JP2010518071A - 抗癌剤として有用な新規のカチオン性17α−置換−エストラジオール誘導体 - Google Patents

抗癌剤として有用な新規のカチオン性17α−置換−エストラジオール誘導体 Download PDF

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Abstract

本発明は、新規の一連の脂質ベースのカチオン性17α−置換−エストラジオール誘導体を提供する。本発明は、更に、新規の一連の17α−置換−エストラジオール誘導体の調製のための方法を提供する。本発明は、エストロゲン反応性細胞株におけるこれらの分子の高度に選択的な抗癌活性に関する情報も提供する。該化合物は、MCF−7、T47D(エストロゲン受容体陽性細胞株)、MDA−MB−468(エストロゲン受容体ノックアウト細胞株)、Hela(子宮頸癌)のような婦人科関連の癌細胞株に対して高レベルの毒性を誘発する。本発明のクラスの脂質ベースのカチオン性エストラジオール誘導体は、民族性にかかわらず、女性集団に最もよくみられる婦人科関連の癌の治療のための標的特異的に送達可能な抗癌剤の開発に特定の用途を見出されると思われる。

Description

本発明は、抗癌剤として有用な新規カチオン性17α置換エストラジオール誘導体に関する。特に、本発明は、エストロゲン受容体に対する天然リガンドであるエストラジオールの新規の一連の脂質ベースのカチオン性誘導体に関する。より詳細には、本発明は、化学式Aの新規カチオン性17α置換エストラジオール誘導体に関する。
(式中、R及びRの各々は独立して、水素又は少なくとも2個の炭素原子を含む親油性部分であり、前記親油性部分は2〜22個の炭素を含むアルキル、モノ−、ジ−及びトリ−不飽和アルケニル(C〜C22)から選択され、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。;Rは独立して水素又はC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基である。;nは2から7に変動する整数である。;Xは塩素、臭素又はヨウ素原子から選択される。)
本発明は、化学式Aの新規カチオン性17α置換エストラジオール誘導体の調製方法にも関する。本発明は、エストロゲン反応性細胞株におけるこれらの分子の高度に選択的な抗癌活性に関する情報を提供する。本発明から最も恩恵を受けやすい医学分野は標的癌治療である。
化学療法及び放射線療法は、癌の治療に対して最も一般的に用いられる現行の2つの臨床治療法である。大抵の場合、これらの手法は腫瘍の増殖を阻止するのに有効である。しかし、おそらく、不完全な細胞殺滅、又は薬剤耐性を獲得する細胞のせいで、疾患の再発が頻繁に生じる。正常細胞の非特異的集積及び殺滅という付加的な不利点もあり、ヒトにおいて修復不能な細胞毒性をもたらす。これは主に、通常、細胞傷害性薬物が標的性を有さないためである。現在必要なことは、癌特異的分子標的を用いて、例えば、乳癌細胞を標的としてそれらを殺滅するための乳癌特異的蛋白質、例えば、エストロゲン受容体を用いて、ある特定の由来の癌を標的とする、より新しい薬物を開発することである。
エストロゲン受容体(ER)は、癌及び非癌表現型を有する、大部分が婦人科関連の細胞、主に、胸部、子宮及び卵巣細胞に存在する核ホルモン受容体である。ERは血管内皮細胞においても強度に発現することが見出されており、一酸化窒素シンターゼの生成を調節し、故に、血管内皮増殖因子(VEGF)の正の生成及び調節に直接役立つ(3)。VEGFは腫瘍塊の持続的増殖のための周知の血管新生因子の1つである。
ERは2つのサブタイプα及びβを有する。この受容体はリガンド活性化転写因子であり、活性化と同時に核内に移動する。古典的には、ERはホモ二量体としてエストロゲン
応答配列(ERE)と称される特定のDNA配列に結合し、標的遺伝子の転写を正又は負に調節する。乳癌細胞において、それぞれの遺伝子のEREプロモーター活性を通じてERはBCl−2,BRCA−1,VEGFのような癌促進遺伝子を調節する(1)。従って、ERは発癌作用の正の調節因子であり、故に、ERは新規のER標的療法を設計することにより癌を治療するための非常に有用な標的として機能する。
最近、本出願人らは、ERに対する天然リガンドであるエストロゲンが、ステルスカチオン性リポソーム系に結合すると、標的特異的に乳癌細胞への抗癌遺伝子送達を媒介することを示した(2)。ERに対する内因性リガンドであるエストラジオールは化学修飾され、乳癌及び骨粗鬆症を含む様々な疾患を阻止するのに重要性が高いER機能を調節する。初期、即ち、エストロゲン応答期の間、乳癌は化学療法管理を通じて良好に阻止されうる。乳癌及び骨粗鬆症の治療のための新世代薬物を開発するため、17−ベータエストラジオールには様々な構造修飾及び複数のプロアクティブな化学的成分が含まれる。この作用に対して挙げることが可能な複数の例がある:エンジイン系間において、ステロイド部分のエンジイン系に結合するエストラジオールの17α−アルキニル結合体は、エストラジオールに匹敵するER親和性を有する。該化合物は、既知のクラスの抗癌剤であるエンジイン系のシクロ芳香族化によって生じるジイルラジカルの生成を通じ、抗癌標的プロドラッグとして一時的に機能する(4)。アルキル基サイズを有する17−アルキルエストラジオールは、メチルからドデシルまでそれらの炭素鎖が広範に異なり、これも合成され試験されてステロイドスルファターゼ、即ち、正常細胞及び癌細胞における硫酸化エストロゲンの遊離エストロゲンへの転化に関与する酵素に対する優れた抑制作用を見出されている(5)。17−αアジド−アルキニル基を含むエストラジオールはERアゴニスト特性を有することが見出されている(6)。エストラジオールのC−16位もER標的アンタゴニスト/アゴニストを合成するのに用いられる。該C−16位は炭素鎖長及びアミド結合で導入され、抗エストロゲン特性を誘発する(7)。天然ホルモンであるエストラジオールの哺乳動物の内因性代謝産物である2−メトキシエストラジオール(2−ME2)の合成アナログも広範に合成されて検討され、代謝産物2−ME2自体が天然に有するものに比べて高い抗有糸分裂活性が見出されている(8〜12)。該細胞における共有結合性DNA付加物の形成により、ER陽性細胞に対してのみ遺伝毒性を有する、エストラジオールの7−α位におけるアニリンマスタード結合体が開発されている(13)。
本発明は、17α−エストラジオール及びカチオン性二重鎖脂質部分を含む新規の一連のエストロゲン受容体に結合する化学的化合物の開発に関する。本明細書で述べる、この新規クラスのカチオン性エストラジオールの送達誘発性抗癌特性は、婦人科関連の癌細胞のみ、特に、乳癌細胞、また、子宮頸癌細胞に対して著しく指向性を示す。このクラスの分子の細胞毒性は、非婦人科関連の癌細胞及び非癌系統の場合、最小限から皆無である。これは、それぞれの細胞における細胞毒性が、おそらく、婦人科関連の癌表現型に深く関与するエストロゲン受容体を通じて媒介されるということを示す。従って、本発明のクラスのカチオン性エストラジオール誘導体は、エストロゲン受容体に関連する癌に対する抗癌治療に今後の適用を見出すと思われる。更に、本発明のクラスの化合物はそれらの構造にカチオン性部分を有し、しかも、至適カーボン鎖長を有するカチオン基はカチオン性リポソームのような凝集性を有し得、これは、該分子がDNA(ポリアニオン性の生物学的に重要な高分子)に結合するのに役立ちうる。従って、本発明のクラスの分子は、癌を治療することを目的に、ERに関連する癌細胞へのDNA送達剤として機能し得、Carolyn M. Klinge. Nucleic Acid Research, 2001, 29, 2905-2919; Reddy B.S. and Banerjee R. Angewandte Chemie Int. Ed., 2005, 44, 6723-6727; Ken L. Chambliss and Philip W. Shaul, Endocrine Review, 2006, 23, 665-686; Jones et. al. J. Org. Chem., 2001;
66, 3688-3694, and ref. 11 therein; Boivin et. al. J. Med. Chem., 2000, 43, 446
5-4478; Kasiotis et. al. Steroids, 2006, 71 , 249-255; Pelletier et. al. Steroids, 1994, 59, 536- 547; Rao et. al. Steroids, 2002, 67, 1079-1089; Cushman et. al. J. Med. Chem., 1995, 38, 2041-2049; Sachdeva Y. et. al. World Patent No. 9840398, 1998; Purohit A et. al. Int. J. Cancer 2000, 85, 584-589; Brueggemeier R. W.
et. al. J. Steroid Biochem Mol Biol 2001, 78, 145-156; Mitra et. al. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 1862-1863; Jain PT, Seth P, Gewirtz DA Biochim Biophys Acta, 1999, 1451 , 224- 232; Jain PT, Gewirtz DA, J. Mol. Med., 1998, 76, 709-714を参
照しうる。
従って、本発明は、一般化学式Aを有する新規のカチオン性エストラジオール誘導体を提供する。
(式中、R及びRの各々は独立して、水素又は少なくとも2個の炭素原子を含む親油性部分であり、前記親油性部分は2〜22個の炭素を含むアルキル、モノ−、ジ−及びトリ−不飽和アルケニル(C〜C22)から選択され、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。;Rは独立して水素又はC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基である。;nは2から7に変動する整数である。;Xは塩素、臭素又はヨウ素原子から選択される。)
本発明の一実施形態では、R及びRの各々は独立して、水素又は脂肪族炭化水素鎖であり、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。
本発明の別の実施形態では、R及びRは脂肪族炭化水素鎖である。
本発明の更に別の実施形態では、R及びRが独立して水素又は脂肪族炭化水素鎖であると、RはC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は水素原子であり、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。
本発明の更に別の実施形態では、Rはアルキル基であり、R及びRは脂肪族炭化水素鎖である。
本発明の更に別の実施形態では、Rは水素原子であり、R及びRは脂肪族炭化水素鎖である。
本発明の更に別の実施形態では、化学式Aの代表的化合物は次のようになる:
17α−[3−N,N−ジオクチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(1);
17α−[3−N,N−ジヘキサデシル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(2)及び
17α−[3−N,N−ジエチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(3)
本発明の更に別の実施形態では、該化合物は、MCF−7、T47D(エストロゲン受容体陽性細胞株)、MDA−MB−468(エストロゲン受容体ノックアウト細胞株)、Hela(子宮頸癌)からなる群より選択される癌細胞株由来の婦人科関連の癌細胞株に対してin vitro細胞毒性を示す。
本発明の更に別の実施形態では、17α−[3−N,N−ジオクチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(1)は、50μMの前記化合物の濃度にて4時間の処理及び6日間のアッセイ期後、MCF−7、T47D、Hela及びMDA−MB−468からなる群より選択される癌細胞株に対し、2〜10%の範囲のin vitro細胞生存率パーセントを示す。
本発明は、更に、
a)カチオン性エストラジオール誘導体、
b)コリピド(co-lipid)並びに
c)医薬的に許容可能な担体、補助剤又は添加剤を任意に有するポリアニオン化合物
を含む医薬組成物を提供する。
一実施形態では、
a.カチオン性エストラジオール誘導体、
b.コリピド(co-lipid)並びに
c.医薬的に許容可能な担体、補助剤又は添加剤を任意に有するポリアニオン化合物を含む該医薬組成物は、MCF−7、T47D(エストロゲン受容体陽性細胞株)、MDA−MB−468(エストロゲン受容体ノックアウト細胞株)、Hela(子宮頸癌)からなる群より選択される癌細胞種由来の婦人科関連の癌細胞株に対してin vitro細胞毒性を示す。
本発明の更に別の実施形態では、カチオン性エストラジオール誘導体とコリピド(co-lipid)のモル比は約1:1である。
本発明の更に別の実施形態では、カチオン性エストラジオール誘導体及びコリピド(co-lipid)を含む総脂質とポリアニオン化合物(DNA)のモル比は1:1〜8:1の範囲である。
本発明の更に別の実施形態では、用いられるカチオン性エストラジオール誘導体は一般化学式Aの化合物を含む。
(式中、R及びRの各々は独立して、水素又は少なくとも2個の炭素原子を含む親油
性部分であり、前記親油性部分は2〜22個の炭素を含むアルキル、モノ−、ジ−及びトリ−不飽和アルケニル(C〜C22)から選択され、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。;Rは独立して水素又はC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基である。;nは2から7に変動する整数である。;Xは塩素、臭素又はヨウ素原子から選択される。)
本発明の更に別の実施形態では、用いられるコリピド(co-lipid)は、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)からなる群より選択される。
本発明の更に別の実施形態では、用いられるポリアニオン化合物は、治療上重要な蛋白質、核酸、オリゴヌクレオチド、ペプチド又は蛋白質をコードすることが可能である。
本発明の更に別の実施形態では、用いられるポリアニオン化合物は、リボソームRNA、RNA又はDNAのアンチセンスポリヌクレオチド、ゲノムDNA、cDNA又はmRNAのポリヌクレオチドからなる群より選択される。
本発明の更に別の実施形態では、用いられる核酸は環状若しくは線状プラスミド又はリボ核酸である。
本発明は、更に、一般化学式Aを有する新規のカチオン性エストラジオール誘導体の合成のための方法を提供する。
(式中、R及びRの各々は独立して、水素又は少なくとも2個の炭素原子を含む親油性部分であり、前記親油性部分は2〜22個の炭素を含むアルキル、モノ−、ジ−及びトリ−不飽和アルケニル(C〜C22)から任意に選択され、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。;Rは独立して水素又はC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基である。;nは2から7の整数である。;Xは塩素、臭素又はヨウ素原子から任意に選択される。)
前記方法は、
a.既知の方法によりエストロンから3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−アルデヒドプロパン]−17β−エストラジオールを調製するステップ、
b.無水有機溶媒中、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下、上述の前記3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−アルデヒドプロパン]−17β−エストラジオールのアルデヒド化合物をモノ−又はジ−アルキルアミンと反応させ、対応する二級又は三級アミンを得て、次に、有機溶媒中、ハロゲン化アルキルと反応させ、これに伴う三級又は四級化アミンをそれぞれ得て、中間体三級アミンの四級化が−10℃〜50℃の範囲の温度にて行われることを特徴とするステップ、
c.既知の方法によりステップ(b)において得られる上述の前記三級又は四級化アミンの芳香族ヒドロキシル基のシリル保護を脱保護し、次に、ハロゲン化物イオン交換樹脂を
用いてイオン交換クロマトグラフィーを行い、所望の化合物を得るステップを含む。
本発明の更に別の実施形態では、用いられるモノ−又はジ−アルキルアミンは飽和又は不飽和脂肪族炭化水素鎖を有する。
本発明の更に別の実施形態では、用いられるモノ−又はジ−アルキルアミンの飽和又は不飽和脂肪族炭化水素鎖は、C〜C22炭化水素鎖からなる群より選択される。
本発明の更に別の実施形態では、用いられるモノ−、ジ−アルキルアミンの炭化水素鎖は、C〜C22炭化水素からなる群より選択される。
本発明の更に別の実施形態では、ステップ(a)において用いられる有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン及び酢酸エチルからなる群より選択される。
本発明の更に別の実施形態では、ステップ(b)において用いられる有機溶媒は、ジクロロメタン、メタノール及びこれらの混合物からなる群より選択される。
本発明の更に別の実施形態では、ステップ(b)において用いられるハロゲン化アルキルは、C〜Cハロゲン化アルキルから選択される。
本発明の更に別の実施形態では、ステップ(c)において用いられるハロゲン化物イオン交換樹脂は、塩化物、臭化物及びヨウ化物イオン交換樹脂からなる群より選択される。
本発明の更に別の実施形態では、化学式Aの代表的化合物は次のようになる:
17α−[3−N,N−ジオクチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(1);
17α−[3−N,N−ジヘキサデシル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(2)及び
17α−[3−N,N−ジエチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(3)。
本発明は、一連の新規カチオン性エストラジオール誘導体の合成方法、並びに種々のヒト乳癌及び子宮頸癌細胞における、それらのエストロゲン受容体媒介性抗癌活性の評価に関する。17β−エストラジオール部分を含む新規の脂質ベースのカチオン性誘導体は、エストロゲン受容体と直接/間接的に関連する癌細胞を標的として特異的に作用する抗癌剤として機能する。本発明から最も恩恵を受けやすい科学分野は標的癌治療である。
本発明において開示されるカチオン性エストラジオール誘導体に一般的な顕著な新規構造的特徴は、(1)正荷電窒素原子に直接結合する疎水基の存在及び(2)エストロゲン受容体に結合する17β−エストラジオール基の存在を含む。これらの独特な構造的特徴が、本明細書で開示される新規カチオン性エストラジオール誘導体のエストロゲン受容体媒介性抗癌活性に直接的/間接的に有意に寄与すると考えられる。
本発明の実施形態によれば、「カチオン性」とは四級化窒素又はプロトン化窒素原子上の正電荷を意味する。本発明の脂質ベースの誘導体のカチオン特性は、脂質ベースの誘導体と、特に、乳癌及び子宮頸癌細胞における原形質膜糖蛋白質のような細胞構成物との亢進的で選択的な相互作用に寄与しうる。この見地から生じる特異性の理由は未だ解明されていないが、このような脂質ベースのカチオン性誘導体と細胞膜構成物との相互作用の亢進は、分子に結合した状態である対象治療成分を癌細胞に良好に輸送するのにも重要な役
割を果たしうる。
本発明のカチオン性エストラジオール誘導体は、特定の一般的な構造的及び機能的な基を有する。そのようなものとして、前記カチオン性エストラジオール誘導体は次の一般化学式(A)によって示されうる。
(式中、R及びRの各々は独立して、水素又は少なくとも2個の炭素原子を含む親油性部分であり、前記親油性部分は2〜22個の炭素を含むアルキル、モノ−、ジ−及びトリ−不飽和アルケニル(C〜C22)から任意に選択され、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。;Rは独立して水素又はアルキル(C〜C、直鎖又は分枝鎖)である。;nは2から7の整数であり、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子から選択される。)
本発明のカチオン性エストラジオール誘導体は、水溶液中にて脂質複合体又は凝集体の形成を促進し、或いは促進し得ない親油性ドメインを有する。しかし、エストラジオール部分の存在のため、分子は血清関連のIn vivo模倣状態において安定した可溶性状態を維持する。これは、主に疎水性の分子であるエストロゲンが、自然に「ポケットに入る」状態として血清蛋白質中に残留することにより、卵巣の外部へ自由に移動し、血管及びリンパ管体中を進み、乳房及び子宮のような対象臓器へ向かうという事実と一致する。
例示的な親油性R及びR基は、(1)飽和C〜C22アルキル基及び(2)1,2又は3個の二重結合を有する不飽和C〜C22アルケニル基を含む。本開示のカチオン性脂質の好ましい一実施形態では、R=R=n−オクチル、Rはメチルであり、n=3、Xは塩化物イオンである。従って、1番の化合物は本発明に記載の新規カチオン性エストラジオール誘導体の代表例である。
(カチオン性エストラジオール誘導体の合成)
スキーム1は、本発明において述べる代表的なカチオン性エストラジオール誘導体1を調製するために用いられる合成方法の概要を示している。
A.tert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBDMSトリフラート)、2,6−ルチジン、無水DCM
B.Mg、臭化アリル、無水THF、1,2−ジブロモエタン(開始剤として)
C.ボラン−ジメチルスルフィド錯体(BH.DMS)、3NNaOH、30%H、無水THF
D.塩化オキサリル、DMSO、トリエチルアミン、−78℃、無水DCM
E.N,N−ジオクチルアミン、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、無水DCM
F.ヨウ化メチル、DCM+メタノール(1:1)
G.テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、THF、AmberlystA−26
(代表的化合物1,2及び3の構造体)
(本発明に記載の新規カチオン性エストラジオール誘導体Aの癌細胞特異的抗癌特性)
様々なモル濃度(0.5μM〜50μM)にわたり、種々の癌及び非癌細胞に対する誘導体Aのin vitro細胞毒性試験が行われた。癌細胞は、乳癌細胞MCF−7(原発癌)、T47D(腺管癌)、MDA−MB−468(続発性、転移性);子宮頸癌細胞Hela;肺癌細胞A549(転移性)のような様々な由来のものから選定された。本試験に選定された非癌細胞はCHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)及びCOS−1(サル腎細胞)であった。一連の試験において、細胞は誘導体Aの様々な濃度にて4時間処理され、洗浄され、血清培地に6日間維持され、4日後にアッセイが行われた一細胞株を除き(図3)、MTTアッセイを用いて細胞毒性を観察した(図1,2,4,6A及び6B)。別の一連の試験において、細胞は血清培地の存在下、48時間連続して処理され、細胞毒性は直ちにアッセイされた(図5)。図1〜3から明らかなように、乳癌細胞は10μMの誘導体Aの4時間のみの最初の曝露に対し、50%未満の生存率を示した。図4から明らかなように、4時間のみの曝露後、10μMの誘導体AはA549、Hela、CHO及びCOS−1細胞に対して細胞毒性を誘発しなかった。これは、エストロゲン受容体と直接/間接的に関連する乳癌細胞が、誘導体Aで処理されると、細胞殺滅を受けやすかったことを示す。MCF−7及びT47Dは天然ER発現乳癌細胞であり、一方、MDA−MB−468は天然ERノックアウト乳癌細胞である。しかし、MDA−MB乳癌細胞は、エストロゲン曝露後、遺伝子導入の亢進のような非常に興味深い生化学的特性を示し(14〜15)、これにより、ER発現は皆無であるが、この細胞株において外来エストロゲンを用いうる生化学的経路が依然として活性化していることを示す。従って、エストロゲン又は誘導体Aのようなその誘導体は、もはや天然ERを発現しないある種の乳癌細胞において何らかの未解明の生化学的現象を示す。従って、図1〜4は、誘導体Aの短時間の曝露であっても、乳癌細胞が直接/間接的にERと関連する、最も作用を受ける細胞であることを示した。
第二の一連の試験において、10μMの誘導体Aの48時間連続曝露後、乳癌細胞のみならず子宮頸癌細胞Helaも極低生存率を示した(図5)。10μMの誘導体Aの48時間連続処理であっても、癌細胞A549及び非癌細胞CHOは毒性の徴候を示さなかった。この一連の結果は、誘導体Aの連続曝露にて、婦人科関連の由来、即ち、乳房、子宮頸部などに由来する癌細胞は、10μMの極低濃度であっても50%又はそれよりはるかに低い生存率を示した。エストロゲンは婦人科関連の臓器の正常な成長に対し、直接/間接的な役割を有する天然リガンドである。ERとの結合後、エストロゲンは乳癌又は他の婦人科関連の癌において、複数の癌促進遺伝子を調節しうる(1)。従って、エストラジ
オールの任意の誘導体が、直接/間接的にERと関連する婦人科関連の臓器への標的送達を示しうることは当然である。本出願人らのエストラジオール誘導体は、おそらく何らかの未解明の遺伝的調節により、婦人科関連の癌細胞のみにおいて抗癌活性を促進し、婦人科に関係しない癌細胞及び非癌細胞には影響を与えない状態におく。
(応用)
本発明は、乳癌、子宮頸癌などのような婦人科関連の癌を治療することに利用できる。本発明の脂質誘導体も、標的治療を目的としてポリアニオン、ポリペプチド又はヌクレオポリマー(nucleopolymer)を、エストロゲン受容体を介して癌細胞のみに送達するよう
に用いられうる。本明細書で開示されるカチオン性エストロゲン誘導体は、治療的使用のために発現ベクターを細胞に送達するように用いられうる。発現ベクターは遺伝子治療プロトコルにおいて、治療上有用な蛋白質を細胞に送達し、或いは治療上有用な蛋白質分子をコードする核酸を送達するために用いられうる。本発明、即ち、カチオン性エストラジオール誘導体は、親油性化合物であるドキソルビシンのような抗癌補助剤を含むアニオン性、両性イオン性及び親油性治療剤と配合され、本発明の誘導体及び治療剤を含む複合体を得ることができる。特に、本発明で開示されるカチオン性エストラジオール誘導体は、癌に対して効果的な今後の標的抗癌治療法の開発の可能性を有する。
(細胞及び細胞培養)
CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、COS−1(アフリカミドリザル腎細胞)、HeLa(ヒト子宮頸癌)、MCF−7(ヒト原発性乳腺癌)、T47D(ヒト乳管癌)、MDA−MB−468(ヒト続発性乳腺癌)及びA−549(ヒト肺癌)細胞株は、インド、プネー(Pune)に所在する国立細胞科学センター(National Centre for Cell Sciences)(NCCS)から得られ、マイコプラズマを含まなかった。細胞は、5%CO
を含む加湿大気中、10%ウシ胎仔血清、50μg/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン及び20μg/mLカナマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)[MDAMB−468細胞ではRPMI 1640培地]にて37℃で培養さ
れた。すべての試験に対し、85〜90%の集密度の培養物が用いられた。細胞は、生存率の検討のため、トリプシン処理され、計数され、96ウェルプレートにて継代培養された。細胞は試験に用いられる前に一晩付着させられた。
(試料の調製及び試料の処理)
カチオン性エストラジオール誘導体は細胞培養グレードのDMSO中に溶解され、一次原液を得た。該原液はDMSOで漸進的に希釈され、二次原液を得る。最後に、10%ウシ胎仔血清含有細胞培地に該DMSO二次原液を加えることにより、誘導体の実用濃度が得られた。実用溶液中のDMSOの量は血清含有培地に対して0.2%を超えなかった。それぞれの濃度のカチオン性エストラジオール誘導体を含む細胞培養液100μlが、リン酸緩衝生理食塩水で予め洗浄された細胞に付与される。細胞はそれぞれの濃度のエストラジオール誘導体に4時間又は48時間曝露状態にされた。4時間の処理では、細胞は、洗浄され、場合により4日又は6日間、実用濃度のエストラジオール誘導体を含まない細胞培地の存在下に維持された。次に、細胞はMTTを用いて生存率についてアッセイされた。48時間連続処理では、細胞は、洗浄され、直ちにMTTを用いて生存率についてアッセイされた。
次の実施例は、実際の実施形態における本発明の運用の例示として挙げられ、従って、本発明の範囲を限定すると読み取り、或いは解釈されるべきではない。
(実施例1)
(カチオン性エストラジオール誘導体の合成(スキーム1))
(ステップA:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシエストロンの合成:)
無水DCM及び無水DMF(9:1v/v)中のエストロン(a)(1g,3.69ミリモル)溶液に、2,6ルチジン1.18g(11.09ミリモル)及びTBDMS−トリフラート0.93ml(4.06ミリモル)を0℃で加えた。該反応混合物を室温で30分攪拌した。該反応混合物をジクロロメタン20mlに取り込み、飽和NaHCO溶液(1×20ml)、水(2×20ml)及び食塩水(1×20ml)で洗浄した。最後に、該非水性溶媒を無水NaSOで乾燥させ、真空中で乾燥させた。乾燥残留物のカラムクロマトグラフィー精製(溶離溶媒混合物として60〜120メッシュシリカゲル及びヘキサン中2%酢酸エチルを用いて)により、白色固形物(1.01g、収率71%、ヘキサン中10%酢酸エチル中R 0.4)としてaが得られた。
H NMR(300MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.9[s,3H,18−CH3],1.0[s,9H,SiC(CH],1.4−1.7及び1.9−2.55[m,13H,シクロペンタン及びシクロヘキサン環プロトン],2.85[m,2H,6−CH],6.52[d,J=2.2Hz,1H,4−CH],6.57[dd,J1=2.6Hz及びJ2=8.4Hz,1H,2−CH],7.09[d,J=8.4Hz,1H,1−CH],
FABMS(LSIMS):m/z:C2436SiOに対して384(観測質量)、384.62(計算質量)
(ステップB:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−プロペニル−17β−エストラジオールの合成:)
無水THF(5ml)中のMg金属(300mg,12.57ミリモル)の混合物に、1,2−ジブロモエタン(触媒量)及び臭化アリル(1.07ml,12.57ミリモル)を窒素雰囲気下0℃で滴加した。該反応混合物を室温で30分攪拌した。上記混合物に、無水THF(10ml)中に溶解したa(967mg,2.5ミリモル)を0℃で加えた。該反応混合物を16時間環流させた。反応終了後、該反応混合物を、塩化アンモニウム溶液の飽和溶液(20ml)を室温で加えることにより急冷し、次に、酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。その有機層を、水(2×50ml)、食塩水(1×50ml)で洗浄し、最後に、無水NaSOで乾燥させた。残留物のカラムクロマトグラフィー精製(溶離溶媒として60〜120メッシュシリカゲル及びヘキサン中4%エーテルを用いて)により、白色固形物(890mg、収率83%、ヘキサン中20%エーテル中R
0.58)としてaが得られた。
H NMR(300MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.91[s,3H,18−CH],1.0[s,9H,SiC(CH],1.2−1.7及び2.05−2.4[m,13H,シクロペンタン及びシクロヘキサン環プロトン],1.85−2.0[dm,2H,−CH−CH=CH],2.85[m,2H,6−CH],5.1−5.32[dd,2H,CH=CH],5.95[m,1H,CH=CH],6.52[d,1H,4−CH],6.57[dd,1H,2−CH]7.09[d,1H,1−CH],
FABMS(LSIMS):m/z:C2742SiOに対して426(観測質量)、426.71(計算質量)
(ステップC:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−ヒドロキシプロパン]−17β−エストラジオールの合成:)
17α−プロペニル−β−エストラジオール(890mg,2.09ミリモル)の攪拌THF(5ml)水溶液に、DMS中のボラン(97%水溶液、0.3ml、4.28ミリモル)を0℃で加え、窒素下で6時間攪拌した。3NNaOH(6ml)及びH(4.5ml,30%w/v)の水溶液を0℃で加え、その混合物を室温まで加温した。次に、その結果生じた混合物を、水で急冷し、酢酸エチル(2×20ml)で抽出した。有機層を、水(2×25ml)、食塩水(1×25ml)で洗浄し、最後に、無水NaSOで乾燥させ、真空下で水分を蒸発させた。溶離溶媒混合物としてヘキサン/酢酸エ
チル(80:20)を用いたカラムクロマトグラフィーにより粗化合物を精製し、481mg(51.25%)のアルコール(a)を得た。
H NMR(300MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.91[s,3H,18−CH3],0.99[s,9H,SiC(CH],1.2−2.3[m,17H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン及び17α−CHCH−CH−OH],2.80[m,2H,6−CH],3.6−3.75[dm,2H,17α−CHCH−CH−OH],6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH],
FABMS(LSIMS):m/z:C2743SiOに対して444(観測質量)、443.72(計算質量)
(ステップD:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−アルデヒドプロパン]−17β−エストラジオールの合成:)
ジクロロメタン(10mL)中の塩化オキサリル(205mg,1.62ミリモル)の冷却(−78℃、アセトンドライアイス浴(both))溶液に、無水ジメチルスルホキシド(252mg,3.24ミリモル)を滴加し、その結果生じた混合物を15分攪拌し、ジクロロメタン(5mL)中に溶解したアルコール(480mg,1.018ミリモル)を−78℃で滴加した。その混合物を30分攪拌し、トリエチルアミン(654mg,12.57ミリモル)を滴加し、その結果生じた混合物を室温で2時間、漸進的に加温した。該混合物を、水(50mL)で急冷しジクロロメタン(50×3)で抽出し、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。更なる精製を行うことなく、その粗生成物(a)を次の反応に対して継続させた。
(ステップE:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−N,Nジオクチル(アミノ)プロパン]−17β−エストラジオールの合成:)
上記のように調製した粗アルデヒド(a)(400mg,0.904ミリモル)及びN,N−ジオクチルアミン(218mg,0.904ミリモル)を、ジクロロメタン10mL中に溶解し、窒素下にて室温で0.5時間攪拌した。その反応混合物にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(329mg,4.52ミリモル)を加え、窒素雰囲気下にて更に24時間攪拌を継続した。その反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー精製(溶離液として60〜120メッシュサイズのシリカゲル及びヘキサン/酢酸エチル(80:20)を用いて)後、残留物により標記化合物(a)、100mg(25.2%)を半固形物として得た。
H NMR(300MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.87−0.93[m,9H,18−CH3,N−(CH−(CH−CH],0.99[s,9H,SiC(CH],1.2−2.3[m,41H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−(CH−CH],2.72−2.84[m,8H,6−CH,17α−CHCH−CH−N−(CH−(CH−CH],6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH].
FABMS(LSIMS):m/z:C4377SiONに対して669(観測質量)、668.16(計算質量)C4377SiO
(ステップF:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−N,N−ジオクチル(メチル)アミノプロパン]−17βエストラジオールの合成:)
ステップEで得られた化合物(a)(100mg,0.149ミリモル)を、(4mL)ジクロロメタン+メタノール(1:1)中の過剰のヨウ化メチル(3mL)で処理し、室温で3時間攪拌した。その反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー精製(溶離液として100〜200メッシュサイズのシリカゲル及びクロロホルム中2%メタノー
ルを用いて)後、残留物により標記化合物(a)、80mg(80%)を淡黄色固形物として得た。
H NMR(200MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.87−0.93[m,9H,18−CH3,N−(CH−(CH−CH],0.99[s,9H,SiC(CH],1.2−2.3[m,41H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−(CH−CH],2.84[m,2H,6−CH],3.3−3.6[m,9H,CH−N及びCH−N],6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH].
(ステップG:17α−[3−N,N−ジオクチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオールの合成(スキーム1における構造体1):)
化合物(a)(80mg,0.1173ミリモル)をTHF(2mL)中に溶解し、THF(2mL)中の過剰のテトラブチルフッ化アンモニウムを、0℃で加え、窒素雰囲気下にて6時間攪拌した。その混合物を、水(15mL)で急冷しジクロロメタン(25×3)で抽出し、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。60〜120メッシュシリカゲル、溶離液としてメタノール:クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、次に、溶離液としてメタノールを用いたAmberlystA−26における塩化物イオン交換を行い、37mg(46.25%)の化合物1を得た。
H NMR(200MHz,CDCl):δ=0.87−0.93[m,9H,18
−CH3,N−(CH−(CH−CH],1.2−2.3[m,41H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−(CH−CH],2.84[m,2H,6−CH],3.0[S,3H,CH−N],3.2[m,6H,CH−N]6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH].
ESI−MS:m/z:C3864Nに対して568(観測質量)、566.94(計算質量)
(実施例2)
(カチオン性エストラジオール誘導体2の合成)
ステップA〜Dは誘導体1(又は構造体1)の合成に示すものと同じである。
(ステップE:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3N,Nジヘキサデシル(アミノ)プロパン]−17β−エストラジオール:)
(実施例−1における)ステップ−Dにおいて調製した粗アルデヒド、(500mg,1.13ミリモル)及びN,N−ジ−オクタデシリルアミン(558mg,1.4ミリモル)を、ジクロロメタン10mL中に溶解し、窒素下にて室温で0.5時間攪拌した。その反応混合物にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(283mg,4.50ミリモル)を加え、窒素雰囲気下にて更に24時間攪拌を継続した。その反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー精製(溶離液として60〜120メッシュサイズのシリカゲル及びヘキサン/酢酸エチル(80:20)を用いて)後、残留物により標記化合物、321mg(57.3%)を半固形物として得た。
H NMR(300MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.87−0.93[m,9H,18−CH3,N−(CH−(CH14−CH],0.99[s,9H,SiC(CH],1.2−2.3[m,73H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−(CH14−CH],2.72−2.84[m,8H,6−CH,17α−CHCH−CH−N−(CH−(CH14−CH],6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1
−CH].
FABMS(LSIMS):m/z:C59109SiONに対して893(観測質量)、892.54(計算質量)
(ステップF:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−N,N−ジヘキサデシル(メチル)アミノプロパン]−17βエストラジオールの合成:)
ステップEで得られた化合物(300mg,0.335ミリモル)を、(4mL)ジクロロメタン+メタノール(1:1)中の過剰のヨウ化メチル(3mL)で処理し、室温で3時間攪拌した。その反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー精製(溶離液として100〜200メッシュサイズのシリカゲル及びクロロホルム中2%メタノールを用いて)後、残留物により標記化合物(a)、170mg(56.6%)を淡黄色固形物として得た。
H NMR(200MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.87−0.93[m,9H,18−CH3,N−(CH−(CH14−CH],0.99[s,9H,SiC(CH],1.2−2.3[m,73H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−(CH14−CH],2.84[m,2H,6−CH],3.3−3.6[m,9H,CH−N及びCH−N],6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH].
(ステップG:17α−[3−N,N−ジヘキサデシル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオールの合成(構造体2又は誘導体2):)
上記で得られた化合物(100mg,0.11ミリモル)をTHF(2mL)中に溶解し、THF(2mL)中の過剰のテトラブチルフッ化アンモニウムを、0℃で加え、窒素雰囲気下にて6時間攪拌した。その混合物を、水(15mL)で急冷しジクロロメタン(25×3)で抽出し、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。60〜120メッシュシリカゲル、溶離液としてメタノール:クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、次に、溶離液としてメタノールを用いたAmberlystA−26における塩化物イオン交換を行い、60mg(60.0%)の構造体−2を得た。
H NMR(200MHz,CDCl):δ=0.87−0.93[m,9H,18
−CH3,N−(CH−(CH14−CH],1.2−2.3[m,73H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−(CH14−CH],2.84[m,2H,6−CH],3.0[S,3H,CH−N],3.2[m,6H,CH−N]6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH].
ESI−MS:m/z:C5496Nに対して792(観測質量)、791.36(計算質量)
(実施例3)
(カチオン性エストラジオール誘導体3の合成)
ステップA〜Dは誘導体1(又は構造体1)の合成に示すものと同じである。
(ステップE:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−3N,N−ジエチル(メチル)アミノプロパン−17β−エストラジオール:)
(実施例1における)ステップ−Eにおいて調製した粗アルデヒド、(500mg,1.13ミリモル)及びN,N−ジ−ジエチルアミン(90mg,1.23ミリモル)を、ジクロロメタン10mL中に溶解し、窒素下にて室温で0.5時間攪拌した。その反応混合物にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(283mg,4.50ミリモル)を加え、窒素雰囲気下にて更に24時間攪拌を継続した。その反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフ
ィー精製(60〜120メッシュサイズのシリカゲル及び溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(80:20)を用いて)後、残留物により標記化合物、180mg(36.01%)を半固形物として得た。
H NMR(300MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.87−0.93[m,9H,18−CH3,N−(CH−CH],0.99[s,9H,SiC(CH],1.2−2.3[m,16H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−CH],2.72−2.84[m,8H,6−CH,17α−CHCH−CH−N−(CH−CH],6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH].
(ステップF:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−N,N−ジエチル(メチル)アミノプロパン]−17βエストラジオールの合成:)
ステップ−Eで得られた化合物(180mg,0.36ミリモル)を、(4mL)ジクロロメタン+メタノール(1:1)中の過剰のヨウ化メチル(3mL)で処理し、室温で3時間攪拌した。その反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー精製(100〜200メッシュサイズのシリカゲル及び溶離液としてクロロホルム中2%メタノールを用いて)後、残留物により標記化合物(a)、120mg(66.6%)を淡黄色固形物として得た。
H NMR(200MHz,CDCl):δ=0.19[s,6H,Si(CH
],0.87−0.93[m,9H,18−CH3,N−(CH−CH],0.99[s,9H,SiC(CH],1.2−2.3[m,16H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−CH],2.84[m,2H,6−CH],3.3−3.6[m,9H,CH−N及びCH−N],6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH].
(ステップG:17α−[3−N,N−ジエチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオールの合成(構造体3又は誘導体3):)
上記で得られた化合物(120mg,0.233ミリモル)をTHF(2mL)中に溶解し、THF(2mL)中の過剰のテトラブチルフッ化アンモニウムを、0℃で加え、窒素雰囲気下にて6時間攪拌した。その混合物を、水(15mL)で急冷しジクロロメタン(25×3)で抽出し、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。60〜120メッシュシリカゲル、溶離液としてメタノール:クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、次に、溶離液としてメタノールを用いたAmberlystA−26における塩化物イオン交換を行い、72mg(60.0%)の構造体−3を得た。
H NMR(200MHz,CDCl):δ=0.87−0.93[m,9H,18
−CH3,N−(CH−(CH−CH],1.2−2.3[m,16H,シクロペンタン,シクロヘキサン環プロトン,17α−CHCH−CH−N−(CH−CH],2.84[m,2H,6−CH],3.0[S,3H,CH−N],3.2[m,6H,CH−N]6.50[s,1H,4−CH],6.55[d,1H,2−CH]7.05[d,1H,1−CH].
ESI−MS:m/z:C2642Nに対して382(観測質量)、400.62(計算質量)
(実施例4)
(細胞生存率パーセント)
3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)減少アッセイにより、カチオン性エストラジオール誘導体1の細胞毒
性を評価した。96ウェルプレートにて該アッセイを行った。試験の継続時間に応じて、8000〜15000個の細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、一晩維持した。例えば、細胞がプレートの底部に付着した12時間後、それぞれの濃度の誘導体1を含む溶液を三つ組ウェルに添加した。前述のように、誘導体1の細胞に対する処理は4時間又は48時間であった。4時間処理では、細胞を洗浄し、4日又は6日間血清培地に維持し、次に、MTTを細胞に添加した。48時間処理では、細胞を直ちに洗浄し、次に、MTTを細胞に添加した。その結果を生存率パーセントとして示した=[A540(処理細胞)−バックグラウンド/A540(未処理細胞)−バックグラウンド]×100。図1〜6は、種々の濃度及び異なる由来の細胞にわたる、1に対するMTTベースの細胞生存率アッセイの結果の概要を示す。
(実施例5)
(DNA結合アッセイ)
0.8%アガロースゲル上のゲル遅延アッセイにより、17α置換エストラジオール誘導体2及び3(構造体2及び3)のDNA結合能をアッセイした。
総量16μlのHEPES緩衝液(pH7.4)中、0.40μgのpCMV−SPORT−βgalをカチオン性エストラジオール誘導体(カチオン性エストラジオール誘導体において:DNA電荷比8:1,4:1,2:1及び1:1)と複合体形成させ、ロータリーシェーカーにて室温で30分インキュベートした。これに3μlの6Xローディングバッファー(0.25%ブロモフェノールブルー、40%スクロース)を加え、全溶液を各ウェルにローディングした。これらの試料を80Vで約2時間電気泳動させ、臭化エチジウム液で30分染色することによりDNAバンドを可視化し、次に、水中で30分脱色した。
血清培地の存在下、0.5μM〜50μMの濃度変化にわたる、MCF−7細胞における誘導体1のin vitro毒性プロファイルの概略を示すグラフ図である。該細胞は処理後4時間にて洗浄され、6日間維持され、最後に、MTTにより生存率がアッセイされた。該毒性プロファイルは、裸の17β−エストラジオール及び血清培地中の裸の誘導体Aを処理するために用いられる最大量のDMSOとも比較される。 血清培地の存在下、0.5μM〜50μMの濃度変化にわたる、T47D細胞における誘導体1のin vitro毒性プロファイルの概略を示すグラフ図である。該細胞は処理後4時間にて洗浄され、6日間維持され、最後に、MTTにより生存率がアッセイされた。該毒性プロファイルは、裸の17β−エストラジオール及び血清培地中の裸の誘導体Aを処理するために用いられる最大量のDMSOとも比較される。 血清培地の存在下、0.5μM〜50μMの濃度変化にわたる、MDA−MB−468細胞における誘導体1のin vitro毒性プロファイルの概略を示すグラフ図である。該細胞は処理後4時間にて洗浄され、4日間維持され、最後に、MTTにより生存率がアッセイされた。該毒性プロファイルは、裸の17β−エストラジオール及び血清培地中の裸の誘導体Aを処理するために用いられる最大量のDMSOとも比較される。 様々な癌及び非癌細胞において4時間処理された10μMの誘導体1のin vitro毒性比較の概略を示すグラフ図である。処理後、細胞は洗浄され、血清培地に6日間維持され、次に、MTTにより生存率がアッセイされた。 様々な癌及び非癌細胞において48時間処理された10μMの誘導体1のin vitro毒性比較の概略を示すグラフ図である。処理後、細胞は洗浄され、MTTにより直ちに生存率がアッセイされた。 (A)様々な癌及び非癌細胞において4時間処理された10μMの誘導体1,2及び3(即ち、構造体1,2及び3)のin vitro毒性比較の概略を示すグラフ図である。処理後、細胞は洗浄され、血清培地に6日間維持され、次に、MTTにより生存率がアッセイされた。(B)様々な癌及び非癌細胞において4時間処理された50μMの誘導体1,2及び3(即ち、構造体1,2及び3)のin vitro毒性比較の概略を示すグラフ図である。処理後、細胞は洗浄され、血清培地に6日間維持され、次に、MTTにより生存率がアッセイされた。 コリピド(co-lipid)DOPEと組み合わせた新規カチオン性17−α置換エストラジオール−誘導体2及び3(構造体2及び3)が、特に、より高い電荷比4:1及び8:1にて部分的〜全DNA凝集性を示していることを示す写真図である。コリピド(co-lipid)をコレステロールとして用いると、誘導体2及び3のDNA結合性は所定の条件では認められない。(A)誘導体2のDNA結合性を示す写真図である。それぞれのコリピド(co-lipid)及びDNAとして誘導体2(即ち、構造体2)、コレステロール又はDOPEを含む脂質DNA複合体のゲル遅延アッセイの結果の概略を示す。誘導体2とそれぞれのコリピド(co-lipid)はモル比が1:1である。DNA 0.4μgを用いて総脂質とDNAのモル比(又は電荷比+/−)は、ゲル写真に示すように、1:1〜8:1にばらついた。最も右側のレーンには純粋なDNAが泳動した。(B)誘導体3のDNA結合性を示す写真図である。それぞれのコリピド(co-lipid)及びDNAとして誘導体3(即ち、構造体3)、コレステロール又はDOPEを含む脂質DNA複合体のゲル遅延アッセイの結果の概略を示す。誘導体3とそれぞれのコリピド(co-lipid)はモル比が1:1である。DNA 0.4μgを用いて総脂質とDNAのモル比(又は電荷比+/−)は、ゲル写真に示すように、1:1〜8:1にばらついた。最も右側のレーンには純粋なDNAが泳動した。

Claims (26)

  1. 一般化学式Aを有する新規のカチオン性エストラジオール誘導体。
    (式中、R及びRの各々は独立して、水素又は少なくとも2個の炭素原子を含む親油性部分であり、前記親油性部分は2〜22個の炭素を含むアルキル、モノ−、ジ−及びトリ−不飽和アルケニル(C〜C22)から選択され、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。;Rは独立して水素又はC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基である。;nは2から7に変動する整数である。;Xは塩素、臭素又はヨウ素原子から選択される。)
  2. 前記R及びRの各々が独立して、水素又は脂肪族炭化水素鎖であり、但し、前記R及びRの両方が水素というわけではないとする、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記R及びRが脂肪族炭化水素鎖である、請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 前記R及びRが独立して水素又は脂肪族炭化水素鎖であると、前記RがC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は水素原子であり、但し、前記R及びRの両方が水素というわけではないとする、請求項1に記載の化合物。
  5. 前記Rがアルキル基であり、前記R及びRが脂肪族炭化水素鎖である、請求項1又は4に記載の化合物。
  6. 前記Rが水素原子であり、前記R及びRが脂肪族炭化水素鎖である、請求項1又は4に記載の化合物。
  7. 化学式Aの代表的化合物が、以下:
    17α−[3−N,N−ジオクチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(1);
    17α−[3−N,N−ジヘキサデシル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(2)及び
    17α−[3−N,N−ジエチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(3)
    のようになる、請求項1に記載の化合物。
  8. MCF−7、T47D(エストロゲン受容体陽性細胞株)、MDA−MB−468(エストロゲン受容体ノックアウト細胞株)、Hela(子宮頸癌)からなる群より選択される癌細胞種由来の婦人科関連の癌細胞株に対してin vitro細胞毒性を示す、請求項1に記載の化合物。
  9. 前記17α−[3−N,N−ジオクチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エスト
    ラジオール(1)が、50μMの前記化合物の濃度にて4時間の処理及び6日間のアッセイ期後、MCF−7、T47D、Hela及びMDA−MB−468からなる群より選択される癌細胞株に対し、2〜10%の範囲のin vitro細胞生存率パーセントを示す、請求項1に記載の化合物。
  10. a.カチオン性エストラジオール誘導体と、
    b.コリピド(co-lipid)と、
    c. 医薬的に許容可能な担体、補助剤及び添加剤を任意に有するポリアニオン化合物とを含む医薬組成物。
  11. 前記カチオン性エストラジオール誘導体と前記コリピド(co-lipid)とのモル比が約1:1である、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記カチオン性エストラジオール誘導体及びコリピド(co-lipid)を含む総脂質とポリアニオン化合物(DNA)とのモル比が1:1〜8:1の範囲である、請求項10に記載の組成物。
  13. 用いられる前記カチオン性エストラジオール誘導体が、一般化学式Aの化合物を含む、請求項10に記載の組成物。
    (式中、R及びRの各々は独立して、水素又は少なくとも2個の炭素原子を含む親油性部分であり、前記親油性部分は2〜22個の炭素を含むアルキル、モノ−、ジ−及びトリ−不飽和アルケニル(C〜C22)から選択され、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。;Rは独立して水素又はC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基である。;nは2から7に変動する整数である。;Xは塩素、臭素又はヨウ素原子から選択される。)
  14. 用いられる前記コリピド(co-lipid)が、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
  15. 用いられる前記ポリアニオン化合物が、治療上重要な蛋白質、核酸、オリゴヌクレオチド、ペプチド又は蛋白質をコードすることが可能である、請求項10に記載の組成物。
  16. 用いられる前記ポリアニオン化合物が、リボソームRNAと、RNA又はDNAのアンチセンスポリヌクレオチドと、ゲノムDNA、cDNA又はmRNAのポリヌクレオチドとからなる群より選択される、請求項10又は15に記載の組成物。
  17. 用いられる前記核酸が、環状若しくは線状プラスミド又はリボ核酸である、請求項10、15、16のいずれかに記載の組成物。
  18. MCF−7、T47D(エストロゲン受容体陽性細胞株)、MDA−MB−468(エストロゲン受容体ノックアウト細胞株)、Hela(子宮頸癌)からなる群より選択される癌細胞種由来の婦人科関連の癌細胞株に対してin vitro細胞毒性を示す、請求項10に記載の医薬組成物。
  19. 一般化学式A
    (式中、R及びRの各々は独立して、水素又は少なくとも2個の炭素原子を含む親油性部分であり、前記親油性部分は2〜22個の炭素を含むアルキル、モノ−、ジ−及びトリ−不飽和アルケニル(C〜C22)から任意に選択され、但し、R及びRの両方が水素というわけではないとする。;Rは独立して水素又はC〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル基である。;nは2から7の整数である;Xは塩素、臭素又はヨウ素原子から任意に選択される。)を有する新規のカチオン性エストラジオール誘導体の合成方法であって、
    (a)既知の方法によりエストロンから3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−アルデヒドプロパン]−17β−エストラジオールを調製するステップと、(b)無水有機溶媒中、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下、前記3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17α−[3−アルデヒドプロパン]−17β−エストラジオールのアルデヒド化合物をモノ−又はジ−アルキルアミンと反応させ、対応する二級又は三級アミンを得て、次に、有機溶媒中、ハロゲン化アルキルと反応させ、これに伴う三級又は四級化アミンをそれぞれ得て、中間体三級アミンの四級化が−10℃〜50℃の範囲の温度にて行われることを特徴とするステップと、
    (c)既知の方法によりステップ(b)において得られる前記三級又は四級化アミンの芳香族ヒドロキシル基のシリル保護を脱保護し、次に、ハロゲン化物イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィーを行い、所望の化合物を得るステップと
    を含む方法。
  20. 用いられる前記モノ又はジ−アルキルアミンが、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素鎖を有する、請求項19に記載の方法。
  21. 用いられる前記モノ又はジ−アルキルアミンの飽和又は不飽和脂肪族炭化水素鎖が、C〜C22炭化水素鎖からなる群より選択される、請求項19又は20に記載の方法。
  22. 前記ステップ(a)において用いられる有機溶媒が、クロロホルム、ジクロロメタン及び酢酸エチルからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
  23. 前記ステップ(b)において用いられる有機溶媒が、ジクロロメタン、メタノール及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
  24. 前記ステップ(b)において用いられるハロゲン化アルキルが、C〜Cハロゲン化アルキルから選択される、請求項19に記載の方法。
  25. 前記ステップ(c)において用いられるハロゲン化物イオン交換樹脂が、塩化物、臭化物及びヨウ化物イオン交換樹脂からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
  26. 得られる前記化学式Aの代表的化合物が、以下:
    17α−[3−N,N−ジオクチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(1);
    17α−[3−N,N−ジヘキサデシル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(2)及び
    17α−[3−N,N−ジエチル(メチル)アミノプロパン]−17β−エストラジオール(3)
    のようになる、請求項19に記載の方法。
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