本発明の例示的実施形態の以下の詳細な説明はその一部を形成する添付図面を参照し、添付図面においては、本発明を実施できる例示的実施形態を例として示す。これらの例示的実施形態は当業者が本発明を実施するのに十分な程度に詳細に説明するが、他の実施形態を実現することが可能であり、また、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対する種々の変更を行うことが可能であることを理解すべきである。したがって、本発明の実施形態の以下の一層詳細な説明は、図1ないし7に示すように、特許請求の範囲に記載されているように、本発明の範囲を限定するように意図するものではなく、単なる例示の目的で提示されるものであり、発明の作動の最良の形態を明らかにするために、本発明の特質および特徴を非限定的に記述して、当業者が本発明を十分に実施できるようにすることを意図するものである。したがって、本発明の範囲は添付する特許請求の範囲によってのみ規定されるべきである。
以下に記す本発明の詳細な説明と例示的実施形態は、添付図面を参照することにより最もよく理解されるはずであり、図面において、本発明の構成要素と特質は全体を通して符号で示される。
本発明は、迅速点火外部圧縮エンジンからエネルギーを発生させ、そのエネルギーを、独自の迅速応答動力変換システムの手段を通して利用可能なエネルギーまたは動力に変換し、それによって高エネルギー帯域幅で動力装置を運転するための方法とシステムについて説明する。迅速点火外部圧縮エンジンは、燃焼室内に噴射される予圧縮された燃料/酸化剤混合物の量を制御することにより、連続的に、あるいはバーストまたはパルスを選択して運転することが可能な、高動力のエネルギー源である。
ここで図1を参照すると、本発明の1つの例示的実施形態による迅速点火迅速応答動力変換システムの簡略化された概略図が示されている。具体的に図1は、迅速点火外部圧縮および燃焼エンジン14、迅速応答構成要素24、および動力変換装置16を備える、迅速点火迅速応答動力変換システム10の1つの例示的実施形態を示す。外部圧縮エンジンは、本明細書で説明される迅速応答動力変換システムと共に運転するように設計された、独自の2行程の燃焼/排気サイクルエンジンを備える。別の形式のエンジンについては、上記で特定された本発明者による先の特許出願に記述されている。
迅速点火外部圧縮エンジンは、2行程の燃焼/排気サイクルエンジンであって、迅速応答構成要素24を駆動するような燃焼を起こすように、自在に運転され得るものである。「迅速点火」とは、非常に短い燃焼サイクルで迅速応答構成要素を選択的にかつ連続的に駆動する、外部圧縮エンジンの能力を意味するものであり、吸入装置30を使用することによって、燃焼室20の頂端部22に近接するエンジンの燃焼部分26内への、予圧縮された燃料/酸化剤混合物34の噴射を制御する。
「外部圧縮」とは、エンジンの外部の場所で、燃料および酸化剤が加圧燃焼性流体になるまで予混合および予圧縮されることを意味しており、従来の4サイクルICエンジンの吸入および圧縮行程を削除し、エンジンを燃焼および排気行程を実行するために必要とされる構成要素のみに削減することを目的とする。換言すれば本発明の迅速点火圧縮エンジンは、燃料/酸化剤混合物がいったん燃焼室に導入されれば、それを追加圧縮することは不要である。燃料/酸化剤の混合物34は、混合物が燃焼室20内へ向かって吸入装置30を通過するときの微小な圧力降下に対応できるように、燃焼室内における最大予点火圧力以上の圧力に外部で予圧縮され得る。別の実施形態において、燃料および酸化剤は別個に圧縮され吸入装置30内で一緒に混合されるか、または両方が加圧されて個別に燃焼室20内に噴射され得る。
予圧縮された燃料および酸化剤の混合、およびその混合物の燃焼室内への導入の方法にかかわらず、本発明のエンジンは、燃料/酸化剤混合物がいったん燃焼室内に入れば、さらにそれを圧縮したり、それに対して仕事をすることはない。代わりに、予圧縮された燃料/酸化剤混合物の圧力は燃焼を促進するために適切であって、燃焼室内でさらに圧縮する必要がなく、エンジンは、混合物が燃焼する間に発生したエネルギーを出力するように構成される。
本発明の例示的実施形態において、迅速応答構成要素24はパラサイトピストン70を備えることができ、それは本明細書においてエネルギー抽出ピストンとも称される。「パラサイト」は、そのピストンが主にシステムからエネルギーを抽出するように構成されていることを意味する。従来の内燃(「IC」)エンジン内のピストンが、圧縮行程の間に燃料/酸化剤混合物を圧縮することによりシステムにエネルギーを与えること、および燃焼行程の間にシステムからエネルギーを受け取ることの両方を行うのとは異なり、燃料/酸化剤混合物は外部圧縮エンジンの外部にある分離された装置内で予圧縮されるので、本発明のパラサイトピストンは、燃焼行程の間にエネルギーを受け取るのみである。パラサイトピストンはまた、従来の内部圧縮エンジン内のピストンよりもずっと小さい慣性を持つように構成され、燃焼サイクルの間に発生された力に対してピストンがより迅速に応答できるようにする。
図1に示す例示的な迅速点火外部圧縮エンジン14は、吸入弁144によって吸入装置30から分離された単一の燃焼室20を備える。燃焼室は、迅速応答構成要素24、すなわち本実施形態ではパラサイトピストン70を密封する。パラサイトピストン70は、燃焼室の頂端部22に近接して位置する密封体積である燃焼部分26に隣接しまたは並置された、面またはエネルギー受取り部分78を含む。パラサイトピストン70から延伸してピストンロッド74があって、動力変換装置16のエネルギー移送構成要素82に連結されており、それは、普通は仕事を行いまたは実行するように構成された、動力装置として一般に知られている。不活動位置において、パラサイトピストン70のエネルギー受取り部分78は、実質的に封止され、引き込まれた位置でリップ(図示せず)またはその他の適切な封止手段に向けて偏倚されることが可能であり、燃料/酸化剤混合物34を燃焼室内に導入する前に、パラサイトピストンが偏倚された位置に支持されるように、ばね、または蓄圧器などの他の適切な付勢力によって偏倚される。
迅速点火外部圧縮エンジン14が始動する前に、予圧縮された燃料/酸化剤混合物34が、燃料/酸化剤供給バス124を通して吸入装置30に最初に供給される。燃料/酸化剤混合物は制御室128満たすが、吸入室140および燃焼室20に流入することは、燃料制御弁136によって防止される。運転する前に、吸入弁144は、偏倚用構成要素148によって開位置に偏倚されているので、いったん制御弁が開になると、予圧縮された燃料/酸化剤混合物が制御室から吸入室を通って燃焼室に入るように、自由に流れることが可能になる。図示された態様において、偏倚用構成要素は機械的装置であるが、別の態様では、それは電気的な偏倚用構成要素、または能動的に制御される弁アクチュエータであってもよい。
迅速応答外部圧縮エンジン14を運転するために、燃料制御器50は燃料制御アクチュエータ54に信号を送り制御弁136を開にする。図示された態様において燃料制御弁は電気的制御弁であるが、別の態様においてそれは機械的制御弁であってよい。予圧縮された燃料/酸化剤混合物34は、吸入室140を通り燃焼室20の頂端部22に流入し、燃焼部分26を満たし始める。燃焼部分が予圧縮されたガスで満たされると、エネルギー受取り面78に力が加えられ、それがパラサイトピストン70を燃焼室の頂端部から離れる方向に直線的に動かす。この動きは、ピストン変位センサ172を介して点火制御器112によって監視される。点火制御器が、予圧縮された燃料/酸化剤混合物の規定の充填量に相当する規定された位置にパラサイトピストンが動いたことを検知すると、制御器は点火源110を用いて燃焼性流体に点火する。燃料/酸化剤混合物がさらに空気/燃料混合物から成る場合は、点火源はスパーク点火型であってよい。しかしそれは、当業者に知られた、燃焼性流体内で燃焼を開始できる、任意の種類の点火源を備えてもよい。
燃料/酸化剤の充填量は通常、最大効率に最適化されているが、点火制御器は充填量を連続的に変化させることができる。より大きな動力が要求されるときには、パラサイトピストンが燃焼室の頂端部から遠く離れた位置まで移動したことを、変位センサが検知するまで点火を遅らせることにより、より多くの充填量の予圧縮された燃料/酸化剤混合物をエンジン内へ導入することが可能である。
さらに別の実施形態においては、パラサイトピストン70の変位によって、充填された燃料/酸化剤の点火を起こさなくてもよい。代わりに、吸入装置30内の流量計(図示せず)で測定し、または制御器で時間を測ることによる、燃焼室20に流入した燃料/酸化剤混合物34の体積または量に基づいて、点火を開始することができる。圧力検知装置(図示せず)によって測定された燃焼室20内の予燃焼圧力に基づいて、点火を開始することも可能である。この場合、パラサイトピストン70を一時的に燃焼室20の頂端部22に固定することが可能であり、それによって燃焼部分26が予圧縮された燃料/酸化剤混合物で充填され始めるときに、燃焼領域26の体積を一定に維持して圧力を増加させる。
燃焼すると、パラサイトピストン70は膨張する燃焼ガスによって、急速に最大速度へ加速される。外部圧縮エンジンによって発生された力は、動力変換装置16のエネルギー移送構成要素82によって加えられた対抗荷重による抗力を受け、燃焼で発生したエネルギーが抽出され利用可能な機械的作用に変換される。エネルギーが抽出されると、パラサイトピストンの速度は零に向かって低下する。速度の低下は、ピストン速度センサ176を介して排気弁制御器164で監視される。パラサイトピストンの速度が零に近づくと、排気弁制御器が排気弁アクチュエータ168に信号を送って排気弁156を開かせ、それによって燃焼ガス42が排気ポート160を通って逃れ出るようにする。これはパラサイトピストンをそのスタート地点に直ちに引き戻す効果がある。図示された態様において、排気弁は電気制御弁であるが、別の態様においてそれは機械的制御弁であってよい。また図示された態様において、排気ポートは燃焼室20の頂端部22内に配置されているが、別の態様では、1つまたは複数の排気ポートが燃焼室の側壁46内に配置されてよい。パラサイトピストンが燃焼室の頂端部近くに戻りそのスタート地点に達すると、その速度は再び零となり排気弁制御器は排気弁を閉にする。
燃料/酸化剤混合物の燃焼による圧力上昇は、偏倚用構成要素148によって発生された力を克服するのに十分であり、吸入弁144を押して閉じ、本明細書において動力行程とも呼ばれる燃焼行程の間、燃焼室20の頂端部22から吸入室140を封止する。燃焼室内の高い圧力は、排気行程の終点でほぼすべての排気ガスが排出されるまで、吸入弁を閉に保持するために十分高く維持され、すべて排出されたとき偏倚用構成要素はスプリングバックによって吸入弁を開く。燃料制御器50が制御弁136を開に保持している間に、吸入弁が再度開くと、予圧縮された燃料/酸化剤混合物34は直ちに燃焼室の頂端部内に流入し、燃焼工程はそれ自体を自動的に繰り返す。
本発明の1つの重要な態様は、パラサイトピストン70が、当業者に知られている従来のICエンジンに使用されるピストンの慣性よりも実質的に小さい慣性を有することである。このような慣性の小さいパラサイトピストンは燃焼に対する迅速応答を促進し、パラサイトピストンは燃焼室の長手方向軸に沿った非常に速い直線運動86をするようになる。パラサイトピストンの慣性は従来のICエンジンのピストンの慣性よりずっと小さいので、パラサイトピストンは、それを使わない場合に従来のICエンジンに固有の非効率としてエネルギーが失われる前に、燃焼によって生成されたエネルギーの大量の部分を効率的に抽出できる。この実施形態において、パラサイトピストンのエネルギー受取り部分78は、燃焼室20の頂端部22に近接する燃焼部分26内で起こる燃焼に反応するような寸法とされ、位置決めされ、構成され、それによって、パラサイトピストンに直線運動を伝え、次いで動力変換装置16のエネルギー移送構成要素82に機械的作用を伝える。
図2は、図1に示す迅速点火迅速応答動力変換システム10の実施形態を、さらに広い範囲で示すものである。この拡大図において迅速点火外部圧縮エンジン14は、燃料またはオイル/燃料混合物を燃料源116から受け取る遠隔圧縮機120に運転可能に結合される。ここに示された実施形態において、遠隔圧縮機は、燃料またはオイル/燃料混合物を空気などの酸化剤と混合し、それらを一緒に圧縮して、予圧縮された燃料/酸化剤混合物を生成し、それは燃料/酸化剤バス124を通して吸入装置30に伝えられる。したがって、燃料/酸化剤バスは遠隔圧縮機を外部圧縮エンジンに流体的に連結する。しかし、同様に有効な本発明の別の実施形態において、吸入装置自体の中で、圧縮機下流の燃料/酸化剤バス内に燃料を噴射し得ること、または、酸化剤と分離して、燃料を直接燃焼室内に噴射または微粒化し得ることも考えられる。
図2にさらに示されているように、制御器50(図示せず)を介して燃料制御弁136が開にされるまで、予圧縮された燃料/酸化剤混合物34は燃料制御室内に保持される。燃料制御弁が開にされた後、予圧縮された燃料/酸化剤混合物34は、吸入室140を通り、吸入弁144に沿って、燃焼室20の頂端部22に近接して配置された燃焼部分26に流入する。吸入弁は通常、偏倚用構成要素148によって開位置に偏倚されている。図示された態様において、偏倚用構成要素148は機械的装置であるが、別の態様では、それは電気的な偏倚用構成要素、または能動的に制御される弁アクチュエータであってもよい。遠隔圧縮機120は、外部圧縮エンジンを運転する目的のために、圧縮された燃料/酸化剤混合物を燃焼室に供給可能な、当技術で知られている任意の種類の圧縮システムであってよいことにも留意すべきである。
燃焼室20の燃焼部分26は、側壁46、頂端部22、およびパラサイトピストン70のエネルギー受取り側78で画定される。予圧縮された燃料/酸化剤混合物によって加えられた圧力に応じて、パラサイトピストンが規定された直線距離を移動した後、それが変位センサ172で測定され点火制御器112で監視されると、点火源110を使用して燃焼を引き起こし、燃焼が開始される。予圧縮された燃料/酸化剤混合物、または加圧燃焼性流体の充填量は、点火制御器をプログラムすることにより、迅速点火迅速応答動力変換システム10の所望する動力生成に従って変えることができる。
図3aは、外部圧縮エンジン14によって作動され得る、動力変換装置16の1つの例示的な形式を示すものである。この装置の中でパラサイトピストンは、動力装置194のエネルギー移送構成要素82に直接連結されておらず、構造的に独立している。パラサイトピストン70は、動的質量構造体190と相互作用することによって、動力装置194を作動させるように働く。具体的にはパラサイトピストンは、ピストンロッド74に連結され、またはピストンロッドで形成された、インパクトメンバ188を含む。インパクトメンバは本質的にエネルギー移送構成要素であり、いったん燃焼の力によってパラサイトピストンが移動させられると、動的質量構造体に衝突し、動的質量構造体はパラサイトピストン内に蓄えられた動的エネルギーを抽出する。動的質量構造体は、パラサイトピストンおよび動力装置の両方から分離しており、独立に働く。衝突によって動的質量構造体は与えられた速度で所定の距離を変位させられ、そこで動力装置のエネルギー移送構成要素に衝突する。衝突すると動的質量構造体は、その蓄積された運動エネルギーをエネルギー移送構成要素内に移送するようにされ、それは運動エネルギーを動力装置194を運転するために使用される動力に変換する。この工程が外部圧縮エンジンの各サイクルで繰り返される。
動的質量構造体による動力変換システムの概念は、2005年12月1日に出願され「動的質量移送迅速動力変換装置」と題された米国特許出願第11/293,621号明細書にさらに十分に記載されており、そのすべては参照により本明細書に組み込まれる。
図3bは動力変換装置16の別の例示的実施形態を示す。パラサイトピストン70がエネルギー移送構成要素に直接連結されていない図3aの実施形態とは異なり、図3bの実施形態は、動力装置194のエネルギー移送構成要素82に直接連結されているピストンロッド74を有するパラサイトピストンを備える。このさらに用途の広いケースにおいて、燃焼によるパラサイトピストンの変位は、動力装置を直接推進するように機能する。さらに、パラサイトピストンは、動力装置によって、燃焼室20の頂端部22に向けて偏倚されることが好ましい。
図4は、外部圧縮エンジンからのエネルギーを利用可能なエネルギーまたは仕事または動力に変換するために使用される、エネルギー移送構成要素82の様々な実施形態を示す。エネルギー移送構成要素82は任意の数のエネルギー変換装置または動力装置194を含むことができるか、および/またはこれらの装置に結合できる。特にエネルギー移送構成要素82は、パラサイトピストン70または動的質量構造体190の直線運動、およびその中に貯蔵された運動エネルギーを、液圧エネルギー、空気圧エネルギー、電気エネルギー、および/または機械エネルギーなどの様々な形の利用可能なエネルギーに移送するように構成される。直線運動および運動エネルギーをこのような種々の形式の利用可能なエネルギーへ移送することは、当業界で周知である。
当業界で周知のように例えば液圧システム200において、液圧室202内の液圧ピストン204のようなエネルギー移送構成要素の軸方向直線運動は、パラサイトピストンロッド74または動的質量構造体190を介して、液圧および流れ206を提供できる。同様に空気圧システム210において、パラサイトピストンロッド74または動的質量構造体190は、空気圧室212内の空気圧ピストン214の形式のエネルギー移送構成要素を直線運動させることが可能であり、それによって空気圧およびガス流216の形式の出力エネルギーを提供することができる。
他のシステムは電気システム220および機械システム230を含むことができる。当業界で周知のように、電気システム220において、パラサイトピストンロッド74または動的質量構造体190の直線運動は、その中に包まれたコイルを備えるアーマチュア224を有する、磁気ピストン222の形式をしたエネルギー移送構成要素に相互接続することができ、この場合、磁気ピストンはコイル内で往復運動し、電気エネルギー出力226を発生させる。さらに、機械システム230において、パラサイトピストンロッド74または動的質量構造体190からの直線運動は、回転エネルギー236を供給するためにクランクシャフト234の歯238を押圧するように構成された、爪232の形で存在するエネルギー移送構成要素を介して、回転エネルギー236に移送することができる。さらにパラサイトピストンロッド74は、クランクシャフト234に直接相互連結され、回転エネルギー236を提供することができる。エネルギーを変換する他の方法は当業者にとって明らかであろう。例えば、本発明のエネルギー移送構成要素82で、回転発電機、歯車駆動システム、およびベルト駆動システムを利用することができる。
図5は、迅速点火外部圧縮エンジンを運転しているときの、燃焼室およびパラサイトピストンの物理的応答特性を、時間、温度、および変位に関してグラフ的に例示するものである。具体的には線300は、パラサイトピストンの直線的変位に対応する、予圧縮された燃料/酸化剤混合物34の燃焼、熱損失、ならびに膨張および排気ガス42の排出のそれぞれによる、室温度の上昇および下降を相対的に表示するものである。線310は、燃焼室内でパラサイトピストン70が動くときの変位を示すものである。
図1および5を同時に参照すると、非運転状態(t1)で外部圧縮エンジン14は初期化され、パラサイトピストン70は吸入ポート152に最も近く偏倚された位置に静置し、吸入弁144は開位置に偏倚される。事象320の時点で、燃料/酸化剤制御弁136が開き、予圧縮された燃料/酸化剤混合物34が、吸入室140を通り、開いた吸入弁を過ぎて、燃焼室20の頂端部22に近接する燃焼部分26内に流入する。燃焼部分が予圧縮された燃料/酸化剤混合物で満たされると、燃焼室内の温度は少し上昇し始め、パラサイトピストンに加わる圧力がピストンをその当初位置から位置d1に向けて少し変位させる。パラサイトピストンが位置d1に達すると、事象324で点火制御器112が点火源を作動する。最適設計された燃焼(A)に引き続いて、パラサイトピストンに対して排気ガスが膨張すると、燃焼室内の温度はスパイク状に急激に上昇し次いで下降する。事象324ではまた、燃焼中の対応する圧力上昇によって、吸入弁は一時的に偏倚用構成要素148に打ち勝って直ちに急閉し、燃焼が吸入室に入り吸入装置30内に貯蔵されたガスに点火することを防止する。パラサイトピストンは動力変換装置16に向かって移動して応答するが、仕事を遂行すると速度を落とし、燃焼ガスはその膨張を完了する。排気制御器164はパラサイトピストンの速度を監視し、速度が零に落ちる前に事象328で制御器は排気弁156を開とする。
排気弁156を開とすることによって、燃焼排気ガスを漏出させ、それによって温度を低下させることと、パラサイトピストンをその当初位置に引き戻すことの両方を行う。いったんパラサイトピストンがその当初位置に達すると、排気弁が閉まり(事象332)、吸入弁が再び開き(事象336)、燃焼室20内に予圧縮された燃料/酸化剤混合物34を新しく充填できる。この工程は、燃料制御器によって燃料/酸化剤制御弁136が開位置に保持される間は、それ自体で連続して(t2で始まる)繰り返される(B)。単に燃料/酸化剤制御弁を開くことによって作動されるこの外部圧縮エンジン14の自動的迅速点火運転が、本発明が提供するところの「機関銃」特性である。燃料/酸化剤制御弁が閉じられるまで、外部圧縮エンジンは運転し続ける。
燃焼部分26に導入される燃料/酸化剤混合物の体積は、燃料/酸化剤混合物34の化学組成、燃焼室20の形状、およびにパラサイトピストン70の物理的特性に基づいて、d1で制御され、通常運転において最大効率に最適化される。しかし、低いエンジン効率を対応する交換条件として、より大きな動力出力を必要とする状況が起こることが予見できる。本発明の外部圧縮エンジン14は、点火制御器112に点火のタイミングをd1からd2に調整させ、それによって燃焼部分内に導入される予圧縮された燃料/酸化剤混合物をより多量に充填することにより、一層大きな動力要求(t3で始まる)に適応することが可能である。燃焼が激しいと(C)、ピーク温度340がより高くなり、パラサイトピストンによってより多量の仕事が遂行されるが342、それはたとえ負荷が大きくともピストンの変位を観察することによって容易に明らかになることもあり、ならないこともある。
本発明の迅速応答外部圧縮エンジン14は、従来技術の内で既に良好に確立された従来のICエンジンに対して、著しい利点を有する。一般に知られているように、従来のICエンジンは、燃焼によって発生された熱エネルギーを駆動ピストンの直線運動に変換し、それは次いでクランクシャフトによって回転エネルギーに変換するように設計されている。しかし、従来のICエンジン内で生成された熱エネルギーの多くは、燃焼室を取り囲むエンジン壁内に逃げた熱、および排気ガス内に保持された残留熱のために失われる。最も効率的なICエンジンであっても、35%超の効率を達することはめったにない。したがって、燃焼した燃料から利用できるエネルギーの半分以上は、壁およびピストンを通して伝導および放射による熱伝達、ならびに排気を通して放出される熱の形で失われる。
線300の上昇と下降によって示される温度上昇と熱損失は、燃焼を表現し、エネルギーが仕事を遂行可能な時間を表し、それは従来のICエンジンにおける駆動ピストンが熱エネルギーを抽出しているべき期間である。しかし、駆動ピストンの運動はクランクシャフトの運動に合わせられ、そのサイクル時間は燃焼工程および燃焼室からの熱伝達よりもずっと遅い。その結果、燃焼の間に生成された熱エネルギーのほとんどは、従来のICエンジン内の駆動ピストンによって仕事として抽出され得る前に漏出する。
しかし、本発明によれば、熱エネルギーが漏出するチャンスを得る前に、パラサイトピストンは有効なエネルギーの抽出サイクルを実質的に完了する。パラサイトピストンの応答時間は駆動ピストンよりもかなり迅速であるから、熱エネルギーが壁、主ピストン、およびその他の外部圧縮エンジンの構成要素で形成される熱シンクに失われる前に、パラサイトピストンは熱エネルギーのかなり大きな割合を直線運動に変換できる。例えば、毎分3000回転で運転している従来のICエンジンにおいて、駆動ピストンは半サイクル(またはエネルギー抽出行程)を、約10ミリ秒、すなわち0.010秒内に完了することになる。この間に、燃焼と熱損失に伴う燃焼室温度の上昇と低下300は、実質的にほぼ3ミリ秒、すなわち0.003秒で完了する。パラサイトピストンは、クランクシャフトまたはその他の同様の装置とは独立に運転され、かつ実質的に小さい慣性を有しているので、パラサイトピストンは3ミリ秒内またはそれ未満の応答時間で反応できる。パラサイトピストンは、ほとんどの燃焼エネルギーを利用できる3ミリ秒以内の時間で、エンジンの燃焼ガスから、エネルギーの抽出を始めること、および止めることの両方ができる。換言すれば、本発明の迅速点火外部圧縮エンジンにおいて、ピストンの運動はクランクシャフトの機械的拘束から分離され、燃焼工程に直接応答する自由を与えられ、それによってさらに高速な応答時間を持つ一層効率的なエンジンとなる。
図6aおよび6bは、本発明の迅速点火外部圧縮エンジンによって提供される従来のICエンジンの応答特性を超える、広い帯域幅およびパルス幅変調に対する機能などの、優れた物理的応答特性をさらに示す。帯域幅とは、動力発生の意味において、広い範囲の負荷条件に対して高速で応答するエンジンの能力のことである。広い帯域幅を有するエンジンは、重い負荷を短時間駆動するためにほぼ即時的な動力を供給すること、負荷が除去されたとき直ちに運転を停止すること、短時間後に長期間継続する動力出力を供給するために再始動することができる。パルス幅変調は、一連の迅速点火パルス(または周期的なパルスの群)によって表現されるエンジンの負荷サイクルの変調を含み、したがってエンジンが結合された駆動システムの全般的性能を制御する能力を運転者に提供する。
図6aは、毎分3000回転で運転される従来のICエンジンの燃焼室圧力(P)の時間(t)に対するプロット図である。この速度において、燃焼室は10ミリ秒毎に点火可能である。燃焼室に導入される燃料の量に依存して、燃焼室圧力350は異なるレベルに上昇することになり、燃料の量が多くなれば高い燃焼圧力ピークになる。圧力スパイクの下部の面積は、このエンジンによる仕事出力のために利用可能なエネルギーの量に比例する。クランクシャフトに連結された駆動ピストンが有する機械的拘束のために、3000rpmにおいて駆動ピストンが点火位置になるのは10ミリ秒毎に1回のみである。エンジンは、燃焼圧力を増加するように制御可能であり、それによってエンジンの速度上昇(図示せず)という最終的効果をもたらす。しかし高速応答する従来のICエンジンであっても、仕事出力として利用可能なエネルギー量を増加するためには、かなりの時間(500ミリ秒超)がかかり、そのときも最終速度は通常、エンジンの機械的特性によって毎分6000回転未満に制限される。
これに対して図6bは、本発明の迅速点火外部圧縮エンジンの時間(t)に対する燃焼室圧力(P)を示す。このエンジンは比較的一定の速度で回転しているクランクシャフトに結合されていないので、エンジンは、可能な限り急速に、頻繁に、かつシステム需要が要求するどのような動力レベルにおいても、自由に点火できる。図6bに示すように、迅速点火エンジンのサイクル応答は、燃焼サイクルのタイミングにより密接に調整されているので、燃焼サイクルを3ミリ秒以下で起こすことができる。したがって従来のICエンジンを同寸法の迅速点火外部圧縮エンジンと比較すると、迅速点火エンジンは3から4倍頻繁に点火することが可能であり、その結果著しく大きな動力出力となる。さらに迅速点火エンジンは、時間内に任意の時点に始動および停止することができて、それによって動的負荷要求によく適合するように調整され、精密に制御された動力出力を可能にする。最終的に、正規ピーク圧力360は最大効率に最適化されるが、負荷要求に適合するためにエンジンの迅速点火能力のみでは不十分な場合は、燃焼室内により多くの燃料を充填できるように、点火制御器112(図示せず)は点火設定点を調整することができ、それによってピーク圧力364を高め、動力出力を増加することができる。
さらに当業者は、燃料制御器50(図示せず)および点火制御器112(図示せず)が、時間内の任意の点で、迅速点火エンジンの運転および動力出力を一緒にまたは別々に制御して、それによって周波数変調、さらに周波数・パルス幅変調も、またさらに周波数・振幅変調も提供できることを、容易に理解するであろう。エネルギーを抽出し、次いで抽出を迅速に停止し、次いで時間内の任意の時点に再びエネルギーを抽出する、このような能力によって、従来のICエンジンのエネルギー抽出および変換の帯域幅よりもずっと優れた好ましい帯域幅が実現される。
図7は迅速点火迅速応答動力変換システムの単一の例示的な使用を示す、様々な部分的概略側面図に関連するブロック図を示し、これらは集合的に動力アクチュエータシステムとして本明細書で参照されることがある。この実施形態において迅速点火外部圧縮エンジン14は、液圧システム200として示される迅速応答装置16を作動または駆動するために使用される。1つの態様において外部圧縮エンジンは、燃料源116から燃料を受け取り、その燃料を圧縮し、上でも検討したような、燃料/酸化剤ライン124を通して燃料を燃焼室20の頂端部22に近接する燃焼部分26へ移送する、遠隔圧縮機120を有してよい。
図示された実施形態では、燃焼時に、パラサイトピストン70によって、液圧室202内の液圧ピストン204が作動する。したがって燃焼時に、迅速応答装置16は加圧流体、特に液圧流体を加圧ライン438を通して圧力制御弁400内へポンプ輸送するために使用される。ポンプはリザーバライン434を通して液圧リザーバ430から液圧流体を受け取るように作動する。外部圧縮エンジンにより作動または駆動されているとき、液圧システム200は、種々の選択された圧力の下で圧力制御弁に液圧流体を提供するように構成された蓄圧器442を充填する。
圧力制御弁400は、液圧圧力ライン438に流体結合された圧力入口と、その戻りライン446が戻り弁450によって制御されている戻りリザーバ454に流体結合された戻り入口とを備える。やはり圧力制御弁に流体結合されたパイロット弁458は、圧力制御弁400に第1段階の圧力を供給するように構成される。圧力制御弁400から延びる主ライン462は、圧力制御弁400の両側に形成された負荷圧力フィードバックポート、および、やはり圧力制御弁400内に形成された圧力出口および戻り出口ポートに流体連通し、これらの出口ポートは、圧力制御弁400内で戦略的に支持された第1および第2のスプール(図示せず)の選択的な位置決め時に、圧力入口および戻り入口ポートと連通する。主ライン462はさらに負荷供給ライン466と流体連通し、この負荷供給ラインは負荷支持体416およびアクチュエータ410を通して作用する負荷420と流体連通する。
液圧ポンプ200、圧力制御弁400およびアクチュエータ410の特定の機能性は、2005年12月1日に出願され「固有のフィードバックシステムを有する圧力制御弁」と題された米国特許第7,308,848号明細書に一層詳細に記載されており、これらは参照することによりそのすべてが本明細書に組み込まれる。
図示の構成において、迅速点火迅速応答動力変換システム10はアクチュエータ410を駆動するために使用され、アクチュエータは次いで負荷420を駆動する。迅速点火外部圧縮エンジン14は、燃料制御弁136の作動、および制御器112(図示せず)を介するエンジン点火のタイミングに応じて、急速燃焼、または一層安定した、あるいは一定の形式で、多量のエネルギーを発生させることができる。この迅速エネルギー発生機能は、液圧ポンプを駆動するために使用される迅速出力動力を完遂するように、迅速動力変換システム16を通して移送または変換される。液圧ポンプは、アクチュエータ410を、したがって最終的に負荷420を正確かつ適時に駆動するために、圧力制御弁400内に必要な圧力を供給することによって迅速に応答する。この点に関し、迅速点火迅速応答動力変換システムを使用することは、アクチュエータが必要に応じて短時間で受け取った多量の動力を使用して負荷を駆動できるという点で有利である。したがって、本システムにおいては、外部圧縮エンジンとアクチュエータおよび負荷の実際の駆動との間における損失が少なく、出力動力が増大する。例えば、パイロットおよび圧力制御弁の具体的な機能を記述しなくても、負荷420が重力に打ち勝つために連続的に駆動されるかまたは適所に保持される場合は、迅速点火外部圧縮エンジンは、動力変換システムにより使用可能な動力に変換できる一定のエネルギーを生じさせるように連続的に作動できる。ポンプは、アクチュエータを駆動モードに維持するために必要とされる必要な加圧液圧流体を供給するために、連続的に作動される。
別の例では、アクチュエータ410が作動され、負荷420が周期的に(無秩序にまたは系統的な燃焼として)駆動された場合、迅速点火外部圧縮エンジンは迅速燃焼のエネルギーを生じさせるように周期的に作動できる。この例ではポンプは、指定された、または所定の時間量に対して、アクチュエータを駆動するのに必要とされる必要な加圧液圧流体を供給するために周期的に作動される。動力変換装置の迅速応答とエネルギー抽出とを結合した迅速点火外部圧縮エンジンの利点は、このシステムが従来の関連する4サイクルまたは4ストロークシステムよりも優れた、短時間で多量で爆発的な量の出力動力を生じさせることができることである。
図8の示す流れ図は、迅速点火外部圧縮エンジンを運転する方法500である。本方法は、予圧縮された燃料/酸化剤混合物の供給を外部から得るステップ510と予圧縮された燃料/酸化剤混合物を、燃焼室の頂端部と迅速応答構成要素で区画された燃焼室の燃焼部分に導入するステップ520とを含み得る。本方法はさらに、エネルギーを発生し、迅速応答構成要素を燃焼室の頂端部から離れるように駆動するために、燃焼部分に密封された予圧縮された燃料/酸化剤混合物に点火する操作530と、迅速応答構成要素に機械的作用を遂行させて燃焼で発生したエネルギーの一部を抽出する操作540とを含み得る。本方法はさらに、迅速応答構成要素を燃焼室の頂端部に引き戻すために、排気ガスを燃焼室から排出するステップ550を含むことができ、それによって予圧縮された燃料/酸化剤混合物を燃焼室内に導入利用できる間は、このサイクルをそれ自体で繰り返させる。
上述の詳細な説明は、特定の例示的実施形態に関して本発明を記述したものである。しかし、添付する特許請求の範囲に記すような本発明の範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更を行うことができることが認識されるであろう。詳細な説明および添付図面は限定ではなく単なる例示とみなすべきであり、すべてのこのような修正または変更がたとえあるとしても、それらは本明細書に説明し前述したような本発明の範囲内に入るものとする。
本発明の説明のための例示的実施形態を本明細書で記載してきたが、より具体的には、本発明は、それらの実施形態に限定されるものではなく、上述の詳細な説明に基づいて当業者が認識するような、修正、省略、(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)組合せ、適用、および/または改変を含む、任意のおよびすべての実施形態を含む。特許請求の範囲における限定は、特許請求の範囲で使用される言語に基づいて広義に解釈すべきであり、上述の詳細な説明において、または適用の遂行中に述べた例に限定されず、このような例は排他的ではないものと解釈されるべきである。例えば本開示において、「好ましい」という用語は排他的ではなく、「好ましいが、これに限定されない」という意味であることを意図している。任意の方法または工程に関する請求項において説明される任意のステップは、任意の順序で実行されることが可能であり、請求項内に示された順序に限定されない。ミーンズ・プラス・ファンクション、またはステップ・プラス・ファンクションの限定は、特定の請求項の限定において、その限定のなかに次の条件がすべて存在する場合にのみ採用される。a)「に対するミーンズ(means for)」、または「に対するステップ(step for)」が明示的に説明されること、およびb)対応するファンクションが明示的に説明されること。ミーンズ・プラス・ファンクションの限定を支持する、構造、材料または行為は、本明細書の記述に明示的に示される。したがって本発明の範囲は、上述の説明および例によってではなく、添付する特許請求の範囲およびその法律上の等価物によってのみ決定されるべきである。