本発明の課題は、これに関して改良されたスライドアンカーを提供することである。
冒頭で挙げた既知のスライドアンカーに基づいて、この課題は、本発明によれば、スライドボディ保持器内でスライドボディを収容するための各凹部が、アンカーバーの外表面に対して接線状に配置されており、さらに、各凹部の外側包絡面が、透孔の自由な横断面内へ予め定められた寸法で突出しており、かつ各スライドボディが、それに対応づけられた凹部の横断面を充填していることによって、解決される。「アンカーバーの外表面に対して接線状」という概念は、ここでは、凹部の外側包絡面がアンカーバーの外表面にのみ接するような、数学的な意味における正確な接線性ではなく、スライドボディを収容するように定められた凹部が、アンカーバーの外表面に関して、実質的に接線状に配置されていることを意味し、その配置において各凹部の外側包絡面はアンカーバーの中心長手軸に対して傾いて配置されており、その場合にアンカーバーの中心長手軸およびスライドボディを収容するための任意の凹部の中心長手軸の投影図において、これら2本の軸は互いに対して直交することができるが、そうである必要はない。従ってスライドボディを収容するための凹部の中心長手軸は、アンカーバーの中心長手軸と直角に交差する平面内に位置することができるが(その場合に、言及される軸は、上述した投影図において互いに直交する)、アンカーバーの中心長手軸に対して斜めの平面内に位置してもよい。
スライドアンカーの本発明に基づく形態は、一連の利点を有している。スライドボディ保持器内にスライドボディを収容するために設けられている各凹部の外側包絡面が、予め定められた寸法でスライド制御部材の透孔の自由な横断面内へ突出していることにより、この寸法を用いて、1つまたは複数のスライドボディが透孔を通って延びるアンカーバーを固定する締付け力を、極めて正確に前もって調節することができる。さらに、一度調節されたこの締付け力は、一度始動プロセスが行われた後に正確に再現可能に得ることができる。というのは、各スライドボディは、通常の許容誤差にいたるまで、それに対応づけられた凹部の横断面を充填するので、各スライドボディが透孔の自由な横断面内へ突出する、予め定められた寸法は、スライドアンカーの駆動中、特に駆動中にアンカーバーの、時間的に分離された複数のスライド相がもたらされる場合でも、変化しないからである。そして、場合によってはスライドするアンカーバーとスライド制御部材の間の力伝達は、効果的に解除される。というのは、凹部の横断面を充填するスライドボディに基づいて、スライドボディおよびスライドボディ保持器においては材料変形がもたらされず、アンカーバーのみにもたらされるからである。もちろんそのための前提は、−引用された従来技術においてそうであるように−スライドボディの材料硬度がアンカーバーのそれよりも大きいことである。
締付け力ないしブレークアウェイ力に影響する、他の影響量は、1つまたは複数のスライドボディおよびスライドボディ保持器の形状、スライドボディの数、アンカーバーと接触するその表面の性質、スライドボディとアンカーバーの間およびスライドボディとスライドボディ保持器の間の材料ペアリングおよびアンカーバーの形状および表面の性質である。
原則的に、本発明に基づくスライドアンカーは、1つの凹部とその中に配置されている1つのスライドボディによってすでに機能する。しかし、好ましくは、スライドボディ保持器内に複数の凹部が配置されており、それら凹部は好ましくはアンカーバーの周面の周りに分配して配置されており、特に周面の周りに均一に配置されている。複数の凹部およびそれに応じた複数のスライドボディを用いて、所望のブレークアウェイ力がさらに正確に調節され、さらに、複数の凹部とその中に配置されているスライドボディによって、簡単な方法でより高い締付け力ないしブレークアウェイ力を実現することができる。アンカーバーの周面の周りの凹部およびスライドボディの均一な分配が、アンカーバーに作用する荷重をより均一に分配する。
複数の凹部の各々は、スライドボディ保持器内で異なる水準に、すなわちスライドボディ保持器のそれぞれ専用の横断面平面内に、配置することができる。しかし、スライド制御部材のコンパクトな構造を得るためには、好ましくは複数の凹部が、スライドボディ保持器の1つの横断面平面内に配置されている。1つの横断面平面内に可能な凹部の数は、凹部の寸法とスライドボディ保持器の寸法に依存する。本発明に基づくスライドアンカーの形態において、1つの横断面平面内に3つの凹部が配置されているが、より大きい寸法で、それに応じた大きさのスライド制御部材を有するスライドアンカーにおいては、3つより多い、この種の凹部も、可能である。さらに、好ましくは同様に、コンパクトな構造および均一な荷重分配を得る視点において、複数の凹部がスライドボディ保持器の異なる横断面平面にグループ単位で配置されている。この種の形態は、好ましくは、空間的な状況が、1つの横断面平面内に所望の数の凹部を配置することを許さない場合に、選択される。たとえば、本発明に基づくスライドアンカーの他の実施形態において、それぞれ3つの凹部が、スライドボディ保持器の2つの異なる横断面平面内に配置されている。その場合に異なる横断面平面の凹部は、好ましくは互いに対して次のように、一方の横断面平面の凹部内に配置されているスライドボディが、スライドバーの外表面の、1つまたは複数の他の横断面平面内に存在するスライドボディとは異なる領域と接触する角度で、変位している。
本発明の枠内において、使用されるスライドボディの形態は、ほぼ任意に選択することができる。たとえば、スライドボディは、球状であることができ、あるいは円錐状に細くなる外側形状、たとえば円錐ころ形状を有することができる。好ましい実施形態によれば、スライドボディは、円筒の形状を有し、従ってころ形状である。さらに、各スライドボディの外表面は、膨らんで、すなわち外側へ向かって、たとえばワイン樽の形式で、膨出することができる。プリズム形状のスライドボディも、可能である。なお、凹部の形状は、少なくとも各スライドボディがその凹部内に実質的にあそびなしで収容されている限りにおいて、使用されるスライドボディに適合されなければならない。通常、凹部の形状は、使用されるスライドボディの形態に相当し、すなわち円筒状のスライドボディが、円筒状の凹部内に配置され、円錐状のスライドボディは、円錐状の凹部内に配置されるなどするが、この一致は強制ではない。
本発明に基づくスライドアンカーにおいて、スライド制御部材を配置するための2つの原則的な可能性がある。1つの可能性は、制御部材をアンカーバーの、孔内へ導入するように定められた部分上に配置することにある。その場合には、スライドアンカーの最大のスライド区間は、アンカーバーがスライド制御部材の向こう側で孔内へ延びる距離である。この種の実施形態において、最大のスライド区間を通過した場合に、アンカーバーがスライド制御部材から外れないようにするために、好ましい実施形態においては、アンカーバーの孔側の端部の領域内に、ストッパ部材が設けられており、その直径は、スライド制御部材内の透孔の直径よりも大きい。このようにして、アンカーバーは、スライド制御部材を滑り抜けることはできない。たとえば、ストッパ部材は、アンカーバーの孔側の終端部分上に螺合され、あるいはそこに他の方法で固定されたナットである。ストッパ部材が、最大可能なスライド距離を通過した後に、スライド制御部材に当接した場合に、スライドアンカーの他のように定められた撓みは、もはや不可能である。その場合にスライドアンカーは、構造的な設計から生じるその破壊荷重まで負荷を受けることができ、それを上回った後は、だめになり、たとえばその場合にアンカーバーが引き裂かれる。
アンカーバーの、スライド制御部材を越えて孔内へ突出する部分が、必要な場合にはスライド制御部材を通って滑り移動することができることを保証するために、本発明に基づくスライドアンカーの好ましい実施形態において、アンカーバーを同心に包囲する、第1の保護パイプが、スライド制御部材からアンカーバーの孔側の端部まで延びている。このようにして、一方で、モルタルまたは場合によっては使用される接着剤が、アンカーバーと接触して、場合によってはそれをブロッキングすることが防止され、すなわちこのようにして、アンカーバーの、第1の保護パイプによって包囲される部分が、スライド制御部材を自由に通り抜けることが、保証される。通常、アンカーの前に孔内へ投入されるモルタルまたは接着剤は、アンカーを孔内へ導入する際に押し出されて、一部は第1の保護パイプの外側を通過して流れるので、この実施形態においては、第1の保護パイプによって移送されて、スライド制御部材の外側において、スライド制御部材の後方に、アンカーを固定するために使用された合成樹脂材料またはモルタルからなる栓が形成される。この栓が、材料の硬化後に軸受台の機能を満たし、その軸受台にスライド制御部材とそれに伴ってアンカー全体が支持される。従って、アンカーを孔から引き抜くことができることが、確実に防止される。しかし、アンカーバーを同心に包囲する、この種の第1の保護パイプは、スライドアンカーが開脚によって、たとえば開脚ジャケットを使用して、孔内に挟持される場合にも、効果的である。というのは、保護パイプは、スライド区間、すなわちアンカーバーのスライドするように定められている部分から、そうでない場合にじゃまするように作用するおそれのある、ルーズな岩石材料を遠ざけ、さらに、スライド区間を腐食から保護するからである。好ましくは、第1の保護パイプの外径は、スライド制御部材の外径に実質的に相当するので、スライド制御部材から始まって、スライドアンカーの孔側の端部まで、少なくともほぼ統一的な外径が生じ、それが孔内へのスライドアンカーの導入を容易にする。
アンカーバーの、孔口側の部分を、トンネル壁または坑道壁からアンカーバーに加わる可能性のある、剪断力から保護するために、本発明に基づくスライドアンカーの好ましい実施例は、アンカーバーを同心に包囲する、第2の保護パイプを有しており、それが、孔口を閉鎖する、すでに述べたアンカープレートから、孔内へ少しの距離延びている。この種の第2の保護パイプは、構造的に好ましいやり方で、たとえば溶接またはボルトによって、あるいはアンカープレートと一体的に形成することによって、アンカープレートと堅固に結合することができる。
アンカーバーを、アンカーを固定するために使用される合成樹脂材料またはモルタルから保護するため、かつ腐食防止としても、好ましい実施形態は、さらに、アンカーバーを同心に包囲する、第3の保護パイプを有しており、それは、たとえばプラスチックからなることができ、かつスライド制御部材から、アンカーバーの、孔から突出する端部の方向へ、すなわち孔口の方向へ、少しの距離延びている。すなわちこの領域においても、アンカーバーは貼り付かず、ブレークアウェイ力を上回った後にコントロールされて、すなわち障害となる影響からほぼ独立して、摺動できることが、保証されている。第3の保護パイプは、アンカーバーの1つまたは複数の保護すべき部分上に設けられた、シュリンクホースまたは単なるコーティングによって形成することもできる。
本発明に基づくスライドアンカーのセット後に(そのスライド制御部材は孔内にある)、外部から、岩石移動が生じたか、すなわちアンカーのセット後にブレークアウェイ力の超過に基づいてスライド制御部材内でスライドバーのスライド移動がもたらされたか、を確認することができるようにするために、本発明に基づくスライドアンカーは、監視装置を有している。この監視装置は、簡単な形式で、たとえば監視ワイヤからなることができ、その監視ワイヤはスライド制御部材からアンカープレートまで張られており、好ましくはアンカープレートの外側から、すなわちアンカープレートの孔とは逆の側から、接近することができる。このように装備したスライドアンカーのセット後に、岩石移動がもたらされ、それがブレークアウェイ力を上回ることをもたらし、従ってスライド制御部材に対するアンカーバーのスライドをもたらした場合に、この監視ワイヤが破断して、それによって外部から容易に引き抜くことができる。それに対してセットされたスライドアンカーを管理する場合に、監視ワイヤがまだ張られており、従ってスライド制御部材に固定されている場合に、監視ワイヤは孔から引き抜かれず、それによって、それまでの間にアンカーのブレークアウェイ力を越えることをもたらす岩石移動が生じていないことを、表示する。監視ワイヤは、金属から、あるいはプラスチックからなることができ、あるいは糸などであってもよい。
アンカーバーの、孔内に位置する部分上にスライド制御部材を配置する、上述した可能性の他に、代替的に、スライド制御部材を孔の外部に、すなわちアンカーバーの、アンカープレートを越えて孔から突出する部分上に、配置する可能性もある。しかしこの可能性は、アンカーバーの、スライドするために設けられている長さ全体を孔口から突出させなければならず、従って坑道またはトンネルの自由な横断面をそれに応じて制限することをもたらし、それは、通常、重大な欠点である。孔の外部にスライド制御部材を配置することの利点は、その間に発生した変化を良好に監視できることである。というのは、アンカーバーの最初に張り出している長さに基づいて、常に正確に、そうこするうちにどの程度のスライド移動がもたらされたか、を確認することができるからである。
スライド制御部材が、孔の内部のアンカーバーの部分上にあるか、孔の外部のアンカーバーの部分上にあるかに関係なく、本発明に基づくスライドアンカーの好ましい実施例においては、アンカーバーの孔側の端部に、混合部材が固定されている。孔内にアンカーを固定するために、2成分ベースの接着剤樹脂が使用される場合に、2つの成分は、通常接着剤容器の形式で孔内へ投入され、接着剤容器内で2つの成分が、たとえば2つの互いに同心の室内に互いに分離されて収容されている。アンカーをセットする場合に、混合部材がまず、たとえばプラスチック箔から形成された室を破壊し、その場合に同時に、あるいは続いてアンカーバーを回転させることが、2つの成分の密な混合をもたらし、その結果2つの成分が迅速に硬化して接着剤樹脂が出来上る。混合部材は、その混合機能に加えて、すでに上述したストッパ部材としても、用いることができる。
本発明に基づくスライドアンカーの、現在好ましい実施例を、以下で添付の図式的な図を用いて詳細に説明する。
図1には、符号10を用いてスライドアンカーが一般的に示されており、そのスライドアンカーは、たとえば坑道またはトンネルの壁を安定させるために、図示されない岩盤孔内へ導入するために設けられている。このスライドアンカー10の中央の部材が、アンカーバー12であって、それがスライドアンカー10の荷重を伝達する構成部品であって、その長さがスライドアンカー10の長さを定める。図示の実施例において、アンカーバー12は、円形の横断面と12mmの直径および滑らかな外表面を有する中実のつながった鋼ロッドであって、ここではその長さは2メートルである。しかし、所望の荷重伝達能力に従って、アンカーバー12の直径は、12mmより小さくても、大きくてもよく、その長さも使用状況に従って上述した値よりも短くても、長くてもよい。また、アンカーバー12の外表面も、滑らかである必要はなく、たとえば粗面化し、あるいは溝などを形成してもよい。円形の横断面を有するアンカーバーが好ましいが、本発明はそれに限定されておらず、アンカーバーの横断面は、たとえば方形、多角形などであってもよい。
アンカーバー12の、図示されていない岩盤孔内へ導入するために設けられている部分上に、スライド制御部材14が配置されており、その原則的な構造が、図2および3からさらに良くわかる。スライド制御部材14は、スライド制御部材14に対するアンカーバー12の制限された長手移動を許し、それによってスライドアンカー10が、そのセット後に発生する岩盤移動に、より良好に対処することができ、早期にだめになることがないようにするために、用いられる。
スライド制御部材14は、軸方向に延びる中央の透孔18を備えた、円筒状のスライドボディ保持器16を有しており、その透孔は、図示の例においては、軽く段付きで形成されており、かつスライドアンカー10が組み立てられた状態においてアンカーバー12がその透孔を通って延びている。
図3に示す断面から明らかなように、スライドボディ保持器16の周面にわたって均一に分配されて、円筒の孔の形状の3つの凹部20が形成されており、その凹部は、その外側包絡面がたとえば透孔18の自由な横断面内へ突出するように、配置されている。換言すると、透孔18の中心点Mと各凹部20の中心長手軸との間の間隔を定める寸法Xは、透孔18の半径Rと凹部20の半径rの合計よりも、幾分小さい。
凹部20は、アンカーバー12の外表面に対して実質的に接線状に配置されており、すなわちその中心長手軸は、透孔18の中心長手軸に対して傾いでおり、かつ透孔18の中心長手軸とそれぞれの凹部20の中心長手軸を含む投影図に関して、透孔18の中心長手軸に対して直交している。従って、3つの凹部20は、スライドボディ保持器16の1つの同じ横断面平面内に配置されている。図示の実施例において、角度M°は、30°である。
図4から6には、スライドボディ保持器16’の第2の実施例が図示されており、その原理的構造は、スライドボディ保持器16に相当する。しかし、スライドボディ保持器16とは異なり、スライドボディ保持器16’は、それぞれ3つの凹部20を備えた、2つの重ねて配置された平面を有しており、その場合に一方の横断面平面の凹部20は、他方の横断面平面の凹部20に対して周方向に、6つの凹部20のすべてが共に、スライドボディ保持器16’の周面を中心に均一に分配されるように、変位している。
各凹部20は、ここでは円筒状のスライドボディ22を収容するために設けられており、そのスライドボディの外径は、通常の許容誤差に至るまで、凹部20の直径と一致しており、すなわちスライドボディが凹部20の横断面を完全に充填している。図7と8は、図5と6に相当する図を示しており、その中で各凹部20内に上述したように形成されたスライドボディ22が配置されている。特に図7から明らかなように、凹部20の上述した配置に基づいて、各スライドボディ22はその外表面においてほぼ、透孔18の横断面内へ突出している。このようにして、その外径が透孔18の直径にほぼ相当する、アンカーバー12が、スライドボディ22によって締め付け保持される。
図1に戻って、スライドアンカー10の他の構造を説明する。
スライド制御部材14(その主要構成部品は、上述したようにスライドボディ保持器16ないし16’とその中に収容されているスライドボディ22である)から、ここではプラスチックからなる第1の保護パイプ24が、スライドアンカー10の孔側の端部まで延びている。図示の実施例においてはスライドボディ16’と実質的に同じ外径を有する、この保護パイプ24は、アンカーバー12の表面から、スライドアンカー10を図示されない孔内に恒久的に係止する材料(モルタル、接着剤)を離間させておくために用いられる。従って、第1の保護パイプ24は、スライドアンカー10の孔側の終端部分上に、アンカーバー12を取り巻く円筒状の中空室を形成し、それによってアンカーバーは、モルタルまたは接着剤によってブロックされず、それによってスライド制御部材14に対して摺動することを阻止されない。
スライドアンカー10の尖端は、アンカーバー12の孔側の端部に固定された、複数の混合ブレード28を備えた混合部材26を形成し、その混合部材は、通常、岩盤アンカーを固定するために使用される、アンカーをセットする前に孔内へ投入される、2成分接着剤を互いに密に混合するために、用いられる。そのために、アンカーバー12は、孔内へ挿入後に回転されて、それによって混合部材26も回転される。
混合部材26の外径は、スライドボディ保持器16ないし16’の透孔18の直径よりも大きい。従って、混合部材26は、同時に、スライド制御部材14からアンカーバー12を引き抜くことができないようにする、アンカーバー12の終端部分上のストッパ部材として作用する。代替的に、この種のストッパ部材は、ねじナットとして形成することもでき、あるいは簡単に、たとえばアンカーバーを押し潰すことによって形成される、アンカーバー12の肥厚部のみによって形成することができる。
スライドアンカー10に、坑道壁またはトンネル壁に安定した作用を及ぼすことを可能にするために、荷重を伝達するアンカープレート30が設けられており、そのアンカープレートは、アンカーバー12の孔入口側の端部上に差し嵌められている。普通は、同様に鋼からなり、かつ通常方形の、このアンカープレート30は、カウンターナット32によってアンカーバー12上に固定される。
図示の実施例において、アンカープレート30と堅固に結合され、かつここでは同様に鋼からなる、第2の保護パイプ34が、アンカーバー12の始端部分をルーズな岩盤から保護するために、図示されていない孔内へわずかな距離挿入される。そのために、第2の保護パイプ34の内径は、アンカーバー12の外径よりも大きく選択されている。第2の保護パイプ34の外径は、孔内への導入を容易にするために、第1の保護パイプ14の外径よりも、ずっと小さい。
そして、図示の実施例において、アンカーバー12の中央の部分は、第3の保護パイプ36によって包囲されており、その保護パイプは、スライド制御部材14からアンカープレート30の方向へ延びている。この第3の保護パイプ36は、アンカーバー12の表面から望ましくない影響を遠ざけるため、特にこの領域内におけるアンカーバーの接着を防止するために、用いられる。
ここで、スライドアンカー10の機能を、詳細に説明する。適切な孔を形成した後に、スライドアンカー10が孔内へ導入されて、そこに、モルタルまたはこの分野の専門家に知られた接着剤を用いて係止される。代替的に、係止するための拡幅可能な部材、たとえば開脚ジャケットの使用も可能であり、かつ知られている。図示のスライドアンカー10は、特に、孔内に栓によって固定され、その栓は、使用される接着剤またはモルタルの材料変化によって、スライド制御部材14の後方、すなわち孔の口の側に形成されて、材料の硬化後に、孔からのアンカー10の引抜きを阻止する。アンカープレート30を取り付けて、それをカウンターナット32によって固定した後に、スライドアンカー10が、荷重を伝達し、安定化させる、その機能を満たすことができる。
スライドボディ22を介してアンカーバー12へ締め付け作用がもたらされ、それによって、アンカーバー12とスライド制御部材14の間の相対移動をもたらすことなしに、スライドアンカー10が軸方向に伝達可能な、いわゆるブレークアウェイ力が定められ、しかし、このブレークアウェイ力を越えた場合に、アンカーバー12はスライドボディ22に沿って、ストッパ部材としてい用いられる混合部材26がスライドボディ保持器16ないし16’に当接するまで、滑り移動することができる。この種の相対移動は、もちろん、複数の部分内で行うことができ、かつ常に、スライドアンカー10に作用する軸力が再びブレークアウェイ力より低くなるまでの間だけ行うことができる。この相対移動によって、スライドアンカー10の実効長さが増大する。というのは、スライド制御部材14と第1の保護パイプ24は、アンカーをセットした際にとった、その最初の位置を維持するからである。