JP2010277825A - 固体酸化物形燃料電池セルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料極110の基板上に電解質層120を積層し、さらに電解質層120の上に空気極130を積層した構造の固体酸化物形燃料電池セル100において、電解質層120の一面に矩形状の断面として形成された溝122を設ける。溝122は、空気極130を構成する粒子132が内部に入り込める大きさとして形成されており、溝122の内部に空気極130を構成する粒子132が入り込むことにより、空気極130と電解質層120と間にある三相界面の実効的な面積が広がる。これにより、空気極反応の活性点が増加し、空気極130における電気化学反応も促進される。この結果、固体酸化物形燃料電池セル100の発電特性を向上できる。
【選択図】図1
Description
なお、固体酸化物形燃料電池としては、セル一つのみでは十分な起電力が得られないため、複数のセルを直列に接続してセルスタックを構成するのが一般的である。
固体酸化物形燃料電池セル200は、図5に示すように、燃料極210の基板上に電解質層220を積層し、さらに電解質層220の上に空気極230を積層した構造になっている。図5の拡大図で示すように、空気極230は粒子232から構成されており、これら粒子232の間隙から空気極230の内部に空気が入り込める。
ここで、電解質層220としては、たとえば、ジルコニア(ZrO2)に対してスカンジア(Sc2O3)と酸化アルミニウム(Al2O3)とが添加されたアルミナ添加スカンジウム安定化ジルコニア(以下、「SASZ」という。)やジルコニア(ZrO2)に対してイットリア(Y2O3)が添加されたイットリア安定化ジルコニア(以下、「YSZ」という。)などのジルコニア系固体電解質を用いる。また、燃料極210としては、たとえば、ニッケル酸化物(NiO)と電解質24を構成するジルコニア系固体電解質とのサーメットなどを用いる。さらに、空気極230としては、たとえば、LaNiO3やLa1-xSrxMnO3,La1-xSrxCo1-yFeyO3などのランタン系のペロブスカイト酸化物あるいは白金などの貴金属を用いる。
燃料極210と電解質層220はそれぞれドクターブレード法でシート状成形体とした。燃料極シートの厚みを1.5mm程度に積層した上に20μm程度の厚みの電解質層220を貼り合わせて、ホットプレスにより密着させる。これを1300℃で焼結させることにより、燃料極210と電解質層220とから成る共焼結基板を作製する。この共焼結基板の電解質層220上に空気極ペーストを塗布したうえで、800〜1200℃で焼結させることにより、図5に示すような、従来の固体酸化物形燃料電池セル200を製造する。
電解質層220と空気極230との間には、電極反応に寄与する三相界面が形成されており、この三相界面が電気化学反応の活性点となる。三相界面に、粒子232の隙間を利用して空気を送り込むとともに、図示しない外部回路から空気極230に対して電子を供給する。こうすることにより、空気極230において下記の式(1)に示す空気極反応が生じ、酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。
O2 + 4e- → 2O2- (1)
H2 + O2- → H2O + 2e- (2)
2H2 + O2 → 2H2O (3)
ここで、空気極と電解質層との間にある三相界面の実効的な面積を広げる方法としては、たとえば、空気極を構成する粒子の径を小さくし、空気極と電解質層との密着度を高める方法などがある。
また、空気極を構成する粒子をことさら小さくしなくても、三相界面の実効的な面積を広げることができる。したがって、空気極を構成する粒子の径の経年変化を抑制し、経年劣化にも強いという効果も得られる。
本実施の形態にかかる固体酸化物形燃料電池セル100は、図1における拡大図に示すように、電解質層120の表面に矩形状の断面として形成されたの溝122が設けられている点で、電解質層220の表面が平坦な従来の固体酸化物形燃料電池セル200と大きく異なる。
電解質層120に設けられた溝122は、空気極130を構成する粒子132が内部に入り込める大きさとして形成されている。たとえば、粒子132の径が0.5μm程度であるときには、溝122の幅・深さは5μmなどの大きさとして形成される。こうして形成された溝122の内部に空気極130を構成する粒子132が入り込むことにより、空気極130と電解質層120と間にある三相界面の実効的な面積が広がる。これにより、空気極反応の活性点が増加し、空気極130における電気化学反応も促進される。この結果、固体酸化物形燃料電池セル100の発電特性を向上できる。
また、本実施の形態のように電解質層120に溝122を形成する方法では、粒子132の径をことさら小さくする必要はなく、固体酸化物形燃料電池セル100の使用による粒子132の径の変化を小さく抑えることができる。このため、空気極130と電解質層120との三相界面の実効的な面積はそれほど変化せず、経年劣化に強いという効果も得られる。
また、溝122のパターンについては、たとえば、固体酸化物形燃料電池セル100の一方側から空気が流れてくる場合には流れてくる空気に対して平行に幾重にもわたって設けたりするなど、溝122の内部に空気が入り込みやくなるように形成することが望ましい。
まず、SASZの粉体(平均粒径は、例えば0.6μmなど)に酸化ニッケル粉体(平均粒径は、例えば0.2μmなど)を60w%加えて混合したスラリーを、たとえば、よく知られたドクターブレード法などにより成形し、図2(a)に示すように、膜厚1.5mm程度の燃料極シート112を形成する。
なお、SASZの粉体としては、たとえば、ジルコニア(ZrO2)89mol%に対し,スカンジア(Sc2O3)が10mol%,酸化アルミニウム(Al2O3)が1mol%の割合で添加されたものを用いればよい。
ここで、電解質層120の上面に塗布されたスラリーを加熱して焼成する際に、より高い温度で焼成した方が空気極130と電解質層120との密着度が高まるので、固体酸化物形燃料電池セル100の発電特性を高められるとも思われる。しかしながら、あまりに高い温度で焼成したときには、空気極130と電解質層120との三相界面にランタンジルコネート(La2Zr2O7)が生成され、このランタンジルコネートが抵抗となって固体酸化物形燃料電池セル100の発電特性を損なうことが確かめられている。これを踏まえて、上述したように800〜1200℃の温度範囲内で加熱して焼成するものとした。
図4は、上述した手順にて製造した固体酸化物形燃料電池セル100の出力密度と電流密度との関係を示す相関図である。固体酸化物形燃料電池セル100では、電解質層120の表面にレーザーを施して空気極130と電解質層120と間の三相界面の実効的な面積を1.5倍まで増加させることによって、最大出力密度0.265(W/cm2)を得た。つまり、従来の固体酸化物形燃料電池セル200に比べて発電特性が20%以上向上することが確認された。
また、空気極130を構成する粒子132をことさら小さくしなくても、空気極130と電解質層120との間の三相界面の実効的な面積を広げることができる。したがって、空気極130を構成する粒子132の径の経年変化を抑制し、経年劣化にも強いという効果も得られる。
Claims (5)
- 電解質層と、この電解質層の一面に形成された空気極と、前記電解質層の他面に形成された燃料極とからなり、
前記電解質層は、前記空気極と接する面に溝を有する
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。 - 請求項1に記載された固体酸化物形燃料電池セルにおいて、
前記溝は、少なくとも前記空気極を構成する粒子の径よりも大きい幅および深さを有する
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。 - 請求項1または2に記載された固体酸化物形燃料電池セルにおいて、
前記電解質層は、この電解質層の前記空気極と接する面の表面積が、この面が平坦である場合の1.5倍以上である
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。 - 電解質層と、この電解質層の一面に形成された空気極と、前記電解質層の他面に形成された燃料極とからなる固体酸化物形電池セルの製造方法であって、
前記電解質層の一面に溝を形成する第1工程と、
前記溝が形成された前記電解質層の表面上に前記空気極を積層する第2工程と
を少なくとも備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルの製造方法。 - 請求項4に記載された固体酸化物形燃料電池セルの製造方法において、
前記第1工程は、前記電解質層の表面に対してレーザーを照射することにより前記溝を形成する
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルの製造方法。
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2009
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