図1の概略図から、ロータ(7)により回転駆動可能なベーン型ポンプのベーン(図示せず)を収容するポンプ室(5)を含むハウジング(3)を有するポンプ(1)の第1の実施形態が明らかである。前記ポンプは、車両のブレーキ力倍力装置内で負圧を生成するのに用いられる。このポンプに対して、油ポンプ(9)から配管(11)及びハウジング(3)内に設けた孔部(13)を介して、ポンプ(1)の潤滑に用いられる油の供給を行うことが可能である。以下において、この点についてさらに詳細に論じる。
ロータ(7)は、このロータ及びその回転軸(15)に対して同心に設けた軸受突出部(17)に支承されている。ハウジング(3)内の孔部(13)は、軸受突出部(17)とロータ(7)との接触部に開口しており、これによりロータ(7)への潤滑を確実に行っている。
ロータ(7)は、ポンプ室(5)の反対側であって、軸受突出部(17)から突出した端部に、ロータ(7)の残りの部分と比較して小さな外径を有しかつコイルスプリングクラッチ(23)のコイルスプリング(21)に接触するように構成した円筒形の突出部(19)を備えている。このコイルスプリング(21)の内径は、突出部(19)の外径に略一致しており、これによりコイルスプリング(21)が弛緩した状態では、このコイルスプリング(21)と突出部(19)との間に作用する摩擦力が僅かとなる。
コイルスプリング(21)の長さは、回転軸(15)の方向に測定した場合、突出部(19)の長さを超えて突出し、かつ本発明においてこれ以上詳細を図示していない駆動装置のシャフトジャーナル(25)を収容するよう選択されている。このシャフトジャーナルの外径は、突出部(19)の外径に一致しており、これにより突出部(19)及びシャフトジャーナル(25)それぞれの外面が互いに一直線に並び、両者がコイルスプリング(21)に包み込まれる。
シャフトジャーナル(25)は、ロータ(7)の右側から突出部(19)にかけて設けた凹部(29)に係合する延長部(27)を含んでいる。延長部(27)の外径は凹部(29)の内径に合わせて調節され、その結果、該延長部(27)が摩擦の少ない形で回転可能に凹部(29)の内部で支承されるようになる。延長部(27)は、凹部(29)から軸方向へ抜け出ないよう保持する目的に適した形で構成されている。たとえばここでは、一方では凹部(29)の内面に設けた溝部(33)、さらに一方では延長部(27)の内面に設けた溝部(35)に係合する止め輪(31)を設けている。
駆動装置のシャフトジャーナル(25)は、第1の方向に、特にポンプ(1)の動作方向に回転が与えられると、この場合シャフトジャーナル(25)及び突出部(19)に固定された状態で引っ張られるよう環巻きされているコイルスプリング(21)に対して、摩擦力が作用する。これにより、駆動装置、すなわちシャフトジャーナル(25)のトルクが、突出部(19)さらにはロータ(7)に伝達されることで、たとえばポンプ室(5)内のベーンに回転が与えられ、負圧が形成される。
コイルスプリングクラッチ(23)は以下のように設計される。コイルスプリング(21)が、シャフトジャーナル(25)の反対方向への回転に際して、シャフトジャーナル(25)の外面とコイルスプリング(21)の内面との摩擦力によって、伸長及び弛緩し、これによってコイルスプリング(21)の内径が少なくともシャフトジャーナル(25)の部分において拡大し、その結果、シャフトジャーナル(25)によりトルクがこれ以上コイルスプリング(21)及びロータ(7)の突出部(19)に伝達されることが不可能になる。
ポンプ(1)は、駆動装置が作動している状態、すなわち、コイルスプリング(21)が固定された状態で引っ張られている駆動方向にシャフトジャーナル(25)が回転している状態で、このポンプ(1)のクラッチを切るのに用いられるクラッチ装置(37)を備えている。ポンプ(1)を車両に用いる場合には、通常、エンジン、特に内燃機関により、シャフトジャーナル(25)に対して、とりわけコイルスプリング(21)が収縮しかつシャフトジャーナル(25)の外面に固定された状態で引っ張られる方向への回転を与えられるようにこのポンプ(1)は駆動される。また同時に、これに伴ってコイルスプリング(21)は、突出部(19)の外面に接しており、これによりこの突出部(19)には、駆動装置から、コイルスプリング(21)を介して回転が与えられる。シャフトジャーナル(25)の回転にも拘わらずトルクがロータ(7)に全く伝達されることのないようにコイルスプリングクラッチ(23)を作動させるために、クラッチ装置(37)は、ここでは回転軸(15)と同軸に設けかつロータ(7)及びコイルスプリング(21)、さらにはシャフトジャーナル(25)と重なるクラッチスリーブ(39)として形成したクラッチ部材を備えている。このクラッチスリーブ(39)の長さは、ここではシャフトジャーナル(25)のみが示されており、本発明では図示していない駆動装置の一部とかろうじて重なるように選択される。
他方、クラッチスリーブ(39)はその左端部(41)がハウジング(3)の軸受突出部(17)の内部へと突出し、さらにそこで外側の回転軸(15)から離間する方向に向いた環状ビード(43)により、クラッチスリーブ(39)の長さは軸受突出部(17)の内面(45)に密着するよう選択される。軸受突出部(17)の前面(47)は、内縁部(51)によりクラッチスリーブ(39)の周面(53)に密着しているシールプレート(49)により密閉されている。シールプレート(49)とクラッチスリーブ(39)の環状ビード(43)との間であって、さらに軸受突出部(17)の内部には、ハウジング(3)内、ここでは軸受突出部(17)内に設けた孔部(57)を介して、配管(59)に連通した状態で漏れがないように密閉したチャンバ(55)を設けている。シールプレート(49)は金属から構成されることも可能である。クラッチスリーブ(39)の左端部(41)には、ここではコイルスプリング(61)として形成された弾性部材が提供され、該弾性部材は一方ではロータ(7)でまた他方ではクラッチスリーブ(39)の左端部(41)で支持されかつクラッチスリーブ(39)に対して右側に向けた予荷重を加える。このクラッチスリーブ(39)は、ロータ(7)が駆動しているときには、このロータ(7)と共に回転する。この点は、コイルスプリング(61)にも該当する。
クラッチスリーブ(39)は、軸方向すなわち回転軸(15)の方向に見ると、ロータ(7)上をコイルスプリング(21)に向かって移動可能なように構成している。以下においてさらに詳細に説明するように、チャンバ(55)内に、配管(59)及び孔部(57)を介して作動流体、好ましくは油を圧力下で導入すると、チャンバ(55)のクラッチスリーブ(39)が一定の加圧以上ではコイルスプリング(61)の力に抗して左側の第1動作位置に向かって移動する。図1において、クラッチスリーブ(39)が少なくとも一定の範囲を超えてコイルスプリング(61)の力に抗して左側へ移動するクラッチスリーブ(39)の動作位置が再現されている。このクラッチスリーブ(39)がさらに左側へ移動すると、このクラッチスリーブ(39)は最終的には第1動作位置に到達する。この第1動作位置において、コイルスプリング(21)は、シャフトジャーナル(25)の外面に少なくともこれ以上は押し付けられることがないよう伸長する。この点は、以下においてさらに詳細に論じることにする。
チャンバ(55)が無圧状態であるか、またはコイルスプリング(61)の予荷重よりも小さな左側に向かう力をクラッチスリーブ(39)に掛ける程度の圧力が負荷されている場合には、クラッチスリーブ(39)は、最終的に環状ビード(43)がシールプレート(49)の内側に当接するまでコイルスプリング(61)により右側へと移動する。それ故、このシールプレート(49)は、クラッチスリーブ(39)の右側への移動の通路を制限する要素としての機能を果たす。このクラッチスリーブ(39)がシールプレート(49)に当接していない場合には、第2動作位置を取る。すなわちクラッチスリーブ(39)はコイルスプリング(21)には影響を与えない。クラッチスリーブ(39)の右側への移動の際にチャンバ(55)内に存在している油は、孔部(57)及び配管(59)を介してチャンバ外へ押し出され、たとえばタンク内に収容される。
図1はさらに、クラッチスリーブ(39)がクラッチ面(63)を含むということを示し、該クラッチ面(63)はコイルスプリング(21)の第1端部(65)と共に作用し、該第1端部はコイルスプリング(21)の他の周面上を径方向の外側に、すなわち回転軸(15)から離間する方向に向けられる。クラッチ面(63)は、クラッチスリーブ(39)の壁部(69)に設けた第1凹部(67)の一部である。
コイルスプリング(21)は、クラッチスリーブ(39)の壁部(69)の第2凹部(73)内に設けた第2端部(71)を含み、該第2端部(71)は回転軸(15)に対して前記コイルスプリングの周面上の径方向の外側に向かって突出している。
回転軸(15)の方向に測定した場合、クラッチスリーブ(39)が第2動作位置に到達した状態では、凹部(67)及び(73)の一方または双方の左端部(41)側を向いた境界部の壁面が前記凹部内に突出したコイルスプリング(21)の端部に当接するように凹部(67)及び(73)の長さを選択することが可能である。それ故、クラッチスリーブ(39)に対する当接は、このようにしても実現可能である。
図2は、クラッチ装置(37)のクラッチスリーブ(39)を大幅に拡大した斜視図である。この図示においては、クラッチスリーブ(39)の左端部(41)が前面に配されている。ここで明らかに見てとることができるものは、環状ビード(43)とこれに当接した前記クラッチスリーブの周面(53)であり、この周面(53)は、外側から壁部(69)の中に向かって設けた溝部(75)の底部を形成している。左端部(41)と一定の距離を置いて、壁部(69)の中に、クラッチ面(63)を含む第1凹部(67)が設けられている。この凹部の中に、この図2では図示していないコイルスプリング(21)の第1端部(65)が係合する。
壁部(69)内の適当な位置、ここでは第1凹部(67)に対する直径上の略反対側の位置に、図1に示した回転軸(15)と一致するクラッチスリーブ(39)の中心軸と平行に延びるスリットとして形成した第2凹部(73)を設けている。このスリットの中にここでは図示していないコイルスプリング(21)の第2端部(71)が係合する。
クラッチスリーブ(39)の壁部(69)に設けた凹部(67)及び(73)に関する上記の説明から、次のことが明らかとなる。すなわち、クラッチスリーブ(39)がロータ(7)、さらにこれに伴って回転軸(15)と同軸に移動する場合、コイルスプリング(21)の第2端部(71)が、クラッチスリーブ(39)の周方向に移動することなく、第2凹部(73)の表面に沿ってスライドすることが可能となる。
クラッチスリーブ(39)が図1による図示例に従い、加圧下でチャンバ(55)内を左側に移動する場合、回転軸(15)に対して一定の角度に傾斜したクラッチ面(63)が、スプライン歯車と略同様に、コイルスプリング(21)の第1端部(65)に作用する。クラッチ面(63)が、図1の左側に移動する際に、コイルスプリング(21)の第1端部(65)が図2の観察方向から見て右側、すなわち時計回りに捩じれるように、このコイルスプリング(21)の第1端部(65)に作用していることが明らかとなる。コイルスプリング(21)の第1端部(65)のクラッチスリーブ(39)における上記移動の際に、該コイルスプリングの内径が少なくとも駆動装置のシャフトジャーナル(25)の部分まで拡大されるよう回転が行える程度にクラッチ面(63)を傾けることで、この駆動装置がコイルスプリング(21)、さらにはロータ(7)に対して、これ以上トルクを伝達することが不可能となる。
コイルスプリング(21)が反対方向に巻いてある場合には、クラッチ面(63)は、図2に示したものに線対称となるように傾斜している必要がある。
クラッチスリーブ(39)の周方向に見て、第2凹部(73)が専ら第2端部(67)を保持する役割を果たしていることが明らかとなる。原則として、この第2凹部を使用せずに第2端部(71)を他の方法で保持することも可能である。
第2凹部(73)に相当する部分にも、コイルスプリング(21)の第2端部(71)がクラッチスリーブ(39)の移動に伴って該クラッチスリーブの周方向左側に、コイルスプリング(21)が少なくともロータ(7)の部分まで伸長して移動するよう傾斜したクラッチ面を設けることが考えられる。
全体としては、第1凹部が回転軸(15)に略平行に延びるものとする一方で、ここに記載した種類のクラッチ面が第2凹部の部分のみに設けられることも可能であることが明らかとなる。これらの凹部を目的に適した形で形成することで、コイルスプリング(21)の内径がクラッチスリーブ(39)の作動の際に少なくともシャフトジャーナル(25)の部分まで拡大され、これにより駆動装置とポンプ(1)との結合が解除されることが確実となる。コイルスプリング(21)のロータ(7)及びシャフトジャーナル(25)との当接面内で異なった大きさの予負荷を与えた部分が存在することで、図1に記載のクラッチスリーブ(39)が作動し、左側へ移動させた場合に、コイルスプリング(21)の取り外しのための所定の部分を設けることが可能となる。
コイルスプリング(61)により、クラッチスリーブ(39)が、チャンバ(55)内に無圧または僅かな圧力しかかけられない限りにおいては、動作位置、特に、駆動装置がシャフトジャーナル(25)を介してロータ(7)の突出部(19)に結合されかつポンプ(1)が駆動される第2動作位置へと押しやられる状況が確保される。
クラッチ装置(37)は好ましくは、ポンプ(1)により生成された圧力、ここでは車両のブレーキ力倍力装置内の負圧によって制御される。この負圧は、ポンプ(1)の作業側、すなわち負圧側と連通した測定管(77)により測定される。この負圧は、クラッチ装置(37)の一部をなす、4/2方弁を含んだバルブ装置(79)に作用する。この4/2方弁は、測定管(77)により測定された圧力に依存して様々なクラッチ位置を取る。
十分な負圧が確認されると、4/2方弁の制御ピストンが図1に示した位置に移動する。これにより油ポンプ(9)が配管(59)、孔部(57)及びチャンバ(55)と連通し、好ましくは油圧作動油としての作動流体がチャンバ(55)内に供給される。かかる加圧の結果として、クラッチスリーブ(39)が、図1を用いて説明される第1動作位置に移動し、この第1動作位置においてクラッチ面(63)がコイルスプリング(21)の第1端部(65)と係合し、この第1端部(65)は、コイルスプリング(21)の内径がシャフトジャーナル(25)の部分まで拡大するように移動する。図1による図示例から、コイルスプリング(21)の第1端部(65)は、第1凹部(67)の左端部(41)に対向する側の端部にはまだ到達していないことが明らかである。クラッチスリーブ(39)は、駆動装置とロータ(7)の接続の確実な解除を保証するべく、図1に比較してさらに左側に移動することが可能である。
図1から、4/2方弁の上記の動作位置において、ハウジング(3)に設けた孔部(13)が無圧状態であり、好ましくはタンク(80)と連通していることは明らかである。それ故、油ポンプ(9)を介して行われるポンプ(1)への油の供給は遮断される。ポンプ(1)によって得られる圧力が所望の値を下回った場合に、この状態が測定管(77)を介して確認され、かつバルブ装置(79)を介して制御される。4/2方弁の制御ピストンは図1に示した位置と比較して左側に移動する。これにより油ポンプ(9)はポンプ(1)への油供給が確保されるよう孔部(13)に連通する。同時に、チャンバ(55)が、孔部(57)及び配管(59)を介してタンク(80)と連通する。これによりチャンバ(55)内部の圧力の低下が発生する。ここで、環状ビード(43)がシールプレート(49)の内側に当接し、かつクラッチスリーブ(39)が第2動作位置を取るところまで、コイルスプリング(61)はクラッチスリーブ(39)を右側へ移動させることが可能となる。この第2動作位置においては、クラッチ面(63)はもはや、コイルスプリング(21)の第1端部(65)に作用することがなく、この結果、このコイルスプリング(21)の内面とシャフトジャーナル(25)の外面との間に作用する摩擦力によって、このコイルスプリング(21)をシャフトジャーナル(25)とロータ(7)の突出部(19)の両方に固定することが可能となる。ポンプ(1)は再び、駆動装置に接続される。
全体として、コイルスプリングクラッチ(23)のその他の部分は簡単な方法で切換可能であることが明らかである。ポンプ(1)の駆動装置は、コイルスプリング(21)に対して、コイルスプリング(21)を弛緩した位置にしてシャフトジャーナル(25)のトルクがロータ(7)の突出部(19)にもはや伝達されなくなる形で作用が生じるように圧力に依存して接続の解除を可能とする。
切換可能な結合の構成は、簡単でさらに安価に実施可能である。
図3は、コイルスプリングクラッチを有するポンプの別の実施形態を、長手方向での断面で示している。同一の部材は同一の符号で示してあり、この限りにおいては、上述の図面に参照を促すものである。
図3に記載のポンプ(1)の実施形態においては、ハウジングを省略している。このポンプ(1)は、図3においては右側に設けかつここでは図示していない駆動装置により回転が与えられるロータ(7)を有している。駆動装置のトルクは、少なくとも1つの軸受(83)に支持されるクラッチベル(81)に導入される。前記ロータの右端部(85)は、たとえばここでは図示していないポンプ室に配置され、作動流体を供給するベーンを収容することが可能である一方、ロータ(7)の左端部(87)は、この端部がクラッチベル(81)の内部に係合するように設計されている。ロータ(7)は中空状に形成され、これによりこのロータ(7)はコイルスプリングクラッチ(23)を少なくとも部分的には収容することが可能となる。このコイルスプリングクラッチ(23)は、その左側部分をクラッチベル(81)の内部に設け、その右側部分をロータ(7)の内部に格納したコイルスプリング(21)を有している。クラッチベル(81)は収容部(89)を含んでおり、該収容部においてコイルスプリング(21)の左側部分が配置されるとともに、その内径はコイルスプリング(21)が無負荷状態ではその内面に接触することのない程度の大きさとして選択される。一方、以下においてさらに詳細に述べるように、コイルスプリング(21)が伸長した場合、コイルスプリング(21)はその周面によって収容部(89)の内面に接触し、この結果、収容部(89)の内面がクラッチ面として機能する。
コイルスプリングクラッチ(23)は、図1及び図2に基づいて説明したクラッチスリーブ(39)と同様に、その周面に複数の凹部を含む位置決め体(91)を有するクラッチ装置(37)を含んでいる。ここでは、ロータ(7)の回転軸(15)及びクラッチベル(81)の方向に延びており、コイルスプリング(21)の第1端部(65)が係合する第1凹部(67)が認められる。
クラッチ体(91)は、その周面に、図4に基づいて論じるコイルスプリング(21)の第2端部が係合する第2凹部を備えている。
クラッチ体(91)は、ここでは2つの部品から構成されており、ネジ(93)を用いて連結されるクラッチ体(91)の2つの部品(91a)及び(91b)は、互いに反対の方向に回転することが可能である。クラッチ体(91)の第1の部品(91a)はコイルスプリング(21)の第1端部(65)と作用し、また第2の部品(91b)はコイルスプリング(21)の第2端部と共に作用するため、これら2つの部品(91a)及び(91b)の相対的な回転により、コイルスプリングクラッチ(23)の組立の際に、所定のバネの予負荷を調節することが可能である。2つの部品(91a)及び(91b)は、所望の相対的な回転位置に、ネジ(93)を用いて固定される。
中空状に形成したロータ(7)の内部空間(95)は、ポンプ室(5)の側において、閉鎖部材(97)により密閉されている。クラッチ体(91)もまた中空状に形成されている。その内部の中空空間(99)の内部には、好ましくは予負荷を与えられた弾性部材、ここでは、一方が閉鎖部材(97)に、また他方がクラッチ体(91)の内壁(103)に支持されるコイルスプリング(101)が設けられている。このクラッチ体(91)が2つの部品から構成されている場合には、内壁(103)はクラッチ体(91)の第1の部品(91a)の一部となる。
クラッチ体(91)は、内部空間(95)内を、回転軸(15)の方向に往復運動することが可能である。このクラッチ体(91)は、図3による図示例においては、第1動作位置、すなわち、クラッチ体(91)がここから最大限右によった位置に移動して、クラッチ体(91)が閉鎖部材(97)に当接する第1動作位置に位置している。閉鎖部材の代わりに、クラッチ体(91)の別のストッパを設けることも可能である。コイルスプリング(21)は、軸方向、すなわち中心軸(15)の方向に見た場合の軸方向に固定されており、これによりその第1端部(65)がクラッチ体(91)の移動の際に、第1凹部(67)の内部に案内される。第1凹部(67)が回転軸(15)と平行に延びているため、第1端部(65)は、クラッチ体(91)の移動の際に、周方向に作用する力を受けることは全くないことから、この第1端部(65)を介してバネ予負荷が変化することは全くない。
クラッチ体(91)はその右端部にクラッチフランジ(105)を備えており、該クラッチフランジ(105)はその周面においてロータ(7)の内部空間(95)の内面に密着する。クラッチ体(91)のクラッチフランジ(105)に隣接する左側の部分は、より小さい外径を有しかつロータ(7)の内部空間(95)の一部に密着している。これにより、圧力を加えた作動流体、好ましくは油圧作動油を充填可能なチャンバ(55)が形成される。こうして、図3においては左側からクラッチフランジ(105)に対して力が作用することで、コイルスプリング(101)の力を上回る程度の大きさのものとして圧力が選択された場合に、この圧力下で、クラッチ体(91)が、コイルスプリング(101)の力に抗して図3の右側に示した位置まで移動可能となる。チャンバ(105)内部の圧力がコイルスプリング(101)の力によって定まる数値まで低下した場合には、クラッチ体(91)は、コイルスプリング(101)によって図3に示した位置から左側に押し戻される。この際、コイルスプリング(21)の第1端部(65)は、第1凹部(67)の内部に留まる。このコイルスプリング(21)も同様に回転軸(15)の方向に延びていることから、コイルスプリング(21)はこの際予負荷の変化を受けることがない。
クラッチベル(81)は、クラッチ体(91)がコイルスプリング(101)の力によって図3に示した位置から左側に移動する際に、クラッチ体(91)の左端部、すなわちここではその第2の部品(91b)の少なくとも一部が空隙(107)によって収容されるように、その内径が選択されている空隙(107)を備えている。
クラッチ体(91)の外径は、このクラッチ体(91)がコイルスプリング(21)の内部を回転軸(15)の方向に自由に移動可能となるよう選択される。それ故、コイルスプリング(21)の左側部分は、クラッチ体(91)の左側部品(91b)及びクラッチベル(81)の収容部(89)の内面の間に位置する。
ロータ(7)がクラッチ体(91)及びコイルスプリングクラッチ(23)のコイルスプリング(21)と共に回転可能にクラッチベル(81)の内部に支承されるよう、クラッチベル(81)の内部空間とロータ(7)の外径は互いに合わせて調整される。ロータ(7)の左端部(87)は、クラッチベル(81)の内面に設けたもう一つの軸受(109)に支持されている。クラッチベル(81)とロータ(7)の相対的な回転は、コイルスプリングクラッチ(23)のコイルスプリング(21)により影響を受ける。すなわち、クラッチ体(91)の周面に設けたコイルスプリング(21)がクラッチ体(91)の動作によって伸長すると、このコイルスプリング(21)の周面がクラッチベル(81)の収容部(89)の内面と係合状態となり、これによってクラッチベル(81)のトルクがロータ(7)に伝達される。この際コイルスプリング(21)は、収容部(89)に導入された力を、その第1端部(65)を介して、ロータ(7)と共に回転するように連結されたクラッチ体(91)に伝達する。コイルスプリング(21)が収容部(89)との間で摩擦接触の状態にあるため、ピーク値に達したトルクは、この場合クラッチベル(81)がコイルスプリング(21)に対して回転することになるという理由で、ロータ(7)には伝達されない。これにより、ポンプ(1)のダメージが回避される。この観点は、ここで説明される全ての実施形態に該当する。
コイルスプリング(21)が伸長している状態では、このコイルスプリング(21)はクラッチ体(91)の内面に接することになることから、これによりこれ以上、収容部(89)からコイルスプリング(21)に対して摩擦力が伝達されることはない。
図4は、図3に基づいて説明したクラッチ体(91)の斜視図を示している。同一の部材には、同一の符号が付与されている。
すなわち、クラッチ体(91)は2つの部品から構成されており、第1の部品(91a)及び第2の部品(91b)を含んでいる。第1の部品は、その周面に、ロータ(7)の回転軸(15)と一致するクラッチ体(91)の長手方向の軸の方向に延びる第1凹部(67)を設けている第1の部品(91a)の他の部分と比べて、その外径が大きいクラッチフランジ(105)を備えている。
第2の部品(91b)の周面には、回転軸(15)に対して一定の角度で延びかつここでは図示していないコイルスプリング(21)の第2端部を収容する機能を果たす、第2凹部(73)が設けられている。
クラッチ体(91)は、図3に基づいて説明したように、少なくとも部分的にはここでは図示していないコイルスプリング(21)の内部に位置している。
コイルスプリング(21)が軸方向に固定されている一方で、クラッチ体(91)が回転軸(15)の方向に移動すると、第1端部(65)の第1凹部(67)における第2の部品(91b)に対するコイルスプリング(21)の相対的な移動が発生する。この際、クラッチ体(91)の周方向に見ると、この端部の移動は全く発生していないことが明らかとなる。これに反して、第2凹部(73)内に位置するコイルスプリング(21)の第2端部は、クラッチ体(91)の移動の際に、周方向に移動する。これにより、クラッチ体(91)の運動方向に依存して、コイルスプリング(21)の伸長の度合いが大きくなるか小さくなるかすることで、このコイルスプリング(21)の外径がこれに対応して変化、すなわち拡大または縮小する。
このような動作方法は、図1及び図2に基づいて、クラッチスリーブ(39)との関連で既に説明されたので、ここではこの点についてこれ以上詳細に立ち入る必要はない。また、第2凹部(73)を回転軸(15)に対して平行に設ける一方で、第1凹部(67)が回転軸(15)に対して一定の角度で延びることを可能としていることも明らかとなる。さらに、クラッチ体(91)の固定されたコイルスプリング(21)に対する軸方向の移動の際に、このコイルスプリング(21)に対する予負荷が大きくなるかまたは小さくなるかする限りにおいて、凹部(67)及び(73)の双方を回転軸(15)に対して平行に設けることも可能である。
図4からさらに、クラッチ体(91)の第1の部品(91a)及び第2の部品(91b)は、第1の部品(91a)及び第2の部品(91b)の双方を軸方向に貫通するネジ(93)によって連結されていることが導き出される。
凹部(67)及び(73)にそれぞれ係合するコイルスプリング(21)の端部は、該バネ端部と該凹部との間の摩擦力を低減するために、スライド体を備えたものとすることが可能である。これにより、容易に行われる動作が確保され、磨耗が最小限に抑えられる。
図3及び図4から、次に示す点が明らかとなる。
ここではクラッチ体(91)は、油圧ピストンとして形成されている。チャンバ(55)に、たとえばロータ軸受から供給された油圧作動油が充填されると、クラッチ体(91)は、コイルスプリング(101)の力に抗して、図3では右側にスライドする。この位置決め体の周面に設けた凹部(67)及び(73)は、クラッチ体(91)の上記の移動の際にコイルスプリング(21)が伸長することで、このコイルスプリング(21)の外径が縮小するよう形成されかつ方向が決定される。これによりコイルスプリング(21)はクラッチ体(91)の周面に接し、かつクラッチ面として作用する収容部(89)の内面から離間する。これにより、クラッチベル(81)からトルクがこれ以上コイルスプリングに伝達されることはなくなる。クラッチベル(81)はここで、ロータ(7)に対して自由に回転可能となる。これにより、ポンプ(1)のクラッチが切られる。
図5は、ポンプ(1)の変更を加えた実施形態を長手方向の断面で示したものであり、この図示例においては、ポンプハウジングを示していない。同一の部材は同一の符号を付与してある。この限りにおいては、各図に関する上述の明細書の記載に参照を促すものである。
図から見てとれるのは、クラッチベル(81)ならびにこのクラッチベル(81)に一部が係合しているロータ(7)であって、このロータ(7)の右端部(85)は、この中にベーンを収容して、ベーンポンプを実施するよう形成されている。対向する位置にある左端部(87)は、クラッチベル(81)の内部に位置している。このクラッチベル(81)は、この実施形態でも、コイルスプリングクラッチ(23)のコイルスプリング(21)を収容している。本実施形態のポンプ(1)も、必要な場合にはこのポンプのクラッチを切ることを可能とする役割を果たすクラッチ装置(37)を備えている。クラッチ装置(37)は、この実施形態においても2つの部品から構成され、スリーブ状の第1の部品(91a)及びスリーブ状の第2の部品(91b)を含んだクラッチ体(91)を備えている。2つの部品(91a)及び(91b)は、互いに反対方向に回転可能である。これら2つの部品(91a)及び(91b)は、軸方向に、すなわち回転軸(15)の方向に見ると、固定されている。
2つの部品(91a)及び(91b)は、ここでは2つの構成要素(91’c)及び(91’’c)を含むクラッチピストン(91c)の周面に設けられている。この構成要素(91’c)及び(91’’c)は、回転軸(15)と同軸の方向に向けたネジ(93)により互いに連結されている。
クラッチピストン(91c)は、少なくともその一部が中空状に形成されており、ここではコイルスプリング(101)として形成した弾性部材を収容している。ここに示した実施形態においては、構成要素(91’c)のみが中空状に形成されている。コイルスプリング(101)は、一方がロータ(7)の内部空間(95)をポンプ室に対して密閉する閉鎖部材(97)に支持され、他方が構成要素(91’c)に支持されている。コイルスプリング(101)により、構成要素(91’c)は、左側の図5に示した位置に押しやられる。構成要素(91’c)のクラッチフランジ(105)の左側で圧力が形成されると、クラッチピストン(91c)がコイルスプリング(101)の力に抗して右側へと押しやられ、回転軸(15)の方向に移動する。
図5から、クラッチ体(91)のスリーブ状の部品(91a)は、回転軸(15)の方向に延びる凹部(67)を含んでいることが明らかである。この凹部(67)に、コイルスプリング(21)の第1端部(65)が係合する。
図6は、図5に示したポンプ(1)のクラッチ体(91)を斜視図で示したものである。同一の部材には同一の符号を付与してあるので、この限りにおいては、図5その他の図に関する上述の明細書の記載に参照を促すものである。
クラッチ体(91)は、2つのスリーブ状の部品(91a)及び(91b)を含んでいる。明らかに見てとれるのは、クラッチ体(91)の中央の軸とさらに回転軸(15)の方向に延びる凹部(67)である。クラッチ体(91)の第2の部品(91b)は、回転軸(15)に対して一定の角度で延びる凹部(73)を備えている。この凹部(73)に対して、クラッチピストン(91’)から突出し径方向に外側に向いたクラッチピン(111)が係合する。クラッチピストン(91’)が軸方向に固定された部品(91a)及び(91b)に対して回転軸(15)の方向に移動すると、クラッチピン(111)により、回転が発生しないようにロータ(7)内で保持されたクラッチ体(91)の一方のスリーブ状の部品(91a)に対して他方のスリーブ状の部品(91b)の相対的な回転が発生する。ここに図示していないコイルスプリングクラッチ(23)のコイルスプリング(21)は、その一方の端部によって、第1の部品(91a)の第1凹部(67)に係合する。このコイルスプリング(21)の第2端部は、スリーブ状の第2の部品(91b)の開口部(113)に係合し、部品(91b)が回転する際には、第1端部に対しても、周方向に延びる凹部(67)内を移動する。
それ故、クラッチフランジ(105)を見る者の側面(115)に圧力が形成される場合には、クラッチピストン(91’)が回転軸(15)に沿って図6では右側上方に移動する。これにより、クラッチピン(111)が回転軸(15)の方向に移動する。クラッチピストン(91’)は共に回転するようにロータ(7)に支承されているため、クラッチピストン(91‘)の軸方向の移動の結果としてクラッチピン(111)によりもたらされるクラッチ体(91)のスリーブ状の第2の部品(91b)の回転運動が発生する。これにより、開口部(113)に固定されたコイルスプリング(21)の端部の、第1凹部(67)に固定されたコイルスプリング(21)の他方の端部に対する相対的な運動が発生する。クラッチピストン(91’)が右側へ移動すると、コイルスプリング(21)が伸長することで、コイルスプリングクラッチ(23)の結合が解除される。これは、コイルスプリング(21)が部品(91a)及び(91b)の周面に接していることから生じる。特に、コイルスプリング(21)がその周面でクラッチベル(81)の内面にはもはや接触せず、このクラッチベル(81)が収容部(89)によりコイルスプリング(21)に覆いかぶさり、これによりこの収容部(89)は結合部としての役割を果たすことが可能となるようにコイルスプリング(21)が収縮することは明らかである。
コイルスプリング(21)が収容部(89)に接触していない場合は、駆動装置によって回転が与えられるクラッチベル(81)からロータ(7)に対して摩擦力が全く伝達されないことから、ポンプ(1)のクラッチは切られる。この限りにおいては、各図、特に図3に関する上記の明細書の記載に参照を促すものである。
図7は、ポンプ(1)の別の実施形態を長手方向の断面で示したものであるが、図1に示したハウジングは記載されていない。同一の部材には同一の符号を付与してあるので、この限りにおいては、図5その他の図に関する上記の明細書の記載に参照を促すものである。
ポンプ1は、その右端部(85)がベーンの収容に用いられかつその左端部にはスリーブ状の連結部材を設置、好ましくは焼き嵌めしたロータ(7)を有している。すなわち、この連結部材に、クラッチ(117)を介して駆動装置からトルクを負荷されたクラッチベル(81)が係合している。それ故、このクラッチベル(81)は、ここに図示した実施形態においては、少なくとも一部がロータ(7)の内部に格納されていることで、特にコンパクトな構成形状が生み出される。
ロータ(7)そのものは、本実施形態において示したように、2つの部品から形成されて連結部材(115)を有することも可能だが、ロータ(7)と連結部材(115)とを1つの部材を形成する構成要素として、すなわち一体として形成することも考えられる。
ロータ(7)の内部には、コイルスプリング(21)を有するコイルスプリングクラッチ(23)、さらにはクラッチ体(91)を有するクラッチ装置(37)が位置している。クラッチ体(91)は、互いに相対的な回転を行うことを可能とした、2つの爪状体として示してある部品(91a)及び(91b)を含んでいる。クラッチ装置(37)はさらに、ポンプ(1)、さらにはロータ(7)の中心軸(15)の方向に移動可能なクラッチピストン(91c)を有している。クラッチピストン(91c)は、ロータ(7)内の内部空間(95)の内面に密着したクラッチフランジ(105)を有している。図7に示した動作位置において、クラッチピストン(91c)がロータ(7)の内壁(119)の右側に接近して、この内壁(119)がポンプ室の内部空間(95)から分離する。
クラッチ装置(37)はさらに、ロータ(7)及び第1の部品(91a)と共に回転するように連結する保持リング(121)を有している。この保持リング(121)は、図7に示した位置から左側に移動したときには、クラッチピストン(91c)のストッパとしての作用もなす。
たとえば圧力管路(123)を介して圧力を加えた作動流体が内壁(119)とクラッチピストン(91c)の右前面(125)の間の部分に供給されると、クラッチピストン(91c)が図7に示した位置から左側に移動する。この移動がコイルスプリング(21)によりもたらされる反発力に抗して行われることで、ここで上記各実施形態のコイルスプリング(101)によって実現される、別のバネを設ける必要がなくなる。
図8は、ポンプ(1)の図7に示した実施形態のクラッチピストン(91c)を斜視図で示したものである。同一の部材には同一の符号を付与してあるので、上記の明細書の記載に参照を促すものである。
図8から、2つの爪状体として示してある部品(91a)及び(91b)が見てとれる。右側の部品(91a)は、ここでは部品(91a)の本体に係合するために少なくとも一つ設けたものである、たとえば回転軸(15)と平行に延びる爪部(127)を介して、保持リング(121)と共に回転するように保持されている。これにより、軸方向の固定は行われない。
ここでもまた、クラッチフランジ(105)を有するクラッチピストン(91c)が見てとれる。保持リング(121)及び/または第1の部品(91a)は、ここでは図示していないコイルスプリング(21)の第1端部が係合する第1凹部(67)を有している。第2の部品(91b)は、制御ピストン(91c)に対して回転が可能である。この制御ピストン(91c)は、コイルスプリング(21)の第2端部が係合する第2凹部(73)を備えた第2の部品(91b)に対して軸方向にスライド可能である。この制御ピストン(91c)を介して、右側の第1の部品(91a)の、図7に示した軸方向の右側に向かって離間することができない第2の部品(91b)に対する移動が発生すると、これに起因して回転軸(15)に対して一定の角度で広がる接触面(91’a)、(91’b)を介して、部品(91b)の回転方向を固定されている部品(91a)に対する相対的な回転、さらにはコイルスプリング(21)の両端部の相対的な回転運動が発生する。
それ故、制御ピストン(91c)が図8に示した位置から左側へ移動すると、第1の部品(91a)も、クラッチベル(81)に軸方向に固定された第2の部品(91b)に対して、回転軸(15)に沿って左側に移動する。この際、第1の部品(91a)のロータ(7)内部での回転は、爪部(127)によって妨げられる。この結果、接触面(91’a)は、ロータ(7)内部において第2の部品(91b)を回転させ、この際、第2凹部(73)の動きにコイルスプリング(21)の一方の端部が伴う反面、コイルスプリング(21)の第2端部は、保持リング(121)または第1の部品(91a)と共に回転するように保持される。コイルスプリング(21)は、第1の部品(91a)が図8の左側に移動した場合に、部品(91a)と部品(91b)との相対的な回転によって伸長することで、その周面が図7に示したクラッチベル(81)に設けた収容部(89)に対して摩擦結合の状態ではなくなる。これによりコイルスプリングクラッチ(23)が結合を解除される。すなわちクラッチベル(81)にもたらされたトルクは、コイルスプリング(21)を介してロータ(7)へとこれ以上導入できなくなる。そして、ポンプ1のクラッチは切られる。
コイルスプリングクラッチ(23)のクラッチを切るために、内壁(119)とクラッチピストン(91c)との間の圧力を、最終的にコイルスプリング(21)がクラッチピストン(91c)、さらには第1の部品(91a)を左側へ移動させるまで漸減させる。これにより、コイルスプリング(21)の凹部(73)に位置する端部が、凹部(67)に位置する端部に対して捩じれることで、コイルスプリング(21)が伸長し、このコイルスプリング(21)の収容部(89)内に位置する外径部分がクラッチベル(81)の内面と係合する。これによりコイルスプリングクラッチ(23)のクラッチが切られる。
図7から、右前面(125)に圧力を加えた作動流体を充填することが可能であり、それ故比較的面積の広い表面を、クラッチピストン(91c)に対して力を加えるために活用することが可能であることは明らかである。コイルスプリング(21)は、クラッチピストン(91c)が動作する際に長手方向に引っ張られることなく、回転のみが加わるように、十分に予負荷が与えられている。
図9は、ポンプ(1)のさらに別の実施形態を長手方向の断面で示したものであるが、図1に示したハウジングは記載されていない。同一の部材には同一の符号を付与してあるので、この限りにおいては、各図に関する上記の明細書の記載に参照を促すものである。
このポンプは、一部がクラッチベル(81)に係合しているロータ(7)を含んでいる。ロータ(7)は、その右端部(85)上においては、ポンプ(1)の製造のためにベーンが利用可能となるよう形成されている。その左端部(87)は、中空状に形成され、コイルスプリングクラッチ(23)のコイルスプリング(21)を取り囲む形状となっている。ロータ(7)にはさらに、コイルスプリング(21)と共に作用するクラッチ装置(37)を設けている。クラッチ装置(37)は、2つの部品から形成されかつクラッチ部(91’’a)及びこれと共に回転するクラッチ部材(91’’b)を含むクラッチ体(91)を含んでいる。
コイルスプリング(21)は、ロータ(7)の第1内部空間(95−1)内に格納可能となるように形成されている。コイルスプリング(21)に取り囲まれる空間内には、クラッチ部材(91’’b)が収容される。コイルスプリング(21)の第1端部は、クラッチ部材(91’’b)と共に回転するように連結されており、さらに第2端部は、ロータ(7)と共に回転するように連結されている。クラッチ部(91’’a)は、ロータ(7)の第2内部空間(95−2)内に回転可能に格納されている。
コイルスプリング(21)がクラッチ部材(91’’b)上に固定されている場合には、クラッチベル(81)の収容部(89)の内面との間では摩擦結合の状態にはない。すなわち、コイルスプリングクラッチ(23)の結合は解除されている。しかし、コイルスプリング(21)が伸長しているときは、結合部として作用するクラッチベル(81)の収容部(89)との間で摩擦結合の状態となり、駆動装置によってクラッチベル(81)に導入されたトルクは、コイルスプリング(21)を介してロータ(7)へと伝達可能となる。
作動装置(37)は、図10に基づいて、次の通りさらに詳細に説明される。
図10は、ポンプ(1)を分解図で示したものである。同一の部材には同一の符号を付与してあるので、上記の説明に参照を促すものである。
ポンプ(1)の各部品は、回転軸(15)と同心に設けられている。すなわち、下方左側にはクラッチベル(81)を見てとることができ、その右側にはクラッチ部材(91’’b)を見てとることができる。これに隣接する位置にコイルスプリング(21)を示してある。ロータ(7)は、2つの部品から形成されている。スリーブ状の第1ロータ部材(7−1)は、少なくともその一部にコイルスプリング(21)を収容している。図9から、スリーブ状の第1ロータ部材(7−1)が、壁部(129)を介してロータ(7)内の第2内部空間(95−2)と隔てられている第1内部空間(95−1)を含むことは明らかである。この第2内部空間(95−2)の内部には、クラッチ部材(91’’b)のクラッチ部(91’’a)を設けている。このクラッチ部(91’’a)は、少なくとも1つ、この図では径方向に対向する位置に2つ設けたベーン(131),(133)を含むものであって、このベーン(131)、(133)は、回転軸(15)とは反対側の長手方向の面により、スリーブ状のロータ部材(7−1)の内面上に接しており、かつ圧力室とは互いに隔てられている。
少なくとも1つ設けたベーンの側面に圧力が加わると、このベーンは回転軸(15)の周りを第1の方向に回転する。もう一方の側面に圧力が掛かる場合、このベーンは反対方向に回転する。
ここに図示した実施形態においては、ロータ(7)は、ベーンまたはその他のポンプ各部材の収容に用いられるロータ部(7−2)も含むものである。スリーブ状の第1ロータ部材(7−1)側の側面には、ロータ部(7−2)から、少なくとも1つ、ここでは2つの互いに一定の距離を置いて設けたストッパ部材(135),(137)が延びている。このストッパ部材(135),(137)のそれぞれの周面は、スリーブ状の第1ロータ部材(7−1)の内部空間(95−2)の内面に密着している。それ故、2つのストッパ部材(135)及び(137)の間には、ベーン(131),(133)が上記回転運動を行い、かつストッパ部材(135),(137)の内面がベーン(131),(133)の運動を制限するための領域が形成される。
コイルスプリング(21)の一方の端部はロータ(7)に係合し、他方の端部はクラッチ体(91)の第2の部品、すなわちクラッチ部材(91’’b)上に設けた凹部(139)に係合する。
コイルスプリングクラッチ(23)を作動させるために、クラッチベーン(91’’a)のそれぞれ一方の側に、圧力を加えた作動流体を充填することで、少なくとも1枚のベーン、ここではベーン(131)及び(133)が一方の方向に回転する。ベーン(131),(133)と共に回転するよう連結された連結ピン(141)を介して、回転運動が、たとえば二面体(143)を介して連結ピン(141)と共に回転するよう連結されたクラッチ部(91’’b)に伝達される。
以下において、コイルスプリングクラッチ(23)の制御についてさらに詳細に立ち入る。少なくとも1枚のベーン、ここではベーン(131)及び(133)に圧力が負荷されていない場合、クラッチベーン(91’’a)は、コイルスプリング(21)の反発トルクにより、前記複数のベーンがストッパ部材(135),(137)に当接するまで、その開始位置に向かって回転する。この動作位置において、コイルスプリング(21)の周面がクラッチベル(81)の収容部(89)の内面に接することで、トルクがロータ(7)に伝達される。ポンプ(1)のクラッチを切ろうとする場合には、ベーン(131),(133)の一方の側面に、圧力を加えた作動流体、たとえば油が充填されることで、これらのベーンがコイルスプリング(21)の反発トルクに対して所定の方向に回転する。回転運動によってコイルスプリング(21)は、クラッチ部材(91’’b)の周面上に位置し、その周面が収容部(89)の内面には全く摩擦結合をすることがないように伸長する。これによりポンプ(1)のクラッチが切られる。
コイルスプリングクラッチ(23)のクラッチ機能を逆転させることも、大いに考えられる。それ故、コイルスプリング(21)が、ベーン(131),(133)の無圧状態でクラッチ部材(91’’b)の周面上に位置し、クラッチベル(81)の収容部(89)の内面に係合していないという状況も可能である。それ故、無圧状態でポンプ(1)のクラッチが切られる。ポンプ(1)のクラッチを接続しようとする場合には、ベーン(131),(133)の側面のうち一方に圧力を負荷することで、クラッチ部(91’’a)に回転を与える。この結果として、クラッチ部材(91’’b)が回転することになり、さらにこれによってコイルスプリング(21)がコイルスプリングクラッチ(23)のかかる設計においては、クラッチベル(81)の収容部(89)と係合状態になる。こうして、ポンプ(1)は、ベーン(131),(133)の少なくとも一方に圧力が負荷されている場合に限り動作する。
ここに図示した実施形態においては、クラッチベーン(91’’a)を回転させることでその所望の動作位置に移動させる目的で、別の反発部材は全く必要とはしない。コイルスプリング(21)は、直接反発トルクを加えるように設計されている。
図11は、ポンプの別の実施形態を長手方向の断面で示したものである。ここでも図1に示したハウジングは省略してある。このポンプは、その右端部(85)を、流体の供給の目的で少なくとも1枚のベーンと共に作用することが可能となるよう設計したロータ(7)を備えている。その左端部(87)は、少なくともその一部をクラッチベル(81)に入り込ませている。ロータ(7)は、中空状に形成され、ここでは、その内部空間(95)が閉鎖部材(97)により右側に対して密閉されていることで、該内部空間は、ポンプ室との間で流体結合の状態にはない。内部空間(95)は、壁部(129)により2つの部分に区分される。第1の部分(95a)には、ここでコイルスプリング(101)として形成した弾性部材が、また第2の部分(95b)には、コイルスプリングクラッチ(23)のコイルスプリング(21)が格納されている。該コイルスプリングは、ロータ(7)から左側のクラッチベル(81)の収容部(89)内に突出している。収容部(89)の内径はコイルスプリング(21)の外径に合わせて調節されて、その結果、コイルスプリング(21)が第1動作位置においては、その周面により収容部(89)の内面と摩擦接触の状態となり、かつ第2動作位置においては収容部(89)内を自由に回転可能であり、摩擦トルクが伝達されることがないようにする。
ポンプ(1)は、クラッチ装置(37)を有するクラッチ体(91)を備えている。このクラッチ体(91)は、軸方向、すなわち回転軸(15)の方向に移動可能であり、さらに、コイルスプリング(101)により図11に示した位置、すなわち左側の第1動作位置に向かって押しやられる。クラッチ体(91)は、2つの部品、特にピストンとして形成され、かつ該クラッチ体に設けた内部空間(95)の第1の部分(95a)に密着しているクラッチフランジ(105)を含んだ第1の部品(91a)を備えている。
クラッチ体(91)の第1の部品(91a)は、クラッチベル(81)を貫通している。その端部には、ここで止め輪として形成した受け部(145)を設けている。第1の部品(91a)は、そのクラッチベル(81)から突出した自由端部に駆動トルクが掛かっている駆動部材(147)で自由に回転可能に支承される。この駆動部材(147)は、クラッチベル(81)と共に回転するように連結されている。駆動部材(147)の自由端部は、たとえば四面体(149)として形成することが可能である。駆動部材(147)は、コイルスプリング(21)の内部に入り込み、その内側の端部において外側歯部(151)を備え、この外側歯部(151)が、同じく歯を備えたクラッチリング(153)と共に作用している。クラッチリング(153)は、クラッチベル(81)の内部で自由に回転可能となるよう構成されている。このクラッチリング(153)はさらに、コイルスプリング(21)と共に回転するように連結されている。このコイルスプリング(21)の他端部は、ロータ(7)と共に回転するように連結されている。
第1の部品(91a)は、駆動部材(147)が当接するクラッチ肩部(155)を含んでいる。図11に示したクラッチ体(91)の第1の部品(91a)の動作位置において、クラッチ肩部(155)は、駆動部材(147)を完全に左側へと押しやることで、その外側歯部(151)がクラッチリング(153)と連結される。駆動部材(147)の左端部が受け部(145)と間隔(157)を隔てて設けられていることは明らかになる。
図12は、ポンプ(1)の各部材、特にクラッチ体(91)、駆動部材(147)及びクラッチリング(153)を分解図で示したものである。同一の部材には同一の符号を付与してあるので、この限りでは各図に関する上記の説明に参照を促すものである。
ここにおいて、クラッチ体(91)が、その一方の端部、ここでは右端部において、クラッチフランジ(105)を有し、かつクラッチ体(91)の第1の部品(91a)が、四面体(149)を備えた駆動部材(147)に把持されていることは明らかである。第1クラッチ部(91a)のクラッチフランジ(105)とは反対側の端部においては、駆動部材(147)の前面(159)と距離を置いて設けられている受け部(145)が配されている。
駆動部材(147)の前面(159)と対向する端部においては、ここでは環状とした本体(161)を有し、この本体から回転軸(15)に平行に左側に突き出た歯部(163)を有する外側歯部(151)を設けている。
クラッチリング(153)もまた本体(165)を有し、この本体(165)からは歯部(167)が右側に向かって突き出ている。この歯部(167)も、回転軸(15)に平行に延びている。外側歯部(151)の歯部(163)及びクラッチリング(153)の歯部(167)は、その幅及び長さにおいて、図11に示した動作位置及び図12に示した駆動部材(147)とクラッチリング(153)の相対位置において、両方の歯部が噛合し、これによりこの両方の歯部で駆動部材(147)のトルクをクラッチリング(153)に伝達するように形成されている。
図11及び図12から、次の点が明らかになる。
クラッチフランジ(105)が作動流体によって形成された圧縮力の負荷を受ける場合、コイルスプリング(101)は、クラッチ部材(91)を、図11に示したように完全に左側へと押しやる。こうして、クラッチフランジ(105)は壁部(129)に当接する。クラッチ肩部(155)により駆動部材(147)が完全に左側に移動することで、外側歯部(151)の歯部(163)がクラッチリング(153)の歯部(167)に係合する。
今度は、トルクが駆動部材(147)に加えられる場合、このトルクは、歯部(163)及び(167)を介してクラッチリング(153)に伝達される。クラッチリング(153)は、クラッチベル(81)に対して自由に回転可能である。この開始位置において、それ故駆動トルクの導入が行われていない状態では、コイルスプリングクラッチ(23)のコイルスプリング(21)が収容部(89)の内面に接していないことから、このコイルスプリング(21)は、クラッチベル(81)にトルクを全く伝達しないことになる。ここでトルクがクラッチリング(153)に導入されると、コイルスプリング(21)は、このトルクをロータ(7)に伝達する。駆動部材(147)のトルクが非常に急速に発生した場合、及び/または、たとえば該ポンプが供給する作動流体が低温かつ粘性を有するという理由から、大きな平衡力がロータ(7)の右端部(85)に加わっている場合には、コイルスプリング(21)がトルクのクラッチリング(153)への導入の際に伸長することで、その周面が収容部(89)の内面と係合し、さらにトルクがクラッチベル(81)に伝達される。ロータ(7)は、クラッチベル(81)に回転可能に支承されている。
僅かなトルクしかクラッチリング(153)からロータ(7)に伝達されない場合には、コイルスプリング(21)の伸長が発生しないことで、このコイルスプリング(21)は、その周面によってクラッチベル(81)の収容部(89)の内部に接することはなくなる。
コイルスプリングクラッチ(23)のクラッチを切るには、クラッチ装置(37)を作動させる。このために、ロータ(7)内の内部空間(95)の第1の部分(95a)内で、クラッチフランジ(105)の左側に加圧が形成されるか、またはクラッチフランジ(105)の右側に負圧が形成される。これにより、クラッチフランジ(105)は、コイルスプリング(101)の反発力に抗して、最終的には右側に移動し、このクラッチフランジ(105)と共に第1の部品(91a)も移動する。この部品(91a)が摩擦の少ない状態で駆動部材(147)内を延びていることから、この部品(91a)は、最初に駆動部材(147)の軸方向の位置の変化が発生することもなく、右側へと移動する。すなわち、クラッチフランジ(105)の最初の移動から、結果として駆動部材(147)または歯部(163)の歯部(167)に対する位置の変化が発生することにはならない。
第1の部品(91a)の受け部(145)が駆動部材(147)の前面(149)に対して一定の間隔(157)を置いて設けられているため、クラッチフランジ(105)、さらに第1の部品(91a)は、受け部(145)が駆動部材(147)に当接するまでの間に、右側に向かって非常に長い距離を移動することが可能である。クラッチフランジ(105)が右側へとさらに移動する際に初めて、駆動部材(147)が同時に右側へと移動する。回転軸(15)の方向に測定した歯部(163)及び歯部(167)の長さに依存して、駆動部材(147)はその外側歯部(151)と共に、外側歯部(151)とクラッチリング(153)との機械的結合、すなわち完全嵌合が解消するまで、一定の距離を右側へ移動することになる。この場合には、これ以上トルクが駆動部材(147)から歯部(163)及び歯部(167)を介してクラッチリング(153)へと伝達されることはない。こうして、さらにはクラッチリング(153)と連結したコイルスプリング(21)の図11に示した左端部にも、これ以上トルクが作用することはなくなる。こうして、ポンプ(1)のクラッチが切られる。これ以上トルクがロータ(7)に作用することはない。
今度は、クラッチフランジ(105)の左側の加圧であれ、クラッチフランジ(105)の右側の負圧であれ、クラッチフランジ(105)に作用する力が小さくなった場合に、コイルスプリング(101)によりクラッチ体(91)、それ故第1の部品(91a)も左側へと移動する。最初の移動区間においては、クラッチ肩部(155)は、駆動部材(147)の前面(159)と対向する端部に接触することはない。一定の圧力変化を超えたところで初めて、クラッチ肩部(155)は、駆動部材(147)に当接し、ついでこのコイルスプリングの圧縮力によって、この駆動部材(147)を、外側歯部(151)の歯部(163)がクラッチリング(153)の歯部(167)に係合するところまで左側に移動させる。このとき初めてトルクがコイルスプリング(21)に伝達される。このコイルスプリング(21)は、一定のトルクに達するまで伸長することはなく、駆動部材(147)に導入されたトルクを直接ロータ(7)に伝達する。さらに大きな抵抗力がロータ(7)に作用した場合には、コイルスプリング(21)は、その周面がクラッチベル(81)の収容部(89)内の内面と摩擦接触の状態になるまで伸長する。
コイルスプリングクラッチ(23)が完全に接続されている場合には、クラッチ体(91)は図11に示した位置にあり、それ故、受け部(145)は、駆動部材(147)の前面(159)と一定の間隔(157)を置いた配置となる。
コイルスプリングクラッチ(23)を再度切ろうとする場合には、クラッチフランジ(105)を、受け部(145)が駆動部材(147)の前面(159)に当接するまで右側に移動させる。このとき初めて歯部(163)と歯部(167)の結合の解除が開始される。
それ故、受け部(145)と駆動部材(147)の前面(159)との間隔(157)、さらには反発バネとして作用するコイルスプリング(101)の力により調節可能としたクラッチのヒステリシス特性が発生する。
結局のところ、駆動部材(147)からロータ(7)へのトルクの伝達は、一方ではコイルスプリング(21)のみを介して行われ得るが、コイルスプリング(21)の周面とクラッチベル(81)の収容部(89)内の内面との間に付加的に作用する摩擦トルクによっても行われ得る。伝達されるトルクが少ない場合には、このトルクは専らコイルスプリング(21)を介して伝達され得る。
クラッチリング(153)と駆動部材(147)の外側歯部(151)との完全嵌合が断絶した場合には、コイルスプリング(21)は、弛緩しその休止位置に達することで、これ以上伸長することがなくなる。それ故、コイルスプリング(21)とクラッチベル(81)の収容部(89)との間には、力の配分による結合、すなわち摩擦結合が発生しない。それ故、ポンプ(1)のクラッチが切られる。
図13は、ポンプ(1)の一部を長手方向の断面で示したものである。ここでも、図1に示したポンプのハウジングを省略している。同一の部材は同一の符号を付与してあるので、この限りにおいては、上述の明細書の記載に参照を促すものである。
ポンプ(1)は、その右端部(85)が、流体の供給のために少なくとも1枚のベーンと共に作用することを可能とするよう形成されているロータ(7)を含んでいる。ロータ(7)の左端部(87)は、駆動トルクが導入されるクラッチベル(81)の中まで突き出している。ロータ(7)は、クラッチベル(81)で回転可能に支承されている。クラッチベル(81)は駆動装置により回転を与えられ、連続的に同時稼動する。
ポンプ(1)は、コイルスプリング(21)を有するコイルスプリングクラッチ(23)、さらにはクラッチ装置(37)を備えている。このクラッチ装置(37)は、コイルスプリングクラッチ(23)と共に中空状のロータ(7)の内部に位置し、コイルスプリング(21)及びクラッチ装置(37)は、クラッチベル(81)の中まで突き出している、すなわち、全体がロータ(7)に収容されてはいない。
クラッチ装置(37)は、油圧ピストンとして形成された第1の部品(91a)及び摩擦クラッチとして形成された第2の部品(91b)を有するクラッチ体(91)を含んでいる。第2の部品(91b)は、クラッチベル(81)の円錐状の内面(171)と共に作用する円錐状の外面(169)を備えている。
2つの部品(91a),(91b)、ロータ(7)及びクラッチベル(81)は、回転軸(15)に対して同心に配置されている。
クラッチ体(91)の第1の部品(91a)は、その周面がロータ(7)の凹部(95)の内面に密着しているクラッチフランジ(105)を備えている。第1の部品(91a)のクラッチフランジ(105)に接している部分が、その周面上に、コイルスプリング(21)を収容する、すなわち、このコイルスプリング(21)がその第1の動作位置において凹部(95)の内面との間で摩擦接合の状態にはならないようにクラッチフランジ(105)の外径は選択される。コイルスプリング(21)は、ロータ(7)と共に回転するよう連結されている。もう一方の端部は、第1の部品(91a)の周面内の回転軸(15)の方向に延びる凹部(67)と係合し、ここで共に回転するように保持される。
図13に記載の図示例において、油圧ピストンとして形成されたクラッチ体(91)は右側の動作位置にある。該右側の動作位置は、弾性部材、ここではコイルスプリング(21)によって押しやられる位置である。これにより、クラッチ体(91)の第2の部品(91b)の外面(169)は、クラッチベル(81)の円錐状の内面(171)に対して押し付けられる。すなわち、クラッチベル(81)に導入されたトルクは、本発明に記載した摩擦結合を介して、クラッチ体(91)に伝達される。該クラッチ体は、コイルスプリング(21)の一方の端部と共に回転するように連結されているため、ロータ(7)は、伝達される力が一定の上限を上回らない場合には、コイルスプリング(21)によりもたらされた力のみによって回転する。しかし、伝達される力がさらに大きい場合には、コイルスプリング(21)が伸長することで、その周面がクラッチベル(81)の収容部(89)の内面との間で摩擦係合の状態になる。それ故、トルクは、コイルスプリング(21)そのもののみではなく、クラッチベル(81)を介しても伝達される。
図13から、コイルスプリング(21)の右端部がより幅を広く取って環巻きされていること、すなわちコイルが互いにさらに大きな間隔距離を有するようになることが明らかである。このコイルスプリング(21)は、ここでは、このコイルスプリング(21)の反発力を改善し、特に上記のコイルスプリング(101)を使用しないことを可能とするように、圧縮スプリング(173)として形成されている。
クラッチ体(91)とクラッチベル(81)との間に発生する摩擦クラッチは、クラッチ体(91)が図13に示した位置から左側に移動することで解除可能である。これにより、コイルスプリング(21)が圧縮スプリング(173)として形成されている部分と共に圧縮される。同時に、クラッチ体(91)の第2の部品(91b)の円錐状の外面(169)が、クラッチベル(81)の円錐状の内面(171)から離間する。ここで、コイルスプリング(21)は、弛緩しその休止位置に達することが可能となることで、その周面とクラッチベル(81)の収容部(89)の内面との間で、摩擦結合はこれ以上存在することができない。それ故、ポンプ(1)は、駆動装置との接続が解除される。
図14は、コイルスプリング(21)を大幅に拡大して斜視図で示したものである。右側上方には、間隔がさらに離れたコイル部分、すなわち圧縮スプリング(173)を形成する部分が見てとれる。径方向外側に突出した環状部(175)によって、コイルスプリング(21)は軸方向及び接線方向にロータ(7)内で固定されており、このロータ(7)は、内部空間(95)の周囲の内壁の好適な位置に、対応する凹部を有している。
コイルスプリングの圧縮スプリング(173)に対向する端部(177)は、ここではまだ見てとることができない、径方向内側に突出した突出部(179)を備え、この突出部(179)が図13に示した凹部(67)に係合し、これによりクラッチ体(91)との結合を生じさせる。
図15は、側面図でコイルスプリング(21)の変更実施形態を示している。該コイルスプリングの末端の複数のコイルが、圧縮スプリング(173)を形成する目的で、互いにより大きな間隔距離を置いて配置されている。このように形成したコイルスプリング(21)は、たとえば図13に示したものと同様に形成したポンプ(1)の実施形態に対して使用されることが可能である。ここでは、末端の圧縮スプリング(173)として形成したコイルで、その外径を内側の円錐に合わせたものが、摩擦クラッチとして機能することは明らかである。
クラッチを接続した状態では、圧縮スプリング(173)の円錐状の外面は、駆動装置の円錐状の内面、たとえばクラッチベルに接している。
円錐状の圧縮スプリング(173)の自由端部(181)が左側のコイルスプリング(21)の休止方向に移動した場合には、圧縮スプリング(173)の部分に発生する円錐角が大きくなる。点線を用いて想定上の円錐(187)を示しているが、これは、圧縮スプリング(173)が圧縮していない状態で、該円錐の内面上に圧縮スプリング(173)のコイルの周面(183)が位置しているものである。圧縮スプリング(173)の自由端部(181)が左側に移動した場合には、破線で示した円錐(185)が生じ、この開口角は、点線で示した円錐(187)のものより大きい。
圧縮スプリング(173)が、コイルスプリング(21)の中心軸と一致する回転軸(15)の方向へ圧縮で歪みが生じた場合には、圧縮スプリング(173)の周面(183)は、点線で示した内側の円錐面(187)に接することはない。それ故、自由端部(181)のコイルスプリング(21)の他の部分への移動の結果として、圧縮スプリング(173)の周面(183)により形成される摩擦クラッチの解除が生じる。
圧縮スプリング(173)の自由端部(181)の移動は、一方では、右から作用する力によって引き起こされることが可能である。しかしながら、コイルスプリング(21)の内部空間から1つの部材が自由端部(181)に達し、この部材が摩擦クラッチを切るために左側へと移動することもまた想定可能である。
まとめると、図15に基づいて、コイルスプリング(21)の自由端部(181)を圧縮スプリング(173)として形成することも可能であり、その円錐状の周面(183)が摩擦クラッチの円錐状の内面と協働することが明らかである。圧縮スプリング(173)の軸方向に測定した長さが、自由端部(181)の移動によって短くなった場合には、圧縮スプリング(173)の周面(183)と摩擦クラッチの内側の円錐との間で、摩擦結合を発生させるのを断念することで、駆動装置からロータに対して、これ以上トルクを伝達することが不可能になる。
それ故、コイルスプリング(21)は、クラッチとしても形成することが可能である。
ポンプ(1)に関する説明から、ポンプ(1)は、コイルスプリングクラッチ(23)とクラッチ装置(37)を用いて、駆動トルクが存在している場合にも、そのクラッチを切ることが可能である。コイルスプリングクラッチ(23)の解除は、圧力が加えられた作動流体を用いても行うことが可能である。しかしながら、負圧を用いてポンプ(1)のクラッチの接続及びクラッチの解除を発生させることが行われる可能性が高い。それ故、ポンプ(1)が負圧を生成する目的で車両に用いられた場合には、生成された負圧は、所望の負圧の値を達成した場合に、コイルスプリングクラッチ(23)を作動させ、これによってポンプ(1)のクラッチを切るために活用される。クラッチの特に好適なクラッチ挙動は、図11及び図12に基づいて説明した通り、ヒステリシス特性を有するクラッチ挙動が実現した場合に発生する。
まとめると、ポンプ(1)が非常に容易かつコンパクトに形成可能であることが明らかであり、ゆえにこのポンプ(1)は、故障が発生する可能性がほとんどなく、及び製造コストが安価であることを特徴とする。