JP2010500410A - モダフィニルによる早漏の治療 - Google Patents

モダフィニルによる早漏の治療 Download PDF

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Abstract

男性個体における早漏を治療するための方法およびモダフィニルを含んでなる組成物について、記載する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2006年8月14日に出願された米国仮出願第60/837,474に関する優先権を主張する。
発明の分野
本発明は、性的機能不全の分野における発明である。具体的には、本発明は、射精を遅らせ、そして性行為中の早漏を治療するための組成物および方法を提供する。
発明の背景
男性の性的機能不全の三つの主要な形態は、早漏(PE)、勃起機能不全(ED)および性欲減退である。米国泌尿器科学会は、早漏を、挿入前もしくは直後に所望されるよりも早く生じ、パートナーの一方もしくは双方に苦痛をもたらす射精であると、定義している(Guideline on the Pharmacologic Management of Premature Ejaculation、米国泌尿器科学会、2004年)。機能不全は、生涯型(原発性)または獲得型(続発性)のいずれかに分類される。早漏は、最も一般的な男性の性的不満の一つである。調査により、すべての年齢の男性のおよそ25%〜30%(約5人に1人〜約3人に1人)がPEに罹患していると推定されている(Laumannら、JAMA, 281:537-544(1999年)を参照されたい)。米国では、18歳〜59歳のおよそ2500万人の男性が、PEを経験している。実際の数字が何であろうと、持続性のPEは、性的パートナーに不満足感もしくは満たされない感情を残す可能性があり、罹患した男性個体にストレスもしくは困惑をもたらす可能性があり、そして、パートナー間の親密な関係を悪化させる可能性がある。
PEの治療には、心理療法/行動療法および薬理学的治療が含まれる(概説に関しては、Sharlip, J.Sex Med., Supp.2:103-109(2005年)を参照されたい)。男性患者の射精においてある程度の所望される遅延を供することが報告された薬剤には、局所麻酔剤、非選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)およびホスホジエステラーゼ−5阻害剤(PDE−5)がある。例えばベンゾカインまたはリドカイン−プリロカインの組み合わせを含有する調製物などの局所麻酔剤をペニスに適用すると、感度が弱まり、そして射精が遅れる。しかしながら、局所適用される麻酔剤は、パートナーの一方もしくは双方に刺激をもたらすか、またはオルガズムを阻止する望ましくない感覚鈍麻を生じる可能性がある。
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、うつ病および種々の不安障害もしくは人格障害を治療するために用いられる薬物分類である。SSRIはまた、性的絶頂を遅らせるかもしくは阻害し、かつ射精を遅らせることも、報告されている。射精の遅延を含むこのような性的副作用は、フルオキセチン(プロザック(登録商標)(イーライリリー社、インディアナポリス、インディアナ州)として市販されている)、セルトラリン(パキシル(登録商標)(グラクソ・スミスクラインplc、ロンドン、英国)として市販されている)、パロキセンチン(ゾロフト(登録商標)(ファイザーInc.、ニューヨーク、ニューヨーク州)として市販されている)およびダポキセチン(アルザ・コーポレーション、マウンテンビュー、カリフォルニア州)などの周知の抗うつ剤に報告されている。したがって、SSRIは、PEに対する治療を開発するための焦点ともなっている。同様な性的副作用は、三環系抗うつ剤(例えば、アナフラニール(ノバルティス・インターナショナルAG、バーゼル、スイス))で治療された患者においても認められており、該剤は、PEを治療するためにも用いられている。
現在使用されているSRIまたはSSRIなどの抗うつ剤の、PEを治療するための使用のほとんどは、典型的には、うつ病または重度の人格障害の治療に使用されるものに類似した長期間継続する投与レジメンを伴って提案されている。しかしながら、SRIおよびSSRIに対する長期間の投与レジメンは、望ましくない抗コリン作動性効果、性欲の低減、生殖器の感覚消失、頭痛、悪心、発汗およびめまいを含む、1またはそれより多くの副作用を蓄積するリスクを、増加させる。このような副作用のリスクまたは発生は、慢性的うつ病、異常な不安または重度の人格障害の治療に対する有益性を考慮して、正当化される。SSRIの投与が、急性的もしくは「必要時」(prn)にPEを治療するために用いられた場合、望ましくないことに薬物の有効性は弱まる。SSRIなどの向精神薬は、長期間継続する投与を行うと、うつ病を治療するために通常用いられる用量以下で投与される場合であっても、1またはそれより多くの有害な副作用を、最終的に生じさせる可能性があり、該副作用は、その継続的な使用に禁忌を示すか、あるいは、うつ病または重度の人格障害を減弱させるための治療を必要としない患者のコンプライアンスを最終的には弱める。
ダポキセチンは、PEの治療に特化して開発された最初のSSRI薬物である。例えば他のSSRIよりも迅速に作用し、かつ迅速に消失するなどの、ダポキセチンの薬物動態は、性行為の1〜3時間前に服用することによって「要求に応じた」もしくは「必要時」(prn)の治療を提供することが可能な、経口投与可能なダポキセチン錠の開発に、特に望ましいとみなされ、他のSSRI抗うつ剤の認可外使用に用いられる長期間継続する投与を不要とした。副作用は、他のSSRI薬物にみられるものと同様であり、臨床試験において最も一般的なものに含まれる悪心、下痢およびめまいである。2005年10月に、米国食品医薬品局は、PEのダポキセチン治療に対する新薬申請を許可しないとの文書を発行した。
明らかに、PEに対するより有効な薬理学的治療の需要が、なおある。
発明の概要
本発明は、男性個体における早漏(PE)を治療するための方法および組成物であって、性交中に射精を遅らせるが、ただし妨げないための有効量のモダフィニル(ベンズヒドリルスルフィニル・アセトアミド;2-[(ジフェニルメチル)スルフィニル]アセトアミド)を個体に投与することを含んでなる、前記方法および組成物を提供することによって、上記問題を解決する。
モダフィニルは、ラセミ混合物、またはそのl−鏡像異性体とd−鏡像異性体の他の組み合わせとして、製剤化されてもよい。L−モダフィニル(R-(−)-鏡像異性体)のヒト体内での半減期(T1/2)はおよそ10時間〜14時間であり、それに対して、d−モダフィニル(S-(+)-鏡像異性体)の半減期は3時間〜4時間である。したがって、本明細書に記載した方法および組成物は、様々な時間の長さで所望の薬理学的効果を提供するために異なる組み合わせのモダフィニルのl−およびd−鏡像異性体を含んでなる、モダフィニル構成成分を含んでなってもよい。
好ましい実施態様において、本明細書に記載した方法および組成物は、50重量%を超えて100重量%までのd−モダフィニルを含んでなる、モダフィニル構成成分を含んでなる。より好ましくは、本明細書に記載した方法および組成物のモダフィニル構成成分は、最も短時間にてモダフィニルの所望の薬理学的活性を提供するために、100重量%がd−モダフィニルである。
別の好ましい実施態様において、本明細書に記載した組成物および方法は、非粒子状のモダフィニルを含んでなる。
モダフィニルは、これに限定されないが、舌下、口腔内、胃へ嚥下するための経口、局所(経皮を含む)、経鼻、静脈内、皮下、筋肉内および直腸内を含む、多様な経路または方式のいずれかにより男性におけるPEを治療するための投与に向けて、製剤化されてもよい。
別の実施態様において、本発明は、モダフィニルおよび医薬的に許容可能なキャリアーを含んでなる医薬組成物であって、本明細書に記載した方法におけるPEを治療するための使用に向けた前記組成物を、提供する。
好ましい実施態様では、医薬組成物は、腸への摂取および肝初回通過代謝を避ける投与経路を用いて、可能な限り急速に、モダフィニルの所望の薬理学的活性を個体に提供するように、製剤化される。
別の好ましい実施態様では、本明細書に記載した方法において用いられる医薬組成物は、速崩壊錠;凍結乾燥調製物;舌下もしくは頬側投与に特に適したフィルム;および鼻腔内投与用製剤からなる群より選択される剤形に製剤化される。より好ましくは、組成物は、個体の粘膜(例えば、口腔、鼻または直腸の粘膜)への投与に向けて製剤化される。さらにより好ましくは、組成物は、粘膜付着性である。
本明細書に記載のモダフィニルを含んでなる医薬組成物はまた、これに限定されないが、粘膜付着性化合物、緩衝剤、可塑剤、安定剤、矯味剤、着香料、着色料、防腐剤、不活性充填剤、保存料およびそれらの組み合わせを含む、1またはそれより多くのさらなる成分を含有してもよい。
さらに提供されるのは、PEの治療における使用のためのモダフィニルを含んでなるキットおよび器具である。PEを治療するためにモダフィニルを投与するための器具には、これに限定されないが、吸入器、噴霧器および使い捨てアプリケーターが含まれる。使い捨てアプリケーターの好ましい形態には、これに限定されないが、経皮パッチ、スワブ、スポンジおよびストリップが含まれる。このような器具は、十分な量のモダフィニルまたは本明細書に記載のモダフィニル組成物を送達して、性交中における個体による射精を遅らせる。好ましくは、本明細書に記載の器具内もしくは表面に存在するモダフィニルは、50重量%を超え、そしてより好ましくは約100重量%のd−モダフィニルである。好ましくは、本明細書に記載の器具内もしくは表面に存在するモダフィニルは、非粒子状モダフィニルである。
発明の詳細な説明
本発明は、男性個体における早漏(PE)を、性交前にモダフィニルを個体に投与することにより治療するための、方法および組成物を提供する。性交中に射精を遅らせる所望の有益性を得る前に循環もしくは組織中で一定の薬物レベルを確立し、そして維持するための長期間継続する投与(例えば、1週間以上毎日)の期間を必要とすることなく、「要求に応じて」もしくは「必要時」(prn)に所望の効果の比較的急速な発現を供するために、モダフィニルを、本明細書に記載したとおりに製剤化し、そして用いてもよい。
1もしくはそれより多くの指定された要素または工程「を含んでなる」と本明細書に記載された組成物または方法は、指定された要素または工程は必須であるが、ただし、他の要素または工程を当該組成物もしくは方法の範囲内で加えてもよいという、広義の意味である。冗長さを避けるために、1もしくはそれより多くの指定された要素または工程「を含んでなる」と本明細書に記載された任意の組成物または方法は、同じ指定された要素または工程「から基本的になる」(もしくは「からなる」)対応するより限定された組成物または方法も表し、該組成物または方法が、指定された必須要素を含み、かつ、該組成物または方法の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素または工程も含んでよいことも意味することも、理解される。また、1もしくはそれより多くの指定された要素または工程「を含んでなる」あるいは「から基本的になる」と本明細書に記載された任意の組成物および方法は、いかなる他の要素または工程も除外した、指定された要素もしくは工程「からなる」、より限定され、かつ狭義の対応する組成物または方法も表すことも、理解される。本明細書に開示した任意の組成物および方法において、任意の指定された要素または工程の公知もしくは開示された同等物に、その要素または工程をそれぞれ置き換えてもよい。
「モダフィニル」の語は、米国特許第5,612,379および第6,489,363(参照によって本明細書に援用される)に記載のベンズヒドリルスルフィニル・アセトアミドおよび2-[(ジフェニルメチル)スルフィニル]アセトアミドと同義である。該化合物は、1970年代にLaboratoire L. Lafon社によって開発されたアセトアミド誘導体類に属するものとして、最初に同定された(例えば、米国特許第4,177,290を参照されたい)。モダフィニルは、種々の群の古典的な中枢神経系(CNS)刺激物質とは構造的に異なり、かつ、極めて異なる作用方式を有しており、これは、今後、十分に明らかにされなければならない。以下の式は、中性(遊離)塩基型のモダフィニルを表す:
Figure 2010500410
モダフィニル中の硫黄が、キラル中心である。したがって、モダフィニルは、ラセミ混合物(ラセミ体)として、または個々の鏡像異性体として存在してもよい。モダフィニルの個々の鏡像異性体は、当該技術分野において公知の方法によって分離してもよい(例えば、Donovanら、Ther.Drug Monit., 25(2):197-202(2003年)を参照されたい)。「モダフィニル」、「ベンズヒドリルスルフィニル・アセトアミド」および「2-[(ジフェニルメチル)スルフィニル]アセトアミド」の語が、遊離塩基と種々の有機酸および無機酸との塩形態を包含することもまた、理解されよう。モダフィニルの製造および送達方式には、他の障害の治療において公知の1またはそれより多くのものが含まれてもよい(例えば、米国特許第5,612,379;米国再発行特許第RE37,516E;米国特許第6,489,363を参照されたい)。加えて、本明細書に記載の、モダフィニルを含んでなる本発明の方法および組成物は、モダフィニルの代わりに、モダフィニルのプロドラッグ、すなわち、個体に投与されるときにモダフィニルへと代謝される化合物を代替として含んでなってもよい。モダフィニルの機能的に同等な修飾体、ならびにモダフィニルの誘導体、類似体および模倣体も、本明細書の教示にしたがって用いてよい。
中枢神経系(CNS)におけるモダフィニルの正確な薬理学的作用機序は、明確でない(例えば、Physician's Desk Reference、第61版(トムソン、モントベール、ニュージャージー州、2007年)、988〜993ページを参照されたい)。例えば、モダフィニルは、ドパミン作動系が関与することなく、中枢のシナプス後αアドレナリン受容体を調整することが、示唆されている(例えば、Duteilら、Eur.J.Pharmacol., 180:49-58 (1990年)を参照されたい)。しかしながら、別の研究は、モダフィニルが細胞外ドパミンを増加させたこと、ならびに、ドパミン輸送体ノックアウトマウスがモダフィニルの作用に反応しなかったことを、報告している(Wisorら、J.Neuroscience, 21(5):1787-1794(2001年))。モダフィニルの神経精神薬理学的プロファイルは、アンフェタミン類とは区別されている(例えば、Saletuら、Int.J.Clin.Pharm.Res., 9:183-195(1989年)を参照されたい)。
上記のように、モダフィニルは、その硫黄原子をキラル中心とするラセミ化合物である。モダフィニル分子は、二つの光学活性体、すなわち、「d−モダフィニル」(S-(+)-モダフィニル)および「l−モダフィニル」(R-(−)-モダフィニル)のうちのいずれかとして存在する。市販されているモダフィニルラセミ体の製剤は、経口投与可能な錠剤プロビジル(セファロンInc.、ウエストチェスター、ペンシルバニア州)であり、ナルコレプシーを患う個体における日中の過度の眠気(EDS)を治療するための覚醒促進剤としての使用を認可されている(例えば、Wongら、J.Clin.Pharmacol., 39:30-40(1999年);米国再発行特許第RE37,516Eを参照されたい)。このような市販の錠剤は、ラセミ体モダフィニルを100mgまたは200mg含有する。最近では、l−鏡像異性体モダフィニルの製剤(ヌビジル(セファロンInc.、ウエストチェスター、ペンシルバニア州))が、同様にEDSの治療用に、米国で認可された。EDSを治療するためにモダフィニルを用いることの認められる利点は、刺激物質であるアンフェタミン、およびCNSに効果をもたらすことが公知の構造的に関連した化合物などの他の薬物に関するものよりも、副作用が少なく、かつ容易に治療される副作用であることが、一般に考えられる。
モダフィニルの光学的鏡像異性体は、動物において類似した薬理学的作用を有する。d−モダフィニルおよびl−モダフィニルは、ともに、マウスにおいてモダフィニルラセミ化合物と同じ薬理学的活性を有することが報告されているが、しかしながら、ラセミ化合物の薬物動態試験により、ヒト体内でのl−モダフィニルの半減期(T1/2)はおよそ10時間〜14時間であり、それに対して、d−モダフィニルは約3時間〜4時間であることが、示されている。加えて、d−モダフィニルの排出は、l−モダフィニルの排出より3倍速いことが報告されている。個々の鏡像異性体の半減期およびクリアランス速度の差によって、ラセミ体モダフィニルの使用は、二つの鏡像異性体の循環レベルに差をもたらす。循環中のd−モダフィニル量は、l−モダフィニルのものより3倍少なく、かつ短期間であり得る。単回経口投与後に、ラセミ体モダフィニルは、容易に吸収され、投与後2時間〜4時間に最大血漿中濃度に達する(例えば、Wongら、J.Clin.Pharmacol., 39:30-40(1999年);Wongら、J.Clin.Pharmacol., 39:281-288(1999年);Robertsonら、Clin.Pharamcokinet., 42:123-137(2003年);および、Dingesら、Curr.Medical Research and Opinions, 22:159-169(2006年)を参照されたい)。
本発明にしたがってPEを治療するために個体に投与されるモダフィニルの具体的な用量は、担当の医療提供者により考慮されるべき多数の要因のいずれかによって決まるであろう。典型的には、モダフィニルの所望の用量は、個体のパートナーとの性的体験を、それに続く睡眠、休養または他活動へ従事する個体の能にほとんど影響を及ぼさないか、もしくは最小限の影響により向上させるように、個体による射精を遅らせるが、ただし妨げないものであるべきである。したがって、投与は、PEの治療に関して所望の有益性を提供すべきであって、かつ、過度の覚醒など、それに続く望ましくない薬物効果を伴うべきではない。特定の用量のモダフィニル投与後の個体からのフィードバックは、個体のPEを治療するための適切な用量を評価および決定する際に、医療提供者にとって特に有用である。
上記のように、SSRIなどの抗うつ剤に対する投与レジメンは、所望の薬理学的活性を得て、そして維持するために閾値を超える一定の薬物量を負荷し、かつ維持するために、典型的には、例えば毎日などの長期間継続する投与を必要とする。しかしながら、個体におけるSSRIの薬理学的レベルの維持は、慢性うつ病を治療するために用いられるレベル以下であっても、PE治療のための継続使用を正当化できない可能性があるか、またはこのような治療への患者のコンプライアンスに影響を及ぼす可能性のある1またはそれより多くの有害な副作用を伴う場合が多い。対照的に、モダフィニルは、所望の薬理学的効果を提供するため、すなわち、性行為中の射精を遅らせるために、個体において先行負荷および臨界レベルの維持を必要とせず、したがって、「要求に応じた」もしくは「必要時」(prn)の使用に向けて製剤化されることが可能である。したがって、本明細書に記載した好ましい方法および組成物は、prn投与に向けて製剤化されたモダフィニルを含んでなる。
「モダフィニル構成成分」は、本明細書では、モダフィニル(ラセミ体、それぞれのモダフィニル鏡像異性体、鏡像異性体の組み合わせ)、またはモダフィニルを含んでなる組成物を指す。好ましくは、本明細書に記載した本方法および組成物において使用するモダフィニル構成成分は、性行為中の所望の射精遅延を、それに続く性行為を行っていない期間に個体において薬物が持続することなく、個体に提供する。モダフィニルのl−鏡像異性体の半減期は、d−鏡像異性体よりもおよそ3倍長いため(上記を参照されたい)、本明細書に記載した方法および組成物のモダフィニル構成成分を、モダフィニルの急速な送達を供給し、かつ、個体がモダフィニルの所望の薬理学的活性の有益性を得る時間の長さを調節するよう、製剤化してもよい。好ましくは、本明細書に記載した方法および組成物は、11時間未満、より好ましくは10時間未満、さらにより好ましくは約30分〜約5時間の期間、そして最も好ましくは約30分〜4時間未満の期間、所望の効果を個体に提供するモダフィニル構成成分を、含んでなる。したがって、本明細書に記載した好ましい方法および組成物は、モダフィニルのd−鏡像異性体が50重量%を超え、かつ100重量%までのモダフィニル構成成分を、含んでなる。
上記のように、現在入手可能なモダフィニルの組成物は、嚥下される錠剤の形態である。したがって、モダフィニルを、肝初回通過代謝を受ける経口投与用に製剤化してもよく、この場合、薬物は嚥下され、そして胃腸管(腸)を通過し、次いで全身循環に入る前に肝臓を通過する。しかしながら、本明細書に記載した組成物および方法でのモダフィニルの好ましい投与経路は、初回通過代謝に関わるものよりも、モダフィニルの迅速な送達および低い分解リスクを提供する可能性の高いものである。モダフィニル投与のこのような好ましい経路には、これに限定されないが、舌下、頬側、経鼻、静脈内、皮下、筋肉内、局所(経皮を含む)および直腸内の投与方式が含まれる。全身循環への直接的な送達は、腸および肝臓を経由する(肝初回通過代謝)よりも好ましいが、全身循環中のモダフィニルの濃度は、有効量が血液−脳関門を透過し、そして、好ましい送達標的である脳およびCNSに送達されることを確実にするのに十分でなければならない。鼻腔および口腔の粘膜への投与は、粘膜に内在する毛細血管の一部が脳およびCNSの循環への直接的な導管を提供するという事実により、特に好ましい。このように、鼻もしくは口腔粘膜投与に向けたモダフィニルの製剤は、prn投与に好都合なばかりでなく、脳およびCNSへの送達効率を増強することによって一用量あたりの濃度をより低くできるというさらなる有益性を提供する可能性がある。
本明細書に記載した組成物は、好ましくは、性交中に射精を効果的に遅らせるが、ただし妨げない送達形態にて、製造される。本明細書に記載のモダフィニルを含んでなる組成物を、多様な固体、半固体または液体のいずれかの送達形態(「剤形」)にて製剤化してもよい。非粒子状形態のモダフィニルは、本明細書に記載した組成物および方法のモダフィニル構成成分としての使用に、特に好ましい。
一般には、本明細書に記載した方法において用いられる組成物は、標準的な医薬プロトコールおよび文書(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Alfonso R.Gennaro編集(マック・パブリッシングCo、イーストン、ペンシルバニア州、1990年))にしたがって、特定の経路による個体への投与に向けて製剤化されてもよい。本明細書に記載した医薬組成物は、好ましくは、医薬的に許容可能なキャリアー(「媒体」)も含んでなってよく、そして、特定の方式もしくは経路による投与に向けた医薬組成物の製造に用いられてもよい、任意の多様な他化合物も含んでなってよい。「医薬的に許容可能な」とは、生物学的、化学的、または任意の他の点から身体の化学および代謝と不適合ではなく、かつ、モダフィニル構成成分および本明細書に記載した組成物中の任意の他の構成成分の所望の有効な活性に悪影響を及ぼさない材料を、意味する。
本明細書に記載した方法において個体におけるPEの治療に有用な組成物には、2006年7月21日に出願された国際出願第PCT/US2006/028150(PCT公開第WO 2007/013962として利用可能;参照によって本明細書に援用される)に記載の、急速な発現(短いTmax)および短い期間(短いT1/2)のモダフィニル組成物が含まれてもよい。好ましくは、このような組成物は、d−モダフィニルが50重量%を超え、かつ100重量%までのモダフィニル構成成分を、含んでなる。
モダフィニルは、基本的には、水に不溶性である(水への溶解度は約0.4mg/ml)。したがって、本明細書に記載の使用のための組成物の製造に、種々の乾燥製造法、または、医薬的に許容可能な非水溶性溶媒の使用を用いてもよい。そうは言うものの、種々の組成物を製造する過程において、これに限定されないが、水、生理食塩液および水溶性バッファーを含む、1またはそれより多くの医薬的に許容可能な水溶性キャリアーを使用することが、有用であるか、または必要である可能性がある。
本発明の経口投与用医薬組成物には、これに限定されないが、液体、ロゼンジ、錠剤、丸薬、カプセル、カプレット、油性懸濁液、シロップ、エリキシル剤、および、舌下もしくは頬側投与可能なストリップまたはフィルムが含まれてもよい。また、カプセル、錠剤、丸薬およびカプレットを、急速な崩壊(急速な溶解)に向けて製剤化してもよい。経口使用に向けた錠剤の場合、一般に用いられるキャリアーには、ラクトースおよびトウモロコシ澱粉が含まれる。また、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を添加してもよい。
特に好ましいのは、有効量のモダフィニル構成成分を、腸(すなわち、胃および腸)への摂取およびそれに続く肝初回通過代謝を伴わずに、粘膜を介して内在する組織および血管に送達する組成物である。プロビジル(登録商標)錠の摂取により送達されるモダフィニルの90%ほどが、ヒトにおいて肝臓により排出されることは、公知である(プロビジル(登録商標)の添付文書(セファロン)を参照されたい)。したがって、好ましい製剤は、口腔底部(例えば、舌下投与)、口腔頬部(頬側投与)、鼻腔(経鼻投与)および直腸(例えば、坐剤の挿入)の内層にあるものなどの粘膜組織へのモダフィニルの投与が可能である。脳およびCNSへのより効率的な送達に向けて薬物がこれらの血管に入ることが可能なように、このような粘膜が、内在する血管に対して最小限の関門を供するため、比較的急速な送達および活性の発現が可能である。上記に記載されるとおり、これは、鼻および口腔の粘膜へ投与される場合に、特に効率的である。
モダフィニルを含んでなる、個体の粘膜へ投与される剤形は、好ましくは、剤形を粘膜組織表面に選択的に付着させることによって、適用部位に該剤形を固定し続ける、生体付着性、すなわち粘膜付着性の特性を有するように、製剤化される。この特性は、口腔もしくは鼻粘膜に投与される剤形において、特に望ましい。口腔粘膜に適用される剤形の場合、粘膜付着は、除去されたり、モダフィニルが肝初回通過代謝を受けることになる腸へ嚥下されたりすることなく、所望の適用部位(舌下もしくは頬側)に剤形を保持し、次いで、該剤形は溶解し、そして、内在する組織および血管による吸収に向けてモダフィニルを放出することになる。同様に、鼻粘膜に投与される剤形に関しても、粘膜付着は、内在する組織および血管による吸収に向けてモダフィニルを放出することになる粘膜表面に剤形を保持するための、望ましい特徴である。剤形の溶解およびモダフィニルの放出が比較的急速であっても、あるいは比較的緩やかであっても、粘膜付着は、使用中に剤形を固定し続けるための、好ましい特性である。多様な天然および合成の粘膜付着性化合物を本明細書に記載した剤形に組み入れてもよいことは、公知である。このような粘膜付着性化合物には、これに限定されないが、キトサン類、カルボポール類、カルボマー類、種々のチオール化ポリマー類およびレクチン類などの種々の粘膜付着性ポリマーが含まれる(例えば、Salamat-Millerら、Adv.Drug Deliv.Rev., 57(11):1666-1691(2005年);Haasら、Expert Opin.Biol.Ther., 2(3):287-298(2002年);Woodley, Clin.Pharmacokinet., 40(2):77-84(2001年);Ugokeら、Adv.Drug Deliv.Rev., 57(11):1640-1650(2005年);Smart, Adv.Drug Deliv.Rev., 57(11):1556-1568(2005年)を参照されたい)。
本明細書に記載した方法において有用な好ましい組成物は、舌下および/または頬側組織への投与に向けて製剤化されてもよく、該組織において、それらは急速に溶解もしくは崩壊して、有効量のモダフィニルを放出し、次いで、それが粘膜を介して内在する組織および血管に急速に吸収されて、所望の薬理学的活性、すなわち、性交中の射精遅延を供する。モダフィニルは、速溶解錠、フィルム(「ストリップ」もしくは「薄ストリップ」)、溶液および懸濁液を含む、多様な舌下および頬側投与可能な送達形態のいずれかにて、製剤化されてもよい。特に好ましいのは、非粒子状モダフィニルの比較的急速な送達を個体に供する、舌下および頬側投与可能なフィルムまたはストリップである。薬物を送達するための種々のタイプのフィルムについて、記載がなされている(例えば、米国特許第6,177,096;米国特許第5,700,478;米国特許第6,756,051;および、米国特許第6,552,024を参照されたい)。このようなフィルムは、唾液と接触したときに溶解もしくは崩壊する、薄状の固体組成物である。好ましくは、フィルム組成物は、生体付着性、すなわち粘膜付着性であるように製剤化され、フィルムが組織の口腔粘膜層(例えば、舌下、舌上、歯肉上、頬側)に容易に付着することを可能にする。
モダフィニルを含んでなるフィルム組成物は、フィルム組成物における1またはそれより多くの望ましい特性に寄与するか、もしくはそれを増強する可能性のある、多様な他の医薬的に許容可能な成分(「添加物」)のいずれかを含有してもよい。このような添加物には、これに限定されないが、粘膜付着性化合物、緩衝剤、可塑剤、安定剤、矯味剤、着香料、呼気清涼剤、着色料、防腐剤、不活性充填剤、保存料およびそれらの組み合わせが含まれる。
モダフィニルを含んでなる好ましいフィルム組成物のヒト口腔内での崩壊速度は、1秒〜1200秒、より好ましくは1秒〜600秒、さらにより好ましくは1秒〜300秒、いっそうより好ましくは1秒〜150秒、そして最も好ましくは1秒〜60秒の範囲である。特に好ましいのは、舌下もしくは頬側投与すると1分未満、そして好ましくは1秒〜10秒で溶解する、生体付着性の「速溶性」フィルム組成物である。好ましい生体付着性(粘膜付着性)の「徐溶性」タイプのフィルムは、舌下もしくは頬側適用時に、溶解に1分を超えて、例えば5〜30分間または10〜60分間かかる可能性がある。
好ましくは、本明細書に記載のモダフィニル構成成分を含んでなるフィルムの厚さは、0.25ミリメートル(mm)未満〜5mmの範囲であろう。特に好ましいのは、厚さ0.25mm未満のフィルムである。
本明細書に記載した方法において有用なモダフィニルの剤形には、口腔内溶解性、粘膜付着性のポリマーディスクであるBEMA(登録商標)(バイオデリバリー・サイエンシズ・インターナショナル、モーリスビル、ノースカロライナ州)が含まれ、これを、モダフィニルなどの所望の薬理学的活性剤を含有し、かつ放出するように製剤化してもよい。このようなディスク組成物は、典型的には頬部の粘膜に適用され、該部位にて、それらは付着し、溶解し、そして有効量の薬理学的活性剤を放出する。
個体の口腔内で急速に崩壊もしくは溶解する、錠剤および他の固体もしくは半固体製剤は、モダフィニルを「要求に応じて」または「必要時」(prn)に供するのに有用である。このような急速に崩壊または急速に溶解する製剤は、嚥下補助としての外因性の水の使用を排除するか、または大きく低減させる。さらに、急速に崩壊または急速に溶解する製剤は、嚥下困難を伴う個体を治療するのにも特に有用である。このような製剤に関しては、口腔内で錠剤崩壊を生じるのに、少量の唾液で通常は十分である。次いで、活性成分(モダフィニル)は、口腔粘膜(舌下および/または頬粘膜)に内在する血管から循環中へ部分的または完全に吸収されるか、あるいは、胃腸管から吸収される溶液として嚥下されることが可能である。上記のように、口腔粘膜を介した投与は、通常は、経口摂取される錠剤よりも作用の発現が早く、そして、活性成分が肝臓を回避し、かつ肝初回通過代謝により不活化されないという利点を有する(例えば、Birudarajら、J.Pharm.Sci., 94:70-78(2005年);Ishikawaら、Chem.Pharm.Bull.(東京)49:230-232(2001年);および、Priceら、Obstet.Gynecol., 89:340-345(1997年)を参照されたい)。
種々の技術を、速崩壊錠(もしくは急速崩壊錠)(速溶解錠もしくは急速溶解錠)に製剤化するために用いてもよい(例えば、Allen LV., Int.J.Pharm.Technol., 7:449-450(2003年);Fuら、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst., 21:433-476(2004年)を参照されたい)。速崩壊錠のテクノロジーは、凍結乾燥、鋳造、昇華および圧縮を使用してもよい。このようなテクノロジーには、ザイディス(登録商標)(カーディナル・ヘルス、ダブリン、オハイオ州)が含まれ、これは、舌上で3秒未満で溶解可能なため嚥下補助として水を必要としない、凍結乾燥させた経口用固形剤形である。速崩壊錠の特性を、噴霧乾燥、水分処理、焼結、糖を基剤とした崩壊剤の使用、および矯味テクノロジーなどのアプローチによって、増強してもよい(Fuら、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst., 21(6):433-76(2004年))。直接圧縮の技術により、超崩壊錠または高水溶性添加物を、錠剤の速崩壊を達成するために製剤に組み入れる。直接圧縮は、製剤化の手順中に水または熱の使用を必要とせず、かつ、水分および熱に不安定な薬剤に対する理想的な方法である。しかしながら、直接圧縮法は、添加物のタイプおよび比率の変化、ならびに、急速崩壊の特徴を損なうことなく適切な硬さの錠剤を得るために用いられる圧縮力の変化に対して、非常に敏感である。ストリップ包装方法などの特殊な包装方法を、このような急速崩壊錠の極度の破砕性を補うために用いてもよい。耐久性のある経口投与用の速崩壊錠を製剤化するために超崩壊剤を用いた、有用な添加物比率および他の関連するパラメータの例について、記載がなされている(例えば、Watanabeら、Biol.Pharm.Bull., 18:1308-1310(1995年);Biら、Chem.Pharm.Bull.(東京)、44:2121-2127(1996年)を参照されたい)。したがって、速崩壊錠は、舌下粘膜下にある組織および血管による急速な吸収に向けて製剤からのモダフィニルの放出を増強するための手段を提供することから、特に有用な形式である。最適な製造技術および圧縮パラメータと併せて、的確な比率の適切な医薬品添加物を選択することによって、このような錠剤を製造することが可能である。
嚥下錠よりも効率的かつ望ましいモダフィニル構成成分の送達を供する、別の好ましい製剤は、内在する組織および血管による吸収に向けてモダフィニル構成成分を鼻腔内粘膜に送達する、経鼻(鼻腔内)投与可能な送達形態、あるいは、内在する血管による吸収に向けてモダフィニルを肺へ送達する形態である。好ましくは、鼻腔内投与可能な送達形態は、粘膜付着である。鼻腔内投与可能な形態には、鼻腔に直接適用してもよい形態、あるいは、これに限定されないが、微粒子、微小球、ジェル、リポソームおよびミセルなどの、鼻腔へ適用するかもしくはスプレー(例えば、噴霧)するために、キャリアー中に懸濁されてもよい形態が含まれる(例えば、Cilurzoら、Eur.J.Pharm.Sci., 24(4):355-361(2005年);Turkerら、Pharm.World Sci., 26(3):137-142(2004年)を参照されたい)。経鼻投与用組成物を、液滴もしくは粒子の噴霧剤または懸濁液を生じるように気体(例えば、空気、酸素、窒素等、またはその組み合わせ)と混合した、溶液、液体懸濁液または粉末の形態にて、供してもよい。あるいは、モダフィニルの経鼻投与用組成物を、個体が該組成物を鼻腔内に吸入(吸引)可能なように、製造および/または包装してもよい。鼻腔内投与可能な組成物は、当該技術分野において公知の技術を使用して製造されてもよく、そして、生理食塩液、保存剤(例えば、ベンジルアルコール)、および/または当該技術分野において公知の他の可溶化剤もしくは分配剤を含んでもよい。また、鼻腔内投与可能な組成物は、鼻粘膜を介したモダフィニル構成成分の輸送および吸収を増強する、1またはそれより多くの化合物を含んでなってもよい。
本明細書に記載のモダフィニルを含んでなる組成物はまた、これに限定されないが、モダフィニル構成成分のより効率的な脳および/または中枢神経系への送達、不快性および疼痛がより少ない個体への投与、ならびに/あるいは組成物のより長期の保管(すなわち、保管期間の増強強化)を含む、1またはそれより多くの有益な薬理学的もしくは医薬的特性を供する可能性のある、当該技術分野において公知の多数の種々の医薬的に許容可能なキャリアー(媒体)または添加物のいずれかを含んでなってもよい。したがって、本明細書に記載のモダフィニルを含んでなる医薬組成物は、非限定的に、矯味剤(例えば、甘味料、着香料)、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩等)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースを主体とする物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、ラノリン、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。
モダフィニルの味を隠すために、甘味料および/または着香料を、本明細書に記載した組成物、および特に、口腔もしくは鼻腔における滞留時間中に吸収が起こる口腔粘膜または鼻粘膜への投与に向けて製剤化されたこれらの組成物に、用いてもよい。本明細書に記載した組成物に有用な着香料には、種々の天然および人工の着香料、調味料ならびに呼気清涼剤が含まれる。本明細書に記載した組成物に用いてもよい一般的な着香料には、これに限定されないが、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール、酒石酸、およびそれらの組み合わせが含まれる。本明細書に記載した組成物に用いてもよい甘味料には、これに限定されないが、1またはそれより多くのショ糖、サッカリン酸カルシウム、シクラム酸アンモニウム、グリシリジン酸アンモニウム、アスパルテーム、グルコース、ならびに、イノシトール、マンニトール、ソルビトールおよびズルシトールなどのグルシトール類が含まれる。好ましくは、本明細書に記載した組成物に用いられる矯味剤は、1またはそれより多くの甘味料と1またはそれより多くの着香料との組み合わせを含んでなる。矯味剤は、単位用量につき約1.0mg〜約10.0mg(4.0〜8.0mgのアスパルテームなど)、約100.0mg〜約400.0mg(200.0mg〜350.0mgのグルコースなど)、約200mg〜約800mg(300mg〜700mgのソルビトールなど)および約5.0mg〜約50.0mg(10.0mg〜30.0mgの多様な天然もしくは人工の果実味のいずれかなど)の範囲の量などの多様な範囲にて、本明細書に記載した組成物中に存在してもよい。
本明細書に記載した方法において用いられる組成物の稠度および粘度を、水を吸収することによって様々な粘度のゲルを作り出す、1もしくはそれより多くのポリマーまたはヒドロゲルを組み入れることによって、調節してもよい。医薬品製造における使用に適したヒドロゲルは、当該技術分野において周知である(例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients(The American Pharmaceutical Association and The Pharmaceutical Society of Great Britain(1986年));Handbook of Water-Soluble Gums and Resins(R.L.Davidson編集)(マグロヒル・ブックCo、ニューヨーク州、1980年)を参照されたい)。本明細書に記載した種々の組成物に有用な可能性のあるヒドロゲルには、これに限定されないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(「CMC」)、ポリアクリル酸、ポリ(メチルメタクリル酸)(「PMMA」)およびそれらの組み合わせが含まれる。ヒドロゲルは、存在する場合に、好ましくは、組成物の約0.1〜約50重量対体積(w/v)%を含んでなる。
本明細書に記載した方法における使用のためのモダフィニルを含んでなる組成物を、局所投与に向けて製剤化してもよい。このような局所投与可能な組成物(「局所製剤」)は、脳および/またはCNSへの送達に向けて、内在組織、次いで全身血液循環へと、個体の皮層を介してモダフィニルの吸収を促進させるように、製剤化される。局所製剤は、キャリアー中に懸濁もしくは溶解させたモダフィニルを含有する、適切な軟膏、ジェル、クリームまたはローションを用いて、製造されてもよい。好ましい局所製剤は、非粒子状のモダフィニルを含有する。モダフィニルの局所投与のための好ましいキャリアーには、これに限定されないが、鉱油、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン化合物および乳化ろうが含まれる。1またはそれより多くの皮膚軟化剤が、皮膚を介した浸透を増強するために存在してもよい。他の適切なキャリアーには、これに限定されないが、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルろう、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノールおよびベンジルアルコールが含まれてもよい。モダフィニルの局所投与のための好ましい剤形は、本明細書に記載のモダフィニルを含んでなる局所製剤を含有する、経皮パッチである。このようなパッチを個体の皮膚に適用すると、モダフィニルを含有する局所製剤が放出され、そして皮層を介して吸収される。経皮パッチは、モダフィニル構成成分が放出され、そして皮膚を介して吸収されている間に個体の皮膚にパッチを保持する、粘着テープまたは粘着層を含んでもよい。経皮パッチは、必要時の使用に向けて、好都合に包装されてもよく、かつ、容易に開封されてもよい。
また、本明細書に記載のモダフィニルを含んでなる組成物は、直腸への挿入用坐剤として製剤化されてもよく、直腸において、坐剤組成物のモダフィニル構成成分は、粘膜を介した内在する組織および血管内への吸収に向けて放出される。坐剤の製造方法は、当該技術分野において公知である。坐剤組成物は、モダフィニル構成成分(モダフィニル、または本明細書に記載したモダフィニル組成物)を適切な非刺激性添加物と混合することによって製造されてもよく、ここで、添加物は、室温では固体であるが、しかし体温では液体であり、したがって、直腸腔への挿入後に融解し、そしてモダフィニル構成成分を放出して、それを粘膜組織を介して内在する血管内へ吸収させることが可能である。このような添加物には、これに限定されないが、ココアバター、蜜ろう、ポリエチレングリコール類およびそれらの組み合わせが含まれる。
モダフィニルを含んでなる医薬組成物を、特定の剤形および対応する投与方式に適切な多様な方法で、包装してもよい。このような包装には、これに限定されないが、バイアル、ボトル、缶、パケット、アンプル、カートン、フレキシブル容器、吸入器、噴霧器および特殊なストリップ包装が含まれる。本明細書に記載した組成物を、同じ容器からの単回または複数回投与用に包装してもよい。
キットは、適切な経路による送達に向けた形態にて製造された本明細書に記載のモダフィニル組成物を、個体においてPEを治療するために該組成物を投与するための使用説明書とともに含んでなってもよい。例えば、キットは、モダフィニル含有組成物(例えば、懸濁液、乾燥粉末、凍結乾燥体)を、所望により、適切な医薬的に許容可能な希釈剤(例えば、バッファー、生理食塩液、非水溶性溶媒等)とともに含んでなってもよく、該希釈剤は、付属の使用説明書に記載の特定の経路による投与直前に、モダフィニル含有組成物と合わせるためのものである。
多様な器具を、急性的もしくは「必要時」(prn)にPEを治療するための個体へのモダフィニル投与に用いてもよい。個体においてPEを治療するためのモダフィニルの投与に用いてもよい器具には、非限定的に、吸入器、噴霧器、および、個体の皮膚もしくは粘膜表面に直接モダフィニルを適用するための使い捨てアプリケーターが含まれる。好ましくは、このような器具は、投与の11時間未満以内に、より好ましくは投与の10時間未満以内に、さらにより好ましくは投与の5時間未満以内に、いっそうさらにより好ましくは投与の1時間以内に、そして最も好ましくは投与の30分以内に、性交中に個体による射精を遅らせるのに十分な量のモダフィニルを、個体に送達する。
PEを治療するためにモダフィニルを適用するための使い捨てアプリケーターは、個体がモダフィニルを個体の皮膚もしくは粘膜表面に適用するために用いてもよい、任意の形態を取ってもよい。使い捨てアプリケーターを、有効量のモダフィニルを個体に送達するために、皮膚もしくは粘膜表面に付着するように設計しても、または設計しなくてもよく、あるいは、該部位に貼付しても、または貼付しなくてもよい。「付着」形態の使い捨てアプリケーターの非限定的な例は、PEを治療するために有効量のモダフィニルを放出するため、個体の皮膚に貼付する、経皮パッチである。「非付着」形態の使い捨てアプリケーターは、アプリケーターを表面に貼付することを必要とせずに有効量のモダフィニルを放出および送達するために、個体の皮膚もしくは粘膜表面に接触させる。本明細書に記載した方法において有用な非付着形態の使い捨てアプリケーターには、これに限定されないが、スワブ、スポンジおよびストリップが含まれる。使い捨てアプリケーターは、個体の身体に接触させる医療器具を製造するのに一般的に使用される材料を用いて、構築してもよい。このような材料は、好ましくは、不活性かつ非アレルギー性もしくは低刺激性である。本明細書に記載した方法において有用な使い捨てアプリケーターの全体または一部を構築するために用いられてもよい材料には、これに限定されないが、木材、綿、セルロース、プラスチック、金属、ナイロン、ポリエステル、ラテックス、ゴム、繊維ガラス、ガラスおよびそれらの組み合わせが含まれる。アプリケーターを個体の皮膚もしくは粘膜表面に接触させる(例えば、貼付するかもしくは押し付ける、こすり付ける、または拭く)と、性交中に個体による射精を遅らせるために有効量のモダフィニルがアプリケーターから放出されるように、十分な量のモダフィニルまたは本明細書に記載のモダフィニル組成物が、使い捨てアプリケーター上に存在する(例えば、コーティング、含浸、懸濁、付着、吸収されている)。好ましくは、本明細書に記載の使い捨てアプリケーター上に存在するモダフィニルは、50重量%を超えるd−モダフィニル、そしてより好ましくは約100重量%のd−モダフィニルである。本明細書に記載の使い捨てアプリケーター上に存在するモダフィニルは、好ましくは、非粒子状モダフィニルである。
また、菌の混入、ならびにモダフィニルおよび該組成物の任意の他の構成成分の分解を防ぐために、種々の抗菌剤を、本明細書に記載の組成物または器具に用いてもよい。このような一般的に用いられる抗菌剤には、フェノール、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが含まれる。このような剤は、単独で、または組み合わせて用いられてもよく、かつ、本明細書に記載した組成物中に、細菌、真菌および/または他の微生物の増殖を防ぐであろうが、ただし該組成物を投与される個体に対して毒性ではないであろう濃度にて存在する。
適用可能な規制基準による必要に応じて、本明細書に記載した組成物を、医薬業界において現在用いられており、かつ当業者に周知の適正製造基準にしたがって製造する。さらに、必要に応じて、滅菌組成物を、非限定的に限外ろ過、オートクレーブ、乾式および湿式加熱、気体(エチレンオキシドなど)への曝露、液体(次亜塩素酸ナトリウムを含む酸化剤など)への曝露、高エネルギー電磁放射線(紫外光、X線、ガンマ線および電離放射線など)への曝露を含む、医薬組成物を滅菌するための多様な方法のいずれかを用いて、業界基準および規制基準にしたがって製造する。必要な場合、滅菌方法の選択は、個体への投与を目的とする組成物のモダフィニル構成成分または任意の他の構成成分の所望の薬理学的活性を有意に変えない、最も効率的な滅菌をもたらすことを目的として、当業者によりなされるであろう。
上記のとおり、他の障害、とりわけ、ナルコレプシーを患う個体における日中の過度の眠気(EDS)に対してヒト個体を治療するための、モダフィニルの安全使用に関する医学的および薬理学的データが、多数存在する。その上、以下に示すデータは、モダフィニルがヒト男性個体において早漏(PE)を遅らせるための薬理学的特性を有することを示す。本明細書に記載した特定の方法および組成物の規制当局による認可への必要に応じて、PEを治療するためのモダフィニルの使用に関する追加データを、さらなる臨床ヒトおよび動物試験から得てもよい。PEを治療するための確立された動物モデルは、本明細書に記載した特定の方法および組成物の規制当局による認可の過程において必要とされるヒト臨床試験に先立って、またはそれと併せて、追加データを得るための非常に経済的かつ効率的な手段を提供する。PE治療の動物モデルは、典型的には、雄性ラットを使用し、そして、種々の量の試験化合物または組成物の存在下および非存在下において、雄性ラットによる射精、勃起および押し込みの時間を含む、雄性ラットの性行動の種々の側面をモニターすることを伴う(例えば、Looneyら、Pharmacol.Biochem.82:427-433(2005年);Oliverら、Curr.Pharma.Des., 11(31):4069-4077(1005年);および、Waldingerら、World J.Urol., 23(2):115-118(2005年)を参照されたい)。
本発明をより十分に例示するために、以下の非限定的な実施例を提供する。
実施例1 d−モダフィニルの舌下投与による射精の遅延
(d)-(+)-モダフィニルの合成については、文献に記載されている(例えば、Prisinzanoら、Tetrahedron Asymmetry, 15:1053-1058(2004年);米国特許第4,927,855(「ラフォン合成」)を参照されたい)。ラフォン合成にしたがって、中間体のカルボン酸を、(+)α-メチルベンジルアミンを用いてジアステレオマー塩混合物に変換した。ジアステレオマーを分離し、そして、適切なキラル酸を塩形態から遊離させた。酸を、エステル化によってメチルエステルに変換し、そして、アンモニア/メタノール溶液と反応させて、d−モダフィニルを得た。鏡像異性体純度は、98%〜99%を上回った。
モダフィニル(ラセミ体)および純d−モダフィニルの初期の製剤試験で、苦味が明らかとなった。したがって、医薬製剤に、1またはそれより多くの矯味成分を含めた。d−モダフィニルを、ミント粉末、呼気清涼剤ならびに天然および人工香料などの種々の矯味剤と混合した。
合成d−モダフィニルを、糖、スペアミント香料、シナモン香料、アラビアゴム、ゼラチン、コーンシロップ、および舌下投与可能な染料を含有する組成物に配合した。100mgのd−モダフィニルを含有する製剤を、製造した。
被験者1は、性行為に関係しない異なる効果に対してd−モダフィニル含有組成物を試験する過程において、上述のd−モダフィニル製剤を、午後9:00に舌下により服用した。被験者1は、思いのほか、性行為中の射精にかかる時間が約2〜3倍、平常よりも有意に長かったことを、報告した。1週間後に、被験者1は、2回目の該製剤の服用を舌下により行い、性交中の射精にかかる時間がおよそ2〜3倍、有意に遅れたことを、報告した。
本データは、d−モダフィニルの舌下投与が、性行為中における望ましい射精の遅延を提供可能であり、その効果は薬物依存的であって、かつ、その効果は可逆性であることを、示している。
実施例2 ラセミ体モダフィニルの経口投与(錠剤)による射精の遅延
被験者2は、ラセミ体モダフィニル(200mg)を、経口投与可能なプロビジル(登録商標)(セファロン)錠の形態にて、覚醒を増す目的で午後3:00に服用した。数時間後に、被験者2は、性行為中の射精の遅延を思いがけず経験したことを、報告した。
結論
実施例1では、短期間で急速に発現するd−モダフィニルの製剤の舌下投与を使用した。実施例2では、より長時間発現し、より長時間持続するラセミ体モダフィニルの錠剤製剤を使用した。総合すると、上記実施例の結果は、性行為中に射精を遅らせるモダフィニルの薬理学的活性を、様々な組成物、製剤および投与経路によって効果的に供してもよいことを、示している。
上記文書に引用したすべての特許、出願および出版物は、参照によって本明細書に援用される。
本明細書に記載した本発明の他の変形形態および実施態様は、本発明の開示または以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、今回、当業者に明らかであろう。

Claims (19)

  1. 男性個体における早漏の治療方法であって、モダフィニルおよび医薬的に許容可能なキャリアーを含んでなり、前記モダフィニルが性交中に射精を遅らせるのに有効な量にて存在する医薬組成物を、個体に投与することを含んでなる、前記方法。
  2. 前記モダフィニルが、d−モダフィニル、l−モダフィニル、ラセミ体モダフィニルおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記モダフィニルがd−モダフィニルである、請求項2に記載の方法。
  4. l−モダフィニルとd−モダフィニルの前記組み合わせにおいて、d−モダフィニルが約50重量%を超える、請求項2に記載の方法。
  5. 前記モダフィニルが、非粒子状モダフィニルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記医薬組成物が、緩衝剤、可塑剤、粘膜付着性化合物、安定剤、矯味剤、着香料、着色料、防腐剤、不活性充填剤、保存料およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
  7. 前記医薬組成物を、経口、舌下、頬側、経鼻、静脈内、皮下、筋肉内、局所および直腸からなる群より選択される投与経路によって個体に投与する、請求項1に記載の方法。
  8. 投与経路が舌下である、請求項7に記載の方法。
  9. 投与経路が頬側である、請求項7に記載の方法。
  10. 投与経路が経鼻である、請求項7に記載の方法。
  11. 医薬組成物が、速崩壊錠またはフィルムとして製剤化される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記フィルムが、粘膜付着性フィルムである、請求項11に記載の方法。
  13. モダフィニルを含んでなる使い捨てアプリケーターであって、アプリケーターを個体の皮膚もしくは粘膜表面に接触させると、有効量の前記モダフィニルが性交中に個体による射精を遅らせるためにアプリケーターから放出されるような、十分な量の前記モダフィニルが前記アプリケーターに存在する、前記アプリケーター。
  14. 前記モダフィニルにおいて、d−モダフィニルが約50重量%を超える、請求項13に記載の使い捨てアプリケーター。
  15. 前記モダフィニルにおいて、d−モダフィニルが約100重量%である、請求項14に記載の使い捨てアプリケーター。
  16. 前記モダフィニルが、非粒子状モダフィニルである、請求項13に記載の使い捨てアプリケーター。
  17. 前記使い捨てアプリケーターが、経皮パッチ、スワブ、スポンジおよびストリップからなる群より選択される、請求項13に記載の使い捨てアプリケーター。
  18. 男性個体における性行為中の早漏を治療するための、モダフィニルの使用。
  19. 男性個体における性行為中の早漏を治療するための薬剤の製造における、モダフィニルの使用。
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