JP2010517530A - 高産生細胞株の選択 - Google Patents

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Abstract

本発明は、高発現クローンの選択のための抗体産生細胞株のスクリーニング方法を記述する。
【選択図】図1

Description

本発明は、モノクローナル抗体のような免疫グロブリン遺伝子由来の治療的タンパク質の製造方法に関する。本発明は、治療的タンパク質製造の目的上の高発現宿主細胞株の製造方法に関する。
生物製剤の市場占有率は急速に増大しつつある。1000種を超える新たな生物製剤製品の開発が世界中で進行中である。生物製剤市場の成長は従って増大された製造能力に対する必要性を高めている。しかしながら、新たな生物学的製造(biomanufacturing)施設の建設は非常に高価であり、小パイロットプラントについて5000万ドルから商業的施設について5億ドル若しくはそれ以上を超えるまでの範囲にわたる。加えて、規制当局が製造工程の全局面を検証しなければならないため、新たな施設を稼働せしめるためには4年超かかる。
宿主細胞の初期選択は、下流の工程の設計およびバイオリアクター運転回数のような必要とされる装置稼働数にもまた影響する。従って、いずれか1製品の製造の効率は、低下された製造容量若しくは能力の要件および従って全体的な低下された費用になるであろう。これを達成し得る1つの基礎的な方法は、安定な分子をかつ高発現率で産生する宿主細胞株の創製による。
治療的モノクローナル抗体(Ab)を包含する治療的タンパク質の多様な哺乳動物細胞宿主中の発現を増大させるのに数多くの方法が使用されている(非特許文献1;GangulyとJin、2002およびTrill、2002に総説されている)。これらは、a)強力なウイルスプロモーター、例えば、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(Deansら、1984)若しくは細胞プロモーター、例えば、β−アクチンプロモーター(Niwaら、1991)の使用;b)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)陰性チャイニーズハムスター卵巣細胞株(PageとSydenham、1991)および骨髄腫細胞株(DoraiとMoore、1987)双方での増幅可能なマーカーとしてDHFR遺伝子を使用するトランスフェクトされた遺伝子の増幅(Kaufman、1990);c)グルタミン合成酵素選択系の使用(Bebbingtonら、1992);ならびにd)増幅可能なマーカーが目的の組換えタンパク質に比較してはるかにより低いレベルで発現され、そして従って高程度の遺伝子増幅および発現の影響を受けやすい、2シストロン性ベクターの使用(Lucasら、1996;Kaufmanら、1991)を包含する。加えて、染色体の発現の「ホットスポット」への目的の遺伝子の標的を定めた組込みの使用(Aldrichら、2003およびKoduriら、2001)ならびに発現ベクター中のインスレーター配列および抗抑制エレメントの使用(Zahn−Zabalら、2001;Kwacksら、2003)が有望な結果を生じたとは言え、治療的タンパク質発現におけるそれらの使用は未だ実現されるべきである。これらおよび多くの他の改良の努力により、約100ピコグラム/細胞/日の比生産性で治療的タンパク質を発現する細胞株が開発された(PageとSydenham、1991)。
既存施設を使用してタンパク質製品を製造するための世界的能力を増大するために、現在利用可能であるものよりなお高い生産性をもつ細胞株が開発されることが必要である。こうした細胞株を選択するためのスクリーニング方法は、治療的タンパク質の製造のための高発現細胞株の開発過程を促進させる上で有用であろう。
Wurmら 2004 Nat.Biotechnol.22、1393−1398
[発明の要約]
本発明の一局面は、最低1種のH鎖遺伝子および場合によっては1種のL鎖遺伝子を含んでなる抗体をコードする遺伝子を2種若しくはそれ以上の適する哺乳動物宿主細胞にトランスフェクトする段階;トランスフェクトした宿主細胞を培養する段階;宿主細胞中の該抗体遺伝子によりコードされるmRNAを定量する段階;ならびに最高のmRNA量を有する宿主細胞を選択する段階を含んでなる、抗体の産生のための細胞株の選択方法である。
[発明の詳細な記述]
略語
Ab 抗体、ポリクローナル若しくはモノクローナル;CHO チャイニーズハムスター卵巣;HC H鎖;LC L鎖;Mab モノクローナル抗体;QPCR 定量的PCR;MMb ミメティボディ(mimetibody);cDNA 相補DNA;mRNA メッセンジャーRNA;GS グルタミン合成酵素;MHX ミコフェノール酸、ヒポキサンチンおよびキサンチン。
定義
「抗体」という用語は、抗体模倣物を制限なしに包含するか、あるいは、抗体、または一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ミメティボディおよびそれらのフラグメントを制限なしに包含するそれらの特定フラグメント若しくは部分の構造および/若しくは機能を模倣する抗体の部分を含んでなる、抗体、それらの消化フラグメント、特定部分およびバリアントを包含することを意図している。機能的フラグメントは目的の標的抗原に結合する抗原結合フラグメントを包含する。例えば、限定されるものでないがFab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化および部分還元による)ならびにF(ab’)(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン若しくはプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分還元および再凝集による)、Fv若しくはscFv(例えば、分子生物学技術による)フラグメントを挙げることができる、標的抗原若しくはその部分に結合することが可能な抗体フラグメントを、抗体という用語により包含する(例えば、Colligan、Immunology、上記を参照されたい)。従って、本明細書で使用されるところの抗体という用語は、抗体全体の改変により製造される若しくは組換えDNAの方法論を使用して新たに合成されるいずれの抗体フラグメントもまた包含する。
「高産生細胞株」、「高生産性」および「優れた産生レベルを有するクローン」若しくは「高発現」クローンにより、ある抗体を発現するように工作された他細胞に匹敵する条件で増殖される場合に、同様に増殖される他細胞より細胞培地中の抗体の比較的より高濃度を生じる、工作された細胞株すなわちトランスフェクトーマ(transfectoma)若しくはそれらのクローンを意味している。抗体濃度および従って産生量は、いずれかの数の標準的若しくは非標準的方法により測定することができ、そして例えば、単位容量あたりに産生される量として定量的でありうるか、または、例えば、溶液中で産生される抗体複合体の密度として相対的でありかつ例えば、比濁法により若しくはメチルセルロースのような半固形媒体中で測定されることができる。
「増殖速度」は細胞の増殖速度を指す。培養物中で、増殖速度は、培養物中の単位容量あたりの生存細胞の密度を異なる時点で評価することによりモニターしうる。増殖速度が
典型的に最速(すなわち、最高)である場合、該細胞は、酸素、エネルギー、ならびに全部の細胞成分および過程のための基質を包含する栄養素の豊富さにより「対数期」増殖にある。増殖速度は生存細胞数/ml/日によって表現しうる。増殖速度は、「倍加時間」すなわち単位容量あたりの細胞の数が倍加するのに該培養物がかかる時間としてもまた表現しうる。従って、増殖速度が速くなるほど倍加時間値は小さくなる。
「比生産性」は単位時間あたりに1細胞若しくは特定の数の細胞により産生されるタンパク質産物の量を意味している。比生産性は例えば、μg/10/日若しくはpg/細胞/日として表現しうる。比生産性は、例えば、生産性の値(培養物容量の単位あたりのタンパク質のmg若しくはμg)を生存細胞密度(単位容量あたり細胞)を除算することによってもまた計算しうる。
「安定性」若しくは「安定なクローン」により、単位時間あたりに1細胞若しくは特定の数の細胞により産生されるタンパク質産物の量が継代に際して認識可能に減少しないことを意味している。すなわち、サブクローニングおよびその後の継代に際して、ある細胞株の比生産性が所望の比率で維持される。
説明
安定な高産生細胞株の初期選択の重要性は、生物製剤製造の工程のためのマスター細胞バンク(MCB)の開発にとって極めて重要である。臨床研究の間の細胞バンクのいかなる変化も追加の規制文書化および実験を必要とし、それは増大される費用につながりかつ進行中の臨床試験のための物質の供給を大きく遅らせうる。宿主細胞の初期選択は、下流の工程の設計、およびバイオリアクター運転回数のような必要とされる装置稼働数にもまた影響し、そして従って「拡張性(scalability)」が重要である。
抗体製造細胞株の生産性を改良するための試みにおいて、われわれは、H若しくはLいずれかの鎖のmRNA転写物レベルのAb生産性との相関が存在したかどうかを尋ねた(Doraiら 2006.Hybridoma 25:1−9)。これらのパラメータ間の相関は、より高発現の細胞株が、Hおよび/若しくはL鎖mRNA転写物レベルを増大させること、または増大されたHおよび/若しくはL鎖mRNA転写物レベルを有する細胞株を選択することにより得ることができることを示唆するとみられる。こうした相関が存在するかどうかを決定するため、多数の組換えモノクローナルAb産生細胞株を検査した。これらの細胞株は、目的のタンパク質を製造するのに適する細胞株を開発するという目的でマウス骨髄腫宿主細胞株への治療的抗体の組換えHおよびL鎖遺伝子のコトランスフェクション後に生成された。全RNAをこれらの細胞株の指数培養物から調製しそして定量的PCR(QPCR)法を使用してHおよびL鎖mRNAコピー数について分析した。同時にこれらの細胞株のAb力価を測定した。該結果は、試験した細胞株の大部分で、実験誤差内で、L鎖転写物レベルはH鎖転写物のものより豊富であり、また、HおよびL鎖転写物レベルのAb生産性との相関が存在したことを示唆する。しかしながら、この相関はH鎖についてとりわけ顕著であった。これらの知見は、これらの遺伝子の転写がおそらく抗体発現経路中の律速段階の1つであることを意味している。
一例(Dorai、2006 上記)において、優性選択マーカーとしてgpt遺伝子を包含する構築物中に存在する内因性免疫グロビン(NS0)誘導性宿主細胞株の非分泌型(non−secretor)への、それらの元の内因性プロモーターの制御下の多様な抗体遺伝子のトランスフェクションから製造した初代トランスフェクトーマで、Ab生産性を検査した(MHXを使用して)。初代トランスフェクトーマのサブクローンもまた検査した。生産性は、類似の培養条件下で培養した個々の細胞株について約10μg/mlから200μg/ml超までの範囲にわたった。生産性は対応する免疫グロブリンプロモーターの強度の差違に依存し得る一方、初代トランスフェクトーマの1サブセットをサ
ブクローニングすることは、Ab力価が2ないし7倍高められた細胞株、および生産性が増大しなかったか若しくはわずかにのみ増大した他のクローンを生じた。サブクローンの(それらの初代クローンに比較しての)抗体力価の増大は、H鎖およびL鎖mRNAレベルの増大と正に相関したことが発見され;より高発現体は、10ngのcDNAあたりおよそ1.0×10および1.5×10コピーのそれぞれHおよびL鎖を伴った。一般に、L鎖mRNAのレベルは細胞株の大多数でH鎖のレベルに比較してより高く、また、それらのレベルの差違はメッセージの差別的安定性によらなかった。振とうフラスコ培養物中で100mg/L超のAbを発現する安定細胞株について、L鎖のコピー数は10ngのcDNAあたり10から20×10コピーまでの範囲にわたった一方、H鎖のものは10ngのcDNAあたり4から10×10コピーまでの範囲にわたった。該知見は、H鎖mRNAがL鎖mRNAより細胞株の生産性の優れた予測因子であり、また、L鎖メッセージがH鎖メッセージに対し一般に過剰量で存在することを示す。
別の報告(Barnesら 2007.Biotechnol Bioengineer 96(2):337−348)において、GS遺伝子と一緒にHおよびL鎖抗体遺伝子でトランスフェクトしたNS0骨髄腫細胞をこれらの遺伝子の特異的mRNAについて分析し、そしてデータを該トランスフェクタントの比生産性と関係づけた。それぞれ別個のCMVプロモーターの制御下の抗CD38抗体のHおよびL鎖双方をコードするベクターを用いる電気穿孔法によりトランスフェクトした個別のNS0の培養物の比生産性のデータが報告され、そしてGS遺伝子はSV40プロモーターの制御下にあった。H鎖mRNA発現パーセントと比生産性の間の関係の相関係数はR=0.7747であった一方、L鎖mRNA発現パーセントと比生産性のものはR=0.4659であり、またGS
mRNAコピーおよび比生産性についてはR=0.0082であった。従って、本研究は、抗体遺伝子が非天然のプロモーターの制御下にある系において、H鎖mRNAコピー数がL鎖コピー数若しくは選択マーカーのmRNAコピー数よりも細胞生産性のより良好な予測因子であることを示す結果を生じた。
この情報を、抗体製造の目的上有用である所望の増殖速度をもつ安定な高発現産生細胞株の予測的同定に使用し得る。加えて、高レベルのH鎖および場合によってはL鎖転写物をもつ個別の細胞を、例えば、ハイスループットRT−PCRスクリーニング法により直接選択して、高生産性を伴うAb発現細胞株を大きく短縮された時間枠で生じ得る。
本発明は、適する哺乳動物宿主細胞中への抗体をコードする遺伝子のトランスフェクション後の高産生細胞株の選択方法に関する。本発明の該方法の一態様において、1種若しくはそれ以上の宿主細胞を、抗体H鎖をコードする遺伝子および抗体L鎖をコードする遺伝子、ならびに場合によっては選択可能なマーカータンパク質をコードする遺伝子でトランスフェクトし、次いでトランスフェクトした宿主細胞を培養してトランスフェクトーマを形成し、そして該宿主細胞による抗体産生の開始後に、H鎖をコードするmRNAを宿主細胞中で定量し、かつ、最高のmRNA量を伴う宿主細胞を選択する。
別の態様において、H鎖mRNAコピー数の絶対コピー数を使用して保持のためのトランスフェクトーマを選択する。なお別の態様において、1トランスフェクトーマをサブクローニングし、そして、抗体を産生する培養サブクローン中のH鎖mRNAを使用して保持のためのクローンを選択する。
従って、H鎖mRNA定量を使用する高抗体発現細胞株(高産生体)のスクリーニング方法を、多様な哺乳動物宿主細胞株系で使用し得、および、独立に、または他のパラメータ、特徴若しくは選択基準と協調して使用し得る。
宿主細胞および高産生クローンの選択
免疫グロブリンH鎖を含んでなるタンパク質を産生することが可能な宿主細胞は、場合によっては、大腸菌(E.Coli)、COS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、Ag653、SP2/0、NS0、293、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫若しくは植物細胞、またはそれらのいずれかの誘導体、不死化若しくは形質転換細胞から選択される最低1種であり得る。
本発明の方法において、真核生物細胞は骨髄腫細胞である。本発明の方法で有用な骨髄腫細胞株の例は、マウスから得られたSP2/0、NS0(European Collection of Cell Cultures(ECACC)、英国ウィルトシャー州ソールズベリー、ECACC番号85110503)、FO(ATCC CRL−1646)、およびAg653(ATCC CRL−1580)細胞株を包含する。ヒトから得られかつ本発明の方法で有用な骨髄腫細胞株の一例はU266細胞株(ATTC CRL−TIB−196)である。C463A骨髄腫細胞株もまた本発明の方法で有用であり、そして既知組成培地中で増殖することが可能なSP2/0由来細胞株の一例である。当業者は他の有用な骨髄腫細胞株を認識するであろう。
本発明の方法において、真核生物細胞は、SP2/0、C463AおよびCHO細胞よりなる群からもまた選択し得る。これらの細胞型のそれぞれは、in vitro培養に適しかつペプチド鎖を高レベルで発現する能力を有するという共通の特性を有する。
哺乳動物細胞中での組換えタンパク質の製造方法の開発は十分に確立されている。最初に、必要な転写調節エレメントと一緒の組換え遺伝子または抗体若しくは他のヘテロ二量体タンパク質の場合にはHおよびL鎖双方の組換え遺伝子を含んでなるベクターを細胞に移入する。同時にレシピエント細胞に選択の利点を賦与する付加的な遺伝子を移入しうる。リン酸カルシウムトランスフェクション、電気穿孔法、リポフェクションならびに遺伝子銃およびポリマー媒介性遺伝子移入を、トランスフェクトーマを創製するための宿主細胞へのベクターを含んでなる遺伝子の移入に影響を及ぼすのに慣例に使用する。
遺伝子移入後に適用される選択剤の存在下で、選択遺伝子を発現する細胞のみが生き残る。選択のための遺伝子は、一般に、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびグルタミン合成酵素(GS)のような細胞増殖に決定的に重要な経路で代謝物を産生するのに不可欠な酵素をコードするものである。双方の場合に、選択は適切な代謝物(DHFRの場合ヒポキサンチンおよびチミジン、GSの場合グルタミン)の非存在下で起こり、非形質転換細胞の増殖を予防する。別の形態の選択遺伝子は、毒性物質の存在に対し細胞に抵抗性を賦与することができるタンパク質をコードするものである。こうした系の一例は、選択培地がミコフェノール酸、ヒポキサンチンおよびキサンチンを含有しかつマーカー遺伝子がGPT(グアノシンホスホリボシルトランスフェラーゼ)であるMHXである。一般に、組換えタンパク質の効率的発現のために、生物製剤をコードする遺伝子(1種若しくは複数)および選択遺伝子が同一プラミド上にあるかどうかは重要でない。トランスフェクトーマの限界希釈クローニングの方法によることができる選択後に、生存体を単一細胞として第二の培養容器に移し、そして培養物を増殖させてクローン集団(クローン)を生じる。最終的に個々のクローンを組換えタンパク質発現について評価し、最高産生体をさらなる培養および分析のため保持する。これらの候補から、適切な増殖および生産性の特徴をもつ1細胞株を、方法開発および組換えタンパク質の製造のため選ぶ。その後、生産の必要性により決定される培養方法を確立する。
本発明の記述されるところのいかなる化学選択方法も生き残ったトランスフェクトした宿主細胞すなわちトランスフェクトーマの評価若しくはスクリーニング方法は、細胞の培養、および該トランスフェクトされた遺伝子によりコードされる抗体タンパク質が培地中に分泌される期間に存在する抗体鎖の1種若しくはそれ以上をコードするmRNAの定量
方法の使用を含んでなる。治療的タンパク質の宿主細胞へのトランスフェクション後に、一組の初代トランスフェクトーマを場合によっては最初にスクリーニングすることができ、そして培地中の分泌された抗体濃度の量(力価)若しくは高生存率のような優れた増殖特性に従って分類しうる。典型的な細胞株開発の努力において、およそ600〜1000の初代トランスフェクトーマを抗体力価についてスクリーニングし、そして約50トランスフェクトーマをそれらのクローンの子孫のさらなる研究のため選択する。例えば、クローンは、2×10細胞/mlを播種すること、振とうしながら37℃で7日間若しくは生存率が10%以上下落するまでのいずれか早いほうまでインキュベートすることにより、125ml振とうフラスコ中の50ml培養物として増殖しうる。その時点で、比濁法、およびAb特異的抗原若しくはウサギ抗ヒトポリクローナル抗体のような結合試薬を使用して、培養液中のAb濃度を測定し得る。比濁計はサンプルの前方光散乱により免疫化学複合体を検出する。
本発明の方法により、抗体鎖mRNAスクリーニングをトランスフェクトーマに適用する。本発明の方法のH鎖mRNAスクリーニングは、抗体を産生しかつ培地中に分泌する細胞中のトランスフェクトされた遺伝子のメッセージ(すなわちHおよびL鎖mRNA)の定量方法である。該方法の一態様において、トランスフェクトされた遺伝子のmRNAの検出方法は迅速ハイスループット定量的PCR法である。本発明の一実施方法において、下で本明細書に提供される実施例に記述されるプロトコルおよび手順をスクリーニングに使用しうる。本発明の方法の一態様において、トランスフェクトされた遺伝子のmRNAの測定を、全トランスフェクトーマと比較して優れた抗体力価を示すトランスフェクトーマに適用する。
トランスフェクトされた抗体遺伝子のmRNAによるトランスフェクトーマおよびそれらの子孫のスクリーニング方法を記述したので、治療的抗体製造に適する工作された宿主細胞株の適する1クローンを開発するために消費されなければならない努力、工数、実時間およびバイオリアクター空間と一緒に、バイオリアクター中の試験されるべき候補クローン株の数が、大きく低下されることができることが明らかであろう。
抗体
抗体クラス(アイソタイプとしてもまた知られる)はIgE、IgD、IgA、IgMおよびIgGである)。抗体は、2本の同一のL鎖および2本の同一のH鎖から構成される約150,000ダルトンの基本的なヘテロ四量体糖タンパク質を含んでなる特化した免疫グロブリン分子である。IgGクラスの抗体は2本のH鎖および2本のL鎖を含んでなる。各鎖は定常領域(C)および可変領域(V)を有する。各鎖は一連のドメインに組織化されている。L鎖はCL領域およびVL領域に対応する2ドメインを有する。H鎖は4ドメインすなわちVH領域に対応する1個ならびにC領域の3ドメイン(C1、C2およびC3)を有する。各HおよびL鎖は規則的に間隔を空けられた鎖内ジスルフィド架橋もまた有する。ヒトIgG抗体中で、L鎖の定常ドメインはH鎖の第一の定常ドメインと並置され、また、L鎖可変ドメインはH鎖の可変ドメインと並置される。特定のアミノ酸残基がLおよびH鎖可変ドメインの間の非共有界面を形成すると考えられる(Clothiaら、J.Mol.Biol.186、651−66、1985);NovotnyとHaber、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82 4592−4596(1985)。2本のH鎖は、ヒンジとして知られるH鎖中のドメイン間領域でジスルフィド結合により相互接続されている。加えて、抗体は、配列類似性、とりわけ定常ドメイン中のものにより賦与される生物物理学的および生物学的特性に基づき、サブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4にさらにタイプ分けすなわち分類されうる。
抗体は、限定されるものでないがヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類を
挙げることができるいずれかの哺乳動物若しくはそれらのいずれかの組合せを包含若しくはそれらに由来し得、そして単離されたヒト、霊長類、げっ歯類、哺乳動物、キメラ、ヒト化および/若しくはCDR移植抗体、免疫グロブリン、切断生成物、ならびにそれらの他の指定される部分およびバリアントを包含する。抗体は当該技術分野で公知のいくつかの方法で製造し得る。一局面において、抗体はマウスを標的タンパク質、そのバリアント若しくはフラグメントで免疫することにより製造されるハイブリドーマから便宜的に得られる。抗体は従って当該技術分野で公知のハイブリドーマ技術のいずれかを使用して得ることができる。例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1987−2001);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);HarlowとLane、antibodies,a Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);Colliganら編、Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク(1994−2001);Colliganら、Current Protocols in Protein Science、John Wiley &
Sons、ニューヨーク州ニューヨーク、(1997−2001)(それぞれ引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)を参照されたい。目的の抗体のHおよびL鎖をコードする遺伝子をその後、当業者に公知の技術によりハイブリドーマ細胞株から単離し得る。
mRNAの定量方法
RNA調製物中の特定の配列は、例えば、Current Protocols in
Molecular Biology 2004.John Wiley & Sons,Inc.Brownら”Analysis of RNA by Northern
and Slot Blot Hybridization”UNIT 4.9に記述されるところの、元はDNAのために開発されたもの(サザンブロッティング)に非常に類似の技術を使用するブロッティングおよびハイブリダイゼーション分析により検出し得る。分画したRNAをアガロースゲルからメンブレン支持体に移し(ノーザンブロッティング);未分画RNAをスロット若しくはドットブロッティングにより固定する。生じるブロットを、標識DNA若しくはRNAプローブを用いるハイブリダイゼーション分析により研究する。RNAスロットブロッティングは、ナイロン若しくはニトロセルロースメンブレン上の未分画RNAの固定を可能にする単純な技術である。ハイブリダイゼーション分析をその後実施して、ブロットしたサンプル中の標的mRNA配列の相対的豊富さを決定する。該技術はDNAドットおよびスロットブロッティング手順に基づき、大きな差違はサンプルを固定前に変性する方法である。
RNアーゼ保護を使用して混合物中の特定のRNAの量を測定し得る。標識一本鎖プローブへのRNAのハイブリダイゼーションは一本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化からそれを保護する。保護される領域の大きさはゲル電気泳動により決定し得る。
逆転写PCR(RT−PCR)は、1DNAコピーを逆転写酵素によりRNAから最初に作成し、その後該反応をPCRにかける、ポリメラーゼ連鎖反応の変法である。RNAを定量するのに使用するため、内部対照を有しなければならない。リボソーム18S RNAのmRNAをしばしば内部標準として使用する。
1若しくは複数種のmRNAの定量は、マイクロアレイ、マクロアレイ、遺伝子チップ、SAGE法(serial analysis of gene expression)、RT−PCRおよびEST配列決定のような技術を使用してもまた達成しうる。こ
れらの技術は、一方の、別のものすなわち抗体発現のような単一過程に関係付けるためにその発現レベルが集合的に同定されている遺伝子との既知の関係を有しうる一組の遺伝子のモニタリングにおいて役立ちうるデータを生じる。これらのデータはハイスループット環境でしばしば収集され、個体の状態若しくは処置、組織、または疾患状態、あるいはクローンに独特である個々の発現プロファイルを提供する。該結果の解釈は、データを解析するための多様な技術およびそれらを保存かつ可視化するのに利用可能なコンピュータツールの双方の理解を必要とする(Current Protocols in Bioinformatics.2003 John Wiley & Sons,Inc.Grewalら”Analysis of Expression Data:An Overview”.Unit 7.1)。
「Quantigene bDNAシグナル増幅キット」としてChiron Diagnosticからもまた入手可能なbDNAアッセイ(Urdeaら 1987.Gene 61:253−264;Kernら 1996.J Clin.Microbiol.34:3196−3202;Collinsら Nucleic Acids Res.25:2979−2984)、および核酸捕捉アッセイ(NACA)(Tsaiら、2003、Nucleic Acids Research.31(6):e25−31)のような、特定のmRNAの特定の型の感受性ハイスループット検出方法が記述されている。
本発明の方法で実施されるとおり、工作された細胞株、トランスフェクトーマ若しくはそのクローン中のH鎖抗体遺伝子のmRNAの定量方法は、おそらく、当該技術分野で記述されかつ既知の多様な方法により実施される。本発明の方法は、抗体製造の目的上高産生細胞株であろう細胞を選択するためのH鎖抗体遺伝子のmRNAの使用に関する。
本発明は以下の実施例を参照してさらに記述される。これらの実施例は単に本発明の局面を具体的に説明するためでありかつ本発明の制限として意図していない。
HおよびL鎖発現のための発現構築物の図解を示す。すなわちA)L鎖発現ベクター(12.4kb)およびH鎖発現ベクター(17.8kb)。 Sp2/0で抗体#3(A)および抗体#1(B)を発現する細胞株の抗体力価とLおよびH鎖転写物のコピー数の間の関係を示す。 Sp2/0で抗体#5(A)および抗体#7(B)を発現する細胞株の抗体力価とLおよびH鎖転写物のコピー数の間の関係を示す。 検査した細胞株の抗体力価とH鎖(A)およびL鎖(B)転写物のコピー数の間の関係を示す。大部分の細胞株の力価およびコピー数測定の標準偏差を表2に示す。 Ab生産性との抗体H鎖(A)およびL鎖のmRNA(B)の間の相関を示す。
骨髄腫産生細胞株の開発
図1は本研究で使用される産生細胞株の開発に使用したマウス/ヒトキメラHおよびL鎖Ab遺伝子をコードする典型的な発現構築物を示す。キメラAbは、ヒトκ L鎖およびIgG1 H鎖の定常領域の上流にそれぞれマウスHおよびL鎖可変領域を(それらの連続する免疫グロブリンプロモーターと一緒になって)クローン化することにより構築し
た。JおよびC領域の間に配置されるHおよびL鎖双方のヒト免疫グロブリンエンハンサーを構築物のそれぞれに包含した。ミコフェノール酸耐性マーカー(gpt遺伝子)が優性選択マーカーとして双方の構築物中に存在した。
産生細胞株を開発するため、HおよびL鎖構築物をマウス骨髄腫宿主細胞株Sp2/0若しくはCD−Sp2/0(既知組成培地適合Sp2/0)またはAgX653にコトランスフェクトした。多数のMHX((ミコフェノール酸(0.5mg/L)、ヒポキサンチン(2.5mg/L)およびキサンチン(50mg/L))耐性クローンをAb生産性についてスクリーニングし、そして初代クローン(トランスフェクトーマ)を複数回のサブクローニングに選択した。生成物力価のさらなる改良が達成可能でなかった場合にサブクローニングの過程を終了した。表Iは初代トランスフェクトーマおよび本研究で選択したそれらのサブクローンを列挙する。7日振とうフラスコ培養から得た各細胞株のAb力価を表1に包含する。利用可能な場合は産生細胞株開発の過程の間に生成された中間クローンを表2に列挙する。これらの場合に、力価の倍数増大(fold−increase)ならびにHおよびL鎖転写物レベルを測定するため選ばれた細胞株が太字である。
表1に示されるとおり、初代トランスフェクトーマのあいだでAb力価にかなりの差違が存在した。例えば、細胞株C18は、類似の培養条件下で158.6±13.7mg/Lを発現した細胞株C128Bに比較して11.3±1.8mg/Lのみ発現した。この差違は、対応する免疫グロブリンプロモーターの強度の差違に部分的に帰すことができる。サブクローニングに際して、Ab力価が2ないし7倍高められた初代トランスフェクトーマの1サブセットが発見された一方、他のクローンはそれらの力価を増大しなかったかもしくはそれらをわずかに増大した(表1)。高Ab力価を伴う初代トランスフェクトーマの力価の増大の欠如は理解可能である(例えば、C128B、158.6±13.7mg/L)一方、非常に低力価を伴うC18のような初代トランスフェクトーマがサブクローニングに際してAb力価の有意の増大を示さなかった(C62、21.0±3.9mg/L)理由は明確でない。
クローン性Abの発現レベルの予測因子を見出すために、様々な抗体発現レベルを伴う30種の抗体発現細胞株をHおよびL鎖mRNA発現レベルについて分析した。各細胞株を融解し、そして、振とうフラスコ中、5%熱不活性化ウシ胎児血清(Intergen)、6mMグルタミンおよびMHX(全部Sigmaから)を補充したIMDM(Invitrogen)(IMDM+5%FBS)若しくは6mMグルタミンおよびMHXを補充したCD−Hybridoma培地(Invitrogen)(CD−Hyb)いずれか中で3継代培養した。およそ1×10細胞を指数増殖期に収集し、そしてRNAeasyキット(Qiagen)を使用することにより全RNAを調製した。RNAを分光測光法により定量し、そしてLab−on a−chip 2100 Bioanalyzer(Agilent)を使用してその質を決定した。2マイクログラムの全RNAを、cDNA合成キット(Applied Biosystems)およびプライマーとしてのオリゴdTを使用するcDNA製造に使用した。7日振とうフラスコ培養物の抗体力価は、抗ヒトAbを検出剤として使用する(Jackson Immunoresearch)比濁法(Beckman Array Protein System)により推定した。
C175A、175−53、175−88およびC175H細胞株(全部Ab#1を発現する)ならびにC168A、C168D、C168EおよびC168J細胞株(全部Ab#3を発現する)の指数培養物を全RNAの単離のため収集し、消費済み培地中のAb力価を測定するため7日間のさらなるインキュベーションのためアリコートを保持した。これらのRNAサンプルからのcDNAを使用してHおよびL鎖転写物のコピー数を決定した。既知濃度のHおよびL鎖発現プラスミドDNA(図1)を使用して標準曲線を生成した。
抗体#5を発現するC116AおよびC116E細胞株ならびに抗体#7を発現するC
2.320およびC466D細胞株の指数培養物を全RNAの単離のため収集し、消費済み培地中のAb力価を測定するため7日間のさらなるインキュベーションのためのアリコートを保持し、そして上述されるとおり処理した。
HおよびL鎖mRNAのコピー数を、Applied Biosystems 7000装置を使用するQPCR法により測定した。プライマーおよびTaqmanプローブは、Primer Expressソフトウェアプログラム(Applied Biosystems)を使用してヒトκ定常領域およびヒトγ−1定常領域から設計した。多様なプライマーおよびTaqmanプローブの配列を下に示す。
L鎖プローブ/プライマー:
フォワード:5’CCT GAC GCT GAG CAA AGC A(配列番号1)リバース:5’CAG GCC CTG ATG GGT GAC T(配列番号2)
qPCRプローブ:5’ACT ACG AGA AAC ACA AAG TCT ACG CCT GCG(配列番号3)
H鎖プローブ/プライマー:
フォワード:5’TGT CCT ACA GTC CTC AGG ACT CTA CTC(配列番号4)
リバース:5’TGA TTC ACG TTG CAG ATG TAG GT(配列番号5)
qPCRプローブ:5’CTC AGC AGC GTG GTG ACC GTG C(配列番号6)
いくつかの実験で、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)のプライマーおよびプローブの組(Applied Biosystems)を使用してサンプル間変動を正規化した。GAPDHの蛍光標識はVICであり、また、HおよびL鎖プローブについて、それはFAM(6−カルボキシフルオレセイン)であった。全部の場合で、蛍光クエンチャー色素はTAMRA(テトラメチルローダミン)であった。各QPCR反応は、50μlの総容量中に10ナノグラムのcDNA、100nMのqPCRプライマー、200nMのフォワードおよびリバースプライマーのそれぞれ、2×PCRマスターミックス(Applied Biosystems)を含有した。PCR反応は90℃で10分間の初期インキュベーションにより変性し、次いで90℃で0.15秒間および60℃45秒間インキュベーションした。最後の2段階を40周期反復した。
HおよびL鎖のコピー数の代替測定方法すなわちRNAアーゼ保護アッセイを、Ambionから購入したキットを使用して、選択した細胞株で実施した。
既知量のHおよびL鎖発現構築物(図1)を使用してそれぞれのコピー数標準曲線を生成した。これらの標準曲線を使用して、各細胞株のHおよびL鎖転写物のコピー数を決定した(表2)。これらの細胞株は単一のHおよびL鎖mRNA種のみを有することが示されている(Looneyら、1992およびKnightら、1993)ため、本研究でQPCRにより測定されるH鎖およびL鎖mRNAのレベルは、完全長H鎖およびL鎖転写物のレベルを正確に反映する。表2に提示されるデータは、サブクローンの(それらの初代クローンと比較した)抗体力価の増大が、H鎖およびL鎖mRNAレベルの増大に部分的によったことを示唆し;より高発現体は10ngのcDNAあたりそれぞれおよそ1.0×10および1.5×10コピーのHおよびL鎖を伴った。一般に、L鎖mRNAのレベルは細胞株の大多数でH鎖のレベルと比較してより高く、また、それらのレベルの差違はそれらの差別的安定性によらなかった。本研究で試験した全細胞株から生成されるデータは、抗体産生性とのLおよびH鎖転写物レベルの相関が存在したことを示唆し、相関係数はL鎖について0.59およびH鎖について0.81であった。
要するに、図2および表1は、初代トランスフェクトーマのサブクローニングが、HおよびL鎖転写物のコピー数の付随する増大を伴いAb生産性の大きな改善に至ったAb発現細胞株の例を示す。例えば、Ab#3の場合(図2A)、HおよびL鎖mRNAのレベルは、初代トランスフェクトーマおよびそのサブクローンを比較した場合にそれぞれ1.8倍および5.1倍増大した。力価を分析した場合、サブクローンC168Dは初代トランスフェクトーマC168Aに比較して約7倍より多いAbを産生した。この組の全細胞株で、L鎖転写物はH鎖のものより豊富であった(より高発現細胞株の1種C168Eで約6.5倍より豊富)。
Ab#1の場合(図2B)、力価は、最終サブクローンC175Hで、初代トランスフェクトーマC175Aのものと比較した場合に3.1倍まで増大した一方、H鎖およびL
鎖転写物のレベルはそれぞれ係数2および2.4増大した。Ab#3産生細胞株について見られるとおり、L鎖転写物はこの組の全細胞株についてH鎖転写物のものより豊富であった(中間細胞株の1種175−2で3.1倍までより豊富)。
全細胞株をAb生産性の順序で等級付けする場合(図4および表2)、われわれは、一般にL鎖がH鎖より有意により豊富であり、かつ、HおよびL鎖転写物のAb生産性との相関が存在することを見出す。(表2からのデータをプロットする)図5は、L鎖の相関係数が0.59である一方、H鎖のものについてそれが0.81であることを示す。
HおよびL鎖転写物の安定性
細胞株C168Jが、H鎖転写物レベルに対するL鎖の最高の比を有したため、それをH鎖およびL鎖mRNAの安定性を比較するための代表的細胞株として選択した。この細胞株を、5μg/mlアクチノマイシンD(Sigma)を含有する増殖培地中で48時間培養した。指定された時点(表2)で5×10細胞を取り出してHおよびL鎖転写物の量を測定した。高度に安定な18S RNAおよびGAPDH mRNA(それぞれ67および24時間の半減期(Lekasら、2000およびNwagwuとNana、1980))を対照として使用した。QPCRによる18S RNAレベルの推定に使用した試薬はApplied Biosystemsから購入した。
HおよびL鎖mRNAの差別的レベルがそれらの差別的安定性によるかどうかを決定するため、これら2転写物の半減期を、比較的より安定であることが既知であるハウスキーピング遺伝子転写物GAPDHおよび18S RNAのものと比較した(Lekasら、2000およびNwagwuとNana、1980)。C168J細胞株を、新生mRNA合成を阻害するためアクチノマイシンDの存在および非存在下で48時間増殖させ、そして指定された時点(表IIIを参照されたい)で収集した細胞サンプル中の該4転写物のそれぞれのレベルを、実施例1に記述されるところのQPCRにより測定した。
表3に要約されるとおり、L鎖転写物の安定性はH鎖転写物およびGAPDH転写物のものに類似であることが見出された。これは、C168JでのH鎖転写物のものに比較してのL鎖転写物の豊富さがその差別的安定性の結果によらなかったことを示す。

Claims (11)

  1. a.最低1種のH鎖遺伝子および場合によっては1種のL鎖遺伝子を含んでなる抗体をコードする遺伝子を2種若しくはそれ以上の適する哺乳動物宿主細胞にトランスフェクトする段階;
    b.トランスフェクトした宿主細胞を培養する段階;
    c.宿主細胞中で該抗体遺伝子によりコードされるmRNAを定量する段階;および
    d.最高のmRNA量を有する宿主細胞を選択する段階
    を含んでなる、抗体の製造のための細胞株の選択方法。
  2. 細胞あたりのH鎖遺伝子のmRNAコピー数を測定する段階、および指定されるコピー数をもつ細胞を選択する段階をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
  3. トランスフェクション段階が、選択可能なマーカー遺伝子のトランスフェクションをさらに含んでなる、請求項1若しくは2に記載の方法。
  4. 選択可能なマーカーがDHFR、GPT若しくはGSである、請求項3に記載の方法。
  5. 培養段階が選択培地中でのサブクローニングを含んでなる、請求項3に記載の方法。
  6. 選択した宿主細胞の増殖速度および生産性が選択基準として決定される、請求項5に記載の方法。
  7. H鎖mRNAが定量的PCRを使用して測定される、請求項1ないし6に記載の方法。
  8. 定量的PCRが、配列番号4〜6に示される配列を有するオリゴヌクレオチドを使用する、請求項7に記載の方法。
  9. H鎖mRNAが、IgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgEおよびIgMよりなる群から選択されるH鎖をコードする、請求項2に記載の方法。
  10. 抗体遺伝子が、内因性抗体遺伝子プロモーターおよびCMVプロモーターよりなる群から選択されるプロモーターの制御下にある、請求項1に記載の方法。
  11. 最も安定なクローンを選択する段階をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
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