JP2010287810A - 半導体素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】汎用性が高く、低コストで省資源である方法を採用し、実用性に富み、任意の場所、任意の形状に金属又は半導体を二次元的又は三次元的に形成できる半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料とを有する還元反応構造1Aを持つ層構造30Aを準備する層構造準備工程と、層構造30Aを設置する層構造設置工程と、還元反応構造1Aに対して局所的にエネルギーを集中することが可能で、かつ還元反応構造1Aに対して2次元的又は3次元的に走査することが可能な熱源3を用い、熱源3によって酸化還元反応が起こる温度以上に還元反応構造1Aの一部を走査しつつ選択的に加熱して、炭素材料により金属酸化物材料又は半導体酸化物材料をそれぞれ金属又は半導体に還元し、金属層又は半導体層4を形成する金属・半導体領域形成工程と、を有する半導体素子の製造方法とすることで上記課題を解決する。
【選択図】図3

Description

本発明は、半導体素子の製造方法に関する。
近年の半導体産業における製造技術の発展に伴い、様々な半導体素子を搭載したエレクトロニクス製品が実用化されている。一方で、半導体産業では、リソグラフィー、エッチング、製膜という3つの製造手段を用いて、半導体基板を加工する手法で、半導体デバイスの微細化とコストダウンを同時に実現してきた。他方、最近は、地球環境への影響、レアメタル等資源の枯渇等の諸問題が持ち上がっており、省エネルギー、省資源、代替材料への転換等の観点から、半導体素子の新たな製造手段の開発が必要となってきている。しかも、その製造手段は汎用性があることが望まれる。
こうした半導体素子の新たな製造手段として、炭素還元法を用いる方法がある。炭素還元法自体は、基本的な製錬技術の1つであり、還元剤として炭素材料を用いることで、化学式:MO+C→M+COのように単体のM(Mは金属元素又は半導体元素)を得る。炭素還元法は、現在でも製鉄や金属鉱業等の重工業分野で専ら利用されており、その技術は日々進歩すると伴に、技術改良も継続して行われている。
例えば、特許文献1には、CaO、Al、SiOからなるスラグの存在下で、アーク放電を用い珪石を還元するシリコンの製造方法が記載されている。そして、還元剤として炭素又は一酸化炭素を用いる。
特許文献2には、酸化珪素を炭素還元して金属シリコンとし、該金属シリコンを酸化製錬工程、凝固粗精製工程、真空精錬工程及び凝固仕上精製工程を経て精製して太陽電池用シリコンを製造するに際し、所定の精製を行う太陽電池用シリコンの製造方法が記載されている。
特許文献3には、固形状炭素還元剤を用いて含酸化鉄原料を直接還元する方法が記載されている。
特許文献4には、酸化鉄の炭素還元において、被膜形成により再酸化が防止された還元金属の成型体(ペレットやブリケット)及びその製造装置、製造方法が開示されている。具体的には、金属酸化物と還元剤とを含有する成型体の表面に粉体状の被膜形成物質を付着させた後、成型体を加熱して金属酸化物を還元剤により還元すると共に、被膜形成物質を溶融させて成型体の表面を被膜形成物質で被覆し、成型体を冷却して得る還元金属成型体の製造方法が記載されている。
特許文献5には、アルミナの炭素還元によるアルミニウムの製造方法及び反応装置が記載されている。
特許文献6には、加熱された不活性雰囲気下にて市販の純粋なグラファイト材料と遷移金属酸化物とからナノ構造の材料と調整する方法が記載されている。具体的には、遷移金属酸化物粉末と粉末状のグラファイトを、600℃から遷移金属酸化物の融点までの温度範囲で、不活性ガス下の高真空状態(10−7Torr)〜10気圧の密閉状態で6〜36時間保ち、遷移金属酸化物とグラファイトとの間の酸化還元反応により、磁性グラファイトを得る方法が記載されている。
特許文献6では、高温下、金属酸化物から生じる酸素が原料のグラファイトを酸化することで、グラファイト層を貫通する孔(数ナノメートルから1マイクロメートル)から成る微小構造を形成せしめることが磁性発生の機構とされる。この技術では、目的物が還元金属ではなく、磁性グラファイトであることが特徴である。しかしながら、酸化と還元は常に同時に起こる共役的な関係にあるので、金属酸化物はグラファイトを酸化すると同時に、グラファイトは金属酸化物を還元するのであるから、この方法も炭素還元法の一種と見なすことが可能である。
一方、エレクトロニクス分野において、半導体装置を製造する工程で、金属酸化物や半導体酸化物を還元して単体の金属や半導体を得る必要がある場合は、水素ガス(H)や一酸化炭素(CO)等の還元性ガスが用いられるのが一般的である。関連技術として、特許文献7には、半導体装置の製造方法、より具体的には金属配線の形成方法が記載されている。具体的には、アルミニウム−銅配線の製造において、酸化銅膜を還元してアルミニウム膜に拡散させる工程で、還元剤としてHの還元雰囲気が利用されている。
また、エレクトロニクスの分野において、炭素還元法を用いた技術としては、特許文献8では、金属酸化膜を、水素又は炭素を含む還元ガス雰囲気中で熱処理を施すことにより、金属酸化膜を還元して金属酸化膜を構成する主たる金属からなる電極配線層を形成する半導体装置の製造方法が開示されている。
特許文献9には、2種以上の金属超微粒子を混在させた金属超微粒子集合体の製造方法、及びそれを適用した金属超微粒子集合体が記載されており、産業上の主な用途は量子デバイスや触媒とされる。
特許文献10は、光もしくは熱の局所的な作用により選択的に還元されて析出した還元金属領域からなる配線パターンが形成されている、配線基板や情報記録媒体について記載されている。
特許第3839925号(請求項1,2) 特開平10−324515号公報(請求項1) 特開平6−346127号公報(要約、図1) 特開2005−220398号公報(請求項1、図2) 特表2006−519921号公報(請求項1、請求項9、図1) 特表2008−502562号公報(請求項1、第0001段落、第0029段落〜第0031段落、第0038段落、第0040段落、図1) 特開平6−112202号 (実施例、図2) 特開平6−97160号 (第0015段落、図1) 特開2000−192114号 (第0001段落、第0003段落、第0004段落、図1) 特開平5−37126号 (請求項1,2)
上記紹介した関連技術に開示される炭素還元法は、主に重工業分野で、還元炉や高炉等の大規模施設を用いて、単体の金属や半導体を大量に製造する技術が中心であり、エレクトロニクス分野で半導体素子を製造する技術としては用いられる例は少ない。
また、上記した通り、半導体素子の製造工程において酸化物を還元する必要がある場合は、水素や一酸化炭素等の還元性ガスが専ら用いられる。しかしながら、それらは還元能力が低いので、還元可能な酸化物は非常に種類が少なく、酸化銅(CuO)等、酸化物生成の標準自由エネルギーが比較的高いものに限定される。
一方、炭素還元法は、炭素が持つ高い還元能力のため、より広範な種類の金属元素や半導体元素の酸化物を対応する単体金属や単体半導体に還元する方法として有望である。しかしながら、炭素還元法は、通常、高い反応温度を必要とすることから、高温を保持するための大規模設備が必要であることに起因して、エレクトロニクス分野の半導体素子の製造への応用に困難が生じているのが実情である。そして、半導体素子を構成する部材がすべて耐熱性を有するとは限らないため、半導体素子全体を加熱するような炭素還元法の利用は考えにくい。
こうした観点から、系全体を熱処理することを前提とした特許文献8に示される関連技術では、その適用範囲が還元温度の低いものに限定され、汎用性に欠けるという課題がある。また、この関連技術では、高真空が必要で、また非常に高価な装置が必要なリソグラフィー技術を用いて煩雑な工程を経ない限り、半導体素子の所望の場所に所望の形状の金属領域構造を製造できない。
系全体が高温になるのを回避して炭素還元を行う方法として、特許文献9で示されるように、電子線照射時の電子線衝撃離脱やスパッタリング効果を利用する関連技術がある。しかしながら、電子線照射には超高真空が必要であるので製造装置の小型化が困難となる課題がある。また、使用エネルギー量も大きく、製造コストが嵩むという課題がある。さらに、電子線は微小領域しか照射できないので、量子デバイスを製造するには十分であるが、大面積の配線基板等の半導体素子を製造するには膨大な時間が必要なので、産業上、実用性に欠けるという課題もある。
また、特許文献10は、光又は熱の局所的な作用を利用する炭素還元の関連技術である。しかしながら、光又は熱の局所的な作用を自由自在に走査するという技術に関する記載はない。従って、特許文献10に示される関連技術では、2次元的又は3次元的に半導体素子の所望の場所に所望の形状の構造を製造することができないという課題がある。
本発明の第1の目的は、上記課題を解決するためになされたものである。より具体的には、汎用性が高く、低コストで省資源である方法を採用し、実用性に富み、任意の場所、任意の形状に金属又は半導体を二次元的又は三次元的に形成できる半導体素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明の半導体素子の製造方法は、炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料とを有する還元反応構造を持つ層構造を準備する層構造準備工程と、前記層構造を設置する層構造設置工程と、前記還元反応構造に対して局所的にエネルギーを集中することが可能で、かつ前記還元反応構造に対して2次元的又は3次元的に走査することが可能な熱源を用い、当該熱源によって酸化還元反応が起こる温度以上に前記還元反応構造の一部を走査しつつ選択的に加熱して、前記炭素材料により前記金属酸化物材料又は前記半導体酸化物材料をそれぞれ金属又は半導体に還元し、所望の形状の金属領域又は半導体領域を形成する金属・半導体領域形成工程と、を有する。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記還元反応構造を、前記炭素材料と前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料との混合物を含有する層、又は前記炭素材料を含有する層と前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料を含有する層との積層とする。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記層構造準備工程において、基板と当該基板上に形成された前記還元反応構造とを有する層構造を準備し、さらに転写先基板を準備するとともに、当該転写先基板又は前記基板を透明基板とし、前記層構造設置工程において、前記層構造を、前記還元反応構造を挟むようにして前記転写先基板と対面するようにして設置し、前記金属・半導体領域形成工程において、前記透明基板の側から、前記還元反応構造を前記熱源により選択的に加熱して前記還元を行うと同時に、前記熱源によるアブレーション現象を利用することで、前記還元によって生じた前記金属又は前記半導体を前記転写先基板に転写して、前記金属領域又は前記半導体領域を転写先基板上に形成する。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記層構造準備工程において、第1の基板上に前記金属酸化物材料又は前記半導体酸化物材料を含有する層を形成した第1の層構造と、第2の基板上に前記炭素材料を含有する層を形成した第2の層構造とを前記層構造として準備するとともに、前記第1の基板又は前記第2の基板を透明基板とし、前記層構造設置工程において、前記金属酸化物材料又は前記半導体酸化物材料を含有する層と、前記炭素材料を含有する層とが対面するように、前記第1の層構造及び前記第2の層構造を設置し、前記金属・半導体領域形成工程において、前記透明基板の側から前記熱源により選択的に加熱することにより還元を行い、前記金属領域又は前記半導体領域を形成する。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記熱源が、レーザー光、電子ビーム、集束イオンビーム、マイクロ波ビーム、又はジュール熱のいずれかである。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記熱源がレーザー光であり、当該レーザー光を前記還元反応構造に局所的に照射することで前記選択的な加熱を行う。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記炭素材料と前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料との混合物を含有する層、前記炭素材料を含有する層、又は前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料を含有する層、の少なくとも1つが、それぞれの層を構成する材料の微粒子からなるコロイド溶液の塗布により形成される。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記炭素材料と前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料との混合物を含有する層、前記炭素材料を含有する層、又は前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料を含有する層、の少なくとも1つが、それぞれの層を構成する材料のスパッタ又は蒸着により形成される。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記炭素材料が、アモルファス炭素、ガラス状炭素、グラファイト、グラフェン、ダイヤモンド状炭素、ダイヤモンド微粒子、ナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、及びフラーレンから選ばれる少なくとも1つである。
本発明の半導体素子の製造方法の好ましい態様においては、前記金属酸化物材料又は前記半導体酸化物材料が、酸化リチウム(I)/LiO、酸化ベリリウム(II)/BeO、酸化ホウ素(III)/B、酸化ナトリウム(I)/NaO、酸化マグネシウム(II)/MgO、酸化アルミニウム(III)/Al、酸化ケイ素(IV)/SiO、酸化リン(V)/P10、酸化リン(IV)/PO、酸化カリウム(I)/KO、酸化カルシウム(II)/CaO、酸化スカンジウム(III)/Sc、酸化チタン(IV)/TiO、酸化チタン(III,IV)/Ti、酸化チタン(III)/Ti、酸化チタン(II)/TiO、酸化バナジウム(V)/V、酸化バナジウム(IV)/VO、酸化バナジウム(III)/V、酸化バナジウム(II)/VO、酸化クロム(II)/CrO、酸化クロム(II,III)/Cr、酸化クロム(III)/Cr、酸化マンガン(IV)/MnO、酸化マンガン(III)/Mn、酸化マンガン(II,III)/Mn、酸化マンガン(II)/MnO、酸化鉄(III)/Fe、酸化鉄(II)/FeO、酸化鉄(II,III)/Fe、酸化コバルト(II,III)/Co、酸化コバルト(II)/CoO、酸化ニッケル(II)/NiO、酸化銅(II)/CuO、酸化銅(I)/CuO、酸化亜鉛(II)/ZnO、酸化ガリウム(III)/Ga、酸化ゲルマニウム(IV)/GeO、酸化ヒ素(III)/As、酸化セレン(IV)/SeO、酸化ルビジウム(IV)/RuO、酸化ストロンチウム(II)/SrO、酸化イットリウム(III)/Y、酸化ジルコニウム(IV)/ZrO、酸化ニオブ(V)/Nb、酸化ニオブ(IV)/NbO、酸化ニオブ(II)/NbO、酸化モリブデン(VI)/MoO、酸化モリブデン(IV)/MoO、酸化ルテニウム(VI)/RuO、酸化ルテニウム(VIII)/RuO、酸化ルテニウム(IV)/RuO、酸化ロジウム(III)/Rh、酸化パラジウム(II)/PdO、酸化銀(I)/AgO、酸化カドミウム(II)/CdO、酸化インジウム(III)/In、酸化スズ(IV)/SnO、酸化アンチモン(III)/Sb、酸化テルル(IV)/TeO、酸化バリウム(II)/BaO、酸化セリウム(IV)/CeO、酸化セリウム(III)/Ce、酸化プラセオジウム(III)/Pr、酸化ネオジウム(III)/Nd、酸化サマリウム(III)/Sm、酸化ユーロピウム(III)/Eu、酸化ガドリニウム(III)/Gd、酸化テルビウム(III)/Tb、酸化ジスプロシウム(III)/Dy、酸化ハフニウム(IV)/HfO、酸化タンタル(V)/Ta、酸化タングステン(VI)/WO、酸化タングステン(IV)/WO、酸化レニウム(IV)/ReO、酸化オスミウム(IV)/OsO、酸化イリジウム(IV)/IrO、酸化水銀(I)/HgO、酸化鉛(IV)/PbO、酸化鉛(II,III)/Pb、酸化鉛(II)/PbO、酸化ビスマス(III)/Bi、酸化トリウム(IV)/ThO、及び酸化ウラン(IV)/UOからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
本発明によれば、汎用性が高く、低コストで省資源である方法を採用し、実用性に富み、任意の場所、任意の形状に金属又は半導体を二次元的又は三次元的に形成できる半導体素子の製造方法を提供することができる。
炭素(C)とシリコン(Si)の酸化反応に関するエリンガム図である。 一酸化炭素(CO)、水素(H)、シリコン(Si)の酸化反応に関するエリンガム図である。 本発明の半導体素子の製造方法の一例を示す斜視図である。 本発明の半導体素子の製造方法の他の一例を示す斜視図である。 本発明の半導体素子の製造方法のさらに他の一例を示す斜視図である。 実施例に用いた熱源としてのレーザー装置の模式的な斜視図である。 銅の酸化銅(CuO)への酸化反応のエリンガム図である。 実施例1で得られた半導体素子の櫛形電極構造像である。 実施例1の方法で製造された還元銅膜のシート抵抗(Ω/sq.)と膜厚(nm)の関係を示すグラフである。 銅のCuOへの酸化反応のエリンガム図、及び実施例3で得られた櫛型電極構造像である。 鉄の酸化反応のエリンガム図と、実施例4で得られた櫛型電極構造像である。 ニッケルの酸化反応のエリンガム図と、実施例5で得られた櫛型電極構造像である。 亜鉛の酸化反応のエリンガム図と、実施例6で得られた櫛型電極構造像である。 モリブデンの酸化反応のエリンガム図と、実施例7で得られた櫛型電極構造像である。 銀の酸化反応のエリンガム図と、実施例8で得られた櫛型電極構造像である。 インジウムの酸化反応のエリンガム図と、実施例9で得られた櫛型電極構造像である。 錫の酸化反応のエリンガム図と、実施例10で得られた櫛型電極構造像である。
以下、本発明の実施例等につき説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
(還元反応の原理説明)
本発明の原理は、第一に、炭素が高い還元能力を持ち、殆どすべての金属酸化物や半導体酸化物を現実的な反応温度で還元できる点に基づいている。そして、第二に、炭素還元に必要な反応温度は、レーザー等のエネルギーを集中できる熱源により比較的簡単に発生可能であることに基づいている。また、第三には、その熱源を走査可能として、所望の場所、厚さ、大きさ、形状を持つ目的の金属層や半導体層が得られる点に基づいている。
上記本発明の原理のうち、第一の点に関連して、炭素がどうして高い還元能力を持つのかを説明する。
一般に、ある化学反応のギブスの自由エネルギー(ΔG)は、その反応を起こす熱力学的な駆動力の指標である。ΔGが負の値をとる場合、外部からの熱入力なしで自発的に反応は進行する。ギブス自由エネルギーの式は以下の(1)式のように表される。
Figure 2010287810
ここで、ΔHはエンタルピー、Tは絶対温度、ΔSはエントロピーである。エンタルピー:ΔHは、反応が起こった時に解放される実エネルギーを表す指標であり、所謂、反応熱である。もしΔHが負ならば、反応は何らかのエネルギーを発生する一方、ΔHが正ならば、反応はエネルギーを必要とする。エントロピー:ΔSは、反応物に対する生成物内の乱雑さの変化を示す指標である。
(1)式は、縦軸をΔG、横軸をTとして、ΔGをTの関数として図示できる。特に、酸化物生成反応について、(1)式の関係を図示したものはエリンガム図(Ellingham diagram)と呼ばれる。相変化がない場合、ΔH:エンタルピーとΔS:エントロピーは本質的に定数であるので、温度に対するΔGのプロットは一連の直線で描画できる。その場合、ΔSは直線の傾き、ΔHはy切片となる。
図1は、炭素(C)とシリコン(Si)の酸化反応に関するエリンガム図である。炭素の場合、C+O=COと2C+O=2COの2種類の酸化反応がある。シリコンの場合、ΔS>0であるため、右肩上がりの直線となる。しかし、C+O=COの酸化反応では、ΔS≒0であるため、ほぼ水平線となる。さらに、2C+O=2COの酸化反応では、ΔS<0であるため、右肩下がりの直線となる。
エリンガム図では、定義上、上方に描かれる直線に載る酸化物は還元されやすく、下方に描かれる直線に載る酸化物は還元が難しい。また、2種類の酸化反応を比較した場合、上方に描かれる直線に載る生成物である酸化物は、下方に描かれる直線に載る反応物である元素を用いて還元できる。
例えば、図1で説明すると、Si+O=SiO線と炭素の酸化反応の片方の2C+O=2CO線との交点より高温側、すなわち、T>1941Kの範囲にあれば、酸化シリコン(SiO)は炭素により還元され得る。T=1941Kという還元温度の下限は、既存の加熱方法、例えば、エネルギーを集中できる熱源を用いれば、到達可能な温度である。
なお、Si+O=SiO線と炭素の酸化反応のもう片方のC+O=CO線の交点はT=2799Kであるが、上述のT=1941Kより高いので、酸化シリコンの炭素還元の下限温度は低い方のT=1941Kが採用される。これは、以下においても同様である。
図2は、一酸化炭素(CO)、水素(H)、シリコン(Si)の酸化反応に関するエリンガム図である。これらの反応線はすべてΔS>0であることから、どの場合も右肩上がりの直線となる。そのため、2CO+O=2CO線とSi+O=SiO線との交点、2H+O=2HO線とSi+O=SiO線との交点は、いずれも図2の表示範囲外の高温側にあり、それぞれ、T=16215K、T=5253Kとなる。
すなわち、酸化シリコンは、一酸化炭素で還元する場合、T>16215Kという非実用的な高温が必要であり、水素の場合でも、T>5253Kという通常の方法では発生できない高温を要する。このことから、実際上、酸化シリコンは一酸化炭素や水素では還元不可能であることがわかる。これらの高温が、上述の炭素還元の場合のT>1941Kという現実的な温度と大きく異なることがわかる。
炭素の還元能力が著しく高い理由は、偏に、エントロピー項:ΔSの寄与による。すなわち、一酸化炭素や水素等の一般の還元剤の酸化反応の場合、ΔSは正の値であるのに対し、炭素の酸化反応の場合は、ΔSは負の値(生成物が一酸化炭素の場合、−0.1753kJ・mol−1、二酸化炭素の場合、−0.0008368kJ・mol−1)となる。一方、金属酸化物と半導体酸化物の酸化反応においてΔSは、一般に正の値となる。したがって、還元剤の酸化反応のΔSが同じく正の値であると、還元可能な下限温度は著しく高くなってしまうが、ΔSが負である炭素では還元可能な下限温度が著しく低くできるのである。
上記と同様に、様々な金属酸化物と半導体酸化物の炭素還元を熱力学的に詳細に考察した結果を表−1にまとめる。この表は、各種金属元素又は半導体元素の酸化反応に関するΔGと、炭素の酸化反応に関するΔGを連立して数値計算するか、もしくは、それぞれのエリンガム図を描いて交点を求めるかによって導出される。表−1の第1カラムは炭素還元対象の酸化物、第2カラムは炭素還元で生成する単体、第3カラムは炭素還元に必要な温度の下限を示す。炭素以外の金属や半導体の酸化反応のΔGが温度に対して正の傾きを持つのに対し、炭素の酸化反応のΔGは、温度の関数として、C+O=COの場合は傾きがほぼゼロ、2C+O=2COの場合は傾きが負であることに起因して、炭素は幅広い金属酸化物や半導体酸化物を金属単体や半導体単体に還元することができる。
また、炭素還元対象の酸化物が複数含まれている場合でも、還元温度をそれらの酸化物の中で最も高いもの以上に設定すれば、複数の酸化物に対応する金属又は半導体の合金として炭素還元することが可能である。一般に、製錬コストを考慮に入れると、酸化物材料は、それを構成する金属単体又は半導体単体の材料より著しく安価である。本発明では、金属又は半導体からなる構造を形成するための出発物質として、それらに対応する酸化物を用いる。従って、本発明と、金属単体又は半導体単体を原料として蒸着やスパッタによって金属又は半導体の構造を形成する関連技術と、を比較すると、本発明により材料費の大幅なコストダウンを図ることができる。
さらに、本発明の方法を技術的な観点から見ると、表−1に示す如く、選択できる元素の範囲が非常に広いことから、半導体素子の製造方法として汎用性が非常に高くなることがわかる。また、本発明の方法は、基本原理が炭素還元に統一されているため、材料毎に別々の製造装置を用意する必要がない。すなわち、すべての材料に対して1つの装置で対応可能であり、還元温度を唯一の可変量として同一の工程で、様々な半導体素子を製造することができる。
Figure 2010287810
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表−1からわかるように、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料は、酸化リチウム(I)/LiO、酸化ベリリウム(II)/BeO、酸化ホウ素(III)/B、酸化ナトリウム(I)/NaO、酸化マグネシウム(II)/MgO、酸化アルミニウム(III)/Al、酸化ケイ素(IV)/SiO、酸化リン(V)/P10、酸化リン(IV)/PO、酸化カリウム(I)/KO、酸化カルシウム(II)/CaO、酸化スカンジウム(III)/Sc、酸化チタン(IV)/TiO、酸化チタン(III,IV)/Ti、酸化チタン(III)/Ti、酸化チタン(II)/TiO、酸化バナジウム(V)/V、酸化バナジウム(IV)/VO、酸化バナジウム(III)/V、酸化バナジウム(II)/VO、酸化クロム(II)/CrO、酸化クロム(II,III)/Cr、酸化クロム(III)/Cr、酸化マンガン(IV)/MnO、酸化マンガン(III)/Mn、酸化マンガン(II,III)/Mn、酸化マンガン(II)/MnO、酸化鉄(III)/Fe、酸化鉄(II)/FeO、酸化鉄(II,III)/Fe、酸化コバルト(II,III)/Co、酸化コバルト(II)/CoO、酸化ニッケル(II)/NiO、酸化銅(II)/CuO、酸化銅(I)/CuO、酸化亜鉛(II)/ZnO、酸化ガリウム(III)/Ga、酸化ゲルマニウム(IV)/GeO、酸化ヒ素(III)/As、酸化セレン(IV)/SeO、酸化ルビジウム(IV)/RuO、酸化ストロンチウム(II)/SrO、酸化イットリウム(III)/Y、酸化ジルコニウム(IV)/ZrO、酸化ニオブ(V)/Nb、酸化ニオブ(IV)/NbO、酸化ニオブ(II)/NbO、酸化モリブデン(VI)/MoO、酸化モリブデン(IV)/MoO、酸化ルテニウム(VI)/RuO、酸化ルテニウム(VIII)/RuO、酸化ルテニウム(IV)/RuO、酸化ロジウム(III)/Rh、酸化パラジウム(II)/PdO、酸化銀(I)/AgO、酸化カドミウム(II)/CdO、酸化インジウム(III)/In、酸化スズ(IV)/SnO、酸化アンチモン(III)/Sb、酸化テルル(IV)/TeO、酸化バリウム(II)/BaO、酸化セリウム(IV)/CeO、酸化セリウム(III)/Ce、酸化プラセオジウム(III)/Pr、酸化ネオジウム(III)/Nd、酸化サマリウム(III)/Sm、酸化ユーロピウム(III)/Eu、酸化ガドリニウム(III)/Gd、酸化テルビウム(III)/Tb、酸化ジスプロシウム(III)/Dy、酸化ハフニウム(IV)/HfO、酸化タンタル(V)/Ta、酸化タングステン(VI)/WO、酸化タングステン(IV)/WO、酸化レニウム(IV)/ReO、酸化オスミウム(IV)/OsO、酸化イリジウム(IV)/IrO、酸化水銀(I)/HgO、酸化鉛(IV)/PbO、酸化鉛(II,III)/Pb、酸化鉛(II)/PbO、酸化ビスマス(III)/Bi、酸化トリウム(IV)/ThO、及び酸化ウラン(IV)/UOからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
還元剤である炭素は、固体炭素であれば、何れの炭素材料でも使用可能である。工業生産の観点から好ましいのは、炭素材料が、アモルファス炭素、ガラス状炭素、グラファイト、グラフェン、ダイヤモンド状炭素、ダイヤモンド微粒子、ナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、及びフラーレンから選ばれる少なくとも1つであることである。また、炭素還元で形成される金属や半導体からなる構造を電気的に絶縁する必要がある場合は、絶縁性の高いダイヤモンド系の材料を還元剤として選択することがより好ましい。
炭素材料は、ナノ構造を有する半導体素子を製造することを目的とする場合においては、グラフェン、ナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、又はフラーレン等のナノ材料を還元剤として用いることがより好ましい。さらに、材料コストの観点からは、安価に入手可能であるアモルファス炭素、ガラス状炭素、グラファイト、ダイヤモンド微粒子を還元剤として選ぶことがより好ましい。
炭素材料として、さらに、マクロな構造であるが平坦性や緻密性が必要な場合は、安価な炭素材料を主原料にして、その間隙を少量のナノ材料で埋めるという還元剤の組み合わせにより、コストパフォーマンスを向上させることも可能である。
次に、炭素還元に必要な温度を得るための手段について述べる。
炭素による金属酸化物や半導体酸化物の還元は、産業上、溶鉱炉等大規模な熱源を用いて行われるが、本発明では局所的にエネルギーを集中できる熱源を用いる。従って、系全体を高温に保つ必要がないという観点から、エネルギーコストを著しく低くすることができる。局所的な加熱が可能な熱源としては、本発明の目的が達成される限り特に制限はない。好ましくは、熱源を、レーザー光、電子ビーム、集束イオンビーム、マイクロ波ビーム、又はジュール熱のいずれかとすることである。
上記の熱源の中では、製造コストの観点からは、安価に入手できるレーザー光を用いるのが好ましい。一方、微細化の観点からは、レーザー光を用いる場合、製造される半導体素子の大きさの下限はその波長程度、数百ナノメートルからマイクロメートル程度に留まる一方で、電子ビーム、集束イオンビームを用いた場合は、下限は数ナノメートルから数十ナノメートルまで下げることができる。
ここで、熱源としてジュール熱を用いる場合としては、例えば、還元反応構造において還元を行うべき領域(還元領域)を金属電極で挟んで使用すればよい。すなわち、電極間に電圧を印加した時に発生するジュール熱によって、還元領域を金属又は半導体に還元することができる。
上記の熱源の中では、汎用性がある、コストが低い、大気圧中でも高温を発生できる、透過性がある等の観点から、レーザー光が最も好ましい。
レーザー光を熱源として用いる場合、レーザーを集光することで、炭素還元を行う場所のみを加熱して、炭素還元に必要な温度を発生させることが出来る。例えば、汎用的な5ワットクラスYAGレーザー(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)ならば、4000K程度に加熱することに困難はない。また、レーザー光使用の長所は、還元が終了した時にレーザーを遮断すれば、急速に冷却することが可能であることである。さらに、レーザーに走査機能があれば、複雑な形状の配線、電極構造、チャネル構造を製造することも出来る。解像度は波長程度であるので、例えば、YAGレーザーを用いれば、約1マイクロメートル程度の線幅で加工が可能である。これにより、出発物質の酸化物を適切に選択すれば、所望の場所、所望の形状の配線、電極、チャネル、インダクタ、キャパシタ、抵抗体、磁性体、MEMS構造等を製造することができる。
(半導体素子の製造方法:その1)
本発明の半導体素子の製造方法は、炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料とを有する還元反応構造を持つ層構造を準備する層構造準備工程と、層構造を設置する層構造設置工程と、還元反応構造に対して局所的にエネルギーを集中することが可能で、かつ還元反応構造に対して2次元的又は3次元的に走査することが可能な熱源を用い、この熱源によって酸化還元反応が起こる温度以上に還元反応構造の一部を走査しつつ選択的に加熱して、炭素材料により金属酸化物材料又は半導体酸化物材料をそれぞれ金属又は半導体に還元し、所望の形状の金属領域又は半導体領域を形成する金属・半導体領域形成工程と、を有する。
これにより、汎用性が高く、低コストで省資源である方法を採用し、実用性に富み、任意の場所、任意の形状に金属又は半導体を二次元的又は三次元的に形成できる半導体素子の製造方法を提供することができる。すなわち、半導体素子において、所定の厚さ、大きさ、形状に、金属領域又は半導体領域を形成することができる。
より具体的には、局所的にエネルギーを集中できる熱源による酸化物の炭素還元を行うことで、配線、電極、半導体チャネル、キャパシタ、インダクタ、抵抗体、磁性体、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)構造等、エレクトロニクス分野で活用される、様々な金属又は半導体からなる構造を組み込むことを実現した半導体素子の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明の半導体素子の製造方法により、局所的にエネルギーを集中できる熱源を用いて、その熱源を走査しながら、酸化物の炭素還元を微小領域で行うことで、関連技術では作製困難な3次元実装を実現した半導体素子を製造することが可能となる。
本発明の半導体素子とは、例えば、配線、電極、半導体チャネル、インダクタ、キャパシタ、抵抗体、磁性体、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)構造等を有する半導体装置に用いることができる素子をいう。また、配線基板も、半導体装置に用いるものであれば、本発明の半導体素子に含まれる。
本発明の半導体素子の製造方法においては、還元反応構造が、炭素材料と金属酸化物材料若しくは半導体酸化物材料との混合物を含有する層、又は炭素材料を含有する層と金属酸化物材料若しくは半導体酸化物材料を含有する層との積層である、ことが好ましい。これにより、還元反応構造での良好な還元が行いやすくなる。
以下、各工程について説明する。
層構造準備工程においては、炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料とを有する還元反応構造を持つ層構造を準備する。還元反応構造は、炭素材料及び金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を有すればよいのでその形態に特に制限はないが、上述の良好な還元等の工業的な観点からは、炭素材料と金属酸化物材料若しくは半導体酸化物材料との混合物を含有する層、又は炭素材料を含有する層と金属酸化物材料若しくは半導体酸化物材料を含有する層との積層であることが好ましい。
還元反応構造として用いる、炭素材料と金属酸化物材料若しくは半導体酸化物材料との混合物を含有する層、炭素材料を含有する層、又は金属酸化物材料若しくは半導体酸化物材料を含有する層は、の少なくとも1つは、工業的な観点から、それぞれの層を構成する材料の微粒子からなるコロイド溶液の塗布により形成されることが好ましい。
また、還元反応層として用いる、炭素材料と金属酸化物材料若しくは半導体酸化物材料との混合物を含有する層、炭素材料を含有する層、又は金属酸化物材料若しくは半導体酸化物材料を含有する層、の少なくとも1つは、工業的な観点から、それぞれの層を構成する材料のスパッタ又は蒸着により形成されることが好ましい。
層構造設置工程においては、上記層構造準備工程において準備した層構造を半導体素子の製造装置に設置する。具体的には、後述の金属・半導体領域形成工程において用いる熱源により選択的な加熱が可能となるように、層構造を熱源に対して所定の位置関係になるように設置する。設置の方法は、用いる層構造の形態によっても変化するので、この点については後述する。
金属・半導体領域形成工程においては、還元反応構造に対して局所的にエネルギーを集中することが可能で、かつ還元反応構造に対して2次元的又は3次元的に走査することが可能な熱源を用い、この熱源によって酸化還元反応が起こる温度以上に還元反応構造の一部を走査しつつ選択的に加熱して、炭素材料により金属酸化物材料又は半導体酸化物材料をそれぞれ金属又は半導体に還元し、所望の形状の金属領域又は半導体領域を形成する。用いる熱源や好ましいものについては、すでに説明したとおりである。
図3は、本発明の半導体素子の製造方法の一例を示す斜視図である。具体的には、上記した製造方法の一例を示す斜視図である。
還元反応構造1Aは、図3(A)に示すように、炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料との混合物を含有する層が単層として形成される。そして、層構造準備工程は、還元反応構造1Aを基板2に直接形成して層構造30Aを準備することによって行う。次いで、図3には図示していないが、熱源3による選択的な加熱が可能となるように層構造30Aを設置する層構造設置工程を行う。さらに、図3(B)に示すように、熱源3を用いて、還元反応構造1Aを局所的にかつ選択的に加熱還元して、図3(C)に示すように、金属領域又は半導体領域としての金属層又は半導体層4を形成し、半導体素子40Aを得る(金属・半導体領域形成工程)。以下、それぞれの工程につきさらに詳細に説明する。
層構造30Aの準備(層構造準備工程)は、図3(A)に示すように、適当な基板2上に還元剤である炭素材料と、金属酸化物又は半導体酸化物との混合物を含有する層としての還元反応構造1Aを製膜する。
還元反応構造1Aの製膜にあたっては、炭素材料としては、アモルファス炭素等の前述した材料を適宜用いればよい。また、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料は、例えば、表−1に示されるものから選択すればよい。こうした材料の選択は、以下の実施例においても同様である。そして、炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料とは、酸化還元反応に必要な当量を混合すればよい。
還元反応構造1Aの製膜は、基板2上に適宜行えばよい。製膜の方法としては、上述のように、例えば、炭素材料微粒子と、金属酸化物微粒子又は半導体酸化物微粒子とを適当な分散媒に懸濁してコロイド溶液を作成し、これを適当な方法で塗布する方法を挙げることができる。また、炭素材料と、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料との共蒸着法や共スパッタ法を用いて基板2上に製膜する方法も挙げることができる。
また、還元反応構造1Aでは採用していないが、還元反応構造を、炭素材料を含有する層と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層との積層としてもよい。すなわち、金属酸化物材料又は半導体酸化物の層と、炭素材料層を別々に積層してもよい。この場合、各層の積層順序に制限はなく、基板/炭素材料を含有する層/金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層、の積層構造としてもよいし、基板/金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層/炭素材料を含有する層、の積層構造としてもよい。
層構造30Aは、次いで、図3には図示していないが、熱源たるレーザー光3による選択的な加熱が可能となるように半導体素子の製造装置に設置される(層構造設置工程)。
そして、層構造30Aに対して、図3(B)に示すように、エネルギーを集中できる熱源3、例えば、レーザー光を用いて、還元反応構造1Aを還元可能温度まで加熱することで、金属酸化物又は半導体酸化物を炭素で還元する。その結果、図3(C)に示すように、金属層又は半導体層4を得ることができる(金属・半導体領域形成工程)。
金属・半導体領域形成工程においては、熱源3として用いられるレーザー光は酸化還元反応が必要な場所のみに照射されるので、系全体が昇温することはない。また、反応終了と同時にレーザー光を遮断すれば、照射した場所の熱も急速に系全体の熱浴に拡散する。この時、熱源が走査可能となっているので、図3(C)に示すように、所望の場所に、所望の形状、大きさ、厚さでパターニングされた金属層又は半導体層4が形成可能となる。
また、還元反応構造1Aでは、炭素材料と、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料とを当量で混合しているが、炭素材料を当量より少なくすることもできる。この場合、還元反応の際に炭素材料がすべて消費されて還元金属又は還元半導体が生成する一方で、他方、酸化物の一部は炭素還元されずに残る。そのため、還元金属又は還元半導体とその酸化物からなる複合層を形成することが可能となる。
このように、炭素材料の量を当量から徐々に減少させることで、金属又は半導体からこれら金属又は半導体の酸化物まで、物性を連続的に調整することが可能となる。これにより、炭素により還元された領域の導電率、仕事関数、磁化率、誘電率等を調整・制御することができる。その結果、配線、電極、半導体チャネルのほか、抵抗体、磁性体膜、光学用膜、MEMS構造等、様々なエレクトロニクス部材を有する半導体素子を製造することが可能となる。
さらに、上記金属・半導体領域形成工程を行った後、さらに還元反応構造を設けてこれに対して再度金属・半導体領域形成工程を施す等、これら工程を多段階に行えば、MOS(メタル・オキシド・セミコンダクタ)構造、光学用多層膜等、金属膜(金属層)又は半導体膜(半導体層)の積層構造を有する半導体素子を得ることもできる。これらは、以下の実施例においても同様である。
(半導体素子の製造方法:その2)
本発明の半導体素子の製造方法においては、層構造準備工程において、基板とこの基板上に形成された還元反応構造とを有する層構造を準備し、さらに転写先基板を準備するとともに、この転写先基板又は上記基板を透明基板とし、層構造設置工程において、層構造を、還元反応構造を挟むようにして転写先基板と対面するようにして設置し、金属・半導体領域形成工程において、透明基板の側から、還元反応構造を熱源により選択的に加熱して還元を行うと同時に、熱源によるアブレーション現象を利用することで、還元によって生じた金属又は半導体を転写先基板に転写して、金属領域又は半導体領域を転写先基板上に形成する、ことが好ましい。
この製造方法においては、上記アブレーション現象を利用することにより、第一に、還元剤の炭素と酸化物の両者が一旦クラスターレベルまで細かく粉砕・混合されて酸化還元反応が進行するので、転写先基板上に非常に緻密な金属領域または半導体領域を形成できるという利点、第二に、還元反応構造でパターニングに使用しなかった残渣は転写元基板上に残り、目的の金属領域または半導体領域のみを転写基板上に形成することが出来るので、残留還元反応構造除去の工程が不要になるという利点、第三に、レーザー光は還元反応構造に集光するので、金属領域又は半導体領域を形成する転写先基板は焦点から外れるため、転写先基板は熱や光のダメージを全く受けず、転写先基板には熱や光に弱い材質、例えば、プラスチックや紙等でも使用できること等の利点が発揮されるようになる。そして、アブレーション現象を利用する観点から、熱源がレーザー光であり、このレーザー光を還元反応構造に局所的に照射することで選択的な加熱を行うようにすることが好ましい。
より具体的には、層構造準備工程において、層構造に用いる基板を透明基板とする場合には、層構造設置工程において、還元反応構造を挟んで層構造と転写先基板とを対面するように設置する。そして、金属・半導体領域形成工程において、透明基板の側から還元反応構造を熱源により選択的に加熱して、還元反応構造を酸化還元反応が起こる温度以上とすることで、炭素材料により金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を対応する金属又は半導体へ還元すると同時に、熱源によるアブレーション現象を利用することで、還元反応によって生じた金属又は半導体を転写先基板上に転写することによって製造すればよい。
図4は、本発明の半導体素子の製造方法の他の一例を示す斜視図である。具体的には、上記した製造方法の一例を示す斜視図であり、同図は、前駆体となる金属酸化物材料又は半導体酸化物材料と、還元剤の炭素材料とを第2の基板たる透明基板5に製膜し、加熱還元と転写により第1の基板たる基板2に金属層又は半導体層4を形成するものである。以下、さらに詳しく説明する。
還元反応構造1Bは、図4(A)に示すように、炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料との混合物を含有する層が単層として形成される。この場合、上記混合物を含有する層の形成(製膜)方法は、「半導体素子の製造方法:その1」で説明した方法と同様のものを用いるのが好ましい。また、「半導体素子の製造方法:その1」と同様に、還元反応構造は、炭素材料を含有する層と、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層との積層としてもよい。すなわち、酸化物と炭素材料を別々に積層してもよい。
層構造30Bは、層構造準備工程において、透明基板5(第2の基板)上に還元反応構造1Bが製膜されることによって形成されている。そして、層構造設置工程においては、図4(A)に示すように、層構造30Bは、還元反応構造1Bを挟むようにして、基板2(第1の基板)と対置される。ここで、後述する金属・半導体領域形成工程での転写をより確実に行うために、層構造と基板(第1の基板)とを接して設けてもよい。
透明基板5(第2の基板)は、使用する熱源3たるレーザーに対して透明であるものが選ばれる。これにより、還元反応構造1Bの製膜面とは反対方向からのレーザー入射が可能となる。透明基板5を用いる長所は、還元温度が、原料の金属酸化物材料又は半導体酸化物材料や生成物の金属又は半導体の融点を越えている場合、原料や生成物が蒸発により飛散することを防いで、目的の金属層又は半導体層を基板2上に形成可能となる点にある。
還元反応構造1Bは、金属・半導体領域形成工程において、図4(B)に示すように、レーザー光たる熱源3によって、透明基板5の側から選択的に加熱され、炭素材料により金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を対応する金属又は半導体へ還元すると同時に、熱源3によるアブレーション現象を利用することで、還元反応によって生じた金属又は半導体を転写先基板たる基板2上に転写している。
金属・半導体領域形成工程では、上述のとおり、転写にレーザーアブレーションを利用する。透明基板5と通じて、還元反応構造1Bの表面(製膜面)とは反対方向からレーザーを入射し、レーザー加熱がもたらす高温が金属酸化物材料又は半導体酸化物材料の炭素還元を開始させる。そして、還元によって生じる単体金属又は単体半導体は、高温とアブレーション作用により、矢印8に示すように、基板2(第1の基板)に転写製膜され、金属層又は半導体層4が形成される。こうして、図4(C)に示すように、半導体素子40Bが製造される。
ここで、金属・半導体領域形成工程において、図4(B)に示すように、還元反応構造1Bの反対側からレーザーを照射しつつ、レーザーを2次元的に走査させるので、図4(C)に示すように、所望の場所に所望の形状、大きさ、厚さでパターニングされた金属層又は半導体層4を形成することができる。
図4に示す、アブレーションを利用する方法は、特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、典型元素金属や半導体の場合に有効である。
還元反応構造1Bにおいては、炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料とは当量含有されている。このため、炭素は完全に酸化消費され、還元された金属のみ又は半導体のみが基板2に転写される。もっとも、還元炭素を当量より少なくすれば、還元されない酸化物が還元された金属又は半導体とともにアブレーション現象で対置された基板2に製膜される。その結果、基板2には、金属とこの金属の酸化物との混合層、又は半導体とこの半導体の酸化物との混合層が転写される。これにより、金属とこの金属の酸化物、又は半導体とこの半導体の酸化物という中間的な物性を有する半導体素子を得ることができる。
(半導体素子の製造方法:その3)
「半導体素子の製造方法:その2」で説明した製造方法において、転写先基板を透明基板とすることもできる。この場合、層構造準備工程において転写先基板に透明基板を用い、層構造設置工程において、還元反応構造を挟んで層構造と転写先基板とを対面するように設置する。そして、金属・半導体領域形成工程において、透明基板を通して還元反応構造を熱源により選択的に加熱して、還元反応構造を酸化還元反応が起こる温度以上とすることで、炭素材料により金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を対応する金属又は半導体へ還元すると同時に、熱源によるアブレーション現象を利用することで、還元反応によって生じた金属又は半導体を転写先基板上に転写することによって製造すればよい。
図5は、本発明の半導体素子の製造方法のさらに他の一例を示す斜視図である。具体的には、上記した製造方法の一例を示す斜視図であり、同図は、前駆体となる金属酸化物材料又は半導体酸化物材料と、還元剤の炭素材料とを適当な基板2(第2の基板)上に製膜し、加熱還元と転写により透明基板5(第1の基板)に金属層又は半導体層4を形成するものである。以下、さらに詳しく説明する。
矢印8の方向をみてわかるように、図5(B)と図4(B)とでは転写の方向が逆であるが、手順は互いに類似している。
まず、還元反応構造1Cは、図5(A)に示すように、炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料との混合物を含有する層が単層として形成される。この場合、上記混合物を含有する層の形成(製膜)方法は、上記説明した方法と同様のものを用いるのが好ましい。同様に、還元反応構造は、炭素材料を含有する層と、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層との積層としてもよい。すなわち、酸化物と炭素材料を別々に積層してもよい。
層構造30Cは、層構造準備工程において、基板2(第2の基板)上に還元反応構造1Cが製膜されることによって形成されている。そして、層構造設置工程においては、図5(A)に示すように、層構造30Cは、還元反応構造1Cを挟むようにして、透明基板5(第1の基板)と対置される。ここで、後述する金属・半導体領域形成工程での転写をより確実に行うために、層構造と透明基板(第1の基板)とを接して設けてもよい。また、透明基板5として、使用する熱源3たるレーザーに対して透明であるものが選ばれる等の事情については、「半導体素子の製造方法:その2」と同様とすればよい。
金属・半導体領域形成工程では、上述のとおり、転写にレーザーアブレーションを利用する。透明基板5と通じて、還元反応構造1Cの表面(製膜面)にレーザーを照射し、レーザー加熱がもたらす高温が金属酸化物材料又は半導体酸化物材料の炭素還元を開始させる。そして、還元によって生じる単体金属又は単体半導体は、高温とアブレーション作用により、矢印8に示すように、透明基板5(第1の基板)に転写製膜され、金属層又は半導体層4が形成される。こうして、図5(C)に示すように、半導体素子40Cが製造される。
ここで、金属・半導体領域形成工程において、図5(B)に示すように、還元反応構造1Cにレーザーを照射しつつ、レーザーを2次元的に走査させるので、図5(C)に示すように、所望の場所に所望の形状、大きさ、厚さでパターニングされた金属層又は半導体層4を形成することができる。
なお、還元反応構造1Cにおいて、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料と、炭素材料との混合比を換えた場合の効果は、「(半導体素子の製造方法:その1)」、「(半導体素子の製造方法:その2)」で説明したとおりである。
また、レーザー光をx軸方向とy軸方向からなる2次元平面内で走査させるだけでなく、z軸方向も加えた3次元空間内で走査させれば、予め決められた場所に、予め決められた3次元的な形状で、配線、電極、チャネル、キャパシタ、抵抗体、磁性体、MEMS構造等を製造することができる。
(半導体素子の製造方法:その4)
本発明の半導体素子の製造方法においては、層構造準備工程において、第1の基板上に金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層を形成した第1の層構造と、第2の基板上に炭素材料を含有する層を形成した第2の層構造とを層構造として準備するとともに、第1の基板又は第2の基板を透明基板とし、層構造設置工程において、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とが対面するように、第1の層構造及び第2の層構造を設置し、金属・半導体領域形成工程において、透明基板の側から熱源により選択的に加熱することにより還元を行い、金属領域又は半導体領域を形成することが好ましい。
これは、「(半導体素子の製造方法:その2)」、「(半導体素子の製造方法:その3)」の変型として、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層と、還元剤の炭素材料を含有する層と、を第1と第2の基板に別々に形成するものである。
より具体的には、第1の基板には、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層を製膜して第1の層構造を形成する。一方、第2の基板には、炭素材料を含有する層を製膜して第2の層構造を形成する。そして、第2の基板を透明基板とする。ここで、製膜方法については、上記説明した方法と同様に、コロイド溶液の塗布、スパッタ、蒸着を用いて行うことが好ましい。
そして、層構造設置工程において、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とが対面するように、第1の層構造及び第2の層構造を設置する。このことからわかるように、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とが対面して設置されて、還元反応構造を形成する。そして、転写をより確実に行う観点から、対置させる場合には、金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを接して設置してもよい。
次いで、金属・半導体領域形成工程において、炭素材料を含有する層を、透明基板の側から熱源により選択的に加熱することによりアブレーション現象を利用し、炭素材料を金属酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層に転写して還元を行い、金属領域又は半導体領域を形成する。
また、上記においては、第2の基板を透明基板としているが、第1の基板を透明基板としてもよい。すなわち、透明基板上に酸化物材料又は半導体酸化物材料を含有する層を製膜して第1の層構造とし、適当な基板を第2の基板として、この第2の基板上に炭素材料を含有する層を形成して第2の層構造としてもよい。
以下、本発明の半導体素子の製造方法について、具体的な金属酸化物材料及び炭素材料を用いて櫛形電極を有する半導体素子を製造する実施例を用いてより具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例では、酸化銅(II)/CuOをナノダイヤモンドで還元することで、基板上に作製される還元銅からなる櫛型電極の製造方法を説明する。
(1)層構造準備工程
まず、平均粒子径が25nm程度のCuO超微粒子を適当な溶媒に分散し、CuOコロイド溶液を得る。また、平均粒子径が5nm程度のダイヤモンド微粒子(この場合、ナノダイヤモンド)を適当な溶媒に分散し、ナノダイヤモンドコロイド溶液も併せて用意する。両者とも、溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N,N´−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等から選ばれる。
なお、CuO超微粒子やダイヤモンド微粒子の平均粒子径は上記に限らず、概ね1μm以下ならよく、製膜時の膜質の緻密性の観点からは、5〜100nmの範囲とすることが望ましい。分散には超音波振動を用い、必要ならば超微粒子の凝集体を解く界面活性剤を加え、できる限り均一分散する。分散液の濃度は任意であるが、分散から塗布までの保管時に再凝集を防ぐという観点から、1〜10wt%(重量パーセント)の範囲とすることが望ましい。
次いで、適当な基板に上記のCuOコロイド溶液を塗布して乾燥させることにより、金属酸化物材料を含有する層を基板上に形成して、第1の層構造を得る。ここで、基板としてガラス基板を用いているが、その他、ガラス、プラスチック、半導体、金属、セラミック等、様々な材料からなる基板を選択することもできる。そして、別途用意した透明基板上にナノダイヤモンドコロイド溶液を塗布し乾燥させることにより、炭素材料を含有する層を透明基板上に形成して、第2の層構造を得る。透明基板として、本実施例ではカバーガラス(ガラス基板)を用いているが、プラスチック等の透明基板を用いてもよい。
ここで、コロイド溶液の塗布の方法は特に制限されず、ディップコート法、スピンコート法、滴下法等、塗布膜の厚さ(膜厚)を均一に制御可能な方法であればどのような方法を用いてもよい。本実施例では、スピンコート法と滴下法の双方を採用したが、いずれも良好な製膜が可能であった。もっとも、スピンコート法は、製膜時に回転によりコロイド溶液の殆どが飛び散ってしまいコロイド溶液の無駄が多い。また、こうした飛び散りのために、製膜した酸化物膜、ナノダイヤモンド膜の重量をコロイド溶液の濃度と体積から定量することが難しい。このため、コロイド溶液の無駄が無く定量性のある滴下法を用いることが好ましい。
塗布膜の厚さ(膜厚)は、コロイド溶液を構成する粒子径と同じ程度(本実施例ではCuO層は25nm程度、ナノダイヤモンド層は5nm程度)〜10μm以下の範囲とすることが好ましい。塗布膜の乾燥は、コロイド溶液の溶媒を蒸発させるだけなので空気乾燥でよいが、必要ならば100℃程度で加熱乾燥してもよい。
金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とで還元反応構造が形成されるが、両層の厚さ又はそれぞれの材料の重量を、2CuO+C→2Cu+COの酸化還元反応の当量になるように調整すると、炭素還元した時、基板上のCuO層を完全にCu層に変換できる。本実施例では、金属酸化物材料を含有する層たるCuO層の厚さは2μm、炭素材料を含有する層たるナノダイヤモンド層の厚さは200nmである。
(2)層構造設置工程
以上のようにして準備した、基板上にCuO層が形成された第1の層構造と、透明基板たるカバーガラス上にナノダイヤモンド層が形成された第2の層構造とを、CuO層とナノダイヤモンド層とが対面するように重ねて設置(接するように設置)して、還元反応構造を形成し、これを次の工程の試料とした。
(3)金属・半導体領域形成工程
金属・半導体領域形成工程では、上記のように設置した第1の層構造と、第2の層構造とを炭素還元温度まで加熱する。本実施例ではレーザー加熱を用いた。
図6は、実施例に用いた熱源としてのレーザー装置の模式的な斜視図である。同図に示すように、使用したレーザー9は、半導体レーザー励起Nd:YAGパルスレーザー(波長は1064nm、繰り返しは1〜200kHz)である。レーザー9より出射されたレーザー光は一旦、ビームエクスパンダー10により拡大され、反射鏡11で方向変換した後、レンズ12により試料台15上の試料14に集光され、局所的な加熱に使われる。
本実施例のレーザー装置は走査機能を有し、試料台15を1〜2×10μm/sの速度で、x軸方向を示す矢印16、y軸方向を示す矢印17、z軸方向を示す矢印18の3軸方向にステッピングモーターで駆動できるようになっている。レーザー9の内部に設置された半導体レーザーの駆動電流、試料台15の走査速度(1〜2×10μm/s)の両者により、試料14に照射されるレーザーパワーを調整することが可能であり、試料14上のレーザースポットのパワー密度は10−2〜10W/cmとなる。これにより、レーザースポットの温度は300〜4000K程度になるが、この温度範囲とすれば、本実施例で用いるCuOのみならず表−1に示される酸化物をすべて炭素還元できる。
図7は、銅の酸化銅(CuO)への酸化反応のエリンガム図である。同図からわかるように、計算上は任意の温度でCuOは炭素により還元できることになるが、本実施例ではレーザー加熱による1000Kの温度でCuO炭素還元した。一般に、空気中の酸素による再酸化や窒素による窒化を防ぐという観点から、不活性雰囲気中でレーザー加熱による炭素還元を行うのが望ましい。しかし、本実施例のCuOの場合は大気圧下の空気中でもレーザー加熱で炭素還元が可能であった。
図8は、実施例1で得られた半導体素子の櫛形電極構造像である。図8(A),(B)は、上記製造工程を経て実際に構造形成された櫛型電極構造像を示す。これらは、CuO層を形成したガラス基板(第1の層構造)と、ナノダイヤモンド層が形成されたカバーガラス(第2の層構造)とを塗布面を向かい合わせて重ね合わせた後、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画したものである。
より具体的には、図8(A)は、CuO層が形成されたガラス基板(第1の層構造)に描画された櫛型電極構造像である。一方、図8(B)は、ナノダイヤモンド層が形成されたカバーガラス(第2の層構造)上に描画された櫛型電極構造像である。図8(A),(B)から、ガラス基板上に塗布されたCuO層とカバーガラス上に塗布されたナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1000Kまで加熱されることで、CuOがナノダイヤモンド(炭素)により銅単体へと還元されていることがわかる。そして、その還元銅の一部がガラス基板上へ、また別の一部がカバーガラス上に堆積して図に示すような櫛型電極構造を形成している。この場合、第1の層構造も、第2の層構造も、還元銅の櫛型電極構造が形成されるので、いずれも半導体素子として機能することになる。
図8(C)は、CuO層が形成されたガラス基板(第1の層構造)上に、図8(A),(B)の場合よりも、小さな領域に描画された電極構造(半導体素子)の観察像(光学顕微鏡像)である。様々な幅と長さを有するチャネル領域を挟んだ、一辺が100μmの正方形の電極パッド対からなる一連の電極構造である。それぞれ、レーザーで走査したCuO表層が銅単体へと炭素還元されている。最小の線幅は20μmであるが、2μm幅で描画も可能であることが確かめられている。これらの結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証されることがわかる。
(実施例2)
図9は、実施例1の方法で製造された還元銅膜のシート抵抗(Ω/sq.)と膜厚(nm)の関係を示すグラフである。同図において、実線は、本発明の半導体素子の製造方法で得られた還元銅のシート抵抗の実験値、点線は、参考のためのバルク銅の文献値を示す。厚さ(膜厚)が約200nm以下の場合、本発明の半導体素子の製造方法で製造される還元銅のシート抵抗はバルク銅のそれより大きくなるが、膜厚が約200nm以上の場合、バルク銅とほぼ同じシート抵抗になる。
図9より、本発明の半導体素子の製造方法で得られる還元銅膜は、膜厚が200nm以下の場合には、膜中に間隙のあるパーコレーション伝導膜であり、膜厚が200nm以上の場合には、緻密なバルク膜となることを意味していると考えられる。以上の結果からわかる重要な点は、本発明の半導体素子の製造方法を用いれば、20nmから2μmに渡る幅広い膜厚の還元銅膜を作製できることである。なお、他の金属・半導体の場合でも同様の効果が得られる。
(実施例3)
本実施例では、酸化銅(I)/CuOを炭素還元することで、基板上に作製される還元銅からなる櫛型電極の製造方法を説明する。製造の手順は、金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを積層とした還元反応構造を用いたこと以外は、実施例1と同様とした。
すなわち、実施例1との相違点は、層構造準備工程において、熱源たるレーザー光を照射する前の試料(層構造)を以下のようにして準備したことである。まず、適当な基板上に、金属酸化物材料を含有する層としてのCuO層を形成し、次いで、このCuO層の上に、炭素材料を含有する層としてのナノダイヤモンド層を積層した。そして、この試料を層構造設置工程において半導体素子の製造装置に設置した。
図10は、銅のCuOへの酸化反応のエリンガム図と、実施例3で得られた櫛型電極構造像である。具体的には、図10(A)は、銅のCuOへの酸化反応のエリンガム図である。図10(A)を参照すると、計算上は任意の温度でCuOは炭素により還元できることになるが、本実施例では局所的なレーザー加熱による1000Kの温度を用いた。
図10(B)は、ナノダイヤモンド層/CuO層の積層基板上に、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画された櫛型電極構造(半導体素子)の像である。基板上に積層されたCuO層とナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1000Kまで加熱されることで、CuOがナノダイヤモンド(炭素)により銅単体へと還元される。更に、急冷されることで、還元銅から成る櫛型電極構造が形成される。同図の結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証される。
(実施例4)
本実施例では、酸化鉄(II,III)/Feを炭素還元することで、基板上に作製される還元鉄からなる櫛型電極の製造方法を説明する。製造の手順は、金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを積層とした還元反応構造を用いたことと、レーザー加熱による温度を変更したこと以外は、実施例1と同様とした。
すなわち、実施例1との相違点は、層構造準備工程において、熱源たるレーザー光を照射する前の試料(層構造)を以下のようにして準備したことである。まず、適当な基板上に、金属酸化物材料を含有する層としてのFe層を形成し、次いで、このFe層の上に、炭素材料を含有する層としてのナノダイヤモンド層を積層した。そして、この試料を層構造設置工程において半導体素子の製造装置に設置した。
図11は、鉄の酸化反応のエリンガム図と、実施例4で得られた櫛型電極構造像である。具体的には、図11(A)は鉄の酸化反応のエリンガム図である。図11(A)、又は前記の表−1を参照すると、1007KでFeは炭素により還元できることがわかる。以上を参考にして、本実施例では局所的なレーザー加熱による1250Kの温度を用いた。
図11(B)は、ナノダイヤモンド/Fe積層基板上に、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画された櫛型電極構造(半導体素子)の像である。基板上に積層されたFe層とナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1250Kまで加熱されることで、Feがナノダイヤモンド(炭素)により鉄単体へと還元される。更に、急冷されることで、還元鉄から成る櫛型電極構造が形成される。同図の結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証される。
(実施例5)
本実施例では、酸化ニッケル(II)/NiOを炭素還元することで、基板上に作製される還元ニッケルからなる櫛型電極の製造方法を説明する。製造の手順は、金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを積層とした還元反応構造を用いたこと以外は、実施例1と同様とした。
すなわち、実施例1との相違点は、層構造準備工程において、熱源たるレーザー光を照射する前の試料(層構造)を以下のようにして準備したことである。まず、適当な基板上に、金属酸化物材料を含有する層としてのNiO層を形成し、次いで、このNiO層の上に、炭素材料を含有する層としてのナノダイヤモンド層を積層した。そして、この試料を層構造設置工程において半導体素子の製造装置に設置した。
図12は、ニッケルの酸化反応のエリンガム図と、実施例5で得られた櫛型電極構造像である。具体的には、図12(A)はニッケルの酸化反応のエリンガム図である。図12(A)、又は前記の表−1を参照すると、480KでNiOは炭素により還元できることがわかる。以上を参考にして、本実施例では局所的なレーザー加熱による1000Kの温度を用いた。
図12(B)は、ナノダイヤモンド/NiO積層基板上に、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画された櫛型電極構造(半導体素子)の像である。基板上に積層されたNiO層とナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1000Kまで加熱されることで、NiOがナノダイヤモンド(炭素)によりニッケル単体へと還元される。更に、急冷されることで、還元ニッケルから成る櫛型電極構造が形成される。同図の結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証される。
(実施例6)
本実施例では、酸化亜鉛(II)/ZnOを炭素還元することで、基板上に作製される還元亜鉛からなる櫛型電極の製造方法を説明する。製造の手順は、金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを積層とした還元反応構造を用いたことと、レーザー加熱による温度を変更したこと以外は、実施例1と同様とした。
すなわち、実施例1との相違点は、層構造準備工程において、熱源たるレーザー光を照射する前の試料(層構造)を以下のようにして準備したことである。まず、適当な基板上に、金属酸化物材料を含有する層としてのZnO層を形成し、次いで、このZnO層の上に、炭素材料を含有する層としてのナノダイヤモンド層を積層した。そして、還元亜鉛の蒸発を防ぐためにガラス基板をナノダイヤモンド層上に重ねた。こうして得た試料を層構造設置工程において半導体素子の製造装置に設置した。
図13は、亜鉛の酸化反応のエリンガム図と、実施例6で得られた櫛型電極構造像である。具体的には、図13(A)は亜鉛の酸化反応のエリンガム図である。図13(A)、又は前記の表−1を参照すると、1245KでZnOは炭素により還元できることがわかる。以上を参考にして、本実施例では局所的なレーザー加熱による1500Kの温度を用いた。
図13(B)は、ナノダイヤモンド/ZnO積層基板上に、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画された櫛型電極構造(半導体素子)の像である。基板上に積層されたZnO層とナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1500Kまで加熱されることで、ZnOがナノダイヤモンド(炭素)により亜鉛単体へと還元され、更に、急冷されることで、還元亜鉛から成る櫛型電極構造が形成される。同図の結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証される。
(実施例7)
本実施例では、酸化モリブデン(IV)/MoOを炭素還元することで、基板上に作製される還元モリブデンからなる櫛型電極の製造方法を説明する。製造の手順は、金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを積層とした還元反応構造を用いたことと、レーザー加熱による温度を変更したこと以外は、実施例1と同様とした。
すなわち、実施例1との相違点は、層構造準備工程において、熱源たるレーザー光を照射する前の試料(層構造)を以下のようにして準備したことである。まず、適当な基板上に、金属酸化物材料を含有する層としてのMoO層を形成し、次いで、このMoO層の上に、炭素材料を含有する層としてのナノダイヤモンド層を積層した。そして、この試料を層構造設置工程において半導体素子の製造装置に設置した。
図14は、モリブデンの酸化反応のエリンガム図と、実施例7で得られた櫛型電極構造像である。具体的には、図14(A)はモリブデンの酸化反応のエリンガム図である。図14(A)、又は前記の表−1を参照すると、1027KでMoOは炭素により還元できることがわかる。以上を参考にして、本実施例では局所的なレーザー加熱による1250Kの温度を用いた。
図14(B)は、ナノダイヤモンド/MoO積層基板上に、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画された櫛型電極構造(半導体素子)の像である。基板上に積層されたMoO層とナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1250Kまで加熱されることで、MoOがナノダイヤモンド(炭素)によりモリブデン単体へと還元される。更に、急冷されることで、還元モリブデンから成る櫛型電極構造が形成される。同図の結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証される。
(実施例8)
本実施例では、酸化銀(I)/AgOを炭素還元することで、基板上に作製される還元銀からなる櫛型電極の製造方法を説明する。製造の手順は、金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを積層とした還元反応構造を用いたこと以外は、実施例1と同様とした。
すなわち、実施例1との相違点は、層構造準備工程において、熱源たるレーザー光を照射する前の試料(層構造)を以下のようにして準備したことである。まず、適当な基板上に、金属酸化物材料を含有する層としてのAgO層を形成し、次いで、このAgO層の上に、炭素材料を含有する層としてのナノダイヤモンド層を積層した。そして、この試料を層構造設置工程において半導体素子の製造装置に設置した。
図15は、銀の酸化反応のエリンガム図と、実施例8で得られた櫛型電極構造像である。具体的には、図15(A)は銀の酸化反応のエリンガム図である。図15(A)を参照すると、計算上は任意の温度でAgOは炭素により還元できることになるが、本実施例では局所的なレーザー加熱による1000Kの温度を用いた。
図15(B)は、ナノダイヤモンド/AgO積層基板上に、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画された櫛型電極構造(半導体素子)の像である。基板上に積層されたAgO層とナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1000Kまで加熱されることで、AgOがナノダイヤモンド(炭素)により銀単体へと還元される。更に、急冷されることで、還元銀から成る櫛型電極構造が形成される。同図の結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証される。
(実施例9)
本実施例では、酸化インジウム(III)/Inを炭素還元することで、基板上に作製される還元インジウムからなる櫛型電極の製造方法を説明する。製造の手順は、金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを積層とした還元反応構造を用いたことと、レーザー加熱による温度を変更したこと以外は、実施例1と同様とした。
すなわち、実施例1との相違点は、層構造準備工程において、熱源たるレーザー光を照射する前の試料(層構造)を以下のようにして準備したことである。まず、適当な基板上に、金属酸化物材料を含有する層としてのIn層を形成し、次いで、このIn層の上に、炭素材料を含有する層としてのナノダイヤモンド層を積層した。そして、この試料を層構造設置工程において半導体素子の製造装置に設置した。
図16は、インジウムの酸化反応のエリンガム図と、実施例9で得られた櫛型電極構造像である。具体的には、図16(A)はインジウムの酸化反応のエリンガム図である。図16(A)、又は前記の表−1を参照すると、1011KでInは炭素により還元できることがわかる。以上を参考にして、本実施例では局所的なレーザー加熱による1250Kの温度を用いた。
図16(B)は、ナノダイヤモンド/In積層基板上に、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画された櫛型電極構造(半導体素子)の像である。基板上に積層されたIn層とナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1250Kまで加熱されることで、Inがナノダイヤモンド(炭素)によりインジウム単体へと還元される。更に、急冷されることで、還元インジウムから成る櫛型電極構造が形成される。同図の結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証される。
(実施例10)
本実施例では、酸化錫(III)/SnOを炭素還元することで、基板上に作製される還元錫からなる櫛型電極の製造方法を説明する。製造の手順は、金属酸化物材料を含有する層と、炭素材料を含有する層とを積層とした還元反応構造を用いたことと、レーザー加熱による温度を変更したこと以外は、実施例1と同様とした。
すなわち、実施例1との相違点は、層構造準備工程において、熱源たるレーザー光を照射する前の試料(層構造)を以下のようにして準備したことである。まず、適当な基板上に、金属酸化物材料を含有する層としてのSnO層を形成し、次いで、このSnO層の上に、炭素材料を含有する層としてのナノダイヤモンド層を積層した。そして、この試料を層構造設置工程において半導体素子の製造装置に設置した。
図17は、錫の酸化反応のエリンガム図と、実施例10で得られた櫛型電極構造像である。具体的には、図17(A)はインジウムの酸化反応のエリンガム図である。図17(A)、又は前記の表−1を参照すると、901KでSnOは炭素により還元できることがわかる。以上を参考にして、本実施例では局所的なレーザー加熱による1250Kの温度を用いた。
図17(B)は、ナノダイヤモンド/SnO積層基板上に、レーザーを走査することで8×8mmの領域に描画された櫛型電極構造(半導体素子)の像である。基板上に積層されたSnO層とナノダイヤモンド層がレーザー照射によるアブレーション作用で均一に混合されると同時に1250Kまで加熱されることで、SnOがナノダイヤモンド(炭素)により錫単体へと還元される。更に、急冷されることで、還元錫から成る櫛型電極構造が形成される。同図の結果から、本発明の半導体素子の製造方法の有効性が実証される。
本発明の半導体素子の製造方法で得られる半導体素子は、例えば、軽量、フレキシブル、低コストが特徴である電子機器に利用することができる。
より具体的には、本発明の半導体素子の製造方法は、金属元素や半導体元素の酸化物を局所的な高温により、炭素を用いて還元することで、所望の膜厚、大きさ、形状で形成可能な金属や半導体からなる構造とすることができる。その結果、例えば、配線、電極、半導体チャネル、インダクタ、キャパシタ、抵抗体、磁性体、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)構造等を有する半導体素子を製造することができる。
1 還元反応構造
2 基板
3 熱源(レーザー光)
4 金属層又は半導体層
5 透明基板
8 矢印
9 レーザー
10 ビームエクスパンダー
11 反射鏡
12 レンズ
14 試料
15 試料台
16 x軸方向を示す矢印
17 y軸方向を示す矢印
18 z軸方向を示す矢印
30 層構造
40 半導体素子

Claims (10)

  1. 炭素材料と金属酸化物材料又は半導体酸化物材料とを有する還元反応構造を持つ層構造を準備する層構造準備工程と、
    前記層構造を設置する層構造設置工程と、
    前記還元反応構造に対して局所的にエネルギーを集中することが可能で、かつ前記還元反応構造に対して2次元的又は3次元的に走査することが可能な熱源を用い、当該熱源によって酸化還元反応が起こる温度以上に前記還元反応構造の一部を走査しつつ選択的に加熱して、前記炭素材料により前記金属酸化物材料又は前記半導体酸化物材料をそれぞれ金属又は半導体に還元し、所望の形状の金属領域又は半導体領域を形成する金属・半導体領域形成工程と、
    を有することを特徴とする半導体素子の製造方法。
  2. 前記還元反応構造が、前記炭素材料と前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料との混合物を含有する層、又は前記炭素材料を含有する層と前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料を含有する層との積層である、請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
  3. 前記層構造準備工程において、基板と当該基板上に形成された前記還元反応構造とを有する層構造を準備し、さらに転写先基板を準備するとともに、当該転写先基板又は前記基板を透明基板とし、
    前記層構造設置工程において、前記層構造を、前記還元反応構造を挟むようにして前記転写先基板と対面するようにして設置し、
    前記金属・半導体領域形成工程において、前記透明基板の側から、前記還元反応構造を前記熱源により選択的に加熱して前記還元を行うと同時に、前記熱源によるアブレーション現象を利用することで、前記還元によって生じた前記金属又は前記半導体を前記転写先基板に転写して、前記金属領域又は前記半導体領域を転写先基板上に形成する、
    請求項1又は2に記載の半導体素子の製造方法。
  4. 前記層構造準備工程において、第1の基板上に前記金属酸化物材料又は前記半導体酸化物材料を含有する層を形成した第1の層構造と、第2の基板上に前記炭素材料を含有する層を形成した第2の層構造とを前記層構造として準備するとともに、前記第1の基板又は前記第2の基板を透明基板とし、
    前記層構造設置工程において、前記金属酸化物材料又は前記半導体酸化物材料を含有する層と、前記炭素材料を含有する層とが対面するように、前記第1の層構造及び前記第2の層構造を設置し、
    前記金属・半導体領域形成工程において、前記透明基板の側から前記熱源により選択的に加熱することにより還元を行い、前記金属領域又は前記半導体領域を形成する、
    請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
  5. 前記熱源が、レーザー光、電子ビーム、集束イオンビーム、マイクロ波ビーム、又はジュール熱のいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
  6. 前記熱源がレーザー光であり、当該レーザー光を前記還元反応構造に局所的に照射することで前記選択的な加熱を行う、請求項3〜5のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
  7. 前記炭素材料と前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料との混合物を含有する層、前記炭素材料を含有する層、又は前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料を含有する層、の少なくとも1つが、それぞれの層を構成する材料の微粒子からなるコロイド溶液の塗布により形成される、請求項2に記載の半導体素子の製造方法。
  8. 前記炭素材料と前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料との混合物を含有する層、前記炭素材料を含有する層、又は前記金属酸化物材料若しくは前記半導体酸化物材料を含有する層、の少なくとも1つが、それぞれの層を構成する材料のスパッタ又は蒸着により形成される、請求項2に記載の半導体素子の製造方法。
  9. 前記炭素材料が、アモルファス炭素、ガラス状炭素、グラファイト、グラフェン、ダイヤモンド状炭素、ダイヤモンド微粒子、ナノダイヤモンド、カーボンナノチューブ、及びフラーレンから選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
  10. 前記金属酸化物材料又は前記半導体酸化物材料が、酸化リチウム(I)/LiO、酸化ベリリウム(II)/BeO、酸化ホウ素(III)/B、酸化ナトリウム(I)/NaO、酸化マグネシウム(II)/MgO、酸化アルミニウム(III)/Al、酸化ケイ素(IV)/SiO、酸化リン(V)/P10、酸化リン(IV)/PO、酸化カリウム(I)/KO、酸化カルシウム(II)/CaO、酸化スカンジウム(III)/Sc、酸化チタン(IV)/TiO、酸化チタン(III,IV)/Ti、酸化チタン(III)/Ti、酸化チタン(II)/TiO、酸化バナジウム(V)/V、酸化バナジウム(IV)/VO、酸化バナジウム(III)/V、酸化バナジウム(II)/VO、酸化クロム(II)/CrO、酸化クロム(II,III)/Cr、酸化クロム(III)/Cr、酸化マンガン(IV)/MnO、酸化マンガン(III)/Mn、酸化マンガン(II,III)/Mn、酸化マンガン(II)/MnO、酸化鉄(III)/Fe、酸化鉄(II)/FeO、酸化鉄(II,III)/Fe、酸化コバルト(II,III)/Co、酸化コバルト(II)/CoO、酸化ニッケル(II)/NiO、酸化銅(II)/CuO、酸化銅(I)/CuO、酸化亜鉛(II)/ZnO、酸化ガリウム(III)/Ga、酸化ゲルマニウム(IV)/GeO、酸化ヒ素(III)/As、酸化セレン(IV)/SeO、酸化ルビジウム(IV)/RuO、酸化ストロンチウム(II)/SrO、酸化イットリウム(III)/Y、酸化ジルコニウム(IV)/ZrO、酸化ニオブ(V)/Nb、酸化ニオブ(IV)/NbO、酸化ニオブ(II)/NbO、酸化モリブデン(VI)/MoO、酸化モリブデン(IV)/MoO、酸化ルテニウム(VI)/RuO、酸化ルテニウム(VIII)/RuO、酸化ルテニウム(IV)/RuO、酸化ロジウム(III)/Rh、酸化パラジウム(II)/PdO、酸化銀(I)/AgO、酸化カドミウム(II)/CdO、酸化インジウム(III)/In、酸化スズ(IV)/SnO、酸化アンチモン(III)/Sb、酸化テルル(IV)/TeO、酸化バリウム(II)/BaO、酸化セリウム(IV)/CeO、酸化セリウム(III)/Ce、酸化プラセオジウム(III)/Pr、酸化ネオジウム(III)/Nd、酸化サマリウム(III)/Sm、酸化ユーロピウム(III)/Eu、酸化ガドリニウム(III)/Gd、酸化テルビウム(III)/Tb、酸化ジスプロシウム(III)/Dy、酸化ハフニウム(IV)/HfO、酸化タンタル(V)/Ta、酸化タングステン(VI)/WO、酸化タングステン(IV)/WO、酸化レニウム(IV)/ReO、酸化オスミウム(IV)/OsO、酸化イリジウム(IV)/IrO、酸化水銀(I)/HgO、酸化鉛(IV)/PbO、酸化鉛(II,III)/Pb、酸化鉛(II)/PbO、酸化ビスマス(III)/Bi、酸化トリウム(IV)/ThO、及び酸化ウラン(IV)/UOからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
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JP2019090110A (ja) * 2017-11-10 2019-06-13 旭化成株式会社 導電性パターン領域付構造体及びその製造方法

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