JP2010503659A - 結合分子 - Google Patents

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Abstract

本発明は、VHドメインを可溶性および安定性を改善するように遺伝子操作するための方法に関する。本発明は、重鎖遺伝子座のVセグメントへの3D構造情報に基づく特定されたアミノ酸置換の組み込み、非ヒト哺乳動物におけるその遺伝子座の発現、および可溶性VHドメインの選択を提供する。インビボでのB細胞成熟中に、親和性成熟の結果として変異のさらなる安定化または可溶化を導入することができる。

Description

本発明は、Vドメインを可溶性および安定性を改善するように遺伝子操作するための方法に関する。本発明は、重鎖遺伝子座のVセグメントへの3D構造情報に基づく特定されたアミノ酸置換の組み込み、非ヒト哺乳動物における前記遺伝子座の発現、およびVDJ再構成の結果としての可溶性Vドメインの選択を提供する。インビボでのB細胞成熟中に親和性成熟の結果として、さらなる安定化または可溶化変異を導入することができる。そのような変異は、抗原に対する認識および結合を最適化する、主としてCDR3領域に存在する抗原特異的変異とは異なる。
本発明の方法を用いて産生される重鎖のみの抗体についても記載する。
以下の説明において、すべてのアミノ酸残基位置番号は、Kabat et al.[1]によって考案された番号付け方式に従って付与している。
<抗体>
抗体の構造は、当該技術分野において周知である。大部分の天然抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む四量体である。重鎖は、それぞれの重鎖に沿ってほぼ半分の距離に位置するヒンジドメイン間でジスルフィド結合によって互いに連結されている。軽鎖は、それぞれの重鎖とそのヒンジドメインのN末端側で会合している。それぞれの軽鎖は、通常、そのそれぞれの重鎖のそのヒンジドメインの近くにジスルフィド結合によって結合されている。
抗体分子が正しくフォールディングされるとき、それぞれの鎖がフォールディングして、より大きな線状ポリペプチド配列によって連結された多くの異なる球状ドメインになる。例えば、軽鎖はフォールディングして、可変(V)および定常(C)ドメインになる。重鎖は、単一可変ドメインV、第一定常ドメイン(C1)、ヒンジドメインおよび2つまたは3つのさらなる定常ドメインを有する。重鎖定常ドメインとヒンジドメインは、一緒になって、抗体重鎖の定常領域として一般に知られているものを形成する。重鎖(V)可変ドメインと軽鎖(V)可変ドメインが相互作用して、抗原結合領域(F)を形成することとなる。重鎖と軽鎖の相互作用は、重鎖のC1ドメインおよび軽鎖のCκまたはCλドメインによって助長される。一般に、抗原結合にはVとVの両方が必要であるが、重鎖二量体およびアミノ末端フラグメントは軽鎖のない状態で活性を保持することが明らかになった[2]。
重鎖(V)と軽鎖(V)両方の可変ドメイン内の幾つかの短いポリペプチドセグメントは、特殊な可変性を示す。これらのセグメントは、超可変領域または相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。それらの介在セグメントは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。VドメインおよびVドメインのそれぞれに3つのCDR(CDR1〜CDR3)が存在する。
抗体クラスは、生理機能の点で異なる。例えば、IgGは、成熟免疫応答に関して顕著な役割を果たす。IgMは、補体結合および凝集に関与する。IgAは、分泌物−涙、唾液、初乳、粘液−に関するIgの主要クラスであり、したがって、局所免疫に関して一定の役割を果たす。天然抗体のエフェクター機能は、重鎖定常領域によってもたらされる。
哺乳動物には、抗体の5つのタイプ:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、ヒトには4つのIgGおよび2つのIgAサブタイプが存在する。
Figure 2010503659
IgAは、粘液を含有する領域において(例えば、腸において、気道において、または尿生殖路において)見つけることができ、ならびに病原体が粘膜領域に定着するのを防止する。IgDは、主として、B細胞上の抗原受容体として機能する。IgEは、アレルゲンに結合し、肥満細胞からのヒスタミン放出(アレルギーの基礎メカニズム)を誘発し、蠕虫類(helminths)(蠕虫(worms))に対する保護ももたらす。IgGは、その4つのアイソタイプで、侵入してくる病原体に対する抗体に基づく免疫の大部分を提供する。IgMは、B細胞の表面で発現され、およびまた、B細胞媒介免疫の初期段階では(すなわち、病原体を排除するために十分なIgGが存在する前は)排除する病原体に対して非常に高い親和性を有する分泌形態で存在する。
正常なB細胞は、重鎖をコードする遺伝子を再構成によって生産する重鎖遺伝子座を含有する。正常な重鎖遺伝子座は、複数のV遺伝子セグメント、多くのD遺伝子セグメントおよび多くのJ遺伝子セグメントを含む。Vドメインの大部分は、V遺伝子セグメントによってコードされるが、それぞれのVドメインのC末端は、D遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントによってコードされる。B細胞におけるVDJ再構成、その後の親和性成熟により、それぞれのVドメインをコードする再構成遺伝子が生じる。H四量体の配列分析は、多様性がVDJ再構成と体細胞超変異の組み合わせに起因すること、およびCDR3領域における多様性が大部分の抗体特異性には十分であることを明示している[参考文献3参照]。
新たな分子生物学的技術の登場に伴い、(軽鎖がない)重鎖のみの抗体の存在が人間のB細胞増殖性疾患(重鎖疾患)およびマウスモデル系において同定された。分子レベルでの重鎖疾患の分析により、ゲノムのレベルでの変異および欠失が重鎖C1ドメインの不適切な発現を生じさせ、その結果、軽鎖への結合能力を欠く重鎖のみの抗体の発現が生じることが明らかになった[4、5]。
ラクダ科動物は、天然遺伝子変異の結果として、軽鎖への結合を媒介するC1ドメインがないため軽鎖に結合できない機能性IgG2およびIgG3重鎖のみの二量体を生じさせることが明らかになった[6]。ラクダ科動物の重鎖のみの抗体に特徴的なものは、ヒトおよび正常なラクダ科動物Vドメインと比較して改善された可溶性をもたらす、ラクダ科動物Vドメインの特殊なサブセットである。ラクダ科動物Vドメインのこの特殊なサブセットは、通常、VHHドメインと呼ばれる。
サメなどの種が、哺乳動物T細胞受容体または抗体軽鎖とおそらく関係がある、重鎖のみ様結合タンパク質ファミリーを生産することも明らかになった[7]。
重鎖のみの抗体に見られるラクダ科動物VHHドメインは、修飾CDR3によっても特徴付けられる。このCDR3は、平均して、非ラクダ科動物抗体に見られるものより長く、ならびにラクダ科動物の重鎖のみの抗体におけるVドメインの不在を埋め合わせる、抗原親和性および特異性全体に対して大きな影響力を及ぼすと考えられる特徴である[8、9]。
ラクダ科動物の重鎖のみの抗体の生産の場合、そのラクダ科動物の生殖細胞系における重鎖遺伝子座は、可能な重鎖定常領域の一部またはすべてをコードする遺伝子セグメントを含む。成熟中に、VHHDJ結合ドメインをコードする再構成遺伝子転写産物が、ヒンジドメインをコードする転写遺伝子セグメントの5’末端にスプライシングされて、C1ドメインがない、よって、軽鎖と会合することができない重鎖をコードする再構成遺伝子をもたらす。
ラクダ科動物VHHドメインは、位置37、44、45および47に多くの特徴的なアミノ酸を含有する[参考文献9参照]。これらの保存されたアミノ酸は、重鎖のみの抗体に可溶性を付与するために重要だと考えられる[9]。ある特定のラクダ科動物Vドメインのみが、改善された可溶性特性を有するVHHドメインである。対照的に、ディスプレイライブラリーから得られるヒトVドメインは、V/V接合部でのこれらの特徴的アミノ酸変化を欠き、その結果として、ラクダ科動物VHHドメインと比較して可溶性が低いまたは「粘着性」である[10]。残念なことに、ヒトVドメインを遺伝子操作またはラクダ化する努力の成果は、依然として予測できない。VドメインにおけるV/V接合部のみでのラクダ化変異の導入が、予測可能な様式で可溶性を改善するには十分でないからである。可溶性を強化する特徴の導入を、Vドメイン内のほかの場所でのまだ特定されていない変異などによって補って、構造的安定性を維持しなければならない場合があることは明らかである[論評9参照]。
重鎖のみのモノクローナル抗体は、標準的クローニング技術によってラクダ化動物脾臓のB細胞から、またはファージもしくは他のディスプレイ技術によってB細胞mRNAから回収することができる[10]。ラクダ科動物に由来する重鎖のみの抗体は、高親和性の抗体である。重鎖のみの抗体をコードするmRNAの配列分析により、VDJ再構成と体細胞超変異の組み合わせに主として起因して多様性が生じることが立証される[11]。
インビトロでのファージまたは他のディスプレイアプローチによって得られた天然ラクダ科動物およびヒトVドメインの重要な共通の特徴は、各ドメインが、二量体化に依存せずに単量体としてVドメインと結合することである。これらのV結合ドメインまたは「ナノボディー」は、ブロッキング剤および組織浸透剤の生産に特に適するようであり、ならびに抗体ベースの結合複合体を構築する際にインビトロでscFvを得る必要をなくす(PCT/GB2005/002692参照)。
<抗体ベースの製品の生産>
遺伝子工学による抗体ベースの製品の生産、特に、ヒトまたはヒト化抗体ベースの製品の生産は、新しい種類の医薬、診断薬および試薬、そして同時に、新たな産業、雇用および富を作り出す機会を生み出す結果となった(www.drugresearcher.com、www.leaddiscovery.co.uk参照)。抗体ベースの製品は、通常、天然四量体抗体から誘導される。抗体ベースの製品の生産に関する多くの特許および出願がある。これらの特許および出願は、起源(例えば、トランスジェニックマウスから)、製造経路および問題の製品特異的物質に関する。そのような抗体ベースの製品としては、完全四量体抗体、抗体フラグメントおよび1本鎖Fv(scFv)分子が挙げられる。
scFv分子は、単一の分子を形成するようにペプチドリンカーによって連結された重鎖可変ドメイン(V)と軽鎖(V)可変ドメインのみを含み、通常、ディスプレイライブラリー(例えば、ファージディスプレイまたはエマルジョンディスプレイ)をスクリーニングすることによって得られる。あるいは、VおよびVドメインをコードする核酸領域を転写ユニットにクローニングすることにより、天然抗体から遺伝子操作される。scFv分子は、はるかに小さい分子量を明らかに有し、天然抗体の定常領域エフェクター機能がない。scFv分子は、多くの場合、インビトロで最適化される。
抗体ベースの製品は、21世紀に市場に出される新たな医薬の大きな割合を占めるだろう。モノクローナル抗体療法は、関節リウマチおよびクローン病の好ましい治療経路として既に認知されており、がん治療における進展は目覚しい。心血管疾患および感染性疾患の治療のための抗体ベースの製品も開発中である。大部分の市販されている抗体ベースの製品は、ターゲッドリガンド上の単一の明確に定義されているエピトープ(例えば、TNFα)を認識し、それに結合する。
治療用の抗体ベースの製品の製造は、哺乳動物細胞培養に依然として依存している。四量体抗体の組み立ておよびその後の翻訳後糖鎖形成プロセスにより、細菌系を使用せずにすむが、哺乳動物糖鎖形成パターンを生じるように遺伝子操作された酵母は、哺乳動物細胞に基づく生産システムに代わるものとして期待できる。哺乳動物細胞培養によって抗体ベースの製品を製造するための生産コストおよび資本コストは高く、許容される代替がない場合、抗体ベースの療法の可能性を限定するおそれがある。様々なトランスジェニック生物が、完全機能性抗体を発現できる。これらとしては、植物、昆虫、ニワトリ、ヤギおよびウシが挙げられる。
大腸菌(E.coli)において機能性抗体フラグメントを製造することができるが、この製品は、製造プロセス中にPEG化されない限り、低い血清安定性を有する。
最近、ラクダ科動物への抗原投与から天然に生産された重鎖のみの抗体に由来する、またはラクダ科動物から作製されたVドメインライブラリーに由来するディスプレイライブラリーにおいて無作為に抽出されたヒトVドメインから高親和性Vドメインが選択された。これらの高親和性Vドメインが、抗体ベースの製品に組み込まれた。VHHドメインとも呼ばれるこれらのVドメインは、従来のVドメインとの多くの違いを示し、特に、軽鎖がない状態で重鎖の改善された可溶性を確保する多くの変異を示す。これらの変化の中で最も顕著なのは、位置44、45および47における荷電アミノ酸の存在である。これらの変化は、より多くの親水性アミノ酸による疎水性残基の置換によってVの不在を埋め合わせ、その結果、V/V相互作用不在の状態で可溶性を維持すると考えられる[概説については、参考文献9およびその中に引用されている参考文献を参照]。
多くのグループが、天然四量体抗体に由来する重鎖のみの抗体の産生に関して研究している。Jaton et al.([参考文献2]およびその中に引用されている他の参考文献を参照)は、親和精製された、十分に特性付けされているウサギ抗体の低減された重鎖成分の分離、続いて、それらの個々の重鎖のその後の再生を記載している。再生された重鎖の免疫学的特性付けにより、軽鎖のない重鎖ホモ二量体のみが抗原に結合することが立証された。
後に、Ward et al.[10]は、クローニングされたマウスV領域が、大腸菌発現系において可溶性タンパク質単量体として発現されたとき、高い親和性で抗原に結合する能力を保持することを、明白に立証した。Ward et al.[10]は、Vドメインの単離および特性付けを記載しており、従来のモノクローナル抗体生産と比較したときのこのアプローチの潜在的な商業的利点を述べている(最後のパラグラフを参照)。彼らは、軽鎖と正常に会合している重鎖から単離されたVドメインには天然四量体抗体の可溶性がないことも認めている。Ward et al.[10]は、これらの分子を記述するために「粘着性」という用語を用いており、改善された可溶性特性を有するVドメインの設計により、この「粘着」に対処することができると提案している。
後に、ファージディスプレイを使用する無作為抽出アプローチと部位特異的アプローチとを併用して、V可溶性の改善に取り組んだ。例えば、Davis and Riechmann[12]およびその他(WO92/01047参照)は、結合特異性を維持しながら可溶性を改善するために、ファージディスプレイと併用で、ラクダ科動物の重鎖のみの抗体からのVドメインの特徴の一部を取り入れていた。
改善された可溶性特性のためにインビトロでヒトVドメインを遺伝子操作することができる[9、12]。V結合ドメインをファージライブラリーから得た場合、抗原に対する固有親和性は、例えば親和性ホットスポット無作為抽出を含む親和性改善戦略の適用にもかかわらず、依然として低マイクロモルから高ナノモル範囲である[13]。しかし、可溶性を改善するための哺乳動物Vドメインの遺伝子操作は、依然として予測できない。さらに、発表された報告(12、14、15)にもかかわらず、「ラクダ化」変異の導入は予測可能な成果をもたらすには不十分であり、凝集が無い状態で強化された可溶性を得ようとするならばさらなる変異が必要である[9]。
ファージディスプレイ技術によって生成されるVとは異なり、インビボで生産されるヒトVドメインまたはラクダ科動物VHHドメインは、DおよびJ遺伝子セグメント組換えによってもたらされる多様性に加えて、親和性成熟の結果として導入される体細胞成熟の結果として正常な抗体結合部位のCDR3領域に関する改善された特性という利点を有する。ラクダ科動物VHHは、ヒトVと比較して可溶性の点で利点を示すが、ラクダ科動物VHHはヒトにおいては抗原であり、ラクダ科動物の免疫処置によってまたはファージディスプレイ技術によって生成しなければならない。
最近、トランスジェニック非ヒト哺乳動物において重鎖のみの抗体を生産する方法が開発された(WO02/085945、WO02/085944、および[16]を参照)。可能性的には任意のクラス(IgM、IgG、IgD、IgAまたはIgE)の、および任意の哺乳動物に由来する、機能的で高親和性の重鎖のみの抗体を、トランスジェニック非ヒト哺乳動物(好ましくは、齧歯動物)を使用して抗原投与の結果として生産することができる。
これらの可溶性の重鎖のみの抗体は、ヒトDおよびJ遺伝子セグメントのすべてならびにすべてのヒト定常領域をコードする遺伝子セグメントに結合した2つのラマVHH(クラス3)遺伝子セグメントを含有する生殖細胞系(すなわち、非再構成)構造における抗体重鎖遺伝子座から得ることができる。定常領域のそれぞれをコードする遺伝子セグメントは、軽鎖の結合を妨げるようにC1ドメインの欠失を有した。加えて、前記遺伝子座は、B系統の細胞での高い発現レベルを確保するために、3’末端に抗体LCR、および他の遺伝子内エンハンサー要素を含有した[17]。
抗原を投与すると、VDJ組換えと、体細胞変異の結果として関連体細胞成熟に伴うB細胞活性化とが、観察された。主としてCDR3領域での予想された変異に加えて、ラマV遺伝子セグメントでは体細胞変異が観察された[16]。
高親和性、可溶性V結合ドメイン(ヒトのものであろうと、ラクダ科動物のものであろうと、または他の起源のものであろうと)を含む重鎖のみの抗体の最適な生産および選択が、インビボ組換えおよび親和性成熟を助長しない無作為抽出ファージライブラリーからの選択に依存するアプローチに代わるアプローチの恩恵を受ける可能性は高いようである。
重鎖のみの抗体の多様性およびインビボでのB細胞応答を最大にすること、ならびに特に、多様な臨床用途、産業用途および研究用途において使用するために、クラス特異的で可溶性のヒト重鎖のみの抗体の機能性レパートリーおよび凝集のない状態で最大の抗原結合潜在能力を保持する機能性V重鎖のみの結合ドメインを生成することが、当該技術分野において依然として必要とされている。
したがって、抗原投与に応答してトランスジェニック非ヒト哺乳動物においてDおよびJセグメントと組換えられたとき、凝集(粘着)のない状態で機能的な可溶性で抗原特異的な重鎖のみの抗体を産生するV遺伝子セグメントを生産することが、当該技術分野において依然として必要とされている。
本発明者らは、驚くべきことに先行技術の限界を克服し、ならびにヒトVセグメントを重鎖遺伝子座に組み込むことによって、可溶性の完全ヒトVドメインを得ることができることを証明した。ここで、前記V遺伝子セグメントは、(i)疎水性を減少させるようにV接合部において修飾されており、(ii)構造不安定性を克服するために導入された追加の変異を有する。そのような追加の変異は、V接合部でなされたものとは無関係に有益であり得る。機能性Vセグメントの選択は、トランスジェニックマウスにおいて行われる。抗原への応答の結果として起こるB細胞依存性親和性成熟の結果としての天然選択により、さらなる改善をインビボでVドメインに組み込むことができる。したがって、本発明は、重鎖のみの抗体を生産するための方法を提供し、この方法は、重鎖遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物に抗原を投与することを含み、前記重鎖遺伝子座は、
複数のV遺伝子セグメントを含み、前記V遺伝子セグメントのうちの少なくとも1つは、(i)疎水性を減少させるためにV接合部に、及び(ii)構造不安定性を克服するまたは疎水性を減少させるために他の位置に、1つ以上のアミノ酸変異をコードし、
少なくとも1つのD遺伝子セグメントおよび少なくとも1つのJ遺伝子セグメントを含み、
1ドメインをコードする遺伝子セグメントを一切含有せず、
抗原投与に応答して発現されたとき、V遺伝子(これは、VDJ再構成の結果として該V遺伝子に組み込まれた、好ましいV遺伝子セグメントを含む)によってコードされた可溶性Vドメインを有する、
重鎖のみの抗体を生産する。
好ましくは、前記重鎖遺伝子座は、複数のV遺伝子セグメントを含み、これらの多数が、上の(i)および(ii)で説明したような1つ以上のアミノ酸変異をコードする。
非ヒト哺乳動物は、前記遺伝子座を含む導入遺伝子をインビトロでの生産すること、および前記非ヒト哺乳動物を生産することができる適切な細胞に前記導入遺伝子を導入ことによって、生産することができる。前記細胞は、胚性幹細胞または卵母細胞であってもよい。
あるいは、前記非ヒト哺乳動物は、前記複数の変異V遺伝子セグメント及び任意選択的に前記DおよびJ遺伝子セグメントが前記非ヒト哺乳動物における内因性重鎖遺伝子座内の等価の遺伝子セグメントを置換する相同組換えによって、生産される。
1つの遺伝子座しか存在しない場合、好ましくは、すべてのV遺伝子セグメントを遺伝子操作する。
好ましくは、前記非ヒト哺乳動物は、複数の重鎖遺伝子座を含み、前記複数の重鎖遺伝子座のうちの少なくとも1つは上で定義したとおりであり、前記複数の重鎖遺伝子座のそれぞれが異なる染色体上に存在する。所望される場合、それぞれの染色体上の遺伝子座は同じであってもよい。あるいは、それぞれの染色体上の遺伝子座は、異なっていてもよい。前記遺伝子座は、それらが異なる場合には、天然のV遺伝子セグメントと遺伝子操作されたV遺伝子セグメントの組み合わせを含むことがある。あるいは、あるものは天然のV遺伝子セグメントを含み、またあるものは遺伝子操作されたV遺伝子セグメントを含むことがある。
好ましくは、前記V遺伝子セグメントは、変異ヒトV遺伝子セグメントである。
好ましくは、前記遺伝子座は、複数のD遺伝子セグメントを含む。
好ましくは、前記遺伝子座は、複数のJ遺伝子セグメントを含む。
所望される場合、前記遺伝子座は、定常領域をコードする少なくとも1つの遺伝子セグメントを含有することができる。好ましくは、前記遺伝子座は、定常領域をコードする複数の遺伝子セグメントを含有する。好ましくは、定常領域をコードするそれぞれの遺伝子セグメントは、ヒトのものである。
好ましくは、V、DおよびJ遺伝子セグメントそれぞれがヒトのものである。
好ましくは、それぞれのV遺伝子セグメントは、位置37、44、45および47のうちの1つに変異を有するタンパク質をコードする。さらに好ましくは、それぞれのV遺伝子は、位置37、44、45および47のすべてに変異を有するタンパク質をコードする。
好ましくは、前記V遺伝子セグメントは、位置37における残基がフェニルアラニン(F)である、位置44における残基がグルタミン酸(E)であり、位置45における残基がグルタミン(Q)であり、および/または位置47における残基がグリシン(G)であるタンパク質をコードする。
好ましくは、それぞれのV遺伝子セグメントは、位置5および14のいずれかに変異を有するタンパク質をコードする。さらに好ましくは、それぞれのV遺伝子セグメントは、位置5と14の両方に変異を有するタンパク質をコードする。
好ましくは、前記V遺伝子セグメントは、位置5における残基がグルタミン(Q)である、および/または位置14における残基がアラニン(A)であるタンパク質をコードする。
本発明に関連して、「Vドメイン」は、D遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントと組換えられたときのV遺伝子セグメントの発現産物を指す。好ましくは、本明細書において用いる場合、Vドメインは、溶解状態のままであり、哺乳動物における生理媒質中および生理温度で活性であり、可溶性を維持するためにいずれの他の因子も必要としない。任意選択的に、前記Vドメインの可溶性および安定性は、VDJ再構成の結果として起こる体細胞変異によって改善されることがある。ラクダ科動物種によって生産されるVHドメインにではなくVHHドメインに存在する拡大されたCDR3ループの存在についての証拠はない。Vドメインは、単量体として抗原に結合することができ、およびエフェクター定常領域と共に発現されたとき、用いるエフェクター分子(例えば、IgG、IgA、IgMなど)の選択および遺伝子操作、または二量体化および多量体化の代替メカニズムに依存して、単一特性、二重特異性、多重特異性、二価または多価形態でVドメインを生産することができる。可溶性の重鎖のみの抗体複合体の一部として発現されたとき、CH1ドメイン不在のため、Vドメインと結合する一切の可能性が排除されている[16]。
ドメインの特性は、要求される特性を有する配列をコードするV、Dおよび/またはJ遺伝子セグメントを選択するまたは遺伝子操作することによって、改変または改善することができる。好ましくは、前記Vドメインは、改善された可溶性を有する。Vドメインの可溶性を改善する好ましい方法は、公知の3D構造に基づく合理的設計[18]、それに続く、遺伝子操作されたVセグメントの重鎖遺伝子座への組み込みを含んでおり、これによって、選択された非ヒト哺乳動物における活性化B細胞からの可溶性の重鎖のみの抗体の発現、親和性成熟および選択を可能にする。天然のものであろうと、遺伝子操作されたものであろうと、好ましいDおよびJセグメントも、前記遺伝子座に組み込むことができる。
本発明の方法は、可溶性Vドメインを生産することができるV遺伝子セグメントを選択するための理想的なツールとなる。本発明の方法を用いると、体細胞が変異し、組替えられたV、DおよびJ遺伝子セグメントから翻訳されたVドメインが可溶性である場合にのみ、V重鎖のみの抗体が生産されることになる。可溶性抗体を生産することができないB細胞は、生き残れず、その一方で、可溶性抗体を生産するものは、親和性成熟と、VDJ再構成の結果として起こるV遺伝子への好適な変異の組み込みによる、インビボでのさらなる天然選択を受ける。結果として得られる抗体は、可溶性であるし、高い抗原特異性も示す。したがって、前記方法によって、可溶性である変異Vドメイン、さらに好ましくは変異ヒトVドメインを選択することができる。幾つかの相乗的変異が、この結果を達成するために必要であり得ること、およびこれらが、発現されるV遺伝子セグメントに依存して異なり得ることは明らかであるので、選択されたVセグメントに、それらを重鎖遺伝子座に組み込む前に、好ましい変異を導入する。インビボでの親和性成熟の結果として、他の有益な変異および選択の組み込みが起こることもある。あるいは、前記遺伝子座に導入された遺伝子操作されたV遺伝子セグメントが、さらなる親和性成熟のない状態で可溶性および安定性を示すVドメインの一部をコードすることもある。したがって、親和性成熟は、抗原結合特性および親和性のみに寄与する。
これらの可溶性Vドメインを、可溶性で高親和性の抗体を生産するB細胞において見出されるVドメインの塩基配列決定によって、分析することができる。これにより、可溶性増大をもたらすV遺伝子セグメントにおけるさらなる体細胞変異の同定が可能となる。同定したら、これらの変異を新たなV遺伝子セグメントに組み込むことができる。これらの体細胞変異を重鎖遺伝子座に再び組み込むことができ、その後、それをさらなるトランスジェニック非ヒト哺乳動物において発現させ、可溶性Vドメインを選択するプロセスを繰り返すことができる。DおよびJセグメントにおける有益な体細胞変異も同定することができる。
したがって、本発明は、最初に、ラクダ科動物VHHおよび古典的V領域の結晶構造から導き出される情報、ならびに自然界で見られる公知の可溶性Vドメインからの情報を利用し、次に、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を使用して、抗原刺激の結果として起こるB細胞におけるVDJ再構成の結果として生じる可溶性Vドメインについて選択する。その後、遺伝子操作された好ましいV遺伝子セグメントは、抗原刺激の結果として優れた可溶性特性を有するVドメインを提供するV遺伝子セグメントが組み込まれている重鎖遺伝子座を有するさらなるトランスジェニック非ヒト哺乳動物を産生させるために利用することができる。
ここで、本発明者らは、トランスジェニック非ヒト哺乳動物における完全にヒトの、重鎖のみの抗体の産生を説明する。そのような抗体を産生させる上での主な問題は、Vとの相互作用のない状態での非ラクダ科動物(例えば、ヒト、ウサギ、マウス)Vドメインの低い可溶性である。前記Vドメインは、大きな疎水面を有し、通常、これは、可溶性複合体を生じさせる正常な四量体抗体における軽鎖可変ドメイン(V)の類似の領域と相互作用する。しかし、Vから解離されたとき、この疎水領域が、単離されたVドメインにおいて遭遇することがある可溶性の問題の原因となる。
本発明は、変異VHドメインの三次元構造を維持または強化しつつ可溶性の問題を克服するために、特に、ヒトVドメインの一部をコードするV遺伝子セグメントによる、ラクダ科動物および非ラクダ科動物Vドメインへの1つ以上のアミノ酸置換の導入に備えている。その後、変異V遺伝子セグメントを、D、Jおよび定常領域遺伝子セグメントを含有する遺伝子座に組み込む。前記遺伝子座は、任意の必要な遺伝子内調節要素、および以前に記載されているようなIg LCR[16]を含むことができる。その後、そうした遺伝子座(単数)、または好ましくは上で説明したようなそうした遺伝子座をマウスなどの非ヒト哺乳動物に、例えばマイクロインジェクションまたは任意の他の適した技法によって、導入する。この遺伝子座を有するトランスジェニック非ヒト動物は、抗原刺激に応答し、その結果、B細胞系統の細胞における遺伝子座の再構成が生じ、ならびに免疫処置およびインビボでの成熟の結果として可溶性の重鎖のみの抗体の生産が生じる。
したがって、可溶性問題を克服するために、非ラクダ科動物、特にヒト、Vドメインにおいて変異を生じさせる方法を提供し、この方法は、非ラクダ科動物の遺伝子操作されたV遺伝子セグメントならびにD、Jおよび任意選択的にC遺伝子セグメントおよび調節要素(例えば、IgエンハンサーおよびIg LCR)を含有する、非ラクダ科動物V重鎖遺伝子座を生産すること、そうした遺伝子座を非ヒト哺乳動物に導入すること、およびこの遺伝子座を有するトランスジェニック哺乳動物を抗原で刺激すること(その結果、B系統の細胞における遺伝子座の再構成が生じ、ならびに免疫処置およびインビボでの成熟の結果として可溶性の重鎖のみの抗体の生産が生じる)による。
好ましくは、前記遺伝子操作されたV遺伝子セグメントは、V接合部での1つ以上のアミノ酸置換、および三次元構造安定性を維持するための追加のアミノ酸置換をコードする。そのような追加の変異も、親水性を増大させることによる任意の他の変異とは無関係に有益であり得る。
例として、本発明者らは、ラクダ科動物VHHおよびヒトVドメインの3D知識(www.rcsb.org/pdbl)に基づき、構造的相互作用の結果として8つのヒトサブファミリー3 V領域、1つのサブファミリー1 V領域および1つのサブファミリー5 V領域(図1参照)に導入された変異を説明する。ファミリー3は、そのVドメインがラクダ科動物VHHドメインとの類似性を有するので好ましいが、任意のVドメインにおいて改善された可溶性特性を生じさせるために、このアプローチを用いることができる(図1)。
特に、ラクダ科動物VHH領域を用いて得られたデータに基づき、ヒト配列において2つの変異を、特に次の2つの位置で生じさせる:イソロイシン(I)またはバリン(V)を置換する位置37のフェニルアラニン(F);およびグリシン(G)を置換する位置44のグルタミン酸(E)。
ラクダ科動物配列において、位置45は荷電アミノ酸である。ヒト配列におけるロイシン45は、荷電アミノ酸でではなく、グルタミン(Q、すなわち、ラクダ科動物とは異なる)で置換される。それがグリシン116のカルボニル基と水素架橋を樹立し、その結果、ラクダ科動物VHHにおける116周辺で観察されるおよび粘着性をもたらす構造に類似した構造を樹立するからである。加えて、位置47のトリプトファン(W)またはチロシン(Y)をグリシン(G)で置換して、位置58のチロシン(Y)との相互作用を樹立する。
これら4つのアミノ酸変化を、図3に示すヒトV配列のすべてに導入する。
加えて、2つの他の置換を、一緒にV配列3−11、3−23および3−53に、または個々に3−23V配列のみに導入する。位置5では、グルタミン(Q)をバリン(V)またはロイシン(L)の代わりに導入して、V領域の表面親水性を増大させる。位置14のプロリン(P)をアラニン(A)で置換して、DJ領域におけるアミノ酸127との相互作用を樹立し、そのVドメインの構造を強化する。そのような相互作用は、位置14における正常なPとでは発生しない。
V遺伝子セグメントにおいて生じさせる変異は、表面親水性増大によりVドメインの可溶性増大と全安定性低下のバランスを維持するように設計する。本発明は、三次元構造の安定性を維持しながら改善された可溶性という要求バランスを達成する任意の他の変異の使用も考慮している。
V遺伝子セグメントを、以前に記載された遺伝子座[16]に頭から尾の方向で組み込んで、それらの遺伝子操作されたヒトVセグメントと、好ましくは、ヒトD、Jおよび任意の定常領域遺伝子セグメントとを結合させる。この例では、17の遺伝子操作されたヒトVセグメント(図3)をヒトDおよびJセグメントと一体化して、C1領域を欠くCγ重鎖定常領域を含有する1つの遺伝子座にする。あるいは、同じまたは異なる定常領域を有する、遺伝子操作されたVセグメントの異なるサブセットをそれぞれが含有する7つの遺伝子座を、マウスに導入してもよい。対立遺伝子排除(PCT/IB2007/001491参照)のため、これら3つの遺伝子座のうちの1つだけが、インビボで生産性遺伝子座として選択されることになる。
(環境抗原への暴露に起因して抗体生産は必然的に発生するが)好ましくは、トランスジェニック、非ヒト哺乳動物を、広域スペクトルの抗原で免疫して、様々な重鎖のみの抗体を生産する。その後、このようにして生産された抗体のVドメイン配列を互いに比較して、共通の変異を同定する。そのような共通の変異は、可溶性を改善するものである可能性が最も高い。そのような抗体に由来するVドメインは、生理条件下で可溶性および安定性を示し、ならびにそれらには、ファージおよび別のディスプレイライブラリーから単離されたVHドメインの「粘着性」の性質がない。任意選択的に、前記VHドメインはヒト配列のみを含み、そのため、人間において治療薬として用いるとき、ラクダ科動物由来のVドメインの抗原性がそれらにはない。特定の抗原を投与した結果として起こる安定な可溶性の重鎖のみの抗体の生産のために、新たな遺伝子座にこれらの変異を組み込むと有利である。
前記トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、ウサギ、モルモット、ラットまたはマウスなどの齧歯動物である。マウスが特に好ましい。あるいは、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌまたは他の動物などの哺乳動物を利用してもよい。好ましくは、前記哺乳動物はマウスである。好ましくは、トランスジェニック非ヒト動物は、確立された卵母細胞注入技術および、確立された場合には、胚性幹(ES)細胞技術またはクローニングを用いて、産生させることができる。
あるいは、(C1領域がない)重鎖のみの抗体をコードする遺伝子座を、相同組換えによる内因性マウス重鎖遺伝子座の置換によってマウスに導入することができる。これは、当業者に公知の幾つかの方法で達成することができる。
例えば、相同組換えを用いることにより、ES細胞における標準的な組換え技法を用いて遺伝子座のそれぞれの末端にloxまたはfrt組換え部位を挿入することができる(例えば、www.ncrr.nih.gov/newspub/KOMP_Lloyd_1−18−2007.pptを参照)。それらの組換えES細胞を、(lox部位に対して作用する)creリコンビナーゼまたは(frt部位に対して作用する)flpリコンビナーゼでそれぞれ処理した後、全マウス遺伝子座を除去することとなる。
マウス遺伝子座の代わりにヒト配列を導入するために、マウス遺伝子座の5’末端配列をヒト遺伝子座の5’末端に、およびマウス遺伝子座の3’末端をヒト遺伝子座の3’末端に導入することとなる。これは、正常なまたは遺伝子操作されたヒト遺伝子座を含有するBACまたはPACのリコンビニアリングによって最も効率的に行われる。いずれかの末端にマウス配列を含有するこの新たな遺伝子座を、これらのマウスの配列により、そのマウス遺伝子座が組換えES細胞内にあった位置に組替える。結果として、そのマウス遺伝子座はヒト遺伝子座によって置換される。
多くの変形が、上の計画に関して可能である。非常に大きい遺伝子座の相同組換えは効率的ではなく、それ故、その遺伝子座の部分を新たなヒト部分で置換するたびに、多くのより小さな工程で遺伝子操作を行ってもよい。BACまたはPACの代わりに、酵母においてYACおよび組換えを用いて、lox部位をヒト遺伝子座に導入することができる。前記組換えは、マウス遺伝子座の種々の位置で行うことができ、例えば、ヒト遺伝子座は、3’lox部位をマウスLCRの5’部位に導入すると、ヒトLCRを含有することができない。結果として、前記ヒト遺伝子座の発現は、マウスLCRによって駆動されることとなる。前記組換え手順に関する多くの変形がES細胞において可能であり、Gateway(商標)クローニング(InVitrogen)などのリコンビニアリング技術をBACの構築に利用することができる。このアプローチの一例は、Regeneron VelcImmune トランスジェニックマウス(www.Regeneron.com)である。
あるいは、ES細胞ではなくマウス体細胞で前記組換えを行うことができる。マウス遺伝子座の組換えおよびヒト遺伝子座による置換後、当業者に公知の標準的な手順を用いる核移植クローニング(http://www.liebertonline.com/toc/clo/9/1)を用い、それらの組換え細胞の核を用いてマウスを産生させることができる。明らかに、宿主体細胞は、いずれの哺乳動物起源のものであってもよく、それらを用いてその免疫グロブリン遺伝子座を欠失させることができ、その哺乳動物の核移植媒介クローニングのためにその核を利用することができる。
これらの手順のすべてにおいて、組み換えられるおよび内因性遺伝子座を置換する遺伝子座は、その特定の種の抗体を生産するために、ヒト以外の哺乳動物からのものであり得る。特に、ES細胞技術のない宿主種において、遺伝子座リコンビニアリングのために相同組み換えを用いる上の計画に関して、多くの変形が可能である。
マウス重鎖のV、DおよびJ領域ならびにマウス軽鎖遺伝子座のVおよびJ領域をこれらの領域が等価のヒト遺伝子セグメントまたは配列を含むように遺伝子操作したマウスバックグラウンドにおける重および軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニックマウスの産生は、公知である(EP1399575およびwww.Regeneron.comを参照)。骨の折れるアプローチであるが、この同じ戦略を用いて、トランスジェニック哺乳動物において機能性重鎖遺伝子座を産生させることができる。例えば、宿主重鎖遺伝子座は、選ばれた種の天然のまたは遺伝子操作されたV遺伝子セグメントが宿主重鎖Vセグメントを置換するように、選択的に遺伝子操作される。宿主DおよびJセグメントを同様に置換し、そして宿主重鎖定常領域を(C1のない)選ばれた定常領域によって置換するか、C1ドメインを宿主重鎖遺伝子座から欠失させる。好ましくは、前記選ばれた挿入配列は、後に抗原投与に応答して誘導されるVドメインの物理的特性を最適化するように任意選択的に遺伝子操作された、ヒト遺伝子配列である。このアプローチの利点は、コーディング配列の外側に存する宿主調節要素が保持され、そのため、抗原投与に応じてインビボでの正常に分子および細胞が機能する可能性を最大にすることである。有利なことに、前記ホストは、齧歯動物、好ましくはラットまたはマウスであり、これにより、結果として生じる抗体の特性付けに標準的な実験室分子および細胞技術を適用することができる。ことによると、前記宿主は、任意の哺乳動物、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウサギ、ウマ、ネコまたはイヌであってもよい。必ずしもそうではないが、好都合には、前記哺乳動物に内在する抗体重鎖及び任意選択的に軽鎖遺伝子座は、重鎖のみの抗体を本発明の方法に従って発現させると、欠失または沈黙する。操作としては、重鎖抗体遺伝子座を野生型、好ましくはマウスの、バックグラウンドに導入し、その後、第二世代においてトランスジェニック重鎖遺伝子座のみが抗原投与に応答するように内因性遺伝子を欠失または沈黙させるバックグラウンドに交雑させて、B細胞活性化をもたらし、血液中で重鎖のみの抗体のみを循環させる。
抗体を、それらの抗体の源とは異なる起源のものである脊椎動物種に投与すると、投与した抗体に対する免疫応答が発現する結果となることが多いので、上で説明したような重鎖のみの抗体を産生させる方法は、人間の治療に用いるための抗体の産生に特に有用であり得る。本発明の方法によって生産される抗体は、実質的に単一または公知クラスのもの、好ましくはヒト起源のものである点で、先行技術のものより有利である。
したがって、本発明のさらなる態様は、上で定義したような1つ以上の非相同V重鎖遺伝子座を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。トランスジェニック非ヒト哺乳動物を遺伝子操作して、軽鎖を含む抗体の生産能力低減を有するようにすることができる。
抗体生産細胞は、本明細書において定義するようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物から得ることができ、および例えば、本明細書において定義するような重鎖のみの抗体の生産のためのハイブリドーマの調製に使用することができる。加えてまたは代替として、核酸配列をこれらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物から単離し、ならびにそれらを使用して、当業者によく知られている組み換えDNA技術を用いることによりVドメイン重鎖のみの抗体またはそれらの二重特異性/二官能性複合体を生産することができる。
あるいは、または加えて、本明細書において定義するようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物の免疫処置により、抗原特異的な重鎖のみの抗体を産生させることができる。
したがって、本発明は、上で定義したようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物への抗原投与に応答して重鎖のみの抗体を生産する方法も提供する。これは、環境抗原(例えば、病原体)に対する直接応答である場合もあり、またはターゲット抗原での免疫処置結果としてのものである場合もある。抗体およびそれらのフラグメントは、当業者に公知の十分に確立された方法を用いて、単離、特性付けおよび製造することができる。これらの抗体は、特に、PCT/GB2005/00292に記載されている方法において使用されているものである。
以下に、本発明を、下記の図を参照する下記の詳細な説明において、単なる例示として、説明する。
変異の位置を示すVドメインの三次元モデル。この結晶構造は、PDBパブリック・データベース(本文参照)から得られる。正常なもの>遺伝子操作したものからの、遺伝子操作したアミノ酸変化の位置を示し、矢印は三次元構造の変化の位置を示す。遺伝子操作したVセグメントの線形配列は、図3に示す。 ヒトVドメインに所望のアミノ酸変化を導入するためのPCRベースの戦略。このスキームは、5’および3’末端からプライマーを使用して所望のVHセグメント(最上部のライン、プライマー1および2)を増幅させる第一ラウンドPCRによって所望の変異を導入する基礎戦略を示すものである。その後、変異(プライマー3および4において星によって示されているもの、第二ライン)を含むオーバーラッピングプライマーを使用して、5’半分および3’半分を別々に増幅させる。次に、変異した5’および3’半分を混合し、変性させ、再生させる(ライン3)。プライマー1および2を添加し、それらの変異を含むV遺伝子セグメント全体を増幅させる(ライン4)。より多くの変異を発生させなければならない場合には、この戦略を繰り返す(本文参照)。 17の変異Vセグメントを含む、ヒト重鎖のみの遺伝子座。このパネルの上方部分におけるV遺伝子セグメント配列の前にある数字は、このパネルの最下部における数字が示すとおりのそれらの順番である。薄いグレーの陰影は、その陰影の上に示すアミノ酸によりV遺伝子セグメントのすべてにおいて発生したアミノ酸変化を示す(位置37:F;位置44:E;位置45:Q;および位置47:G)。濃いグレーの陰影の付いたアミノ酸は、それらの濃いグレーの陰影の付いたアミノ酸の上に示すアミノ酸によって置換される(位置5:Q;位置14:A)。これらの後者のアミノ酸は、中央の薄いグレーの位置で最初に修飾されたV遺伝子セグメントにおいて生成された。 17のV領域を含む8の初代(founder)トランスジェニックマウス系統(A−H)のサザンブロット。このサザンブロットをV23プローブとハイブリダイズしたものである。C−wtは、非トランスジェニックマウス対照であり、MDSは、[16]において報告されたトランスジェニックマウス系統対照である。 17Vトランスジェニックマウス系統Aの血清のウエスタンブロット。還元条件下で17V遺伝子座を含有するトランスジェニックマウス血清におけるヒト重鎖のみの抗体(HAb)の発現を示す(すなわち、二量体は見えるが二量体鎖ではなく単鎖を示す)サザンブロット。マーカーレーンは、分子量バンドを示し、ヒト血清のレーンは、正常ヒトIgGを含有する。分子量が示され、HAbは、約45Kdの予測サイズを有する。 異なるV領域の5’末端の配列。17V構築に使用した異なるV領域の5’末端の配列。コンセンサスV3配列とのミスマッチを白い陰影によって示す。 17Vを伴う遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから調製したcDNAのPCR産物。VHallプライマーを使用するか、すべてのフォワードプライマー(上の本文参照)とcγ2およびCγ3についての両方のリバースプライマー(本文参照)とを併用して、そのcDNAを増幅した。使用したフォワードプライマーの組み合わせをレーンの上に示す。マーカーレーンには左側にサイズマーカーを示す。レーンの最下部の数字は、PCR反応におけるcDNAの相対量を示す。 17Vトランスジェニックマウスから得た挿入物のゲル電気泳動の例。プラスミドDNAミニプレップを標準的な方法で調製し、EcoRIによって切断した。左側の12のプレップは、cDNA合成、およびV3オールフォワードプライマーでの増幅によって得られ、右側の12のDNAプレップは、V3オールおよび他のフォワードプライマーで得られた(本文参照。関連マーカーバンドのサイズを左側に示す)。 変異ヒトVHセグメントならびに天然DおよびJセグメントを含む、遺伝子操作したVHドメインの例。遺伝子操作した異なるサブクラスVH領域と1つのサブクラス内の遺伝子操作した異なるVH領域とを生産性VDJ再構成に使用することを示す、図8からの塩基配列を決定した挿入物の例。この結果は、J4の使用がヒトにおいて最も一般的に用いられるものであることを示している。予想通り、多様性は、主としてVDJ再構成によって引き起こされる。
以下の実施例に記載する作業は、[16]に記載されている作業に基づく。したがって、以下の実施例を十分に理解するには、[16]を読む必要がある。[16]の開示は、本明細書に参照することによって全面的に組み込まれている。
<実施例1>
<機能性の重鎖のみの遺伝子座を含むトランスジェニック非ヒトマウスの構築>
本発明の第一の態様の好ましい実施形態では、[16]に記載されている方法および当該技術分野において公知である方法を用いて、多くのヒトV遺伝子セグメントを、全D領域、全J領域、Cμ、Cγ2、Cγ3およびCα領域ならびに3’LCRを含有する多重修飾ヒト遺伝子座にクローニングした。
酵母人工染色体(YAC)を用いて、すべてのヒトV遺伝子セグメントを得ることができる。機能性ヒトV遺伝子セグメントを、[16]に記載されている(すなわち、ヒトDおよびJならびにCμ、Cγ2およびCγ3を含み、それぞれがC1および3’LCRを欠失している)遺伝子座に、セットでクローニングする。Cα領域およびスイッチ領域は、lox部位と共にクローニングすることができる(C1は、相同組換えによって除去することとなる)。
機能性V遺伝子セグメントを一緒にそれぞれの遺伝子座に何回クローニングしてもよい。最初に、それらの機能性ヒトV遺伝子セグメントをそれぞれクローニングすることとなる。これらの初期構築物のそれぞれに、従来の方法論によって第二遺伝子を付加させることとなる(例えば、XhoI−SalI制限消化/ライゲーションを用いると、XhoIおよびSalI相溶性部位のライゲーションによって両方が破壊される)。
第二クローニングラウンドを行ってもよく、このラウンドですべての第二クローンの遺伝子をその前のクローンに付加させることとなる。例えば、クローン2からの2つの遺伝子を、クローン1からの2つの遺伝子に付加させることとなり、クローン4からの2つの遺伝子を、クローン3からの2つの遺伝子に付加させることとなる、等々。第二クローニングラウンドは、4つの遺伝子の9つのクローンを生じさせるなどの結果となる。
上のプロセスを任意の時点で終わらせて、所望の数のV遺伝子セグメントを獲得することができる。D、Jおよび定常領域をこれらのV遺伝子セグメントに付加させることとなる。その後、これらの最終遺伝子座を[16]に記載されているようなトランスジェニックマウスに導入することができる。
同様の戦略を用いて、種々の天然V遺伝子セグメント、例えばヒトT細胞受容体ファミリーまたは免疫グロブリン軽鎖に由来するもの、に組み込むことができる。材料の起源をヒトに限定する必要はなく、VDJ再構成がB細胞特異的に抗原投与に応答して関連親和性成熟と共に発生するのであれば、哺乳動物およびサメを含むいずれの源に由来するものであってもよい。[16]に記載されている遺伝子および調節要素を含む機能性の重鎖のみの遺伝子座を構築するための他の経路は、当業者によく知られている(例えば、相同組換えによる宿主遺伝子配列の置換)。好ましい非ヒト宿主は、齧歯動物、特にマウスであるが、例えばトランスジェニックブタ、ウシ、ヒツジおよびヤギの技術分野の当業者には、上に記載したこのような遺伝子構築物を容易に適応させ、組み込み、選択宿主ゲノムにおいて発現させることができることが理解される。
機能性内因性免疫グロブリン遺伝子のない非ヒト哺乳動物宿主を生じさせる必要はない。機能性重鎖遺伝子座を含む選択されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、機能性内因性免疫グロブリン遺伝子発現のない非ヒト哺乳動物と後の工程で交雑させて、機能性の重鎖のみの抗体だけをB細胞依存的に血漿に分泌する、機能性重鎖遺伝子座を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、生産することができる。
<実施例2>
<17の遺伝子操作されたV遺伝子セグメントを含む機能性ヒト重鎖遺伝子座の産生およびトランスジェニックマウスにおける可溶性の重鎖のみの抗体の生産>
ヒトD領域のすべてと、ヒトJ領域のすべてと、C1ドメインが除去されたヒト定常領域のいずれか1つ(または1つ以上)と、免疫グロブリンLCRとを含有する遺伝子座に、変異ヒトV遺伝子セグメントを「カセット化(cassetting)」することによって、抗体遺伝子座を生じさせる。C1ドメインの除去により、確実に、その遺伝子座の発現は、重鎖のみの免疫グロブリンを生産することとなる([16]および上の実施例)。遺伝子内エンハンサー要素に加えてLCRを含めることにより、B細胞特異的遺伝子調節が最大化され、および宿主ゲノムへの免疫グロブリン重鎖の遺伝子座の組み込みのランダム性のため位置の影響が克服される。
本実施例は、17のV遺伝子セグメントを含有する完全ヒト遺伝子座(図1最下部)の産生を説明するものである。この遺伝子座は、被定義変異を含む異なるサブクラスの17のヒトV遺伝子セグメントによってラマ由来の2つのVHH遺伝子セグメントが置換されていることを除き、[16]に記載されているとおりである。V遺伝子セグメントの選択は制限されない。しかし、本実施例では、サブクラス3のV遺伝子セグメントを選択した。これらが、最もVHH遺伝子セグメントに似ているため、および他のサブクラスより可溶性であるVドメインを生産すると予想されるためである。次に可溶性の大きいVドメインは、サブクラス1および5であると考えられ、これらも含めた。次に、所望のヌクレオチド変異をプライマーに組み入れる常例的なPCRベースの手順によって、多くの変異をクローニングされたV遺伝子セグメントに導入して、多くの変異(構造分析に基づき、これらはVH領域の安定性を維持しながら可溶性を増大させると予想される)を発生させる。結晶構造の研究(図1)およびパブリック・データベース(特に、PDBパブリック・データベース構造1DEE、ヒト、および1QDO、ラマ)から、好ましい変異を導き出す。それらのアミノ酸変化は、以下のとおりである(図1および3を参照):
位置37におけるIまたはVからFへの変化(これは、他の変異とは無関係に好適な変異である);
位置44におけるGからEへの変化;
位置45におけるLからQへの変化;および
位置47におけるWからGへの変化。
後の3つの変異は、Vドメインの重要な部分において組み合わせでなされ、電荷(可溶性)を付加し、π−スタッキング(安定性)を改善する。
位置14におけるPもAに変化させ、これは、その分子のDJ領域(PDBパブリック・データベースにおける結晶構造における位置127)との相互作用をもたらすので、他の変異とは無関係に好適である。
位置5におけるVまたはLもQに変化させ、これは、表面親水性を改善するので、他の変異とは無関係に好適である。
最初に個々のV遺伝子セグメントを変異させて、V遺伝子セグメントの中央部にF、E、QおよびG変化を導入した(図3最上部)。次に、図3に示すようにVH3−23p、3−11pおよび3−53p領域をさらに変異させて、位置14でのAへの変化、または位置5でのQへの変化、または両方の組み合わせを導入する。
それらの個々のV遺伝子セグメントを、SalIとXhoIの間にすべてクローニングし、それによってカセットを生じさせることができる。2つのV領域を互いにライゲートするたびに、SalIとXhoIが互いにライゲートされ、それによって両方の部位が破壊される。結果として、それら2つのV遺伝子セグメントは、再び、1つのSalIおよび1つのXhoI部位を有し、それによって別のカセット化ラウンドなどが可能となる。17のV遺伝子セグメントの場合、最終17に達するように、それらを4、4、4、3および2のカセットとしてクローニングした。2つのPspI部位の間にクローニングされたSalI部位へのカセット化を行った。最終的な17のV遺伝子セグメントをPspIフラグメントとして単離し、D、JならびにCγ2およびCγ3ならびにLCR領域を含有するPACのPsPI部位にクローニングした(その遺伝子座がlox部位を含有しないことを除き、[16]を参照)。常例的な操作により、そのPspI部位をPACに導入した。
<遺伝子操作されたV遺伝子セグメントの生産>
所望の変異を導入するために変異オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用するPCRベースの合成により、下記の方法で新たな変異(図2)を導入する:
ラクダ科動物VHH領域、特に位置37におけるフェニルアラニン(F)および位置44におけるグルタミン酸(E)、を用いて得られたデータに基づき、2つの変異を生じさせた。
ロイシン45をグルタミン(Q、すなわち、ラクダ科動物とは異なる)で置換する。グルタミンは、ラクダ科動物VHHにおける残基116の付近で観察されるものに類似した構造を樹立する、グリシン116のカルボニル基と水素架橋を樹立し、粘着性を生じさせるからである。加えて、グリシン(G)で位置47におけるトリプトファン(W)またはチロシン(Y)を置換して、位置58におけるチロシン(Y)との相互作用を樹立する。
これら4つのアミノ酸変化を、図2(最上部)に示すヒトV遺伝子配列のすべてに導入する。
加えて、2つの他の置換を、一緒にV遺伝子配列3−11、3−23および3−53に、または個々に3−23VH配列のみに導入する。位置5におけるバリン(V)またはロイシン(L)をグルタミン(Q)によって置換して、V領域の表面親水性を増加させる。位置14におけるプロリン(P)をアラニン(A)で置換して、DJ領域におけるアミノ酸127との相互作用を樹立し、Vドメインの構造を強化する。そのような相互作用は、位置14における正常なPとでは発生しない。
<VH3023を主として使用するV遺伝子セグメントの変異誘発>
常例的オーバーラッピングPCR戦略を用いて、所望のアミノ酸電荷をヒトVドメインに導入した(図2)。下の実施例では、変異により6つのアミノ酸変化を2工程のオーバーラッピングPCR工程で導入した。プライマー1および2を使用してゲノムヒトDNAからPCRによってV遺伝子セグメントを単離して、変異誘発のための出発原料を得た。
<工程>
プライマー3および4は、アミノ酸変化37Iまたは37VからF、G44からE、L45からQ、およびW47からGについてのすべての塩基変化を含んでいた。プライマー1および4は、V遺伝子セグメントの5’半分を修飾するために使用し、一方、プライマー2および3は、3’半分を修飾するために使用した。プライマー3および4は、異なるV遺伝子セグメントのため異なり、例えば、VH3−11は、イソロイシンI(DNA配列ATC)を有し、これに対してVH3−23は、バリンV(DNA配列GTC)を有し、そのため異なるプライマー3および4を必要とする。これらのプライマーは、クロマトグラフィー(Qiagenキット)によって除去する。
変異を有する、得られたフラグメントを、混合し、変性させ、再生させ、PCR増幅させる。得られる長い産物は、4つのターゲッティングされたアミノ酸のF、E、QおよびGへの転化に望ましいヌクレオチド変化を有する。
このフラグメントは、プライマー5および6を使用してさらなる変異を導入するために使用した。これらは、位置5におけるロイシン(L)またはバリン(V)のグルタミン(Q)への、および位置14におけるプロリン(P)のアラニン(A)への転化に必要なDNA塩基変化を含んでいた。プライマー1および6は、5’半分を得るために使用した。プライマー2および5は、3’半分を得るために使用した。これらのプライマーは、クロマトグラフィー(Qiagenキット)によって除去した。
それらの2つの半分を工程2において説明したような1回のPCR反応で結合させた。得られた長いフラグメントは、上で説明した変化に加えて望ましいQおよびAコドン変化を有した。
変異V遺伝子セグメントを5’末端はSalIでおよび3’末端はXhoIで消化し、配列分析のためにBluescriptにクローニングした。
それらの望ましい電荷を配列分析によって確認した。使用したプライマーの配列は、次のとおりであった:
アミノ酸位置50付近のVH3−23の配列。上のラインは、変異配列を示し(変化した残基に下線をつけてある)、下のラインは出発配列を示す。
TCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGG(配列番号:1)
TCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGG(配列番号:2)
GGAGGGGTCTCAGCTATTAGTGGTAGTGGTGGTAGCACATACTACGCAGACTCCGTG(配列番号:1)
CTGGAGTGGGTCTCAGCTATTAGTGGTAGTGGTGGTAGCACATACTACGCAGACTCCGTG(配列番号:2)
フォワードVH3−23/FEQGプライマー3
5’CTGGTTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGAGCAGGAGGGGGTC(配列番号:3)
リバースVH3−23/FEQGプライマー4
5’GACCCCCTCCTGCTCCTTCCCTGGAGCCTGGCGGTACCAG(配列番号:4)
アミノ酸位置10付近のVH3−23の配列。上のラインは、変異配列を示し(変化した残基に下線をつけてある)、下のラインは出発配列を示す。
AGTTTCTGACCAGGGTTTCTTTTTGTTTGCAGGTGTCCAGTGTGAGGTGCAGCTGCAGGA(配列番号:5)
AGTTTCTGACCAGGGTTTCTTTTTGTTTGCAGGTGTCCAGTGTGAGGTGCAGCTGTTGGA(配列番号:6)
GTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGG(配列番号:5)
GTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGG(配列番号:6)
フォワードVH3−23/5+14プライマー5
5’CAGCTGCAGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGGCTGGG(配列番号:7)
リバースVH3−23/5+14プライマー6
5’CCCAGCCTGTACCAAGCCTCCCCCAGACTCCTGCAGCTG(配列番号:8)
フォワードIGHV3−23Fプライマー1
5’GTGGTCGACGATGGAAAGATAGATACCAACATG(配列番号:9)
リバースIGHV3−23Rプライマー2
5’GTGCTCGAGCATCTCTGTAAGCGTCAATCTGC(配列番号:10)
FEQG変化を既に有していたテンプレートを使用して(上の工程2の後)、位置5および14におけるアミノ酸変化を達成するためのプライマーも、別途、合成した。
位置5における変化のために、図中のプライマー5および6は異なる配列を有した。
位置5においてL>Qのために、
フォワードVH3−23/5L−Qプライマー5
5’GGTGCAGCTGCAGGAGTCTGG(配列番号:11)
リバースVH3−23/5L−Qプライマー6
5’CCAGACTCCTGCAGCTGCACC(配列番号:12)
位置14においてP>Aのために、
フォワードVH3−23/14P−Aプライマー5
5’CTTGGTACAGGCTGGGGGGTC(配列番号:13)
リバースVH3−23/14P−Aプライマー6
5’GACCCCCCAGCCTGTACCAAG(配列番号:14)
関連領域内の異なる配列を有する異なるV遺伝子セグメントのために、異なるプライマー5および6を使用した。
異なるV遺伝子セグメントに望ましい変化のすべてをクローニングし、塩基配列を決定した。
この構築の次の段階は、V遺伝子セグメントのヒト重鎖遺伝子座への挿入である。これは、幾つかの工程から成る:
1.この遺伝子座は、2つの差異を有するが、原則として[16]に記載されているものと同じである。この遺伝子座は、loxおよびfrt部位を含有せず、ラマVHH領域の代わりにPspIメガヌクレアーゼ部位を含有する。これらの遺伝子座の構築に成功した。
2.いずれかの端にPspIメガヌクレアーゼ部位に隣接した単一XhoI部位を含む別のBAC構築物を作った。
3.それぞれの修飾されたV遺伝子セグメントをSalIおよびXhoI消化によってBluescriptから除去し、修飾されたBAC3.6のXhoI部位にクローニングした。これは、V遺伝子セグメントの3’末端にXhoI部位を保持するが、そのV遺伝子セグメントの5’末端のSalIを破壊する。
4.得られた構築物をその固有のXhoI部位で切断し、次のV遺伝子セグメントをその部位にクローニングする。すると、V遺伝子セグメント二量体の3’末端には固有のXhoIが再び残る。
5.このサイクルを、所望のV遺伝子セグメント多量体が得られるまで、繰り返す。
6.その多量体をBAC3.6から除去し、工程1において説明した遺伝子座の固有のPspI部位にクローニングする。
7.このようにして得られた完全にヒトの重鎖のみの遺伝子座を受精卵にマイクロインジェクトして、免疫処置用のトランスジェニックマウスを得る。
全遺伝子座をNotI消化[16]によりPACから消化し、常例の手順によって精製し、標準的な手順によって受精マウス卵子に注入して、そのゲノムの一部として前記遺伝子座を有するトランスジェニックマウスを得る[16]。内因性マウス免疫グロブリン遺伝子を欠失させたまたは発現抑制したマウス系統を使用する必要はない。対立遺伝子排除により、どの遺伝子座(内因性または導入遺伝子)が結果的に生産的発現を生じさせることとなるかが決まるからである。本発明者らの好ましい戦略は、内因性遺伝子発現を最小限に有するか全く有さないバックグラウンドに機能性導入遺伝子を有するマウスを交雑させる戦略、およびターゲット抗原に対する重鎖のみの抗体の産生のためのこれらの交雑種からの子孫を利用する戦略である。この特別な遺伝子座を両方のタイプで注入した。下に示す結果は、野生型受精卵における注入からのものである。
ヒト重鎖のみの抗体を産生させるための代替の、より面倒なアプローチは、非ヒト哺乳動物宿主(この実施例ではマウス)のV、D、Jおよびセグメントをヒト天然および/または遺伝子操作Vセグメント、ヒトDおよびJセグメントで置換する、ならびにそれらの定常領域をC1のないヒト重鎖定常領域で置換する、相同組換え戦略を用いるアプローチである。ヒトVドメインのみを求める場合には、C1のない宿主定常領域遺伝子で十分である。
確立された卵母細胞注入技術を用いて、異なる領域の常例的PCR分析などの標準的な手順により、またはトランスジェニック遺伝子座の異なる領域を検出する常例的サザンブロッティングにより、そのマウスがトランスジェニックであることを証明する(図4)。
導入されたヒト重鎖遺伝子座が、発現される機能性で可溶性の抗体である場合、それらの導入遺伝子は、宿主応答の一部としてその天然の環境に応答すると予想される。ヒト重鎖のみの抗体は、血漿中に存在し、ヒト重鎖のみの抗体mRNAは、循環B細胞中に存在する。クローニングしたmRNAの配列分析により、(i)好ましい導入変異、および(ii)安定な可溶性の循環ヒト重鎖のみの抗体の存在をもたらす結果となる任意の体細胞変異が同定される。
ヒト重鎖のみの抗体が、およびヒト重鎖mRNAが、導入遺伝子から生産されることを証明するために、採血し、血清および白血球を回収する。ヒトIgGを特異的に検出する抗体(ペルオキシダーゼに結合させたSigmaヤギ抗ヒトIgG、図5)を使用するウエスタンブロット法により、ヒト重鎖のみの抗体が血漿中に存在することが実証される。
下記のプライマーを使用する同じ血液サンプル中の細胞から調製したRNAのRT−PCRにより、予想されたmRNA転写産物の存在が証明される。
下に図示する(図6)異なるV遺伝子セグメントのATG出発コドン領域から得たフォワードプライマーを使用して、そのRNAを逆転写し(オリゴdT)、cDNAにした。
4つのプライマーを合成した:
V3−11、66、74、53、64、48を合成する、VH3オール GGCTGAGCTGGGTTTTCCTTGTTGCTATT(配列番号:15);
V5−51を認識する、VH3−51 CCGCCATCCTCGCCCTCCTCCTGGCTGTT(配列番号:16);
V1−46を認識する、VH3−46 CCTGGAGGGTCTTCTGCTTGCTGGCTGTA(配列番号:17);および
V3−23を認識する、VH3−23 GGCTGAGCTGGCTTTTTCTTGTGGCTATT(配列番号:18)。
その後、Cγ2およびCγ3定常領域に特異的な[16]に記載されているものと同一である同じフォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用して、その得られたcDNAをPCR増幅した。
フォワードプライマーとリバースプライマーを併用する異なるサンプルのPCR増幅によって、適切なサイズのフラグメント(約390bp)が異なるプライマーセットで生産されたことが証明される(図7)。このPCR反応におけるポリメラーゼは、PFUポリメラーゼ(変異を防止するためのプルーフリーディングポリメラーゼ)であり、その後、(PGMTeasyへのクローニングを可能にするために)非プルーフリーディングポリメラーゼを使用してそれにAを付加させた(すなわち、別のPCRラウンドではない)。
重要なこととして、前記フラグメントが多少散在性であることは明らかであり、これは、VDJ組換えおよび変異のプロセスから予想されるとおり、それがわずかに異なる長さの異なるPCR産物を含有することを示している。このように、遺伝子座を発現させ、抗体生産を生じさせる。
V遺伝子セグメントに由来する好ましい導入変異を同定するために、ならびにマウスによる親和性成熟および選択に起因してVドメイン内に存在するさらなる変異を同定するために、前記PCR産物(図7)をpGEMTeasyにおいて標準的なATクローニングによってクローニングし、標準的な方法によってDNAを調製した。これらのDNAサンプルをEcoRIで切断し、ゲル電気泳動法によって分析した。これにより、それらが異なるサイズの挿入物を有し(図8)、したがって、マウスにおいて異なる組換え/変異がなされることが証明される。
その後、単一挿入物を有するプラスミドの塩基配列を決定した。実際、これにより、可溶性および安定性を強化するように遺伝子操作されたヒトV遺伝子セグメントを使用して異なる組換えおよび変異がマウス免疫系によって生じる(図9)ことが、確認される。生理条件下での血漿中の循環重鎖のみの抗体の存在は、導入遺伝子由来の可溶性で安定なヒト重鎖のみの抗体がB細胞によって合成され、分泌されることを示している。クローニングされ、発現されたヒトVドメインは、インビボで誘導される体細胞変異(単数または複数)(これらの変異を欠くVドメインと比較して改善された可溶性および安定性を付与するもの)を同定するための比較身体研究用のタンパク質源となる。
<実施例3>
実施例2において、本発明者らは、改善された可溶性および安定性をVドメインに付与するための新たな変異の予測;遺伝子操作したV遺伝子セグメントの重鎖遺伝子座への導入;導入遺伝子の発現の分析;血漿中の生理条件下で循環する可溶性で安定な重鎖のみの抗体の存在をもたらすVDJ再構成の結果としてのVHドメイン内の好ましい変異V遺伝子セグメントの同定を教示している。
第三の実施例では、インシリコで導き出した多くのさらに好ましい変異(実施例1参照)をヒトV遺伝子セグメントに導入する(配列の例については、図1を参照)。この実施例において、変異は、例えば、位置45に、ラクダ科動物VHH領域におけるその位置の荷電アミノ酸の存在と類似に荷電アミノ酸を作って、可溶性を改善する変異であり、ならびに他の場所にさらなる相乗的変異を導入して、V安定性を維持する。
したがって(配列については図3を、およびバプリックデータベースPDBを参照):
Lを、位置45ではR(もしくは別の荷電アミノ酸またはC)に変化させ、
位置44ではEまたはSまたはA(E>S>A)に変化させ(これは、πスタッキングと位置95におけるYおよび位置118におけるWで位置45のループ位置を安定させるために好適である);
位置52ではRに変化させる(これは、Vの主鎖との相互作用により安定し、他の変異とは無関係に好適である)。
位置45におけるRの変化も、位置61におけるKへの変化と併せて好適である。またこの変異は45とは無関係に好適である。
位置37における(Fへの)および位置5における(Qへの)変化は、実施例1において説明したように、なお、好適である。
ラマ配列内の位置25で始まり、38(ヒトVでは35)で終わるGHGループは、位置27におけるR(またはS)との組み合わせでヒトVに移植すると、それが親水性を増加させるので、好適であるし、ならびにそれをTに変化させることによって位置77と接触させると、安定化がもたらされる。
その後、上の実施例2において説明したように、遺伝子操作ヒトV遺伝子セグメントを(サブクラスに関係なく)、ヒト重鎖のみの遺伝子座に導入し、導入遺伝子を発現させ、親和性成熟に起因する好ましい遺伝子操作変異および任意の追加の好ましい変異を同定することができる。
/V接合部での変異を組み合わせ、それにより可溶性を改善する、上で説明した原理に基づいて、さらなる導入遺伝子を産生させることができ、その一方で、V/V接合部に導入された変異のインシリコ分析に基づいて追加の遠位変異を導入して、V安定性を維持する。インビボでの選択および天然成熟プロセスにより、生理条件下で可溶性であり安定である重鎖のみの抗体の血清への分泌が生じる。
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Claims (23)

  1. 重鎖遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物に抗原を投与することを含む、重鎖のみの抗体を生産するための方法であって、
    ここで、前記重鎖遺伝子座は、
    (i)疎水性を減少させるためにVL接合部、及び(ii)構造不安定性を克服するために他の位置に、1つ以上のアミノ酸変異をコードする複数のV遺伝子セグメントを含み、
    少なくとも1つのD遺伝子セグメントおよび少なくとも1つのJ遺伝子セグメントを含み、
    CH1ドメインをコードする遺伝子セグメントを欠くか、または機能的なCH1ドメインの発現を防止するように遺伝子操作されており、
    抗原投与に応答して発現されたとき、VH遺伝子によってコードされた可溶性VHドメインを有し、CH1のない重鎖のみの抗体を生産する、ここで、VH遺伝子は、VDJ再構成および親和性成熟の結果として前記VH遺伝子に組み込まれた、好ましいV遺伝子セグメントを含む、
    方法。
  2. 前記好ましいV遺伝子セグメント及び任意選択的に好ましいDおよびJセグメントが、親和性成熟によってさらに修飾され、その結果として、重鎖のみの抗体に組み込まれたVドメインの安定性および可溶性が高まる請求項1に記載の方法。
  3. 前記非ヒト哺乳動物が、
    前記遺伝子座を含む導入遺伝子をインビトロで生産することと、
    前記非ヒト哺乳動物が生産される、適した細胞に前記導入遺伝子を導入することと
    によって生産される、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記細胞が、胚性幹細胞または卵母細胞である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記非ヒト哺乳動物が、前記複数の変異V遺伝子セグメント及び、任意選択的に、前記DおよびJ遺伝子セグメントが、前記非ヒト哺乳動物におけるCH1機能性を欠く内因性重鎖遺伝子座内の等価の遺伝子セグメントを置換する相同組換えによって生産される、請求項1または請求項2に記載の方法。
  6. 前記非ヒト哺乳動物が、複数の重鎖遺伝子座を含み、前記重鎖遺伝子座のうちの少なくとも1つが、請求項1において定義したとおりであり、および前記重鎖遺伝子座のそれぞれが、異なる染色体上にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 1つ以上の遺伝子座が、天然V遺伝子セグメントを含み、その残りが、1つ以上の遺伝子操作されたV遺伝子セグメントを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 各染色体上の遺伝子座が異なる、請求項6または請求項7に記載の方法。
  9. 各染色体上の遺伝子座が同じである、請求項6に記載の方法。
  10. 前記V遺伝子セグメントが、変異ヒトV遺伝子セグメントである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記遺伝子座が、複数のD遺伝子セグメントを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記遺伝子座が、複数のJ遺伝子セグメントを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記遺伝子座が、定常領域をコードする少なくとも1つの遺伝子セグメントを含有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記遺伝子座が、定常領域をコードする複数の遺伝子セグメントを含有する、請求項13に記載の方法。
  15. 定常領域をコードする前記遺伝子セグメントがヒトのものである、請求項13または請求項14に記載の方法。
  16. DおよびJ遺伝子セグメントそれぞれがヒトのものである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 各V遺伝子セグメントが、位置37、44、45および47のうちの1つ以上に変異を有するタンパク質をコードする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 各V遺伝子セグメントが、位置37、44、45および47のすべてに変異を有するタンパク質をコードする、請求項17に記載の方法。
  19. 前記V遺伝子セグメントが、位置37における残基がフェニルアラニンであり、位置44における残基がグルタミン酸であり、位置45における残基がグルタミンであり、および/または位置47における残基がグリシンであるタンパク質をコードする、請求項17または請求項18に記載の方法。
  20. 各V遺伝子セグメントが、位置5および14のいずれかに変異を有するタンパク質をコードする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 各V遺伝子セグメントが、位置5と14の両方に変異を有するタンパク質をコードする、請求項20に記載の方法。
  22. 前記V遺伝子セグメントが、位置5における残基がグルタミンである、および/または位置14における残基がアラニンであるタンパク質をコードする、請求項20または請求項21に記載の方法。
  23. 図3に記載のV遺伝子セグメントのいずれか1つによって、一部、コードされたVHドメインを有する、重鎖のみの抗体。
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