JP2010273583A - 水中油型気泡含有乳化物およびその製造方法 - Google Patents

水中油型気泡含有乳化物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 酸性条件下または酸性の食材等と接触する条件下であっても、オーバーラン値と硬さとが良くバランスした水中油型気泡含有乳化物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 グリセロリン脂質とホスホリパーゼとを配合して成る水中油がた気泡含有乳化物であって、10質量%クエン酸水溶液と接触した直後に、該接触部でのオーバーラン値変化が20%以下であることを特徴とする水中油型気泡含有乳化物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水中油型気泡含有乳化物およびその製造方法に関する。
ホイップドクリームやコーヒークリーム、濃縮乳等の水中油型乳化物は、製菓・製パン業界において、フィリング用、サンド用、トッピング用、練り込み用として広く使用されている。これら水中油型乳化物のpH値は殆どの場合中性付近であるため、安定した乳化状態を保持することが容易であり、また、ホイッピング時のホイップ性や保型性も良好であるものが得られやすい。しかしながら、風味は画一的であるという欠点がある。また、近年、嗜好の多様化に伴い、各種の果実や果汁、ヨーグルト等の酸味を帯びた酸性成分を配合した、清涼感のあるクリーム類が要望されている。なお、本発明において、ホイップクリームとは水中油型乳化物の一つで、ホイッピング前の乳化物を意味し、ホイップドクリームとは水中油型乳化物をホイッピングして得られる水中油型気泡含有乳化物の一つを意味する。
酸性の水中油型乳化食品としては、リゾ化率70%以上となるようにホスホリパーゼA2で処理した大豆レシチン0.6質量%以上と卵黄とを含有する耐熱性のものが提案されている(特許文献1)が、この酸性水中油型乳化食品は、ドレッシングやマヨネーズを対象としており、ホイップドクリームについては考慮されていない。
また、酸性水中油型気泡含有乳化物で乳タンパクを含む例はいくつか報告されている。しかしながら、乳タンパクとしてはカゼインを含むと不都合である旨記載があったり(特許文献2および3)、カゼインとホエーとの比が規定されている上に様々な配合を行わなくては目的物が製造できなかったりすることが述べられている(特許文献4および5)。すなわち、様々な配合を行うことなく、風味の点でホエーよりも優れているカゼインを含む酸性水中油型気泡含有乳化物を製造することは困難であり、これらを得ることが市場から期待されていた。
特開2000−60481号公報 国際公開第2005/063039号パンフレット 国際公開第2006/035543号パンフレット 特開平8−154612号公報 特開2008−86212号公報
本発明の目的は、酸性条件下または酸性の食材等と接触する条件下であっても、オーバーラン値と硬さとのバランスが良い水中油型気泡含有乳化物およびその製造方法を提供することにある。
本発明者等は上記実情に鑑み種々検討した結果、水中油型気泡含有乳化物が、グリセロリン脂質と特定の酵素とを含有することによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、グリセロリン脂質とホスホリパーゼとを配合して成る水中油型気泡含有乳化物であって、10質量%クエン酸水溶液と接触した直後の、該接触部でのオーバーランの変化が20%以下であることを特徴とする水中油型気泡含有乳化物、に存する。
また、本発明の水中油型気泡含有乳化物は、グリセロリン脂質がレシチンを含むことが好ましい。また、本発明の水中油型気泡含有乳化物は、乳タンパクを含有することも好ましく、乳タンパクとしては特にカゼインを含むことが好ましい。乳タンパクとしてカゼインを含有すると、ホエー等を含有する場合よりも風味の点で優れている。
また、本発明の水中油型気泡含有乳化物は、ホスホリパーゼが、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼDのうちの少なくとも何れかであることが好ましい。
さらに、本発明の他の要旨は、グリセロリン脂質を含む油相と水相とを準備する準備工程と、前記油相及び水層を混合して水中油型乳化物を得る混合工程と、該混合工程で得られた水中油型乳化物をホイッピングするホイッピング工程とを含み、該準備工程から該ホイッピング工程までの任意の位置でホスホリパーゼを配合することを特徴とする水中油型気泡含有乳化物の製造方法、に存する。
また、本発明の水中油型気泡含有乳化物の製造方法は、ホスホリパーゼを配合後の任意の位置に、ホスホリパーゼの失活工程を含むことが好ましく、任意の位置に酸味成分の配合工程を含むことも好ましい。
また、本発明の水中油型気泡含有乳化物の製造方法は、グリセロリン脂質がレシチンであることが好ましい。また、本発明の水中油型気泡含有乳化物の製造方法は、乳タンパクを含有することが好ましい。
また、本発明の水中油型気泡含有乳化物の製造方法は、ホスホリパーゼが、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼDのうちの少なくとも何れかであることが好ましい。
本発明によれば、果汁や果実ペースト、酸味料などを含有する酸性条件下や、酸性の食品等と接触する条件下においても凝集を生じず、気泡の保持率が高く、かつ高い硬度を有するため、風味が良好な水中油型気泡含有乳化物を提供することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本発明において「水中油型乳化物」とは、水を主成分とする水相中に油脂を主成分とする油相が分散した乳化物を意味する。水中油型乳化物は、気泡を含む状態、気泡を含まない状態の何れでもよいが、気泡を含む状態である場合には、当該気泡を除いた乳化物部分を意味するものとする。また、本発明において「水中油型気泡含有乳化物」とは、水中油型乳化物が気泡を含んだ状態を意味し、ホイップクリームなどの水中油型乳化物をホイッピング(ホイップ)することによって得られるホイップドクリーム等はこれに該当する。
先ず、水中油型乳化物、すなわち、本発明の水中油型気泡含有乳化物における乳化物部分について説明する。
水中油型乳化物の水分量は特に制限されないが、水中油型乳化物中に、通常10質量%以上含有され、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。また通常99質量%以下、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下含有される。水分量が前記範囲外の場合は、適度な気泡の保持率と適度な硬度を有する水中油型気泡含有乳化物を得ることが困難な場合がある。
油脂の種類は、特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、馬油、鯨油などの各種植物油脂、動物油脂、これらに水素添加、分別、エステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。これらの中では、大豆油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、これらの加工油脂が好ましい。油脂は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
油脂量は特に制限されないが、水中油型乳化物中に、通常1質量%以上含有され、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。また通常90質量%以下含有され、好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。油脂量が前記範囲内であると、適度な気泡の保持率と適度な硬度を有する水中油型気泡含有乳化物を得ることが容易となる傾向にある。
本発明における水中油型乳化物のpHは限定されないが、酸性条件下においても良好な風味をもつ水中油型気泡含有乳化物とすることができる。水中油型乳化物を酸性にするための酸味成分は限定されないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
酸味成分により調節されるpHは限定されないが、通常6.5以下、好ましくは5.5以下、更に好ましくは4.5以下である。なお、pHの下限は限定されないが、通常3以上である。ここでpHとは、実質的に水相のpHを意味する。
本発明における水中油型乳化物は、グリセロリン脂質とホスホリパーゼとを配合して成る。
本発明においてグリセロリン脂質とは、グリセリンを骨格とするリン脂質の分子構造をもつものであれば限定されないが、レシチン、ヒドロキシル化レシチン、ケファリン、リゾケファリン、プラスマローゲン等が挙げられ、中でもレシチンが好適に使用される。レシチンとしては大豆レシチン、卵黄レシチン等が挙げられ、その由来は限定されない。中でも、大豆レシチンは安価かつ植物性であることから好適に使用され、例えば辻製油株式会社製SLPホワイト(製品名)等が挙げられる。上記グリセロリン脂質は1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
グリセロリン脂質は乳化剤として作用し、その配合量は特に制限されないが、水中油型乳化物中に、通常0.01質量%以上含有され、好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また通常10質量%以下含有され、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。グリセロリン脂質の配合量が前記範囲内であると、適度な気泡の保持率と適度な硬度を有する水中油型気泡含有乳化物を得ることが容易となる傾向にある。
ホスホリパーゼは、リン脂質を加水分解する位置によりホスホリパーゼA,B,C,Dに分類されている。ホスホリパーゼAはリン脂質の脂肪酸残基を加水分解する酵素であり、1位に作用して1−リゾ−2−アシルグリセロリン脂質と脂肪酸とに加水分解する酵素はホスホリパーゼA1、2位に作用して2−リゾ−1−アシルグリセロリン脂質(通称リゾレシチン)と脂肪酸とに加水分解する酵素はホスホリパーゼA2と定義されている。また、ホスホリパーゼBは1位および2位に同時に作用して、グリセロリン酸誘導体と脂肪酸とに加水分解する酵素、ホスホリパーゼCは3位に作用して、ジアシルグリセロールとリン酸誘導体に加水分解する酵素、ホスホリパーゼDはリン脂質のリン酸部分に作用し、ホスファチジン酸とコリンやエタノールアミン等の部分とに加水分解する酵素と定義されている。
本発明における水中油型乳化物に使用されるホスホリパーゼは限定されないが、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼDのうち少なくとも何れかを用いることが好ましい。中でも、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼDのうち少なくとも何れかを用いることがより好ましく、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼDのうち少なくとも何れかを用いることが更に好ましく、特にホスホリパーゼA1を用いることが好ましい。なお、ホスホリパーゼA1としては、例えば、三菱化学フーズ株式会社から製剤として市販されている商品を利用することが出来る。また、ホスホリパーゼA2としては、例えば、ノボザイム社製のものを利用することが出来る。
ホスホリパーゼの配合量は特に制限されないが、水中油型乳化物中に、通常0.00001質量%以上含有され、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上である。また通常10質量%以下含有され、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。ホスホリパーゼの配合量が前記範囲外の場合は、適度な気泡の保持率と適度な硬度を有する水中油型気泡含有乳化物を得ることが困難な場合がある。なお、ホスホリパーゼは、油相、水相の何れに存在してもよいが、それ自体が水溶性であるため、通常は水相に存在する。
本発明における水中油型乳化物には、本発明の効果を損なわない範囲において、異なるホスホリパーゼを適宜組み合わせて用いることもできる。なお、ホスホリパーゼA2を用いる場合は酸性条件下での凝集防止効果が十分でない場合があり、ホスホリパーゼCを用いる場合はグリセロリン脂質の分解物が乳化剤としての効果を十分に奏さない場合があるので、これらを用いる場合は少量とすることが好ましい。このため、ホスホリパーゼを複数組み合わせて用いる場合は、ホスホリパーゼA1を主成分とすることが好ましい。なお、主成分とするとは、ホスホリパーゼ全量に対して50質量%より多く含有させることをいう。
本発明における水中油型乳化物には、風味改善の目的で乳タンパクやカゼインを加えることが出来る。乳タンパクはホエーとカゼインとがあるが、ホエー単独では風味が十分でない場合があり、カゼインを添加することで改善が期待できる。ここでカゼインにはカゼインのほか、カゼインナトリウム等を含む概念とする。また、ホエイ系乳蛋白としては、例えば、チーズホエー等が挙げられる。カゼインを含む乳タンパクの配合量は特に制限されないが、水中油型乳化物中に、通常0.1質量%以上含有され、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また通常30質量%以下含有され、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
更に、本発明における水中油型乳化物には、必要により、油相及び/又は水相の成分として、上記以外の乳化剤(以下、その他の乳化剤という。)、安定剤、蛋白質、糖類、調味料、着香料、着色料、保存料、酸化防止剤などを配合してもよい。
その他の乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤が挙げられる。また、サポニン、植物ステロール等の天然の乳化剤も使用することが出来る。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
これら、その他の乳化剤の配合量は特に制限されないが、水中油型乳化物中に、通常0.01質量%以上含有され、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上である。また通常20質量%以下含有され、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
本発明における水中油型乳化物の水相は、通常、水、ホスホリパーゼ、その他の乳化剤としての脂肪酸エステル等で構成される。一方、油相は、通常、油脂、グリセロリン脂質、その他の乳化剤としての脂肪酸エステル等で構成される。なお、本発明の水中油型乳化物においては、前記の通り、通常グリセロリン脂質は油相に、通常ホスホリパーゼは水相に配合されるが、これらの成分は何れも前記とは逆の相に存在していてもよい。
グリセロリン脂質とホスホリパーゼとが配合された本発明における水中油型乳化物は、中性条件下のみならず酸性条件下であっても優れたホイッピング機能(ホイップ性)を有する。
すなわち、通常、水中油型乳化物を加熱等によってホスホリパーゼを失活させたのちに、中性あるいは酸性条件下でホイッピングが行われるが、中性条件下でも酸性条件下でもタンパク質の凝集沈殿を抑制することができる。すなわち、本発明においては、水中油型乳化物のpHに影響されず、タンパク質の凝集沈殿を懸念することなく所望の気泡含有状態とすることが出来る。
次に、本発明の水中油型気泡含有乳化物について説明する。
本発明の水中油型気泡含有乳化物のpHは限定されないが、中性のみならず酸性であっても良好な気泡安定性およびホイップ性を有することが本発明の特徴である。すなわち、通常pHが6.5以下、更には5.5以下、特には4.5以下であっても、良好な気泡安定性およびホイップ性を奏することができる。なお、pHの下限は通常3である。
本発明の水中油型気泡含有乳化物は、良好な気泡安定性、すなわち、酸性の物質と接触した場合に、接触部における該乳化物の気泡が凝集しないことを特徴とする。ここで、酸性の物質としてpH3〜6.5の範囲の任意の物質を用いることができ、固体であっても液体であってもよい。具体的には、本発明の水中油型気泡含有乳化物は、10質量%クエン酸水溶液と接触した直後における該接触部でのオーバーラン値の変化が通常20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは6%以下である。ここで、直後とは、上記クエン酸水溶液と接触させてから1分以内をいうこととする。また、接触させるクエン酸水溶液の量は任意であるが、水中油型気泡含有乳化物に対して、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量を接触させればよい。また、下限は通常0.02質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。
さらに、本発明の水中油型気泡含有乳化物は、良好なホイップ性、すなわち、後述する条件でのホイップ時間が通常2分以上、好ましくは5分以上、また通常12分以内、好ましくは10分以内の間に、オーバーラン値が80%〜200%であり、レオメーターで測定した硬さが30gf〜300gfとなることが好ましい。しかも、水中油型乳化物のpHが前記範囲の酸性下であっても、このような良好なホイップ性を有することが好ましい。オーバーラン値は、好ましくは110%以上、180%以下である。硬さは、好ましくは50gf〜200gf、更に好ましくは80gf〜200gfである。斯かるホイップ状態は、ホイップ時間として30秒以上保持されることが好ましく、より好ましくは1分以上保持されることが好ましい。
オーバーラン値の測定は次のように行う。すなわち、内容積100mlのビーカーに水中油型気泡含有乳化物を充填してその質量を測定し、下記式によりオーバーラン値を算出する。この場合、ホイップは、装置としてケンミックスミキサー(株式会社愛工舎製作所、アイコープロKM−600型)を使用し、温度20℃、回転数400rpmの条件で行う。
Figure 2010273583
硬さの測定は次のように行う。すなわち、直径5.5cm、容量100mlのカップに水中油型気泡含有乳化物を入れ、レオメーター(サン科学社製「RHEO METER CR−500DX」)を使用し、テーブル速度20mm/minで直径30mm円盤状プランジャー(No.14)を水中油型気泡含有乳化物中に沈め、5mm進入時の硬さ(gf)を測定する。
レオメーターで測定した硬さが前記の範囲を超過する場合は、食感が悪化したり水中油型気泡含有乳化物を絞り出した際の形状が悪化する傾向があり、前記の範囲より低すぎる場合は、形状保持性が悪化する傾向がある。一方、オーバーランが前記の範囲を超過する場合は、食感が軽すぎたり、風味の乏しいものになる傾向がある。オーバーランが前記の範囲より低すぎる場合は、風味、口溶け感が悪くなる傾向がある。
本発明の水中油型気泡含有乳化物の上記の特性は、グリセロリン脂質および/またはホスホリパーゼの種類および/または配合量を最適化したり、水中油型乳化物の気泡化条件を最適化したりすることによって達成される。すなわち、これらの最適化により、得られる水中油型気泡含有乳化物の前記した良好な気泡安定性およびホイップ状態が達成される。
次に、本発明の水中油型気泡含有乳化物の製造方法について説明する。
先ず、本発明において水中油型乳化物の製造方法は、グリセロリン脂質を含む油相と水相とを準備する準備工程と、該油相及び水相とを混合する混合工程とを少なくとも有し、通常、該準備工程、該混合工程、予備乳化工程、均質化工程を順次に包含する。混合工程、予備乳化工程、均質化工程における各製造条件は、水中油型乳化物の従来公知の製造方法を適用することが出来る。一般に、予備乳化工程にはホモミキサーが使用され、均質化工程にはホモジナイザーが使用される。
本発明に係る水中油型気泡含有乳化物の製造方法は、上記の製造方法で水中油型乳化物を得た後、該水中油型乳化物に気泡を含有させる工程を有する。気泡を含有させる工程としては、ホイッピングするホイッピング工程であることが好ましい。該ホイッピング工程における製造条件は、水中油型乳化物の従来公知の製造方法を適用することが出来る。一般に、ホイップ装置としては、ケンミックスミキサーをはじめ、起泡性クリームをホイップする場合に汎用されている縦型または横型のコートミキサー等が使用される。
また、水中油型乳化物の製造における均質化工程とホイッピング工程との間に、エージング工程を設けることが好ましい。エージング工程は、水中油型乳化物中の脂肪の結晶を整えてエージング機能を発現させる工程であり、十分に冷却した後に一昼夜以上放置するのが好ましい。具体的には、通常4℃以上、10℃以下の温度で、通常12hr以上静置することが好ましい。
本発明において、ホスホリパーゼを添加する時期は限定されず、予め油相及び水相を準備する準備工程で、水相または油相のいずれか一方、または両方に含有させておいてもよく、混合工程、予備乳化工程、均質化工程の段階で添加してもよく、更には、ホイッピング工程など、水中油型乳化物に気泡を含有させる工程で添加してもよい。また、複数回に分けて、異なる工程でホスホリパーゼを添加してもよい。なお、ホスホリパーゼによる酵素反応時の水中油型乳化物あるいは水中油型気泡含有乳化物のpH(通常は水相のpHを意味する)は特に限定されないが、通常5.5〜7.5、好ましくは6〜7.5の範囲が適当である。
ホスホリパーゼによる酵素反応を行う際の温度は限定されないが、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、また通常90℃以下、、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。また、ホスホリパーゼによる酵素反応を行う時間は限定されないが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上であり、通常18時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは60分以下である。温度および時間を前記範囲で最適化することにより、より効率的な酵素反応を行うことができる。
本発明の水中油型気泡含有乳化物の製造においては、通常、混合工程からホイッピング工程までの任意の段階で、ホスホリパーゼの活性を止めるための失活工程を含むが、好ましくは予備乳化工程と均質化工程との間で行われる。ホスホリパーゼを失活する方法は限定されず、公知の方法を適用することができるが、通常は加熱によって失活させる。加熱温度は限定されないが、通常80℃〜100℃であり、加熱時間は通常1分〜30分である。
本発明の水中油型気泡含有乳化物を酸性にする場合、酸味成分を配合するための配合工程は任意の位置に選択することが出来る。すなわち、水中油型乳化物を得るまでの何れかの工程間または工程中であってもよく、また水中油型乳化物から水中油型気泡含有乳化物を得るまでの何れかの工程間または工程中であってもよい。更には、得られた水中油型気泡含有乳化物に酸味成分を配合することによってもよい。
酸味成分の配合工程の位置は、前述の通り任意に選択することが出来るが、ホイッピング工程の後工程に位置させる実施態様の1つとして、水中油型気泡含有乳化物を酸味成分と一緒に使用してもよい。例えば、酸味成分として、苺、林檎、蜜柑、梨、桃、葡萄、パイン、オレンジ、キウイ等の果実塊を使用し、水中油型気泡含有乳化物としてのホイップクリームと共に、フィリング用、サンド用、トッピング用として使用することが出来る。
本発明において、水中油型乳化物中に特定のホスホリパーゼを含有することにより、中性下のみならず酸性下においても水中油型乳化物中に含まれるタンパク質の凝集を抑制することが出来、更に、当該水中油型乳化物に気泡を含有させた際に、ホイップ機能の低下を抑制することが出来、離水や油分の分離を抑制することが出来る。このため、中性下のみならず酸性下においても水中油型気泡含有乳化物における気泡の保持率が高く、かつ高い硬度を有することが出来る。
本発明の水中油型気泡含有乳化物の用途は特に限定されないが、ホイップクリーム、エアロゾルタイプのクリーム、アイスクリーム等に使用することが出来る。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔オーバーラン値の測定〕
内容積100mlのビーカーに水中油型気泡含有乳化物を充填してその質量を測定し、下記式によりオーバーラン値を算出した。
Figure 2010273583
〔硬さの測定〕
直径5.5cm、容量100mlのカップに水中油型気泡含有乳化物を入れ、レオメーター(サン科学社製「RHEO METER CR−500DX」)を使用し、テーブル速度20mm/minで直径30mm円盤状プランジャー(No.14)を水中油型気泡含有乳化物中に沈め、5mm進入時の硬さ(gf)を測定した。
実施例1:
市販の植物性脂肪ホイップクリーム(日本ミルクコミュニティ株式会社製、MEGMILKホイップ(商標)、pH6.5)200質量部にホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ株式会社)0.1質量部を添加して撹拌した後、55℃にて30分間加熱した。なお、ホスホリパーゼA1の0.1質量部は、6質量部の水に溶解したものを、等量ずつ3回に分けてホイップクリームに添加した。
その後、ホスホリパーゼA1を添加したホイップクリームを600Wの市販の電子レンジで2分間加熱することにより、ホスホリパーゼA1を失活させた。この時のホイップクリームの温度は89±3℃であった。電子レンジで加熱後のホイップクリームは、直ちに氷水にて5℃に冷却し、約5℃で約18時間エージングすることにより水中油型乳化物とした。
得られた水中油型乳化物のうち200質量部を氷水で冷やしたボウルに入れ、砂糖(上白糖)30質量部を加えた後、ワイヤーホイッパーで軽く撹拌した。その後、ケンミックスミキサー(株式会社愛工舎製作所、アイコープロKM−600型)にて412rpm、20℃で5分間ホイッピングしてホイップドクリームを得た。この時、前述の方法で測定したオーバーラン値は101%、硬さは189gfであった。
得られたホイップドクリームのうち80質量部を取り、これにホイップドクリームのpHは4.5±0.3となるように10質量%クエン酸水溶液を3質量部添加して撹拌棒で軽く撹拌した後、速やかに同様の方法でオーバーラン値および硬さを測定した。その結果を表1に示した。
10質量%クエン酸水溶液を添加したホイップドクリームは、その後、乾燥しないようにして冷蔵庫内(約5℃)にて18時間静置した後に取り出し、再び同様にしてオーバーラン値および硬さを測定した。その結果を表1に示した。
比較として、10質量%クエン酸水溶液3質量部の代わりに水を3質量部添加した以外は上記と同様にしてホイップドクリーム(pH6.5)を製造し、上記と同様にしてオーバーラン値および硬さを測定した結果を表1に示した。
この結果、10質量%クエン酸水溶液を添加して酸性にしたホイップドクリームのオーバーラン値は6%低下するにとどまり、比較として水を添加した場合と遜色の無い気泡安定性を示した。さらに、酸性にしたホイップドクリームを18時間保存した後も、比較として水を添加した場合と遜色の無い気泡安定性を示した。
比較例1:
実施例1において、ホスホリパーゼA1の水溶液を添加する代わりに、6質量部の水を等量ずつ3回に分けてホイップクリームに添加した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化物およびホイップドクリームを製造し、実施例1と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表1に示す。
この結果、10質量%クエン酸水溶液を添加して酸性にしたホイップドクリームのオーバーラン値は29%低下し、比較として水を添加した場合に較べて大幅に悪化した。さらに、酸性にしたホイップドクリームを18時間保存するとオーバーラン値は54%まで低下し、使用に耐えないものとなった。
以上の通り、既に均質化工程およびエージング工程を経た水中油型乳化物にホスホリパーゼA1を配合して成る実施例1のホイップドクリームは、その後に酸味成分を混合した場合においても良好なホイップ性を維持しており、良好な気泡安定性を示した。一方、水中油型乳化物にホスホリパーゼA1を配合していない比較例1のホイップドクリームは、酸味成分を混合すると直ちにオーバーラン値が低下し、気泡安定性が不良であった。
Figure 2010273583
実施例2:
市販の植物性脂肪ホイップクリーム(日本ミルクコミュニティ株式会社製、MEGMILKホイップ(商標)、pH6.5)200質量部に、ホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ株式会社)0.1質量部を添加して撹拌した後、55℃にて30分間加熱した。なお、ホスホリパーゼA1の0.1質量部は、6質量部の水に溶解したものを、等量ずつ3回に分けてホイップクリームに添加した。
その後、ホスホリパーゼA1を添加したホイップクリームを600Wの市販の電子レンジで2分間加熱することにより、ホスホリパーゼA1を失活させた。この時のホイップクリームの温度は89±3℃であった。電子レンジで加熱後のホイップクリームは、直ちに氷水にて5℃に冷却し、約5℃で約18時間エージングすることにより水中油型乳化物とした。
得られた水中油型乳化物のうち200質量部を氷水で冷やしたボウルに入れ、砂糖(上白糖)30質量部を加えた後、10%クエン酸水溶液をpH4.0になるまで添加した。その後、ケンミックスミキサー(株式会社愛工舎製作所、アイコープロKM−600型)にて412rpm、20℃でホイッピングしてホイップドクリームを得た。目視観察にてホイップ性が良好となった時点でミキサーを停止し、得られたホイップドクリームのオーバーラン値および硬さを前述の方法で測定し、その結果を表2に示した。
実施例3:
実施例2において、市販の植物性脂肪ホイップクリーム200質量部にクエン酸水溶液60質量部を添加することにより、ホイップクリームのpHを6.0に調整した後に、ホスホリパーゼA1の0.1質量部を添加した以外は、実施例2と同様にして水中油型乳化物およびホイップドクリームを製造し、実施例2と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表2に示した。
実施例4:
実施例2において、市販の植物性脂肪ホイップクリーム200質量部に1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、ホイップクリームのpHを7.0に調整した後に、ホスホリパーゼA1の0.1質量部を添加した以外は、実施例2と同様にして水中油型乳化物およびホイップドクリームを製造し、実施例2と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表2に示した。
実施例5:
実施例2において、市販の植物性脂肪ホイップクリーム200質量部に1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、ホイップクリームのpHを7.5に調整した後に、ホスホリパーゼA1の0.1質量部を添加した以外は、実施例2と同様にして水中油型乳化物およびホイップドクリームを製造し、実施例2と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表2に示した。
表2の通り、ホスホリパーゼA1を配合する前の水中油型乳化物のpHによらず、ホスホリパーゼA1を配合して成る実施例2〜5の何れのホイップドクリームについても、pH4の酸性下で良好なホイップ性を示した。
さらに、実施例2〜5で得られたホイップドクリームそれぞれについて、ホイップドクリーム80質量部に対して10質量%クエン酸水溶液を3質量部添加し、撹拌棒で軽く撹拌してみたが、何れのホイップドクリームも目視ではホイップ状態に変化は見られなかった。
Figure 2010273583
実施例6:
実施例2と同様にして水中油型乳化物を製造し、実施例2と同様にして水中油型乳化物のうち200質量部を氷水で冷やしたボウルに入れ、砂糖(上白糖)30質量部を加えた。その後、10質量%クエン酸水溶液をpH5.0になるまで添加した以外は、実施例2と同様にしてホイップドクリームを製造し、実施例2と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表3に示した。
実施例7:
実施例2と同様にして水中油型乳化物を製造し、実施例2と同様にして水中油型乳化物のうち200質量部を氷水で冷やしたボウルに入れ、砂糖(上白糖)30質量部を加えた。その後、10質量%クエン酸水溶液をpH6.0になるまで添加した以外は、実施例2と同様にしてホイップドクリームを製造し、実施例2と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表3に示した。
比較例2:
実施例6において、ホスホリパーゼA1の水溶液を添加する代わりに、6質量部の水を等量ずつ3回に分けてホイップクリームに添加した以外は、実施例6と同様にして水中油型乳化物およびホイップドクリームを製造し、実施例2と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例3:
実施例7において、ホスホリパーゼA1の水溶液を添加する代わりに、6質量部の水を等量ずつ3回に分けてホイップクリームに添加した以外は、実施例7と同様にして水中油型乳化物およびホイップドクリームを製造し、実施例2と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表3に示す。
表3の通り、ホスホリパーゼA1を失活させた後の水中油型乳化物のpHによらず、ホスホリパーゼA1を配合して成る実施例2、6および7の何れのホイップドクリームについても、良好なホイップ性を示した。
さらに、実施例2、6および7で得られたホイップドクリームそれぞれについて、ホイップドクリーム80質量部に対して10質量%クエン酸水溶液を3質量部添加し、撹拌棒で軽く撹拌してみたが、何れのホイップドクリームも目視ではホイップ状態に変化は見られなかった。
一方、ホスホリパーゼA1を添加していない比較例2および3では、オーバーラン値が大幅に低下した。さらに、比較例2および3で得られたホイップドクリームそれぞれについて、ホイップドクリーム80質量部に対して10質量%クエン酸水溶液を3質量部添加し、撹拌棒で軽く撹拌してみた結果、何れのホイップドクリームも目視で明らかにホイップ状態が悪化していた。
Figure 2010273583
実施例8:
[水中油型乳化物の製造]
表4に示す通り、精製パーム油(ミヨシ油脂株式会社)22.5質量部、ナタネ硬化油(ミヨシ油脂株式会社)22.5質量部、ショ糖脂肪酸エステル−1(三菱化学フーズ株式会社、製品名:リョートーシュガーエステルS−270、HLB2)0.25質量部、ショ糖脂肪酸エステル−2(三菱化学フーズ株式会社、製品名:リョートーシュガーエステルS−170、HLB1)0.05質量部、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社、製品名:エマルジーMS、HLB4)0.05質量部、レシチン(辻製油株式会社、製品名:SLPホワイト)0.15質量部を70℃で混合溶解して油相とした。
表4に示す通り、脱脂粉乳(よつ葉乳業株式会社)2質量部、カゼインナトリウム(フォンテラジャパン株式会社、製品名:ALANATE180)1質量部、メタリン酸ソーダ(国産化学株式会社)0.1質量部、ショ糖脂肪酸エステル−3(三菱化学フーズ株式会社、製品名:リョートーシュガーエステルS−1670、HLB16)0.05質量部、ソルビタン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社、製品名:ソルマンS−300V、HLB5)0.05質量部、水51.30質量部を70℃で混合溶解して水相とした。
上記水相を55℃に調温してからホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ株式会社)0.05質量部を加えた後、これに油相を混合し、TKホモミキサー(プライミクス株式会社)で55℃、30分間撹拌して予備乳化させた。その後、予備乳化で得られた水中油型乳化物を700Wの市販の電子レンジで3分30秒加熱することにより、ホスホリパーゼA1を失活させた。この時の水中油型乳化物の温度は89±3℃であった。
電子レンジで加熱後の水中油型乳化物をゴーリンホモジナイザー(A.P.V.GAULIN社製)にて70℃、1段目80kg/cm、2段目20kg/cmでホモジナイズ(均質化)し、直ちに氷水にて5℃に冷却し、約18時間エージングして水中油型乳化物(ホイップクリーム)を得た。このときの乳化粒子のメディアン径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)にて測定したところ、概ね1〜5μmであった。
[中性ホイップドクリームの製造および評価]
得られた水中油型乳化物100質量部に砂糖(上白糖)15質量部を加えた後、ケンミックスミキサー(株式会社愛工舎製作所、アイコープロKM−600型)にて400rpm、20℃でホイップして水中油型気泡含有乳化物を得た。ホイップ中にミキサーを一時停止してサンプリングを行い、ホイップを再開する操作を繰り返し、最長15分間ホイップした。なお、ミキサーを一時停止してサンプリングを行い、オーバーランを測定した後は、サンプリングした水中油型気泡含有乳化物をミキサーに戻してホイップを再開する操作を繰り返した。
この方法で得たものを中性ホイップドクリームとした。pHは6.5であった。最もホイップ状態が良好であった時点でのオーバーラン値および硬さを表4に示した。なお、少なくともホイップ時間6.5〜8.5分の間は良好なホイップ状態を維持していた。
[酸性ホイップドクリームの製造および評価]
得られた水中油型乳化物100質量部に砂糖(上白糖)15質量部を加えた後、10質量%クエン酸水溶液をホイップする前の水中油型乳化物にpH4になるまで添加した後、中性ホイップクリームの製造と同様にしてホイップし、水中油型気泡含有乳化物を得た。この方法で得たものを酸性ホイップドクリームとした。最もホイップ状態が良好であった時点でのオーバーラン値および硬さを表4に示した。なお、少なくともホイップ時間6.5〜8.5分の間は良好なホイップ状態を維持していた。
実施例9:
実施例8において、ホスホリパーゼA1の配合量を半量とし、表4に示す配合比とした以外は、実施例8と同様にして水中油型乳化物、中性ホイップドクリーム及び酸性ホイップドクリームを製造し、実施例8と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表4に示す。なお、中性ホイップドクリーム及び酸性ホイップドクリームの何れにおいても、少なくともホイップ時間6.5〜8.0分の間は良好なホイップ状態を維持していた。
比較例4:
実施例8において、ホスホリパーゼA1を使用せず、表4に示す配合比とした以外は、実施例8と同様にして水中油型乳化物およびホイップドクリームを製造し、実施例8と同様にしてオーバーラン値および硬さの測定を行った。得られた結果を表4に示す。中性ホイップドクリームでは良好なホイップ性を示したが、酸性ホイップドクリームはホイップ性が悪く、ホイップ時間を延長してもオーバーラン値は上昇しなかった。
以上の通り、油相と水相との混合工程において、水相中にホスホリパーゼA1を配合して成る実施例8および実施例9のホイップドクリームは、中性のみならず酸性下においても良好なホイップ性を示した。さらに、実施例8および実施例9で得られた中性ホイップドクリーム及び酸性ホイップドクリームそれぞれについて、ホイップドクリーム80質量部に対して10質量%クエン酸水溶液を3質量部添加し、撹拌棒で軽く撹拌してみたが、何れのホイップドクリームも目視ではホイップ状態に変化は見られなかった。
一方、水相中にホスホリパーゼA1を配合していない比較例4のホイップドクリームは、酸性下においてホイップ性が不良であった。また、比較例4で得られた中性ホイップドクリーム及び酸性ホイップドクリームについて、ホイップドクリーム80質量部に対して10質量%クエン酸水溶液を3質量部添加し、撹拌棒で軽く撹拌してみた結果、目視で明らかにホイップ状態が悪化していた。
Figure 2010273583

Claims (10)

  1. グリセロリン脂質とホスホリパーゼとを配合して成る水中油型気泡含有乳化物であって、10質量%クエン酸水溶液と接触した直後の、該接触部でのオーバーランの変化が20%以下である
    ことを特徴とする、水中油型気泡含有乳化物。
  2. グリセロリン脂質が、レシチンを含む
    ことを特徴とする、請求項1に記載の水中油型気泡含有乳化物。
  3. ホスホリパーゼが、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼDのうちの少なくとも何れかである
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の水中油型気泡含有乳化物。
  4. 乳タンパクを含有する
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の水中油型気泡含有乳化物。
  5. グリセロリン脂質を含む油相と水相とを準備する準備工程と、前記油相及び水層を混合して水中油型乳化物を得る混合工程と、該混合工程で得られた水中油型乳化物をホイッピングするホイッピング工程とを含み、該準備工程から該ホイッピング工程までの任意の位置でホスホリパーゼを配合する
    ことを特徴とする、水中油型気泡含有乳化物の製造方法。
  6. ホスホリパーゼを配合後の任意の位置に、ホスホリパーゼの失活工程を含む
    ことを特徴とする、請求項5に記載の水中油型気泡含有乳化物の製造方法。
  7. 任意の位置に酸味成分の配合工程を含む
    ことを特徴とする、請求項5または6に記載の水中油型気泡含有乳化物の製造方法。
  8. グリセロリン脂質がレシチンである
    ことを特徴とする、請求項5〜7の何れか一項に記載の水中油型気泡含有乳化物の製造方法。
  9. ホスホリパーゼが、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼDのうちの少なくとも何れかである
    ことを特徴とする、請求項5〜8の何れか一項に記載の水中油型気泡含有乳化物の製造方法。
  10. 乳タンパクを含有する
    ことを特徴とする、請求項5〜9の何れか一項に記載の水中油型気泡含有乳化物の製造方法。
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