検出可能な核酸の標識化は、研究ならびに臨床診断技術への適用を含む、分子生物学における多くの適用に必要で核酸の標識化に一般的な方法は、1つまたはそれ以上の非従来型ヌクレオチド、および新たに合成される相補鎖中への非従来型ヌクレオチドの鋳型依存的な取り込みを触媒するポリメラーゼ酵素を使用する。
正しいデオキシヌクレオチドを取り込むためのDNAポリメラーゼの能力は、生体内での高い忠実性のDNA複製に基づく。ポリメラーゼの活性部位中のアミノ酸は、鋳型ヌクレオチドに対して正しい相補的なヌクレオチドの配置を好む、特異的な結合ポケットを形成する。不適正なヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログがその場所に充填されると、入ってくるヌクレオチドに接触するアミノ酸の正確な整列は、DNA重合に好ましくない場所に歪められ得る。それ故、DNAを標識化するのに使用される非従来型ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログは、標準のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs、いわゆる「標準の」dNTPsは、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシトシン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、およびチミジン三リン酸(dTTP、またはTTP)を含む)に比べて、低い効率で伸長鎖中に取り込まれる傾向がある。
ポリメラーゼによって取り込まれる非従来型ヌクレオチドの効率の減少は、DNA標識化に必要な非従来型ヌクレオチドの量を増加させる。特定のヌクレオチドの取り込み効率の減少は、均一なシグナル強度での非従来型ヌクレオチドの不偏性取り込みに依存するDNA配列解析などの、技術またはアッセイの実行にも悪影響を与える。
入ってくるヌクレオチド三リン酸に接触するDNAポリメラーゼのアミノ酸の同一性および正確な配置は、ポリメラーゼ酵素によって取り込まれ得る、従来型および非従来型の両方のヌクレオチドの性質を特定する。結合または鎖の伸長のどの段階でも入ってくるヌクレオチド三リン酸に接触する、アミノ酸の正確な配置中の変化は、普通でない、または非従来型ヌクレオチドの利用に対するポリメラーゼの能力を劇的に変化させることができる。たまに、離れたアミノ酸における変化は、間接的な全体への、または構造的な効果に起因する、ヌクレオチドアナログの取り込みに影響することができる。ヌクレオチドアナログを取り込む能力が増加したポリメラーゼは、色素、反応基、または不安定なアイソトープなどのシグナル部分で修飾されたヌクレオチドによる、DNAまたはRNA鎖の標識化に有用である。
標識化ヌクレオチドに加えて修飾されたヌクレオチドの最も重要なクラスは、ジデオキシヌクレオチドである。いわゆる「サンガー(Sanger)」または「ジデオキシ」DNA配列解析方法(参照として本明細書中に組み込まれるSanger等、1977,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)は、デオキシ‐、およびジデオキシヌクレオチドを含む混合物より、DNAポリメラーゼによる、アニールしたプライマー上への、ヌクレオチドの鋳型方向性取り込みに依存する。ジデオキシヌクレオチドの取り込みは鎖の終止、および鎖のさらなる伸長を触媒する酵素の無力化をもたらす。反応産物の電気泳動的な分離は、鋳型中の反対側のヌクレオチドに相補的な、特定のジデオキシヌクレオチド中のそれぞれの伸長産物末端である、伸長産物の「ラダー(ladder)」をもたらす。プライマーからのジデオキシヌクレオチドアナログの距離は、伸長産物の長さによって示される。それぞれ4つのジデオキシヌクレオチドアナログddA、ddC、ddG、またはddT(ddNTPs)のうちの1つを含む4つの反応が、同じゲル上で分離された場合、鋳型の配列はラダーのパターンから直接読み得る。伸長産物は、例えば、アイソトープ標識化もしくは蛍光標識化されたプライマー、デオキシヌクレオチド三リン酸またはジデオキシヌクレオチド三リン酸を反応中に含む、いくつかの方法で検出し得る。
ゲル泳動している間に検出を行い得、かつ単回の反応およびゲルより配列データの長い解読が可能であり得るため、蛍光標識化は、迅速なデータ回収という有利な点がある。さらに蛍光配列検出は、4つの異なる標識化をした蛍光色素ターミネーターを含む、1つの反応チューブ内で行う配列解析を可能にする(いわゆる色素ターミネーター法、参照として本明細書中に組み込まれるLee等、1992,Nucleic Acids Res.20:2471)。
DNA配列解析に有用であるポリメラーゼに要求される性質は、ジデオキシヌクレオチドの取り込みの改善である。ジデオキシヌクレオチドの取り込みの改善は、高価な放射活性または蛍光色素標識化ジデオキシヌクレオチドの必要を減らすことで、DNA配列解析をより費用効率の高いものにすることができる。さらに、不偏性ジデオキシヌクレオチドの取り込みは、改善されたシグナル統一性を提供し、塩基決定の正確性の増加をもたらす。均一なシグナル出力は、検出される対立遺伝子の変化などに起因する、微妙な配列の違いをさらに可能にする。関連する位置で2つの異なる半強度のシグナルを産生する対立遺伝子の変化は、不均一性ddNTPを利用したポリメラーゼに起因するシグナル強度の変化によって、容易に隠すことができる。
二重標識化ヌクレオチドアナログ(例えば、米国特許出願第20040014096号を参照されたい)は、取り込まれる前は非蛍光であり、蛍光基はヌクレオチドより開裂する分子をもたらす、蛍光基および消光基の両方が付着したヌクレオチドアナログである。蛍光部分および消光部分の両方を含む二重標識化ヌクレオチドアナログは、当技術分野で一般的な、ジデオキシヌクレオチド鎖ターミネーターに代えて、鎖ターミネーターとして用いることができる。鎖終結二重標識化ヌクレオチドアナログは、2’,3’‐ジデオキシピロフラノース分子であるか、またはそれと同等である、糖部分を有する。二重標識化ヌクレオチドアナログは、伝統的な標識化鎖終結ヌクレオチドアナログと比べて、より蛍光バックグラウンドが減少するという有利な点がある。二重標識化ヌクレオチドアナログは、ポリヌクレオチド鎖内に取り込まれるまでは蛍光シグナルを発しないが、取り込まれなかったアナログによる蛍光バックグラウンドは、顕著に減少する。二重標識化ヌクレオチドアナログは、定量的PCR(QPCR)法におけるリアルタイム(real time)増幅の進行をモニターするのにも有用である。
このような二重標識化アナログの使用は、ポリメラーゼによるこのようなアナログの利用度に制限される。伸長している鎖内へのアナログの取り込みを促進するために、比較的高濃度のアナログを使用しなければならない。アナログは高価で、かつ伸長率を減少させ、潜在的にポリメラーゼの処理能力を低下させる。高濃度の二重標識化アナログはバックグラウンドシグナルおよび分子間消光の増加をももたらす。二重標識化ヌクレオチドアナログに対する識別が弱いポリメラーゼは、反応当たりに必要なアナログ量の減少によるコストの減少の一方で、蛍光シグナル、ならびにQPCRおよび配列解析反応の感度の増強をもたらすことができる。
天然型のDNAポリメラーゼによるリボヌクレオチドの取り込みは、めったに起こらない。リボヌクレオチドを高いレベルで取り込む変異体は、部分的なリボヌクレオチド置換による配列解析などの適用に用いることができる。この系において、同じ塩基に対応するリボヌクレオチドおよびデオキシヌクレオチの混合物は、変異体ポリメラーゼによって取り込まれる(Bames、1978.J.Mol.Biol.119:83‐99)。リボヌクレオチド配列解析反応をアルカリ条件下で曝露後に加熱した場合、伸長した鎖の断片化が起こる。4種すべての塩基に対する反応が変性アクリルアミドゲル上で分離された場合、配列解析ラダーを産生する。本特許出願の出願人は、この配列解析の代替方法のための、リボヌクレオチドの利用度が高いポリメラーゼ変異体が、当技術分野において必要であると認識している。
あるいは、アルカリ加水分解後のリボヌクレオチドの取り込みは、分子ブリーディング(molecular breeding)、性別PCR(sexual PCR)、および定方向進化(directed evolution)とも呼ばれるDNAシャッフリング((Stemmer,1994,Nature,370:389‐391)などのDNA分子のランダム開裂が必要な系に利用することができる。
DNA標識化酵素に要求される別の性質は、熱安定性である。熱変性、プライマーアニーリング、およびDNA鋳型を増幅するための酵素的プライマー伸長のサイクルを用いる、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の開発により、熱安定性を示すDNAポリメラーゼは、分子生物学および臨床診断の多面において革命をもたらした。熱安定性DNAポリメラーゼの原型はTaqポリメラーゼであり、好熱性真性細菌Thermus aquaticusより最初に単離された。熱安定性DNAポリメラーゼを用いる、いわゆる「サイクル配列解析」反応は、従来型(すなわち、非サイクル)配列解析反応と比較して、少量の出発鋳型を要求するという有利な点がある。
DNAポリメラーゼの3つの主要なファミリーが存在し、ファミリーA、B、およびCと定義されている。これら3つのファミリーのうちの1つへのポリメラーゼの分類は、大腸菌(E.Coli)DNAポリメラーゼI(ファミリーA)、II(ファミリーB)またはIII(ファミリーC)の既知のポリメラーゼとの構造的な類似に基づく。例として、ファミリーA DNAポリメラーゼは、Klenow DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus DNAポリメラーゼI(Taqポリメラーゼ)、およびバクテリオファージT7 DNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない;以前はα-ファミリーポリメラーゼ(BraithwaiteおよびIto、1991,Nuc.Acids Res.19:4045)として知られていたファミリーB DNAポリメラーゼは、ヒトα、δおよびε DNAポリメラーゼ、T4、RB69、およびΦ29バクテリオファージDNAポリメラーゼ、ならびにPyrococcus furiosusDNAポリメラーゼ(Pfuポリメラーゼ)を含むが、これらに限定されない;ならびに、ファミリーC DNAポリメラーゼは、Bacillus subtilis DNAポリメラーゼIII、および大腸菌DNAポリメラーゼIIIαおよびεサブユニット(BraithwaiteおよびIto、1993,Nuc.Acids Res.21:787に、それぞれdnaEおよびdnaQ遺伝子の産物として記載されている)を含むが、これらに限定されない。古細菌、細菌、ウイルス、および真核生物の広域スペクトルにまたがる、それぞれのファミリーのDNAポリメラーゼタンパク質配列の配置は、参照として本明細書中に組み込まれるBraithwaiteおよびIto(1993、上記を参照)に示されている。
BraithwaiteおよびIto(1993、上記を参照)に示すように、領域I、II、およびIII中には、一連の高度に保存された残基は、露出した芳香族残基(RB69番号、Y416、Y567、およびY391)、負電荷残基(D621、D623、D411、D684、およびE686)、および正電荷クラスター(K560、R481、およびK486)からなる3つの特徴的なクラスターを形成する。TaqポリメラーゼDNA複合体との比較により、これら3つのクラスターは、プライマー末端、および入ってくるdNTPが結合すると予想される領域を包含することを示唆する。RB69におけるdNTPとプライマー鋳型複合体とのモデル化は、逆転写酵素とc‐DNAとの共結晶の原子配置を用いて行われた。このモデルは、RB69 Y416は、dNTPのデオキシリボース部位を包むことを予想している。この位置のチロシンはリボース選択性に関与しており、哺乳動物の逆転写酵素におけるリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチド間のポリメラーゼ識別に貢献している(Y115)(Gao等、1997,Proc.Natl.Acad.Sci.94:407;Joyce,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.94:1619)。
ファミリーBポリメラーゼの領域III(モチーフBとも呼ばれる) は、ヌクレオチド認識における役割を担うことも明らかにされている。JDF‐3ファミリーB DNAポリメラーゼのAA487〜495に対応するこの領域は、共通配列KX3NSXYG(配列番号1)を有し(Jung等、1990,上記を参照;Blasco等、1992,上記を参照;Dong等、1993,J.Biol.Chem.268:211 63;Zhu等、1994,Biochem.Biophys.Acta‐1219:260;DongおよびWang、J.Biol.Chem.270:2 1563)、かつ機能的であるが、ファミリーA DNAポリメラーゼのへリックスO内のKX3(F/Y)GX2YG(配列番号2)とは構造的に類似していない(Wang等、1997,上記を参照)。断片およびTaq DNAポリメラーゼなどの、ファミリーA DNAポリメラーゼにおいて、OへリックスはdNTP結合において主要な役割をするアミノ酸を含む(Astatke等、1998,J.Mol.Biol.278:147;Astatke等、1995,J.Biol.Chem.270:1945;Polesky等、1992,1 Biol.Chem.267:8417;Polesky等、1990,J.Biol.Chem.265:14579;Pandey等、1994,J.Biol.Chem.269:13259;Kaushik等、1996,Biochem 35:7256)。特にへリックスOは、ファミリーA DNAポリメラーゼにおいてddNTP識別を与えるF(断片中のF763;Taq中のF667)を含む(KX3(F/Y)GX2YG;配列番号2)(TaborおよびRichardson、1995,上記を参照)。
新生DNAポリマー内に非天然型ヌクレオチドを取り込まないDNAポリメラーゼの傾向を表すために用いられる用語は、「識別」である。ファミリーA DNAポリメラーゼにおいて、ジデオキシヌクレオチドアナログの取り込みに対する効果的な識別は、主として単一のアミノ酸残基に対する会合である。ファミリーA DNAポリメラーゼ由来の酵素の大部分は、大腸菌DNAポリメラーゼ断片内のF762に相当する位置に、フェニルアラニン(pheまたはF)残基を有し、かつジデオキシヌクレオチドに対する強い識別を明示する。いくつかのポリメラーゼ(例えば、T7 DNAポリメラーゼ)は対応する位置においてチロシン(tyrまたはY)残基を有し、かつジデオキシヌクレオチドに対して比較的弱い識別を示す。この位置でチロシンを有するファミリーAポリメラーゼは、デオキシヌクレオチドを取り込むのと同じレベルで、またはほんの少しだけ異なるレベルで、ジデオキシヌクレオチドを容易に取り込む。識別に関係する部位におけるチロシンまたはフェニルアラニン残基への変換は、ファミリーA酵素のジデオキシヌクレオチド識別特性を逆転させる(TaborおよびRichardson、1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6449)。
熱安定性DNAポリメラーゼ間において、AmpliTaq FS(登録商標)(Perkin Elmer社)として知られている、Thermus aquaticus由来のファミリーA DNAポリメラーゼの変異型は、DNAポリメラーゼのF762に相当する位置にF667Y変異を含み、および野生型酵素と比較して、ジデオキシヌクレオチドの取り込みの増大(すなわち、ddNTPsに対する識別の減少)を示す。ジデオキシヌクレオチドの取り込みに対する識別の減少は、野生型酵素に比べて、蛍光および標識化ジデオキシヌクレオチド配列解析に、より有用である。
Taq DNAポリメラーゼのF667Y変異体は、ローダミン色素ターミネーターの使用を必要とする、フルオレセイン標識化ジデオキシヌクレオチドの使用に適していない。DNA二次構造を安定化する、Taq配列解析反応に現在利用されているローダミン色素ターミネーターは、シグナルの圧縮をもたらす。圧縮の問題をなくす努力は、デオキシグアノシン三リン酸に代わるヌクレオチドアナログ、デオキシイノシン三リン酸(dITP)を多量に使用する系をもたらす。(dITP)の取り込みがシグナルの圧縮を減少する一方で、反応中のdITPの存在は、反応温度の低下、および反応時間の増加を含む、追加の問題を生じる。さらに、配列解析におけるローダミン色素の使用は、望ましくない反応後精製を必要とする(Brandis,1999 Nuc.Acids.Res.27:1912)。ファミリーA 大腸菌DNAポリメラーゼI断片において、保存されたグルタミン酸残基(E710)の改変は、リボヌクレオチドに対する識別が減少する(Astatke等、1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:3402)。
Klenow断片およびTaq DNAポリメラーゼなどの、ファミリーA DNAポリメラーゼにおいて、OへリックスはdNTP結合において主要な役割をするアミノ酸を含む(Astatke等、1998,J.Mol.Biol.278:147;Astatke等、1995,1 Biol.Chem.270:1945;Polesky等、1992,J.Biol.Chem.267:84 17;Polesky等、1990.J.Biol.Chem.265:14579;Pandey等、1994,J.Biol.Chem.269:13259;Kaushik等、1996,Biochem.35:7256)。特にへリックスOは、ファミリーA DNAポリメラーゼにおいてddNTP識別を与えるF(Klenow断片中のF763;Taq中のF667)を含む(KX3(F/Y)GX2YG;配列番号2)(Taborおよび Richardson、1995,上記を参照)。
いわゆるパームドメインにおける触媒反応に関連する酸性残基の位置を除いて、ファミリーB DNAポリメラーゼは、ファミリーA DNAポリメラーゼと比較して、実質的に異なる構造を示す(Wang等、1997,Cell 89:1087;Hopfher等、1999,Proc.Natl Acad.Sci.USA 96:3600)。ファミリーB DNAポリメラーゼ独自の構造は、完全に異なるヌクレオチドアナログとの相互作用のスペクトルを許容し、おそらく構造的な制約に起因する、ファミリーA DNAポリメラーゼでの使用に適していないアナログの利用を可能にする。熱安定性ファミリーB DNAポリメラーゼは、超好熱古細菌において同定された。これらの生物は91℃以上の温度で生育し、およびこれらの酵素は、好熱性真性細菌ファミリーA DNAポリメラーゼより高い熱安定性を明示する(Mathur等、1992,Strategies 5:11)。いくつかのファミリーB DNAポリメラーゼの配列を、図2および6に示す。
Aファミリーポリメラーゼ、Polβ、HIV逆転写酵素、およびBファミリーポリメラーゼgp43の構造解析は、すべてが右手を模したパーム、フィンガー、およびサムドメインから構築される機能的なポリメラーゼ構造を共有していることを明らかにする(参照として本明細書中に組み込まれるBrautigmanおよびSteitz,1998,Curr Opin Struc Biol 8:54を評価のために参照されたい)。Polβを除き、パームドメインは、すべてのファミリー間で類似のトポロジーを示す。フィンガーおよびサムドメインは異なるファミリー間で高度に多様であり、かつサムドメインは主としてα-ヘリックスであるが、ドメインの詳細な構造は関連していない。おそらく驚くべきことに、4種すべてのファミリー内のフィンガーおよびサムドメインは、異なる祖先から生じている。
ポリメラーゼは多くの実験室応用に対して使用されるため、いくつかのポリメラーゼが、さまざまな実験室応用に対して望ましい特性を持つように開発された。例えば、Pyrococcus furiosus(Pfu)(配列番号3)中のアミノ酸E141およびD143に対応する部位における変異は、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性をなくすことが知られている。アミノ酸L409、Y410、P411、R461、K465、Q472、A486、R488、L490、A491、N492、Y495、およびY497に対応する部位における変異は、ポリメラーゼのヌクレオチド識別を減少させることが知られている(例えば、参照として本明細書中に組み込まれる、米国特許第6946273号、米国特許第6333183号、米国特許第5882904号、米国特許第5827716号、Yang等、1999 Biochemistry 38:8094,GardnerおよびJack,1999 Nucleic Acid Research 27:2545を参照されたい)。アミノ酸V93における変異、特にV93R(Pfu番号)は、ウラシル検出を混乱させることが知られている。Sso7dのDNA結合領域などの非配列特異的なDNA結合領域は、ポリメラーゼの処理能力を増加させるために、ポリメラーゼ内に取り込むことができる。さらに、Pfu DNAポリメラーゼ中にを提供されているアミノ酸に対応する部位は、刊行された配列配置、または、BLASTなどの任意のいくつかの配列配置プログラムを用いて、他のファミリーBポリメラーゼ配列上に容易にマッピングすることができる(例えば、BraithwaiteおよびIto、1993,上記を参照;BrautigmanおよびSteitz,1998,上記を参照;ならびにHopfner等、1999,上記を参照;BilesおよびConnolly,2004,上記を参照;GardnerおよびJack 1999,上記を参照;Edgell等、1997,J.Bacteriol.179:2632)。
基質の利用を拡大するための戦略としての、酵素内への分断(split)の導入は、アミノ酸交換に基づく、現在使用されている手法と大きく異なる。ポリメラーゼ ファミリー中への天然の分断の、4つの例がある。T4‐ファージファミリーは、フィンガードメイン内に分断を含む、5つのメンバーを含む(Petrov等、(2006)J.Mol.Biol.361:46‐68)。これらの分断は自然に起こり、かつ非分断T4‐様ファージDNAポリメラーゼと比較して、分断酵素が基質の利用の拡大などの独自の特性を示すかどうかは未知である。第二の天然の分断は、古細菌Methanobacterium thermoautotrophicum DNAポリメラーゼについて報告されている(Kelman等、(99)JBC 274:2875 1‐61)。この分断も自然に起こり、かつフィンガードメインの下流(外側)に見出される。この分断も、非分断古細菌DNAポリメラーゼと比較して、基質の利用の拡大を示すかどうかに関して、特徴付けられていない。天然の分断の2つの実施例において、ポリメラーゼは、ゲノムにおいて2bp〜3kb(T4様ファージ)から85Kbp(Mth)分離された異なる遺伝子によってコードされる。天然の分断の第3の例は、古細菌DNAポリメラーゼ遺伝子においてである。しかしながらこの分断は、N.equitans DNAポリメラーゼのミニインテイン内で起こり、ポリメラーゼが2つの別々のポリペプチドとして発現された場合、互いにスプライシングして(トランス‐スプライシング)全長ポリメラーゼを形成する。分断はフィンガードメインの外側に位置し、かつスプライシングイベントが完了するまでタンパク質を安定化する、追加の配列(インテイン)を有する(Choi等、(06)J.Mol.Biol.356:1093‐1106)。天然の分断の第4の例は、古細菌Sulfolobus solfataricus DNAポリメラーゼB1において見出される(Savino等、(2004)Structure 12:2001‐2008)。この場合、ポリメラーゼはタンパク質分解的に切断されて、2つの活性断片、DNAポリメラーゼ活性を有する50kD断片と、エキソヌクレアーゼ活性を有する40kD断片とを産生する。しかしながら、筆者等は、これらの活性は野生型と比較して減少したのか、もしくは代替のまたは改善された活性についてタンパク質分解断片を試験したかどうかについては、記載していない。この例における分断は、フィンガードメインの外側にも見出される。
減少した識別を有するポリメラーゼは、非従来型の核酸の取り込みを必要とする適用に有用である。このような適用は、しばしば核酸またはDNA「チップ」として参照される、複数の異なる核酸配列の同時解析における核酸アレイの標識化を含む。米国特許第5882904号(Riedl等)の記載などの、これらの適用の多くは、特に蛍光標識化非従来型ヌクレオチドである、非従来型のヌクレオチドの取り込みに対して識別の減少を示すDNAポリメラーゼの利益を享受する。チップのフォーマットに対処した適用は、特にDNA 配列解析および変異検出を含む。実施例は、「ミニ配列解析」法(例えば、Pastinen等、1997,Genome Res.7:606;Syvanen 1999,Human Mutation 13:110)、およびアレイ化プライマー伸長(APEX)変異検出法(Shumaker等、1996,Hum.Mutat.7:346)を含む。
本出願人は、当技術分野で、チップまたはゲルベースのミニ配列解析系における使用に対する、非識別DNAポリメラーゼがであると認識している。このような系は、多重化した一塩基多型(SNPs)の検出を有利に許容し、かつ定量的な遺伝子型同定を可能にする。配列の変異の同定は、遺伝子疾患の診断および治療、多様性疾患の素因、および新規または既存の医薬品に対する感受性を許容する。
さらに出願人は、当技術分野で、非従来型ヌクレオチドに対して識別の減少を有するDNAポリメラーゼが必要であると認識している。出願人は、特に当技術分野で、ジデオキシヌクレオチドに対して識別の減少を示す熱安定性DNAポリメラーゼ、および蛍光標識化ジデオキシヌクレオチドに対して識別の減少を示すDNAポリメラーゼが必要であると実感している。出願人は、特に二重標識化オリゴヌクレオチドである、ヌクレオチドのポリリン酸部位に改変を含むヌクレオチドアナログに対して、識別の減少を示す熱安定性DNAポリメラーゼが、特に必要であるとも認識している。
タンパク質構造変化させる変異を作る能力は、タンパク質の機能の解明、および以前は不適当であった反応を完了させるためのタンパク質の利用に対する基本的なツールとなっている(Arnold,1993,FASEB J.7:744)。速度の変化、熱安定性、最適pH、基質および反応における最終産物などの酵素特性の変化は、研究および産業において広く使用されている。これらの変化は、標的の酵素のアミノ酸の変更、付加、または削除に関連する。これらの構想における一般的な望ましくない変異は、ヌクレオチド配列中の付加または削除が、リボソーム翻訳複合体に、見当はずれのトリプレットDNAコドンの読み込み、間違ったアミノ酸取り込みの読み込み、および早期切断を引き起こす、フレームシフト変異である。多くの場合、翻訳の早期終止は、非機能的なまたは機能に乏しい酵素を導く。本明細書で報告しているように、DNAポリメラーゼ酵素において破壊を戦略的に引き起こす能力(開始コドンから停止コドンを通じて)は、ポリメラーゼ機能を維持していただけでなく、おそらく可動性の増加または重要なドメインの再配置を通して、幅広い基質を許容する驚くべき能力も与えた。
本発明は、基質の利用を幅広くするための、酵素中への非天然型分断の導入に関連する。「非天然型」は、分断が、酵素が自然に分断されることが知られていない部位中に導入されることを意味する。よってこれは例えば既知の天然の分断ポリメラーゼのことを呼ばないが、追加のまたは代替の分断部位を有するこのような酵素を包含する。本発明は、多くの異なる型の酵素に適用することができる。本発明を制限することを除いて、このような非天然型分断は、サブドメイン間の可動性を増加させること、および基質相互作用上の制約を減少させることが期待される。分断部位(および対応する分断の除去)における挿入は、例えばサブドメイン間の可動性を増加させるなどの、分断と類似の効果を有することが予測される。非天然型分断ポリメラーゼの作成に代わって、非天然型非分断ポリメラーゼを形成し得ることも予測される。この態様において、停止コドンは、単量体酵素を作るための、一組の直列にコードされたヘテロ二量体酵素の間から除去される。例えば、ファミリーD Pfu DNAポリメラーゼは自然界において、2つの直列にコードされたヘテロ二量体酵素の立体配置を有する。
本発明を分断DNA ポリメラーゼのために用いる場合、改善された二重標識化ヌクレオチド(例えば、米国特許出願20040014096に記載のアナログ)などの非天然型基質の取り込みが見られる。分断は、修飾された当初鋳型の利用を改善するために、またはポリメラーゼの他の活性を修飾するために、フィンガードメイン内、3’プライマー結合/エディティング部位内、二重鎖DNA結合部位内、一本鎖DNA鋳型結合領域内などに導入することができる。また、アクセサリータンパク質結合に関連したドメイン近傍の分断は、これらの因子間の相互作用を変化させることができ、複製複合体の会合および変化した活性における違いを導く。ポリメラーゼに対するアクセサリー因子は、クランプ(PCNA)、一本鎖結合タンパク質(RPA)およびヘリケースを含むが、これらに限定されない。
本発明は、入ってくるヌクレオチド、プライマーの3’末端、および/またはDNA鋳型と相互作用するポリメラーゼ領域における、もしくは非天然型基質の利用などのDNA重合の一面を改善するであろう任意の他の領域における、分断の導入を含む。
本発明の分断ポリメラーゼの1つは、Pfu 4C11であり、いくつかの変異(1‐467 V93R/A318T)/(468‐775 Q484R/V604L/A662V‐Ss07d7m)を含む。Pfu 4C11(図3B、図9を参照)をコードするヌクレオチド配列は、野生型配列と比較して翻訳の未成熟終止をもたらすフレームシフト削除、および任意のアミノ酸の欠失または変化を除く、1つのヌクレオチドの後ろの上流リボソームシフトの翻訳の再開を含む。この工程は翻訳の結合として知られており、かつ第1の遺伝子の制御および転写のために、第2の、またはさらに第3の遺伝子の翻訳と連結している、いくつかのポリシストロンのオペロン中に見出される(Aksoy等、1984,J.Bacteriol.157:363)。大腸菌における実験方法は、翻訳が未成熟で終了すると、7コドン下流内のメチオニンコドン(AUG)は、リボソームリサイクル因子またはShine‐Dalgarno共通配列(Karamyshev,2004,Biochemie.12:933)を除き、翻訳を再開することができることを明らかにする。開始コドンおよび終結コドンの最適の翻訳の結合位置は、UGA終止コドンの前に存在する、AUG開始を有するAUGAによって実証された(Hopfner,1999,上記を参照)。Pfu配列において、任意のヌクレオチド1398〜1402由来のdAのいずれか一つの削除は、同じフレームシフト/結合翻訳最終産物をもたらす。切断されたポリペプチド(断片I)は、前のPfuのカルボキシ末端に対応する新しいポリペプチドである一方で、Met468から始まり、かつアミノ酸468‐755(断片II)を包含する、アミノ酸1‐467に対応する。
別々におよび同時の、Pfu 1‐467および468‐775断片(フレームシフトによって産生される)の発現は、アミノ酸468から始まるおよび配列番号3のアミノ酸468−755を包含するカルボキシタンパク質ドメインは、アミノ断片の一部から発現した場合、極端に不溶であることを明らかにする。連結翻訳を通じて互いに発現する場合、2つのペプチドが同モル量共精製されることは、断片は互いに安定な複合体にフォールディングしたことを示す。2つのペプチドをコードする遺伝子断片が互いに分離して発現する場合、全長天然型タンパク質のように安定なまたは可溶性でなくとも、アミノタンパク質は精製することができる。
Q484R変異が分断に加えられる場合、ヌクレオチドアナログ取り込みにおける相乗効果がある。2つの変異は、フィンガーの先端の近くにある反対側のαへリックスで近接近している。Pfuにおいて、分断誘導フレームシフトおよびQ484R変異は、別々にFAM‐dCTP‐ダブシル取り込みを改善する一方で、これらの2つの変異の組み合わせは、より良いアナログ取り込みを産生する。二重変異体の立体配置は、特にγーリン酸においてダブシル‐dCTP修飾されたものの取り込みを改善する(図10)。作用機序により結合することが望まれない一方で、フィンガーが入ってくるヌクレオチドを覆うようにしてフォールディングされる場合、かさ高いヌクレオチドアナログの取り込みは、ヌクレオチド結合ポケットを緩めることで改善されることが示されている。
4C11分断PfuおよびQ484R二重変異体はPCR反応において頑強であり、かつ観測できる範囲の活性の欠陥はないことが明らである。特にこのような高度に保存されたドメインにおける小さな変化が活性に有害であることが予測できるという事実を考慮すると、これはいくらか驚くべきことである。
分断は野生型および変異体Q484R Pfu ポリメラーゼバックグラウンド中に挿入され、および終了点(end point)PCRアッセイにおいて、かさ高いヌクレオチドアナログ5−アミノアリル−(5−FAM)−2’−デオキシシチジン−5’−γ−トリホスホ―N6−(6−アミノヘキシル)−ダブシル(FCD)を取り込む能力に対して試験された。反応は、標準の濃度のdATP、dGTP、およびdTTPと共に行った。dCTPプールは、dCTPおよびFCDの組み合わせであり、dCTPプール中のFCDの割合は、0%(100%dCTP:0%FCD)から100%(0%dCTP:100%FCD)まで変化させた。臭化エチジウムなしのアガロースまたはアクリルアミドゲル上でのPCR産物の電気泳動は、紫外線励起およびグリーンフィルターによって結果として生じるFAM-標識化DNA産物を可視化することを可能にする(図11)。ゲルはその後臭化エチジウムで染色後、すべてのDNA分子を反映するために、オレンジフィルターによって可視化された。野生型エキソ(−)PfuはFCDアナログを取り込むことができない一方で、分断Pfu Q484R二重変異体は、50‐75%FCD(これらの条件下において)のFAM‐dCMPの適切な取り込みを示した。本発明において「エキソ(−)」は、D141A/E143A変異を含むポリメラーゼとして定義される(例えば、米国特許第5489523号を参照されたい)。
さらにQ484R変異を含む分断ポリメラーゼは、エキソ‐(+)またはエキソ(−)(それぞれ、D141A/E143Aの変異を含まず、およびD141A/E143Aの変異を含む)型のPfu DNAポリメラーゼについても試験された。なぜなら、標識化アナログは活性型3’‐5’エキソヌクレアーゼによって活性化させることができ、エキソ‐(+)酵素によって産生された単位複製配列はエキソ(−)分断Pfu Q484Rによって産生された単位複製配列よりも蛍光が弱く、およびプルーフリーディング活性によって放出された遊離FAM‐dCMPは、容易にゲル上で可視化される。したがって、3’‐5’エキソ活性を欠く分断ポリメラーゼは、終末点反応における非従来型のヌクレオチドの取り込みに対する使用に好ましい。他の適用において、エキソ活性を有するポリメラーゼの使用が好ましい。
変異体Sso7dタンパク質ドメインに対するコード配列(<90%同一性;米国特許出願第20050048530号を参照されたい)は、ポリメラーゼの処理能力を増加させるために、C末端部のPfu 468‐775(Q484R)断片の末端に取り込まれる。ポリメラーゼは、アミノ酸466の後ろでの分断を有する、エキソ‐(+)またはエキソ(−)型のPfuのいずれかを有する、バイシストロニックDNAポリメラーゼから発現される。DNA結合領域の取り込みは、DNA結合領域を欠くポリメラーゼと比較して、ポリメラーゼの識別特性を変化させなかった。
ポリメラーゼ内への分断の挿入によって二重標識化ヌクレオチドアナログの利用が増大することを特定することは、Pfu固有のものであり、JDF‐3分断ポリメラーゼバイシストロニックコード配列が作成される。得られたポリメラーゼは、図5に示す(JDF‐3 Z2)。アミノ酸469の後ろの分断に加えて、10アミノ酸がN末端JDF‐3断片のC末端上に付加された。これは、アミノ酸が野生型配列に加えられない点で、Pfu 4C11変異とは異なる。JDF‐3変異体Z2は、フィンガードメインの先端近傍におけるフィンガーの挿入を示し、かつ伸長反応における非従来型のヌクレオチドの取り込みの増加をもたらすことが見出された。
上記のように、本発明は基質の利用を拡げる非天然型分断を有する酵素を提供する。本発明は、多くの異なる型の酵素に適用することができる。例えば、非天然型分断は、フィンガー領域中などの、ポリメラーゼ活性を修飾する任意の領域において存在することができる。好ましくは、ポリメラーゼにおける非天然型分断は、非天然型ヌクレオチド、特に二重標識化ヌクレオチドアナログに対する改善された取り込み、または識別の減少を有する分断ポリメラーゼをもたらす。分断ポリメラーゼはさらに非天然型ヌクレオチドの取り込みを改善するため、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させるため、5’‐3’エキソヌクレアーゼ活性を減少させるため、ウラシル検出活性を減少させるため、非分断ポリメラーゼと比較して安定性を増加させるため、またはDNA結合領域を取り込むように修飾されるために、さらに修飾されうる。好ましい態様において、分断ポリメラーゼを作り出すために用いられた熱安定性ポリメラーゼは、ファミリーAおよびファミリーB DNAポリメラーゼから選択される。これは古細菌、哺乳動物、またはバクテリオファージポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。一態様において、1つまたはそれ以上の分断を含む、分断ポリメラーゼは熱安定性古細菌ポリメラーゼである。一態様において、分断ポリメラーゼは、フィンガードメインにおいて分断されるポリメラーゼである。
分断ポリメラーゼは、単一の、機能的なポリメラーゼ分子を形成するために会合する、少なくとも2つの分離したポリペプチド(例えば、N末端断片及びC末端断片)として発現されたポリメラーゼと理解される。一般に会合は非共有結合であり、硫黄‐硫黄架橋などの共有結合架橋でもあるが、ポリペプチドへの連結を形成しうる。必要でなければ、分断ポリメラーゼの断片の発現は、好ましくは適切なフォールディングを促進するために翻訳的に結合する。分断ポリメラーゼは、少なくとも1つの分断、好ましくはタンパク質のフィンガードメイン中に好ましい1つの分断を有することを含む。分断は、分断ポリメラーゼを構成する少なくとも2つのポリペプチドなどの、ポリメラーゼのアミノ酸配列における切断と理解されている。分断はさらに、挿入、欠損、および/または分断の部位におけるアミノ酸の変異をもたらすことができる。すなわち、ポリペプチドが結合した場合、ギャップ、挿入、および/または分断の部位における野生型配列と比較した変異となるであろう。好ましい態様において、分断の部位において最大約5アミノ酸を削除することができる。あるいは、他の好ましい態様において、分断において生じた新規のC末端および/またはN末端のいずれかまたは両方に、最大約40アミノ酸をに加えることができる。しばしば、メチオニンがポリメラーゼのC末端断片に対する野生型コード配列中に存在しない場合、1つのメチオニンが、翻訳の開始部位の作成のために、コード配列のN末端に加えられる。メチオニンに対するコード配列は、一般的には別々のベクターまたは発現構築物において、ポリシストロンのmRNAにおける翻訳のリボソーム再開を促進するために挿入され、または二次プロモーターからのC末端断片の翻訳の開始を可能にする。あるいは、GTGのような他の開始コドンも、翻訳の結合に働く。
さまざまなポリメラーゼの領域IIIは、2つの長い非平行αへリックスからなり、短いループ(フィンガー先端)によって分離される、「フィンガードメイン」を包含する。フィンガードメインの配列は、図1および7に示す。αへリックスは、PfuにおけるヘリックスN/O(BilesおよびConnolly,2004,上記を参照)、SsoにおけるR‐R’/S(Savino等、2004,Structure 12:2001)およびTgo DNAポリメラーゼにおけるOTP(Hopfner,Ct等、1999 Proc.Natl.Acad.Sci USA,96:3600)に対応する、古細菌DNAポリメラーゼのフィンガードメインを含む。いくつかの古細菌DNAポリメラーゼの構造が特定され、およびフィンガードメインの特性が、いくつかの刊行物において考察された(Hopfner,等、1999,上記を参照;Zhao等、1999.Structure 7:1189;Rodriguez等、2000.J.Mol.Biol.299:447;Hashimoto等、2001,J.Mol.Biol.306:469;Savino等、2004,上記を参照)。バクテリオファージRB69 DNA pol-プライマー/鋳型-dNTP結晶構造との比較は、dNTP結合および忠実性において、フィンガードメイン中の保存されたアミノ酸を関連付ける。しかしながら、T4およびT4‐様ファージのフィンガードメインは、延長したフィンガー先端ドメインを有しており、すなわち古細菌ファミリーBポリメラーゼにおいて見出されない。フィンガードメインは古細菌にわたって高度に保存されており、すべてのDNAポリメラーゼは類似のヘリックス‐ループ‐へリックスモチーフを有しており、かつしたがってdNTP認識に対する同じ作用機序を使用していることを示唆する。さらにその上、多くのポリメラーゼのアミノ酸配列が知られており、分断部位および1つのポリメラーゼから別のポリメラーゼへの変異の推定を可能にする。へリックス‐ループ‐へリックスのフォールディングは、両方のαへリックス由来の、いくつかの高度に保存されたアミノ酸の近傍の配置を導く。
フィンガーサブドメインは、保存された領域IIIおよびIVを含む、主として2つの長い非並行型αへリックスを形成する。フィンガードメインの長さは、ファミリーBポリメラーゼ中で実質的に変化する。例えば、T4およびT4‐様ウイルスRB69、RB49、RB43、およびAeh 1由来のいくつかのgp43 タンパク質は、gp43 タンパク質間で広く分布する、フィンガーの先端の配列における構造的に不規則な50〜75アミノ酸残基を含む(Petrov等、2006,J.Mol.Biol.361:46)。さらに興味深いことに、いくつかの古細菌のファミリーBポリメラーゼは、全体的な構造においてRB69 gp43と類似しているが、フィンガードメインの全体においてこのフィンガー先端の特徴を欠く。しかしながら、ヘリックス間の短い介在配列におけるアミノ酸、特にアミノ酸472および473(Pfu番号)は、ポリメラーゼの忠実性に関連することを示す(BilesおよびConnolly、2004.Nucleic Acids Res.32:e176)。他のgp43 タンパク質において、コード配列はフィンガー先端配列において中断されるため、2つの分離したORF(オープンリーディングフレーム)、またはシストロン43Aおよび43Bに遺伝子を分断する。天然の分断ポリメラーゼは古細菌においても同定されたが、分断はフィンガードメインの外側に位置する(Kelman等、1999.J.Biol.Chem.274:28751)。
本明細書において、「ファミリーA DNAポリメラーゼ」または「Aファミリー DNAポリメラーゼ」またはこれらの変異は、ファミリーAポリメラーゼのメンバーとして分類された任意のDNAポリメラーゼを参照し、ここでファミリーA分類は、大腸菌DNAポリメラーゼIとの構造的な類似性に基づく。ファミリーAポリメラーゼは、大腸菌DNAポリメラーゼI、Strptcoccus pneumoniae DNAポリメラーゼI、Thermus aquaticus DNAポリメラーゼI、Thermus flavus DNAポリメラーゼI、Thermotoga maritime DN ポリメラーゼI;バクテリオファージDNAポリメラーゼ T5DNAポリメラーゼ、T7DNAポリメラーゼ、Spol DNAポリメラーゼ、Spo2 DNAポリメラーゼ;酵母ミトコンドリアDNAポリメラーゼII;およびThermus aquaticus(Taq)由来の熱安定性DNAポリメラーゼなどの、細菌DNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。
本明細書において、「ファミリーB DNAポリメラーゼ」または「BファミリーDNAポリメラーゼ」またはこれらの変異は、ファミリーB DNAポリメラーゼのメンバーとして分類された任意のDNAポリメラーゼを参照し、ここでファミリーB分類は大腸菌DNAポリメラーゼIIとの構造的な類似性に基づく。以前はα‐ファミリーポリメラーゼとして知られていた(BraithwaiteおよびIto、1991,上記を参照)ファミリーB DNAポリメラーゼは、ヒトα、δおよびεDNAポリメラーゼ、T4、RB69およびΦ29バクテリオファージDNAポリメラーゼ、およびPyrococcus furiosus DNAポリメラーゼ(Pfuポリメラーゼ)を含むが、これらに限定されない(例えば、表1を参照されたい)。
ファミリーB DNAポリメラーゼの配列比較は、降順に類似性が番号付けされる、6つの保存された領域I‐VIで示される(例えば、BraithwaiteおよびIto、1993,上記を参照、Edgell等、1997を参照されたい)。ファミリーBポリメラーゼにおいて最も保存された残基は、3つの最も保存されたカルボン酸を特徴とする、ポリメラーゼ触媒中心から半径10オングストローム以内に位置する(Wang等、1997,Cell 89:1087)。3つの最も高度に保存された領域(I、II、およびIIIと指定)は、接触する保存された表面を産生するために、パーム(I)、フィンガー(II)、およびサム(III)の塩基から、活性部位の中心に収束する。幅広い種類のファミリーBポリメラーゼ由来のフィンガードメインの配列は、この領域が高度に保存されていることを示す(図1)。
ファミリーB DNAポリメラーゼは、FIPSXLXXLXXXRQXXKXXMKXXXDPXEKXXLDYRQXAIKXLAN(配列番号5)の配列を有するフィンガードメインにおいて、モチーフを有することで特徴付けることができ、ここでXは任意のアミノ酸である。配列は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%モチーフと同一であり得る。クローン化ファミリー B DNA ポリメラーゼは、vent Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.(Stra11‘’TTY),Pab Pyrococcus abyssi,PYRHO Pyrococcus horikoshii、PYRSE Pyrococcus sp.(GE23系)、Deep vent Pyrococcus sp、Pfu Pyrococcus furiosus、JDF‐3 Thermococcus sp.、9°N Thermococcus sp.(90N‐7系)、KOD Pyrococcus sp.、Tgo Thermococcus gorgonarius,THEFM Thermococcus fumucolans、METTH Methanobacterium Thermoautotrophicum、Metj Methanococcus jannaschii、POC Pyrodictium occultum、ApeI Aeropyrum pernix、ARCFU Archaeoglobus fulgidus、Desuufurococcus sp.Tok、およびThermococcus kodakarensisを含むが、これらに限定されない。
古細菌、細菌、ウイルスおよび真核生物の広域性にわたる、それぞれのファミリーA、B、およびCのDNAポリメラーゼタンパク質配列の配置は、参照として本明細書中に組み込まれるBraithwaiteおよびHo(1993)中に含まれる。最近、ファミリーD(古細菌のユリ古細菌門(Euryarchaeota)サブドメインにおいて見出される)、ファミリーX(例えば、既知の真核生物ポリメラーゼPol βを含む)、およびファミリーY(損傷乗り越え合成ポリメラーゼを含む)が報告されている。DNAポリメラーゼ ファミリーA、ファミリーB、および逆転写酵素において保存されたモチーフは、モチーフA(ファミリーA共通配列のDhSxIELR、ファミリーB共通配列のDhxSLYPS、逆転写酵素共通配列のDh‐‐GY)およびモチーフB(ファミリーA共通配列の GKxhNFGVLYG、ファミリーB共通配列のKhxxN‐SLYG)を含む(GardnerおよびJack、1999,Nucleic Acids Research,27:12,2545‐2553)。ファミリーAおよびファミリーB DNAポリメラーゼにおいて見出されるB‐モチーフは、広い範囲のDNAポリメラーゼにおいて見出される保存されたモチーフでもある(Evans等、2000,Nucleic Acids Research 28:1059‐1066)。プライマー-鋳型相互作用に重要なアミノ酸は、ファミリーAおよびファミリーBポリメラーゼにおいても同定された(Hogg等、2004,EMBO,23:1483‐1493)。したがって、本発明の分断ポリメラーゼは、フィンガーモチーフ以外の保存されたモチーフにおいて分断されているファミリーAおよびファミリーBポリメラーゼ、または保存されたモチーフを示す任意の他のポリメラーゼであることができる。
本発明の分断ポリメラーゼは、非天然型ヌクレオチドの取り込みを増加、および/または非分断ポリメラーゼと比較して修飾されたプライマー鋳型の利用の増加をもたらすことができる。これらは特に、二重標識化ヌクレオチドアナログなどの非天然型ヌクレオチドの識別の減少に対して適している。非天然型ヌクレオチドは、ポリリン酸および/または塩基において修飾され得る。改変は、フルオロフォアまたは消光剤を含み得る。標識化は、蛍光標識、消光剤、アイソトープ、化学発光標識、量子ドット標識、抗原、親和性部分、またはヌクレオチドアナログの検出を可能にする任意の他の構造を含むが、これらに限定されない。好ましい態様において、消光剤標識はポリリン酸基に結合し、かつ蛍光部分は核酸塩基またはヌクレオチドアナログの糖に結合する。
核酸塩基部分は好ましくはアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群から選択されるが、これらの修飾型および機能的なアナログは特に熟慮される。例えば、DNAポリメラーゼによって認識され、かつ取り込まれる、4つの従来型デオキシヌクレオチドdATP、dCTP、dGTP、およびdTTPのうちの1つではないヌクレオチド構造を意味する、非従来型のヌクレオチドも本発明に適用できると想定される。これらは、合成ヌクレオチド、修飾された従来型ヌクレオチド、リボヌクレオチドなどを含む。上記の非従来型のヌクレオチドうちのいずれか1つは「接合したヌクレオチド」であり得、ここで、本明細書において参照される、検出可能な標識化を生ずるヌクレオチドは、蛍光標識、消光剤、アイソトープ、化学発光標識、量子ドット標識、抗原、または親和性部分を含むが、これらに限定されない。さらに、本発明による二重標識化ヌクレオチドアナログは、核酸ポリメラーゼによるポリヌクレオチドの鋳型方向性重合に対する鎖ターミネーターとして振舞う。
分断ポリメラーゼは、キメラポリメラーゼ、第一のポリメラーゼ由来のN末端断片と第二のポリメラーゼのC末端断片との組み合わせであり得、好ましくは、断片は同じファミリーのポリメラーゼ由来である(例えば、両方ともファミリーBポリメラーゼ)。組み合わせが単一の、機能的なポリメラーゼ 分子を形成するために会合する少なくとも2つの分離したポリペプチドを含む限り、ポリメラーゼの任意の組み合わせが本発明において使用し得る。
本発明において、コード配列内への分断の挿入は、一般的には分断ポリメラーゼのC末端断片の翻訳の再開のための開始因子メチオニンを導入するための、分断部位における少なくとも1つのアミノ酸中のコード配列の変異を含み得る。変異は、別の読み枠におけるメチオニンに対するコード配列を除くために、特に分断部位の下流である、分断部位の近傍のコード配列内へ導入され得る。リボソーム再開に対して競合する、2つのノンコーディングフレームにおけるATGメチオニン配列は、正しい読み枠における、コドンのwobble塩基の変更によってしばしば除去される。最終アミノ酸配列に変異を導入しないでコード配列内に変異を導入する方法は、当業者に既知である。
本発明の別の態様において、分断は、分断部位において、野生型配列と比較して少なくとも1つの追加のアミノ酸に対するコード配列の付加をもたらす、コード配列の改変をもたらす。改変は、追加のアミノ酸に対するコード配列の挿入を、またはリボソームの終止コドンの上流の再開コドンへの逆行(backsliding)を促進する改変を、もたらし得る。野生型ポリメラーゼに挿入されうるものと比較して、最終ポリメラーゼに付加されたアミノ酸の数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、または40アミノ酸である。
本発明の別の態様において、分断は、分断部位における野生型配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸に対するコード配列の欠損をもたらす。修飾は、いくつかのアミノ酸に対するコード配列の欠損、またはリボソームの終止コドンの下流の再開コドンへのスライドを促進する改変をもたらし得る。削除しうるアミノ酸の数は、少なくとも1、2、3、4、または5アミノ酸である。
本発明の一態様において、分断に起因する任意の変異に加えて、分断ポリメラーゼはさらに野生型コード配列と比較して、1つまたはそれ以上の変異を含む。複数の変異は、分断ポリメラーゼに一つの新しい特性を与えるために、導入することができ、または複数の変異は、ポリメラーゼに複数の新しい特性を与えるために導入することができる。変異は、フィンガー領域内、または分断が起こる近傍またはその位置に導入することができ、または分断からさらに遠い領域に加えることができる。
分断ポリメラーゼにおける変異は、酵素において1つまたはそれ以上の変化をもたらす。例えば変異は、変異を含まない分断ポリメラーゼと比較して、分断ポリメラーゼの安定性を増加させることができる。他の実施例において、変異は、変異を含まないポリメラーゼと比較して、実質的にポリメラーゼの3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させる。さらに他の実施例において、変異は、変異を含まないポリメラーゼと比較して、さらにポリメラーゼの識別を減少させる。これは、ウラシル検出の減少 および/または非従来型のヌクレオチドまたはヌクレオシドを取り込む傾向の増加をもたらすことができる。別の態様において、ポリメラーゼは、ドメインを有しないポリメラーゼと比較してポリメラーゼの処理能力を増加させる、ポリメラーゼに結合した非配列特異的な二本鎖DNA結合領域を含み、好ましくは分断ポリメラーゼのC末端断片のC末端において含む。
本発明の一態様において、分断ポリメラーゼは、RXXXK(X)nQXXXKXXXNSXGX(配列番号4)を含むモチーフを有することで特徴付けられ、ここでXは任意のアミノ酸であり、およびn=15‐80である。さらなる態様において、分断は、配列番号4のモチーフに存在する。
本発明の一態様において,本発明の分断ポリメラーゼは、Xは任意のアミノ酸である、FIPSXLXXLXXXRQXXKXXMKXXXDPXEKXXLDYRQXAIKXLAN(配列番号5)を含むモチーフを有することで特徴づけられる。さらなる態様において、分断は、配列番号5のモチーフに存在する。一態様において、分断は、配列番号5のアミノ酸5〜40の領域に存在する。一態様において、分断は、配列番号5のアミノ酸5〜30の領域に存在する。一態様において、分断は、配列番号5のアミノ酸10〜25の領域に存在する。一態様において、分断は、配列番号5のアミノ酸15〜25の領域に存在する。
本発明の一態様において、ポリメラーゼは、BはM、V、LまたはIで、JはSまたはTで、UはFまたはYで、ZはQ、KまたはRで、およびXは任意のアミノ酸である、FIPSBLXXLBXXRXXBKXZMKXJXDPBEKXBLDYRQZAIKBLAN(配列番号6)を含むモチーフを有することで特徴づけられる。さらなる態様において、分断は、配列番号6のモチーフに存在する。一態様において、分断は、配列番号6のアミノ酸5〜40の領域に存在する。一態様において、分断は、配列番号6のアミノ酸5〜30の領域に存在する。一態様において、分断は、配列番号6のアミノ酸10〜25の領域に存在する。一態様において、分断は、配列番号6のアミノ酸15〜25の領域に存在する。
本発明の一態様において、分断ポリメラーゼはGXXXXXLXXLXXXRXXXKXXMXXXXDXXXXXXLDXRQXAXKXXANXXYGYXXX(配列番号53)を含むモチーフを有することで特徴付けられ、ここでXは任意のアミノ酸であり、およびn=15‐40であり、Xは任意のアミノ酸である。さらなる態様において、分断は配列番号53のモチーフに存在する。さらなる態様において、分断は配列番号53のモチーフに存在する。一態様において、分断は配列番号53のアミノ酸5〜40の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号53のアミノ酸5〜30の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号53のアミノ酸10〜25の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号53のアミノ酸15〜25の領域に存在する。
本発明の一態様において、本発明の分断ポリメラーゼは、GXXXXBLXXLBXXRXXBKXXMXXJXDXXOZXBLDXRQZABKBBANXUYGYXXX(配列番号54)を含むモチーフを有することで特徴付けられ、ここでXは任意のアミノ酸である。さらなる態様において、分断は配列番号54のモチーフに存在する。一態様において、分断は配列番号54のアミノ酸5〜40の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号54のアミノ酸5〜30の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号54のアミノ酸10〜25の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号54のアミノ酸15〜25の領域に存在する。
本発明の一態様において、分断ポリメラーゼは、GFIPSXLXXLXXXRQXXKXXMZXXXDPXXXXXLDYRQXAIKXLANSUYGYXXY(配列番号55)を含むモチーフを有することで特徴付けられ、ここでXは任意のアミノ酸であり、およびn=15‐40であり、Xは任意のアミノ酸である。さらなる態様において、分断は配列番号55のモチーフに存在する。さらなる態様において、分断は配列番号55のモチーフに存在する。一態様において、分断は配列番号55のアミノ酸5〜40の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号55のアミノ酸5〜30の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号55のアミノ酸10〜25の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号55のアミノ酸15〜25の領域に存在する。
本発明の一態様において、本発明の分断ポリメラーゼはGFIPSBLXXLBXXRXXBKXXMZXJXDPBEZBBLDYRQZAIKBLANSUYGYXXY(配列番号56)を含むモチーフを有することで特徴付けられ、ここでXは任意のアミノ酸である。さらなる態様において、分断は配列番号56のモチーフに存在する。一態様において、分断は配列番号56のアミノ酸5〜40の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号56アミノ酸5〜30の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号56のアミノ酸10〜25の領域に存在する。一態様において、分断は配列番号56のアミノ酸15〜25の領域に存在する。一態様において、配列番号56において追加のQ484R変異が存在する。
本発明の一態様において、ポリメラーゼは、少なくとも75%同一、80%同一、85% 同一、90%同一、または95%同一などの、配列番号4、5、6、53、54、55、または56と少なくとも70%同一の配列を有することによって特徴付けられる。さらなる態様において、分断は、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一などの、配列番号4、5、6、53、54、55、または56のモチーフと少なくとも70%同一の配列に存在する。一態様において、分断は、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一などの、配列番号5、6、53、54、55、または56のモチーフと少なくとも70%同一の配列内の、アミノ酸5〜40の領域に存在する。一態様において、分断は、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一などの、配列番号5または6のモチーフと少なくとも70%同一の配列内の、アミノ酸5〜30の領域に存在する。一態様において、分断は、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一などの、配列番号5または6のモチーフと少なくとも70% 同一である配列内のアミノ酸10〜25の領域に存在する。一態様において、分断は、少なくとも75% 同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一などの、配列番号5、6、53、54、55、または56のモチーフと少なくとも 70% 同一である配列内のアミノ酸15〜25の領域に存在する。もちろん、任意のこれらの態様の同一性は、特に提示しない限り、84%同一または92%同一などを範囲に含むことができる。すなわち、本発明は任意の特定の値または引用した範囲内の値の範囲、および値およびよく熟慮される範囲の収集を理解するために、当業者にとって特に本明細書で引用される必要がない、それぞれの特定の値を意図する。
本発明のさらなる態様において、分断はPfu DNAポリメラーゼの領域内の部位において存在する。好ましくは、分断はポリメラーゼのフィンガードメイン中に導入される。実施例のように、分断は、アミノ酸448〜500(GFIPSLLGHLLEERQKIKTKMKETQDPIEKILLDYRQKAIKLLANSFYGYYGY)のいずれかの領域、Pfu DNAポリメラーゼのアミノ酸460〜480、アミノ酸465〜475、またはアミノ酸466〜470で起こったことを見出すことができる。一態様において、分断ポリメラーゼはフィンガードメイン内に位置し、かつ少なくとも55%同一性、少なくとも60%同一性、少なくとも70%同一性、少なくとも80%同一性、または少なくとも90%同一性などの、Pfuポリメラーゼのアミノ酸448〜500と少なくとも50%同一性を有する。
要約すると、本発明の一態様において、ポリメラーゼが分断ポリメラーゼであり、分断はFIPSBLXXLBXXRXXBKXZMKXJXDPBEKBLDYRQZAIKBLAN(配列番号6)を含むモチーフによって特徴付けられる領域内のフィンガードメイン内に存在し、BはM、V、LまたはI;JはSまたはT;UはFまたはY;ZはQ、KまたはR;およびXは任意のアミノ酸である、精製された熱安定性ポリメラーゼが提供される。一態様において、ポリメラーゼは、Thermococcus litoralis(vent)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu) DNAポリメラーゼ、Thermococcus JDF‐3 DNAポリメラーゼ、Pyrococcus horikoshii(Pho)DNAポリメラーゼ、Thermonococcus gorgonarius(Tgo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus sp.GBD(Deep vent)DNAポリメラーゼ、および古細菌ポリメラーゼIからなる群から選択される。ポリメラーゼは、PyrococcusおよびThermococcusからなる群から選択される、DNAポリメラーゼであることができる。一態様において、ポリメラーゼは、アミノ酸配列が、配列番号4、5、または6と、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%同一である、フィンガードメインを含む。
一態様において、本発明は、ポリメラーゼが分断Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼフィンガードメインを含み、かつ分断がフィンガードメイン内に存在している、単離された核酸ポリメラーゼを提供する。ポリメラーゼは、アミノ酸448および500、またはアミノ酸467および468間の分断を含み得る。
一態様において、本発明の分断ポリメラーゼはさらに、非分断ポリメラーゼと比較して、アミノ酸配列において変異を含む。変異は、変異を除いたポリメラーゼと比較して、ポリメラーゼの識別を減少させる、L409、Y410、P411、R461、K465、Q472、Q484、A486、R488、L490、A491、N492、Y495、およびY497からなる群から選択される、アミノ酸においてあり得る。識別の減少は、ウラシル検出の減少または非従来型のヌクレオチドまたはヌクレオシドを取り込む傾向の増加を含み得る。変異は、L409H、Y410V、P411L、R461、A/N、K465A/N、Q472H、Q484R/K、A486T、R488A、L490Y、A491Y、N492A、Y495S、Y497A1Lからなる群から選択される。ポリメラーゼはさらに、D141A/E143A二重変異、およびV93Rからなる群から選択される、変異がないポリメラーゼと比較して3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させる、Pfu DNAポリメラーゼにおける部位に対応する、アミノ酸における変異を含みうる。ポリメラーゼはさらに、変異がないポリメラーゼと比較して分断ポリメラーゼの安定性を増加させる、A318、V604およびA662からなる群から選択される、Pfu DNAポリメラーゼにおける部位に対応する、アミノ酸における変異を含み得る。別の態様において、変異は、非分断ポリメラーゼのレベルに匹敵する、分断ポリメラーゼの安定性を増加させる。変異は、A318T、V604L、A662V、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。一実施例として、ポリメラーゼは、Pfu DNAポリメラーゼにおけるアミノ酸Q484に対応するアミノ酸部位での変異を含む。本発明による好ましい変異は、Q484Rである。ポリメラーゼはさらに、A318T、V604L、A662V、D141A/E143A、およびV93Rからなる群から選択される、Pfu DNAポリメラーゼにおける部位に対応するアミノ酸部位を含む。
一態様において、ポリメラーゼはさらに、ポリメラーゼに結合した二本鎖配列非特異的核酸結合領域を含む。配列非特異的核酸結合領域は、野生型Sso7と90%未満の同一性を有するSso7派生物であり得る。
本発明の別の態様において、本発明は、ポリメラーゼが分断ポリメラーゼであり、分断がGXXXXBLXXLBXXRXXBKXXMXXJXDXXOZXBLDXRQZABKBBANXUYGYXXX (配列番号54)を含むモチーフで特徴付けられる領域内に存在し、BはM、V、LまたはI;JはSまたはT;OはDまたはE;UはFまたはY;ZはQ、KまたはR;およびXは任意のアミノ酸である、精製した熱安定性ポリメラーゼを提供する。ポリメラーゼは、JDF‐3 Thermococcus sp.DNAポリメラーゼ;Pyrococcus horikoshii(Pho)DNAポリメラーゼ;DNAポリメラーゼ1 Pyrococcus abyssi(Pabポリメラーゼ);DNA依存性DNAポリメラーゼ;エンドヌクレアーゼ Pyrococcus sp.;Vent Thermococcus litoralis DNAポリメラーゼ;Deep vent Pyrococcus sp.DNA ポリメラーゼ;9°N Thermococcus sp.(90N‐7)DNA ポリメラーゼ;Thermococcus gorgonarius(Tgo)DNAポリメラーゼ;Thermococcus aggregans (Tfu)DNAポリメラーゼ;Pyrococcus.ST700(ST700)DNAポリメラーゼ;Pyrococcus furiosis(Pfu)DNAポリメラーゼ;DNAポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼThermococcus sp.GE8;Thermococcus litoralis DNA依存性DNAポリメラーゼTLI);DNA依存性ポリメラーゼ前駆体Thermococuus sp. NAI(TSPNA1);DNA方向性DNAポリメラーゼ(EC 2.7.7.7)KOD、インテイン含有前駆体Pyrococcus sp.(KOD1系)(TSPKOD);PolA前駆体 Thermococcus zilligii(TZI);Thermoocuus kodakarensis(THY)DNAポリメラーゼ;Pyrococcus glycovorans(PGL)DNAポリメラーゼ;DNAポリメラーゼII Sulfolobus tokodai str.7(SULFOTO)DNAポリメラーゼ;およびDesulfurococcus sp.Tok(TOK)DNAポリメラーゼからなる群から選択され得る。一態様において、ポリメラーゼは、PyrococcusおよびThermococcusからなる群から選択される、古細菌DNAポリメラーゼである。ポリメラーゼは、配列番号53、54、55、または56と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、または少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するフィンガードメインを含み得る。ポリメラーゼはさらに、変異なしのポリメラーゼと比較して、ポリメラーゼの識別を減少させる、L409、Y410、P411、R461、K465、Q472、Q484、A486、R488、L490、A491、N492、Y495、およびY497からなる群から選択される、Pfu DNAポリメラーゼにおいて対応する部位におけるアミノ酸での変異を含み得る。ポリメラーゼは、ウラシル検出の減少または非従来型のヌクレオチドまたはヌクレオシドを取り込む傾向の増大を含む、識別の減少を有しうる。ポリメラーゼは、L409H、Y410V、P411L、R461AIN、K465A/N、Q472H、Q484R/K、A486T、R488A、L490Y、A491Y、N492A、Y495S、Y497A/L、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される変異を有し得る。ポリメラーゼは、D141A/E143A二重変異、およびV93Rからなる群から選択され、さらに変異なしのポリメラーゼと比較して3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させる少なくとも1つの変異を含む、Pfu DNAポリメラーゼにおける対応する部位におけるアミノ酸の変異を有し得る。ポリメラーゼは、変異なしのポリメラーゼと比較して、分断ポリメラーゼの安定性を増加させる、A318、V604およびA662からなる群から選択される、Pfu DNAポリメラーゼにおける対応する部位におけるアミノ酸の変異を含み得る。変異は、分断ポリメラーゼの安定性を、非分断ポリメラーゼに匹敵するレベルに増大させる。変異は、A318T、V604L、A662V、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。ポリメラーゼは、Q484RまたはQ484Kなどの、Pfu DNAポリメラーゼにおけるアミノ酸Q484に対応するアミノ酸部位における変異を含む。ポリメラーゼは、318T、V604L、A662V、D141A/E143A、V93R、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、Pfu DNAポリメラーゼ内の対応する部位におけるアミノ酸部位での変異を含み得る。ポリメラーゼは、さらにポリメラーゼに結合した二本鎖配列非特異的核酸結合領域を含み得る。配列非特異的核酸結合領域は、野生型Sso7と90%未満の同一性を有するSso7派生物であり得る。
要約すれば、本発明の分断ポリメラーゼのアミノ酸配列は、L409、Y410、P411、R461、K465、Q472、Q484、A486、R488、L490、A491、N492、Y495、およびY497からなる群から選択される、Pfu DNAポリメラーゼ内の対応する部位における少なくとも1つのアミノ酸の変異を含むことができる。分断ポリメラーゼのアミノ酸配列はさらに、L409H、Y410V、P411L、R461A/N、K465A/N、Q472H、Q484R/K、A486T、R488A、L490Y、A491Y、N492A、Y495S、Y497A/L、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、Pfu DNAポリメラーゼ内の対応する部位における変異を含み得る。別の態様において、本発明の分断ポリメラーゼのアミノ酸配列は、Pfu DNAポリメラーゼ内の対応する部位における、変異がないポリメラーゼと比較して3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させる、二重変異D141A/E143A、単一変異V93R、または両方を含む。一態様において、ポリメラーゼのアミノ酸配列は、さらにA318、V604、A662、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、変異がないポリメラーゼと比較して分断ポリメラーゼの安定性を増加させる、Pfu DNAポリメラーゼ内の対応する部位のアミノ酸における変異を含む。分断ポリメラーゼのアミノ酸配列は、さらにDNA結合タンパク質とのC末端融合を含み得る。
1つの例示的な実施例において、分断ポリメラーゼはSQ分断ポリメラーゼである。この変異体は、アミノ酸1‐467を包含する断片、および追加の変異Q484Rを有するアミノ酸468‐775を包含する断片を作成するための、アミノ酸467の後ろのシームレス分断を含む。SQは、D141A/E143A変異を付加することで、さらにエキソヌクレアーゼ活性をなくす修飾をすることができる(図13)。SQは、変異体4C11(1‐467 V93R/A318T)/(468‐775 V604L/A662V‐Ss07d7m)において見出される追加の変異を含まない。エキソ‐SQ変異体の核酸配列も開示されている(配列番号93)。エキソ‐SQ変異体は、非従来型のヌクレオチド取り込みアッセイにおいて4C11変異体と同様に作用することが見出された。なぜなら、エキソ‐SQ変異体はシームレス分断、Q484R、およびエキソ(−)(D141A/E143A)変異のみを含み、一態様において、本発明は、非従来型のヌクレオチド取り込みを増大させるための方法として、この一連の変異を提供する。本明細書において、「エキソ‐」または「エキソ(−)」エキソヌクレアーゼ活性を有しない変異体を参照する。
別の一般的な態様において、本発明は、本発明の分断ポリメラーゼをコードする核酸を提供する。なぜなら分断ポリメラーゼは、完全ポリメラーゼ配列の一部または部位であるに過ぎず、本発明の核酸は、任意の1つの読み枠におけるポリメラーゼの一部または部位をコードするだけである。分断ポリメラーゼは好ましくは、ポリメラーゼのN末端ポリペプチド部位(断片I)およびC末端ポリペプチド部位(断片II)の発現が翻訳的に結合したオペロンの、ポリシストロン系、好ましくはバイシストロン系から発現される。別の態様において分断ポリメラーゼは、同じ宿主細胞における、または2つの別々の宿主細胞における、2つまたはそれ以上に分離されたプラスミドに存在する、2つまたはそれ以上のコード配列にコードされる。
コード配列またはmRNAは、一般的なmRNAからのリボソームの遊離を除き、単一のプロモーターより1つ以上のポリペプチドを翻訳する遺伝子情報を含む場合、ポリシストロンであると考えられる。ポリシストロンのmRNAは、少なくとも2つのシストロンを構成する。本明細書において、シストロンは、単一のポリペプチド単位を特定するDNAの区域である。ポリシストロンのmRNAから発現されるポリペプチドは、翻訳後複合体を形成するか、または形成し得ない。原核生物において見出されるmRNAのほとんどはポリシストロンである。
翻訳的に結合したとは、分断ポリメラーゼの複数の部位の翻訳が調様式で翻訳され、翻訳時におけるサブユニットの会合を可能にすることを意味すると理解される。言い換えれば、「翻訳的に結合した」は、リボソームは停止コドンと遭遇し、翻訳を終了するが、RNAから遊離せず、かつ探索し、発見し、およびATG近傍より翻訳を再度開始することを意味すると理解される。それぞれのサブユニット由来のコード配列は、協調発現を可能にする同じ誘導性プロモーターの制御下であり得る。あるいは、断片は、単一の、ポリシストロンのmRNAをコードし得る。
本発明の一態様において、分断はシームレス分断であり、ここで野生型コード配列と比較して、分断部位において新規アミノ酸は導入または削除されない。例えば、4C11変異体(図3Bに示す)における分断は、読み枠(AAAATGA)から1つの「A」を削除している。偶然に、前のコドン(AAA)に維持されている下流のATGの「A」は、ポリメラーゼアミノ酸配列の保存を可能にする。フレームシフトにおける第二のコドンは、翻訳を終結するTGAとして認識される。ATG、TGAより1塩基上流からの翻訳の再開は、フレームシフトを訂正し、第二のタンパク質断片を産生し、第一の断片内の相補性は、ポリメラーゼのアミノ酸を保存する。この方法では、当業者に既知の方法を用いた注意深い設計であっても、ポリペプチド配列の変化がないように、シームレス分断は導入することができる。しかしながら、本発明は野生型核酸配列と異なる核酸を提供する。例えば、ヌクレオチド置換は核酸配列の変化によって作成することができるが、ポリペプチド配列は変化しない。
シームレスでない分断などの、他の設計も本発明において想定されている。この態様において、フレームシフトは終止コドン(TAA、TAGまたはTGA)を産生するのに加えて、タンパク質コード領域をフレームの外にシフトすることで、追加のアミノ酸が導入される。終止コドンは第一の断片の翻訳を終結するが、リボソームが7(上流のまたは下流)コドン内の、または上流または下流から46ヌクレオチド離れた再開コドンを見つけることができれば、翻訳は再度開始される(Karamyshev、2004、上記を参照)。さらに遠い開始コドンの位置も可能であるが、断片IIの翻訳効率の低下を起因するようなのであまり好ましくない。再開コドンは通常ATGであるが、ACG(Thr)、CTG(Leu)およびGTG(Val)もできる。開始コドンは別のアミノ酸をコードするけれども、メチオニンはペプチド鎖の第一の位置に挿入される。もちろんこれらの設計において、本発明は、野生型核酸配列と比較して、付加または欠損を含む核酸配列を提供する。本発明の実施には重要ではないけれども、しばしばそれぞれの断片の類似のモル量を提供するだけでなく、時間的に近似した様式においてそれぞれの断片の産生をもたらすような様式で、分断ポリメラーゼを構成する断片を発現することが望ましい。いずれか1つの反応の作用機序に限定するものではないが、これらの考察は、機能的な最終産物を作成するためのさまざまな断片の適切な産生、およびフォールディングを可能にすると考えられる。
いくつかの設計は、メチオニン開始を導入するための、1つまたはそれ以上のアミノ酸交換を要求する。フレーム外のATGトリプレット以外で、間違った翻訳の再開を避けるために所望の再開メチオニンに変化させることは好ましい。アミノ酸配列を変化させる以外の、ヌクレオチド配列を変化させる方法は、当業者に知られている。コードフレーム内の非開始因子メチオニンを変異させて、アミノ酸配列中に保存的な変異を導入することも有益である。フレーム中にコードされているメチオニンを変化させる相対的な利点および欠点は、当業者の能力の範囲で十分である。
シームレスでない分断は、変異を含む分断ポリメラーゼをもたらす。したがって本発明は、1つまたはそれ以上のアミノ酸の変異を含む、変異体分断ポリメラーゼを提供する。これらの変異は、分断ポリメラーゼの機能的な区域を作成するために、コード配列に加えられ得る。変異は分断ポリメラーゼのより良い、および/または異なる活性を可能にするために加えられ、かつ分断部位とは異なる領域において見出され得る。変異は、分断ポリメラーゼの安定性を増加させるため、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させるため、ポリメラーゼの識別を減少させるため、および/または分断ポリメラーゼの使用に対して有用であり得る任意の他の特性のために、ポリメラーゼの野生型配列に加えられ得る。変異は、どの特性が分断ポリメラーゼに所望されるかに依存して選択することができ、および変異の任意の組み合わせは、1つの分断ポリメラーゼにおいて見出される。
好ましい態様において、本発明の分断ポリメラーゼは、分断ポリメラーゼのそれぞれの部位またはシストロンの発現が、少なくとも1つの分断ポリメラーゼの他の部位の翻訳と翻訳的に結合する、ポリシストロンのオペロンにコードされる。一態様において、ポリシストロンのコード配列は、フレームシフト終止コドンの近位にある、少なくとも1つのリボソーム再開シグナルを含む。
別の態様において、本発明の分断ポリメラーゼは、同じ宿主細胞内、または2つの別々の宿主細胞内の、2つの別々のプラスミドに存在する、2つのコード配列にコードされる。2つのプラスミドが一の宿主細胞内に含まれている場合、同じ誘導性プロモーター(例えば、テトラサイクリンまたはIPTG誘導性)は、分断ポリメラーゼの断片の協調発現を促進するために用いることができる。しかしながら、2つの異なる誘導性プロモーターを使用することは有用であり得る。例えば、分断ポリメラーゼの1つの断片が、他の一方より不安定なため、したがって、強力なプロモーターが必要であり、より不安定な断片が産生する場合があり得る。分断ポリメラーゼの発現に対して依存する常時発現プロモーターの使用も、いくつかの場合で有用であり得る。
要約すれば、本発明は、分断ポリメラーゼの一部またはすべてをコードする核酸を提供する。一態様において、分断はフィンガードメイン内であり得る。一態様において、核酸は、非天然型ヌクレオチドの取り込みを改善する、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少する、5’‐3’エキソヌクレアーゼ活性を減少する、ウラシル検出活性を減少する、または非分断ポリメラーゼと比較して分断ポリメラーゼとして発現された場合、安定性が増す、少なくとも1つの変異をさらに含み得る。別の態様において、核酸は、L409、Y410、P411、R461、K465、Q472、Q484、A486、R488、L490、A491、N492、Y495、Y497、D141、E143、V93、A318、V604およびA662からなる群から選択されるPfu DNAポリメラーゼにおける対応する部位に、少なくとも1つのアミノ酸変異を含む核酸から発現される分断ポリメラーゼのような、少なくとも1つの変異を含む。
さらなる一般的な態様において、本発明は、本発明の分断ポリメラーゼを作成する方法を提供する。
一般に、本方法は、少なくとも1つのプロモーターと作動的に連結する、少なくとも2つのポリメラーゼコード領域を提供するステップと、少なくとも1つの宿主細胞内または試験管内発現系内などの、領域が発現することができる系にコード領域を導入するステップと、および機能的な分断ポリメラーゼの形成を可能にする条件下で系を培養するステップと、を含む。つまり、複数の態様において、本方法は、ポリメラーゼの一部をコードする少なくとも2つのコード配列を、少なくとも1つの宿主細胞内に導入するステップと、ならびに、コード領域の翻訳および翻訳産物の生体内で機能的な分断ポリメラーゼに会合することを可能にする条件下で、宿主細胞を培養するステップと、を含む。随意に、会合した分断ポリメラーゼは、精製および/または活性に対する試験をすることができる。あるいは、本方法は、宿主細胞からの分断ポリメラーゼポリペプチドの精製後の、翻訳産物の機能的な分断ポリメラーゼへの会合を含み得る。この場合、会合は宿主細胞または試験管内の外で行われる。
好ましい態様において、本方法は、分断ポリメラーゼをコードするポリシストロンのコード領域配列を提供するステップと、コード領域を宿主細胞内に導入するステップと、および分断ポリメラーゼの産生を許容する条件下で細胞を培養するステップとを含む。随意に、分断ポリメラーゼは会合前または会合後に精製し得る。さらに随意に、本発明の方法によって産生される分断ポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性に対して、および/または非従来型のヌクレオチドの取り込みに対して、試験することができる。本発明のこの態様を考慮して、本発明が、分断ポリメラーゼをコードするヌクレオチドを含む組換え細胞、および非天然に起こった分断ポリメラーゼを含む組換え細胞を包含することは明らかである。
本方法は、コード領域がプロモーターと作動的に連結する、ポリメラーゼをコードするポリシストロンコード領域配列を含む核酸を宿主細胞内に導入するステップと、およびポリメラーゼの産生を許容する条件下で細胞を培養するステップと、を含み得る。宿主細胞は、大腸菌、またはThemococcusまたはPyrococcus属であり得る。一態様において、本方法は、FIPSBLXXLBXXRXXBKXZMKXJXDPBEKXBLDYRQZAIKBLAN(配列番号6)を含むモチーフによって特徴付けられるポリメラーゼの領域内に、分断を導入することで、ポリメラーゼの識別を減少させる方法であり、ここでBはM、V、LまたはI;JはSまたはT;UはFまたはY;ZはQ、KまたはR;およびXは任意のアミノ酸である。ポリメラーゼは、Thermococcus litoralis(vent DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ、Thermococcus JDF‐3 DNAポリメラーゼ、Pyrococcus horikoshii(Pho)DNAポリメラーゼ、Thermococcus gorgonarius(Tgo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus sp.GBD(Deep vent)DNAポリメラーゼ、および古細菌ポリメラーゼIからなる群から選択され得る。一態様において、DNAポリメラーゼは、Thermococcus litoralis(vent)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ、Thermococcus JDF‐3 DNA ポリメラーゼ、Pyrococcus horikoshii(Pho)DNA ポリメラーゼ、Thermococcus gorgonarius (Tgo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus sp.GBD(Deep vent)DNAポリメラーゼ、および古細菌ポリメラーゼIなどの、PyrococcusおよびThermococcusからなる群から選択される。一態様において、ポリメラーゼは、分断Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼである。分断は、アミノ酸448および500、または467および468間であり得る。
本方法は、L409、Y410、P411、R461、K465、Q472、Q484、A486、R488、L490、A491、N492、Y495、およびY497からなる群から選択される、変異がないポリメラーゼと比較して、ポリメラーゼの識別を減少させる、Pfu DNAポリメラーゼにおいて対応する部位のアミノ酸における変異を有するポリメラーゼを含み得る。識別の減少は、ウラシル検出の減少、または非従来型のヌクレオチドを取り込む傾向の増加を含み得る。変異は、L409H、Y410V、P411L、R461A/N、K465A/N、Q472H、Q484R/K、A486T、R488A、L490Y、A491Y、N492A、Y495S、およびY497A/Lからなる群から選択され得る。別の態様において、ポリメラーゼは、D141A/E143A二重変異、およびV93Rからなる群から選択される、変異がないポリメラーゼと比較して、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させる、Pfu DNAポリメラーゼ内の対応する部位におけるアミノ酸の変異をさらに含み得る。別の態様において、ポリメラーゼは、A318、V604およびA662からなる群から選択される、変異がないポリメラーゼと比較して、分断ポリメラーゼの安定性を増加させる、Pfu DNAポリメラーゼ内の対応する部位におけるアミノ酸の変異を含み得る。一態様において、変異は分断ポリメラーゼの安定性を、非分断ポリメラーゼに匹敵するレベルに増加させる。また、変異はA318T、V604L、およびA662Vからなる群から選択され得る。好ましい態様において、ポリメラーゼはさらに、Q484Rなどの、Phi DNAポリメラーゼ内のアミノ酸Q484に対応する部位における、アミノ酸の変異を含む。本方法はさらに、A318T、V604L、A662V、D141A/E143A、およびV93Rからなる群から選択される、Pfu DNAポリメラーゼ内の対応する部位におけるアミノ酸の、少なくとも1つの変異を有するポリメラーゼを含み得る。一態様において、本方法は、ポリメラーゼに結合した二本鎖配列非特異的核酸結合領域を有するポリメラーゼを含む。配列非特異的核酸結合領域は、野生型Sso7と90%未満の同一性を有する、Sso7派生物であり得る。本発明の分断ポリメラーゼの作成方法は、追加の変異(分断を作成する任意の形成以外)、1つの変異、または1つ以上の変異を含まないことが想定される。分断ポリメラーゼは、ポリメラーゼはさらに非天然型ヌクレオチドの取り込みを改善するために、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させるために、5’‐3’エキソヌクレアーゼ活性を減少させるために、ウラシル検出活性を減少させるために、非分断ポリメラーゼと比較して安定性を増加させるためにさらに修飾され、またはDNA結合領域を取り込むために修飾されるものであり得る。
さらなる態様において、本発明は、本発明の分断ポリメラーゼを用いた方法を提供する。本発明の分断ポリメラーゼは、核酸増幅、核酸配列解析、定量PCR(QPCR)、核酸標識化、修飾されたプライマーまたは鋳型の合成、またはポリメラーゼを必要とする任意の反応に用いることができる。本発明は、二重標識化ヌクレオチドアナログなどの、非従来型のヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログに関連する方法に対して、特に適している。別の態様において、本発明は、別々に発現した2つのポリメラーゼ断片が互いに会合する場合、ポリメラーゼシグナルが産生される、相補性系の開発のために用いることができる。この場合、1つのポリメラーゼ断片は、他のポリメラーゼ断片に融合したライブラリーから選択するための餌(bait)として使用することができる。
本方法は、(a)本発明のDNAポリメラーゼを提供するステップと、および(b)ポリメラーゼがDNA合成を許容する、ポリメラーゼと核酸鋳型を接触させるステップと、を含み得る。別の態様において、本方法は、野生型DNAポリメラーゼでの合成と比較して、識別が減少したDNAの合成方法であって、(a)本発明のDNAポリメラーゼを提供するステップと、および(b)ポリメラーゼがDNA合成を許容する、ポリメラーゼと、核酸鋳型および非従来型のヌクレオチドを接触させるステップと、を含む。本方法は、(a)本発明のDNAポリメラーゼを提供するステップと、および(b)古細菌DNAポリメラーゼが合成DNA産物を産生するDNA合成を許容する、DNAポリメラーゼと核酸鋳型を接触させるステップと、および(c)合成されたDNA産物をクローニングベクター内に挿入するステップと、を含む、DNA合成産物のクローニング方法であり得る。別の態様において、本方法は、(a)本発明のDNAポリメラーゼを提供するステップと、(b)少なくとも1つの鎖終結試薬、および1つまたはそれ以上のヌクレオチド三リン酸の存在下で、DNAポリメラーゼによって配列解析されるDNA鋳型から、鎖終結断片を産生するステップと、および(c)断片のサイズからDNAの配列を決定するステップと、を含む。本方法は、(a)本発明のDNAポリメラーゼを提供するステップと、および(b)ポリメラーゼがDNA合成を許容する、ポリメラーゼを核酸鋳型および二重標識化ヌクレオチドと接触させるステップと、を含む、野生型DNAポリメラーゼでの合成と比較して、二重標識化ヌクレオチドの取り込みが増加したDNA合成の方法であり得る。本方法は、(a)本発明のDNAポリメラーゼを提供するステップと、および(b)ポリメラーゼがDNA合成を許容する、ポリメラーゼを、核酸鋳型および二重標識化ヌクレオチドと接触させるステップと、を含む、野生型DNAポリメラーゼでの定量PCR(QPCR)と比較して、二重標識化ヌクレオチドの取り込みが増大した、QPCRの方法であり得る。いくつかの態様において、分断ポリメラーゼの安定性を改善するため、本方法はジチオスレイトール(DTT)またはβ‐メルカプトエタノールなどの還元剤の非存在下で行う。
別の態様において、本発明の方法は、非天然型ヌクレオチドの取り込みを増加させるのに使用される。これは、ポリメラーゼが非天然型ヌクレオチドに対して増加した活性を示すような方法で、ポリメラーゼを分断することで達成することができる。高いヌクレオチドアナログ取り込み率は、分断またはアミノ酸交換のみを用いた場合と比較して、分断とアミノ酸配列における他の変異とを結合させることによっても増加することができる。
本発明は、非天然型分断DNAポリメラーゼを提供するステップと、およびポリメラーゼがDNA合成を許容する、ポリメラーゼと核酸鋳型を接触させるステップと、を含む、DNA合成の方法を提供する。一態様において、本方法のDNA合成は、非天然型ヌクレオチドを取り込む能力が増大した、または非分断ポリメラーゼと比較して、修飾されたプライマー鋳型を利用する能力が増大した、分断ポリメラーゼを含む方法である。本方法は、DNA配列解析、定量PCR(QPCR)、DNA標識化、またはこれらの組み合わせなどの、DNA合成の方法であり得る。本発明の方法の実施は、タンパク質および/または本発明の核酸を含む、多くの組成物を生じさせる。
さらなる一般的な態様において、本発明は少なくとも1つの本発明の分断ポリメラーゼを含む、組成物およびキットを提供する。組成物は、分断ポリメラーゼ、または本発明の核酸のうちの、少なくとも1つの分子を含む。組成物中の分断ポリメラーゼまたは核酸の量は幅広く変化させることができるが、分断ポリメラーゼに使用するなどの通常量は、本発明の少なくとも1つの方法またはアッセイを行うのに十分である。本方法またはアッセイは、核酸配列解析、増幅、QPCR、または核酸ポリメラーゼの使用に関連する、任意の他の方法に関連し得る。好ましい態様において、組成物は、本発明の分断ポリメラーゼ酵素をより安定化させるため、DTTまたはβ-メルカプトエタノールなどの還元剤を除く。
一般に、本発明によるキットは、本発明による方法を実行するための、いくつかのまたはすべての組成物、試薬、供給物などを含む。本発明による分断ポリメラーゼを含むキットにおいて、キットは一般的に、適切な条件下で行うための、分断ポリメラーゼに関連する少なくとも1つの反応を可能にする、十分量の分断ポリメラーゼを含む。一態様において、キットは、非天然型分断ポリメラーゼを含む、少なくとも1つの容器(例えば、バイアル、チューブ、アンプル)を含む。複数の態様において、キットはさらに、核酸ポリメラーゼ反応(例えば、増幅、配列解析)に使用される、少なくとも1つの他の物質を含む。一般的に、分断ポリメラーゼは1つまたはそれ以上の容器内に供給され、それぞれの容器は、分断ポリメラーゼに関連する少なくとも1つの反応を行うことを可能にする、十分量の分断ポリメラーゼを含む。キットは、本発明の方法に役立つ一般的な物質である、1つまたはそれ以上の他の物質も含み得る。これらは滅菌水、緩衝液、dNTP、対照DNA、プライマー等を含み得る。
本発明はさらに、純粋に例示的な本発明を意図するものである、以下の実施例によって説明され、およびいかなる場合であっても本発明を限定するとみなされるものではない。
実施例1:部位方向性変異誘発およびアフィニティータグ精製による、分断Pfu ポリメラーゼの調製
メーカーの使用説明書に従って、Stratagene社のQuikChange(登録商標)Multi部位方向性変異誘発キットを用いて、分断は部位特異的な変異誘発によってPfu 4 DNAポリメラーゼ内に導入された。使用したプライマーを表1に示す。
クローン105、106および107を作成するために、上記のプライマーはC末端6Xヒスチジンアフィニティータグを有する、Pfu D141A/E143A(エキソ‐)DNAポリメラーゼをコードするプラスミド鋳型と使用した。108、109および110クローンを、さらにPfu DNAポリメラーゼ配列内にQ484R変異を含む、類似のDNA鋳型を用いて作成した。クローン105内の分断部位は1残基上流に移動されたため、残基1‐467を包含する4C11の断片Iと比較して、クローン105の断片Iは、Pfu DNAポリメラーゼ残基1‐466に対応する。クローン105において、以前は断片I(4C11の)のリジン467は、断片IIの第二の残基として見出される。新規の分断部位は再開に対するメチオニンの付加を除いて設計されないが、追加のメチオニンもクローン105内に存在する。そのため野生型Pfuアミノ酸配列を基準とすると、もたらされた分断Pfu 105変異体は、I(1‐466)/II(M‐467‐775)として記録される。クローン106は、クローン105のように、同じ分断およびメチオニンの付加を使用するように設計されたが、さらに断片IIにおいてM3K変異を有する。したがって、分断Pfu106変異体は、野生型Pfuを基準とすると、I(1‐466)/II(K467M‐M468K‐(469‐775)と記載することができる。クローン107の断片Iは、Pfu Tyr546と同じ位置で終了している。配列は非天然メチオニンによって再開され、かつ流のリボソーム結合ドメインによって増幅された。よって、分断Pfu107は、1(1‐546)/II(M‐547‐775)と記録されることができる。すべての3つの分断は個々に計画され、かつさらに4C11(Pfu DNAポリメラーゼ配列の番号と比較して)におけるFCD取り込みを増幅する、Q484R 変異と併用される。これらのクローンを、108(105+Q484R)、109(106+Q484R)および110(107+Q484R)と名づけた。図3は、野生型Pfu DNAポリメラーゼ(パネルA)、クローン 4C11(パネルB)、クローン105および108(パネルC)、クローン106および109(パネルD)およびクローン107および110(パネルE)と関連性のあるアミノ酸配列を示す。
反応は以下で構成された:
2.5μlの10X QuikChange Multi反応緩衝液
18.5μl H2O
1μl プラスミド鋳型
1μl dNTP混合物
1μl QuikChange Multi酵素ブレンド
1μl プラスミド鋳型
サイクルのパラメータを以下に示す:
1サイクル
95℃ 1分
30サイクル
95℃ 1分
50℃ 1分
65℃ 17分
親プラスミドを除くために、反応は制限酵素Dpn Iで、37℃で1時間処理した。2μlの反応は、XL10 Goldコンピテントセル内に形質転換された後、LBamp50プレート上に播種して、30℃で20時間培養した。コロニーは採取後、LBamp50培地において30℃で一晩の、5ml一晩培養の開始のために用いられた。プラスミドDNAは、Strataprep(登録商標)プラスミドミニプレップキットを用いて、細胞から単離された。調整されたプラスミドは、所望の変異の取り込みを確定するために配列解析した。陽性物はBL21‐コドン(+)(登録商標)(DE3)‐RIPL コンピテントセル(Stratagene社)細胞内に形質転換された後、LBamp50プレートに播種され、30℃で16時間(一晩)培養した。コロニーは採取された後、LBamp50培地内で、30℃で一晩生育した。16時間後、1mlの培地は、50mlのLBamp50での培養開始のために用いられた。細胞はOD=600の値が0.8〜1.0に到達するまで30℃で生育した後、最終濃度1mMのIPTGで誘導した。誘導した細胞は、遠心分離による回収、および−20℃で凍結保存する前に、30℃で2−4 時間振とうした。
His‐タグ化分断Pfuポリメラーゼの精製は、Qiagen社のNi‐NTAスラリーを用いて行った後、QiaExpressionist Manual protocols9および12(Qiagen社 6/2003)中の大腸菌細胞用の指示に従った。75μlの溶出DNAポリメラーゼを Micro Bio−Spin6(BioRad社)脱塩カラムに通した後、(最終)50mM Tris‐Cl pH8.2、0.1mM EDTA‐100mM KClからなる緩衝液中に出した。
実施例2:分断Pfuの精製
エキソ(−)Pfu 4C11(1‐467 V93R/D141A/E143A/A318T)/(468‐775Q484R/V604L/A662V‐Ss07d7m)/DNAポリメラーゼは、pET11ベクターより大腸菌中で発現した。誘導した細胞は集菌後、40mM Tris‐Cl、1mM EDTA、pH7.5中に再懸濁した。プロテアーゼ阻害剤、リゾチーム(〜0.25mg/ml)、および2‐メルカプトエタノール(10mM)を加えた。細胞を超音波破砕により破砕した。 抽出物は、熱不安定性タンパク質を変性させるために熱処理(85℃、15分)した。NaClを1Mで加えた後、混入した核酸を沈殿させるために、0.175%のポリエチレンイミンを加えた。沈殿させた物質は、遠心分離で除去した。上清は、硫酸アンモニウムで65%飽和させた。沈殿させたタンパク質は遠心分離で回収して、65%飽和硫酸アンモニウムで一回洗浄した後、緩衝液A‐1(40mM Tris‐Cl、1mM EDTA‐1 mM 2-メルカプトエタノール、pH7.5)中に溶解させた。これを一晩緩衝液A‐1で透析後、緩衝液A‐1で平衡化したQ‐セファロースFFに添加した。エキソ‐4C11を含むフロースルー分画を回収後、緩衝液A‐1で平衡化したSP‐セファロースHPカラムに直接添加した。緩衝液A‐1で洗浄後、エキソ‐Pfu 4C11は、500mM KClの30カラム量勾配で、主要ピークとして溶出した。ピークは貯蔵後、緩衝液A‐1で一晩、再度透析した。これを、緩衝液A‐1で平衡化したヘパリンセファロースHPカラムに添加した。緩衝液A‐1で洗浄後、エキソ‐4C11は750mM KClの20カラム量勾配で、主要ピークとして再度溶出した。ピークは貯蔵、濃縮後、最終透析緩衝液(50mM Tris‐Cl、0.1mM EDTA‐1 mM DTT、100mM KCl、50%グリセロール、pH 8.2)で透析した後、−20℃で保存した。
実施例3:分離したPfu断片のクローニング、発現、および精製
ベクター調製
pET21bベクターを、EcoRIで一回切断したのと類似の直鎖状分子を産生する逆性プライマーで、スーパコイルドプラスミドベクターを増幅することで調整した。
9個の50μl反応は、以下のパラメータを用いて構築した:
5μl 10X Pfu Ultra(登録商標)II融合HS DNAポリメラーゼ(Stratagene社)
0.5μl 100 mM dNTPs(各25mM、Stratagene社)
1.25μl 順方向プライマー(100μM)
1.25μl 逆方向プライマー(100μM)
0.2μl プラスミドDNA(〜0.2ng)
1μl Pfu Ultra(登録商標)II 融合HS DNAポリメラーゼ(Stratagene社)
40.8μl H2O
サイクルのパラメータを以下に示す:
1サイクル
95℃ 1分
30サイクル
95℃ 45秒
50℃ 45秒
72℃ 2分
1サイクル
72℃ 5分
増幅後、9個の複製は混合した後、5μlのDpn I制限酵素(Stratagene社、4u/μl)で、37℃で1時間処理して、プラスミド鋳型を分解した。DNAは、製造者の推奨マニュアルに従って、StrataPrep PCRキット(Stratagene社)で精製した。
1μgの精製した直鎖状ベクターDNA(50μlの全体量中)は、5.5μlのXi‐Clonc緩衝液、および2μlのXi‐Clonc酵素(Genlantis社)と混合後、室温で30分反応させた。反応物は精製後、DNA Cleanupスピンカラム(Genlantis社)で濃縮した後、20℃に保存した。
挿入断片調製
2つのPfu DNAポリメラーゼ断片、断片I(Pfu1‐467、D141A/E143A、A318T)、および断片II(Pfu468‐775 Q484R、V604L/A662V)、はpET21b内にクローニングして、別々に発現した。使用した順方向プライマーおよび逆方向プライマーを下記の表IIに示す。
産物は、以下のプライマーおよび方法で4C11プラスミドより増幅した。
5μl 10X PfuUltral(登録商標)II 融合HS DNAポリメラーゼ(Stratagene社)
0.5μl 100mM dNTPs(それぞれ25mM、Stratagene社)
2μl 順方向プライマー(50ng/μl)
2μl 逆方向プライマー(50ng/μl)
1μl プラスミドDNA(〜0.2ng)
1μl PfuUltra(登録商標)II 融合HS DNAポリメラーゼ(Stratagene社)
38.5μl H2O
2つの50μl反応は、それぞれの断片に対して、以下の条件で増幅した:
1サイクル
95℃ 1分
30 サイクル
95℃ 45 秒
50℃ 45 秒
72℃ 30 秒
1サイクル
72℃ 5分
増幅後、4単位の制限酵素Dpn I(Stratagene社、4u/μl)を、プラスミド鋳型を消化するために、それぞれのPCR増幅反応物に加えた。DNAは、StrataPrep PCR(Stratagene社)で精製した。
2μlの調整したpET21bベクターを、10μlの精製した挿入断片に加えた後、50μlのXL10‐Gold(登録商標)Ultraコンピテントセル(Stratagene社)中に形質転換した。形質転換した細胞は、LBアンピシリン(50μg/ml)上に播種後、30℃で18時間培養した。コロニーは、PCR増幅で挿入断片の存在について選別後、挿入断片はDNA配列解析で確認した。
Pfu断片の精製は、実施例2に記載の手順を用いて行った。同じ方法を用いて精製する場合、未変化のPfu DNAポリメラーゼと比較して、断片Iは異なる溶出特性を示し、等電点の違いと一致する。断片IIは極端に不溶性であったため、いかなるカラムにも添加しなかった。
実施例4:終末点PCRによるヌクレオチドアナログ取り込みアッセイ
ヌクレオチドアナログのあるなしでPCRを行うときの分断Pfu酵素の能力を試験するため、単純なプラスミド鋳型を使用した(プラスミド2‐20)。このプラスミドは、ベクター挿入部位のどちらかのプライマーにより、pETベクターより増幅され出された、800bp挿入断片を含む。
FCD利用を試験するために設計されたPCR反応混合物は、以下からなる:
1.2μl 10xクローン化Pfu緩衝液(Stratagene社)
0.24μl 10mM dATP、dGTP、TTP
0.29μl Petrevプライマー(10μM)
0.29μl Petforプライマー(10μM)
0.5μl 希釈プラスミド2-20
1.0μlのポリメラーゼ
1.0μlの600μM(全体)dCTP/FCD混合物(50%dCTP、50%FCD)
7.48μl H2O
PCR反応における使用の最適量を見つけるために、酵素は上記のPCRにおいて、いくつかの希釈率で試験した。特定された最適値は、野生型エキソ‐Pfuおよび他の変異体との比較で使用した。
PCR反応は、以下のパラメータで増幅した:
1サイクル
95℃ 1分
30サイクル
95℃ 45秒
58℃ 45秒
72℃ 1分
1サイクル
72℃ 5分
FCDがDNAポリメラーゼによって取り込まれた場合、FAM-dCMPは、ダブシル‐ピロリン酸(PP)の遊離と同時に、伸長鎖に加えられる。溶液中または均一なアッセイ中(例えば、QPCR)において、蛍光は、取り込まれたFAM-dCMP分子の数、または未消光FAM部分の数と正比例して増加する。アナログの取り込みは、この方法により、いくつかの分断ポリメラーゼについて明らかになった。
アナログの取り込みは、終末点PCRと、続くゲル電気泳動および蛍光単位複製配列の検出を行うことで、評価した。全体のPCR反応混合物は1%アガロース、1xTBEゲル(Wide Mini Readyアガロースゲル、1xTBE、1%、20ウェル 15x10 cm、Bio‐Rad Laboratories社)で泳動し、およびFAM標識化は、紫外線光およびグリーンフィルターで検出した。適切なサイズの可視化バンドは、表III中のアナログ取り込みにおいて、「あり」のスコアをもたらす。画像の記録後、ゲルは臭化エチジウムで染色して、すべてのDNA産物を可視化した。
分断ポリメラーゼが従来型ヌクレオチドの取り込みに対して機能的かどうかを特定するために、PCR反応を、原則的に等量の4種すべてのdNTPsおよびヌクレオチドアナログなしの条件下で行った。ゲルの検出限界は、核酸バンドあたり約1ngであった。適切なサイズの可視化バンドは、表VI中の従来型ヌクレオチド取り込みにおいて、「あり」のスコアをもたらす。
実施例5:分断キメラJDF‐3/Pfuポリメラーゼの調製
キメラポリメラーゼは、JDF‐3 DNAポリメラーゼおよびPfu DNAポリメラーゼから構築された。分断は、Pfu DNA ポリメラーゼにおける4C11の分断と相同的であった。断片IがJDF‐3 DNAポリメラーゼ遺伝子よりコードされる一方で、断片IIはPfu DNAポリメラーゼ遺伝子にコードされる。構築物は、第一の断片および第二の断片に対応する2つのPCR産物を作成するステップと、産物を精製するステップと、およびスプライス重複によって産物を融合するステップとで、設計された。断片Iは、図4(パネルB)に示す分断JDF‐3断片Iと同じアミノ酸で終了し、および断片IIはPfu DNAポリメラーゼ(図3を参照)のM468より開始する。
JDF‐3配列特異的なヌクレオチドに加えて、第一の産物に対する順方向プライマーは、pET21bベクターへの組換えによる挿入を可能にする、追加の配列を5’末端に有する(表IV)。第一の断片に対する逆方向プライマーは、断片2の始めの配列と相補的な追加の配列を、5’末端に含む。
断片2に対する順方向プライマーは、断片1の末端配列に対応する追加の5’配列、ならびに断片2の始めをコードする同じ配列を含む。Pfu DNAポリメラーゼ配列に加えて、断片2の逆方向プライマーは、ベクター中に相同的な組換えを可能にする、pET21bベクターの6X Hisの領域に相同的な配列も含む。
増幅反応は以下のように構築した:
断片I PCR設定
10μl 5X Herculase II緩衝液(Stratagene社)
0.4μl 100mM dNTP混合物(それぞれ25mM)
1.2μl JDF‐3 XiF プライマー 125μ1M
1.2μl JPchimR プライマー 125μpM
0.5μl エキソ‐JDF‐3 DNAポリメラーゼ プラスミドクローン(〜50ng/μl)
1.0μl Herculase II 融合DNAポリメラーゼ(Stratagene社)
35.7μl H2O
断片2 PCR設定
10μl 5X Herculase II緩衝液(Stratagene社)
0.4μl 100mM dNTP混合物(それぞれ25mM)
1.2μl JPchimF プライマー 125μlM
1.2μl PfuxiR プライマー 125μlM
0.5μl エキソ‐Pfu DNAポリメラーゼ プラスミドクローン(50ng/μl)
1.0μl Herculase II 融合DNA ポリメラーゼ(Stratagene社)
35.7μl H2O
増幅条件:
1サイクル
95℃ 1分
30サイクル
95℃ 45秒
50℃ 45 秒
1サイクル
72℃ 1分
増幅後、Dpn I制限酵素を、親プラスミドDNA鋳型を分解するために、反応物に加えた。産物は、メーカーの使用説明書に従って、StrataPrep PCRキットで精製した。
スプライス重複設定
5μl 10x cPfu緩衝液
0.4μl 100mM dNTP(それぞれ25mM)
5μl 精製断片I
5μl 精製断片2
1μl Pfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene社)
33.6μl H2O
増幅条件:
1サイクル
95℃ 1分
15サイクル
95℃ 45秒
50℃ 45秒
72℃ 1分、50秒
1μlのスプライス重複反応物は、下記のように、反応中において鋳型として使用した:
5μl 10x cPfu緩衝液
0.4μl 100mM dNTP(それぞれ25mM)
1.2μl JdF3xiF プライマー 125μlM
1.2μl PfuxiR プライマー 125μlM
1μl 重複反応物
1μl Pfu Turbo DNA ポリメラーゼ(Stratagene社)
40.2μl H2O
増幅条件:
1サイクル
95℃ 1分
30サイクル
95℃ 45秒
50℃ 45秒
72℃ 3分
PCR産物はゲル精製した後、Xi‐Clone High Speedクローニングキット(Genlantis社)を使用するように調整されたpET21ベクター内に、メーカーの使用説明書(実施例3のベクター調製に記載)に従ってクローン化した。クローンはXL10‐Gold ultraコンピテントセル(Stratagene社)内に形質転換された後、30℃でおよそ20時間培養した。コロニーは、正しいサイズの挿入断片に対するPCRによって選別した。陽性コロニーは培養された後、DNA精製を行った。プラスミド挿入断片は、分断領域、ならびに5’および3’挿入部位を確認するために、配列解析を行った。
確認したプラスミドは、メーカーの使用説明書(Stratagene社)にしたがって、BL21‐コドン(+)(DE3)‐RIL(またはRILP)コンピテントセルに形質転換した後、他の項に記載のように発現および精製した。
実施例6:変異を含む他の分断ポリメラーゼ
4C11 Pfu分断ポリメラーゼ、およびJDF‐3 Z2ポリメラーゼは、2つの実質的に異なる型の分断を提供する。4C11分断は、アミノ酸が導入されていないか、または分断部位で除去されている「シームレス分断」であり、かつ分断近傍のアミノ酸の配列は、野生型Pfuと比較しても変化していない。JDF‐3 Z2分断ポリメラーゼは、断片Iの末端上に10アミノ酸の挿入を含み、N末端断片にアミノ酸467‐469のトリペプチドの重複を含む。これは、分断部位における挿入に対する許容を明示する。
いくつかの追加のアミノ酸変異が、4C11変異体との関連で、詳細に調べられた。アミノ酸変異は分断部位から遠く、アミノ酸467の後ろである。Q484R変異は、変異がない4C11変異体と比較して、二重標識化ヌクレオチドアナログの利用が増加した。Pfu L409、Y410、P411、R461、K465、Q472、Q484、A486、R488、L490、A491、N492、Y495、およびY497に対応する位置などの、いくつかの他の点変異が、非従来型のヌクレオチドアナログの取り込みを増加させることが知られている。このような変異は、伸長反応における分断ポリメラーゼによる、非従来型のヌクレオチドの取り込みの増加に有用であり得る。3つの追加の変異、A318T、V604L、およびA662Vは、分断ポリメラーゼの安定性に貢献しうる。その後4C11に加えられる、3’‐5’エキソヌクレアーゼ活性を減少させるD141A/E143A、およびC末端断片のC末端への、Sso様DNA結合領域の付加である、他の変異は、当初の4C11変異体で観測された、二重標識化ヌクレオチドアナログの取り込みの増大を混乱させなかった。これは、分断部位から遠くの部位での変異は、さらに変異を含まない分断ポリメラーゼにおいて観測された二重標識化ヌクレオチドアナログの取り込みの増大を変化させないで、予想される活性を有することを明示する。
さらに分断ポリメラーゼは、表Vに示すいくつかのプライマーを用いて、PfuおよびJDF‐3において設計された。いくつかの分断ポリメラーゼが、発現、精製、およびポリメラーゼ活性について試験され、および非従来型のヌクレオチドの取り込みが改善された(表VI)。分断およびアミノ酸の変化の部位は、天然型ポリペプチドにおける部位で示される。例えば、Pfu 分断ポリメラーゼ4C11において見出される同じ分断は、JDF‐3ポリメラーゼにおける同一部位でも作成された(変異体JDF‐3 201およびJDF‐3 202(図4に示す))。
表VI中のすべての変異体は、エキソ(−)、ならびにアミノ酸D141AおよびE143Aでの変異を含む。
従来型ヌクレオチドの取り込みに対する、またはアナログ取り込みに対する、標準のPCRにおける活性に対する試験は、実施例4における方法を用いて行った。従来型ヌクレオチドの取り込みは、産物の予想されるサイズがアガロースゲルの臭化エチジウム染色で検出可能な場合に、「あり」とスコアされる(少なくとも約1ngの核酸)。アナログの取り込みは、産物の予想されるサイズが、比較できるアガロースゲルの臭化エチジウム染色の前に、アナログの検出に対して適切な波長下で検出される場合、「あり」とスコアされる。検出される核酸の量は、反応において使用したアナログの割合、および産生された産物の量に依存する。QPCR法は、アナログの取り込みを検出するために用いることもできる。
天然の分断Mth古細菌ポリメラーゼと大まかに類似している、アミノ酸547における分断は、Pfu DNAポリメラーゼの機能を阻害することが特徴的である。
図8は、いくつかの試験された他の変異体に対する、非従来型のヌクレオチドの取り込みアッセイを示す。それぞれの変異体に対して、酵素は、大腸菌系BL21‐DE3-コドン(+)(RIL)におけるpETベクターから発現後、1L培養物より精製された。精製は以下のステップを含む:85℃、15分での細胞可溶化物の熱処理;核酸を除くための、熱処理可溶化物の0.15% PEI(ポリエチレンイミン)および1M NaClでの処理;遠心分離による清澄;その後、Q-セファロースFFに続くヘパリンセファロースHPカラムクロマトグラフィー。酵素は、Q-セファロースではフロースルー分画において見出され、およびヘパリンセファロースではKCl勾配で溶出される。精製された酵素は、SDS‐PAGEで解析された。変異体JDF‐3 Z2は、主に2つのペプチド断片を含むと予想された。他の非分断変異体は、単一の断片を含んでいた。
PCR活性は、JDF‐3変異体について、962bp λDNA標的を用いて測定された。反応は、5ngのλDNA、0.4μMのそれぞれのプライマー(順方向:5’‐ATCAGAAACGAACGCATCATCAAGT、逆方向:5’‐GCCTCGCATATCAGGAAGCAC)、200μMのそれぞれのdGTP、dATP、TTP、および望ましい量のdCTP、FCD、および/またはRCD(5‐アミノアリル‐(5‐ROX)‐2’‐デオキシシチジン‐5’‐トリホスホ‐N6‐(6-アミノへキシル)‐ダブシル)を含む、25μl反応の1x TaqPCR反応緩衝液において行った。サイクル条件は:93℃、1分;93℃、1分、58℃、50秒、72℃、1分を30サイクル;その後72℃、10分、である。サンプル(それぞれの反応は5μlまたは75ng)は、1%アガロースゲルで泳動した。ゲルは、まず、(A)取り込まれたフルオレセイン(FCD)を可視化するために、臭化エチジウムの非存在下、グリーンフィルターを用いて、または(B)取り込まれたROX(RCD)を可視化するために、臭化エチジウムフィルターを用いて、撮影した。その後、ゲルは臭化エチジウムで染色した後、再度臭化エチジウムフィルターを用いて撮影した(C)。「a」で指定するサンプルは、d反応混合物に25μM FCD+25μM dCTPを含み、および「b」で指定するサンプルは、5μM RCD+45μM dCTPを含む。添加したサンプルは、エキソ(−)JDF‐3(「1」で指定するサンプル)、エキソ(−)JDF‐3、L408H、A490Y(「2」)、エキソ(−)JDF‐3 Z2(「3」)、エキソ(−)Pfu 4C11(「4」)、およびエキソ(−)Pfu、L409H、A491Y(「5」)である。上記のように、エキソ(−)の表記は、追加の変異D141AおよびE143Aがポリメラーゼ内に存在していることを意味する。
FAM(FAM‐dCTP‐ダブシル取り込み)取り込み(パネルA)、およびROX取り込み(パネルB)の両方は、野生型JDF‐3(レーン1)と比較して、JDF‐3 Z2(図8中の、それぞれのゲルのレーン3)、JDF‐3 L408H、およびA490Y(レーン2)、ならびにPfu L409H、およびA491Y、(レーン5)変異体で増加した。
図9は、アミノ断片(パネルA)およびカルボキシル断片(パネルB)の両方を含む、Q484R変異を有する4C11 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。配列は、D141A/E143A変異(エキソ(−))を有する。変化したアミノ酸は、後の配列の若干上方に示す。対応する核酸配列(配列番号:80)は、以下の配列リストに示す。
図10は、Pfu二重変異体を用いたPCR増幅アッセイの結果を示す。これは、エキソ(−)変異および追加のQ484R変異を有する、分断Pfu変異体である(実施例2に記載のエキソ(−)Pfu 4C11 変異体とは違う)。増幅は、γーリン酸においてダブシル標識化された、dCTPアナログと共に行われた。使用したヌクレオチドプールは、200μM dATP、dGTPおよびTTPであった。dCTPの全体プールは50μMであり、およびこのプールにおけるダブシル-dCTPの割合は、図に示すように0〜100%で変化させた。二重変異体は、エキソ(−)cPfu、エキソヌクレアーゼ(−)の非分断ポリメラーゼ(変異D141A及びE143Aを含む)と比較した。図10から見られるように、二重変異体および非分断酵素の活性は、低濃度のdCTPアナログ(最大75μM)において実質的に同じである。しかしながら、高濃度のdCTP アナログ(75及び90μM)において、非分断ポリメラーゼは活性を失うが、二重変異体の立体配置は、特にγーリン酸において修飾されたダブシルdCTPの取り込みを改善する。任意の作用機序に限定せずに、これはおそらく、フィンガーが入ってくるヌクレオチドに対して折り重なる場合、ヌクレオチド結合ポケットが緩んだ結果である。
図11は、ヌクレオチドアナログFCDで標識化したdCTPでの、プラスミド鋳型のPCR増幅の結果を示す。200μMのそれぞれのdATP、dGTPおよびTTP、ならびに50μMの全体dCTP(dCTP+FCD)プールを用いた終了点PCR(1x cPfu緩衝液;Stratagene社中のプラスミド鋳型)が、反応において使用された。dCTPプール中のFCDの割合は、図11中に示すように、0%(100%dCTP:0%FCD)から100%(0%dCTP:100%FCD)まで変化させた。エキソ(−)変異(D141A及びE143A)を有する4C11変異体は、エキソ(−)変異(D141A及びE143A)を有する非分断Pfu酵素と比較した。臭化エチジウム非存在化での、アガロースまたはアクリルアミドゲル上でのPCR産物の電気泳動は、結果として生じるFAM-標識化DNA産物の、紫外線励起およびグリーンフィルター(パネルA)による可視化を可能にする。ゲルはその後臭化エチジウムで染色した後、すべてのDNA分子を反映するために、オレンジフィルターで可視化した(パネルB)。図に示すように、野生型(非分断)エキソ(−)Pfu酵素はFCDアナログを取り込むことができない一方で、分断Pfu Q484R二重変異体は、50‐75%のFCDにおいて、FAM-dCMPの最適な取り込みを示す。この実験は、本発明の分断ポリメラーゼは、使用することができる類のヌクレオチドアナログに限定されないが、異なる型の修飾されたヌクレオチドに対して働くことを示す。
実施例7:それぞれの断片の別々の発現後の、4C11分断ポリメラーゼのリフォールディング
この実施例において、4C11分断ポリメラーゼのN末端およびC末端断片は、実施例3におけるように、別々に発現および精製される。しかしながらこの場合、断片は可溶化、およびリフォールディングもされる(図12)。それぞれは2L培養液において、大腸菌系BL21‐DE3‐コドン(+)RIL中の、pETベクターから発現される。細胞破壊後の不溶沈殿物(すなわち封入体)は、0.15%デオキシコール酸ナトリウム、1% X-100を含む緩衝液、緩衝液のみ(40mM Tris pH7.5 10mM 2‐メルカプトエタノール)の順に洗浄した。N末端およびC末端断片の沈殿物は、4Mまたは5M塩酸グアニジンに、それぞれ溶解した。SDS‐PAGEサンプルは、塩酸グアニジンを含む調製物より、TCA沈殿で調製した。
部分精製した断片は、SDS‐PAGEで可視化された(パネルA及びB)。結果は、N末端断片(パネルA)およびC末端断片(パネルB)の両方が発現したが、発現量は異なることを示す。N末端断片はおよそ50%可溶で、かつ大量に作られた。しかしながら、C末端断片はそれほど作られず、かつそのままで発現した場合は完全に不溶であった。4C11対照に対して染色した強度と比較した、断片のバンド強度に基づき、N末端断片の調製物は、C末端断片よりおよそ5倍以上濃縮されていると見積もられた。C末端断片の調製物はN末端断片よりも純度が低いのは、おそらく発現したC末端断片の、当初から低い収率に起因する。
リフォールディング実験について、それぞれのサンプルの不溶分画を精製した。リフォールディング実験は、2つの可溶化断片をおよそ1:1の量比(すなわち、C末端:N末端の5:1量)で単純に混合することで行った。対照は、それぞれの断片のみを含む反応である。リフォールディングは、塩酸グアニジンおよび2-メルカプトエタノールを含まない、200当量の緩衝液(40mM Tris、pH7.5、1mM EDTA‐100mM KCl、10%グリセロール)に対して、混合物を単純に透析することによって達成される。透析緩衝液は、24時間にわたって、2回交換した。塩酸グアニジン濃度を段階的に減らす(2M、1M、0M)多段階透析も試したが、ワンステップ法の結果とほぼ同一の結果を生じた。透析からサンプルを回収後、不溶物は遠心分離で除去した。サンプル中のタンパク質は、Bradfordアッセイで定量した。
リフォールディングしたサンプルは、SDS‐PAGEで解析した(パネル1C)。添加したサンプルは、可溶化N末端断片(N‐term)、可溶化C末端断片(C‐term)、精製4C11対照(4C11)、N末端およびC末端断片を含む完全リフォールディング反応物(1)、N末端断片のみを含む対照リフォールディング反応物(2)、およびC末端断片のみを含む対照リフォールディング反応物(3)である。Bradfordタンパク質アッセイは、サンプル1では1.0mg/ml、サンプル2では1.1mg/ml、およびサンプル3では≦0.1mg/mlの可溶タンパク質が回収されたことを示す。興味深いことに、N末端断片は、そのままで可溶状態に多くリフォールディングされる。これは、両方の断片を反応させたときよりも、わずかに多く可溶タンパク質が回収されたことを示し、おそらくリフォールディングの間に、大変不溶なC末端断片は、N末端 断片の部位と共沈殿したことを示す。
リフォールディングの成功を明らかにするために、リフォールディングタンパク質はPCRアッセイでも解析された(パネルD)。添加したサンプルは、対照としてPfu UltraII ポリメラーゼ (UltraII)、N末端およびC末端断片を含むリフォールディング反応物(#1)、N末端断片のみを含むリフォールディング反応物(#2)、およびC末端断片のみを含むリフォールディング反応物(#3)である。それぞれのリフォールディング反応物の表示量(および対照としてng量のPfu UltraIIポリメラーゼ)は、1x Pfu UltraII反応緩衝液、100ngのヒトゲノムDNA、100ngのそれぞれのプライマー(順方向:5’‐GAGGAGAGCAGGAAAGGTGGAAC;逆方向:5’GAGGTACAGGGTTGAGGCTAGTG)、および250μMのそれぞれのdGTP、dATP、dCTP、TTPからなる、50μl反応でのPCR(0.9kbヒトα‐1‐アンチトリプシン標的)でアッセイした。サイクル条件:95℃、2分を1サイクル;95℃で30秒、58℃で30秒、72℃で15秒、を30サイクル、その後72℃で10分を1サイクル。10μlのそれぞれのPCR反応物は、1%アガロースゲル上で解析された。すべての反応物は2回泳動した。結果は、PCRアッセイはN末端およびC末端断片の両方が存在している場合にのみ成功することを明確に示す。PCR増幅産物はサンプル#1を含むレーンにのみ見られ、および産物のサイズに関連する産物のサイズは、対照レーンに見られる(UltraII)。
リフォールディングしたサンプルは、完全性を明らかにするため、およびバイシストロニック発現ベクターより精製される酵素と同じように振舞うかどうかを明らかにするために、クロマトグラフィー精製(パネルE)にさらされた。N末端およびC末端断片の両方を用いて、上記のように得られたリフォールディングしたサンプルは、さらにPfuポリメラーゼに対する標準の方法を用いて精製した。これは、Pfuポリメラーゼはカラムに結合しないで通過するQ‐セファロースカラムクロマトグラフィー、続くPfuポリメラーゼが結合するSP、およびその後のKCl勾配での溶出を含む。精製したサンプルは、SDS‐PAGEで解析した。添加したサンプルは、最初にリフォールディングしたサンプル(Q‐セファロースに添加したもの)、Q-セファロースフロースルー、SP‐セファロースフロースルー、およびSP‐セファロース勾配分画(C11、D11、D8、D5、およびD2)である。結果は、リフォールディングしたポリメラーゼは、SP‐セファロースに成功裏に結合し、かつ勾配によって精製型で溶出されたことを示す。分断ポリメラーゼがバイシストロニック発現ベクターから発現される場合、ポリペプチド断片は封入体を形成しないため、したがって、可溶化およびリフォールディングの必要がない。したがって、本発明の方法の好ましい態様は、封入体からの可溶化、および断片の機能的な分断ポリメラーゼへのリフォールディングのステップを回避するための、ポリシストロンの発現系を用いた、本発明の分断ポリメラーゼの産生を含む。ポリシストロンの発現系からの分断ポリメラーゼの発現は、産生の容易さ、コストパフォーマンス、時間の短縮等の利点を有する。
さまざまな改変および変異は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の実施によって作成されることは、当業者にとって明らかである。本発明の他の態様は、明細書および本発明の実施を考慮することで、当業者にとって明らかである。明細書および実施例は、以下の請求項で示す、発明の正しい範囲および精神の、単なる例示であると考慮されることを目的としている。
例えばいくつかの場合において、フィンガー先端領域は、追加のアミノ酸を含み得る。このような場合、分断部位に対する共通配列は、GXXXXBLXXLBXXRX‐BKXXMXXJX(1‐2)DXXOZXBLDXRQZABKBBANXUYGYXXXに近似し、ここで、表記した文字は、X(1‐2)がその領域内で1つのまたは2つのアミノ酸のいずれかであることを除き、本明細書に記載のものと同じ意味を持つ。