JP2010508503A - 質量分光によるタンパク質分解処理の分析 - Google Patents

質量分光によるタンパク質分解処理の分析 Download PDF

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Abstract

本発明は、N末端ペプチドの同位体ラベリングに基づいて特異なタンパク質分解処理を決定するためのサンプルの同時分析に関し、同位体ラベリングが、酵素タンパク質分解の間の18Oの組込みによって達成される。例えば本発明は、同位体ラベリングを用いて2つのタンパク質サンプルを分析するための装置であって、2つのサンプルソース、修飾試剤のソースを備えたタンパク質修飾ユニット、ラベリング及びタンパク質切断ユニット及び対応するラベルソース、N末端ペプチド単離ユニット、分離ユニット、質量分光器ユニット、並びにデータ分析ユニットを有する装置である。

Description

本発明は、MS分析を用いた異なるサンプルにおけるタンパク質分解処理を同時に決定するためのツール及び方法に関する。
タンパク質分解酵素は、最初は、タンパク質異化作用と関連する非特異的分解酵素と見なされていた。しかしながら、タンパク質分解は、特定のタンパク質の高度に特異的な切断によって、全ての生きた生体中の生物学的プロセスの正確な細胞制御を達成するための重要な機構であることが、次第に認識されてきている[Barrett (1998) in "Handbook of Proteolytic Enzymes" Academic Press, London]。この高度に特異的かつ制限された基質切断は、タンパク質分解処理と称される。タンパク質分解酵素は、非可逆的な加水分解性反応に触媒作用を及ぼすそれらの能力を通して、適切な細胞内又は細胞外の局在化を制御することによって、細胞表面から落ちることによって、タンパク質分解酵素及び他の酵素、サイトカイン、ホルモン類又は成長因子の活性化又は不活性化によって、拮抗体への受容体作用物質の変換によって、並びに、潜在性新生タンパク質(cryptic neoprotein)の暴露によって、多くのタンパク質の最期及び活動を調整する(すなわち、タンパク質分解切断生成物は、親タンパク質とは異なる役割を備える機能的タンパク質である)。したがって、タンパク質分解酵素は、生理活性分子を処理することによって、広範囲の重要な細胞機能を開始、調整及び終了させ、それによって基本的な生物学的プロセス(例えば、DNA複製、細胞サイクル進行、細胞増殖、分化及び移動、形態形成及び組織再造形、神経細胞増殖、止血、創傷治癒、免疫、血管形成及びアポトーシス)を直接制御する(Sternlicht et al. (2001), Ann. Rev. Cell. Dev. Biol. 17, 463-516)。
細胞死を含む全ての生きたプロセスにタンパク質分解酵素が機能的に関連することを考慮すると、これらの酵素の欠陥(すなわち誤った方向の時間的及び空間的活性)が、いくつかの病的状態(例えば癌、関節炎、神経組織の疾患及び心臓血管の疾患)の根底にあることを理解するのは難しくない。さらに、多くの伝染性の微生物、ウイルス及び寄生虫は、有毒性因子としてタンパク質分解酵素を用い、動物の毒は、組織破壊を生じさせるため又は宿主応答を回避するために、タンパク質分解酵素を一般に含む。したがって、多くのタンパク質分解酵素又はそれらの基質は、考えうる薬剤ターゲットとしての薬剤産業の重要な注意の焦点である。
タンパク質分解酵素の拡大する役割のために、細菌から人類まで様々な生体に存在する多くのタンパク質分解酵素の識別及び機能的特性解析への関心が高まっている。いくつかの大規模なゲノム配列決定プロジェクトが最近終了し、タンパク質分解酵素システムの複雑性を認識する新たな機会が提供された。ヒトゲノムは、タンパク質分解酵素又はタンパク質分解酵素のような分子を符号化する500以上の遺伝子を含む。
タンパク質分解酵素に関する知識が増加したにもかかわらず、新たに識別されたタンパク質分解酵素の基質及び生体内での役割は分かっておらず、十分に特性解析されたタンパク質分解酵素でさえ、それらの生物学的機能はしばしば完全に理解されていない。細胞、組織又は生物体中で発現して活性であるタンパク質分解酵素レパートリを識別し、各々のタンパク質分解酵素の全ての天然基質を識別するために、新たな技術が緊急に必要である。
全ての生体の中で機能するタンパク質分解システムの高まる複雑性及び重要性の兆候、並びにゲノムスケール及びプロテオーム的スケールでシステムを全体的に分析するための能力は、この分野における新生のコンセプトを明らかにするために、新たな用語の導入を必要とする。それで、"degradomics"が、プロテオーム的なスケールのタンパク質分解酵素の基質レパートリを定めるために、最初に新造された(McQuibban et al. (2000), Science 289, 1202-1206)。加えて、この用語は、さらに、細胞、組織又は生物体によって特定の時点又は状況で表現されるタンパク質分解酵素の全集合のために用いられる。degradomicsの分野は、タンパク質分解酵素degradomeの両方の種類を調査及び定義するために、新生の(及び新たな)ゲノム及びプロテオーム的技術を用いて構築される。
個々のタンパク質分解酵素の基質degradomesを識別することは、我々がそれらの生理学的及び病理学的役割を理解することを促進し、それによって、新たな診断バイオマーカ及び新規な薬剤ターゲットを示す。この情報は、細胞のタンパク質分解酵素degradomeについての知識と共に、細胞機能及び病理に関する細胞環境におけるタンパク質分解酵素の生物学的役割についての我々の理解を増強する。組織的なスケールに関する同様の情報は、患者に対してなされる更に正確な予後の予測を可能にする重症度又は腫瘍等級に対するタンパク質分解酵素レベルの較正によって、疾患の分子診断において役立つはずである。
機能的degradomicsは、2つのブランチを持つ。第一は、個々のタンパク質分解酵素の活性プロファイリングに基づき、第二は、ターゲット基質の切断の決定に関わる。それで、特定のタンパク質分解酵素による個々の寄与を定義する代わりに、この後者の目的は、タンパク質分解酵素degradomeを基質切断につながるシステムとみなす。degradomicsの分野は、新たなタンパク質分解酵素及び生理学的基質を明らかにし、タンパク質分解処理によって制御される新たな及び周知の制御経路を同定する見込みがある。これらの経路の制御は、疾患状態では阻害されるかもしれず、ホストタンパク質分解酵素は微生物によって感染のために用いられるかもしれず、したがって、治療上のターゲットとされることができる。それぞれのプロテオーム的方法が、タンパク質分解処理を検査するために説明される。
Hancock他(WO2006044666)は、サンプルの低Mrペプチド画分を単離して、その中のタンパク質を識別する。高Mrタンパク質画分の中にとどまる処理されたタンパク質自体に関する情報は得られない。
McDonald他((2005) Nat. Methods 2, 955-957)は、タンパク質混合物からのN末端ペプチドがMSによって単離及び識別される方法を説明する。この方法は、肝臓タンパク質中の新規な切断部位の識別に成功する。この方法において、一つのサンプルのみが検査され、全てのペプチド、さらに非処理タンパク質からのペプチドは、最終的な新規なタンパク質分解処理現象を明らかにするために、MS及び配列決定によって確認されることを必要とする。
一方、Overall他は、2つのサンプルが、ICAT(Isotope-Coded Affinity Tag)ラベルを用いて同時に分析される方法を用いる[Overall and Dean (2006) Cancer Metastatis 25, 69-75]。この方法において、システインのチオール基は親和性タグを付けられたラベルによって修飾され、サンプルはトリプシンによって消化され、そしてラベルをつけられたペプチドは単離される。このようにして、異常性被処理タンパク質の劣化又は増加する脱落に起因する異なる発現レベルを持つタンパク質が検出される。しかしながらこの方法は、これらのタンパク質中の切断部位に関する情報を与えない。
Fisher他(US20060134723)は、同位体ラベリングを用いて、N末端ペプチド又はC末端ペプチドを選択することによって、それぞれのサンプル中のタンパク質成熟及び処理を検査するための方法を説明する。
サンプル中のタンパク質分解処理の効率的な分析を可能にする分析法の必要性が存在する。
本発明は、選択的なラベリング及びN末端ペプチドの単離に基づいて、2つのタンパク質サンプル間でタンパク質分解処理を比較するための方法を提供する。選択的なラベリング及びN末端ペプチドの単離は、タンパク質切断とH2 18O同位体ラベリングとを組み合わせて、その後に更なる分析のためにN末端ペプチドを単離することによって達成される。この方法は、同位体ラベリング及びタンパク質切断が2つの別々のステップで実行される従来技術の方法と比べて、操作ステップ数が低減されるという利点を持つ。加えて、高価な同位体ラベリング化合物が、安価なH2 18Oによって置き換えられる。タンパク質切断及びH2 18Oによるラベリングを併合することによって、切断されるすべてのペプチドは自動的にラベルをつけられ、それによってラベリングの効率が高まる。タンパク質分解酵素の介在した18O組込みは、C末端に対して特異的であり、存在する内部アミノ酸Asp及びGluの機能的カルボキシル基に干渉しないという更なる利点を持つ。
本発明はさらに、タンパク質分解酵素の介在した18O組込みとアミン特異的等重ラベリングとが同時に行われる多重二重ラベリング方法を提供する。これらの方法において、等重ラベリングはタンパク質修飾ステップと組み合わせられる(それらは通常、2つの別々のステップとして実行される)。
本発明の特定の及び好適な態様は、添付の独立請求項及び従属請求項において述べられる。従属請求項の特徴は、適切に、請求項中に明示的に述べられるようにだけでなく、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせられることができる。
本発明の第1の態様は、二つ以上の異なるタンパク質サンプル間のタンパク質分解処理を比較するための生体外での方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、(a)前記サンプル中のタンパク質のN末端のアミン及びリシン残留物のアミンを修飾するステップ、(b)修飾されたタンパク質をペプチドに切断し、タンパク質分解酵素によって誘発されるO又は18Oの組込みにより、サンプルの各々を、O又は18Oのいずれかによって同時にラベリングするステップ、(c)得られたペプチドからN末端ペプチドを単離するステップ、並びに(e) N末端ペプチドにMSを受けさせるステップを含む。本発明のこの態様による方法は更に、ステップ(b)で得られるラベルをつけられたサンプル又はステップ(c)で得られる単離されたN末端ペプチドをプールするステップ(d)を含む。次のステップ(f)において、重要なペプチド画分は、ステップ(e)のMS分析に基づいて選択され、そしてこれらの重要なペプチド画分は、オプションとして、その中のペプチドを識別するためにさらに分析される(g)。
一実施例によれば、この方法は、ステップ(c)の後、単離されたN末端ペプチドをペプチド分離ステップにかけるステップを含む。
本発明の方法の特定の実施の形態において、ステップ(a)における修飾は、アミン反応性基を含む異なる等重ラベリング試剤によって各々のサンプルに対して実行される。これらの実施の形態において、修飾ステップは区別ラベリングステップであり、それによって、異なるラベルが各々のサンプル中に組み込まれる。
本発明の方法のさらに特定の実施の形態において、ステップ(b)における切断は、トリプシンによって実行される。
本発明の方法の特定の実施の形態において、N末端ペプチドの単離は、親和性タグを内部ペプチド及びC末端ペプチドのN末端に共有結合して、親和性クロマトグラフィによってサンプルから内部ペプチド及びC末端ペプチドを除去することによって実行される。
これらの方法の特定の実施の形態において、ステップ(g)は、MS/MSで識別されたタンパク質サンプルを分析することを含む。
本発明のこの態様による方法の特定の実施の形態において、2つのサンプルが用いられる場合、ステップ(f)の選択ステップは、同位体でラベル付けされたペプチドのピーク間の比が0.5より下か1.5より上、より詳しくは0.1より下か10より上のピークを識別することから成る。
特定の実施の形態において、本発明の方法は、一つ以上が腫瘍患者からのサンプルであるタンパク質サンプルに適用される。
本発明の第二態様は、酵素、タンパク質、切断条件、疾患状態などを特徴づける際のタンパク質分解切断部位を決定するための上記の方法の使用に関する。
本発明の更なる態様は、タンパク質分解処理のダウンストリーム効果を決定するための上記した方法の使用に関する。
本発明のまた更なる態様は、本発明の方法を実行するためのツール、より詳しくは、二つ以上の等重ラベリング試剤及びH2 18Oのセットを含むことを特徴とするサンプルの区別ラベリングのための試剤のキットを提供する。
一実施例において、このキットは、自由なN末端(free N-terminus)を有するポリペプチドを単離するための手段をさらに有する。
本発明のまた更なる態様において、本明細書において説明される方法を実行するのに特に適した装置が提供される。本発明において提供される、同位体ラベリングを用いた2つのタンパク質サンプルの同時分析のための装置(100')は、一般的に、2つのサンプルソース(101)、修飾試剤のソース(104')を備えるタンパク質修飾ユニット(103')、16O又は18O及び対応するラベルソース(107)を備えたタンパク質分解酵素介在ラベリングのためのラベリング及びタンパク質切断ユニット(105)、N末端ペプチド単離ユニット(106)、分離ユニット(108)、質量スペクトロメータユニット(109)並びにデータ分析ユニット(110)を含む。
本発明のまた更なる態様は、二重ラベリングを用いた二つ以上のタンパク質サンプルの多重分析のための装置(100)を提供し、当該装置は、少なくとも2つのサンプルソース(101)、ラベリング試剤の少なくとも2つのソース(104)を備えたラベリングユニット(103)、16O又は18O及び対応するラベルソース(107)を備えたタンパク質分解酵素介在ラベリングのためのラベリング及びタンパク質切断ユニット(105)、N末端ペプチド単離ユニット(106)、分離ユニット(108)、質量スペクトロメータユニット(109)並びに回路制御及びデータ分析ユニット(110)を有する。
上で説明された装置の特定の実施の形態は、サンプル調製ユニット(102)をさらに含む。
本発明の上記の及び他の特性、特徴及び利点は、一例として本発明の原理を図示する添付の図面と共に考慮される以下の詳細な説明から明らかになる。この説明は、単に例として与えられ、本発明の範囲を制限しない。以下で引用される参照図は、添付の図面を参照する。
iTRAQ試剤(A)の例示的な構造及びそれによってラベルをつけられる(B)ペプチドを示す。本発明の実施の形態による等重ラベリング試剤の詳細な構造は、114から117Daの質量をもつレポーター基、31から28Daの質量をもつバランス基、及びアミン特異的ペプチド反応基(NHS)から成る。 切断されたペプチドのC末端アミノ酸の両方のカルボキシル酸素原子への18Oのトリプシン介在組込みを図示する(E:酵素)。 本発明の特定の実施の形態による、2つのサンプルで異なって処理されたタンパク質の識別を示す。(1):タンパク質変性; (2):システインの修飾; (3):第一級アミンの修飾; (4):酵素消化; (5): N末端ペプチドの単離。左側のパネルは、生体内での未処理のタンパク質'A'を示す。切断後、タンパク質'A'は、N末端ペプチド(a)、内部ペプチド(b)、及びC末端ペプチド(c)に切断されている。右側のパネルにおいて、サンプル中のタンパク質Aは、アミノ酸(z)のところで、2つの断片A'及びA''に生体内で処理される。消化により、A'は、N末端ペプチド(a)及び内部/c-末端ペプチド(b')に切断される。A"は、N末端ペプチド(a')及びc-末端ペプチド(c)に切断される。N末端ペプチドの選択は、左側のパネル中のペプチド(a)並びに右側のパネル中のペプチド(a)及び(a')を単離する。 本発明の特定の実施の形態による、18O同位体ラベリング及びアミン特異的等重ラベリングによる二重ラベリングを用いた、複数のサンプルの同時分析を図示する。1-8はサンプル、A-Dは等重ラベル、16及び18は同位体ラベルである。 本発明の特定の実施の形態による、二重ラベリングを用いた8つのタンパク質サンプルの多重分析のための装置(100)を示す。当該装置は、8つのサンプルソース(101)、サンプル調製ユニット(102)、対応する第1ラベルソース(104)を有する(第1)ラベリングユニット(103)、対応する第2ラベル(H2 16O, H2 18O)ソース(107)を有する切断及び(第2)ラベリングユニット(105)、N末端ペプチド単離ユニット(106)、2つの連続的に連結された分離システム(1108)及び(2108)を有する分離ユニット(108)、質量スペクトロメータユニット(109)、並びに読出しシステムに(111)に結合された制御回路及びデータ解析ユニット(110)を有する。 本発明の特定の実施の形態による、同位体ラベリングを用いた2つのタンパク質サンプルの分析のための装置(100')を示す。当該装置は、2つのサンプルソース(101)、サンプル調製ユニット(102)、修飾試剤のソース(104')を有するタンパク質修飾ユニット(103')、ラベリング試剤(H2 16O及びH2 18O)の対応するソース(107)を有する切断及びラベリングユニット(105)、N末端ペプチド単離ユニット(106)、2つの連続的に連結された分離システム(1108)及び(2108)を備えた分離ユニット(108)、質量スペクトロメータユニット(109)、読出しシステムに(111)に結合された制御回路及びデータ分析ユニット(110)を有する。
異なる図において、同じ参照符号は、同じ又は類似した要素に関連する。
本発明は特定の実施の形態に関して及び特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらには限定されず、特許請求の範囲のみによって制限される。特許請求の範囲中の任意の参照符号は、範囲を制限するものとして解釈されてはならない。記載された図面は単なる概要であって、非限定的である。図面において、いくつかの要素のサイズは、説明の便宜上、誇張されている場合があり、縮尺通りに描かれていない場合がある。本説明及び特許請求の範囲において「有する;含む」という用語が用いられる場合、それは他の要素又はステップを除外しない。単数形の名詞が用いられる場合、特に別途述べられない限り、その名詞が指すものが複数存在することを除外しない。
さらに、詳細な説明及び請求の範囲中の「第1」「第2」「第3」などの用語は、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも逐次的又は時間的な順序を表すためではない。そのように用いられる用語が、適切な状況の下で相互に交換可能であり、本願明細書において記載されている本発明の実施の形態が、本願明細書において記載又は図示されるものとは異なる順序での動作が可能であることが理解されるべきである。
以下の用語又は定義は、単に本発明の理解を補助するためだけに提供される。明示されない限り、これらの定義は、当業者によって理解されるよりも狭い範囲を持つものとして解釈されてはならない。
本願明細書において用いられるように、用語"ポリペプチド"又は"タンパク質"は、ペプチド結合を介して接続される複数の天然の又は修飾されたアミノ酸を指す。ポリペプチドの長さは、2から数千のアミノ酸で変化することができる(したがって、この用語は、一般にオリゴペプチドと呼ばれるものも含む)。生体内での翻訳後の修飾(例えばグリコシル化、リン酸化など)によって修飾されている一つ以上のアミノ酸を有し、並びに/又は、タンパク質修飾作用剤(例えばアルキル化及びアセチル化剤)により生体外で修飾された一つ以上のアミノ酸を有するポリペプチドが、この範囲内に含まれる。
"ポリペプチド断片"又は"ペプチド"という本願明細書において用いられる用語は、タンパク質又はポリペプチドの酵素切断後に得られるアミノ酸配列を指すために用いられる。ポリペプチド断片又はペプチドは、サイズ又は性質において制限されない。
ペプチドを指す場合の"内部"、"N末端"及び"C末端"という用語は、タンパク質又はポリペプチド中のペプチドの対応する位置を指すために本願明細書において用いられる。例えば、タンパク質NH2-X1-K-X2-R-X3-K-X4-COOH(ここで、X1、X2、X3及びX4は、リシン(K)又はアルギニン(R)を含まない、長さが決まっていないペプチド配列である)のトリプシン切断において、N末端ペプチドはNH2-X1-K-COOH、内部ペプチドはNH2-X2-R-COOH及びNH2-X3-K-COOH、C末端ペプチドはNH2-X4-COOHである。
細胞のdegradomeに関連して本明細書において用いられる場合、"degradome"という用語は、細胞、組織又は生物体によって特定の時点又は状況で発現されるタンパク質分解酵素の全集合を指す。本願明細書において用いられる場合、同じ用語が、タンパク質分解酵素に関連して、細胞、組織又は生物体におけるそのタンパク質分解酵素の基質レパートリを指す場合がある。
"タンパク質切断"という本明細書で用いられる用語は、ポリペプチド中の2つのアミノ酸間のペプチド結合の加水分解に関する。本発明の方法において、タンパク質切断は、酵素によって実行される。生理的プロセスに関連して、"酵素加水分解"、"タンパク質分解処理"及び「タンパク質成熟」のような用語も用いられる。
"断片化"という本明細書で用いられる用語は、例えば質量スペクトル分析(MS)における衝突誘起解離(CID)によって得られるような、一つ以上の化学結合の切断及び分子の一つ以上のパーツのその後の放出を指す。特定の実施の形態において、結合はペプチド結合である(但しそれに制限されない)。
本明細書で用いられる用語"ラベル"は、ペプチド若しくはポリペプチドに共有結合され又はそれらに組み込まれることができ、その特定の特性に基づいて質量スペクトロメータで検出可能である化合物又は分子を指す。ラベルは、ラベリング試剤中に存在するタンパク質/ペプチド反応性基を通してペプチド又はポリペプチドに共有結合されることができる複合化学分子を含む。ラベルはまた、化学的な及び/又は酵素による反応によって関係するペプチド又はポリペプチドに組み込まれる単一の原子(例えば同位元素)を含む。用語"ラベル"は一般的な意味で用いられるが、タンパク質又はペプチドに結合されたラベル分子と、ラベリング試剤(より具体的には、ペプチド又はタンパク質と結合する前のラベルを含み、タンパク質又はペプチドに結合するための反応基を有する化合物を指す)とは区別されることができる。本発明は、異なる種類のラベル(例えば以下で定義される同位体及び等重ラベル)の使用を想定する。同位体若しくは等重ラベル(又はラベリング試剤)に関して本明細書において用いられる用語"ラベルのセット"は、一つの実験において異なるサンプルに同時にラベルをつけるために用いることができる(すなわち同じ化学的構造を持つが、MS又はMS/MSで質量に基づいて区別されることができる)2つ以上の異なるラベル又はラベリング試剤を指す。
本明細書で用いられる用語"同位体ラベル"は、基本的に同一構造をもち、電気泳動及びクロマトグラフィにおいて同じようにふるまうが、質量の相違を生じさせるように一つ以上の原子が異なり、ラベル(の一部)として用いられることができる一セットの分子を指す。異なる同位体ラベル成分間の質量の差は、同じ原子の同位元素による原子の置換によって保証される。同じ又は本質的に同じ化学式のラベル成分を有しているが、(数又は種類が)同じ原子の異なる同位元素の存在に基づいて質量が異なっているラベルによって各々ラベル付けされた同一のペプチドは、MSにおいて互いに区別されることができる。
本明細書で用いられる用語"同位体Oラベル"は、一つ以上の異なる18O原子を含むラベルを指す。一つのサンプル又はサンプルのセット中の一つ以上の18Oの組込みと、他のサンプル又はサンプルの他のセット中の一つ以上の酸素即ち16O(本明細書においてほとんどの場合Oと呼ばれる)の組込みとを組み合わせて使用すると、これらのサンプルの同位体ラベリングがもたらされる。同位体Oラベルは、酵素によるタンパク質分解の間にペプチドのC末端中のOに代わるものとして組み込まれ、C末端にOを有するペプチドとC末端に18Oを有するペプチドとの間で、MSでの質量の差をもたらす。したがって、同位体Oラベルによって区別してラベル付けされた同一のペプチドは、質量の差に基づいて、MSでそのように区別されることができる。
"等重ラベル"という本明細書で用いられる用語は、同じ構造及び同じ質量を持つ一セットのラベルを指し、それらは断片化の際に、そのセットの全ての等重ラベルに対して同じ構造を有する特定の断片を放出し、その特定の断片は、等重ラベル中の同位元素の特異的分布に起因して、そのセット中の個々の等重ラベル間で質量が異なる。等重ラベルは一般的に、比較的小さい断片であるレポーター基(RG)及びバランス基(BG)を有する。一セットの等重ラベルの「合成質量」は、等重ラベルのそのセットのレポーター基及びバランス基の全質量を指す。
"レポーター基(RG)"という用語は、衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation:CID)に応じて強いシグニチャイオン(signature ion)を生成する等重ラベルの一部を指す。レポーター基の解放に応じて生成される典型的な断片は、対応する等重ラベルをつけられたポリペプチドを定量するために用いられる。一般的に、この断片イオンは、MSスペクトラムの低質量領域に現れて、他の断片イオンは一般に発見されない。
"バランス基(BG)"という本明細書で用いられる用語は、等重ラベルの一部を指し、それは、レポーター基とバランス基との合成質量が一つのセットの異なる等重ラベルで一定であることを保証するために、特定の補償数の同位元素を含む。バランス基は、CIDに応じてラベルから放出されるか又は放出されない。
本明細書で用いられる用語"タンパク質/ペプチド反応性基"(PRG)は、化合物上の化学官能基を指し、タンパク質又はペプチドのアミノ酸上の官能基と反応することが可能であり、そのような化合物のアミノ酸への結合(非共有結合又は共有結合)をもたらす。一般的に、ラベリング試剤はPRGを有し、それによって、ペプチド又はタンパク質上の官能基とのPRGの相互作用に応じて、ラベルはそれらに結合される。
"官能基"という本明細書で用いられる用語は、化学化合物への結合(一般に共有結合)のために用いられることができるアミノ酸上の化学官能基を指す。官能基は、アミノ酸の側鎖上に、又はポリペプチド若しくはペプチドのN末端若しくはC末端上に存在することができる。この用語は、ペプチド又はポリペプチド上に自然に存在する官能基と、例えばタンパク質改質剤を用いた化学反応を介して導入される官能基の両方を包含する。
本発明の方法は、質量スペクトル分析レベルでの二つ以上のサンプルにおけるタンパク質分解処理現象の正確な比較を可能にし、それによって、これらのサンプル中で生成される最小限の数のペプチドが、価値あるデータを失わずに分析されることを必要とする。タンパク質切断とN末端ペプチドの選択の組み合わせは、元のサンプルの各々のポリペプチドが一つのN末端ペプチドによって表されるプールされたサンプルに分析を制限する。
本発明は、二つ以上のサンプル間のタンパク質分解における差を検出する方法を目的とする。一般に、サンプルは哺乳類起源である。しかしながら、他の生体が、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、線虫、S.ポンベ又はS.セレビシエのようなモデル生体中のタンパク質分解酵素及びタンパク質分解酵素阻害物質の遺伝子を例えば不活性化する又は過剰発現させることによって、タンパク質分解処理を検査するために用いられることができる。特定の実施の形態において、サンプルは、組織サンプル又は組織サンプルからの培養細胞株である。他の実施の形態において、サンプルは、血液(例えば血漿又は血清)、唾液、尿、乳頭吸引液、管洗浄液、汗、腫瘍滲出液、関節体液(例えば滑液)、炎症体液、涙液、精液及び膣液のような生体流体である。
特定の実施の形態において、サンプルは、ヘビ、サソリなどからの毒と接触した哺乳類起源のサンプルである。
更なる特定の実施の形態において、サンプルは、遺伝子が形質転換されて、活性タンパク質分解酵素、不活化タンパク質分解酵素、活性タンパク質分解酵素阻害物質又は不活化タンパク質分解酵素阻害物質を符号化する、哺乳類起源のサンプルである。
以下において、「サンプル」は一般的に、特定の起源の物質を含む非精製タンパク質又は精製タンパク質のいずれかを指す。そのようなサンプルは、本発明では、一つ以上のタンパク質を含むことができる。説明を単純化するために、一般的にサンプル中の「タンパク質」と呼ぶ。これは、本発明の方法を、一つのタンパク質のみを含むサンプルの分析に制限することを意図しない。反対に、本発明は、複合サンプルの分析のために本発明の方法を使用することを想定し、それによって、各々のサンプル中の異なるタンパク質の存在及びタンパク質分解処理が、一つの分析内で比較されることができる。
本発明の方法及びツールは、タンパク質サンプルの分析に関する。上記のように、"サンプル"という本願明細書において用いられる用語は、本発明の方法を実行する前に任意の処理ステップを含むこと又は除外することを必ずしも意図しない。サンプルは、粗い未処理のサンプル、抽出されたタンパク画分、精製されたタンパク画分などであることができる。
一つの実施の形態によれば、タンパク質サンプルは、豊富タンパク質の免疫除去によって予め処理されている。
サンプルの調製は調査される生物体、組織又は器官によって異なるが、標準的な手順が通常、利用可能であり、エキスパートによって知られている。哺乳類の及び人のタンパク質サンプルに関して、それは、培養細胞の単離、レーザ微小解剖した細胞、身体組織、体液又は関係する他の重要なサンプルを包含する。サンプル中のタンパク質分画に関して、細胞溶解は、細胞分画及びタンパク質精製における第一段階である。物理的方法、酵素による方法及び界面活性剤に基づく方法を含む多くの技術が、細胞の破壊のために利用可能である。歴史的に、物理的溶解が、細胞破壊のために選択された方法であった(均質化、浸透圧溶解、超音波細胞破壊)。しかしながら、それはしばしば高価な、扱いにくい機器を必要とし、時には、(例えばきつい均質化乳棒と比較してゆるい)装置中の変動のために、繰り返すのが難しいプロトコルを必要とする。近年では、界面活性剤に基づく溶解が、使いやすさ、低コスト及び効率的なプロトコルによって、非常に普及した。
哺乳類の細胞は、原形質薄膜(細胞含有物を細胞外の環境から分離する障壁を形成するタンパク質脂質二重層)を持つ。原形質膜を構成する脂質は両親媒性であり、閉じた二分子シートを形成するように自発的に会合する親水性及び疎水性部分を持つ。膜タンパク質は脂質二重層中に埋め込まれて、疎水性コアにまたがる一つ以上の領域の近傍の場所に保持される。加えて、周辺タンパク質は、必須膜タンパク質との又は極性脂質頭部基との相互作用によって、二重層の内側又は外側の面を結合する。脂質及びタンパク質含有量の性質は、細胞の種類によって変化する。明確に、細胞の破壊のために選択される技術は、物理的であっても界面活性剤に基づくものであっても、調査されている細胞又は組織の起源及びそれらの外層を破壊する際の本来の容易性又は困難を考慮に入れなければならない。加えて、本方法は、処理される材料の量及び意図されたダウンストリームアプリケーションに適合しなければならない。
特定の実施の形態において、タンパク質抽出は、また、異なる区画に由来する細胞タンパク質(例えば細胞外のタンパク質、膜タンパク質、サイトゾルタンパク質、核タンパク質、糸粒体のタンパク質)の事前分画を含む。他の事前分画方法は、物理的特性(例えば等電位点、電荷及び分子重量)に関してタンパク質を分離する。
特定の実施の形態によれば、試剤又はタンパク質分解酵素への最適なアクセスのためにタンパク質を変性させるために、サンプルは、適切な作用剤(例えば塩化グアニジウム、尿素、酸(例えば0.1 % trifluoric酸)、塩基(例えば50%ピリジン)及びイオン性又は非イオン性界面活性剤)を用いて、ラベリング又は切断の前に前処理される。
本発明の方法の異なる実施の形態において用いられる試剤に応じて、チオール反応試剤によってタンパク質中のシステイン残基を削減及び修飾することが想定されることができる。システインを特異的に修飾するために広く用いられる試剤は、ヨードアセトアミド又はビニルピリジンである。
本発明の第1の態様は、二つ以上のサンプル中のタンパク質切断現象を同時に分析するための方法を提供する。本発明の方法は、サンプル中に存在するタンパク質の第一級アミンの修飾、タンパク質の切断及び生成されたペプチドのC末端の同時のラベリング、N末端ペプチドの単離、N末端ペプチドの精製、並びに最終的なペプチドの分別MS分析のステップを有する。
したがって、本発明の方法は、タンパク質のN末端の第一級アミン及びサンプル中に存在するタンパク質中のリシンの側鎖のアミンが修飾されるステップを有する。これは、アミンに特異的なタンパク質反応性基を有する化合物にサンプルを接触させることによって保証される。そのような試剤は、可逆的又は非可逆的にアミンに結合することができ、それによって、アミン反応性試剤に対してアミン基を利用できなくする。以下に詳細に説明されるようにアミン基に関するN末端ペプチドの選択が実行されることができる前に、タンパク質中の全ての第一級アミンが修飾されていることを必要とするので、このステップは重要である。サンプル中のタンパク質の自由なアミン基の修飾の結果として、サンプルは、(上述の)生体外での修飾の結果として、又はその生体外での修飾ステップ前にブロックされたN末端としてのサンプル中でのそれらの存在によって、そのN末端が占有されるペプチドのみを含む。
一実施例において、第一級アミンの修飾は、サンプル中のタンパク質のこれらの官能基を単に除去するために実行される。この文脈における適切な修飾試剤は、後述されるようなアミン反応性試剤である。
アミン反応性試剤は、カルバミン酸塩(メチル、エチル、t-ブチル(例えば、Boc)及び9-フルオレニルメチルカルバミン酸塩(例えば、Fmoc)アミドを含む)、環状イミド派生物、N-Alkyl及びN-Arylアミン、イミン派生物並びにエナミン派生物を含む。他のアミン反応性作用剤は、無水酢酸、ジ-t-ブチルdicarbonate(すなわち、Boc無水塩)、又は、反応性遊離アミンとの反応に応じて9-fluorenylniethoxyカルバミン酸塩を生成する9-fluorenylmethoxyカルボニル試薬(すなわち、Fmoc試剤)である。適切なFmoc試剤の例は、Fmoc-Cl、Fmoc-N3、Fmoc-O-benzotriazol-1-yl、Fmoc-O-succinimidyl及びFmoc-OC6F5を含む。
特定の実施の形態によれば、本発明の方法におけるアミノ末端の修飾ステップは、N末端の修飾に先立つ試剤によるリシン残留物の選択的な修飾を含む。リシンは、O-methyl isourea又はO-メチルイミダゾール及びその化学派生物(例えば、置換されたO-メチルイミダゾール)によって修飾されることができる。これらの試剤は、N末端グリシンを有するポリペプチドを除いて、遊離N末端アミノ基に影響を及ぼさずに、リシン残留物と選択的に反応する。
いくつかのこれらのリシン修飾作用剤は、リシン特異的タンパク質分解酵素(例えばトリプシン)による酵素切断を防止し、これは、酵素切断ステップにおけるタンパク質の切断を制限するために重要な場合がある。
本発明の方法の特定の実施の形態において、サンプル中のタンパク質に存在する第一級アミンを修飾するステップは、ラベリングステップと結合される。この実施例によれば、第一級アミンの修飾は、ペプチドのN末端における他のラベルの組込みを保証するために利用される。したがって、タンパク質分解酵素誘起ラベリングステップと組み合わせて、第一級アミンの修飾によるラベリングは、サンプル中の(少なくともいくつかの)ペプチドの二重ラベリングをもたらす。
特に、本発明との関連でペプチドのラベリングに適しているラベルは、等重ラベルである(Ross et al. (2004) Mol. Cell. Proteomics 3, 1154-1169 及び WO2004070352)。
等重ラベリングのコンセプトは図1において例証される。等重ラベリング試剤は、本明細書において定義されるように、レポーター基(RG)、バランス基(BG)及びタンパク質/ペプチド反応性基(PRG)を有する。図1で示される実施の形態において、完成した等重ラベリング試剤は、N-メチルピペラジンに基づくレポーター基、カルボニル基である質量バランス基、及びNHSエステルであるアミン反応性基のタンパク質/ペプチド反応性基から成る。レポーター基の質量はセット内の各々の等重ラベルに対して固有であるが、それぞれの等重ラベルのレポーター基とバランス基の質量全体は一定に保たれる。特定の実施の形態によれば、これは、図1Aに示されるように、13C、15N及び18O原子による分別同位体濃縮を用いることにより保証される。図1に示される等重ラベルは、市販されており、アミン基への4つの異なるラベルの導入を可能にする。
異なる等重試剤の同一の構造からみて、リング中の濃縮された中核の数及び位置は、クロマトグラフィ又はMS動作に影響しない。このラベリング試剤のアミン特異的反応性基が、ペプチド中のアミン官能基(リシンのN末端又はアミン基)と反応すると、ラベルは、アミド結合を介してペプチドに接続される。これらのアミド結合は、例えばMS/MS分析におけるCIDにさらされると、主鎖ペプチド結合に同様に分解する。図1に示される例において、アミド結合の断片化の後、バランス(カルボニル基)部分は失われる(ニュートラルロス)が、電荷はレポーター基断片によって保持される。括弧中の数は、分子の各々のセクション中の豊かにされた中核(enriched centre)の数を示す。
図3のパートBは、4つの異なるレポーター基質量を有する4つの等重ラベリング試剤を達成するために用いられるリポータ基及びバランス基内の同位元素分布の違いを示す。各々が等重ラベリング試剤のセットの異なるメンバーによってラベル付けされた同一のペプチドの混合物は、MSにおいて単一の未分解の前駆イオンとして現れる(同一のm/z)。CIDの後、4つのレポーター基イオンは、異なる質量(114-117Da)として現れる。全ての他の配列情報を与える断片イオン(b-, y-など)は等重のままであり、それらの個々のイオン電流信号(信号の強さ)は加法的である。これは、N末端及びリシン側鎖の両方においてラベル付けされるトリプシンペプチド、並びに、トリプシンによる不完全な切断に起因する内部リシン残留物を含むペプチドにも当てはまる。
したがって、本発明の二重ラベリング方法は、MS/MS分析において、対応するリポータイオンの相対的な強度から推論されることができるので、区別してラベル付けされたペプチドの相対的な濃度を決定することを可能にする。したがって、ICAT及び同様の質量差ラベリング方式とは対照的に、定量化は、MSではなくMS/MSステージで実行される。
ペプチドの第一級アミンによるラベリングは、ペプチド中に存在するN末端及び内部リシンのアミンの両方を標的とする。一実施例によれば、本発明の二重ラベリング方法は、ラベリングステップ前の内部アミン基の修飾ステップを含まず、したがって、第一級アミンを通した等重ラベリングは、タンパク質のN末端及びリシン側鎖の両方が修飾されることを必要とする。したがって、リシン残留物を含むN末端ペプチドは、複数の等重ラベルを持つ。
あるいは本発明は、ラベリングステップの前に、リシンが修飾されるようにサンプルが前処理される(O-methylisoureaのような成分による前処理)、二重ラベリング方法を想定する。上で述べたように、O-methyliosureaは、N末端にGlycineを有するポリペプチドを除いて、N末端アミンと反応しない。その後、それぞれのサンプル中の残りの遊離N末端は、アミン反応性等重ラベルによって区別してラベル付けされる。等重ラベリング試剤は、ブロックされた(即ち既に修飾された)N末端を有するタンパク質とは反応しない。ブロックされたN末端は、自然に生じるブロックされたN末端であることができ、又は(例えば尿素を用いた)サンプル処理の間に生成されることができる。最も頻度が高い修飾(N-アセチル化)は、酵素(アシル化ペプチドヒドロラーゼ)によって又は化学的方法(アルコール分解脱アセチル)によって除去されることができる。一方、遊離N末端のみにラベル付けすることで、サンプルの複雑性がさらに低減され、有利な特性を持つことができる。したがって、アッセイ及びサンプルの種類に応じて、方法は、ブロックされたN末端を非ブロック化するステップ及び/若しくはN末端修飾を除去するステップを有すること、又はN末端ラベリングがそのようなサンプルに実行されることが想定される。
本発明の方法は、単一のステップにおいてサンプル中のタンパク質が酵素によって切断されて同時に同位体でラベル付けされるステップを有する点で特徴づけられる。実際、伝統的にMS分析において実行される酵素切断ステップとラベリングステップが、多重分析をさらに合理化するために組み合わせられることができることが見出された。
特定の実施の形態によれば、酵素切断のステップは、水(H2 16O)又はH2 18Oの存在下でのトリプシンによるサンプルの処理によって実行される。トリプシンの介在した18O組込みに関する詳細は、例えば、"Heller et al. (2003) J. Am. Soc. Mass Spectrom. 14(7), 704-718"によって示される。トリプシンによる酵素切断に応じて、2つのO原子が、新たに生成されたペプチドのC末端中に組み込まれる。したがって、H2 18Oの存在下でのトリプシンによる酵素切断の際に、2つの18O原子が、新たに生成されたペプチドのC末端中に組み込まれる(図2を参照)。もちろん、C末端リシン又はアルギニンを含まないタンパク質は、組み込まれた18O原子を持たないC末端ペプチドを生成し、サンプル中の全てのc末端ペプチドが、同位体でラベル付けされるというわけではない。しかしながらこれは、タンパク質のN末端ペプチドのみが最終的に分析されるので、本発明の方法にとって重要ではない。
本発明の方法では、切断ステップとラベリングステップとを組み合わせることにより、2つの18O又は2つのOのいずれかが区別して導入されることによって、結果として生じるペプチドは、ペプチドへの更なる基の取り付けなしで、質量差4で、同位体によってラベル付けされる。
他の実施例によれば、トリプシン以外の酵素(例えばLys-C又はGlu-C)が用いられる。
さらに他の実施の形態によれば、タンパク質を切断するステップは、ペプチジルPeptidyl-Lys-メタロエンドペプチダーゼ(Lys-N)を用いて実行される。Lys-Nによる切断は、結果として生じるペプチドへの唯一つの18O原子の組込みをもたらし、ラベル付けされた種とラベル付けされていない種との間に2の質量差を生じさせる。これは、この酵素が、ペプチドへの1つ又は2つの18O原子の組込みから生じる同位体でラベル付けされたペプチドの混合物を生成しないという利点を持つ。また、Asp-N及びキモトリプシンは、切断の際に一つの18Oを組み込む(Schnolzer et al. (1996) Electrophoresis 17, 945-953)。
本発明の方法で用いられる酵素の介在した同位体ラベリングは、切断されたペプチドの新たに生成されるC末端に対して特異的である。Asp及びGluのカルボキシル基は修飾されていない。したがって、従来技術の方法に反して、同位体ラベリングの前に更なる方法ステップでAsp及びGluの官能基を修飾する必要はない。
本発明の方法は、少なくとも2つの異なるサンプルを、各々H2O又はH2 18Oの存在下で切断するステップを有する。本発明の方法が、例えば上述のような等重ラベルによる更なるラベリングの使用によって、より高い程度の多重化を想定する場合、異なるサンプル中のタンパク質に由来するペプチドの区別を可能にするために、等重ラベルと18O又はOとの固有の組み合わせが各々のサンプル中のペプチドに与えられるように、18O又はOのいずれかによるラベリングのためのサンプルが選択される。
これは、図4に示される。4つの異なる(市販の)iTRAQラベルを用いることにより、2セットの4つのサンプルが、個々のiTRAQラベルによってラベル付けされることができる。4つのサンプルの各々のセットは、切断の前にプールされることができ、その後、4つのサンプルの一方のセットは切断の間に18Oによってラベル付けされ、他方は水の存在下で切断される。このようにして、8つの異なるサンプルの区別ラベリングが実行され、一つのプールされたサンプルとして分析されることができる。最近、市販のiTRAQラベリング試剤のセットは8つに増え、更に大きな多重化を可能にした。
本発明のN末端ブロッキングステップ並びに同時に行われる切断及びラベリングステップの結果、サンプル中に存在するタンパク質の全てのN末端ペプチドは、O又は18O同位体のいずれかを有する。加えて、全ての内部ペプチド及びC末端ペプチドが遊離N末端を持つ一方で、全てのN末端ペプチドは、サンプル中でそれ自体ブロックされるので、又は、修飾ステップ(及びオプションとしてのラベリングステップ)の結果として、修飾されたN末端を持つ。
本発明の方法は、単離ステップをさらに含み、それにより、サンプル中のタンパク質の内部ペプチド及びC末端ペプチドは、切断されたタンパク質のN末端ペプチドから除去される。異なるサンプルは別々に処理されることができるが、一般に、アッセイの全てのサンプルはN末端ペプチドを単離するステップの前にプールされる。
一つの実施の形態によれば、遊離N末端を備えた内部ペプチド及びC末端ペプチドは、第一級アミンに対して特異的であるマトリクスに結合され、又はそれと反応する。この例は、磁気ビーズ、セファロース又はアガロース樹脂などの上に提供されるNi2+キレート化NTA(ニトリロ三酢酸)物質である。
他の実施の形態によれば、内部ペプチド及びC末端ペプチドのN末端は、親和性タグと反応する。親和性タグの例は以下を含む。
- d-ビオチン又は構造的に修飾されたビオチンに基づく試剤 (d-イミノビオチンを含む)
- 1,2-ジオール。例えば、1,2-dihydroxyethane(HO-CH2-CH2-OH)、及び他の1,2-dihydroxyalkane(それらの環状のアルカン(例えば、アルキル又はアリールボロン酸又はボロン酸エステル(例えばphenyl-B(OH)2又はhexyl-B(OEthyl)2)に結合する(例えばアガロースのような支持体にアルキル又はアリール基を介して取り付けられる)1,2-dihydroxycyclohexane)を含む)
- マルトース結合タンパク質に、他の糖質/糖質結合タンパク質対に、より一般的には、親和性タグの上述の基準に従う任意のリガンド/リガンド結合タンパク質対に結合するマルトース
- 抗ジニトロフェニルIgGのような対応する抗ハプテン抗体に結合するハプテン(例えばジニトロフェニル基)。
- 遷移金属に結合するリガンド。例えば、オリゴマヒスチジン(いわゆる6His-タグ)はNi(II)に結合し、遷移金属CRは、特定の実施の形態において、樹脂結合キレート化遷移金属(例えばニトリロ三酢酸キレート化Ni(II)又はイミノ二酢酸キレート化Ni(II))の形で用いられる
- グルタチオン-S-転移酵素に結合するグルタチオン
本発明の方法の特定の実施の形態において、内部ペプチド及びC末端ペプチドは破棄されて、更なる分析には用いられない。したがって、これらの実施の形態において、マトリクスとのこれらのペプチドの可逆性の結合、置換リガンドにより親和性マトリクスから放出されることができる親和性タグ、又はタグとペプチドとの間に切断可能リンカーを有する親和性タグは必要ない。しかしながら、内部ペプチド及びC末端ペプチドの回収が考慮される場合、可逆性の結合、置換リガンド又は切断可能親和性タグが、オプションとして用いられる。
特定の実施の形態において、ペプチドサンプルからの内部ペプチド及びC末端ペプチドの除去に用いられる親和性タグは、ビオチンである。ビオチンをアミン基に結合するための試剤は、市販されており、例えば、succinimidyl D-biotin, 6-((biotinoyl)amino)hexanoic acid, succinimidyl ester 及び 6-((6-((biotinoyl)amino)hexanoyl)amino) hexanoic acid, succinimidyl esterを含む。ビオチン親和性タグをつけられたペプチドは、従来のアビジン親和性クロマトグラフィ又はストレプトアビジン親和性クロマトグラフィを介して、カラム又はビーズに結合される。使用上の注意は、例えばPierce (Rockville, IL)からのテクニカルデータシートに見つけることができる。
上記した分離方法において、N末端ペプチドは結合せず、非結合画分として回収されて、そして更なる分析のために間接的に選択的に単離される。
本発明の方法は、これらのサンプルの間の比較の精度を改善するために、区別してラベル付けされたサンプルの同時分析を提供する。したがって、本発明の方法は、分析用の異なるサンプルをプールするステップを有する。上記のように、区別してラベル付けされて切断されたタンパク質サンプルは、N末端ペプチドの選択的な単離の前にプールされることができる。あるいは、N末端ペプチドの選択的な単離は、個々の(又は部分的にプールされた)サンプルに実行され、N末端ペプチドの異なる画分はこの段階でプールされる。
本発明の方法は、一つ以上の分離ステップをさらに含み、それは、N末端ペプチドの単離の後、又は(必要に応じて)異なるN末端ペプチド画分をプールした後に、一般的に実行される。本発明では、同位体Oラベリング及びオプションの等重ラベリングの両方に関する区別ラベリングの性質は、ラベルの化学的構造が同じであることである。したがって、区別してラベル付けされたサンプルの各々に存在するラベルの化学的構造は同じであり、それは、異なって一重又は二重にラベル付けされた同一のペプチドの間に、(多次元)クロマトグラフィ技術における特性に有意な差を生み出さない。したがって、同じアミノ酸配列を有するラベル付けされたペプチドは、全く同じに振る舞い、同じ画分中にとどまる。
複合ペプチドサンプルの複数の画分への分離を可能にする適切な分離技術は当業者によって知られており、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィ、逆相HPLC、親和性クロマトグラフィなどを含む(但しこれらに限られない)。SDS PAGE、二次元ゲル電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィのような技術は、前の方法ステップにおいて単離された一般的に長さが限られるN端末ペプチドにとっては、若干適していない。
例えばタンパク質分解消化作用から得られるペプチドサンプルにとって、2次元LCアプローチは、分離のためにより適しており、そして自動化及びスループットが大幅に優れている。液体クロマトグラフィによってペプチド消化物を分離するためのいくつかの技術が説明されており、逆相(RP)-HPLC及び多次元的液体クロマトグラフィが含まれる。また、キャピラリー電気泳動法(CE)は、ペプチドの分離に適した方法である。
2次元LCは一般に、逆相カラムに直結されて一連のサイクルで動作するイオン交換カラム(通常、強陽イオン交換(strong cation exchange:SCX))を用いる。各々のサイクルにおいて、塩濃度は、ペプチドをそれらのイオン電荷によって逆相系に抽出するために、イオン交換カラムの中で増加する。本明細書において、ペプチドは、例えばCH3CNの勾配によって、疎水性に関して分離される。
多くのパラメータが、分解能及びその後LC-MSによって示されることができるタンパク質の数に影響する。通常、第1次元分離技術(SCX)と第2次元RP-HPLC分離アプローチとの間の「直結」構成が、サンプル分画のために準備される。イオン交換クロマトグラフィは、増加する塩濃度による階段的溶出法によって、又は塩の勾配によって、実行されることができる。一般的にSCXは、SCXクロマトグラフィの間の疎水性相互作用を最小化するために、例えば最大30%のアセトニトリルの存在下で実行される。例えばC18カラムでの逆相クロマトグラフィの前に、acetontrileのような有機溶媒は除去され、又は例えば蒸発によって大幅に低減される。
本発明の方法は、異なるサンプル中の分別処理が行われたペプチドを識別するステップをさらに含む。この識別ステップは、(MS又はMS/MSにおいて)サンプル中のペプチドの他と異なる質量を検出し、その配列を決定することによって保証される。ペプチドの配列は、識別されたペプチドのMS/MS分析で生成される情報に基づいて再構成されることができる。したがって、本発明の方法は、MS及びMS/MSにおいて、ペプチド又は二重にラベル付けされたペプチドを含むペプチド画分を分析するステップを有する。
以下は、MS及びMS/MSにおいて得られる情報がどのようにサンプル中のタンパク質の異なるタンパク質分解処理に関する情報を得るために用いられることができるかについて記述する。
本明細書において詳述されるように、区別して同位体でラベル付けされたサンプルのプールから単離されたN末端ペプチドの質量スペクトロメータで生成されるスペクトラムは、2つのサンプル又は2セットのサンプルの同位体ラベリング(16O対18O)の結果として、(用いられた酵素によって決まる)2又は4の特徴的な質量差を有する一対のピークを原則として含む。2つのサンプルのみが関与する場合、分析される2つのサンプル中のこのN末端ペプチドに対応するタンパク質のタンパク質分解処理又は(タンパク質分解処理の直接的又は間接的な結果としての)発現差異に起因して、一つのピークのみが存在する場合がある。これは以下で詳述される。
MSスペクトラム中のペプチドの同位体のうちの1つの欠如は、異なる理由を持つ場合がある。
第一に、それは、2つのサンプル中のタンパク質の生体内での処理差異によって引き起こされる場合がある。処理差異が存在する場合、MSにピークを生成するペプチドは、処理の性質に応じて異なる。表1は、理論的なペプチドの異なるオプションを例証する。未処理の制御タンパク質の結果として生じるN末端ペプチド(下記の表1の(1)を参照)、N末端ペプチドにおいて処理されるタンパク質(トリプシンによる切断のN末端化。表1の(2)を参照)、トリプシンに対する切断部位でもあるアミノ酸のところで処理されるタンパク質(表1の(3)を参照)、及びトリプシンによる切断の際に内部ペプチド内である場所で処理されるタンパク質(表1の(4)を参照)が提供される。この例において、未処理の制御タンパク質は水の存在下で切断され、(2)、(3)又は(4)のいずれかを含む実験サンプルはH2 18Oの存在下でトリプシンによって切断される。
表1は、処理されていないタンパク質(1)又はそのタンパク質中の異なる位置で処理されたタンパク質(2, 3, 4)から生じたN末端ペプチドの同定を示す。処理の位置は、トリプシン切断によって生成されるペプチドと関連して定められ、すなわち、N末端ペプチド(A)内、内部ペプチド(B)若しくは(C)内、又はC末端ペプチド(D)内である。T1、T2及びT3は、これらのペプチドを分離するトリプシン切断位置(Lys又はArg)に対応する。Y及びZは、トリプシンペプチドの中のタンパク質分解生体内処理のための仮定的な部位である。#は、N末端修飾である。16O及び18Oはそれぞれ通常の水及びH2 18Oによる同位体ラベリングを示す。処理がアミノ酸Y又はZの場所で発生する場合、結果として生じるペプチドのC末端はトリプシン切断の結果として生成されず、18Oは組み込まれない。同様に、タンパク質のC末端は、トリプシン切断によって生成されず、したがって、18O同位体を組み込まない。処理の結果として、ペプチドA及びBはそれぞれ、A'及びA''、並びにB'及びB''に分割される。Aは、異なる条件の下で発生するペプチドのリストである。Bは、(A)の条件に対応する異なるサンプルをプールすることによりMSで生成されるピークを示し、各々のコラムは、同位体ペプチドに対応するピークの領域を示す。
Figure 2010508503
Figure 2010508503
表1に示されるそれぞれの状況が、以下で簡潔に解説される。
第一の状況において、タンパク質は、一つのサンプル(表1の(1)を参照)では処理されていないが、他のサンプル(表1の(2)を参照)では、切断/ラベリングステップのために第1の切断可能アミノ酸T1をN末端化するように位置(Y)において生体内で処理されている。プーリング及びクロマトグラフィの後に生成される一つのMS信号は、無傷のタンパク質のN末端ペプチド(A)に、又は、(A)内の処理から生じるN末端(A')若しくは新たに生成されたN末端(A")に対応することができる。そのC末端が、H2 18Oの存在下での切断によってではなく、処理によって生成されるので、ペプチドA'は同位体でラベル付けされない(ここでYはトリプシンの切断部位ではないと仮定する)。
(2)に示される処理の後に、(A)の処理から生じるペプチド(A')が依然として実際に存在する可能性は低い(特に、その処理が、アミノペプチダーゼ若しくはジペプチターゼや、5個若しくは10個のアミノ酸又はそれ以下のペプチドにN末端化切断する他の酵素の結果である場合)ことに、留意すべきである。
第二の状況において、タンパク質は、一つのサンプル(1)では処理されておらず、他のサンプル(表1の(3)を参照)では、切断/ラベリングステップのための切断可能アミノ酸である位置T1で処理されている。この場合にはまた、処理されたペプチドAは同位体でラベル付けされ、ペプチド(A)は、プーリング及びクロマトグラフィ後のMSスペクトラム中でその2つの同位体形で現れる。MSスペクトラム中に認められる一つのピークは、処理されたタンパク質の新規なN末端ペプチドBに対応する。
第三の状況において、タンパク質は、一つのサンプル(1)では処理されておらず、他のサンプル(表1及び図3の(4)を参照)では、位置Zにおける内部ペプチド(B)中で処理される。ペプチド(B)の被処理部分、C末端ペプチドとして振舞うペプチド(B')は、N末端ペプチドを単離するステップの間に破棄される。
プーリング及びクロマトグラフィ後に現れる一つのMS信号は、被処理タンパク質のN末端ペプチド(B'')に対応する。
表1は、タンパク質のN末端近傍の内部ペプチド中の生体内処理を示す。しかしながらこの処理は、多くのタンパク質において、N末端からさらに離れたところでも発生することができる。例えば、FurinによるVan Willebrand因子の処理は、2813個のアミノ酸からなるタンパク質中の位置763で発生する。
理論上は、2つのサンプル間で異なって処理される各々のタンパク質は、MSにおいて、N末端ペプチドが、未処理のタンパク質からか、或いはタンパク質の処理の結果として生成された新規なN末端からかを明らかにするはずである。新規なN末端ペプチドの配列決定は、また、タンパク質中の処理の部位を明らかにする。切断部位周辺のアミノ酸配列は、特定のタンパク質分解酵素によって認識されるモチーフを含む可能性がある。このようにして、切断を引き起こしたタンパク質分解酵素(の種類)についての情報を得ることができる。
あるいは、タンパク質分解処理は、処理されたタンパク質の劣化につながり、このサンプル中の処理されたタンパク質に対して、N末端ペプチドが全く回収されない可能性がある。非処理タンパク質のN末端の一つのピークがMS中に現れる。この状況において、分析は、処理の違いを示すが、タンパク質中のどの位置で処理が発生したのかは明らかにしない。
さらに第3の可能性として、サンプルのうちの1つにおけるN末端ペプチドの欠如は、処理のダウンストリーム効果によって引き起こされる。例えば、タンパク質の非効率的な処理は、経路中の不十分な信号伝達につながり、その後、その経路によって制御されている遺伝子の転写及び翻訳の低下又は欠如につながる可能性がある。
未知のタンパク質が分析される場合、サンプルのうちの1つの中のN末端ペプチド内の突然変異によって、又は他のATG(通常の開始因子遺伝子のダウンストリーム又はアップストリーム)の使用に結びつく代わりのスプライシングによって、一つのN末端ペプチドのみの存在が引き起こされることが除外されることはできない。これらの場合において、クロマトグラフィの間に異なる画分として抽出され、したがってMSによって一つの画分中で分析されない2つのサンプル中に、異なるN末端ペプチドが存在する。
あるいは、一つのサンプルのタンパク質のN末端ペプチドは、他の(又は制御)サンプルのN末端ペプチドと比べて少ない又は多い量で存在する場合がある。この状況において、この違いは、異なる処理に起因する安定性の違い、シェディグ(shedding)の違い、又は、上記で説明されるようなタンパク質分解処理のダウンストリーム効果による遺伝子発現の違いによって説明されることができる。
一方が18Oによってラベル付けされる2つのサンプルのみを使用することは、特定の利点を持つ。精製を受けるペプチドのプールは、サンプル中の全てのタンパク質のN末端ペプチドを含む。そして、異なるタンパク質及びペプチドは、MSの前に画分に分離される。しかしながら、これらのタンパク質のうちの多くは、処理されないか、両方のサンプルにおいて同一の方法で処理される。これらの(未処理の)タンパク質の全てのN末端ペプチドは、だいたい同じ強度の2つのピークとしてMSに現れて、更なる分析で無視されることができる。しかしながら、この方法の目的が特定のタンパク質の既知の処理を確認することである場合、具体的に、処理されたタンパク質の無傷の予測されたN末端ペプチドの質量に対応するピークを分析することができる。(区別して同位体でラベル付けされたペプチドに対応する)2つのピークがMSの強度に有意な違い(同位体でラベル付けされたペプチドのピーク間の比が0.5より小さいか1.5より大きい)を持ち、又は、この2つのピークのうちの1つがない(又は事実上ない、すなわち同位体でラベル付けされたペプチドのピーク間の比が、0.1より小さいか10より大きい、或いは0.05より小さいか20より大きい)それらのペプチド画分のみが、ペプチドの処理差異を示し、ひいては更なる分析のために重要である。したがって、本発明の特定の実施の形態は、2つのサンプルの同時分析のための方法を包含し、切断及び同時に生じる同位体ラベルによるラベリングの後、サンプルはプールされ、N末端ペプチドは、単離及び分離されてMSによって分析され、MS中の重要なペプチドの選択は、同位体でラベル付けされたペプチドのピーク間の比が0.5より小さいか1.5より大きいピークを識別することを含む。
2つ以上のサンプルの同時分析を可能にするように、二重ラベリング(すなわち等重ラベルと同位体Oラベルの組み合わせ)が実行される場合、MS分析は単に、同位体でラベル付けされたタンパク質の2つのグループを区別し、これらのグループの各々は、等重ラベルによって区別してラベル付けされたサンプルからのタンパク質を含む。したがって、一つの同位体に対応する一つのピークのみがMSで観測される可能性は、(それが、その同位体でラベル付けされた全てのサンプルにおいてそのタンパク質の処理が影響を受けることを必要とするので)小さい。しかし、MSにおいて生成される2つのピーク間の相対的な強度の違いは、一つの同位体形のペプチドのうちの1つが不在であるか、より低い濃度で存在するという事実を示す。一方、さらに多数のプールされたサンプルのMS分析において、MSピークは同じ同位体によってラベル付けされたそれぞれのペプチドの累積的な強度を提供するに過ぎないので、等しい強度の2つの同位体ペプチドの存在は、重要なタンパク質の処理がサンプルのいずれにおいても発生しなかったことを意味しない。個々の違いは、他のサンプルによって補正されることができ、又は、各々の同位体のサンプルが同じように影響を受ける場合には、気づかれない可能性がある。そのような現象は、実験の設計によって、より詳しくは各々のサンプルのための同位体ラベルの選択によって、ある程度は回避されることができる。例えば、タンパク質分解酵素が癌に関連があると知られている場合、一つの同位体は、冒された患者からのサンプル、及び、タンパク質分解酵素を過剰発現させる構造が形質移入された健康な細胞の細胞培養に、ラベル付けするために用いられる。他の同位体は、健康な人からの組織、及び、対照としてのタンパク質分解酵素の不活性型をもつ構造が形質移入された健康な細胞の細胞培養に、ラベル付けするために用いられる。この設計によって、異なるタンパク質分解処理が発生した場合に、MSにおける違いがより観測されやすい。
二重ラベリングが実行される場合、異なる同位体でラベル付けされたサンプルに対応するMSの異なるピークは、区別して同位体でラベル付けされたペプチドをさらに区別するために、MS/MSで各々さらに分析される。MS/MSにおいて、CIDによって生成される異なるレポーター基のスペクトラムが生成される。ペプチドを分解する他の適切な方法は、CAD(衝突活性化解離)、ETD(電子移動解離)、ECD(電子捕獲解離)、IRMPD(赤外線多光子解離)及びBIRD(黒体赤外線照射性解離)を含む。
特定のペプチドのレポーター基に対応するピークの欠如又は濃度の違いは、また、前述したように、そのペプチドが由来するサンプルにおける異なる処理、異なる安定性及び異なるダウンストリーム効果を示すことができる。
その際、ブロックされたN末端に由来するN末端ペプチドは、そのN末端において等重ラベルによってラベル付けされず、酵素の介在した18O組込みに応じて同位体ラベルを持つだけであることに注意すべきである。区別して同位体でラベル付けされたペプチドはMSの間に分離される。しかしながら、その後のMS/MSにおいて、レポーター基は識別されない。
タンパク質の切断パターンの変化の分析は、変化したタンパク質分解を病気に関連づける際に有益である。例えば、臨床的アッセイにおいて、例えば、アスパラギン酸、システイン、金属、セリン/スレオニン又は他の種類のタンパク質分解酵素による任意の特定の種類のタンパク質分解切断は、質量スペクトル分析でN末端ペプチドを識別することによって、本明細書において記載されるように決定されることができ、時間にわたって観測される切断パターンの任意の変化が調査されることができる。
本発明の方法は、バイオマーカを識別するため、特定のタンパク質分解酵素阻害物質に対する治療上の反応をモニタリングするため、前臨床試験において薬剤候補を選択及びスクリーニングするため、臨床薬剤開発において患者及び彼らの反応を選択するため、特定のタンパク質分解酵素のためのペプチド阻害物質を設計するため、新規なタンパク質分解酵素を識別するため、及び疾患病因のメカニズムについての知識を得るために、適している。この方法はさらに、タンパク質分解劣化及びその後のペプチド生成をもたらす可能性がある遺伝子組み替えに起因する異常性タンパク質発現又は官能基を検出するために用いられることができる。
あるいは、本発明の方法は、サンプル中の選択されたタンパク質分解酵素(例えば、メタロプロテアーゼ)に対する基質のセットを探索するために用いられる。本願明細書において、原形質すなわち細胞抽出物がタンパク質分解酵素によって培養され、加水分解の部位が決定される。この情報は、特定の疾患における同じパターンを探すことを可能にし、そして、タンパク質分解酵素がその疾患において上方制御されることを示すためにサンプル中のペプチドの関連するパネルの測定値を用いることを可能にする。さらに、degradomeのペプチドに関する情報は、組織又は体液中の切断パターンを決定して、タンパク質分解酵素を識別するためにその情報を用いることによって、病的なサンプルの病理に注目するために用いられることができる。あるいは、本発明の方法は、特定の疾患又は状態において上方制御又は下方制御される一セットのタンパク質分解酵素を識別するために用いられる。
本発明は、異なるサンプル中のN末端ペプチドを(MS/MSによって)同時識別するため及び/又は(MS若しくはMS/MSによって)定量化するためのツール及び方法を提供する。より詳しくは、本発明の方法は、区別同位体ラベリング及びオプションの追加の等重ラベリングを用いるMS及びMS/MSにおける異なるサンプルからのタンパク質加水分解処理されたタンパク質の識別に関する。したがって、本発明の方法を実行するための装置は、一つ以上の質量分光機器を含む。
分光測定による質量測定は、検体の気相へのイオン化によって実行される。典型的な質量分光機器は3つのコンポーネントから成り、イオン源は関連する分子からイオンを生成し、質量アナライザはイオン化された分子の質量電荷比(m/z)を決定し、そして検出器は各々の個々のm/z値に対してイオンの数を記録及びカウントする。MSスペクトラム中の各々の特徴は、2つの値(m/z及び機器の検出器に達したイオンの数の測度)によって定められる。
分光器における質量分析のためのタンパク質又はペプチドのイオン化は、通常、Electro-Spray Ionisation(ESI)又はMatrix-Assisted Laser Desorption/Ionisation(MALDI)によって実行される。
ESIプロセスの間、検体は溶液から直接イオン化され、したがってESIは、液体クロマトグラフィ分離ツール(例えば逆相HPLC)にしばしば直接結合される。MALDIは、小さい有機分子の追加によって処理をより効率的にするために、レーザエネルギーを吸収するニッケイ酸のような小さい有機分子を混合された乾燥したサンプルをレーザパルスによって蒸発させる。MALDI-MSは通常、比較的単純なペプチド混合物を分析するために用いられ、一方、一体型液体クロマトグラフィMSシステム(LC-MS)は、複雑なサンプルの分析に好適である。
質量アナライザは、質量分光器のキーコンポーネントである。重要なパラメータは、感度、分解能及び質量精度である。5つの基本的な種類の質量アナライザが、プロテオミクスにおいて一般に用いられている。これらは、イオントラップ、飛行時間(Time-Of-Flight:TOF)、四重極、Orbitrap及びフーリエ変換イオンサイクロトロン(FTICR-MS)アナライザを含む。直列型MS即ちMS/MSが、時間において(イオントラップ)、及び位置において(例えばLTQ-FTICR、LTQ-Orbitrap、Q-TOF、TOF-TOF、トリプルクワッド及びハイブリッドトリプル四重極/線形イオントラップ(QTRAP)のような全てのハイブリッド機器)、実行されることができる。
本発明の方法は、一つ以上のペプチド分離ステップをさらに含む。したがって、本発明の方法を実行することに適した装置は、オプションとして、一つ以上の適切な、電気泳動機器のような分離機器、キャピラリー電気泳動(CE)機器、逆相(RP)HPLC機器及び/又は二次元液体クロマトグラフィ機器など(但しそれらに限定されない)のようなクロマトグラフィ機器を含むか又はそれらに接続される。
一実施例に従えば、本発明の装置(図5)は、同位体ラベリング(100')を用いた2つのタンパク質サンプルの分析に適しており、当該装置は、2つのサンプルソース(101)、修飾試剤のソース(104')を備えるタンパク質修飾ユニット(103')、対応する18O及び16Oソース(107)を備える切断及びラベリングユニット(105)、N末端ペプチド単離ユニット(106)、分離ユニット(108)、質量分光器ユニット(109)、及び読出しシステム(111)に結合される制御回路及びデータ分析ユニット(110)を有する。特定の実施の形態において、分離ユニット(108)は、2つの連続的に連結した分離システム(1108)及び(2108)を含み、例えば、(1108)は陽イオン交換クロマトグラフィシステムであり、分離システム(2108)は一般的にHPLC逆相システムである。質量分光器素子(109)は、MS分光器であることができるが、一般的に、新規のペプチド配列決定が実行されることができる同位体型を分離するMS/MS分光器である。MS/MS分析は、2つの基本的に異なる機器を用いて実行されることができる。第一の種類の機器において、MS/MS分析が実行されるイオントラップは、MSが実行される場合と同じイオントラップであるが、MS/MSは時間的に実行される(トラップが満たされ、全てのイオンは関係するイオンを除いて放出され、CIDが実行されて、断片イオンがスキャンされる)。第二の種類の機器(ハイブリッド機器(トリプルクワッド、q-tof、ltq-ftms、ltq-orbitrap))は場所的にMS/MSを分離し、例えば、元の選択は第一の質量分析器において実行され、断片は第二の質量分析器においてスキャンされる。この実施の形態による装置は、例えばサンプル溶解及び免疫除去が行われるサンプル調製ユニット(102)のような複数のオプションの素子をさらに有することができる。オプションとして、追加の修飾ユニットが対応する修飾試剤ソースと共に含まれ、それは、本明細書において記載されているように、アミン官能基内部リシンの修飾を可能にする。この修飾ユニットは、サンプルの修飾がタンパク質切断の前に行われるように配置される。
本発明の装置の別の実施例(100)が、二重ラベリングを用いたタンパク質サンプルの多重分析のために提供され(図5)、当該装置は、少なくとも2つのサンプルソース(101)、対応する第1ラベルソース(104)を備えた第1ラベリングユニット(103)、対応する第2ラベルソース(107)を備えた切断ユニット及び第2ラベリングユニット(105)、N末端ペプチド単離ユニット(106)、分離ユニット(108)、質量分光器ユニット(109)、並びに、読出しシステム(111)に結合される制御回路及びデータ分析ユニット(110)を含む。特定の実施の形態において、分離ユニット(108)は、2つの連続的に連結された分離システム(1108)及び(2108)を含み、例えば、(1108)は陽イオン交換クロマトグラフィシステムであり、分離システム(2108)は一般的にHPLC逆相システムである。質量分光器素子(109)は上述したようなMS/MS分光器であり、さらに本発明の二重ラベリング方法において、CIDに応じて生成される等重ラベルのレポーター基が、区別して検出される。この装置は、例えばサンプル溶解及び免疫除去が行われるサンプル調製ユニット(102)のような複数のオプションの素子をさらに有することができる。上で記載されている装置と同様に、リシンのアミン官能基の修飾のために追加の修飾ユニットが含まれる。
したがって、本発明の他の態様は、本発明の方法の実行に適した試剤及びそのような試剤を含んだキットの組み合わせを提供する。
一実施例によれば、この試剤は、二つ以上の等重ラベルとH2 18Oとのセットを含む。
オプションとして、適切な試剤と、N末端ペプチドを単離するステップを実行するための(選択的に使い捨てである)手段との両方を含むキットが提供される。後者の手段は、オプションとして、個々の又はプールされたサンプルからC末端ペプチド及び内部ペプチドの効率的な除去を可能にする使い捨ての固体相クロマトグラフィを含む。
本発明を実施する方法、システム、装置及びキットの他のアレンジメントは、当業者にとって明らかである。
好ましい実施の形態、特定の構造及び構成、そして物質が、本発明による装置に対して本願明細書において論じられたが、形状及び細部における様々な変更又は修正が、本発明の範囲及び精神を逸脱しない範囲でなされることができることが理解されるべきである。
N末端ペプチドの同位体ラベリング。
2つのタンパク質サンプル(1及び2)が、酢酸無水塩によってN末端及びリシン上で修飾される。一つのサンプルは、通常の水(16)の存在下でトリプシンによって消化される。他のサンプルは、重い18O同位体を有する水(18)の存在下で、トリプシンによって消化される。
両方のサンプルのペプチドはプールされる。内部ペプチド及びC末端ペプチド上の新たに生成されたN末端は、ビオチンによって修飾されて、アビジン親和性クロマトグラフィによって単離される。
N末端ペプチドは、イオン交換クロマトグラフィ及び逆相クロマトグラフィを受ける。各々のペプチド画分は、MSによって分析され、16O同位体及び18O同位体を有するペプチドが分離される。両方のピークの比が計算される。ペプチドの配列は、MS/MSによって決定される。その配列は、最終的なタンパク質分解処理を決定するために、配列データベースと比較される。
N末端ペプチドの等重/同位体二重ラベリング。
8つのサンプル(1〜8)が、サンプル中のタンパク質のN末端上で、4つの異なる等重ラベル(A〜D)によって(図4に示されるように)ラベル付けされる。ラベル付けされたサンプル1〜4及び5〜6がプールされる。一つのプール(サンプル1〜4)は、通常の水(16)の存在下でトリプシンによって消化される。他のプール(サンプル5〜6)は、重い18O同位体を有する水(18)の存在下で、トリプシンによって消化される。
ペプチドはビオチンによって修飾され、内部ペプチド及びC末端ペプチドは、アビジン親和性クロマトグラフィによって単離される。
全ての二重にラベル付けされたサンプルのN末端ペプチドはプールされて、イオン交換クロマトグラフィ及び逆相クロマトグラフィを受ける。各々のペプチド画分はMSによって分析され、16O同位体及び18O同位体を有するペプチドは分離される。その後、各々の同位体はMS/MSによって分析され、異なる等重形態はレポーター基を放出し、ペプチドの配列が決定される。それぞれのペプチドの相対的な濃度が、個々のレポーター基及び同位体から計算される。

Claims (16)

  1. 2つ以上の異なるサンプル間のタンパク質分解処理における違いを調査するための生体外における方法であって、
    a) 前記サンプルのタンパク質の、N末端のアミン及びリシンのアミンを修飾するステップ、
    b) 修飾されたタンパク質をペプチドへと切断し、同時に、O又は18Oのいずれかによって前記サンプルの各々にラベル付けするステップ、
    c) N末端ペプチドを単離するステップ、
    d) ステップ(b)の後にラベル付けされたサンプルをプールするか、ステップ(c)の単離されたN末端ペプチドをプールするステップ、
    e) N末端ペプチドにMSを受けさせるステップ、
    f) 更なる分析のために関連するペプチド画分を選択するステップ、並びに
    g) タンパク質分解処理によって生成されたペプチドを識別するステップ、
    を有する方法。
  2. ステップ(d)の後に、単離されたN末端ペプチドにペプチド分離ステップを受けさせるステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
  3. ステップ(a)において、前記修飾が、各々のサンプルにおいて、アミン反応性基を有する異なる等重ラベリング試剤によって実行される、請求項1に記載の方法。
  4. ステップ(b)における前記切断がトリプシンによって実行される請求項1に記載の方法。
  5. N末端ペプチドの前記単離が、内部ペプチド及びC末端ペプチドのN末端に親和性タグを共有結合し、親和性クロマトグラフィによって前記サンプルから前記内部ペプチド及びC末端ペプチドを除去することによって実行される、請求項1に記載の方法。
  6. ステップ(g)がMS/MSで前記識別されたタンパク質サンプルを分析することを含む請求項1に記載の方法。
  7. 2つのサンプルが用いられる場合、ステップ(f)における選択ステップは、同位体でラベル付けされたペプチドのピーク間の比が0.5より小さいか1.5より大きいピークを識別することからなる、請求項1に記載の方法。
  8. 2つのサンプルが用いられる場合、ステップ(f)における選択ステップは、同位体でラベル付けされたペプチドのピーク間の比が0.1より小さいか10より大きいピークを識別することからなる、請求項1に記載の方法。
  9. タンパク質分解切断部位の決定のための請求項1に記載の方法の使用。
  10. タンパク質分解処理のダウンストリーム効果の決定のための請求項1に記載の方法の使用。
  11. 一つ以上のタンパク質サンプルが腫瘍患者からの身体サンプルである、請求項1に記載の方法。
  12. 2つ以上の等重ラベリング試剤とH2 18Oとのセットを有する試剤のキット。
  13. 自由なN末端を有するポリペプチドを単離する手段をさらに有する請求項12に記載のキット。
  14. 同位体ラベリングを用いて2つのタンパク質サンプルを分析するための装置であって、2つのサンプルソース、修飾試剤のソースを備えたタンパク質修飾ユニット、ラベリング及びタンパク質切断ユニット及び対応するラベルソース、N末端ペプチド単離ユニット、分離ユニット、質量分光器ユニット、並びにデータ分析ユニットを有する装置。
  15. 二重ラベリングを用いたタンパク質サンプルの多重分析のための装置であって、少なくとも2つのサンプルソース、少なくとも2つのラベリング試剤のソースを備えたラベリングユニット、ラベリング及びタンパク質切断ユニット及び対応するラベリングソース、N末端ペプチド単離ユニット、分離ユニット、質量分光器ユニット並びにデータ分析ユニットを有する装置。
  16. サンプル調製ユニットをさらに有する請求項14又は請求項15に記載の装置。
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