JP2010278326A - 量子カスケードレーザ - Google Patents

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Abstract

【課題】 広い波長範囲で発光を得ることが可能な量子カスケードレーザを提供する。
【解決手段】 半導体基板10と、発光層及び注入層からなる単位積層体16が多段に積層された第1活性層15と、第1活性層15に対して直列に設けられ発光層及び注入層からなる単位積層体26が多段に積層された第2活性層25とを備えて量子カスケードレーザ1Aを構成する。活性層15、25のそれぞれは、その準位構造において、発光上準位と、発光下準位と、緩和ミニバンドとを有し、上準位から下準位への発光遷移を経た電子が、LOフォノン散乱によって下準位からミニバンドへと緩和されるように構成される。また、活性層15、25は、異なる積層構造を有し、第1活性層15で生成される光の発光波長と、第2活性層25で生成される光の発光波長とが異なるように構成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、量子井戸構造でのサブバンド間遷移を利用した量子カスケードレーザに関するものである。
中赤外の波長領域(例えば波長5〜30μm)の光は、分光分析分野において重要な波長領域となっている。このような波長領域での高性能な半導体光源として、近年、量子カスケードレーザ(QCL:Quantum Cascade Laser)が注目を集めている(量子カスケードレーザについては、例えば、特許文献1〜6、非特許文献1〜5参照)。
量子カスケードレーザは、半導体量子井戸構造中に形成されるサブバンドによる準位構造を利用し、サブバンド間での電子遷移によって光を生成するモノポーラタイプのレーザ素子であり、量子井戸構造で構成され活性領域となる量子井戸発光層を多段にカスケード結合することによって、高効率、高出力動作を実現することが可能である。また、この量子井戸発光層のカスケード結合は、発光上準位へと電子を注入するための電子注入層を用い、量子井戸発光層と注入層とを交互に積層することによって実現される。
米国特許第5457709号公報 米国特許第5745516号公報 米国特許第6751244号公報 米国特許第6922427号公報 特開平8−279647号公報 特開2008−177366号公報
M. Beck et al., "Continuous Wave Operation of a Mid-InfraredSemiconductor Laser at Room Temperature", Science Vol.295 (2002)pp.301-305 J. S. Yu et al., "High-Power Continuous-Wave Operation of a 6μm Quantum-Cascade Laser atRoom Temperature", Appl. Phys. Lett. Vol.83 (2003) pp.2503-2505 A. Evans et al., "Continuous-Wave Operation of λ〜4.8μm Quantum-Cascade Lasersat Room Temperature", Appl. Phys. Lett. Vol.85 (2004) pp.2166-2168 R. Maulini et al., "Broadband Tuning of External CavityBound-to-Continuum Quantum-Cascade Lasers", Appl. Phys. Lett. Vol.84(2004) pp.1659-1661 A. Wittmann et al., "Heterogeneous High-PerformanceQuantum-Cascade Laser Sources for Broad-Band Tuning", IEEE J. QuantumElectron. Vol.44 (2008) pp.1083-1088
上記した量子カスケードレーザについては、レーザ発振に成功した当初は素子の駆動温度は極低温に限られていたが、2002年には M. Beck らによって発振波長9.1μmでの室温CW動作が達成された(非特許文献1:M. Beck et al., Science Vol.295 (2002) pp.301-305)。また、その後、M. Razeghi らのグループによって発振波長6μm、及び4.8μmにおいても室温CW動作が達成された(非特許文献2:J. S. Yu et al., Appl. Phys. Lett. Vol.83 (2003) pp.2503-2505、非特許文献3:A. Evans et al.,Appl. Phys. Lett. Vol.85 (2004) pp.2166-2168)。
量子カスケードレーザの室温連続発振の達成後、レーザ素子を外部共振器とともに用いることで、広い波長領域で単一モード発振をする量子カスケードレーザを作製する試みが行われている。広い波長範囲で単一モード発振を達成するためには、そのような広い波長範囲において利得スペクトルが存在することが必要である。J. Faist らは、比較的広い利得スペクトルが得られる、サブバンドからミニバンドへの遷移形態を有するBTC(Bound to Continuum)活性層構造を用いて、8〜9μmの波長帯において150cm−1の広い波長範囲で単一モード動作が可能なデバイスを報告している(非特許文献4:R. Maulini et al., Appl. Phys. Lett. Vol.84 (2004) pp.1659-1661)。
さらに、近年では、2波長のBTC活性層構造を用いることにより、同じく8〜9μm帯において、291cm−1の極めて広い波長範囲で単一モード動作が得られることが報告されている(非特許文献5:A. Wittmann et al., IEEE J. Quantum Electron. Vol.44 (2008)pp.1083-1088)。このデバイスでは、さらに室温連続動作においても202cm−1の単一モード動作が確認されており、研究レベルでの最も高い特性を有する外部共振器型の量子カスケードレーザとなっている。
しかしながら、上記したBTC活性層構造での発光遷移は、発光上準位であるサブバンドから、多くのサブバンドで構成されるミニバンドへの遷移である。このため、得られる発光のピーク強度はダブルフォノン共鳴構造などに比べて低い。また、ミニバンド内での各サブバンドへの遷移強度が電界によって大きく変化するため、利得スペクトルの形状を制御することがやや困難であるという問題がある。
一方、本願発明者は、独自の量子カスケードレーザの素子構造として、フォノン共鳴ミニバンド緩和(SPC:Single Phonon Resonance-Continuum)活性層構造の開発をすすめている。SPC構造は、活性層でのサブバンド準位構造において、発光上準位及び下準位に加えて、発光下準位よりも低いエネルギー準位からなる緩和ミニバンドを設け、サブバンド間遷移を経た電子が、縦光学(LO:Longitudinal Optical)フォノン散乱によって発光下準位から緩和ミニバンドへと緩和される準位構造を用いるものである(特許文献6参照)。
このSPC構造は、BTC構造などに比べて、発光の半値幅が狭く、そのピーク強度が高いなどの利点を有しており、また、現在までに4.5μm〜11μmまで室温連続発振を達成している。しかしながら、このようなSPC活性層構造は、発光の半値幅が狭いこと等から、上記したように外部共振器を用いた量子カスケードレーザの室温連続発振において求められている、広い波長範囲での発光波長のスキャンには適していない。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、広い波長範囲で発光を得ることが可能な量子カスケードレーザを提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明による量子カスケードレーザは、(1)半導体基板と、(2)半導体基板上に設けられ、量子井戸発光層及び注入層からなる第1単位積層体が多段に積層されることで量子井戸発光層と注入層とが交互に積層されたカスケード構造が形成された第1活性層と、(3)半導体基板上に第1活性層に対して直列に設けられ、量子井戸発光層及び注入層からなるとともに第1単位積層体とは異なる構造の第2単位積層体が多段に積層されることで量子井戸発光層と注入層とが交互に積層されたカスケード構造が形成された第2活性層とを備え、(4)第1活性層及び第2活性層のそれぞれにおいて、活性層に含まれる単位積層体は、そのサブバンド準位構造において、発光上準位と、発光下準位と、発光下準位よりも低いエネルギー準位からなる緩和ミニバンドとを有し、量子井戸発光層における発光上準位から発光下準位への電子のサブバンド間遷移によって光が生成され、サブバンド間遷移を経た電子は、縦光学フォノン散乱によって発光下準位から緩和ミニバンドへと緩和され、緩和ミニバンドを介して注入層から後段の単位積層体へと注入されるとともに、(5)第1活性層及び第2活性層は、第1活性層でサブバンド間遷移によって生成される光の発光波長と、第2活性層でサブバンド間遷移によって生成される光の発光波長とが異なるように構成されていることを特徴とする。
上記した量子カスケードレーザでは、量子井戸発光層及び注入層から構成される単位積層体でのサブバンド準位構造において、発光に関わる発光上準位、及び発光下準位に加えて、発光下準位よりも低いエネルギー準位からなるミニバンドである緩和ミニバンドを設けている。そして、発光下準位と緩和ミニバンドとの間のエネルギー差が縦光学フォノン(LOフォノン)のエネルギーに対応するようにサブバンド準位構造を構成している。
このような構成(SPC活性層構造)では、量子井戸発光層でのサブバンド間の発光遷移を経た電子は、LOフォノン散乱、及びミニバンド内での緩和を介して発光下準位から高速に引き抜かれることとなる。したがって、量子井戸発光層における効率的な反転分布の形成、及びそれによるレーザ動作の低閾値化を実現して、そのレーザ動作性能を向上することが可能となる。
また、サブバンド間遷移を経た電子の緩和にミニバンドを利用していることにより、発光下準位からの電子の緩和構造の設計が容易化されるとともに、レーザ素子の製造時における特性の安定化、及び歩留まりの向上を実現することが可能となる。なお、このようなサブバンド準位構造は、活性層を構成する単位積層体での量子井戸構造の設計によって制御することが可能である。
また、上記のようにSPC構造を有する活性層では、発光上準位と下準位との間の発光遷移がサブバンド間の遷移であるため、その発光のゲインを集中させることができ、発光の半値幅が狭く、ピーク強度が高いなどの利点がある。ただし、この場合、単一の活性層では、広い波長範囲で利得スペクトルを得ることは難しい。これに対して、上記した量子カスケードレーザでは、半導体基板上に、互いに発光波長(発光エネルギー)が異なるように構成された第1活性層、第2活性層の2種類の活性層を直列に設けている。これにより、広い波長範囲で発光を得ることが可能な量子カスケードレーザが実現される。
上記構成の量子カスケードレーザでは、第1活性層と、第2活性層との間に、バッファ層が設けられていることが好ましい。このようなバッファ層を設けることにより、2つの活性層をブリッジして、活性層構造間での電子輸送をスムーズにすることができる。
また、第1活性層で生成される光の発光エネルギーと、第2活性層で生成される光の発光エネルギーとのエネルギー間隔が、第1活性層及び第2活性層のそれぞれでの発光エネルギースペクトルの半値幅の70%以下に設定されていることが好ましい。このような構成によれば、第1、第2活性層での利得スペクトルが充分に重なることとなり、2つの活性層からの発光を合わせた全体としての発光スペクトルを好適に設定、制御することが可能となる。
第1、第2活性層のそれぞれの構成については、サブバンド準位構造において、緩和ミニバンドにおける一のサブバンドを他のサブバンドから縦光学フォノンのエネルギー分だけ高エネルギー側に分離させた準位を発光下準位とする構成を用いることができる。これにより、発光下準位と、発光下準位からLOフォノンのエネルギー分だけ離れた緩和ミニバンドとを含む準位構造を好適に実現することができる。
また、単位積層体において、量子井戸発光層と、注入層との間に、量子井戸発光層から注入層への電子に対する抽出障壁層が設けられていることが好ましい。これにより、注入層から発光層への電子の波動関数の染み出しを抑制することができ、量子井戸発光層での発光遷移の効率を向上することが可能となる。
また、緩和ミニバンドは、量子井戸発光層でのミニバンドと、注入層でのミニバンドとが結合したバンド構造を有することが好ましい。これにより、量子井戸発光層から注入層への電子のトンネル時間を短くすることができ、発光下準位からの高速での電子の引き抜きが実効的に制限されることを防止することができる。
本発明の量子カスケードレーザによれば、活性層を構成する単位積層体でのサブバンド準位構造において、発光上準位、及び発光下準位に加えて、発光下準位よりも低いエネルギー準位からなる緩和ミニバンドを設け、サブバンド間遷移を経た電子が、LOフォノン散乱及びミニバンド内での緩和によって発光下準位から高速に引き抜かれる構成とするとともに、半導体基板上に、互いに発光波長が異なるように構成された第1活性層、第2活性層を直列に設けることにより、広い波長範囲で発光を得ることが可能となる。
量子カスケードレーザの基本構成を概略的に示す図である。 図1に示した量子カスケードレーザの活性層におけるサブバンド準位構造について示す図である。 量子カスケードレーザの構成の一例を示す図である。 第1活性層を構成する単位積層体の構成の一例を示す図である。 第1活性層における1周期分の単位積層体の構造の一例を示す図表である。 第2活性層を構成する単位積層体の構成の一例を示す図である。 第2活性層における1周期分の単位積層体の構造の一例を示す図表である。 量子カスケードレーザにおいて得られる発光スペクトルについて示すグラフである。
以下、図面とともに本発明による量子カスケードレーザの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、本発明による量子カスケードレーザの基本構成を概略的に示す図である。本実施形態の量子カスケードレーザ1Aは、半導体量子井戸構造におけるサブバンド間の電子遷移を利用して光を生成するモノポーラタイプのレーザ素子である。また、本実施形態の量子カスケードレーザ1Aでは、互いに異なる発光波長で設計された2種類のSPC活性層構造を用いるとともに、それらの活性層構造でのお互いの利得スペクトルが充分に重なり、かつ、重なり合った利得スペクトルのピーク強度がフラットになるように制御され、それによって、広い波長範囲での利得スペクトルを実現している。具体的には、この量子カスケードレーザ1Aは、半導体基板10と、半導体基板10上に形成された第1活性層15及び第2活性層25の2つの活性層とを備えて構成されている。
これらの活性層15、25は、基板10側から第2活性層25、第1活性層15の順で直列に積層されている。また、活性層15、25の間には、2つの活性層15、25をブリッジするためのバッファ層20が設けられている。
第1活性層15は、光の生成に用いられる量子井戸発光層17と、発光層17への電子の注入に用いられる電子注入層18とが交互かつ多段に積層されたカスケード構造を有する。具体的には、発光層17及び注入層18からなる半導体積層構造を1周期分の第1単位積層体16とし、この単位積層体16が多段に積層されることで、カスケード構造を有する第1活性層15が構成されている。活性層15における発光層17及び注入層18を含む単位積層体16の積層数は、適宜設定される。
第2活性層25は、第1活性層15と同様に、光の生成に用いられる量子井戸発光層27と、発光層27への電子の注入に用いられる電子注入層28とが交互かつ多段に積層されたカスケード構造を有する。具体的には、発光層27及び注入層28からなる半導体積層構造を1周期分の第2単位積層体26とし、この単位積層体26が多段に積層されることで、カスケード構造を有する第2活性層25が構成されている。発光層27及び注入層28を含む単位積層体26の積層数は、適宜設定される。
これらの第1、第2活性層15、25は、半導体基板10上に直接に、あるいは他の半導体層を介して形成される。また、活性層15、25を含む全体の活性層構造において、第2活性層25での単位積層体26の構造は、第1活性層15での単位積層体16の構造とは異なる構造となっている。これにより、第1活性層15及び第2活性層25は、活性層15でサブバンド間遷移によって生成される光の発光波長λ1と、活性層25でサブバンド間遷移によって生成される光の発光波長λ2とが異なるように構成されている。
第1活性層15におけるサブバンド準位構造、及びその発光波長について説明する。図2は、図1に示した量子カスケードレーザの第1活性層におけるサブバンド準位構造について示す図である。図2に示すように、第1活性層15に含まれる複数の第1単位積層体16のそれぞれは、量子井戸発光層17と、注入層18とによって構成されている。発光層17及び注入層18は、後述するようにそれぞれ量子井戸層及び量子障壁層を含む所定の量子井戸構造を有して形成される。これにより、単位積層体16中においては、量子井戸構造によるエネルギー準位構造であるサブバンド準位構造が形成される。
本実施形態による量子カスケードレーザ1Aにおいて活性層15を構成している単位積層体16は、図2に示すように、そのサブバンド準位構造において、サブバンド間遷移による発光に関わる発光上準位Lupと、発光下準位Llowとに加えて、発光下準位Llowよりも低いエネルギー準位であって緩和準位として機能する準位からなる緩和ミニバンドMBを有している。このミニバンドMBは、発光下準位LlowとミニバンドMBとの間のエネルギー差が、LOフォノンのエネルギーELOとなるように設定されている(SPC構造、特許文献6参照)。
また、図2に示す単位積層体16では、量子井戸発光層17と、前段の単位積層体での注入層18aとの間に、注入層18aから発光層17へと注入される電子に対する注入障壁(injection barrier)層が設けられている。また、発光層17と、注入層18との間に、発光層17から注入層18への電子に対する抽出障壁(exit barrier)層が設けられている。これらの障壁層は、量子井戸発光層17及び注入層18を含む活性層15の具体的な積層構造及びサブバンド準位構造により、必要に応じて設けられる。
このようなサブバンド準位構造において、前段の注入層18aでのミニバンドMBからの電子eは、注入障壁を介して量子井戸発光層17の発光上準位Lupへと注入される。発光上準位Lupに注入された電子は発光下準位Llowへと発光遷移し、このとき、上準位Lup及び下準位Llowのサブバンド準位間のエネルギー差に相当する第1波長λ1の光hνが生成、放出される。
発光下準位Llowへと遷移した電子は、LOフォノン散乱によって緩和ミニバンドMBへと高速で緩和され、さらに、ミニバンドMB内で高速緩和される。このように、発光下準位LlowからLOフォノン散乱及びミニバンド内での緩和を介して高速で電子を引き抜くことにより、上準位Lupと下準位Llowとの間でレーザ発振を実現するための反転分布が形成される。
また、本準位構造においては、緩和ミニバンドMBは、図2に示すように、量子井戸発光層17でのミニバンドと、注入層18でのミニバンドとが結合したバンド構造を有している。このような構成において、発光下準位Llowから緩和ミニバンドMBへと緩和された電子は、抽出障壁及び注入層18を介して、ミニバンドMBから、後段の発光層17bでの発光上準位Lupへとカスケード的に注入される。
このような電子の注入、発光遷移、及び緩和を第1活性層15を構成する複数の単位積層体16で繰り返すことにより、活性層15においてカスケード的な光の生成が起こる。すなわち、量子井戸発光層17及び注入層18を多数交互に積層することにより、電子は積層体16をカスケード的に次々に移動するとともに、各積層体16でのサブバンド間遷移の際に光hνが生成される。また、このような光がレーザ1Aの光共振器において共振されることにより、所定波長のレーザ光が生成される。
図1に示した構成の量子カスケードレーザ1Aにおいて、第2活性層25におけるサブバンド準位構造は、基本的には図2に示した第1活性層15と同様のSPC構造である。ただし、上述したように、第2活性層25の単位積層体26における具体的な半導体積層構造は、第1活性層15の単位積層体16における積層構造とは異なるように設計されている。このとき、第2活性層25でのサブバンド間のエネルギー差などの具体的な準位構造は、第1活性層15とは異なる構造となり、したがって、第2活性層25での発光波長λ2は、第1活性層15での発光波長λ1とは異なる波長となる。また、量子カスケードレーザ1Aの全体としては、第1活性層15で生成される発光波長λ1の発光成分と、第2活性層25で生成される発光波長λ2の発光成分とを合わせた、広い波長範囲の発光スペクトルの光が生成、出力される。
本実施形態による量子カスケードレーザ1Aの効果について説明する。
図1及び図2に示した量子カスケードレーザ1Aでは、発光層17、注入層18から構成される単位積層体16、及び発光層27、注入層28から構成される単位積層体26のそれぞれについて、単位積層体でのサブバンド準位構造において、発光に関わる発光上準位Lup、及び発光下準位Llowに加えて、発光下準位Llowよりも低いエネルギー準位からなる緩和ミニバンドMBを設けている。そして、発光下準位Llowと緩和ミニバンドMBとの間のエネルギー差がLOフォノンのエネルギーELOに対応するようにサブバンド準位構造を構成している。
このような構成では、量子井戸発光層でのサブバンド間の発光遷移を経た電子は、発光下準位LlowからミニバンドMBへのLOフォノン散乱、及びミニバンドMB内での緩和を介して発光下準位Llowから高速に引き抜かれることとなる。したがって、量子井戸発光層17、27における効率的な反転分布の形成、及びそれによるレーザ動作の低閾値化を実現することができ、レーザ動作性能が向上された高温、CW、高出力動作のレーザ素子を実現することが可能となる。
また、サブバンド間遷移を経た電子の緩和にミニバンドMBを利用している。これにより、発光下準位Llowからの電子の緩和構造の設計が容易化されるとともに、レーザ素子の製造時における特性の安定化、及びその歩留まりの向上を実現することが可能となる。なお、上記のようなサブバンド準位構造(SPC構造)は、活性層を構成する単位積層体での量子井戸構造の設計によって制御することが可能である。
また、上記のようにSPC構造を有する活性層では、発光下準位Llowから緩和ミニバンドMBへの電子の引き抜きにLOフォノン散乱を用いているため、発光上準位Lupと下準位Llowとの間の発光遷移がミニバンド−ミニバンド間、あるいはサブバンド−ミニバンド間の遷移ではなく、サブバンド−サブバンド間の遷移となる。これにより、発光遷移での発光のゲインを集中させることができ、発光の半値幅が狭く、ピーク強度が高いなどの利点が得られる。また、常に単一準位間での遷移となるため、BTC構造などと比べて、発光スペクトルの形状を制御しやすいという利点もある。ただし、この場合、発光の半値幅が狭いこと等により、単一の活性層では、広い波長範囲で利得スペクトルを得ることは難しい。
これに対して、上記した量子カスケードレーザ1Aでは、半導体基板10上に、それぞれSPC構造を有するとともに、互いに発光波長λ1、λ2が異なる(発光エネルギーE1、E2が異なる)ように構成された第1活性層15、第2活性層25の2種類の活性層を直列に設けている。これにより、それらの活性層15、25からの発光を合わせて、広い波長範囲で発光を得ることが可能な量子カスケードレーザが実現される。また、このような構成のレーザ素子は、例えば、外部共振器型の量子カスケードレーザにおいて、好適に適用することができる。
上記構成の量子カスケードレーザ1Aでは、図1において例示したように、第1活性層15と、第2活性層25との間に、バッファ層20が設けられていることが好ましい。このようなバッファ層20を設けることにより、2つの活性層15、25をブリッジして、活性層構造間での電子輸送をスムーズにすることができる。ただし、このようなバッファ層20については、不要であれば設けなくても良い。
また、第1活性層15で生成される光の発光エネルギーE1と、第2活性層25で生成される光の発光エネルギーE2とのエネルギー間隔が、第1活性層15及び第2活性層25のそれぞれでの発光エネルギースペクトルの半値幅の70%以下に設定されていることが好ましい。このような構成によれば、第1、第2活性層15、25での利得スペクトルが充分に重なることとなり、2つの活性層からの発光を合わせた全体としての発光スペクトルを好適に設定、制御することが可能となる。
ここで、図2に示したサブバンド準位構造における発光下準位Llowについては、緩和ミニバンドMBにおける一のサブバンド(ミニバンドMB内で最も高いエネルギーのサブバンド)を他のサブバンドからLOフォノンのエネルギーELO分だけ高エネルギー側に分離させ、その分離された準位を発光下準位Llowとする構成を用いることができる。これにより、発光下準位Llowと、発光下準位からLOフォノンのエネルギーELO分だけ離れた緩和ミニバンドMBとを含む準位構造を好適に実現することができる。
また、活性層15、25での量子井戸構造については、図2に示したように、単位積層体において、量子井戸発光層と注入層との間に、発光層から注入層への電子に対する抽出障壁層が設けられていることが好ましい。これにより、注入層から発光層への電子の波動関数の染み出しを抑制することができ、発光層での発光遷移の効率を向上することが可能となる。すなわち、このように電子の波動関数の染み出しを抑制することにより、レーザ発振に寄与する光学遷移が確実に発光上準位Lup及び下準位Llowのサブバンド間で行われ、下準位Llowからのキャリアが1段階のLOフォノン散乱によってミニバンドMB内へと緩和することとなる。
また、緩和ミニバンドMBは、量子井戸発光層でのミニバンドと、注入層でのミニバンドとが結合したバンド構造を有することが好ましい。このように、発光層のミニバンドと注入層のミニバンドとを強く結合させることにより、発光層から注入層への電子のトンネル時間を非常に短くすることができる。また、図2に示すように、注入層においてミニギャップを設けることにより、キャリアリークの原因となるレーザ発振に関与しない遷移の発生を抑制することができる。
本発明による量子カスケードレーザの構成について、活性層での量子井戸構造を含む素子構造の具体例とともにさらに説明する。図3は、量子カスケードレーザの具体的な構成の一例を示す図である。図4は、図3に示した量子カスケードレーザにおける第1活性層を構成する第1単位積層体の構成の一例を示す図である。また、図5は、第1活性層における1周期分の単位積層体の構造の一例を示す図表である。図6は、第2活性層を構成する第2単位積層体の構成の一例を示す図である。また、図7は、第2活性層における1周期分の単位積層体の構造の一例を示す図表である。
本構成例における活性層15、25の量子井戸構造では、第1活性層15については、発振波長をλ1=8.5μm、動作電界強度を45kV/cmとして設計された例を示している。このときの第1活性層15の遷移強度を示すダイポールモーメントは2.3nmである。また、第2活性層25については、発振波長をλ2=9.5μm、動作電界強度を38kV/cmとして設計された例を示している。このときの第2活性層25のダイポールモーメントは2.5nmである。
なお、図4においては、第1活性層15を構成する量子井戸発光層17及び注入層18による多段の繰返し構造のうちの一部について、その量子井戸構造、及びサブバンド準位構造を示している。同様に、図6においては、第2活性層25を構成する量子井戸発光層27及び注入層28による多段の繰返し構造のうちの一部について、その量子井戸構造、及びサブバンド準位構造を示している。また、図3〜図7に示した素子構造は、例えば、分子線エピタキシー(MBE)法、または有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法による結晶成長で形成することができる。
図3に示す量子カスケードレーザ1Bの半導体積層構造では、半導体基板10としてn型InP単結晶基板50を用いている。そして、このInP基板50上に、基板50側から順に、厚さ3.5μmのInPクラッド層51、厚さ300nmのInGaAsコア層52、第2単位積層体26が多段に積層された発光波長9.5μmの第2活性層25、バッファ層20である厚さ50nmのInGaAsバッファ層53、第1単位積層体16が多段に積層された発光波長8.5μmの第1活性層15、厚さ300nmのInGaAsコア層54、及び厚さ3.5μmのInPクラッド層55が順次積層されることで、量子カスケードレーザ1Bの素子構造が形成されている。
上記の積層構造において、直列に連結された活性層15、25の間に挿入されたバッファ層53は、2つの活性層15、25をブリッジして、活性層構造間での電子輸送をスムーズにするようにしている。また、クラッド層55の上部には、さらに、プラズモン層、及び厚さ300nmのInGaAsコンタクト層56が設けられている。なお、図3に示した半導体積層構造における導波路構造、プラズモン層、コンタクト層の構造等については、従来用いられている典型的な構造を用いることができる。
図3の積層構造において上方に位置する発光波長8.5μmの第1活性層15の構成について説明する。本構成例における第1活性層15は、発光層17及び注入層18を含む単位積層体16が所定周期、例えば20周期で積層されて構成されている。また、1周期分の単位積層体16は、図4に示すように、11個の量子井戸層161〜164、181〜187、及び11個の量子障壁層171〜174、191〜197が交互に積層された量子井戸構造によって構成されている。
これらの各半導体層のうち、量子井戸層は、InGaAs層によって構成されている。また、量子障壁層は、InAlAs層によって構成されている。また、このような第1単位積層体16において、発光層17と注入層18とについては、図4に示す積層構造において、4層の井戸層161〜164、及び障壁層171〜174からなる積層部分が、主に発光層17として機能する部分となっている。また、7層の井戸層181〜187、及び障壁層191〜197からなる積層部分が、主に注入層18として機能する部分となっている。
また、発光層17の各半導体層のうちで、1段目の障壁層171が、前段の注入層と、発光層17との間に位置する注入障壁層となっている。同様に、注入層18の各半導体層のうちで、1段目の障壁層191が、発光層17と、注入層18との間に位置する抽出障壁層となっている。図5に、活性層15における1周期分の単位積層体16の具体的な構造の一例を示す。このような構成において、単位積層体16は、その図4に示すサブバンド準位構造において、発光上準位Lup、発光下準位Llow、及び緩和ミニバンドMBを有している。また、発光下準位Llowは、ミニバンドMBからLOフォノンのエネルギー分だけ高エネルギー側に分離されている。
図3の積層構造において下方に位置する発光波長9.5μmの第2活性層25の構成について説明する。本構成例における第2活性層25は、基本的には第1活性層15と同様の構造を有し、発光層27及び注入層28を含む単位積層体26が所定周期、例えば20周期で積層されて構成されている。また、1周期分の単位積層体26は、図6に示すように、11個の量子井戸層261〜264、281〜287、及び11個の量子障壁層271〜274、291〜297が交互に積層された量子井戸構造によって構成されている。
これらの各半導体層のうち、量子井戸層は、InGaAs層によって構成されている。また、量子障壁層は、InAlAs層によって構成されている。また、このような第2単位積層体26において、発光層27と注入層28とについては、図6に示す積層構造において、4層の井戸層261〜264、及び障壁層271〜274からなる積層部分が、主に発光層27として機能する部分となっている。また、7層の井戸層281〜287、及び障壁層291〜297からなる積層部分が、主に注入層28として機能する部分となっている。
また、発光層27の各半導体層のうちで、1段目の障壁層271が、前段の注入層と、発光層27との間に位置する注入障壁層となっている。同様に、注入層28の各半導体層のうちで、1段目の障壁層291が、発光層27と、注入層28との間に位置する抽出障壁層となっている。図7に、活性層25における1周期分の単位積層体26の具体的な構造の一例を示す。このような構成において、単位積層体26は、その図6に示すサブバンド準位構造において、発光上準位Lup、発光下準位Llow、及び緩和ミニバンドMBを有している。また、発光下準位Llowは、ミニバンドMBからLOフォノンのエネルギー分だけ高エネルギー側に分離されている。
図3〜図7に示す構成例の量子カスケードレーザ1Bでは、第1、第2活性層15、25は、設計コンセプトもほぼ同様で、発光波長のみが異なるように設計されている。このようなSPC構造の活性層15、25を用いることにより、上述したように、単一準位間での高いピーク強度を有する発光が得られ、それぞれ波長8.5μm、9.5μmにピークを持つ自然放出光を放出することができる。
また、本構成例では、第1、第2活性層15、25で、発光強度はほぼ同程度であると予想される。したがって、例えば、発光波長8.5μmの第1活性層15での単位積層体16の積層周期数を20周期、発光波長9.5μmの第2活性層25での単位積層体26の積層周期数を同じく20周期とすることで、2つの発光波長で同程度の自然放出光強度が得られる。
一般には、第1活性層15及び第2活性層25は、互いに異なる発光波長、及び遷移強度を有しているため、単位積層体の1周期当たりでは、得られる発光強度が異なる場合がある。発光波長が異なる2種類の活性層を組み合わせた上記構成の量子カスケードレーザでは、それぞれの活性層での発光強度が同程度であることが好ましい。2種類の活性層で一方のみの発光強度が大きい場合には、それらの発光スペクトルを重ね合わせて得られるレーザ素子の全体での発光スペクトルの形状が均等ではなくなる。
このため、第1、第2活性層15、25のそれぞれでの発光波長と、発光強度との制御は、例えば外部共振器型の量子カスケードレーザなどの量子カスケードレーザにおいて、極めて重要である。2種類の活性層を用いて得られる2波長の発光での発光強度を同程度に保つためには、活性層内のダイポールモーメントを調整するか、もしくは単位積層体の積層周期数を調整することによって、その発光強度を調整することが可能である。
第1、第2活性層15、25において生成される発光成分の合成について、さらに説明する。図8は、量子カスケードレーザにおいて得られる発光スペクトルについて示すグラフである。図8のグラフ(a)、(b)において、横軸は発光エネルギー(meV)を示し、縦軸は発光強度(a.u.)を示している。
図8のグラフ(a)において、グラフA1は、第1活性層15単独での波長8.5μmの発光のエネルギースペクトルを示している。また、グラフA2は、第2活性層25単独での波長9.5μmの発光のエネルギースペクトルを示している。ここでは、第1、第2活性層15、25のそれぞれでの発光エネルギースペクトルについて、その半値幅を22meVとしている。
このような構成では、活性層15、25のそれぞれでの発光スペクトルの形状は極めて重要である。すなわち、発光波長(発光エネルギー)が互いに異なる活性層15、25での発光スペクトルのピークが離れすぎていると、それらを重ね合わせた全体での発光スペクトルがフラットではなくなる。一方で、発光スペクトルのピークが近すぎると、スキャンできる発光の波長範囲が小さくなる。
したがって、発光スペクトルにおいては、第1活性層15での発光エネルギーE1と、第2活性層25での発光エネルギーE2とのエネルギー間隔が、第1活性層15及び第2活性層25のそれぞれでの発光エネルギースペクトルの半値幅の70%以下に設定されていることが好ましい。上記構成例では、このような条件を満たすために、活性層15、25での発光波長をそれぞれ8.5μm、9.5μmに設定している。これにより、図8のグラフ(b)に、活性層15、25を合わせた全体での発光エネルギースペクトルのグラフA3を示すように、ブロードかつフラットな発光スペクトルが得られる。
また、上記した活性層15、25からの発光スペクトルの重ね合わせにおいて、それらの発光エネルギースペクトルの半値幅が同程度であることが好ましい。また、半値幅が同程度ではない場合には、第1活性層15での発光エネルギーE1と、第2活性層25での発光エネルギーE2とのエネルギー間隔が、第1活性層15及び第2活性層25のそれぞれでの発光エネルギースペクトルの半値幅のいずれに対しても70%以下に設定されていることが好ましい。
第1、第2活性層15、25における積層構造及びサブバンド準位構造を設計する上でのもう1つの重要な項目として、2種類の活性層に流すことができる最大電流の制御が挙げられる。上記構成の量子カスケードレーザでは、2種類の活性層構造が直列に連結されている。したがって、それらの活性層15、25の設計において、2つの活性層構造で流せる最大電流を同程度にすることが必要となる。
このような最大電流は、ドーピングと活性層の層構造とによって決定されるが、このうちでドーピングは、量子カスケードレーザの活性層内に電子を供給し、流せる最大電流を決定させている。一方、活性層の層構造で最大電流を決定している部分は、注入障壁での準位間の波動関数の結合の大きさ(アンチクロッシング)である。アンチクロッシングは大きくすれば流せる電流は大きくなるが、大き過ぎるとレーザ特性に多大な影響を及ぼすことが知られており、通常の設計では5meV〜10meV程度である。上記した構成例では、アンチクロッシングを8meV程度に統一し、また、2つの活性層15、25でのドーピング濃度を同程度としている。
本発明による量子カスケードレーザは、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記した構成例では、半導体基板としてInP基板を用い、活性層をInGaAs/InAlAsによって構成した例を示したが、量子井戸構造でのサブバンド間遷移による発光遷移が可能であって上記したサブバンド準位構造を実現可能なものであれば、具体的には様々な構成を用いて良い。
このような半導体材料系については、上記したInGaAs/InAlAs以外にも、例えばGaAs/AlGaAs、InAs/AlSb、GaN/AlGaN、SiGe/Siなど、様々な材料系を用いることが可能である。また、半導体の結晶成長方法についても、様々な方法を用いて良い。また、半導体基板上に直列に設けられる活性層の個数については、2種類の活性層を積層する構成について例示したが、発光波長が異なる3種類以上の活性層を積層する構成としてもよい。
また、量子カスケードレーザの活性層における積層構造、及びレーザ素子全体としての半導体積層構造については、図3〜図7に示した構造以外にも様々な構造を用いて良い。一般には、量子カスケードレーザは、半導体基板と、半導体基板上に直列に設けられた上記構成の第1活性層、第2活性層とを備えて構成されていれば良い。また、上記構成例では、InP基板に対して格子整合する構成について説明したが、例えばInP基板に対して格子不整合を導入した構成を用いることも可能である。この場合、素子設計の自由度の増大、効率的なキャリア閉じ込め、及び発振波長の短波長化が可能となる。
本発明は、広い波長範囲で発光を得ることが可能な量子カスケードレーザとして利用可能である。
1A、1B…量子カスケードレーザ、10…半導体基板、15…第1活性層、16…第1単位積層体、17…量子井戸発光層、18…注入層、20…バッファ層、25…第2活性層、26…第2単位積層体、27…量子井戸発光層、28…注入層、
50…n型InP基板、51…InPクラッド層、52…InGaAsコア層、53…InGaAsバッファ層、54…InGaAsコア層、55…InPクラッド層、56…InGaAsコンタクト層、Lup…発光上準位、Llow…発光下準位、MB…緩和ミニバンド。

Claims (3)

  1. 半導体基板と、
    前記半導体基板上に設けられ、量子井戸発光層及び注入層からなる第1単位積層体が多段に積層されることで前記量子井戸発光層と前記注入層とが交互に積層されたカスケード構造が形成された第1活性層と、
    前記半導体基板上に前記第1活性層に対して直列に設けられ、量子井戸発光層及び注入層からなるとともに前記第1単位積層体とは異なる構造の第2単位積層体が多段に積層されることで前記量子井戸発光層と前記注入層とが交互に積層されたカスケード構造が形成された第2活性層とを備え、
    前記第1活性層及び前記第2活性層のそれぞれにおいて、前記活性層に含まれる前記単位積層体は、そのサブバンド準位構造において、発光上準位と、発光下準位と、前記発光下準位よりも低いエネルギー準位からなる緩和ミニバンドとを有し、
    前記量子井戸発光層における前記発光上準位から前記発光下準位への電子のサブバンド間遷移によって光が生成され、サブバンド間遷移を経た電子は、縦光学フォノン散乱によって前記発光下準位から前記緩和ミニバンドへと緩和され、前記緩和ミニバンドを介して前記注入層から後段の単位積層体へと注入されるとともに、
    前記第1活性層及び前記第2活性層は、前記第1活性層でサブバンド間遷移によって生成される光の発光波長と、前記第2活性層でサブバンド間遷移によって生成される光の発光波長とが異なるように構成されていることを特徴とする量子カスケードレーザ。
  2. 前記第1活性層と、前記第2活性層との間に、バッファ層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の量子カスケードレーザ。
  3. 前記第1活性層で生成される光の発光エネルギーと、前記第2活性層で生成される光の発光エネルギーとのエネルギー間隔が、前記第1活性層及び前記第2活性層のそれぞれでの発光エネルギースペクトルの半値幅の70%以下に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の量子カスケードレーザ。
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