JP2010518390A - 充電式バッテリの充電状態(SoC)を定める方法および機器 - Google Patents
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Abstract
本発明は、充電式バッテリの充電状態(SoC)を、前記バッテリの起電力(EMF)の関数として定める方法に関する。また、本発明は、充電状態(SoC)とEMFの間の関係を測定する方法に関する。さらに、本発明は、充電式バッテリの充電状態(SoC)を、前記バッテリの起電力(EMF)の関数として求める機器に関する。
Description
本発明は、充電式バッテリの充電状態(SoC)を、前記バッテリの起電力(EMF)の関数として求める方法に関する。また、本発明は、充電状態(SoC)とEMFの間の関係を測定する方法に関する。さらに本発明は、充電式バッテリの充電状態(SoC)を、前記バッテリの起電力(EMF)の関数として求める機器に関する。
正確で信頼性のある充電状態(SoC)を示すことは、充電式バッテリによって給電されるいかなる装置においても、重要な特徴である。正確で信頼性のあるSoCの指示により、ユーザは、利用可能なバッテリ容量全体を利用するようになり、バッテリの消耗を早める不要な充電が防止される。SoC指示用の多くの方法が公表され、特許化されている。基本的に、これらの方法は、2つのグループに分離される。すなわち、H.J.Bergveldらによる書籍の、“バッテリ測定システム−設計およびモデル化”、フィリップスブックシリーズ、vol.1、Kluwer Academic Publishers、2002、第6章に記載されているような、直接測定方式と記帳方式である。
直接測定の場合、端子電圧、インピーダンス、電流または温度のようなバッテリ変数が測定され、例えば、参照表(ルックアップテーブル)または関数に基づいて、この測定値が、直接SoC値に変換される。このグループの方法の主な利点は、SoC指示システムがバッテリに接続されると、速やかに測定が開始され、SoCが決定されることである。このグループの方法の主な問題は、参照表または関数に、全ての関連するバッテリ挙動を含めることが極めて難しいことである。これは、ユーザの下では、参照表または関数の状況予測が難しいことを意味し、SoCは、表形式データの内挿または外挿により、得る必要がある。これは、予測されるSoCの精度の低下につながる。
過去に、フィリップスリサーチは、米国特許第6,420,851号に記載されているように、直接測定によるSoC指示に対して、いわゆる起電力(EMF)が有益なバッテリ変数であることを特許化した。EMFは、正極と負極の平衡電位の差であり、バッテリが平衡状態にあるとき、すなわち、外部電流が流れておらず、それまでの充電/放電電流の印加から、バッテリ電圧が十分に緩和されているとき、バッテリ端子で測定することができる。平衡条件下でバッテリ電圧を測定することにより、測定電圧値は、システム内に保管されたEMF=f(SoC)の関係を介して、SoC値に変換される。この保管曲線は、内挿、外挿、および緩和を含む、いくつかの方法におけるSoC指示システム製造元により、実験室で得ることができる。EMF=f(SoC)の関係の利点は、これにより、バッテリ電圧測定および温度測定に基づいて、平衡の間、SoCの指示が得られることである。しかしながら、この方法は、外部電流通電中、または電流通電後、バッテリ電圧が十分に緩和されるまで、機能しない。この場合、バッテリ端子電圧は、EMFとは等しくないからである。
記帳方式グループの方法は、クーロン計算、すなわちバッテリに流入しバッテリから流出した電流を、できるだけ正確に測定し、正味の電流を積分することを基本としている。この方法では、バッテリが線形容量である場合、良好なSoCの指示が得られる。残念ながら、これは、一般的ではない。例えば、保管電荷は、全ての条件下で、ユーザが利用することができるわけではなく、例えば、拡散限界により、あるいはバッテリが未使用のとき、バッテリの電荷は、自己放電により、ゆっくりと減少する。このバッテリ関連挙動の大部分は、温度およびSoCに大きく依存し、従って、例えばバッテリのSoC指示システムおよび温度に応じて、自己放電が占める計算カウント分を下げることにより、クーロン計算を調整する必要がある。主な利点は、一般に、表形式データの量を、直接測定システムに比べて、少なくすることができることである。主な問題は、(i)システムを常時、バッテリに接続しておく必要があること、(ii)最初の接続の際、システムは、SoCを把握することができないこと(積分の開始時点をプログラム化する必要がある)、(iii)較正点が必要なことである。
前述の知見に基づき、フィリップスリサーチは、SoC指示の方法を開発した。この方法は、適応および予測が可能なシステムを有する、直接測定と記帳方式の利点を組み合わせたものであり、米国特許第6,515,453号に示されている。この方法の主な特徴は、SoC予測は、バッテリがいわゆる平衡状態にあるときは、電圧測定によって、またバッテリが非平衡状態にあるときは、電流測定によって行われることである。平衡の場合、外部電流は、全くあるいはほとんど流れず、バッテリ電圧は、それまでの充電もしくは放電から、完全に緩和した状態にある。前述のように、測定バッテリ電圧は、平衡状態にあるバッテリのEMFと実質的に等しい。従って、EMF法は、これらの条件下で適用することができる。バッテリが非平衡状態にあるとき、バッテリは、充電または放電状態にあり、バッテリから放出され、あるいはバッテリに供給される電荷は、電流積分により計算される。この電荷は、前に計算されたSoC値から差し引かれ、あるいはこれに加えられる。また、本方法は、バッテリ内に依然として残存する電荷量の指標となるSoCの予測に加えて、予め定められた条件下での適用の残運転時間を予測することができる。これは、バッテリ電圧がいわゆる放電完了電圧VEoD未満まで低下するまでに必要な時間を予測することにより行われる。これは、その適用がもはや機能しなくなる最小電圧である。この時間を予測するため、SoCの現在の値、保管されたEMF曲線およびいわゆる過電圧関数に基づき、選定負荷条件に対する、放電完了時のバッテリの過電圧が予測される。バッテリが放電している際、その電圧は、EMF値から過電圧を差し引くことにより、得ることができる。過電圧は、SoC、電流、温度および時間を含むいくつかの因子に依存し、さらに、電極の直列抵抗のような因子にも依存する。この特許化された方法は、国際公開第2005/085889号に記載されているように、バッテリの経年劣化に対処して、パラメータ値を較正し、更新するため、いくつかの方法を後に導入できるように拡張される。最近では、ph.D.プロジェクトの範囲内で、新たな測定方法が得られ、これが公開されている。主に、バッテリ関数のより良い使用のため、すなわちEMF曲線および過電圧の関数について、改良が行われている:V. Pop, H. J. Bergveld, P. H. L. Notten, P. P. L. Regtien、“携帯アプリケーションにおける充電状態指示”、Industrial Electronics(ISIE2005)IEEE国際シンポジウム、vol.3, pp.1007-1012, Dubrovnik, Croatia, June 20-23, 2005;V. Pop, H. J. Bergveld. P. H. L. Notten, P. P. L. Regtien、“携帯アプリケーションにおける小型で正確な充電状態指示”、6th IEEE国際会議、Power Electronics and Drive Systems(PEDS2005)、vol.1, pp.262-267, Kuala Lumpur, Malaysia, Nov.28-Dec. 1, 2005およびV. Pop, H. J. Bergveld. P. H. L. Notten, P. P. L. Regtien、“充電状態指示アルゴリズムのリアルタイム評価システム”、Proceedings of the Joint International IMEKO TC1-TC7 Measurement Science Symposium, vo.1, pp.104-107, Illmenau, Germany, Sept.21-24, 2005。
前述のSoC指示方法の利点は、電流ステップの印加後に、充電/放電サイクルの間、クーロン計算により得られたSoCが、電圧測定、EMFの適用、および電圧予測方法に基づいて較正されることである。これは、市販の記帳式システムに比べて、有意である。市販の記帳式システムでは、通常、1または2以上の較正点、すなわち通常あまり遭遇しない、「バッテリフル」(充電を定める)および「バッテリエンプティ」(ある条件下で、バッテリ電圧が放電完了電圧未満に低下していることを定める)しか使用されない。換言すれば、提案システムは、既存の記帳式システムよりも高い頻度で較正が行われ、これにより、記帳方式の利点が維持されたまま、より精度が上がる。
前述のSoC指示システムの別の特徴は、放電条件下での利用可能な残留運転時間が、過電圧の関数として予測できることである。残留運転時間を計算するため、過電圧計算およびEMFモデルにより、放電状態の開始時に、SoC1値が計算される。
SoC指示システムにより、バッテリのEMFおよび過電圧を正確に定めることができることは、重要である。第1の解は、SoC=f(EMF)値を参照表の形態で、保管することであり、これは、V. Pop, H. J. Bergveld, P. H. L. Notten, P. P. L. Regtien、充電状態決定の最新技術、Measurement Science and Tecnology Journal, vol.16, pp.R93-R110, December, 2005に記載されている。参照表は、測定パラメータの一定値が保管され、SoCの指示のために使用される表である。SoC指示システムにおける参照表のサイズおよび精度は、保管値の数に依存する。
この方法の主な問題は、単一のバッテリ種類であっても、EMF曲線の各点を考慮した、正確なSoC指示システムを提供することは、難しいことである。多くの測定点を含めた場合、この方法は、より複雑となり、他の方法に比べて高額になり、いかなる有意性を提供することもできなくなる。
別の方法として、Liイオンバッテリ用の物理的なEMF=f(SoC)モデルが、Bergveldらによる書籍に示されている。このモデルのアイデアは、あるEMFおよび温度で、対応するSoCを計算することができることにある。EMF曲線は、直線内挿、直線外挿、または電圧緩和方法によって測定され、数学的なEMF=f(SoC)関数で近似され、インターカレート電極を有するリチウムイオンバッテリのEMFは、正極と負極の間の平衡電位の差としてモデル化される。各SoC値に対してこの関数を用いることにより、EMFが計算される。Bergveldらによって示されたEMF=f(SoC)モデルは、測定されたEMF曲線に対してフィッティングされる。図1には、システムに使用されるモデル化されたEMF曲線を示すが、全ての温度で、得られた測定曲線と、参照バッテリテスタとの間に、良好なフィッティングが得られている。この図には、測定曲線を使用したときと、モデル化EMF曲線を使用した際の、SoC予測の誤差が示されている。
図1から、SoCにおける最大誤差は、5℃で約16%のSoCでは、1.2%となることがわかる。しかしながら、前述の方法では、EMF=f(SoC)関係から、EMF測定に基づいて、SoC値を得るには、数学的な反転を行う必要がある。これは、数学的な計算では、SoC計算の精度が低下する可能性があることを意味する。本願に示された方法は、新たなSoC=f(EMF)モデルを提案し、この場合、数学的な反転を行う必要性が排除される。
バッテリ過電圧は、バッテリEMFとバッテリの充電/放電電圧の間の差として定められる。過電圧のため、(放電)充電状態の間、バッテリ電圧は、バッテリEMF電圧よりも(低い)高い。バッテリ過電圧の値は、充電/放電Cレート電流、充電/放電時間、SoC、温度、バッテリ反応、および使用期間(経年劣化度)に依存する。また、過電圧予測により、残留運転時間の予測が可能となる。放電中のバッテリから電流が流れている場合、過電圧が生じる。ある量の容量がバッテリ内に未だ残存していても、ユーザには、バッテリが空に見える。これは、バッテリ電圧が、携帯装置において定められた、放電完了電圧(VEoD)(例えばリチウムイオンバッテリの場合、3V)未満に低下するためである。これは、図2に示されている。図において、この効果を説明するため、残留運転時間trが、水平軸に対してプロットされている。
図2に示すように、放電は、点Aで開始され、バッテリ電圧は、過電圧ηとともに低下する。過電圧は、放電電流Iと温度Tの関数である。この時点では、残留運転時間tr=tiは、以下の式に基づいて計算される:
B点では、tr=tsであり、現在のIおよびTの条件下では、残留利用可能容量は、ゼロである。バッテリ電圧が放電完了電圧に到達すると、バッテリは、完全に空になり(図2の点tr=tempty)、過電圧は、ゼロになる。従って、バッテリ内の利用可能な電荷(すなわちSoC)と、ある条件下でバッテリから引き出すことの可能な電荷の間の対比により、残留運転時間が表される。
拡張条件範囲、すなわち異なる開始SoC値(SoCst)、Cレート電流、および温度における評価組に対して、前に示したSoCアルゴリズムが実施され、SoCおよび残留運転時間の精度が検証された。評価には、ソニー社製の新たなUS18500G3 Liイオンバッテリを使用した。国際公開第WO-2005085889号に記載の方法を用いた、第1の充電サイクルの間、バッテリ最大容量は、1177mAhであった。表1には、実験結果をまとめて示す。これらの試験に使用された放電Cレート電流および温度T(℃)は、それぞれ、第1列および第2列に示されている。開始時に示された実験のSoC[%]、SoCst、およびSoC1は、それぞれ、第3列および第4列に示されている。第5、6、7、8列は、実験の開始時点での、予測trstp残留運転時間、および測定trstm残留運転時間、実験完了時点での残留運転時間の誤差tre[分]、および残留運転時間trre[分]の相対誤差を表している。実験開始時点での予測残留運転時間(分)は、SoCst[%]、SoC1[%]、最大容量Qmax[mAh]、および放電電流Id[A]で表される(式1および2も参照):
表1から、残留運転時間について高い精度を得る上で、EMF=f(SoC)の関係(図1参照)と過電圧の正確なモデル化は、十分ではない。例えば、40.2%のSoCからの放電開始では、0.5℃レート電流、25℃において、残留運転時間は、47.5分であることが示されている。しかしながら、37.3分後には、バッテリは、3Vのレベルに到達した。これは、SoCシステムは、残留運転時間に10.2分の不正確性を示すことを意味する。この例では、残留運転時間trreにおける誤差は、27.3%と計算される(式4参照)。
本発明では、EMF=f(SoC)および過電圧モデルに代わる、高い精度でSoCおよび残留運転時間を指示するための、新たな方法が提案される。
特に、本発明では、充電式バッテリの充電状態(SoC)を、前記バッテリの起電力(EMF)の関数として求める方法であって、
前記充電式バッテリの前記充電状態(SoC)と前記起電力(EMF)の間のパラメータを含む関数を定めるステップと、
前記起電力(EMF)の関数として、前記充電式バッテリの充電状態(SoC)の複数の値を測定するステップと、
前記測定の結果に、前記関数の前記パラメータをフィッティングするステップと、
メモリに、フィッティングパラメータを含む前記関数を保管するステップと、
前記起電力を求めるステップと、
前記起電力の前記測定値を、前記関数に入れるステップと、
前記充電状態(SoC)を読み取るステップと、
を有する方法が提供される。
前記充電式バッテリの前記充電状態(SoC)と前記起電力(EMF)の間のパラメータを含む関数を定めるステップと、
前記起電力(EMF)の関数として、前記充電式バッテリの充電状態(SoC)の複数の値を測定するステップと、
前記測定の結果に、前記関数の前記パラメータをフィッティングするステップと、
メモリに、フィッティングパラメータを含む前記関数を保管するステップと、
前記起電力を求めるステップと、
前記起電力の前記測定値を、前記関数に入れるステップと、
前記充電状態(SoC)を読み取るステップと、
を有する方法が提供される。
また、本発明では、充電式バッテリの充電状態(SoC)を、前記バッテリの起電力(EMF)の関数として求める機器であって、
前記バッテリにおける前記充電状態および前記EMFの決定手段と、
前記充電式バッテリの前記充電状態(SoC)と前記起電力(EMF)の間の、パラメータで表現された関係を、保管するように適合されたメモリと、
前記関係のパラメータを適合させる手段と、
を有する機器が提供される。
前記バッテリにおける前記充電状態および前記EMFの決定手段と、
前記充電式バッテリの前記充電状態(SoC)と前記起電力(EMF)の間の、パラメータで表現された関係を、保管するように適合されたメモリと、
前記関係のパラメータを適合させる手段と、
を有する機器が提供される。
この方法および機器では、逆関数に固有の不正確性が回避された、モデル化のための新たな方法が提供される。また、モデルは、パラメータの適合により、測定結果に適合させることができる。この利点は、従来の方法のような数学的反転を使用しないことである。この利点により、方法の適合が容易となり、従来のEMF=f(SoC)法に比べて、携帯用途に容易に利用することができる。
従来のSoC指示の方法では、平衡時のEMFモデルにより、正確なSoC計算が得られ、いかなる負荷条件における放電中においても、残留運転時間の正確な計算が可能になる。EMFによりSoCを定め、残留運転時間を予測する方法を利用する場合、SoC=f(EMF)およびSoC1モデルを利用することが最も好ましいと思われる。しかしながら、文献で知られている方法は、EMF計算に数学的反転を利用し、あるいはフルSoC範囲の間の過電圧予測、負荷条件下での電圧測定およびEMFモデル計算による、SoC1の計算を利用する。これは、複雑なシステムの各測定および一部のモデル化により、残留運転時間の精度が低下する点で、問題がある。
好ましくは、以下の式が利用され
無次元数x=F(Eo x−EMF)/RT、
Fは、ファラデー定数(96485Cmol-1)、
EMF(V)は、測定起電力値、
Rは、気体定数(8.314J(molK)-1)、
Tは、(周囲)温度(K)、
|x|は、xの絶対値、
sxは、xのサイン、
Eo xは、フィッティングによって得られるパラメータであり、
fzは、
無次元数z=F(Eo z−EMF)/RT、
|z|は、zの絶対値、
szは、zのサインである。
SoC=f(EMF)の関係に、温度の影響を含めるため、各モデルパラメータの線形依存性が仮定され、
Tは、周囲温度であり、
par(Tref)は、温度Trefでの、EMF=f(SoC)のモデルパラメータの一つの値である。Δpar値は、各パラメータpar(Tref)において求められた、温度に対する感度である。
この実施例に記載の第2の新たな方法は、バッテリ過電圧の予測、バッテリ電圧の測定、および電流通電条件下でのEMFモデルの使用が不要な、残留運転時間を定める方法であり、これにより、残留運転時間の精度低下が抑制される(表1参照)。
このため、以下に示すような、新たな予測SoC1関数が提案され、
β[T-1]、δ[T-1]、ならびに無次元数α、γ、ζ、およびυは、測定SoC1データにフィッティングされたパラメータである。
式9に示すSoC1関数により、A点で放電が開始された後の、B点での残留運転時間を直接予測することが可能となる(図2参照)。関数は、パラメータ組を有し、これは、利用可能なSoC1測定値に対するフィッティングにより得られる。この利点は、(i)SoC1の測定が容易となり(図2参照)、(ii)負荷条件下での過電圧の予測、電圧測定、およびEMFモデル計算が不要となり、(iii)一つの関数で、残留運転時間が直接計算されることである。第1の利点は、特許された残留運転時間指示アルゴリズムを改良する。これにより、より正確なSoC1計算が可能になるからである。第2の利点は、負荷条件下での過電圧予測、電圧測定、およびEMFモデル計算の必要性がなくなることである。第3の利点は、残留運転時間の予測のための測定および計算の数が、従来の残留運転時間予測法に比べて、抑制されることである。
正確なSoC指示システムを設計する際の主な問題は、バッテリの劣化過程である。例えば、Liイオンバッテリでは、バッテリの寿命の間、インピーダンスの上昇および/または最大容量の低下により、特性が劣化する。バッテリのインピーダンスおよび最大容量の変化速度は、作動条件に大きく依存する。充電/放電電流の高Cレート、ならびにバッテリの充電中の高温および高電圧レベルでは、これらの2つのバッテリ特性は、急激に変化する。これらの現象を示すため、図3には、放電バッテリ容量(Qd)を、サイクル数の関数として、異なる2つの作動条件に対してプロットした。何れの例においても、放電バッテリ容量は、0.5Cレート電流での完全な放電ステップからのクーロン計算により、予測した。
放電容量の低下は、
図3には、Qdの低下は、作動条件、すなわち充電/放電Cレート電流、充電電圧限界および温度に、大きく依存することが示されている。例えば、Qdl(図3の実線)のバッテリに対する作動条件の間、バッテリは、定電流定電圧(CCCV)法で、25℃において、4.3Vまで充電される。CCステップ中は、4Cレート電流が印加される。図3から、220サイクル後に、Qdlは、675mAhであることがわかる。一方、第1のサイクル後、これは1165mAhである。この例から、220サイクル後には、Qdl値は、第1サイクル後のQdlの値に比べて、約42%まで低下することが予測される。第2のケース(図3の破線)では、バッテリは、0.5Cレート電流、25℃で、約30%から70%のSoCの間に、部分的に充電/放電される。図3から、Qd2は、2000サイクル後に、935mAhの値となるのに対して、第1サイクル後のQd2は、1150mAhであることがわかる。従って、Qd2は、2000サイクル後に、第1のサイクル後のQd2に比べて、19%低下する。
図3に示した放電容量の低下は、バッテリプロセスの2つの組み合わせの結果、すなわちバッテリインピーダンスの上昇と、バッテリの最大容量の低下の結果であることに留意する必要がある。バッテリインピーダンスの上昇のため、新品のバッテリに比べて、劣化バッテリからの同様の放電Cレート電流の下では、容量の除去はより少なくなる。また、バッテリインピーダンスの上昇は、バッテリSoC1の増加につながることが結論づけられる。バッテリの最大容量の低下により、充電(放電)の間、バッテリにはより少ない容量が保管される(バッテリから除去される)。前述の例は、バッテリの劣化がインピーダンスおよび容量等、多くのバッテリパラメータを含む、複雑な過程であることを示しており、中でも重要な特性は、バッテリの最大容量であると思われる。しかしながら、SoCのより正確な決定のためには、両方のパラメータの変化を考慮する必要がある。
前述の知見に基づき、フィリップスリサーチは、米国特許第6,420,851号に記載されているような、適合性があり予測性のあるシステムを用いた、直接測定法と記帳方式の利点を組み合わせた、SoC指示方法を開発した。この方法の主な特徴は、バッテリがいわゆる平衡状態にあるときの電圧測定と、バッテリが非平衡状態にあるときの電流測定とにより、SoCの予測が行われることである。平衡の場合、外部電流は全くまたは僅かしか流れず、バッテリ電圧は、それまでの充電または放電から、完全に緩和された状態にある。前述のように、測定バッテリ電圧は、平衡条件におけるバッテリのEMFと実質的に等しい。従って、EMF法は、これらの条件下で適用することができる。バッテリが非平衡状態にあるとき、バッテリは、充電または放電のいずれかの状態にあり、バッテリから引き出される電荷、あるいはバッテリに供給される電荷は、電流積分により計算される。この電荷は、先に計算されたSoC値から差し引かれ、またはこれに追加される。
バッテリの内部に未だ存在する電荷量の指標となるSoCの予測に加えて、この方法では、予め定められた条件下での適用の残留運転時間も予測することができる。これは、バッテリ電圧がいわゆる放電完了電圧(VEoD)未満に低下するまでの時間を予測することにより行われる。これは、そのアプリケーションがもはや機能しなくなる最小電圧である。この時間を予測するため、SoCの現在の値、保管されたEMF曲線およびいわゆる過電圧関数に基づき、選定負荷条件に対する過電圧値が予測される。バッテリが放電している際、その電圧は、EMF値から過電圧を差し引くことにより、得ることができる。過電圧は、SoC、電流、温度および時間を含むいくつかの因子に依存し、さらに、劣化およびバッテリの化学特性のような因子にも依存する。このSoC指示方法は、米国特許第6,420,851号に記載されており、この方法は、国際公開第2005/085889号に記載されているように、後に、バッテリの劣化に対処して、パラメータ値を較正し、更新するため、いくつかの方法を取り入れることができるように拡張される。最近では、ph.D.プロジェクトの範囲内で、新たな測定方法が得られ、これが公開されている。新たな適合的および予測的方法により、ならびにSoC=f(EMF)の関数の逆数およびSoC1をモデル化する新たな方法により、主に、バッテリ関数、すなわちEMF曲線および過電圧の関数のより良い実行からの改良が行われている。
劣化の影響に対処し、SoCの計算精度を向上するため、国際公開第WO2005/085889号に記載されているような、新たな適合性予測方法が開発された。例えば、この文献に記載されているシステムは、バッテリの最大容量およびバッテリの過電圧モデルパラメータを、劣化の影響を考慮して適合している。この適合性のある方法では、バッテリに完全な充電/放電サイクルを負荷することなく、最大容量が更新される。平衡状態からの開始を仮定すると、バッテリは、電荷のある最大量に対して、充電または放電され、その後、バッテリは、平衡状態に戻り、最大容量は、充電または放電ステップの前後のSoC[%]の差異を、印加充電/放電ステップの間のバッテリからのまたはバッテリへの放電の際の、電荷の絶対量[C]と相関付けることにより、容易に計算される。既存のシステムでは、常時、完全な充電/放電サイクルが印加され、最大利用可能なバッテリ容量が求められる。また、前述の適合性のある方法では、劣化バッテリと新バッテリの間の測定充電過電圧の比(ηch a/ηch f)、ならびに過電圧対称現象が使用され、過電圧モデルパラメータが劣化の影響を有するように適合される。電圧予測方法は、さらに、拡張EMF法および最大容量法を有し、緩和過程の間も有用である。その結果、SoCアルゴリズムの較正および適合性が改善される。
前述のSoCアルゴリズムを用いて、劣化バッテリを、25℃で異なる一定Cレート電流で、完全に放電する一連の試験を実施し、SoCおよび残留運転時間の精度を検証した。従来の方法を用いて、最大容量が1108mAhであり、ηch a/ηch f比の値が1.4であるバッテリを、第1の充電サイクルの間、測定した。表2には、実験結果をまとめて示す(表1参照)。
表2から、25℃、0.1Cレート電流では、放電開始時のSoCの98.2%から、残留運転時間は、577.2分であることが示唆される。しかしながら、バッテリは、595.2分後に、VEoDのレベルに達した。これは、SoCシステムの残留運転時間の精度は、-18.0分であることを意味する。この例では、残留運転時間trreの相対誤差は、-3.0%であることが計算された(式4参照)。表2から、従来のSoCアルゴリズムでは、バッテリパラメータを更新しても、バッテリが劣化すると、残留運転時間に対して、十分な精度を示さないことが確認された。
また、表1において、残留運転時間について高い精度を得るための、EMF=f(SoC)の関係および過電圧の正確なモデル化は、新品のバッテリにおいても、バッテリが部分的に放電される場合、難しいことが示された。この結果、SoC=f(EMF)および充電残留状態(SoC1)の新たな関数が開発された。これらの関数を使用することにより、新品のバッテリに対して得られる残留運転時間の精度が、有意に改善された。しかしながら、図3に関して前述したように、SoC1値は、バッテリの寿命の間、上昇する。バッテリの劣化の間、正確な残留運転時間の計算を可能にするためには、SoC1の変化挙動を考慮する必要がある。
LiイオンバッテリのEMFは、SoC[%]スケール上にプロットしたとき、ある限定的な範囲で、劣化に依存することが考えられる。劣化のEMF依存性を確認するため、新品のバッテリにおいて測定された放電EMF(EMFf)を、25℃で図4に示すバッテリに対して得られたEMFと比較した。正確な比較のため、最初に、国際公開第WO2005085889号に記載の方法を用いて、バッテリの最大容量を把握した。その結果、図3に示すバッテリに対して、5.4%および25.4%の容量ロスが観測された(式10参照)。目を誘導するため、EMFfと、5.4%の容量ロスバッテリで得られたEMF(EMFa5.4%)の間の差異、および25.4%の容量ロスバッテリにおいて得られた値EMFa25.4%との差異を、図5にプロットした。
図4および5から、EMFは、劣化によって変化することが示された。EMFfとEMFa5.4%との間の最大差は、2%SoCで、32mVであることが観測された。これは、EMFfのみのモデル化により、劣化の影響を考慮せずにEMFを使用した場合、EMFに基づくSoC指示システムは、実際にSoC値が2.4%のとき、劣化バッテリでは2%のSoC値を示すことを意味する。劣化バッテリで測定された真のSoC値と、新品のバッテリで測定されたSoC値との間の差異によって計算された不正確性は、-0.4%になる。図4および5から、新品のバッテリのEMFと劣化バッテリのEMFの間の差は、劣化とともに増加する。例えば、EMFfとEMFa25.4%とでは、57.4SoCで、-48mVの差異が得られる。これは、EMFfのモデル化のみにより、劣化の影響を考慮せずに得られたEMFを使用すると、EMFに基づくSoC指示システムは、劣化バッテリでは、実際のSoC値が46.9%であるとき、57.4%のSoC値を表示することを意味する。不正確性は、-10.5%になる。
SoC-EMFおよびSoC1劣化依存性を処理する解決法は、SoC-EMFおよびSoC1値を、サイクル数の関数として、参照表の形態で保管することである。参照表は、ここに、測定パラメータの固定値が保管され、バッテリの寿命の間の、SoC-EMFおよびSoC1の変化を表示するために使用される表である。SoC指示システムにおける参照表のサイズおよび精度は、保管された値の数に依存する。この方法の主な問題の一つは、単一のバッテリ種類の場合であっても、正確なSoC指示を提供するための、ユーザによる拡張予測、およびバッテリ寿命の間のバッテリ挙動の予測が難しいことである。参照表による方法では、異なるバッテリ種/化学特性を処理する必要がある場合、他の方法に比べて、プロセスがより複雑になり、高価になり、おそらくいかなる有意な利点も提供することができなくなる。
以上まとめると、従来のSoC指示方法の主な問題は、バッテリが劣化した際、SoC1モデル化による放電の間、いかなる負荷条件に対しても、EMFモデル化による正確なSoC計算、および正確な残留運転時間の計算が難しいことである。参照表により、劣化過程を考慮した利用可能な方法において、単純な適合性システムを用いることが、最も魅力的であるように思われる。しかしながら、文献で知られる参照表を使用する現在の方法は、各バッテリ種に対するユーザの拡張予測およびバッテリ挙動の予測が難しく、SoCおよび残留運転時間の予測精度の低下につながるため、問題がある。
前述のことを踏まえ、本発明の好適実施例では、充電状態(SoC)とEMFの間の関係を測定する方法が提供され、この方法は、バッテリを低充電状態(SoC)から充電することにより、バッテリの最大容量を定めるステップと、充電状態(SoC)が所定の割合に低下するまで、バッテリを放電するステップと、バッテリを所定の時間、放置するステップと、EMFおよび充電状態(SoC)を求めるステップと、最後の3つのステップをVEODになるまで繰り返すステップと、を有する。
また、好適実施例では、前述のような機器が提供され、当該機器は、さらに、低SoCからバッテリを充電することにより、バッテリの最大容量を求める手段と、所定の割合にSoCが減少するまで、バッテリを放電する手段と、所定の時間バッテリを放置し、EMFおよびSoCを定める手段と、メモリに測定値を代入する手段とを有する。
ここで、前述のモデルは、主として、バッテリの劣化の間、EMFとSoCの間の関係を改善するために適合されることに留意する必要がある。
提案されたEMF適合方法の基本は、電圧緩和モデルと組み合わされた、最大容量および定電流間欠滴定技術(GITT)測定法である。本願では、適合性EMF方法は、以下の測定方法に適用することが考えられる。まず、EMFモデルの正確な適合のため、低SoC値、例えば1%未満のSoCから完全な充電サイクルの間、バッテリの最大容量が定められる。バッテリは、通常の定電流定電圧(CCCV)充電法により、完全に充電され、これは、H. J. Bergveldらの書籍、“バッテリ管理システム−モデル化による設計”、フィリップスリサーチブックシリーズ、vol.1, Kluwer Academic Publishers, 2002, 第6章に記載されている。最大容量は、国際公開第WO2005085889号に記載の方法より計算される。バッテリは、さらに、0.1Cレート電流で、4%SoCのステップに放電される。放電ステップ後には、12時間のレスト時間が続く。レスト期間の終わりに、バッテリは、平衡状態に至る。その結果、対応するSoCを有する、第1のEMF点、EMF1が求められる(図6参照)。放電は、異なる温度でバッテリ電圧がVEoDレベルに到達するまで繰り返される。25℃で4%のSoC放電ステップを使用する、7つのEMF点に対する測定例は、図6に示されている。
選定Cレート電流、SoCステップおよびレスト期間値は、EMF適合方法の実施を容易にするが、前述の方法は、いかなる特定のCレート電流、放電SoCステップ、またはレスト期間にも限定されず、従って各種条件で作動することが可能である。例えば、長いレスト期間を回避するための代替法では、従来の電圧緩和モデルが使用される。電圧緩和モデルの解析から、15分のレスト期間により、拡張した条件の範囲内で、常時、0.5%SoCよりも良好な精度が得られることが観測されている。このため、15分のレスト期間は、バッテリEMFの正確な適用に、十分であると考えられる。しかしながら、これは、いかなる他の緩和時間を排斥するものでもない。
25℃で5.4%の容量ロスバッテリに対するEMF適用の例について、さらに検討する。例えば、この例において、放電の間、水平軸に沿って分布する10点のEMF予測点を検討する。レスト期間の最初の15分間において、測定された電圧および時間サンプルは、電圧緩和モデルの入力として取り扱われる。また、この例では、対応するEMF値において、0と100%のSoCレベルを検討する。さらに、曲線形状が考慮された方法を用いて、12のEMF点がフィッティングされる。得られたEMFは、図7に示されている。長期緩和時間によって得られたEMF(GITT方法)との比較を検討した。図8には、電圧予測(Vp)方法の結果の近接度を示すため、GITT法で得られたEMFとVp法によって得られたEMFの間の差をプロットした。
図7および8から、1.1%SoCにおいて、最大EMF差は、36mVである。これは、放電EMFに基づいて計算される実際のSoC値は、1.1%であるのに対して、EMF適合法を使用すると、この場合、EMFに基づくSoC指示システムは、1.3%のSoC値を示すことを意味する。不正確性は、0.2%SoCとなる。この影響は、EMF-SoC曲線の平坦領域では、より顕著となり、EMFの差がより小さくても、SoCに大きな誤差が生じる。例えば、約8mVの差異では、67%のSoCが得られる。この場合、EMF適合方法では、1%のSoCの不正確性につながる。図7および8から、新たに開発されたEMF適合法を提供した前述の状況では、劣化バッテリについて新たなEMF曲線を得るため、15分の緩和の後、10点のみの予測EMF点を使用したときでも、常時1%以上のSoCの精度向上が得られることがわかる。EMF適合精度は、電圧緩和モデルに対して長い緩和時間を考慮することにより、あるいはフィッティング法のためより多くのEMF点を考慮することにより、容易に改善される。
本願の第2の新たな方法は、SoC1適合法であり、この方法では、バッテリの劣化過程を考慮して、SoC1モデルのパラメータが適合される。バッテリがVEoDレベルまで放電された後の各時間では、EMF値は、従来の電圧緩和モデルにより、緩和過程の最初の数分で予測することができる。図9には、測定例を示す。この図には、0.1Cレート、25℃での100%SoCからの放電ステップを、VEoDレベルまで適用した後、バッテリ開回路電圧(OCV)にどのような変化が生じるかが示されている。緩和過程の最初の15分間、測定OCV、OCVmに基づいて、予測電圧Vpが比較された。測定は、5.4%の容量ロスバッテリで実施された。
従って、好適実施例では、前述の種類の方法が提供され、充電または放電過程後の緩和中に採取されたバッテリ電圧の外挿により、バッテリのEMF値を求めることにより、放電過程の完了後、EMF値が予測される。この外挿は、緩和過程の間に採取された変数のみを使用し、バッテリのEMFと充電状態(SoC)の間の所定の関係を用いて、バッテリのEMFから、バッテリの充電状態(SoC)を取得する、外挿モデルに基づく。
図9からわかるように、放電ステップの後、緩和過程の間、バッテリOCVは、EMFと一致しない。バッテリOCVの値は、電流遮断の後、720分後に、3.0Vから、約3.37Vまで変化する。図9から、緩和過程の最初の15分におけるOCV測定に基づいた電圧予測値は、720分後に測定されたEMF値と極めて接近している。この例では、13mVの差が測定されている。予測EMF値は、さらに、前述の適合SoC=f(EMF)モデルに対する入力として得られる。その結果、適用測定放電条件の下、新たなSoC1値を表すSoC[%]値が計算される。この例では、EMFによるSoC値と、VpによるEMFとの比較により、-0.1%のSoC不正確性が計算される。図9およびVEoDレベルになるまでバッテリを放電した後の各時間の前述の状況から、新たなSoC1値は、VpとSoC=f(EMF)の関係により、正確に定められると言える。
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
前述のような新たに提案されたSoC=f(EMF)およびSoC1のモデルは、以前のSoC1指示アルゴリズムに、有意に使用することができる。しかしながら、これは、バッテリのEMFを使用してSoCを求めたり、残留運転時間を指示したりする、いかなるSoCシステムにも、同様に使用することができる。
図10には、SoC指示システムにおいて、SoC=f(EMF)およびSoC1法を実行する、一般的なブロック図を示す。バッテリ電圧Vbat、電流Ibat、および温度Tbatは、アナログ前処理ユニットより測定され、これは、例えば、フィルタリング処理、増幅、デジタル化を含む。バッテリ変数のデジタル表示は、マイクロコントローラのようなデジタル処理手段に供給される。SoC=f(EMF)およびSoC1法は、EMF法に基づくいかなるSoC指示システムとも同様、このデジタル処理ユニット上でランされる。また、ユニットは、メモリを使用し、これは、外部メモリまたは同じシリコンダイ上に存在するメモリであっても良い。ROMメモリを使用して、EMFまたはSoC1モデルのようなバッテリ特定データを、可能であれば温度の関数として、予め保管しても良い。例えば、測定EMFおよびTサンプルは、RAMメモリに一時的に保管され、EMF曲線は、式5-8に示した形態で、ROM内に保管される。次に、デジタル処理手段は、これらの測定結果を取得し、SoCをモデル化、計算する。同様に、デジタル処理ユニットは、電流、SoC開始、温度測定結果、および保管SoC1モデルに基づいて、残留運転時間を計算する。予測SoCおよび残留運転時間は、ディスプレイを介してユーザに、直接表示されても良く、あるいはデジタルインターフェースを介して、他と通信されても良い。例えば、後者の状況は、図10に示されているデジタル処理手段が、専用SoCおよび残留運転時間指示IC内にある場合に生じ、このICは、SoCおよび残留運転時間データを、携帯装置のホストプロセッサに転送する。
3つの温度で、参照バッテリテスタにおいて得られた測定充電/放電EMF曲線に、SoC=f(EMF)関係をフィッティングするため、式5-8が使用される。充電/放電EMF曲線は、従来の電圧緩和法で測定されても良い。図11から、システムを用いたモデル化放電EMF曲線は、全ての温度において、参照バッテリテスタにおいて得られた測定曲線に対して、良好なフィッティングを示すことがわかる。
図11から、0.8%SoCのSoCにおける最大誤差は、5℃において、約85%SoCであると言える。このため、新たに開発されたSoC=f(EMF)関数は、平衡中のSoC計算において、高い精度を示すと結論づけられる(図1も参照)。SoC1に関する情報を得るため、バッテリは、異なる一定Cレートおよび温度で、異なるSoCstから放電される。放電完了時のSoC値は、SoC1値と見なされる。SoC1値を定める別の可能性は、電圧緩和モデルと、本願に示したSoC=f(EMF)関係とを適用することである。この方法により、電圧緩和曲線の最初の数分間の後、予測されるバッテリ平衡電圧は、本願に示すSoC=f(EMF)関数を用いて、SoC1値に変換される。検証後、前述の方法によって、SoC1値の同様の予測が得られることを観測した。その結果、測定SoC1値は、式9で表されるSoC1モデル用の入力と見なされる。図12には、測定の結果(SoC1m)と、フィッティング(SoC1f)SoC1値の結果が示されている。
図13には、測定データとフィッティングデータの間の接近性をさらに示すため、測定SoC1値とフィッティングSoC1値の間の差をプロットした。図12および13から、測定データとフィッティングSoC1の間の最大差は、45℃において、0.6%であることがわかった。
SoCと残留運転時間の精度を証明するため、改良SoCアルゴリズムを用いて、前述のものと同様の試験(表1参照)を実施した。表3には、得られた結果を示す。
表3の例では、25℃、0.5Cレート電流で、36.2%のSoC放電の開始時に、システムは、42.6分の残留運転時間を示した。残留運転時間は、式3から計算され、この際に、新たなSoC=f(EMF)およびSoC1法が使用された。42.3分後に、バッテリは、3Vのレベルに達し、残留運転時間において、0.3分の精度が計算された。一方、残留運転時間の相対誤差は、0.7%であった。表3から、新たに開発されたSoC=f(EMF)およびSoC1法では、残留運転時間の予測精度が有意に改善されることがわかった。
まとめると、SoCを計算し、残留運転時間を予測する提案された方法は、平衡の間、式5-8のSoC=f(EMF)モデルを使用し、放電の間、クーロン計算に式9のSoC1モデルを組み合わせる。本願に示した結果(表3参照)は、SoCおよび残留運転時間は、1%未満の精度で、予測可能であることを示している。本発明による方法および機器の利点は、以下の通りである:
−バッテリが平衡状態にあるまま、EMFに基づいたSoCの正確な評価ができる、
−平衡の間、従来のEMF=f(SoC)モデルのような、SoCを求める際の数学的な反転が不要である、
−本願のシステムは、SoC計算に加えて、いかなる負荷条件下においても、SoC1法に基づいて、残留運転時間を正確に定めることができる(表3参照)、
−従来の残留運転時間の予測法において必要であった、負荷条件下でのバッテリ過電圧計算、電圧測定、EMFモデル計算は、不要である、
−本願に示した新たなSoC=f(EMF)およびSoC1法は、単純で、バッテリの劣化を考慮するように適合することができる。
−バッテリが平衡状態にあるまま、EMFに基づいたSoCの正確な評価ができる、
−平衡の間、従来のEMF=f(SoC)モデルのような、SoCを求める際の数学的な反転が不要である、
−本願のシステムは、SoC計算に加えて、いかなる負荷条件下においても、SoC1法に基づいて、残留運転時間を正確に定めることができる(表3参照)、
−従来の残留運転時間の予測法において必要であった、負荷条件下でのバッテリ過電圧計算、電圧測定、EMFモデル計算は、不要である、
−本願に示した新たなSoC=f(EMF)およびSoC1法は、単純で、バッテリの劣化を考慮するように適合することができる。
前述のように、新たに提案されたSoC-EMFおよびSoC1適合システムは、従来のSoC指示アルゴリズムに有意に使用することができる。しかしながら、これは、バッテリのEMFを用いてSoCを定めたり、残留運転時間を指示したりする、いかなるSoCシステムに使用することも可能である。図14には、SoC指示システムにおいて、SoC-EMFおよびSoC1適合方法を実行する、一般的なブロック図が示されている。
SoC値は、バッテリが平衡にあるとき、バッテリ電圧(Vbat)および温度(Tbat)の測定、ならびに保管されたSoC-EMFモデル(SoC-EMFm)により、計算される。電流通電条件の間、残留運転時間値は、バッテリ電流(Ibat)および温度測定、ならびにSoC1モデルSoC1mにより、計算される。SoC-EMFmとSoC1mは、一組のパラメータ、par1,…,parnを有し、これは、バッテリが劣化した際に更新され、より正確なバッテリSoCおよび残留運転時間の計算が可能になる。各電流遮断の後、新たな組のバッテリ変数VbatおよびTbatが測定され、SoC適合および予測アルゴリズムは、新たなEMF(SoC-EMFm es)およびSoC1(SoC1m es)値を予測する。これらの予測値は、例えばEEPROMのようなメモリに保管される。この過程は、電流遮断の後、任意回数だけ繰り返される。予測サンプルは、さらに、適合ユニットに供給され、このユニットは、SoCおよび残留運転時間の計算に使用される、SoC-EMFmおよびSoC1mのパラメータ組par1,…,parnの更新を決定する(図14参照)。適合アルゴリズムに、いかなる最適化アルゴリズムを使用しても良く、この各種例は、公開文献に示されている。本願に記載の適合システムの実施により、この構成は、いかなるVbatおよびTbatの値で行われても良いことに留意する必要がある。
SoCおよび残留運転時間の精度を確認するため、25℃、異なる一定Cレート電流で、適合SoCアルゴリズムを用いて、部分バッテリ放電を含む新たな組の試験を実施した。これらの試験の間、5.4%の容量ロスバッテリが選定された。また、拡張条件範囲において、SoC=f(EMF)関係およびSoC1に対するモデル化の精度と適合性とによって、残留運転時間に高い精度が得られることを検証するため、部分放電バッテリについて検討した。これは、新品のバッテリであっても、部分的放電条件の下での残留運転時間の結果が不正確になる、従来のアルゴリズムと比較すると、有意である。表4には、得られた結果を示す(表1と比較参照)。
表4から、25℃の0.10Cレート電流で、20.1%のSoCから実施される放電開始時には、システムは、110.8分の残留運転時間を示した。本願に示す適合システムを用いて、SoC-EMFおよびSoC1モデル用の新たなパラメータ値を得た後、残留運転時間を式3により計算した。108.8分の後、バッテリは、3Vのレベルに達し、残留運転時間の精度は、2.0分であり、相対誤差は、1.8%と計算された。表4から、新たに開発した適合システムでは、劣化バッテリの残留運転時間の予測性が向上することが示された。
本発明は、携帯バッテリ給電機器に適用することができ、特に、Liイオンバッテリに限定されるものではない。本発明は、少なくとも一部がEMF法に基づいた、SoC指示アルゴリズムと組み合わせて使用することができ、バッテリの劣化中においても、バッテリSoCの正確な予測が可能になる。フィリップスリサーチの初期の特許には、バッテリの劣化過程を考慮して、EMFおよびSoC1法を適合させるというアイデアは、含まれていない。充電式リチウムイオンバッテリで給電される携帯装置の各種例は、フィリップス組織内、および組織外で、認めることができる。
Claims (22)
- 充電式バッテリの充電状態(SoC)を、前記バッテリの起電力(EMF)の関数として求める方法であって、
前記充電式バッテリの前記充電状態(SoC)と前記起電力(EMF)の間のパラメータを含む関数を定めるステップと、
前記起電力(EMF)の関数として、前記充電式バッテリの充電状態(SoC)の複数の値を測定するステップと、
前記測定の結果に、前記関数の前記パラメータをフィッティングするステップと、
メモリに、フィッティングパラメータを含む前記関数を保管するステップと、
前記起電力を求めるステップと、
前記起電力の前記測定値を、前記関数に入れるステップと、
前記充電状態(SoC)を読み取るステップと、
を有する方法。 - 前記関数は、
fxは、
無次元数x=F(Eo x−EMF)/RT、
Fは、ファラデー定数(96485Cmol-1)、
EMF(V)は、測定起電力値、
Rは、気体定数(8.314J(molK)-1)、
Tは、(周囲)温度(K)、
|x|は、xの絶対値、
sxは、xのサイン、
Eo xは、フィッティングによって得られるパラメータであり、
fzは、
無次元数z=F(Eo z−EMF)/RT、
|z|は、zの絶対値、
szは、zのサインであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 前記測定は、前の測定の間の温度とは異なる温度で、少なくとも1回繰り返され、
前記測定結果は、測定が行われた前記複数の温度とともに保管され、
以下の関数のパラメータフィッティングが行われ、
par(T)=par(Tref)+(T−Tref)Δpar
ここで、Trefは参照温度(例えば25℃)であり、
Tは、周囲温度であり、
par(Tref)は、温度Trefにおいて、請求項2に記載の前記関数に組み込まれたSoC=f(EMF)モデルパラメータの一つの値であり、
Δparは、前記測定結果に対して、各パラメータpar(Tref)において求められた、温度に対する感度であることを特徴とする請求項2に記載の方法。 - 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法に使用され、前記充電状態(SoC)と前記EMFの間の関係を測定する方法であって、
前記バッテリを、低充電状態(SoC)から充電することにより、前記バッテリの最大容量を定めるステップと、
前記充電状態(SoC)が所定の割合に低下するまで、前記バッテリを放電するステップと、
所定の時間、前記バッテリを放置するステップと、
VEODに到達するまで、前記最後の3つのステップを繰り返すステップと、
を有する方法。 - 前記最大容量まで充電するステップは、定電流定電圧法で実施されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 前記所定の割合は、1%から10%の間にあることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
- 前記所定の時間は、5分から1時間の間にあり、好ましくは15分であることを特徴とする請求項5、6または7に記載の方法。
- 当該方法は、最初の方法が実行された温度とは異なる温度で、少なくとも1回、繰り返されることを特徴とする請求項5、6、7、または8に記載の方法。
- 前記EMFは、前記放電過程後の、緩和中に採取された前記バッテリ電圧の外挿により、定められ、
前記外挿は、前記緩和過程中に採取された変数のみを用いた外挿モデルに基づき、行われることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか一つに記載の方法。 - VEODレベルまでの放電の後、EMFとSoCの間の前記求められた関係を使用して、SoC1が求められることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載の方法。
- 前記放電過程の完了後に、前記放電過程後の緩和過程中に採取されたバッテリ電圧の外挿により、前記バッテリのEMFを求めることにより、前記EMF値が予測され、
前記外挿は、前記緩和過程において採取された変数のみを用いた外挿モデルに基づいており、
前記バッテリのEMFと充電状態(SoC)の間の所定の関係を用いることにより、前記バッテリの前記EMFから、前記バッテリの前記充電状態(SoC)が得られることを特徴とする請求項11に記載の方法。 - 充電式バッテリの充電状態(SoC)を、前記バッテリの起電力(EMF)の関数として求める機器であって、
前記バッテリにおける前記充電状態および前記EMFの決定手段と、
前記充電式バッテリの前記充電状態(SoC)と前記起電力(EMF)の間の、パラメータで表現された関係を、保管するように適合されたメモリと、
前記関係のパラメータを適合させる手段と、
を有する機器。 - 前記関数は、
fxは、
無次元数x=F(Eo x−EMF)/RT、
Fは、ファラデー定数(96485Cmol-1)、
EMF(V)は、測定起電力値、
Rは、気体定数(8.314J(molK)-1)、
Tは、(周囲)温度(K)、
|x|は、xの絶対値、
sxは、xのサイン、
Eo xは、フィッティングによって得られるパラメータであり、
fzは、
無次元数z=F(Eo z−EMF)/RT、
|z|は、zの絶対値、
szは、zのサインであることを特徴とする請求項13に記載の機器。 - 当該機器は、前記バッテリの温度を測定し、前記温度の関数として、充電状態(SoC)と起電力(EMF)の間の関係を保管する手段を有し、前記温度での前記関係が求められることを特徴とする請求項13または14に記載の機器。
- 前記請求項のいずれか一つに記載の機器であって、
さらに、
低いSoCから前記バッテリを充電することにより、前記バッテリの最大容量を定める手段と、
前記SoCが所定の割合に低下するまで、前記バッテリを放電する手段と、
所定の時間、前記バッテリを放置し、
前記EMFおよび前記SoCを求める手段と、
前記メモリに、前記測定された値を代入する手段と、
を有する機器。 - 当該機器器は、前記放電過程後の緩和期間中に採取されたバッテリ電圧の外挿により、前記バッテリのEMFを求めることにより、前記EMF値を予測するように適合され、
前記外挿は、前記緩和過程中に採取された変数のみを用いた外挿モデルに基づき、
得られたEMF値は、クーロン計算から得られたSoCアルゴリズム値とともに,メモリに保管されることを特徴とする請求項17に記載の機器。 - 請求項13乃至18のいずれか一つに記載の、充電式バッテリの充電状態(SoC)を求める機器を有するバッテリ充電装置。
- 請求項13乃至18のいずれか一つに記載の機器を有する、充電式バッテリによって給電されるように適合された電気装置。
- 請求項13乃至18のいずれか一つに記載の機器を有する、携帯電話、GPS装置またはシェーバのような携帯電子装置。
- 請求項13乃至18のいずれか一つに記載の機器、およびけん引バッテリを有する、ハイブリッド車両のような電気駆動車両であって、
前記機器は、前記けん引バッテリの充電状態を求めるように適合されることを特徴とする電気駆動車両。
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