JP2010280048A - 円筒研削機 - Google Patents

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【課題】チョクラルスキー法により育成したままのシリコン単結晶の外周を高い加工精度で円筒研削することができる円筒研削機を提供する。
【解決手段】シリコン単結晶1を、両端から主軸側チャック2bおよび心押側チャック2cにより挟み込んで支持し、シリコン単結晶1を主軸側チェック2aの駆動に伴い軸周りに回転させて、研削水を供給しながら外周を研削する円筒研削機であって、主軸側チャック2bおよび心押側チャック2cは、シリコン単結晶1の各端部を受け入れる円錐状の凹部を有し、この凹部の表面に皮革が貼り付けられており、皮革は摩擦係数が乾燥時よりも吸水時に大きくて、0.4以上であることを特徴とする円筒研削機である。
【選択図】図4

Description

本発明は、チョクラルスキー法により育成したままのシリコン単結晶の外周を円筒研削する円筒研削機に関し、さらに詳しくは、円錐状の凹部を有するチャックによりシリコン単結晶を挟み込んで支持し、精度よく円筒研削を行う円筒研削機に関する。
半導体基板に用いられるシリコン単結晶を製造するには種々の方法があるが、その中でもチョクラルスキー法(以下、「CZ法」という)が広く採用されている。
通常、CZ法では、高耐圧気密チャンバ内を10torr程度に減圧して不活性ガス(Ar)ガス雰囲気に維持するとともに、チャンバ内の下方に設けられた坩堝内で結晶原料を融解させ、融解させた溶融液の表面に種結晶を上方から浸漬し、種結晶と溶融液を収容した坩堝を回転させながら種結晶を引き上げることにより、種結晶の下方にシリコン単結晶を育成させる。
図1は、CZ法により育成されたままのシリコン単結晶の一例を示す図である。同図に示すように、シリコン単結晶1は、種結晶直下のネック部を切断され、円錐状のショルダー部1aと、製品となる円柱状のボディ部1bと、逆円錐状のティル部1dとから構成される。
CZ法によって得られたシリコン単結晶1は、ボディ部1bの外周を円筒研削機による円筒研削で所定寸法の直径に仕上げられ、スライス、面取り、ラッピング、エッチング、研磨等の工程を経て、半導体基板用のシリコンウェーハとなる。
ここで、円筒研削機による円筒研削では、上述の通りシリコン単結晶の両端部に円錐状のショルダー部とティル部が残存したままであることから、これに対応して、円錐状の凹部を有するチャックによりシリコン単結晶を両端から挟み込んで支持し、チャックの駆動に伴いシリコン単結晶を軸周りに回転させて、研削水を供給しながら、円筒研削を行う。
図2は、従来の円筒研削機においてシリコン単結晶をチャックにより支持する状態を示す図である。シリコン単結晶1は、円錐状の凹部を有する一対のチャック2により両端を挟み込まれることにより、支持される。
図3は、従来の円筒研削機において、シリコン単結晶を支持するチャックの構成を拡大して示す断面図である。同図に示すように、チャック2はシリコン単結晶の両端部を受け入れる円錐状の凹部2aを有する。また、チャック2の凹部2aは、同心円上に異なる傾斜を持つ複数の円錐面で形成される。
図3で示す従来のチャックによりシリコン単結晶を支持し、円筒研削機により円筒研削を行う場合には、下記の問題がある。
シリコン単結晶の両端部(ショルダー部およびティル部)は、厳密には円錐状ではなく、不規則な凹凸がある。このため、シリコン単結晶の接触面に局所的に負荷が集中し、チャックの凹部に収容されたシリコン単結晶に欠けを発生させる。シリコン単結晶に欠けが発生すると、支持が不安定となり研削されたシリコン単結晶の仕上がり直径寸法、円筒度および真円度に大きなばらつきが生じ、歩留りを悪化させる。
このような問題に対し、特許文献1には、チャックの凹部にゴム等の弾性体を配置し、チャックが弾性体を介してシリコン単結晶を支持することにより、シリコン単結晶の欠けの発生を軽減した円筒研削機が提案されている。
特開2008−200816号公報
前記特許文献1で提案される円筒研削機により円筒研削を行う場合、チャックにゴム等の弾性体を配置されるので、シリコン単結晶の欠けを防ぐことはできる。しかし、下記の問題が顕在化する。
ゴム等の弾性体は、シリコン単結晶の重量により変形する。このため、シリコン単結晶を回転させると、シリコン単結晶に芯振れが発生する。その結果、研削されたシリコン単結晶の円筒度および真円度にばらつきが生じる。
また、円筒研削機で研削を行う場合、研削水を研削加工部に供給し、シリコン単結晶を冷却しながら研削を行う。このため、チャックに配置されたゴム等の弾性体は、研削水の飛散により表面が濡れた状態となり、これに起因して、シリコン単結晶のすべりや位置ずれを発生させる。すべりや位置ずれが発生すると、研削されたシリコン単結晶の直径寸法、円筒度および真円度にばらつきが生じる。
近年、シリコン単結晶1本あたりから採取するウェーハ枚数の増加や、ウェーハの大直径化により、シリコン単結晶の重量が増加する傾向にある。シリコン単結晶の重量増加は、チャックにかかる負荷を増大させるので、チャックとシリコン単結晶との接触面ですべりや位置ずれが発生し易くなる。
また、シリコン単結晶の引き上げ径を小さくし、円筒研削機での円筒研削における取り代を少なくすることにより、歩留りの向上が図られている。このため、円筒研削機での円筒研削において、少ない取り代で、直径寸法、円筒度および真円度をばらつきなく研削する必要がある。これらのことから、円筒研削機による円筒研削では、一層高い加工精度が要求される。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、シリコン単結晶の欠けの発生のみならず、すべり、位置ずれおよび芯振れの発生を抑え、高い加工精度を確保できる円筒研削機を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するため、種々の試験を行い、鋭意検討を重ねた結果、シリコン単結晶と接触するチャックの凹部が、下記の3つの性質を満たす必要があることを知得した。
(1)シリコン単結晶の欠けの発生を抑えつつ芯振れの発生を抑制するためには、適度な弾性を有すること。
(2)すべりおよび位置ずれの発生を抑えるためには、濡れた状態でも適度な摩擦力を有すること。
(3)研削水の飛散による濡れた状態でもすべりおよび位置ずれの発生を抑えるためには、吸湿性を有すること。
これらの3つの性質を満足するものとして、皮革が有効であることを見出した。
すなわち、チャックの凹部とシリコン単結晶の間に皮革を介在させることにより、シリコン単結晶の欠けの発生のみならず、すべり、位置ずれおよび芯振れの発生を抑え、高い加工精度を確保できる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記(1)〜(3)の円筒研削機を要旨としている。
(1)チョクラルスキー法により育成したままのシリコン単結晶を、両端から主軸側チャックおよび心押側チャックにより挟み込んで支持し、前記シリコン単結晶を前記主軸側チェックの駆動に伴い軸周りに回転させて、研削水を供給しながら外周を研削する円筒研削機であって、前記主軸側チャックおよび前記心押側チャックは、前記シリコン単結晶の各端部を受け入れる円錐状の凹部を有し、この凹部の表面に皮革が貼り付けられており、前記皮革は、摩擦係数が乾燥時よりも吸水時に大きくて、0.4以上であることを特徴とする円筒研削機である。
(2)上記(1)に記載の円筒研削機において、前記皮革として牛革を採用することが好ましい。牛革は、一般に流通しており容易に入手可能であるからである。
(3)上記(1)または(2)に記載の円筒研削機において、前記皮革は、乾燥時および吸水時に、表面粗さの中心線平均粗さRaが10μm以上で、最大高さRyが40μm以上であることが好ましい。適当な摩擦力を作用させることができるからである。
本発明において、表面粗さの「中心線平均粗さRa」および「最大高さRy」とは、JIS B 0601に規定される中心線平均粗さRaおよび最大高さRyを意味する。
本発明の円筒研削機によれば、チャックの凹部に皮革が貼り付けられることから、シリコン単結晶の欠けの発生のみならず、すべり、位置ずれおよび芯振れの発生を抑え、高い加工精度を確保できる。
CZ法により育成されたままのシリコン単結晶の一例を示す図である。 従来の円筒研削機においてシリコン単結晶をチャックにより支持する状態を示す図である。 従来の円筒研削機において、シリコン単結晶を支持するチャックの構成を拡大して示す断面図である。 本発明の円筒研削機を用いてシリコン単結晶の外周を円筒研削する状態を示す図である。 本発明の円筒研削機において、シリコン単結晶を支持する際に用いるチャックの一例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。
以下に、本発明の円筒研削機の構成例を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明の円筒研削機を用いてシリコン単結晶の外周を円筒研削する状態を示す図である。同図に示す円筒研削機では、主軸側チャック2bと、心押側チャック2cと、主軸側チャック2bが取り付けられた主軸台3と、心押側チャック2cが取り付けられた心押台4と、垂直および水平方向に移動可能な砥石台5と、砥石台5に取り付けられた砥石6から構成される。
シリコン単結晶1は、主軸側チャック2bおよび心押側チャック2cにより挟み込んで支持される。主軸台3の主軸の回転駆動により、主軸側チャック2b、シリコン単結晶1および心押側チャック2cが軸周りに回転する。シリコン単結晶1が軸周りに回転している状態で、砥石台5が、砥石6を高回転で回転させながら、垂直方向の移動によりシリコン単結晶1に切り込み、シリコン単結晶1の軸方向に沿って水平に移動することによりシリコン単結晶(ボディ部)の外周を円筒研削する。この際、砥石台5に設置された図示しないノズルから、研削水が供給される。シリコン単結晶1を冷却し、熱膨張による加工精度の悪化を防止するためである。
次に、本発明の円筒研削機におけるチャックの構成例について説明する。
図5は、本発明の円筒研削機において、シリコン単結晶を支持する際に用いるチャックの一例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。同図に示すチャック2は、円錐状の凹部2aに皮革7が接着剤などで貼り付けられる。皮革7を貼り付けることにより、チャック2とシリコン単結晶1が直接接触しない。このとき、皮革7は緩衝材の役割を果たし、シリコン単結晶の欠けの発生を抑える。
皮革7は、摩擦係数が乾燥時よりも吸水時に大きくて、0.4以上であることが必要である。吸水時に摩擦係数が小さくなるゴム等を用いると、研削水が飛散して濡れた状態において、すべりや位置ずれを発生させるので適さない。すなわち、本発明では、皮革7が濡れた状態でも適度な摩擦力を具備することが重要である。摩擦係数が0.4未満であると、シリコン単結晶の重量により、軸回転中の慣性力の作用ですべりや位置ずれが発生し易くなる。
皮革に代えて不織布を採用することは不適切である。皮革に代えて不織布をチャックの凹部に貼り付けると、不織布は強度が低いことから、研削中に不織布が破れ、シリコン単結晶のすべりおよび位置ずれが発生するからである。したがって、本発明の円筒研削機では、皮革をチャックに貼り付ける必要がある。
本発明において、「摩擦係数」とは、皮革とシリコン単結晶の間の摩擦係数を意味するが、以下の手法で求められる値で定めることができる。傾動可能な板状の台を水平に配置し、台の上に皮革を固定し、皮革の上に分銅を載せる。この状態で台を少しずつ傾斜させ、分銅が滑り出した時の台の傾斜角を測定することにより、目安となる摩擦係数を算出できる。
皮革7を牛革とすれば、容易に入手可能であるので好ましい。
皮革7を、乾燥時および吸水時に、表面粗さの中心線平均粗さRaが10μm以上で、最大高さRyが40μm以上であるとすれば、適当な弾性および摩擦力を有するので、加工精度のさらなる向上が可能となり好ましい。
本発明において皮革の厚さは特に規定しないが、1mmから10mmの範囲内が好ましい。1mm未満であると、強度不足により、破れてしまう。10mmを超えると、弾性変形が著しくなり、シリコン単結晶の芯振れが発生する。実用的には5mm程度が好ましい。
本発明において皮革は、牛革のような天然皮革に限らず、皮革に要求される上記3つの性質を有する限り、人工皮革でも構わない。また、皮革はタンニンなめしであるかクロムなめしであるかを問わない。さらに、皮革の表面はなめしたままの状態であるか、スエード調とされるかは問わない。
前記図4に示す、円筒研削機を用いてシリコン単結晶について外周の円筒研削を行い、本発明の有効性を検証した。
本発明例では、前記図5に示すチャックを用いて円筒研削を行った。使用した牛革の摩擦係数は、乾燥時で0.42、吸水時で0.51であった。また、牛革の表面粗さは、乾燥時において、中心線平均粗さRaが15.22μm、最大高さRyが75.70μm、吸水時において、中心線平均粗さRaが16.18μm、最大高さRyが63.6μmであった。さらに、牛革の厚さは5mmであった。
比較例1では、前記図5に示すチャックにおいて、皮革に代えてゴムを用いた。使用したゴムの摩擦係数は、乾燥時で0.40、吸水時で0.31であった。また、ゴムの表面粗さは、乾燥時および吸水時ともに、中心線平均粗さRaが0.6μm、最大高さRyが5.2μmであった。さらに、その厚さは5mmであった。
比較例2では、前記図3に示す従来のチャックを用いた。
本発明例では、シリコン単結晶の欠けは発生しなかった。また、研削されたシリコン単結晶の直径寸法、円筒度および真円度にばらつきは生じなかった。
比較例1では、シリコン単結晶の欠けは発生しなかった。しかし、ゴムの弾性変形および切削水の飛散による濡れに伴い、シリコン単結晶のすべり、位置ずれおよび芯振れが発生し、研削されたシリコン単結晶の直径寸法、円筒度および真円度にばらつきが生じた。
比較例2では、シリコン単結晶に欠けが発生し、適正な直径寸法、円筒度および真円度にシリコン単結晶を加工できなかった。
このように、本発明の円筒研削機を用いると、シリコン単結晶の欠けの発生のみならず、すべり、位置ずれおよび芯振れの発生を抑え、高い加工精度を確保できることが確認された。
本発明の円筒研削機によれば、シリコン単結晶の両端部を収容するチャックの凹部に弾性、摩擦力および吸湿性を有する皮革が貼り付けられていることから、シリコン単結晶の欠けの発生を抑えることができ、しかも、すべり、位置ずれおよび芯振れの発生を抑えつつ、高い加工精度を確保することができる。
このため、本発明の円筒研削機を、半導体シリコンウェーハの製造工程に用いれば、加工精度が向上するので、製品歩留りを大幅に向上させることができる。
1:シリコン単結晶、 1a:ショルダー部、 1b:ボディ部、 1c:ティル部、
2:チャック、 2a:凹部、 2b:主軸側チャック、 2c:心押側チャック、
3:主軸台、 4:心押台、 5:砥石台、 6:砥石、 7:皮革

Claims (3)

  1. チョクラルスキー法により育成したままのシリコン単結晶を、両端から主軸側チャックおよび心押側チャックにより挟み込んで支持し、前記シリコン単結晶を前記主軸側チェックの駆動に伴い軸周りに回転させて、研削水を供給しながら外周を研削する円筒研削機であって、
    前記主軸側チャックおよび前記心押側チャックは、前記シリコン単結晶の各端部を受け入れる円錐状の凹部を有し、この凹部の表面に皮革が貼り付けられており、
    前記皮革は、摩擦係数が乾燥時よりも吸水時に大きくて、0.4以上であることを特徴とする円筒研削機。
  2. 前記皮革が牛革であることを特徴とする請求項1に記載の円筒研削機。
  3. 前記皮革は、乾燥時および吸水時に、表面粗さの中心線平均粗さRaが10μm以上で、最大高さRyが40μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の円筒研削機。
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