び/若しくは血管に関連した疾患或いは障害のクラスを意味する。
「薬学的に許容可能」とは、連邦政府或いは州政府の管理機関によって認可されている、若しくは米国薬局方或いは動物における(特にヒトにおける)使用に対する他の一般的に認識された薬局方で記載されているものを意味する。
「担体」とは、例えば、希釈剤、アジュバント、保存料(例えばThimersol、ベンジルアルコールなど)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウムなど)、溶解剤(例えば、ツイーン80、ポリソルベート80など)、乳化剤、緩衝剤(例えばトリスHCl、酢酸、リン酸)、充填物質(例えばラクトース、マンニトールなど)、賦形剤、補助剤、或いは本発明の活性剤が投与された溶媒などを意味する。薬学的に許容可能な担体は、水、及び石油、動物油、植物油或いは合成由来の油を含む油などの無菌液体であり得る。水或いは水性生理食塩水、及び水性ブドウ糖及びグリセロール溶液は、好ましくは担体として使用され、特に注射可能な溶液として使用される。適切な薬学的な担体は、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton、ペンシルバニア州)による「Remington’s Pharmaceutical Sciences」;Gennaro,A.R.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,(Lippincott,Williams and Wilkins),2000;Liberman,et al.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker, New York,N.Y.,1980;及びKibbe,et al.,Eds.,Handbook of Pharmaceutical Excipients(3.sup.rd Ed.),American Pharmaceutical Association,Washington,1999に記載されている。
II.マイクロバブル
一般的に、マイクロバブルは、水性溶剤に分散した数ミクロンの直径(例えば約1から10μm、特に約1から5μm)を持つ気泡である。このマイクロバブルは、球状或いは非球状である。前記マイクロバブルの球形は、例えばガスを包み込む外被或いは殻の形を操作することによって、或いは膜におけるひだ、突起、シワ或いはそれらと同等物を産生することによって変えることができる(例えば、米国出願第2005/0260189号を参照のこと)。
一般的に、マイクロバブルは、水性溶剤に分散した数ミクロンの直径(例えば約1から10μm、特に約1から5μm)を持つ気泡である。このマイクロバブルは、球状或いは非球状である。前記マイクロバブルの球形は、例えばガスを包み込む外被或いは殻の形を操作することによって、或いは膜におけるひだ、突起、シワ或いはそれらと同等物を産生することによって変えることができる(例えば、米国出願第2005/0260189号を参照のこと)。
一般的に、マイクロバブルは水性懸濁液中に存在し、ここではガス或いは気体のマイクロバブルは、前記ガスが分散している界面活性剤(両親媒性物質)の非常に薄い外被によってガス/液体界面で液体界面と結合している。マイクロバブルはさらに、天然或いは合成ポリマーで形成された固体物質外被によって取り囲まれている気泡でもある(例えば、欧州出願第EP0458745号を参照のこと)。しかしながら、両親媒性物質の外被を有するマイクロバブルが好ましい。
マイクロバブルに対する処方は本分野において既知である。例えば、マイクロバブル懸濁液は、空気或いは他のガスと共に、次に水性担体と共に粉末両親媒性物質(例えば凍結乾燥させ予め形成されたリポソーム、若しくは凍結乾燥或いは噴霧乾燥リン脂質懸濁液など)を接触させ、次にマイクロバブル懸濁液を産生するために撹拌することによって調合される。ガスマイクロバブルの水性懸濁液及びその調合の例としては、例えば米国特許第5,271,928号;第5,455,813号;第5,413,774号;第5,556,610号;第5,597,549号;及び第5,827,504号;国際特許第WO97/29783号;第WO94/01140号;及び米国出願第2006/0034770号;第2003/0017109号;第2004/0126321号;第2005/0207980号;及び第2005/0260189号に見出すことができる。
マイクロバブルのガスは、これに限定されるものではないが、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、水素、不活性ガス(例えばヘリウム、アルゴン、キセノン或いはクリプトン)、フッ化硫黄(例えば六フッ化硫黄、十フッ化二硫黄或いはトリフルオロメチル硫黄五フッ化物)、セレニウム六フッ化物、メチルシラン或いはジメチルシランなどの任意にハロゲン化されたシラン、低分子量炭化水素(例えば7炭素原子までを含有;これに限定されるものではないが、アルカン(例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン或いはペンタン)、シクロアルカン(例えばシクロプロパン、シクロブタン或いはシクロペンタン)、アルケン(例えばエチレン、プロペン、プロパジエン或いはブタン)、或いはアルキン(例えばアセチレン或いはプロピン)を含む)、エーテル(例えばジメチルエーテル)、ケトン、エステル、及びハロゲン化された(好ましくはフッ素化された)低分子量炭化水素(一般的には米国特許第6,264,917号を参照のこと)の少なくとも1つを有する。特定の実施形態において、前記マイクロバブルの内部は液体を除去する。
マイクロバブルは、少なくとも1つの標的分子を前記バブルの外表面へ付けることによって特定の分子、若しくは標的細胞或いは組織を標的化している。これによって、研究中の組織における病変の空間的に局在した検出が可能となり、加えて生理活性物質を前記組織へ運搬することが可能となる。望ましい標的リガンドを有するマイクロバブルを産生する方法も本分野で既知である。標的リガンドは、あらゆる方法によって前記マイクロバブルに連結或いは共役している。例示的な方法は、米国特許第6,264,917号;第6,245,318号;第6,331,289号;及び第6,443,898号に提供されている。
特定の実施形態において、前記標的リガンドは、ビオチン−アビジン−ビオチン架橋を介して前記マイクロバブルへ共役している。例えば、前記マイクロバブル及び標的リガンドは、ビオチン化標識され、ビオチン結合剤(例えばストレプトアビジンなど)は、前記ビオチン化標的リガンド及びビオチン化マイクロバブルの両者に結合するように使用される。本明細書で用いられたように、「ビオチン結合剤」とは、これに限定されるものではないが、アビジン、ストレプトアビジン、及びストレプトアビジン或いはアビジン抱合体、アビジン或いはストレプトアビジンの高度に精製され分画された種などの他のアビジン類似体、及び非或いは部分的アミノ酸変異体、ビオチン結合をいまだに保持しているアミノ酸或いは化学的置換を有する組換え体或いは化学的に合成されたアビジン類似体を含む。好ましくは、各ビオチン結合剤分子は、少なくとも2つのビオチン部位に結合し、より好ましくは少なくとも4つのビオチン部位に結合する。加えて、本明細書で用いられたように、「ビオチン」とは、ビオサイチン、及びビオチンアミドカプロン酸N−ヒドロキシサクシンイミドエステル、ビオチン4−アミド安息香酸、ビオチンアミドカプロイルヒドラジドなどの他のビオチン類似体、及び他のビオチン誘導体及び共役体に加えてビオチンを含む。他の誘導体には、ビオチン−デキストラン、ビオチン−ジスルフィド−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン−6アミドキノリン、ビオチンヒドラジド、d−ビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチンマレイミド、d−ビオチンp−ニトロフェニルエステル、ビオチン化ヌクレオチド、及びN−ビオチニル−1−リシンなどのビオチン化アミノ酸が含まれる。
ガス及び液体相の間の界面で層を形成することによって前記バブル膜或いは殻の形成及び維持を助けるあらゆる化合物が使用される。本発明のマイクロバブルは、1若しくはそれ以上の異なるタイプの界面活性剤を有する。界面活性剤には、これに限定されるものではないが、脂質、ステロール、炭化水素、脂肪酸、アミン、エステル、スフィンゴ脂質、チオール−脂質、リン脂質、非イオン界面活性剤、中性或いは陰イオン界面活性剤、及びそれらの誘導体が含まれる。前記界面活性剤は、天然或いは合成物である。米国出願第2005/0260189号には、マイクロバブルの合成に使用される界面活性剤の例が提供されている。
本発明のマイクロバブルはさらに、少なくとも1つの検出可能な標識も有する。特定の実施形態において、前記検出可能な標識は、ジアルキルカルボシアニンプローブ(例えばDiI及びDiO)などの蛍光標識である。
マイクロバブルは本明細書を通じて例示されている一方、ナノバブル(直径が約5から900nm)も使用される。
III.マイクロバブル標的リガンド
本発明のマイクロバブルは、少なくとも1つの標的リガンドを有する。本発明の好ましい標的及び標的リガンドは、以下に説明する。
本発明のマイクロバブルは、少なくとも1つの標的リガンドを有する。本発明の好ましい標的及び標的リガンドは、以下に説明する。
A.P−セレクチン
特定の実施形態において、本発明のマイクロバブルは、P−セレクチンに対する標的リガンドを有する。P−セレクチンは、炎症反応(Bevilacqua et al.(1993)J.Clin.Invest.91:379−387)、及び虚血再灌流(Kanwar et al.(1998)Microcirculation 5:281−287)の間に発現する内皮細胞接着分子である。P−セレクチンは、白血球の捕捉及び細静脈のローリングに関与する。P−セレクチンに対する抗体を有する脂質マイクロバブルは、静脈内に投与された場合、初期炎症反応を画像化する手段を提供する(Lindner et al.(2001)Circulation 104:2107−2112)。より特異的には、前記マイクロバブルは、生体内顕微鏡を用いて、虚血再灌流傷害後すぐに造影腎臓超音波を実行することによって野生型及びP−セレクチン−欠損(P−/−)マウスにおいてテストされた。
特定の実施形態において、本発明のマイクロバブルは、P−セレクチンに対する標的リガンドを有する。P−セレクチンは、炎症反応(Bevilacqua et al.(1993)J.Clin.Invest.91:379−387)、及び虚血再灌流(Kanwar et al.(1998)Microcirculation 5:281−287)の間に発現する内皮細胞接着分子である。P−セレクチンは、白血球の捕捉及び細静脈のローリングに関与する。P−セレクチンに対する抗体を有する脂質マイクロバブルは、静脈内に投与された場合、初期炎症反応を画像化する手段を提供する(Lindner et al.(2001)Circulation 104:2107−2112)。より特異的には、前記マイクロバブルは、生体内顕微鏡を用いて、虚血再灌流傷害後すぐに造影腎臓超音波を実行することによって野生型及びP−セレクチン−欠損(P−/−)マウスにおいてテストされた。
好ましい実施形態において、前記標的リガンドは、P−セレクチンリガンド及び二量体形成ドメインを有する融合タンパク質である。P−セレクチンリガンドは、P−セレクチン結合活性を有する可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質或いはその断片である。特定の実施形態において、前記リガンドは、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)或いはP−セレクチンに結合可能なその断片である。米国特許第2003/0166521号には、P−セレクチンリガンド及びその断片の例が提供されている。
本明細書で用いられたように、「二量体形成ドメイン」という用語は、二量体を形成するのに十分な強度と特異性を有して別のタンパク質結合ドメインと結合可能な(免疫学的或いは非免疫学的由来の)タンパク質結合ドメインを意味する。二量体形成ドメインの例としては、これに限定されるものではないが、Fc領域、ヒンジ領域、CH3ドメイン、CH4ドメイン、CH1−CLペア、ロイシンジッパー(例えばjun/fosロイシンジッパー(Kostelney et al.,J.Immunol(1992)148:1547−1553)或いは酵母GCN4ロイシンジッパー)、イソロイシンジッパー、受容体二量体ペア(例えばインターロイキン−8受容体(IL−8R)及びLFA−1及びGPIIIb/IIIaなどのインテグリンへテロ二量体)、或いはそれらの二量体形成領域(群)、二量体リガンドポリペプチド(例えば神経成長因子(NFG)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、インターロイキン−8(IL−8)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF−C、VEGF−D、PDGF群、及び脳由来神経栄養因子(BDNF)(Arakawa et al.(1994)J.Biol.Chem.269:27833−27839;Radziejewski et al.(1993)Biochem.32:1350))或いはそれらの二量体化領域(群)、ジスルフィド結合を形成できるシステイン残基のペア、ペプチド或いはポリペプチドのペア(それぞれは少なくとも1つのシステイン残基(例えば約1、2或いは3から約10システイン残基)を有し、ジスルフィド結合(群)をペプチド或いはポリペプチドの間で形成できるものである)、及び抗体可変ドメインが含まれる。好ましい実施形態において、前記二量体形成ドメインは、免疫グロブリンのFcドメインである。前記二量体形成ドメイン及びP−セレクチンアンタゴニストは、お互いに(例えば共有結合で結合する)直接的に連結する、若しくはリンカードメインを介して連結する。米国特許第2003/0166521号では、P−セレクチンリガンド及び免疫グロブリンのFcドメインを有する融合タンパク質の例が提供されている。
心筋虚血などの虚血は、心筋造影心エコーで炎症を画像化する分子、及び接着分子P−セレクチンを標的化したマイクロバブルによって検出され得る。
B.VCAM−1
アテローム性動脈硬化での炎症の重要な役割は、それを評価するためのより良い方法において著しい興味を引くものである。理想的にはそのような技術は、1)脈管構造において生じる炎症反応に特異的である、2)初期イベントを検出するのに十分な感度を有する、3)空間的な情報も提供することができる、及び4)素早いスクリーニング手段として使用するために、コスト、スピード及び使用の簡便さの観点において実用的である。そのためには、CEU分子イメージングがアテローム性動脈硬化のマウスモデルにおいて内皮細胞接着分子VCAM−1の発現を評価するために使用され得るかどうかを調査した。この研究の異なる動物群におけるVCAM−1−標的シグナル増強は、アテローム性動脈硬化プラーク進行の重症度に従って変動した。
アテローム性動脈硬化での炎症の重要な役割は、それを評価するためのより良い方法において著しい興味を引くものである。理想的にはそのような技術は、1)脈管構造において生じる炎症反応に特異的である、2)初期イベントを検出するのに十分な感度を有する、3)空間的な情報も提供することができる、及び4)素早いスクリーニング手段として使用するために、コスト、スピード及び使用の簡便さの観点において実用的である。そのためには、CEU分子イメージングがアテローム性動脈硬化のマウスモデルにおいて内皮細胞接着分子VCAM−1の発現を評価するために使用され得るかどうかを調査した。この研究の異なる動物群におけるVCAM−1−標的シグナル増強は、アテローム性動脈硬化プラーク進行の重症度に従って変動した。
血管炎症を画像化するための方法は、臨床的及び研究室設定の両者において大きな影響を与えた。心血管疾患のリスク或いは主要な有害心イベントを評価するために現在使用されている戦略は、より初期でより侵襲性の高い治療の傾向を考えると将来の臨床的ニーズに必ずしも答えるものではない。Framingham(フラミンガム)リスクスコア及びその改訂版では、複数の異なる臨床的変数が考慮されている。しかしながら、約40%の成人米国人口は、10年後以内で症候性冠動脈心疾患を発症するリスクを6から20%有する中間型リスクカテゴリへ振り分けられる(Jacobson et al.(2000)Arch.Intern.Med.,160:1361−9)。この中間型リスクカテゴリに対するリスク層別化におけるさらなる改良は、長期間の予防治療をより有効に活用するために望ましい。さらに、多くの他の疾患のように、アテローム性動脈硬化は初期段階で治療に最も適している。プラーク形成を開始し二次成長反応を引き起こす免疫イベントの中断することを狙った新規治療法を開発する努力が進行中である。アテローム性動脈硬化が臨床的に明らかになる数年から数十年前に治療が開始されたとすると、次には血管炎症を正確に検出するための方法が重要な因子となる。
心血管疾患の症状が進行した患者を評価するために現在使用されている方法は、疾患の解剖学的重症度、或いは虚血或いは血流予備能の減少などの増加した循環抵抗の生理学的結果を測定するように設計されている。炎症は不安定疾患への進行におけるキー因子であるので、そのような患者における炎症表現型を画像化することは独特な情報を追加することになるであろう。新生内膜への炎症性細胞の動員は、血栓形成促進性、分裂促進性(pro−mitogenic)、血管新生促進性、及び有害な血管作動性分子の放出;酸素由来フリーラジカルの放出;及び有害なリモデリング及びプラーク保護性バリアの浸食を引き起こすプロテアーゼの産生を生じる。炎症を評価するための新しい方法は新しい治療戦略と平行して開発される必要である。同じように、治療の前−臨床開発における分子イメージングの使用は、標的とされる病態経路を評価するための手段を提供する。この適用に対して、技術は定量的であり、高処理能を持ち、小動物モデルテストに対しても十分な高解像度を所有するべきである。
本明細書で言及された実施上の配慮点、及びトレーサー検出に対する高感度及び空間的解像度の間のバランスのおかげで、CEUでの分子イメージングは患者内のアテローム性動脈硬化における炎症表現型を評価するために有望である。本明細書で以下に記載されているように、マイクロバブル造影剤はVCAM−1を標的化していた。マイクロバブル造影剤は純粋血管内薬剤であり、従って、残留炎症性細胞(マクロファージ、T−リンパ球)、プロテアーゼ、或いは酸化副産物などを標的化するように設計された血管外イベント或いはエピトープに接近することはできない(Schafers et al.(2004)Circulation 109:2554−9;Deguchi et al.(2006)Circulation 114:55−62;Tsimikas et al.(1999)J.Nucl.Cardiol.,6:41−53;Ruehm et al.(2001)Circulation 103:415−22)。代わりに、アテローム性動脈硬化における炎症性細胞動員において重要な参加因子である内皮細胞接着分子が標的にされた。VCAM−1は、アテローム性動脈硬化の進行の間初期から内皮細胞上に存在し、他では非常に低レベルでのみ発現している(Nakashima et al.(1998)Arterioscler.Tromb.Vasc.Biol.,18:842−511;Iiyama et al.(1999)Circ.Res.,85:199−207)。VCAM−1は、標的赤外及び磁気共鳴プローブなどの他のイメージング技術でのマウスにおける分子イメージングに対する潜在的な標的として研究されていた(Kelly et al.(2005)Circ.Res.,96:327−36;Nahrendorf et al.(2006)Circulation 114:1504−11)。これらの研究において、病期の末期におけるVCAM−1シグナルはスタチン治療で増加し、これは治療の効果が分子イメージングでモニタリングされ得ることを示唆するものであった(Nahrendorf et al.(2006)Circulation 114:1504−11)。標的化マイクロバブルからの情報は、内皮VCAM−1発現のみが検出されるという点において、これら拡散性トレーサーとは異なる。
標的化する目的に対して、VCAM−1の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体は、本明細書で以下に記載するように、前記マイクロバブルの表面へ共役された。この構成物は、マイクロバブル当たり平均50,000以上の抗体、及びμm2当たり数千の表面密度によって特徴付けされる。そのような標的化の1つの懸念は、マウス大動脈において、ピーク壁ずり応力が80から90dynes/cm2まで到達することであり(Erisson et al.(2000)Circ.Res.,86:526−33;Greve et al.(2006)Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.,291:H1700−H1708)、血流における拍動性変動及び壁ずり応力は高い。この問題にも関わらず、アテローム性動脈硬化の大動物モデルにおける血管表面エピトープに対するより小さいエコー源性リポソームの画像化は成功していた(Hamilton et al.(2004)J.Am.Coll.Cardiol.,43:453−60;Demos et al.(1999)J.Am.Coll.Cardiol.,33:867−75)。これらの研究では、内皮細胞接着分子は音響的に活性な化合物で標的化され得ることが決定的に示された。さらに、本明細書で以下に示したように、流動チャンバー実験では、VCAM−1−標的化マイクロバブル付着効率は、連続的な高ずり応力の間低かったことが示された。しかしながら、非常に高いずり応力が少しの間中断した場合、付着の著しい増加が生じた。高ずり応力での流動再開では、フィブロネクチン−コーティングプレートからSVECsが脱離することなく抵抗し得る最大ずり応力(12dynes/cm2)でさえもこれらマイクロバブルは除去されなかった。沈殿Fc−VCAM−1キメラでの流動チャンバー実験では、50及び90dynes/cm2のずり率でさえも強固に接着するVCAM−1−標的マイクロバブルの能力が示された。しかしながら、本明細書で以下に記載された、蛍光マイクロバブルの静脈内注射後10分での大動脈弓のen face顕微鏡研究では、収縮期の間高ピークずり応力であるにも関わらず、in vivoでマイクロバブルは高密度で大動脈弓へ付着できたという証拠を提供した。
VCAM−1の分子イメージングは、症状は現れるずっと前にアテローム性動脈硬化を発症する炎症過程を診断するのに有用である。本明細書で以下に示されたデータでは、プラーク発生の証拠はなく、高コレステロール食餌(HCD)に対する野生型マウスにおけるVCAM−1−標的マイクロバブル付着及びシグナル増強を示し、これは初期炎症変化が検出され得ることを示唆するものであった。標的化マイクロバブル付着及びシグナル増強がHCDに対するApoE−/−マウスにおいてより有意であったというこの発見によって、異なる程度の炎症反応は識別され得ることが示唆された。これらのマウスは、最高度の内皮VCAM−1発現を有するだけでなく、プラーク負荷及びプラーク内のVCAM−1−発現細胞(マクロファージ)の数という点において疾患の最も重症な形態も有していた。これらのマウスにおいて、CEU及びen face顕微鏡の両者は、VCAM−1−標的マイクロバブルのびまん性で広汎な付着という点で一致しており、その密度は2−D表面へ付着したマイクロバブルの検出に対して動力学的範囲内であった(Lankford et al.(2006)Invest.Radiol.,41:721−8)。付着のびまん性特性によって、これは直接テストされていなかったが、血管炎症状態が重症である場合、代替大血管が評価のために使用されるということが示唆された。固形飼料食餌に対するApoE−/−マウスにおいて、VCAM−1を標的化したマイクロバブルの付着は、アテローム性動脈硬化プラークの領域においてより明白であり、これはプラーク発生を起こす傾向がある領域において優位にVCAM−1のアップレギュレーションに対する報告と一致するものであった(Nakashima et al.(1998)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,18:842−51)。固形飼料食餌に対するコントロール野生型マウスにおいて、VCAM−1−標的マイクロバブルの付着は、コントロールマイクロバブルとは異ならず、これはVCAM−1の低発現或いは無発現を反映するものであった(Nakashima et al.(1998)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,18:842−51;Iiyama et al.(1999)Circ.Res.,85:199−207)。この後者の発見は、スクリーニングテストに対して疾患特異性(低い偽陽性率)の必要性が必要とされる場合、重要である。
本明細書で以下に示した研究の結果から、標的マイクロバブルを用いた造影超音波は、アテローム性動脈硬化における炎症過程を検出し、炎症負荷の重症度を識別することができることが示唆された。その結果、標的マイクロバブル及び超音波を用いた分子イメージングは、アテローム性動脈硬化の初期診断において、及び治療介入の効率のモニタリングにおいて使用され得る。
C.GPIb
脳卒中、心筋梗塞、及び深部静脈血栓症などの疾患の治療は、早期診断及び血管血餅を検出する能力に依存している。現在、i)動脈付属枝血餅及びii)頸動脈血栓の検出及び局在化に対する信頼できる方法は限定されている。これは、治療介入(抗凝固)に関連するリスク(出血性素因)を考慮すべき高齢者集団において特に重要である。心房細動を患った患者(60歳以上の米国国民の2%以上の有病率)の約15%に生じる左心房血栓形成の検出は、非侵襲性経胸壁イメージングに対して比較的低感度であるので、侵襲性経食道イメージングを必要とする。さらに、心筋梗塞及び脳卒中の病態生理学において重要な役割を担う微小血管血栓形成を評価するための方法は現在ない。vWF/トロンビン−標的マイクロバブルは、新規CEU剤として働き、血管血餅の同定及び局在化を容易にするであろう。さらに、血栓−結合マイクロバブルは、超音波−仲介性音響(sonolytic)剤(「血餅−破裂」現象)として、或いは組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)などの放出血餅溶解剤として治療上の有用性を有する(Corti et al.(2002)Am.J.Med.,113:668−680)。同時に非侵襲性に検出し血管血餅を溶解することができるイメージング技術は、脳卒中或いは心筋梗塞を患った患者において貴重となるであろう。
脳卒中、心筋梗塞、及び深部静脈血栓症などの疾患の治療は、早期診断及び血管血餅を検出する能力に依存している。現在、i)動脈付属枝血餅及びii)頸動脈血栓の検出及び局在化に対する信頼できる方法は限定されている。これは、治療介入(抗凝固)に関連するリスク(出血性素因)を考慮すべき高齢者集団において特に重要である。心房細動を患った患者(60歳以上の米国国民の2%以上の有病率)の約15%に生じる左心房血栓形成の検出は、非侵襲性経胸壁イメージングに対して比較的低感度であるので、侵襲性経食道イメージングを必要とする。さらに、心筋梗塞及び脳卒中の病態生理学において重要な役割を担う微小血管血栓形成を評価するための方法は現在ない。vWF/トロンビン−標的マイクロバブルは、新規CEU剤として働き、血管血餅の同定及び局在化を容易にするであろう。さらに、血栓−結合マイクロバブルは、超音波−仲介性音響(sonolytic)剤(「血餅−破裂」現象)として、或いは組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)などの放出血餅溶解剤として治療上の有用性を有する(Corti et al.(2002)Am.J.Med.,113:668−680)。同時に非侵襲性に検出し血管血餅を溶解することができるイメージング技術は、脳卒中或いは心筋梗塞を患った患者において貴重となるであろう。
特定の実施形態において、フォンウィルブランド因子(VWF)に対する標的リガンドを有するマイクロバブルは、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を診断するために使用され得る。TTPは、血小板微小血栓の形成に由来する、生命を脅かす多システムの障害であり(Moake,J.L.(2004)Semin.Hematol.,41:4−14;Moake,J.L.(2007)J.Clin.Apher.,22:37−49;Sadler et al.(2004)Hematology Am.Soc.Hematol.Educ.Program.,407−423;Moake,J.L.(2002)N.Engl.J.Med.,347:589−600;Moake,J.L.(2002)Annu.Rev.Med.,53:75−88)、これは順に接着性タンパク質VWFの不完全なプロセシングに由来するものである。TTPにおいて、体中の微小循環におけるVWF−誘導性血小板凝集形態は、血管の部分的閉塞を引き起こし、臓器虚血、血小板減少症及び赤血球断片化を導く。現在、TTP死亡率は、未治療の場合約95%である。対照的に、早期診断、及び血漿輸液及び血漿交換での治療を行った場合の生存率は80から90%である。しかしながら、現在、TTPの検出は、5つの徴候及び症状の臨床的診断に頼っており、TTPに対する特徴的な研究室アッセイは存在しない。従って、VWFを標的としたマイクロバブル(例えばマイクロバブルは高親和性血小板受容体糖タンパク質(GP)Ibを介して構成される)での本発明の造影超音波(CEU)分子イメージング法は、TTPを診断及び/若しくは検出するために使用される。
家族性及び後天性特発性TTPのほとんどの場合に対して、根底にある欠損は、接着タンパク質VWFの巨大(UL)多量体の内皮細胞(EC)分泌及び放出に起因する。正常条件下では、VWFの単量体(280kD)はジスルフィド結合によって連結し、何百万ダルトンの範囲の様々な分子塊とUL多量体を形成している。大部分のVWFのUL多量体は、ECs内に構成され、バイベル−パラーデ小体に貯蔵されている(Ruggeri,Z.M.(2003)J.Thromb.Haemost.,1:1335−1342)。これらのEC−産生ULVWF多量体は、正常血漿における循環で見出されるものよりも大量であり、それらは、最大血漿VWF多量体の結合と比べて、VWFに対する血小板GPIb受容体により効率的に結合する。ECM−結合VWFは、VWF及び血小板受容体GPIbの間の結合の独特で素早い速度(on−rate)に起因して、より高いずりレベルでの血小板の連結において重要な役割を担っている(Andre et al.(2000)Blood 96:3322−3328;Andrews et al.(2004)Thromb.Res.,114:447−453)。GPIb−VWF結合の素早い速度は、血流によって産生されたずり応力の存在下で表面−連結VWFへの血小板の動員を補助する(Ruggeri,Z.M.(2002)Nat.Med.,8:1227−1234)。高親和性血小板GPIb受容体への少量のULVWFのみの初期付着は、血小板動員及び凝集を仲介するには十分であり、激しい病理学的微小血栓形成を生じる。
正常な生理的状態下で、VWF−切断メタロプロテアーゼADAMTS−13は、循環系へのULVWF多量体の侵入を阻止する(Levy et al.(2005)Blood 106:11−17)。ADAMTS−13は、VWFの単量体サブユニットにおけるペプチド結合を842−843位で切断することによって、EC表面上で直接的にULVWF多量体を分解する。しかしながら、ADAMTS−13活性は、後天性特発性TTPにおけるADAMTS−13自己抗体の産生によって、或いは家族性TTPにおけるADAMTS−13遺伝子変異によって検出不能或いは辛うじて検出可能である。ADAMTS−13の非存在下において、ULVWF多量体は、ECsからの分泌に対して切断されず;代わりにそれらはECsに数珠状につながれたまま保持される。通過する血小板は、GPIb受容体を介してそれらの長いULVWF多量体へ接着するが、正常条件下でのULVWFの切断によって産生されたより小さなVWF形態には接着しない(Bernadro et al.(2005)J.Thromb.Haemost.,3:562−570)。従って、ADAMTS−13の不全に起因するEC表面上のULVWF多量体の存在は、TTP病変形成において重要な構成成分を示す。
重篤な心臓或いは神経合併症のハイリスク患者を同定する「脆弱な」アテローム性動脈硬化病変を検出する能力に対して、心臓病学及び神経学において現在大きな興味が寄せられている。プラーク破裂及びその次の血管血栓形成は、虚血性心血管イベントにおいて最も一般的な刺激因子である。血管血栓形成促進性内皮表現型を検出する能力は、ハイリスク患者の早期同定のために、及び最適な治療戦略を選択するために有用であろう。さらに、VWFなどの接着分子の異常内皮発現は、アテローム性動脈硬化が臨床的に明白になる数十年前に一般的に起こるかなり初期のアテローム性動脈硬化性変化を検出するための方法を提供するであろう。従って、分子イメージングは、早期検出、及び侵襲性病変増殖を有しそうな患者の治療に対する方法を提供するであろう。診断医療イメージングのほとんどの形態は、疾患過程の後期に生じる組織形態学或いは機能における病理学的変化の検出に基づいている。より最近では、根底にある病理生理学的な細胞或いは分子過程を検出するための方法が探索されていた。最も一般的な戦略は、疾患関連抗原に結合する新規標的造影剤を作成することであった。標的分子及び細胞イメージングは、表現型に従った治療戦略を導き、治療に対する反応を素早く評価するものであり、早期に疾患を検出することによって患者ケアの強力に改善する。
心血管疾患に対して、分子イメージングは、アテローム性動脈硬化症の発症及びプラーク不安定性に寄与する血栓形成及び早期血管病態生理学的変化を検出することによって大きな臨床的影響を与えるであろう。フォンウィルブランド因子(vWF)などの血小板の動員に関与する接着分子、若しくはトロンビンなどの凝固カスケードを制御するプロテアーゼの発現を非侵襲性に評価する能力は、病的血栓発生の動態のより明らかな理解を得るために、侵襲性或いは不安定性血餅形成を有していそうな患者を同定するための方法を開発するために、及び血栓症を調節することを狙った新規治療法をテストするために使用され得る。
本明細書において、疾患の臨床的に関連したモデルにおいて血栓形成性で合併症に対してハイリスクである血管血栓及びアテローム性動脈硬化病変を検出するための新規造影超音波(CEU)分子イメージング法が提供される。特に、糖タンパク質Ib(GPIb)−表面共役マイクロバブル超音波造影剤は、接着タンパク質vWF及び凝固タンパク質トロンビンを標的化するために使用されるであろう。GPIb−マイクロバブルでのCEUは、大血管コンパートメントにおいて、或いは微小循環において血栓形成の存在を検出するために使用され得る。加えて、GPIb−マイクロバブルでのCEUは、重篤なアテローム性動脈硬化症の動物モデルにおいて血栓形成促進性内皮表現型を検出するために使用され得る。
脆弱なアテローム性動脈硬化性プラーク及び血栓形成の間の相互作用は、同様の病態生理学を共有する虚血心筋イベントのスペクトルを示し、急性冠症候群の基礎を形成する。それらは、不安定狭心症、心筋梗塞、及び突然死を含む。正常内皮は、血管ホメオスターシスにおいて中心的な役割を担い、アテローム性動脈硬化の発症を制限する。しかしながら、機能障害性内皮細胞は、それらの正常な生理状態からそれらの活性を実質的に変えることができる。例えば、顕著な抗血栓性表面を形成する代わりに、機能障害性内皮細胞は、血小板及び白血球に対して接着性を増した血栓形成促進活性、及びトロンビン産生を導く凝固促進性化合物の分泌を発達する(Forgione et al.(2000)Curr.Opin.Cardiol.,15:409−415;Gimbrone et al.(1999)Am.J.Pathol.,155:1−5;Traub et al.(1998)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,18:677−685)。内皮細胞との血小板相互作用は、短時間の相互作用でさえ、有害な炎症促進性サイトカイン、成長因子及び血管作動性化合物に対する源として働くという証拠も存在する(Huo et al.(2004)Trends Cardiovasc.Med.,14:18−22)。機能障害性内皮細胞が血小板血栓症を促進するというメカニズムには2つの工程:1)第一に血小板の動員及び接着;2)第二に血小板の凝集、が関与している。内皮細胞は、傷害によって分泌される、それらのバイベル−パラーデ小体内にvWFを蓄積する(Andre et al.(2000)Blood 96:3322−3328;Andrews et al.(2004)Thr.Res.,114:447−453;Ruggeri et al.(2002)Nat.Med.,8:1227−1234)。機能障害性内皮細胞の表面へ放出されたvWFは、GPIb受容体を通じて循環する血小板に対して独特のアンカーを示す。血小板の第一の役割は血管整合性を維持するために止血を誘発することである一方、血小板は、例えば細い手指静脈内などの破裂した血管壁及び冠動脈のアテローム性動脈硬化性破裂を識別することはできない。結果として、正常血小板の機能は通常、冠動脈疾患を患った患者の安全に対して効率的すぎ、強力な抗血小板剤は、血小板機能を減少するために設計されていた。しかしながら、早期診断及び治療は、プラーク破裂の前に患者における機能障害性内皮細胞及び血小板堆積を検出するための強い技術に依存している。
脈管構造における粥状傾向領域及び血管血餅の早期検出に対するより特異的で感度の高い方法が必要とされている。理想的なアプローチは、血小板蓄積或いは血小板動員に関与する接着分子を評価することである。細動脈内及び病変血管ベッドで見出される中程度から高度ずり応力での血栓形成は、血小板接着、素早い細胞活性化、及び成長する止血栓へのフィブリン及び付加的な血小板の二次蓄積を容易にする、調整された一連の受容体−仲介性イベントを必要とする。初期血小板堆積は、vWFなどのECMタンパク質の誘発曝露となる。ECM−結合vWFは、vWF及び血小板受容体GPIbの間の結合の素早い速度(on−rate)のおかげで、高ずり応力レベルでの血小板の連結において重要な役割を担う(Andrews et al.(2004)Thr.Res.,114:447−453)。GPIb−vWF相互作用の素早い速度(on−rate)は、傷害の部位での血小板転位置を生じ(McCarty et al.(2006)J.Thromb.Haemost.,4:1367−1378)、これはより遅い結合動態を有する接着相互作用(すなわち血小板受容体GPVI及び/若しくはαIIbβ3インテグリン)が活性化に続く血小板接着を仲介することを可能とする(Watson et al.(2005)J.Thromb.Haemost.,3:1752−1762)。それに続く血小板−血小板接着(凝集)は、2つの受容体GPIb及びαIIbβ3によって大部分は仲介され、これはGPIbの寄与は増加する血流において進行的により重要となる。高ずり応力下で、フィブリノーゲン及びトロンビンが血餅安定性を維持するために重要な役割を担う一方、血小板−結合vWFは血小板の連結を促進する主要なリガンドである。重要なこととしては、vWF結合に続くGPIbシグナル伝達は、血小板活性化及び細胞骨格再構築を仲介するのに十分であることが最近示された(McCarty et al.(2006)J.Thromb.Haemost.,4:1367−1378)。これは、血小板活性化が止血の過程において重要な役割を担うことを示す重要な意味を有する。しかしながら、病変血管において、血小板活性化は血管閉塞を生じ、これは心臓発作及び脳卒中を導くものである。結果として、内皮vWF発現は、心血管疾患(CVD)の兆候として大きな関心を引くものである。動脈血栓形成におけるvWFの重要な役割を考慮すると、vWF発現レベルの増加は、血栓形成促進状態に寄与し、有害な心血管イベントの兆候として使用され得る。
血小板動員及び活性化と同時に起きる血管傷害或いはプラーク破裂の後に、第一ステップの血液凝固が生じ、これは組織因子及び第XII因子の曝露及び活性化である(Renne et al.(2006)Blood Cells Mol.Dis.,36:148−151;Renne et al.(2005)J.Exp.Med.,202:271−281;Steffel et al.(2006)Circulation 113:722−731)。これらの2つのステップは、それに続く他の凝固因子のセリンプロテアーゼとして対応活性型への活性化を導く。プロテアーゼ活性化はトロンビンの産生に終わる(Coughlin,S.R.(2005)J.Thromb.Haemost.,3:1800−1814;Mangin et al.(2006)Blood 107:4346−4353;Sambrano et al.(2001)Nature 413:74−78)。トロンビンは、血小板を誘引し活性化し、フィブリン産生物と血餅形成を導くフィブリノーゲンを切断するだけでなく、凝固補因子のフィードバック活性化も仲介する。このフィードバックメカニズムは、自己触媒カスケードを導き、その結果激しい血餅形成を生じる。血餅形成の間、トロンビンはフィブリン−豊富血餅の表面上に固定化され(Becker et al.(1999)J.Biol.Chem.,274:6226−6233)、それによってトロンビンは血管傷害の部位に局在化する。重要なこととしては、表面−固定化トロンビンは、ずり流動下で血小板を直接捕捉し活性化することができ、この動員は、血小板GPIbへ結合したトロンビンに非常に依存していることが最近示された(Gruber et al.(2007)Blood;Thornber et al.(2006)FEBS H.,273:5032−5043)。トロンビン産生が傷害部位での止血において重要な役割を担っている一方、病変血管におけるアテローム性動脈硬化性プラークの破裂は、トロンビン産生及び凝固カスケードの活性化を誘発し、その結果閉塞性血餅を生じる(Corti et al.(2002)Am.J.Med.,113:668−680)。さらに、急性冠症候群、特に突然死の3分の1は、完全プラーク破裂なしで生じ、むしろ著しい狭窄した線維性プラークの表面侵食を生じ、その結果急性トロンビン産生及び局在化を生じる。従って、表面−結合トロンビンは、不安定で粥状傾向のあるプラーク形成の早期指標として使用され得る。
マイクロバブル超音波剤は、純粋な静脈内トレーサーであるので、血管血餅を画像化する戦略は、血管空間内の疾患関連マーカーを標的化することに依存する必要がある。潜在的な標的には、血小板活性化にのみ発現した血小板表面マーカーが含まれ、従って独特な血小板受容体であるGPIb及びαIIbβ3に対するリガンドを含む。マイクロバブルは、静的条件下のin vitroモデルにおいてαIIbβ3を標的化することに成功していたが(Schumann et al.(2002)Invest.Radiol.,37:587−593)、小さいペプチドリガンドの相対的な低親和性及び低特異性によってin vivo標的化は制限されていた。しかしながら、GPIBは、vWF及びトロンビンの両者に対する高親和性受容体である。従って、GPIb、及びGPIb結合活性を保持したその断片、誘導体、変異体及び変種は、標的化部位としてより適切である。特定の実施形態において、GPIbの変異体/変種/誘導体/断片は、増加したVWF結合を有している。例えば、GPIb(His86Ala)(Peng et al.(Blood(2005)106:1982−1987)は、増加したVWF結合親和性を有しており、流動下でVWFに対するマイクロバブルに連結したGPIbの滞留時間及び強度を増加することができる。加えて、GPIbの可溶性形態(グリコカリシン;例えばBaglia et al.(J.Biol.Chem.(2004)279:45470−45476)及びBaglia et al.(J.Biol.Chem.(2004)279:49323−49329を参照のこと)或いは組換えGPIb(例えばLi et al.(Protein Expr.Purif.(2001)22:200−210を参照のこと)は、前記マイクロバブルへ共役される。特定の実施形態において、本発明の標的化部位は、抗原−抗体などの特異的結合ペアを介して前記マイクロバブルへ連結される。例えば、抗カルモジウム(calmodium:CaM)mAbは、ビオチン化され、ストレプトアビジンリンカーを介して前記マイクロバブルへ共役され、その後キメラタンパク質である組換えGPIb−CaMと共にインキュベーションされ(例えば、Li et al.(Protein Expr.Purif.(2001)22:200−210を参照のこと)、GPIbを前記マイクロバブルへ連結する。
生理学的に、GPIbは、ずり流動状態下で血管傷害及びアテローム性動脈硬化性プラークの部位へ選択的血小板動員を仲介する。重要なこととして、GPIb−仲介血小板動員は、閉塞性血餅の形成或いはプラーク破裂の前でも、血管血餅の発達の初期ステップの1つである(Croce et al.(2007)Curr.Opin.Hematol.,14:55−61)。従って、GPIb−マイクロバブルの空間的局在化は、急性及び慢性血栓症発症の両者を検出するための潜在的で有用な診断ツールを示す。
造影超音波は、分子及び細胞イメージングの適用によく適用されていると示されていた(本明細書に上述、及びChristiansen et al.(2002)Circulation 105:1764−1767;Ellegala et al.(2003)Circulation 108:336−341;Leong−Poi et al.(2005)Circulation 111:3248−3254;Leong−Poi et al.(2003)Circulation 107:455−460;Lindner et al.(2000)Circulation 101:668−675;Lindner et al.(2000)Circulation 102:531−538;Lindner et al.(2000) Circulation 102:2745−2750を参照のこと)。この方法論によって、各マイクロバブルの平方ミクロン表面当たり数千標的リガンドの長分子ポリエチレングリコール連結を介した共役が可能になった。ほとんどの他のイメージング法を比較して、CEUは感度及び空間解像度の点でよくバランスが取れており、単一マイクロバブルからのシグナルを検出することができる(Klibanov et al.(2002)Acad.Radiol.,9:S279−281)。同時に、CEUは1mm以下の解像度を有する。シグナル増強の空間的局在化はさらに、低周波数から中周波数で得られたコントラストシグナルを高周波数画像上に重ねた、融合ディスプレイによって増強され得る(Kaufmann et al.(2007)J.Am.Soc.Echocardiogr.,20:136−143)。組織からの高バックグラウンドシグナルに関連した制限は、オフラインバックグラウンド除去との組み合わせでバックグラウンド組織を無効にする、マルチパルスイメージング技術(逆パルス、振幅変調、及びパワードップラーイメージング)で克服した(Behm et al.(2006)Ultrasoud Q.,22:67−72)。しかしながら、CEUの最も認識された利点は、超音波システムの広範な利用能、超音波イメージング装置の利便性及び携帯性、及び15分以内に標的イメージングプロトコールを実施する能力である(Lindner,J.R.(2004)Nat.Rev.Drug Discov.,3:527−532)。これら全特徴は、CEUを臨床的な使用、及び新しい技術の高処理評価に対する研究設定におけるその適用に対して魅力的なものとする。
IV.イメージング
マイクロバブルが被包したガス及び周囲の血液の間の音響インピーダンスミスマッチのおかげで、マイクロバブルは有効な超音波剤である。この音響インピーダンスミスマッチを検出するために使用され得るあらゆる手段は、本発明に考慮される。マイクロバブルを検出するための技術には、これに限定されるものではないが、磁気共鳴画像法(MRI;常磁性剤の共役あり或いはなし)、光学イメージング(例えば光学干渉性、近赤外線(NIR)共役体)、及び光音響(光刺激及び音響検出)が含まれる。特定の実施形態において、造影超音波などの超音波技術は、本発明のマイクロバブルを検出するために使用される。
マイクロバブルが被包したガス及び周囲の血液の間の音響インピーダンスミスマッチのおかげで、マイクロバブルは有効な超音波剤である。この音響インピーダンスミスマッチを検出するために使用され得るあらゆる手段は、本発明に考慮される。マイクロバブルを検出するための技術には、これに限定されるものではないが、磁気共鳴画像法(MRI;常磁性剤の共役あり或いはなし)、光学イメージング(例えば光学干渉性、近赤外線(NIR)共役体)、及び光音響(光刺激及び音響検出)が含まれる。特定の実施形態において、造影超音波などの超音波技術は、本発明のマイクロバブルを検出するために使用される。
以下の実施例は、本発明を実施するために実例となる方法を提供し、本発明の観点をあらゆる方向に制限することを意図したものではない。
rPGSL−Igを含むマイクロバブル
標的を定めたマイクロバブル造影剤を以下のように調製した。ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン−40−ステアレート、およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミンPEG(2000)ビオチンのデカフルオロブタンbas−飽和水性懸濁液の高出力超音波処理によって、ビオチン化マイクロバブルを調製した。マイクロバブルを浮遊遠心分離法によって洗浄して、ストレプトアビジン(108個のマイクロバブル当たり30μg)に曝露して、洗浄した。ヒトIgG1(rPSGL−Ig)のFc部分へ融合した、セレクチン結合糖型中のPSGL−1のアミノ末端領域から成る組換P−セレクチン・リガンドをマイクロバブル(Y‘s Therapeutics,カリフォルニア州Burlingame)へ結合した。この処理のために、リガンドのIg部分はビオチン化した。次に、ビオチン化rPSGL−Ig(108個のマイクロバブル当たり50μg)へマイクロバブルを曝露して、洗浄した。マイクロバブルのサイズおよび濃度は、エレクトロゾーンセンシング(Multisizer III,Beckman−Coulter,カリフォルニア州Fullerton)によって測定した。様々な剪断条件下でのP−セレクチンへのそれらマイクロバブルの選択的結合は流動チャンバ実験によって試験した。それらはモノクローナル抗体ベースのターゲティングと同等の結合能力を有するものと思われる。外科的外傷で誘導したP−セレクチン発現の生体内顕微鏡検査もまた、マウスモデルの2つの実験で同等の結合を示した。標的造影超音波画像(targeted contrast enhanced ultrasound imaging)は、TNF−アルファまたは虚血再灌流傷害のいずれかへ曝露した筋肉組織中での、rPSGL−Igを有するマイクロバブルの選択的結合を示した。マウスP−セレクチンに対するラットmAbの表面への結合によって標的を定めたマイクロバブルは、マウス中の時期的に新しい心筋虚血を検出可能であることを示した。ターゲティング部分としてのrPSGLの利用は、ヒトを含むあらゆる種においてP−セレクチンを標的とする方法を提供する。
標的を定めたマイクロバブル造影剤を以下のように調製した。ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン−40−ステアレート、およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミンPEG(2000)ビオチンのデカフルオロブタンbas−飽和水性懸濁液の高出力超音波処理によって、ビオチン化マイクロバブルを調製した。マイクロバブルを浮遊遠心分離法によって洗浄して、ストレプトアビジン(108個のマイクロバブル当たり30μg)に曝露して、洗浄した。ヒトIgG1(rPSGL−Ig)のFc部分へ融合した、セレクチン結合糖型中のPSGL−1のアミノ末端領域から成る組換P−セレクチン・リガンドをマイクロバブル(Y‘s Therapeutics,カリフォルニア州Burlingame)へ結合した。この処理のために、リガンドのIg部分はビオチン化した。次に、ビオチン化rPSGL−Ig(108個のマイクロバブル当たり50μg)へマイクロバブルを曝露して、洗浄した。マイクロバブルのサイズおよび濃度は、エレクトロゾーンセンシング(Multisizer III,Beckman−Coulter,カリフォルニア州Fullerton)によって測定した。様々な剪断条件下でのP−セレクチンへのそれらマイクロバブルの選択的結合は流動チャンバ実験によって試験した。それらはモノクローナル抗体ベースのターゲティングと同等の結合能力を有するものと思われる。外科的外傷で誘導したP−セレクチン発現の生体内顕微鏡検査もまた、マウスモデルの2つの実験で同等の結合を示した。標的造影超音波画像(targeted contrast enhanced ultrasound imaging)は、TNF−アルファまたは虚血再灌流傷害のいずれかへ曝露した筋肉組織中での、rPSGL−Igを有するマイクロバブルの選択的結合を示した。マウスP−セレクチンに対するラットmAbの表面への結合によって標的を定めたマイクロバブルは、マウス中の時期的に新しい心筋虚血を検出可能であることを示した。ターゲティング部分としてのrPSGLの利用は、ヒトを含むあらゆる種においてP−セレクチンを標的とする方法を提供する。
虚血後の筋肉中でのマイクロバブルの微小血管内の振る舞いは生体内顕微鏡検査によって評価した。麻酔したマウスの精巣挙筋を体外へ露出して、特注のステージ上へ設置し、等温表面灌流中に顕微鏡で観察した。5匹のマウスを筋肉の血管茎の圧縮による20分間の精巣虚血に供し、続いて再灌流を45分間行った。次に、P−セレクチンを標的としたものおよびコントロールのマイクロバブルを同時に注射した。10分間の循環を許した後、二重フィルター蛍光顕微鏡にてマイクロバブルの結合を定量化した。外科的準備後の同一の時点で虚血−再灌流に供しなかった4匹のマウスで、同様の実験を行った。
分子イメージングのために、急性心筋虚血再灌流の後にマウスへ麻酔および酸素供給した。11匹のマウスでLADを開胸で曝して、縫合で10分間ふさいだ。4匹の動物では疑似手術を行った。心筋の灌流および壁運動を虚血の間、検査した。45分間の再灌流の後、標的心筋コントラスト心エコー法(targeted myocardial contrast echocardiography)を行い、心筋灌流および壁運動を再検査した。3匹のマウスでは、開胸せずに標的心筋コントラスト心エコー法を実施した。
図1に見られるとおり、虚血再灌流を行ったマウス中ではP−セレクチンを標的としたマイクロバブルの滞留が顕著に増加した。
マイクロバブルの標準的な調製では、マイクロバブルの3〜6%は直径5μm以上である。サイズによる分離で、マイクロバブルの調製は直径5μm以上のマイクロバブルを0.1%以下含むようにすることができる。サイズ依存的なマイクロバブルの滞留の可能性を避けるために、追加的な6匹のマウスでの心筋虚血−再灌流実験では、サイズによって分離したマイクロバブルを用いた。それらの調製では、コントロールのマイクロバブル(MBC)のシグナルは実質的に排除された。さらに、前部および後部心筋はP−セレクチン・マイクロバブル(MBP)の顕著に大きなシグナルを示した(図2)。
従って、虚血後の心筋中でのP−セレクチン発現は、心筋灌流および壁運動が正常に戻った時点で、標的心筋コントラスト心エコー法によって映像化可能である。それ故に、P−セレクチン発現の分子イメージングは、胸痛を有するリスク層別化患者において有効である。
比較実験
材料および方法
マイクロバブルの調製
P−セレクチンに対するモノクローナル抗体(MBAB);アイソタイプ・コントロール抗体(MBC);またはrPSGL−Ig(Y‘s Therapeutics;日本Tokyo)(MBPGSL)を表面へ結合したマイクロバブルを作製した。以前に記述された(Klibanov et al.(1999)Proc.26th Intl.Symp.Controlled Rel.Bioact.Mat.124〜125)とおりに、デカフルオロブタン・ガスを含むビオチン化マイクロバブルを調製した。約3×108個のビオチン化マイクロバブルを、90μgのストレプトアビジン(Sigma)と共に30分間インキュベートして、洗浄した。一定量の懸濁液(1×108マイクロバブル)を、75μgのビオチン化(EZ−Link,Pierce,イリノイ州Rockford)した、P−セレクチンに対する抗マウスモノクローナルIgG1(RB40.34)またはアイソタイプ・コントロール抗体(R3−34,Pharmingen Inc.,カリフォルニア州SanDiego)と共に30分間インキュベートした。用いた抗体濃度はフローサイトメトリー実験によって決定した。
材料および方法
マイクロバブルの調製
P−セレクチンに対するモノクローナル抗体(MBAB);アイソタイプ・コントロール抗体(MBC);またはrPSGL−Ig(Y‘s Therapeutics;日本Tokyo)(MBPGSL)を表面へ結合したマイクロバブルを作製した。以前に記述された(Klibanov et al.(1999)Proc.26th Intl.Symp.Controlled Rel.Bioact.Mat.124〜125)とおりに、デカフルオロブタン・ガスを含むビオチン化マイクロバブルを調製した。約3×108個のビオチン化マイクロバブルを、90μgのストレプトアビジン(Sigma)と共に30分間インキュベートして、洗浄した。一定量の懸濁液(1×108マイクロバブル)を、75μgのビオチン化(EZ−Link,Pierce,イリノイ州Rockford)した、P−セレクチンに対する抗マウスモノクローナルIgG1(RB40.34)またはアイソタイプ・コントロール抗体(R3−34,Pharmingen Inc.,カリフォルニア州SanDiego)と共に30分間インキュベートした。用いた抗体濃度はフローサイトメトリー実験によって決定した。
流動チャンバ実験
MBPSGLおよびMBAbのインビトロでの結合能を、様々な剪断応力における100分子/mm2の密度のP−セレクチンを有する平行平板流動チャンバで試験した。より具体的には、1,2,および8ダイン/cm2の剪断応力(剪断応力レベル当たりn=2プレート)で結合を評価した。流動チャンバには、それぞれ3×106/mlの濃度のMBPSGLおよびMBAbの混合物を添加した3%BSAを含む等張リン酸緩衝生理食塩水を、それぞれの壁剪断応力に対して適切な流量で連続的に灌流した。マイクロバブル付着のために5分間の灌流を許した後、流動チャンバへ付着したMBPSGLおよびMBAbの光場当たり数量を測定して、滞留画分(retention fraction)として表した。
MBPSGLおよびMBAbのインビトロでの結合能を、様々な剪断応力における100分子/mm2の密度のP−セレクチンを有する平行平板流動チャンバで試験した。より具体的には、1,2,および8ダイン/cm2の剪断応力(剪断応力レベル当たりn=2プレート)で結合を評価した。流動チャンバには、それぞれ3×106/mlの濃度のMBPSGLおよびMBAbの混合物を添加した3%BSAを含む等張リン酸緩衝生理食塩水を、それぞれの壁剪断応力に対して適切な流量で連続的に灌流した。マイクロバブル付着のために5分間の灌流を許した後、流動チャンバへ付着したMBPSGLおよびMBAbの光場当たり数量を測定して、滞留画分(retention fraction)として表した。
動物の準備
実験プロトコルはUniversity of Virginiaのthe Animal Research Committeeによって承認されている。マウスは、塩酸ケタミン(10mg/mL)、キシラジン(1mg/mL)、およびアトロピン(0.02mg/mL)を含む溶液の注射(12.5μL/g IP)によって麻酔した。体温は加温パッドで37℃に維持した。マイクロバブルおよび薬剤を投与するために、両方の頸静脈へカニューレを挿入した。
実験プロトコルはUniversity of Virginiaのthe Animal Research Committeeによって承認されている。マウスは、塩酸ケタミン(10mg/mL)、キシラジン(1mg/mL)、およびアトロピン(0.02mg/mL)を含む溶液の注射(12.5μL/g IP)によって麻酔した。体温は加温パッドで37℃に維持した。マイクロバブルおよび薬剤を投与するために、両方の頸静脈へカニューレを挿入した。
生体内顕微鏡検査
炎症を起こした内皮へのマイクロバブルの接着をインビボで直接的に観察するために、3匹のマウスでマウス精巣挙筋の生体内顕微鏡検査を実施した。精巣挙筋の炎症は、0.5μgのマウス腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)−アルファ(Sigma,ミズーリ州St.Louis)の2時間の陰嚢内注射によって生じさせた。P−セレクチンの発現は、精巣挙筋の外科的曝露によって誘導して、観察した全ての細静脈中の白血球ローリングによって確認した。DiI−標識MBPSGLおよびDiO−標識MBAb(それぞれ5×106個)(標識については、例えば、Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745〜2750を参照)を頸静脈カテーテルによって同時に注射した。顕微鏡検査は、蛍光落射照射(460〜500nm励起フィルター)および低強度透視法の組合せで行った。細静脈中に接着したマイクロバブル数は、DiIおよびDiOに対する励起フィルター(それぞれ、530および490nm)を用いて、注射の10分後のオーバーラップしない光場で測定した。
炎症を起こした内皮へのマイクロバブルの接着をインビボで直接的に観察するために、3匹のマウスでマウス精巣挙筋の生体内顕微鏡検査を実施した。精巣挙筋の炎症は、0.5μgのマウス腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)−アルファ(Sigma,ミズーリ州St.Louis)の2時間の陰嚢内注射によって生じさせた。P−セレクチンの発現は、精巣挙筋の外科的曝露によって誘導して、観察した全ての細静脈中の白血球ローリングによって確認した。DiI−標識MBPSGLおよびDiO−標識MBAb(それぞれ5×106個)(標識については、例えば、Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745〜2750を参照)を頸静脈カテーテルによって同時に注射した。顕微鏡検査は、蛍光落射照射(460〜500nm励起フィルター)および低強度透視法の組合せで行った。細静脈中に接着したマイクロバブル数は、DiIおよびDiOに対する励起フィルター(それぞれ、530および490nm)を用いて、注射の10分後のオーバーラップしない光場で測定した。
炎症の標的イメージング
虚血性傷害を患った股関節内転筋のMBPSGL、MBAb、およびMBCマイクロバブルからの標的シグナルを、造影剤増強超音波法(contrast−enhanced ultrasound:CEU)によって評価した。イメージングは:a)虚血性傷害を患う野生型マウス(n=6);b)虚血性傷害を患う、遺伝子操作したP−セレクチン欠損(P−/−;Bullard et al.(1995)J.Clin.Invest.95:1782〜1788を参照)マウス(n=6);c)非虚血性の野生型コントロール・マウス(n=4)、のいずれかにおいて実施した。股関節(proximal hindlimb)の虚血は、動脈供給を行う肢の外部バンドによる8分間の閉塞によって生じさせた。イメージングは、再灌流の45分後に開始した。それぞれのイメージング実験では、3×106個のMBPSGL、MBAb、およびMBCをランダムな順序で静脈注射した。以前に記述された(Lindner et al.Circulation(2001)104:2107〜2112を参照)とおり、滞留したマイクロバブルのみを反映する映像は、マイクロバブル注入の8分後の最初の映像を得て、次に、数秒間の連続的な高出力イメージングの後に得た長いパルス間隔(10秒)での平均的映像を電子的に差し引くことにより獲得した。
虚血性傷害を患った股関節内転筋のMBPSGL、MBAb、およびMBCマイクロバブルからの標的シグナルを、造影剤増強超音波法(contrast−enhanced ultrasound:CEU)によって評価した。イメージングは:a)虚血性傷害を患う野生型マウス(n=6);b)虚血性傷害を患う、遺伝子操作したP−セレクチン欠損(P−/−;Bullard et al.(1995)J.Clin.Invest.95:1782〜1788を参照)マウス(n=6);c)非虚血性の野生型コントロール・マウス(n=4)、のいずれかにおいて実施した。股関節(proximal hindlimb)の虚血は、動脈供給を行う肢の外部バンドによる8分間の閉塞によって生じさせた。イメージングは、再灌流の45分後に開始した。それぞれのイメージング実験では、3×106個のMBPSGL、MBAb、およびMBCをランダムな順序で静脈注射した。以前に記述された(Lindner et al.Circulation(2001)104:2107〜2112を参照)とおり、滞留したマイクロバブルのみを反映する映像は、マイクロバブル注入の8分後の最初の映像を得て、次に、数秒間の連続的な高出力イメージングの後に得た長いパルス間隔(10秒)での平均的映像を電子的に差し引くことにより獲得した。
結果
流動チャンバ実験では、剪断応力の増加に伴って、MBPSGLおよびMBAbの両方のP−セレクチンへの結合が減少した。マイクロバブルの滞留画分は、最も低い(0.5ダイン/cm2)壁剪断応力においてMBPSGLの接着がわずかではあるが統計的に有意(p=<0.05)なだけ増加した(図3)ことを除いて、MBPSGLおよびMBAbについて同等であった。
流動チャンバ実験では、剪断応力の増加に伴って、MBPSGLおよびMBAbの両方のP−セレクチンへの結合が減少した。マイクロバブルの滞留画分は、最も低い(0.5ダイン/cm2)壁剪断応力においてMBPSGLの接着がわずかではあるが統計的に有意(p=<0.05)なだけ増加した(図3)ことを除いて、MBPSGLおよびMBAbについて同等であった。
生体内顕微鏡検査では、外科的準備によるP−セレクチン発現で、観察した全ての細静脈中で白血球ローリングが生じた。細静脈内皮への結合はMBPSGLおよびMBAbで同様であった(図4A)。光場間でのマイクロバブル接着の幅広いレンジ(滞留の不均一性)にもかかわらず、所与の光場について接着したMBPSGLとMBAbとの数の間には高い相関があった(図4B)。小さな細静脈へ結合するマイクロバブルを図示する生体内顕微鏡検査の疑似カラー映像は図5に示した。映像は、DiI−標識MBAb(赤)およびDiO−標識MBPSGL(緑)に対する個別の蛍光フィルターによるそれぞれの映像の合成によって生成した。
虚血再灌流傷害を患った野生型動物では、虚血後の後肢での平均(+SD)シグナル強度はMBC、MBPSGL、およびMBAbに対して徐々に増加した(図6)。反対側のコントロール肢にもまた、顕著なシグナル増強が見られた。虚血再灌流傷害を患うP−/−マウスでは、両方の肢において全てのマイクロバブルについてシグナル増強が同様に低かった。コントロールの非虚血性の野生型動物では、MBAbからのシグナルがMBCおよびMBPSGLのそれと比較して顕著に、および好ましくなく上昇した。従って、野生型マウスでの虚血によるシグナル増強の程度(虚血後の肢のシグナルの、非虚血性コントロールに対する比率)は、MBAbに対するものよりもMBPSGLについての方が著しく大きい(3.1に対して4.9倍)。標的造影超音波の実際の映像は図7に示した。
以上の観点では、天然P−セレクチンのリガンドPSGL−1の遺伝子操作型は、炎症の造影剤増強超音波法分子イメージングに使用可能である。本戦略は、抗体ターゲティングと比較して匹敵するレベルの総合的な増強および、正常組織での非常に低い特異的結合によるものである非常に強い特異性を提供する。明らかに、PSGL−1類似物質を有するマイクロバブルは、ヒトを含む動物での診断用分子イメージングのための有効および安全な方法である。
VCAM−1を有するマイクロバブル
アテローム性動脈硬化は、しばしば臨床的に明らかとなる前に数十年にわたって静かに進行する慢性炎症性疾患である(Ross R.(1999) N Engl J Med 340:115〜26)。現在の臨床診療では、C−反応性ペプチドが患者のリスク評価に通常使用される唯一の炎症マーカーである。冠動脈石灰化、頸動脈血管内膜中膜複合体肥厚、およびプラーク形態などの血管変化の非侵襲的イメージングが、最近は患者リスクの評価に用いられてきている(Arad et al.(2000)J.Am.Coll.Cardiol.,36:1253〜60;Greenland et al.(2004)JAMA 291:210〜5;Chambless et al.(2000)Am.J.Epidemiol.,151:478〜87;O‘Leary et al.(1999)N.Engl.J.Med.,340:14〜22;Leber et al.(2006)J.Am.Coll.Cardiol.,47:672〜7)。しかし、それらの方法は疾患プロセスの比較的後期に生じる変化を検出するものであり、炎症状態を直接評価するものではない。炎症はプラーク発生(plaque initiation)および進行に関与するため、血管炎症の程度を映像化可能な方法は、早期疾患の存在および疾患進行の将来的リスクの両方に対する強力な予測的情報を提供できる可能性がある。疾患のより後期の段階においては、その方法は劣化および破裂に対するプラークの脆弱性についての情報もまた提供可能であろう。(Virmani et al.(2006)J.Am.Coll.Cardiol.,47:C13〜C18)。また、血管炎症反応の阻害を目的とした新たな治療法が開発中であり、それは早期の炎症変化を検出可能な定量的方法と共に用いた場合に最も有効であろうことを認識することも重要である。
アテローム性動脈硬化は、しばしば臨床的に明らかとなる前に数十年にわたって静かに進行する慢性炎症性疾患である(Ross R.(1999) N Engl J Med 340:115〜26)。現在の臨床診療では、C−反応性ペプチドが患者のリスク評価に通常使用される唯一の炎症マーカーである。冠動脈石灰化、頸動脈血管内膜中膜複合体肥厚、およびプラーク形態などの血管変化の非侵襲的イメージングが、最近は患者リスクの評価に用いられてきている(Arad et al.(2000)J.Am.Coll.Cardiol.,36:1253〜60;Greenland et al.(2004)JAMA 291:210〜5;Chambless et al.(2000)Am.J.Epidemiol.,151:478〜87;O‘Leary et al.(1999)N.Engl.J.Med.,340:14〜22;Leber et al.(2006)J.Am.Coll.Cardiol.,47:672〜7)。しかし、それらの方法は疾患プロセスの比較的後期に生じる変化を検出するものであり、炎症状態を直接評価するものではない。炎症はプラーク発生(plaque initiation)および進行に関与するため、血管炎症の程度を映像化可能な方法は、早期疾患の存在および疾患進行の将来的リスクの両方に対する強力な予測的情報を提供できる可能性がある。疾患のより後期の段階においては、その方法は劣化および破裂に対するプラークの脆弱性についての情報もまた提供可能であろう。(Virmani et al.(2006)J.Am.Coll.Cardiol.,47:C13〜C18)。また、血管炎症反応の阻害を目的とした新たな治療法が開発中であり、それは早期の炎症変化を検出可能な定量的方法と共に用いた場合に最も有効であろうことを認識することも重要である。
血管細胞接着分子−1(vascular cell adhesion molecule−1:VCAM−1)は活性化内皮細胞が発現して、白血球ローリング、および主にそのカウンターリガンドであるVLA−4(α4β1)との相互作用による単球およびリンパ球への接着に関与する(Carlos et al.(1991)Blood 77:2266〜71;Huo et al.(2000)Circ.Res.,87:153〜9)。血管内皮表面または下に存在する栄養血管でのVCAM−1発現は、単球およびT−リンパ球のリクルートによるアテローム性動脈硬化のプラーク発達において重要な役割を担う(O‘Brien et al.(1996)Circulation 93:672〜82)。恒常的な発現がほとんどなく、その上方調整はアテローム発生の非常に初期の段階で生じるため、それは分子イメージングの理想的なターゲットである(Nakashima et al.(1998)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,18:842〜51;Iiyama et al.(1999)Circ.Res.,85:199〜207)。標的造影超音波法(targeted contrast−enhanced ultrasound:CEU)によるVCAM−1の分子イメージングは、アテローム性動脈硬化における血管炎症の程度の評価に用いることが可能であろう。費用、映像化プロトコルの短い持続時間(10分間)、および空間的分解能と標的造影剤検出感度との間のバランスなどの実際的な考慮から、そうしたスクリーニング目的にCEUは非常に適切である。以上の仮説を試験するために、VCAM−1を標的とするマイクロバブルの内皮細胞への接着を、様々な剪断条件下で評価した。インビボでのマイクロバブル接着および大動脈のシグナル増強を、野生型およびアポリポタンパク質−E欠損(ApoE−/−)マウスにおける食事介入によって生じさせた様々な程度のアテローム性動脈硬化の動物モデルで評価した。
方法
マイクロバブルの調製
脂質で覆ったデカフルオロブタンのビオチン化マイクロバブルを、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン−40−ステアレート、およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミンPEG(2000)ビオチンのガス飽和水性懸濁液の超音波処理によって調製した。VCAM−1を標的とする(MBV)またはコントロール(MBC)のマイクロバブルを作製するために、以前記述されたとおりに、ラット抗マウスVCAM−1モノクローナルIgG1(MK2.7)またはアイソタイプ・コントロール抗体(R3−34,Pharmingen Inc.;カリフォルニア州SAn Diego)をマイクロバブル表面へ結合した(Lindner et al.(2001)Circulation 104:2107〜12)。流動チャンバおよびインビボ接着実験のために、ジオクタデシルテトラメチルインドカルボシアニン(dioctadecyltetramethylindocarbocyanine:DiI)またはジオクタデシルオキサカルボシアニン(dioctadecyloxacarbocyanine:DiO)のいずれかの過塩素酸塩(Molecular Probes Inc.;オレゴン州Eugene)の水性懸濁液への付加によって、マイクロバブルを蛍光標識した。マイクロバブル濃度は、エレクトロゾーンセンシング(Multisizer III,Beckman−Coulter,カリフォルニア州Fullerton)によって測定した。
マイクロバブルの調製
脂質で覆ったデカフルオロブタンのビオチン化マイクロバブルを、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン−40−ステアレート、およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミンPEG(2000)ビオチンのガス飽和水性懸濁液の超音波処理によって調製した。VCAM−1を標的とする(MBV)またはコントロール(MBC)のマイクロバブルを作製するために、以前記述されたとおりに、ラット抗マウスVCAM−1モノクローナルIgG1(MK2.7)またはアイソタイプ・コントロール抗体(R3−34,Pharmingen Inc.;カリフォルニア州SAn Diego)をマイクロバブル表面へ結合した(Lindner et al.(2001)Circulation 104:2107〜12)。流動チャンバおよびインビボ接着実験のために、ジオクタデシルテトラメチルインドカルボシアニン(dioctadecyltetramethylindocarbocyanine:DiI)またはジオクタデシルオキサカルボシアニン(dioctadecyloxacarbocyanine:DiO)のいずれかの過塩素酸塩(Molecular Probes Inc.;オレゴン州Eugene)の水性懸濁液への付加によって、マイクロバブルを蛍光標識した。マイクロバブル濃度は、エレクトロゾーンセンシング(Multisizer III,Beckman−Coulter,カリフォルニア州Fullerton)によって測定した。
流動チャンバ接着実験
VCAM−1を発現するマウス内皮細胞(SVEC4−10,ATCC)を、10%ウシ胎仔血清を添加したDMEM中、フィブロネクチン被覆培養皿上でコンフルエントになるまで培養した(Sasaki et al.(2003)Am.J.Physiol.Cell Physiol.,284:C422〜C428)。活性化のために、TNF−アルファ(20ng/mL)で4時間、細胞を前処理した。調節したガスケット厚および2.5mmのチャネル幅の平行平板流動チャンバ(Glycotech;メリーランド州Gainthersburg)上に培養皿を設置した。40倍対物レンズおよびビデオ撮影のための高解像度CCDカメラ(C2400,Hamamatsu Photonics;ニュージャージー州Bridgewater)を取り付けた顕微鏡(Axioskop2−FS,Carl Zeiss Inc.;ニューヨーク州Thornwood)上に流動チャンバを裏返しに設置した。細胞培地中のコントロールまたはVCAM−1を標的とするマイクロバブル(3×106ml−1)の懸濁液は、調節可能な取水ポンプで流動チャンバから汲み上げた。細胞へ接着したマイクロバブルの数は、0.5〜12.0ダイン/cm2の剪断レートを生じる速度での5分間の連続的流動の後に、20の光場(全領域0.5mm2)について測定した。実験は最低でも3回にわたって実施した。大動脈の流れは規則的に脈打つため、剪断力<0.5ダイン/cm2まで一時的(5秒間)に減少させた後に、最高の剪断レート(8および12ダイン/cm2、それぞれに対してn=6)での接着もまた評価した。流動チャンバシステムの容量の理由から、大幅な流量減少のためにはこれだけの持続時間が最低限必要である。5分間の連続的な流動の後に3回続いて起こる流動量減少を実行して、それぞれの後に剪断が休止前のレベルに回復したならばマイクロバブル接着を測定した。
VCAM−1を発現するマウス内皮細胞(SVEC4−10,ATCC)を、10%ウシ胎仔血清を添加したDMEM中、フィブロネクチン被覆培養皿上でコンフルエントになるまで培養した(Sasaki et al.(2003)Am.J.Physiol.Cell Physiol.,284:C422〜C428)。活性化のために、TNF−アルファ(20ng/mL)で4時間、細胞を前処理した。調節したガスケット厚および2.5mmのチャネル幅の平行平板流動チャンバ(Glycotech;メリーランド州Gainthersburg)上に培養皿を設置した。40倍対物レンズおよびビデオ撮影のための高解像度CCDカメラ(C2400,Hamamatsu Photonics;ニュージャージー州Bridgewater)を取り付けた顕微鏡(Axioskop2−FS,Carl Zeiss Inc.;ニューヨーク州Thornwood)上に流動チャンバを裏返しに設置した。細胞培地中のコントロールまたはVCAM−1を標的とするマイクロバブル(3×106ml−1)の懸濁液は、調節可能な取水ポンプで流動チャンバから汲み上げた。細胞へ接着したマイクロバブルの数は、0.5〜12.0ダイン/cm2の剪断レートを生じる速度での5分間の連続的流動の後に、20の光場(全領域0.5mm2)について測定した。実験は最低でも3回にわたって実施した。大動脈の流れは規則的に脈打つため、剪断力<0.5ダイン/cm2まで一時的(5秒間)に減少させた後に、最高の剪断レート(8および12ダイン/cm2、それぞれに対してn=6)での接着もまた評価した。流動チャンバシステムの容量の理由から、大幅な流量減少のためにはこれだけの持続時間が最低限必要である。5分間の連続的な流動の後に3回続いて起こる流動量減少を実行して、それぞれの後に剪断が休止前のレベルに回復したならばマイクロバブル接着を測定した。
動物モデルおよび準備
本実験のプロトコルはinstitutional Animal Research Committeeの承認を受けたものである。26匹の雄の野生型C57B1/6および23匹のApoE−/−マウス(Jackson Laboratory;メイン州Bar Harbor)で22〜24週齢にて実験した。マウスへは、食事療法、または14週齢以降からの重量21%脂質、0.15%コレステロール、および19.5%コール酸ナトリウム抜きカゼインを含む高コレステロール飼料(hypercholesterolemic diet:HCD)のいずれかを与えた。麻酔は、塩酸ケタミン(10mg・mL−1)、キシラジン(1mg・mL−1)、およびアトロピン(0.02mg・mL−1)を含む溶液の腹腔内投与(12.5μL・g−1)にて誘導した。マイクロバブル投与のために頸静脈へカニューレを挿入した。
本実験のプロトコルはinstitutional Animal Research Committeeの承認を受けたものである。26匹の雄の野生型C57B1/6および23匹のApoE−/−マウス(Jackson Laboratory;メイン州Bar Harbor)で22〜24週齢にて実験した。マウスへは、食事療法、または14週齢以降からの重量21%脂質、0.15%コレステロール、および19.5%コール酸ナトリウム抜きカゼインを含む高コレステロール飼料(hypercholesterolemic diet:HCD)のいずれかを与えた。麻酔は、塩酸ケタミン(10mg・mL−1)、キシラジン(1mg・mL−1)、およびアトロピン(0.02mg・mL−1)を含む溶液の腹腔内投与(12.5μL・g−1)にて誘導した。マイクロバブル投与のために頸静脈へカニューレを挿入した。
大動脈へのマイクロバブル接着の評価
麻酔したマウスへは、それぞれDiIおよびDiOで標識したVCAM−1を標的とするものおよびコントロールのマイクロバブル(それぞれ1×106個)を静脈内へ同時に注入した。10分後、前部開胸によって右心房切開を施した。35〜37℃のヘパリンを含む5%ウシ血清アルブミン10mLの、注入圧?100mm Hgでの左心室穿刺を介した注入によって血液量を除去した。大動脈を除去して縦切開を施し、顕微鏡のステージ上へ大動脈を平らに固定した。上行する大動脈弓および胸大動脈の下行部分の正面からの顕微鏡観察は×20対物レンズにて行った。最低限10の光場を、490および530nmの両方の励起波長での蛍光落射照射下で観察した。
麻酔したマウスへは、それぞれDiIおよびDiOで標識したVCAM−1を標的とするものおよびコントロールのマイクロバブル(それぞれ1×106個)を静脈内へ同時に注入した。10分後、前部開胸によって右心房切開を施した。35〜37℃のヘパリンを含む5%ウシ血清アルブミン10mLの、注入圧?100mm Hgでの左心室穿刺を介した注入によって血液量を除去した。大動脈を除去して縦切開を施し、顕微鏡のステージ上へ大動脈を平らに固定した。上行する大動脈弓および胸大動脈の下行部分の正面からの顕微鏡観察は×20対物レンズにて行った。最低限10の光場を、490および530nmの両方の励起波長での蛍光落射照射下で観察した。
造影剤増強超音波イメージング
レールドガントリーシステムによって位置に固定した高周波リニアアレイプローブによって超音波イメージング(Sequoia,Siemens Medical Systems)を実施した。縦軸の結像面を最適化するために、14MHzの基本波イメージングを用いて左胸骨傍のウィンドウから、大動脈弓および近位下行大動脈弓を映像化した。CEUは、マイクロバブルの非線形基本シグナル成分を検出するコントラストパルスシーケンシング(Contrast Pulse Sequencing)(商標)にて行った。イメージングは、中心周波数7MHzおよびメカニカル・インデックス0.2にて行った。ゲインはスペックルが見えるすぐ下を基準に設定して、一定に固定した。1×106個のMBCまたはMBVの静脈内投与の10分後にランダムな順序でリアルタイム・イメージングを実施した。メカニカル・インデックス0.2での数秒間の連続的イメージングの後、メカニカル・インデックスを1秒間、1.0まで増加すると、領域中のマイクロバブルは破壊された。それに続く破壊後の映像はメカニカル・インデックス0.2にて取得した。保持されたマイクロバブルのシグナルのみを測定するために、自由に循環するマイクロバブルを表す幾つかの破壊後の造影映像を平均化して、幾つかの平均かした破壊前の映像から電子的に差し引いた(Lindner et al.(2001)Circulation 104:2107〜12)。14MHzの映像をガイドとして用いて、大動脈上に位置する興味のある領域の、バックグラウンドを差し引いた強度を測定した。
レールドガントリーシステムによって位置に固定した高周波リニアアレイプローブによって超音波イメージング(Sequoia,Siemens Medical Systems)を実施した。縦軸の結像面を最適化するために、14MHzの基本波イメージングを用いて左胸骨傍のウィンドウから、大動脈弓および近位下行大動脈弓を映像化した。CEUは、マイクロバブルの非線形基本シグナル成分を検出するコントラストパルスシーケンシング(Contrast Pulse Sequencing)(商標)にて行った。イメージングは、中心周波数7MHzおよびメカニカル・インデックス0.2にて行った。ゲインはスペックルが見えるすぐ下を基準に設定して、一定に固定した。1×106個のMBCまたはMBVの静脈内投与の10分後にランダムな順序でリアルタイム・イメージングを実施した。メカニカル・インデックス0.2での数秒間の連続的イメージングの後、メカニカル・インデックスを1秒間、1.0まで増加すると、領域中のマイクロバブルは破壊された。それに続く破壊後の映像はメカニカル・インデックス0.2にて取得した。保持されたマイクロバブルのシグナルのみを測定するために、自由に循環するマイクロバブルを表す幾つかの破壊後の造影映像を平均化して、幾つかの平均かした破壊前の映像から電子的に差し引いた(Lindner et al.(2001)Circulation 104:2107〜12)。14MHzの映像をガイドとして用いて、大動脈上に位置する興味のある領域の、バックグラウンドを差し引いた強度を測定した。
マイクロバブルの接着は大動脈壁との接触に依存するため、注入直後のマイクロバブルの軸方向の分布を3匹の野生型マウスで評価した。イメージングはultra−high frequency(30MHz)mechanical sector imaging system(Vevo 770,Visualsonics Inc.)によって、MBC(1×106個)の静脈内投与中に行った。超音波は距離分解能55μmの1サイクルのパルスにて伝達した。映像は、マイクロバブル出現後の3秒間に最大値投影法(maximum−intensity projection)によって整列および表示した。
超音波圧力プロファイルの測定
映像領域中の音圧は、オシロスコープ(TDS−3012,Tektronix Inc.;オレゴン州Beaverton)と接続した針型ハイドロホン(PVDF−Z44,Specialty Engineering Associates)を付けたウォーターバス中で測定した。最大負音圧の測定は、標的イメージングのためのシステム設定を用いた焦点深度にて行った。2次元的圧力プロファイルは、面内での方位方向(lateral dimension(ビーム幅))およびスライス方向(elevational dimension(ビーム厚))における0.5mm調整をすることにより得た。
映像領域中の音圧は、オシロスコープ(TDS−3012,Tektronix Inc.;オレゴン州Beaverton)と接続した針型ハイドロホン(PVDF−Z44,Specialty Engineering Associates)を付けたウォーターバス中で測定した。最大負音圧の測定は、標的イメージングのためのシステム設定を用いた焦点深度にて行った。2次元的圧力プロファイルは、面内での方位方向(lateral dimension(ビーム幅))およびスライス方向(elevational dimension(ビーム厚))における0.5mm調整をすることにより得た。
心エコー検査
大動脈弓の中央部における最大流動速度は、ゲートサイズを最小に設定したパルス波ドップラー法によって測定した。左心室収縮機能は、14MHzでの基本イメージングにおける乳頭筋中央部の短軸面でのイメージングによって評価した。前−後および中隔−側方の次元の短縮率は、ビデオキャリパー(video calipers)によって測定して平均した。
大動脈弓の中央部における最大流動速度は、ゲートサイズを最小に設定したパルス波ドップラー法によって測定した。左心室収縮機能は、14MHzでの基本イメージングにおける乳頭筋中央部の短軸面でのイメージングによって評価した。前−後および中隔−側方の次元の短縮率は、ビデオキャリパー(video calipers)によって測定して平均した。
免疫組織学
VCAM−1の免疫染色は、各グループの幾つかの動物に対するAntigen Unmasking Solution(Vector Laboratories;カリフォルニア州Burlingame)で電子レンジ処理した後の大動脈弓の近位および遠位のパラフィン包埋切片で行った。マウスVCAM−1と公差反応性を有するヤギ抗ヒトVCAM−1ポリクローナル抗体(sc1504,Santa Cruz Biotechnology Inc.;カリフォルニア州Santa Cruz)を1次抗体として、ビオチン化した抗ヤギ2次抗体(Vector Laboratories)と共に用いた。染色は、ペルオキシダーゼキット(ABC Vectastain Elite,Vector Laboratories)および3,3’−ジアミノベンチジン・クロマジェン(DAKO)を用いて行った。スライドはヘマトキシリンで対比染色した。
VCAM−1の免疫染色は、各グループの幾つかの動物に対するAntigen Unmasking Solution(Vector Laboratories;カリフォルニア州Burlingame)で電子レンジ処理した後の大動脈弓の近位および遠位のパラフィン包埋切片で行った。マウスVCAM−1と公差反応性を有するヤギ抗ヒトVCAM−1ポリクローナル抗体(sc1504,Santa Cruz Biotechnology Inc.;カリフォルニア州Santa Cruz)を1次抗体として、ビオチン化した抗ヤギ2次抗体(Vector Laboratories)と共に用いた。染色は、ペルオキシダーゼキット(ABC Vectastain Elite,Vector Laboratories)および3,3’−ジアミノベンチジン・クロマジェン(DAKO)を用いて行った。スライドはヘマトキシリンで対比染色した。
統計的方法
他に特に規定しない限り、パラメータ・データは平均値(±1SD)で表した。グループ内のマイクロバブル剤間の比較は、対にした学生によるt−検定で行った。複数グループ間の比較は、ANOVAおよびチューキー・post hoc・テストで、適切な場合には、クラスカル・ウォリス検定とDunn’s post−hoc・テストで行った。差異はp<0.05(両側で)の場合に有意として考慮した。
他に特に規定しない限り、パラメータ・データは平均値(±1SD)で表した。グループ内のマイクロバブル剤間の比較は、対にした学生によるt−検定で行った。複数グループ間の比較は、ANOVAおよびチューキー・post hoc・テストで、適切な場合には、クラスカル・ウォリス検定とDunn’s post−hoc・テストで行った。差異はp<0.05(両側で)の場合に有意として考慮した。
結果
インビトロでの内皮細胞へのマイクロバブルの接着
免疫組織化学では、比活性化および活性化の両方の培養SVECsがVCAM−1に対して陽性に染色された。最も低い剪断レート(0.5ダイン/cm2)での流動チャンバ実験では、活性化状態にかかわらず、コントロールのマイクロバブル(MBC)のSVECsへの最小限の結合が見られた(図8A)。VCAM−1を標的とするマイクロバブル(MBV)は比活性化および活性化SVECsの両方へ接着し、活性化細胞に対して少しだけ多く接着した。活性化SVECsへのMBVの接着は、剪断レートの増加に伴って減少した(図8B)。連続的な剪断レートが6ダイン/cm2を上回ると、マイクロバブルの接着はほとんど生じなかった。しかし、剪断の順次的な短時間の減少は、試験した最も高い剪断レート(8および12ダイン/cm2)でVCAM−1を標的とするマイクロバブルの永続的な結合を許し、このことは流動が連続的な状態であるよりも規則的に脈動して生じる場合には高い剪断においてもマイクロバブルは強く結合可能であることを示している。
インビトロでの内皮細胞へのマイクロバブルの接着
免疫組織化学では、比活性化および活性化の両方の培養SVECsがVCAM−1に対して陽性に染色された。最も低い剪断レート(0.5ダイン/cm2)での流動チャンバ実験では、活性化状態にかかわらず、コントロールのマイクロバブル(MBC)のSVECsへの最小限の結合が見られた(図8A)。VCAM−1を標的とするマイクロバブル(MBV)は比活性化および活性化SVECsの両方へ接着し、活性化細胞に対して少しだけ多く接着した。活性化SVECsへのMBVの接着は、剪断レートの増加に伴って減少した(図8B)。連続的な剪断レートが6ダイン/cm2を上回ると、マイクロバブルの接着はほとんど生じなかった。しかし、剪断の順次的な短時間の減少は、試験した最も高い剪断レート(8および12ダイン/cm2)でVCAM−1を標的とするマイクロバブルの永続的な結合を許し、このことは流動が連続的な状態であるよりも規則的に脈動して生じる場合には高い剪断においてもマイクロバブルは強く結合可能であることを示している。
大動脈へのマイクロバブルの接着
マイクロバブルの静脈内投与の10分後に除去した胸大動脈のエクスビボ蛍光顕微鏡検査では、食事療法をした野生型マウス中のコントロールまたはVCAM−1を標的とするマイクロバブルのいずれについても接着がほとんど示されなかった(図9)。他のグループ(HCDを与えた野生型マウス、および食事療法またはHCDのいずれかを与えたApoE−/−マウス)では、VCAM−1を標的とするマイクロバブルの大動脈への接着は、コントロールのマイクロバブルよりも多かった。VCAM−1を標的とするマイクロバブルの接着は、HCDを与えたApoE−/−マウスにおいて他のいずれのグループよりも顕著に多く、大動脈全体に分布していた。対照的に、食事療法をしたApoE−/−マウスでのVCAM−1を標的とするマイクロバブルは、アテローム性動脈硬化障害の進行と一致した不規則に肥厚した大動脈の領域に優先的に接着する傾向が見られた。
マイクロバブルの静脈内投与の10分後に除去した胸大動脈のエクスビボ蛍光顕微鏡検査では、食事療法をした野生型マウス中のコントロールまたはVCAM−1を標的とするマイクロバブルのいずれについても接着がほとんど示されなかった(図9)。他のグループ(HCDを与えた野生型マウス、および食事療法またはHCDのいずれかを与えたApoE−/−マウス)では、VCAM−1を標的とするマイクロバブルの大動脈への接着は、コントロールのマイクロバブルよりも多かった。VCAM−1を標的とするマイクロバブルの接着は、HCDを与えたApoE−/−マウスにおいて他のいずれのグループよりも顕著に多く、大動脈全体に分布していた。対照的に、食事療法をしたApoE−/−マウスでのVCAM−1を標的とするマイクロバブルは、アテローム性動脈硬化障害の進行と一致した不規則に肥厚した大動脈の領域に優先的に接着する傾向が見られた。
VCAM−1発現の標的イメージング
グループ間では、左室内径短縮率、大動脈中の収縮期最大血流速度、または大動脈弓の中央部での大動脈直径について顕著な差異は無く(表1)、大動脈弓中の血行動態における系統的差異は無いことを示している。ほとんどの動物では拡張末期において大動脈弓中の流速はほぼゼロに達した。超高周波(30MHz)でのCEUの最高強度の投射では、標的を定めていないマイクロバブルの大動脈を通過中の軸方向分布は、大動脈弓の曲率の大小の両方で動脈壁に直接接する領域にまで及ぶことが示された(図10)。
グループ間では、左室内径短縮率、大動脈中の収縮期最大血流速度、または大動脈弓の中央部での大動脈直径について顕著な差異は無く(表1)、大動脈弓中の血行動態における系統的差異は無いことを示している。ほとんどの動物では拡張末期において大動脈弓中の流速はほぼゼロに達した。超高周波(30MHz)でのCEUの最高強度の投射では、標的を定めていないマイクロバブルの大動脈を通過中の軸方向分布は、大動脈弓の曲率の大小の両方で動脈壁に直接接する領域にまで及ぶことが示された(図10)。
HCDを与えた1匹のApoE−/−マウスの、B−モードの実例、パルス波ドップラー法、およびバックグラウンドを差し引いて色分けしたCEU映像を図11に示した。VCAM−1を標的とするマイクロバブルではシグナルの強い増強が観察されたが、コントロールでは見られなかった。標的CEUに用いた送受波器の音響的焦点(acoustic focus)および設定における最大負音圧のプロファイルを図12に図示した。スライス面(elevational plane)の様子によると、大動脈弓の総容量は、減衰する前に>120kPaの、および1.1dB/mm/MHzの係数を前提として減衰を補正した後に>96kPaの最大負音圧に曝されるとみられる(図12)(Teotico et al.(2001)IEEE Trans.Ultrason.Ferroelectr.Freq.Control 48:593〜601)。それらデータは、大動脈の全外周(図12Bの円)が、スライス面の有効検出プロファイルに適合するであろうことを示している。従って、スライス面の平均化によって、一見「面外(out of plane)」にある前または後壁に接着したマイクロバブルの検出が可能となり、図11中に見られる「内腔」の中心にターゲットして静止したマイクロバブルのシグナルの存在が説明できる。図13は、全グループのCEUデータの要約である。コントロールのマイクロバブルのシグナル増強は低く、グループ間で同様である。食事療法した野生型マウスでは、VCAM−1を標的とするマイクロバブルのシグナルは低く、コントロールのマイクロバブルに対するそれと同様であった。対照的に、他の全てのグループでは、コントロールと比較してVCAM−1を標的とするマイクロバブルのシグナルのより強い増強が見られた。VCAM−1を標的とするマイクロバブルのシグナル増強は、HCDを与えた野生型マウスから、食事療法を行ったApoE−/−マウス、HCDを与えたApoE−/−へと順番に増加した。
免疫組織化学
組織学的には、野生型マウス中では食事に関係なくプラーク発達の証拠は見られなかった。しかし免疫染色を行うと、HCDを与えた野生型マウスの大動脈の内腔内皮表面にVCAM−1発現が検出された(図14)。ApoE−/−マウス、特にHCDを与えた動物では、肥厚開始および内腔中へ突き出す大きな動脈硬化性プラークが見られた。ApoE−/−マウスでの免疫組織化学は、特にプラーク発達が重なり合う領域で、内皮上に高密度のVCAM−1発現を示した。血管内区画に限定されるマイクロバブルへ接近できない新生内膜単球(neointimal monocytes)のVCAM−1染色もまた見られた。新生内膜中の細胞のVCAM−1染色の程度は、内皮染色の程度と定性的に相関し、HCDを与えたApoE−/−マウスで、より強かった。
組織学的には、野生型マウス中では食事に関係なくプラーク発達の証拠は見られなかった。しかし免疫染色を行うと、HCDを与えた野生型マウスの大動脈の内腔内皮表面にVCAM−1発現が検出された(図14)。ApoE−/−マウス、特にHCDを与えた動物では、肥厚開始および内腔中へ突き出す大きな動脈硬化性プラークが見られた。ApoE−/−マウスでの免疫組織化学は、特にプラーク発達が重なり合う領域で、内皮上に高密度のVCAM−1発現を示した。血管内区画に限定されるマイクロバブルへ接近できない新生内膜単球(neointimal monocytes)のVCAM−1染色もまた見られた。新生内膜中の細胞のVCAM−1染色の程度は、内皮染色の程度と定性的に相関し、HCDを与えたApoE−/−マウスで、より強かった。
GPIbを含むマイクロバブル
マイクロバブルの調製
脂質で覆ったデカフルオロブタンのビオチン化マイクロバブルを、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン−40−ステアレート、およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミンPEG(2000)ビオチンのガス飽和水性懸濁液の超音波処理によって調製する。ビオチン化した可溶性形態のGPIb(グリコカリシン)、GPIbの非活性変異型(GPIbアルファのCys209−Cys248ジスルフィド・ループを除去)、または全体または活性部位フラグメント(例えば、GPIbと同様の結合特性を保持するフラグメント)のいずれかの組換えGPIbをストレプトアビジン結合を用いてマイクロバブル表面へ結合する(Lindner et al.(2000)Circulation 101:668〜675;Lindner et al.(2000)Circulation 102:531〜538;Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745〜2750)。この結合の結果、殻表面領域μm2当たり数千リガンドとなる。マイクロバブル表面上のGPIb密度は、蛍光標識した抗GPIb mAbsによるフローサイトメトリーによって測定する。流動チャンバ接着実験では、水性懸濁液へのDiIまたはDiOのいずれかの付加によってマイクロバブルを蛍光標識する。マイクロバブル濃度はエレクトロゾーンセンシング(Multisizer III,Beckman−Coulterによって測定する。標的を定めたマイクロバブルの平均直径は約2〜3μmとなる。
マイクロバブルの調製
脂質で覆ったデカフルオロブタンのビオチン化マイクロバブルを、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン−40−ステアレート、およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミンPEG(2000)ビオチンのガス飽和水性懸濁液の超音波処理によって調製する。ビオチン化した可溶性形態のGPIb(グリコカリシン)、GPIbの非活性変異型(GPIbアルファのCys209−Cys248ジスルフィド・ループを除去)、または全体または活性部位フラグメント(例えば、GPIbと同様の結合特性を保持するフラグメント)のいずれかの組換えGPIbをストレプトアビジン結合を用いてマイクロバブル表面へ結合する(Lindner et al.(2000)Circulation 101:668〜675;Lindner et al.(2000)Circulation 102:531〜538;Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745〜2750)。この結合の結果、殻表面領域μm2当たり数千リガンドとなる。マイクロバブル表面上のGPIb密度は、蛍光標識した抗GPIb mAbsによるフローサイトメトリーによって測定する。流動チャンバ接着実験では、水性懸濁液へのDiIまたはDiOのいずれかの付加によってマイクロバブルを蛍光標識する。マイクロバブル濃度はエレクトロゾーンセンシング(Multisizer III,Beckman−Coulterによって測定する。標的を定めたマイクロバブルの平均直径は約2〜3μmとなる。
流動チャンバ実験
vWF(10μg/mL)またはトロンビン(1U/ml)の溶液を培養皿上へ4℃にてオーバーナイトで放置して、次に変性BSAでブロックする。vWFの構造的な活性化は、ボトロセチン(2μg/mL)への10分間の曝露によって行う。調節したガスケット厚および2.5mmのチャネル幅の平行平板流動チャンバ(Glycotech)上に培養皿を設置する。ビデオ撮影のための高解像度CCDカメラ(C2400,Hamamatsu Photonics)を取り付けた顕微鏡(Axioskop2−FS,Carl Zeiss Inc.)上に流動チャンバを裏返しに設置する。GPIb−標識した、またはコントロールのマイクロバブル(3×106ml−1)の懸濁液は、調節可能な取水ポンプで流動チャンバを通して汲み上げる。プレートへ接着したマイクロバブルの数は、0.5〜12.0ダイン/cm2の剪断レートを生じる流速での5分間の後に、20の光場(0.5mm2)について測定する。GPIb−マイクロバブルのvWFまたはトロンビンへの結合の反応速度論は、剪断レートの範囲内でGPIb−マイクロバブルが接着し続ける率およびローリング速度の記録によって計算する。
vWF(10μg/mL)またはトロンビン(1U/ml)の溶液を培養皿上へ4℃にてオーバーナイトで放置して、次に変性BSAでブロックする。vWFの構造的な活性化は、ボトロセチン(2μg/mL)への10分間の曝露によって行う。調節したガスケット厚および2.5mmのチャネル幅の平行平板流動チャンバ(Glycotech)上に培養皿を設置する。ビデオ撮影のための高解像度CCDカメラ(C2400,Hamamatsu Photonics)を取り付けた顕微鏡(Axioskop2−FS,Carl Zeiss Inc.)上に流動チャンバを裏返しに設置する。GPIb−標識した、またはコントロールのマイクロバブル(3×106ml−1)の懸濁液は、調節可能な取水ポンプで流動チャンバを通して汲み上げる。プレートへ接着したマイクロバブルの数は、0.5〜12.0ダイン/cm2の剪断レートを生じる流速での5分間の後に、20の光場(0.5mm2)について測定する。GPIb−マイクロバブルのvWFまたはトロンビンへの結合の反応速度論は、剪断レートの範囲内でGPIb−マイクロバブルが接着し続ける率およびローリング速度の記録によって計算する。
生体内顕微鏡検査実験
標的を定めたまたはコントロールのマイクロバブルの微小循環中での接着を、生体内顕微鏡検査で評価する。麻酔したマウスの精巣挙筋を体外に露出して、等温緩衝表面灌流の間、特注の顕微鏡ステージへ固定する。微小循環の生体内顕微鏡検査(Axioskop2−FS,Carl Zeiss Inc.)を行う。ステージ・マイクロマニピュレーター(Narishige;ニューヨーク州East Meadow)で位置を定めたガラス・マイクロピペットを用いて30〜50μmの細動脈または細静脈を穿刺する(Christiansen et al.(2002)Circulation 105:1764〜1767)。血栓形成の1分後に、DiI−標識GPIb−またはDiO−標識コントロール・マイクロバブルを静脈内投与する(それぞれ5×107個)。接着したマイクロバブル数は二重蛍光落射照射(dual−fluorescent epi−illumination)によって測定する。血管セグメントの流動および剪断レートは、調整したビデオキャリパーによる血管直径およびデュアルスリット・フォトダイオードによる中心線速度のデータから決定する。各動物ごとに20分の間隔を空けて、3回までの独立した血管穿刺を行う。
標的を定めたまたはコントロールのマイクロバブルの微小循環中での接着を、生体内顕微鏡検査で評価する。麻酔したマウスの精巣挙筋を体外に露出して、等温緩衝表面灌流の間、特注の顕微鏡ステージへ固定する。微小循環の生体内顕微鏡検査(Axioskop2−FS,Carl Zeiss Inc.)を行う。ステージ・マイクロマニピュレーター(Narishige;ニューヨーク州East Meadow)で位置を定めたガラス・マイクロピペットを用いて30〜50μmの細動脈または細静脈を穿刺する(Christiansen et al.(2002)Circulation 105:1764〜1767)。血栓形成の1分後に、DiI−標識GPIb−またはDiO−標識コントロール・マイクロバブルを静脈内投与する(それぞれ5×107個)。接着したマイクロバブル数は二重蛍光落射照射(dual−fluorescent epi−illumination)によって測定する。血管セグメントの流動および剪断レートは、調整したビデオキャリパーによる血管直径およびデュアルスリット・フォトダイオードによる中心線速度のデータから決定する。各動物ごとに20分の間隔を空けて、3回までの独立した血管穿刺を行う。
血管血栓のイメージング
ポリフィラメント5−0シルク縫合糸をヒトトロンビン(5μg/mL)へ浸す。麻酔したラットでは、超音波生体顕微鏡検査/マイクロインジェクション・システム(Vevo 770,VisualSonics,Inc)でガイドした23g針を通して左室内へ左室心尖部を通して経皮的に糸を設置する。縫合糸の外側部分は定位置に固定するよう結んで切り取る。縫合糸設置の15分後に開始して、左心室(left ventricular:LV)腔の標的CEUイメージング(7MHz CPS non−imaging,Siemens Ultrasound)を、コントロールまたはGPIb−マイクロバブルのランダムな順序での静脈注射の10分後に行う。1時間後にイメージングを繰り返して行う。縫合した心臓の免疫組織化学を、フィブリン、血小板(αIIbβ3染色)、vWFおよびトロンビンの1次染色によって行う。
ポリフィラメント5−0シルク縫合糸をヒトトロンビン(5μg/mL)へ浸す。麻酔したラットでは、超音波生体顕微鏡検査/マイクロインジェクション・システム(Vevo 770,VisualSonics,Inc)でガイドした23g針を通して左室内へ左室心尖部を通して経皮的に糸を設置する。縫合糸の外側部分は定位置に固定するよう結んで切り取る。縫合糸設置の15分後に開始して、左心室(left ventricular:LV)腔の標的CEUイメージング(7MHz CPS non−imaging,Siemens Ultrasound)を、コントロールまたはGPIb−マイクロバブルのランダムな順序での静脈注射の10分後に行う。1時間後にイメージングを繰り返して行う。縫合した心臓の免疫組織化学を、フィブリン、血小板(αIIbβ3染色)、vWFおよびトロンビンの1次染色によって行う。
アテローム性動脈硬化における血栓形成促進性の内皮表現型のイメージング
イメージングは、LDL受容体およびマウスApoB100をApoB48へ変換するApoBec編集酵素の両方のホモ接合体欠失を有する18〜20週齢DKOマウス;またはコントロールの野生型C57B1/6マウスにて行う。DKOマウスは、年齢依存的であり微小血栓症の病変を招く可能性のある悪性のアテローム性動脈硬化症発達によって特徴付けられる。標的CEUは、標的を定めたまたはコントロールのマイクロバブルの10分後に大動脈弓に対して行う。病変の発達と標的CEUシグナルとの間の相関は、大動脈弓の高(40MHz)イメージングおよび病変部位のマッソン染色を用いて作成した。vWF、トロンビン、VCAM−1、αIIbβ3(血小板)、および組織因子に対して免疫組織化学を実施する。
イメージングは、LDL受容体およびマウスApoB100をApoB48へ変換するApoBec編集酵素の両方のホモ接合体欠失を有する18〜20週齢DKOマウス;またはコントロールの野生型C57B1/6マウスにて行う。DKOマウスは、年齢依存的であり微小血栓症の病変を招く可能性のある悪性のアテローム性動脈硬化症発達によって特徴付けられる。標的CEUは、標的を定めたまたはコントロールのマイクロバブルの10分後に大動脈弓に対して行う。病変の発達と標的CEUシグナルとの間の相関は、大動脈弓の高(40MHz)イメージングおよび病変部位のマッソン染色を用いて作成した。vWF、トロンビン、VCAM−1、αIIbβ3(血小板)、および組織因子に対して免疫組織化学を実施する。
データの調整および解析
流動チャンバ実験の際、別個に標識したコントロールおよびGPIb−マイクロバブルの同時投与によって、一対比較が可能となる。同様に、生体内顕微鏡検査実験における同時投与によって、対解析が可能となる。両方に対するデータは剪断レートに従って階層化する。適切なコントロール・データは、vWFまたはトロンビンを含まない流動チャンバ、または微小血管穿刺をしない微細血管中の評価によって提供する。心室血栓のデータ・イメージングは、標的を定めたものおよびコントロールのマイクロバブルの両方の投与前および後のビデオ強度を用いて、対解析(両側)にて行う。血管区画内のあらゆる異物による血栓形成の可能性から、それらの状況でのネガティブコントロールの糸は不可能である。アテローム性動脈硬化(DKO)コントロールの非アテローム性動脈硬化マウス中の、上行大動脈および近位大動脈弓のビデオ強度を、標的を定めたものおよび定めていない薬剤の両方について比較する。全ての実験について、注射の順番はランダム化する。
流動チャンバ実験の際、別個に標識したコントロールおよびGPIb−マイクロバブルの同時投与によって、一対比較が可能となる。同様に、生体内顕微鏡検査実験における同時投与によって、対解析が可能となる。両方に対するデータは剪断レートに従って階層化する。適切なコントロール・データは、vWFまたはトロンビンを含まない流動チャンバ、または微小血管穿刺をしない微細血管中の評価によって提供する。心室血栓のデータ・イメージングは、標的を定めたものおよびコントロールのマイクロバブルの両方の投与前および後のビデオ強度を用いて、対解析(両側)にて行う。血管区画内のあらゆる異物による血栓形成の可能性から、それらの状況でのネガティブコントロールの糸は不可能である。アテローム性動脈硬化(DKO)コントロールの非アテローム性動脈硬化マウス中の、上行大動脈および近位大動脈弓のビデオ強度を、標的を定めたものおよび定めていない薬剤の両方について比較する。全ての実験について、注射の順番はランダム化する。
インビボCEUイメージング実験
インビボでのVWF発現の空間的局在は、モデル動物であるTTPに生理学的に関連するADAMTS−13を欠損したマウス中へのGPIb−マイクロバブルの注射などによる、GPIb−マイクロバブルの標的CEUイメージングによって評価した(Chauhan et al.(2006)J.Exp.Med.,203:767〜776;Motto et al.(2005)J.Clin.Invest.,115:2752〜2761)。
インビボでのVWF発現の空間的局在は、モデル動物であるTTPに生理学的に関連するADAMTS−13を欠損したマウス中へのGPIb−マイクロバブルの注射などによる、GPIb−マイクロバブルの標的CEUイメージングによって評価した(Chauhan et al.(2006)J.Exp.Med.,203:767〜776;Motto et al.(2005)J.Clin.Invest.,115:2752〜2761)。
VWFを標的とするまたはコントロールのマイクロバブルの微小循環中での接着は、生体内顕微鏡検査によって評価する。麻酔したマウスの腸間膜を体外へ露出して、等温緩衝表面灌流の間、特注の顕微鏡ステージへ固定する(Lindner et al.(2000)Circulation 102:531〜538;Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745〜2750)。微小循環の生体内顕微鏡検査(Axioskop2−FS,Carl Zeiss Inc.)は、以前に記述されたとおりに実施する(Lindner et al.(2000)Circulation 101:668〜675;Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745〜2750)。簡単には、VWF分泌を誘導するためのカルシウムイオノフォアA23187(バイベル・パラーデ小体の分泌促進剤)の表面灌流の前に、基準を確立するために30〜50μmの細静脈を3分間撮影する。DiI−標識GPIb−またはDiO−標識コントロール・マイクロバブルを静脈内投与する(それぞれ5×107個)。蛍光標識した精製血小板(calcein AM)を尾部静脈へ注入する。接着したマイクロバブルおよび血小板の数は二重蛍光落射照射によって測定する。血管セグメントの流動および剪断レートは、ビデオキャリパーで測定した血管直径およびデュアルスリット・フォトダイオードで測定した中心線速度のデータから決定する。
標的CEUについては、滞留したマイクロバブルのみのシグナルを検出するための新規な映像化プロトコルが開発された(Lindner,J.R.(2004)Nat.Rev.Drug Discov.,3:527〜532;Lindner et al.(2000)Circulation 101:668〜675;Lindner et al.(2000)Circulation 102:531〜538;Lindner et al.(2000)Circulation 102:2745〜2750)。VWFを標的とするまたはコントロールのマイクロバブル(1×106)をマウスへ注射する。用量は、標的組織中で最適な信号対雑音比を、その一方で正常組織中では信号強度が基本的に雑音レベルを生成する。CEUは大動脈弓の長軸で行う。音響的焦点を大動脈弓のレベル(1cm)に設定して、高位右側前胸アプローチ(high right anterior thoracic approach)を用いる。基準のグレースケール映像は、広帯域(5〜12MHz)の基本的映像を用いて得る。カルシウムイオノフォアA23187の表面灌流後、およびVWFを標的とするまたはコントロールのマイクロバブルの注射後に、マルチパルスのハーモニック・ドップラー(Angio)モード10分間を用いて標的CEUを行う。イメージングには20秒間隔のパルスを用い、続いてマイクロバブルを破壊するためにパルス間隔を1秒まで増加する。大動脈弓の(40MHz)のイメージングおよび病変部位のマッソン染色を用いて、VWF−曝露を標的CEUシグナルと相関させる。内皮表面の免疫組織化学は、VWF、フィブリン、および血小板(αIIbβ3染色)に対する1次染色によって行う。
生体内顕微鏡検査のためのマイクロバブルの同時投与によって対解析を行う。データは剪断レートに従って階層化する。適切なコントロール・データは、A23187による処理前の微細血管での評価によって提供する。心室血栓の映像データは、標的を定めたものおよびコントロールのマイクロバブルの両方の投与前および後のCEU強度を用いて対解析(両側)で比較する。ADAMTS−13+/+マウスの上行大動脈および近位大動脈弓のCEU−強度は、VWFを標的とするものおよびコントロールの薬剤の両方について比較する。全ての実験について、注射の順番はランダム化する。
実験
GPIb−標識またはBSA−標識マイクロバブル(コントロール)の懸濁液を、vWFで被覆した流動チャンバを通して汲み出した。図15に見られるとおり、2ダイン/cm2の剪断下では、GPIb標識したマイクロバブルはvFWへ接着し、BSAは接着しなかった。
GPIb−標識またはBSA−標識マイクロバブル(コントロール)の懸濁液を、vWFで被覆した流動チャンバを通して汲み出した。図15に見られるとおり、2ダイン/cm2の剪断下では、GPIb標識したマイクロバブルはvFWへ接着し、BSAは接着しなかった。
GPIb−標識マイクロバブルのインビボでの血餅への接着能もまた測定した。図16に見られるとおり、GPIbアルファ結合マイクロバブルは、ラット左心室中の血餅に特異的に接着した。MBGPIbバブルの大部分を分散させるために、映像は注射の約5分後に撮影した。
本発明の特定の好ましい実施形態を記述し、以上に具体的に例示したものの、それは本発明がそうした実施形態に限定されることを意図したものではない。以下の請求項に説明する本発明の範囲および精神から逸脱することなく、そこへ様々な修正を行うことができる。
Claims (17)
- 組成物であって、
a)糖タンパク質Ib(glycoprotein Ib:GPIb)を含むマイクロバブルと、
b)担体と
を有する組成物。 - 被験者における循環器疾患の検出方法であって、
a)GPIbを含むマイクロバブルを前記被験者に投与する工程と、
b)前記マイクロバブルの血管滞留を測定する工程と
を有し、
循環器疾患を有しないコントロール被験者におけるマイクロバブル滞留と比較した前記被験者におけるマイクロバブル滞留の増加が、前記被験者の循環器疾患の存在を示唆するものである
循環器疾患の検出方法。 - 請求項2記載の方法において、工程b)は造影剤増強超音波法によって実施するものである。
- 請求項2記載の方法において、前記循環器疾患は、血栓症、血栓形成促進性の環境、およびアテローム性動脈硬化から成る群から選択されるものである。
- 請求項4記載の方法において、前記循環器疾患は血栓性血小板減少性紫斑病である。
- 被験者における循環器疾患の検出方法であって、
a)VCAM−1に特異的な標的リガンドを含むマイクロバブルを前記被験者に投与する工程と、
b)前記マイクロバブルの血管滞留を測定する工程と
を有し、
循環器疾患を有しないコントロール被験者におけるマイクロバブル滞留と比較した前記被験者におけるマイクロバブル滞留の増加が、前記被験者の循環器疾患の存在を示唆するものである
循環器疾患の検出方法。 - 請求項6記載の方法において、工程b)は造影剤増強超音波法によって実施するものである。
- 請求項6記載の方法において、前記VCAM−1に特異的な標的リガンドは抗体または抗体フラグメントである。
- 請求項6記載の方法において、前記循環器疾患は、アテローム性動脈硬化、心筋障害、虚血を介した血管新生、および左室虚血から成る群から選択されるものである。
- 被験者における循環器疾患の検出方法であって、
a)P−セレクチンに特異的な標的リガンドを含むマイクロバブルを前記被験者に投与する工程と、
b)前記マイクロバブルの血管滞留を測定する工程と
を有し、
循環器疾患を有しないコントロール被験者におけるマイクロバブル滞留と比較した前記被験者におけるマイクロバブル滞留の増加が、前記被験者の循環器疾患の存在を示唆するものである
循環器疾患の検出方法。 - 請求項10記載の方法において、工程b)は造影剤増強超音波法によって実施するものである。
- 請求項10記載の方法において、前記P−セレクチンに特異的な標的リガンドは、二量体化ドメインへ結合したPSGL−1を含むものである。
- 請求項12記載の方法において、前記二量体化ドメインはFcドメインである。
- 請求項10記載の方法において、前記循環器疾患は、アテローム性動脈硬化、炎症、および虚血から成る群から選択されるものである。
- 組成物であって、
a)標的リガンドを含むマイクロバブルと、
b)担体と
を有し、
前記標的リガンドは、VCAM−1に特異的な標的リガンド、またはP−セレクチンに特異的な標的リガンドリガンドである
前記組成物。 - 請求項15記載の組成物において、前記P−セレクチンに特異的な標的リガンドは、二量体化ドメインへ結合したPSGL−1を含むものである。
- 請求項15記載の組成物において、前記VCAM−1に特異的な標的リガンドは、抗体または抗体フラグメントである。
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