以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る電極の断面構成を表している。本実施の形態に係る電極は、例えば、光電変換素子などに用いられるものであり、導電性基板1と、その一方の面に設けられた金属酸化物半導体層2と、金属酸化物半導体層2を担持体として担持された色素3とを有している。
導電性基板1は、絶縁性の基板1Aの表面に導電層1Bが設けられたものである。基板1Aの材料としては、例えば、ガラス、プラスチックあるいは透明ポリマーフィルムなどの絶縁性材料が挙げられる。透明ポリマーフィルムとしては、例えば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィンあるいはブロム化フェノキシなどが挙げられる。
導電層1Bの材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)あるいは酸化スズにフッ素をドープしたもの(FTO:F−SnO2 )などを含む導電性金属酸化物薄膜や、金(Au)、銀(Ag)あるいは白金(Pt)などを含む金属薄膜や、導電性高分子などで形成されたものなどが挙げられる。
なお、導電性基板1は、例えば、導電性を有する材料によって単層構造となるように構成されていてもよく、その場合、導電性基板1の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物あるいは酸化スズにフッ素をドープしたものなどの導電性金属酸化物や、金、銀あるいは白金などの金属や、導電性高分子などが挙げられる。
金属酸化物半導体層2は、色素3を担持する担持体であり、例えば、図1に示したように多孔質構造を有している。金属酸化物半導体層2は、緻密層2Aと多孔質層2Bとを有している。緻密層2Aは、導電性基板1との界面において形成され、緻密で空隙の少ないものであることが好ましく、膜状であることがより好ましい。多孔質層2Bは、導電性基板1とは反対側に形成され、空隙が多く、表面積の大きな構造であることが好ましく、特に、多孔質の微粒子が付着している構造であることがより好ましい。なお、金属酸化物半導体層2は、例えば、膜状の単層構造となるように形成されていてもよい。
金属酸化物半導体層2に含まれる材料(金属酸化物半導体材料)としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウムあるいは酸化マグネシウムなどが挙げられる。中でも、金属酸化物半導体材料としては、酸化亜鉛が好ましい。耐久性が向上するからである。また、これらの金属酸化物半導体材料は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を複合(混合、混晶、固溶体など)させて用いてもよい。金属酸化物半導体材料を2種以上複合させて用いる場合には、例えば、酸化亜鉛と酸化スズとを組み合わせや、酸化チタンと酸化ニオブとを組み合わせなどで使用することができる。
多孔質構造を有する金属酸化物半導体層2の形成方法としては、例えば、電解析出法や、塗布法や、焼成法などが挙げられる。電解析出法により金属酸化物半導体層2を形成する場合には、金属酸化物半導体材料の微粒子を含む電解浴液中において、導電性基板1の導電層1B上にその微粒子を付着させると共に金属酸化物半導体材料を析出させる。塗布法により金属酸化物半導体層2を形成する場合には、金属酸化物半導体材料の微粒子を分散させた分散液(金属酸化物スラリー)を導電性基板1の上に塗布したのち、分散液中の分散媒を除去するために乾燥させる。焼結法により金属酸化物半導体層2を形成する場合には、塗布法と同様にして金属酸化物スラリーを導電性基板1の上に塗布、乾燥したのち、焼成する。中でも、電解析出法あるいは塗布法により金属酸化物半導体層2を形成すれば、基板1Aとして耐熱性が低いプラスチック材料やポリマーフィルム材料を用いることができるため、フレキシブル性の高い電極を作製することができる。
色素3は、金属酸化物半導体層2の表面に、例えば吸着しており、光を吸収して励起されることにより、電子を金属酸化物半導体層2へ注入することが可能な1種あるいは2種以上の色素(増感色素)を含んでいる。色素3は、色素として、化学式(1)で表されるロダニン系化合物および化学式(2)で表されるロダニン系化合物のうちの少なくとも1種を含んでいる。
これらのロダニン系化合物は、ヘテロ原子として硫黄原子および窒素原子を有する5員環(チアゾリジン環)骨格と、チアゾリジン環骨格の4位に結合したオキソ基(=O)と、チアゾリジン環骨格の2位に結合したR2あるいはR6とを有するロダニン構造部分を備えている。このチアゾリジン環骨格中の窒素原子に対して、複数のカルボン酸基を有する炭素数1以上5以下のアルキル鎖(R1またはR5)が結合している。このアルキル鎖に導入された複数のカルボン酸基が、ロダニン系化合物を金属酸化物半導体層2の表面に吸着させるためのアンカー基として機能し、ロダニン系化合物が光を吸収して励起されると、これらのカルボン酸基を介して金属酸化物半導体層2へ電子を注入する。また、ロダニン系化合物は、発色団を構成する主要部として、チアゾリジン環骨格の5位に、二重結合あるいはメチン鎖(R3またはR7)を介して結合する芳香族環あるいは複素環(R4またはR8)を有している。このような構造を有する化学式(1)あるいは化学式(2)に示したロダニン系化合物を、金属酸化物半導体層2に担持された色素3が含むことにより、金属酸化物半導体層2に対する色素3の吸着性が向上し、色素3が水分を多く含む環境に曝されても、金属酸化物半導体層2から色素3が剥離する割合が低くなる。よって、耐久性が向上する。
(R1は炭素数1以上5以下の直鎖状あるいは分岐状のアルキル鎖からなる(n1+1)価の基である。R2はロダニン骨格を有する2価の基あるいはチオキソ基(=S)である。R3は炭素数1,3,5あるいは7のメチン鎖を骨格とする連結基である。R4は芳香族環および複素環のうちの少なくとも1種を含む1価の基である。n1は2あるいは3である。ただし、R4中の芳香族環あるいは複素環のうちのいずれか1つの環は、R3と結合している。)
(R5は炭素数1以上5以下の直鎖状あるいは分岐状のアルキル鎖からなる(n2+1)価の基である。R6はロダニン骨格を有する2価の基あるいはチオキソ基である。R7は炭素数2,4あるいは6のメチン鎖を骨格とする連結基である。R8は芳香族環および複素環のうちの少なくとも1種を含む2価の基である。n2は2あるいは3である。n3は0あるいは1である。ただし、R8中の複素環あるいは芳香族環のうちのいずれか1つの環は、R7あるいはヘテロ原子として硫黄原子(S)および窒素原子(N)を有する5員環と結合している。すなわち、後述するように、n3=0の場合には、チアゾリジン環とR8中の複素環あるいは芳香族環とが2重結合を介して直接結合し、n3=1の場合には、チアゾリジン環とR8中の複素環あるいは芳香族環とはR7を介して連結することになる。)
なお、これらのロダニン系化合物は、その立体異性体であっても同様の効果が得られる。また、化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物は、共鳴構造をとる化合物である。化学式(1)に示したロダニン系化合物では、例えば、化学式(I)で表されるように、ロダニン構造部分と、複素環あるいは芳香族環を含むR4との間で、R3(メチン鎖部分)を介して共鳴構造をとっている。また、化学式(2)に示したロダニン系化合物では、例えば、化学式(II)で表されるように、ロダニン構造部分と、複素環あるいは芳香族環を含むR8との間で、二重結合あるいはR7(メチン鎖部分)を介して共鳴構造をとっている。このため、化学式(1)および化学式(2)中のロダニン構造部分は、チアゾリジン環骨格の4位にオキソ基(=O)、2位にR2あるいはR6が結合しているものの他、2,3−ジヒドロチアゾール環骨格の4位にオキシド基(−O- )、2位にR2あるいはR6が結合したものも表している。すなわち、化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物は、化学式(1)および化学式(2)に示した構造に限定されるものではなく、化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物の共鳴構造(例えば、化学式(1A)および化学式(2A)に示した構造)も含むものである。
(化学式(1A)中のR1〜R3およびn1は化学式(1)中のR1〜R3およびn1と同様であるが、化学式(1A)中のR4は芳香族環および複素環のうちの少なくとも1種を含む2価の基であり、R4全体として正(プラス)に帯電している。)
(化学式(2A)中のR5〜R7およびn2,n3は化学式(2)中のR5〜R7およびn2,n3と同様であるが、化学式(2A)中のR8は芳香族環および複素環のうちの少なくとも1種を含む1価の基であり、R8全体として正(プラス)に帯電している。)
まず、化学式(1)に示したロダニン系化合物の詳細な構成について説明する。
化学式(1)中で説明した−R1−(COOH)n1のカルボン酸基(−COOH)の部分は、上記したようにアンカー基として機能するものである。R1の炭素数が1以上5以下であるのは、この範囲内であれば金属酸化物半導体層2からの剥離が十分に抑えられるからである。中でも、R1の炭素数は1以上4以下であることが好ましい。金属酸化物半導体層2に対する吸着性が向上し、合成が容易になるうえ、金属酸化物半導体層2への電子注入効率が高くなりやすいからである。また、化学式(1)中のn1が2または3であるのは、以下の理由による。n1=1の場合(カルボン酸基の数が1つの場合)には、十分に金属酸化物半導体層2からの剥離が抑えられず、n1≧4の場合(カルボン酸基の数が4つ以上の場合)には、金属酸化物半導体層2への電子注入効率が低くなりやすくなるうえ、安定性が低くなり、容易に合成できない。中でも、n1は、2であること(−R1−(COOH)2 )が好ましい。これにより、金属酸化物半導体層2からの剥離が十分に抑えられると共に、金属酸化物半導体層2への電子注入効率が良好に確保される。さらに安定性が高く、合成が容易になるため、容易に入手可能になる。この−R1−(COOH)n1としては、例えば、化学式(3−1)〜化学式(3−11)で表される基などが挙げられる。
化学式(1)中で説明したR2はチオキソ基(=S)あるいはロダニン骨格を含む2価の基であれば任意であるが、中でもR2はロダニン骨格を含む2価の基であることが好ましい。これにより、ロダニン系化合物の光吸収ピーク波長が、分子全体としてのπ共役の広がりによって長波長側にシフトするが、そのピーク強度は確保された状態のまま、光吸収ピークはブロード化する。よって、ロダニン系化合物の光吸収波長域が広がり、金属酸化物半導体層2への電子注入効率の向上に寄与する。このため、この場合の電極を色素増感型の光電変換素子に用いれば、耐久性を向上させることができる上に、初期の変換効率も向上させることができる。すなわち、高い変換効率を長期間良好に維持することができる。R2として導入されるロダニン骨格を含む2価の基としては、例えば、化学式(4−1)〜化学式(4−3)で表される基などが挙げられる。
(R11〜R15は各々独立に水素基を含む1価の基である。)
なお、化学式(4−1)〜化学式(4−3)中で説明したR11〜R15としては、例えば、水素基、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基あるいはそれらの誘導体などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、第3ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、第3オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ドコシル基あるいはテトラコシル基などが挙げられる。アルキル基の誘導体としては、例えば、ハロゲン化アルキル基や、アルキル基に対して、フェニル基などの芳香族環基、チオフェン基などの複素環基、アセチル基などのアシル基あるいはカルボン酸基などの酸性基が導入された基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン−1−イル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ピセニル基あるいはペリレニル基などが挙げられる。アリール基の誘導体としては、例えば、ハロゲン化アリール基や、アリール基に対してメチル基などのアルキル基、メトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基などの芳香族環基、チオフェン基などの複素環基、アセチル基などのアシル基あるいはカルボン酸基などの酸性基が導入された基などが挙げられる。アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2−フェニルプロパン基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、スチリル基、シンナミル基、ナフチルメチル基あるいはビフェニルメチル基などが挙げられる。アリールアルキル基の誘導体としては、例えば、ハロゲン化アリールアルキル基や、アリールアルキル基に対してメチル基などのアルキル基、メトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基などの芳香族環基、チオフェン基などの複素環基、アセチル基などのアシル基あるいはカルボン酸基などの酸性基が導入された基などが挙げられる。
化学式(1)中で説明したR3は、炭素数1以上7以下のメチン鎖を骨格とする連結基のうち、メチン鎖の炭素数が奇数のものである。すなわち、R3は、その炭素骨格として、−C=、−C=C−C=、−C=C−C=C−C=、あるいは−C=C−C=C−C=C−C=を有するものである。メチン鎖の炭素数が1以上7以下であるのは、紫外光から近赤外光までの広い範囲における光の吸収が良好となるからである。R3としては、例えば、−CH=、−CH=CH−CH=、−CH=CH−CH=CH−CH=、あるいは−CH=CH−CH=CH−CH=CH−CH=が挙げられる。R3は、さらに置換基を有していてもよいし、その置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。R3に導入される置換基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、アルキル基あるいはアルケニル基などが挙げられる。R3のうち、環構造をもつ連結基としては、例えば、化学式(5−1)〜化学式(5−8)で表される連結基などが挙げられる。なお、化学式(5−1)〜化学式(5−8)に示した連結基は、さらに1あるいは複数の置換基が導入されていてもよい。
化学式(1)中で説明したR4中に含まれる芳香族環あるいは複素環の種類は任意であるが、R4全体として電子供与性あるいは電子受容性を有するようになっていることが好ましい。このようなR4のうち、電子受容性の基としては、例えば、ロダニン骨格を有する基、チオヒダントイン骨格を有する基あるいはヒダントイン骨格を有する基などが挙げられ、電子供与性の基としては、例えば、インドール骨格を有する基、インドリジン骨格を有する基、アミノフェニル骨格を有する基、インドリン骨格を有する基あるいはクマリン骨格を有する基などが挙げられる。中でも、R4は、アミノフェニル骨格を有する基、インドリン骨格を有する基あるいはクマリン骨格を有する基であることが好ましい。金属酸化物半導体層2からの剥離がより抑えられるため、耐久性が向上するからである。具体的には、R4のうち、電子受容性の基としては、例えば、化学式(6−1)で表されるロダニン骨格を有する基、化学式(6−2)で表されるチオヒダントイン骨格を有する基、あるいは化学式(6−3)で表されるヒダントイン骨格を有する基などが挙げられ、その他にも、化学式(6−4)〜化学式(6−6)で表される基が挙げられる。また、R4のうち、電子供与性の基としては、例えば、化学式(6−7)〜化学式(6−9)で表されるインドール骨格を有する基、化学式(6−10)で表されるインドリジン骨格を有する基、化学式(6−11)あるいは化学式(6−12)で表されるインドリン骨格を有する基、化学式(6−13)〜化学式(6−15)で表されるクマリン骨格を有する基、化学式(6−16)〜化学式(6−19)で表されるアミノフェニル骨格を有する基、または化学式(6−20)あるいは化学式(6−21)で表されるオキシフェニル骨格を有する基などが挙げられる。これらの化学式(6−1)〜化学式(6−21)に示した基は、さらに置換基が導入された誘導体であってもよい。
(R16〜R36は各々独立に水素基を含む1価の基である。)
なお、化学式(6−1)〜化学式(6−21)中で説明したR16〜R36としては、例えば、化学式(4−1)〜化学式(4−3)中で説明したR11〜R15と同様のものが挙げられる。
化学式(1)示したロダニン系化合物としては、例えば、化学式(1−1)〜化学式(1−37)で表される化合物などが挙げられる。
なお、化学式(1)に示したロダニン系化合物は、上記した化学式(1−1)〜化学式(1−37)に示した化合物に限定されるものではなく、例えば、その立体異性体であってもよいし、それらの共鳴構造であってもよい。ここで、化学式(1)に示したロダニン系化合物を代表して、化学式(1−7)に示した化合物について、その共鳴構造を示すと、化学式(I−1)で表されるようになる。すなわち、化学式(1−7)に示した化合物は、化学式(1−7A)で表される共鳴構造をとっていてもよい。
次に、化学式(2)に示したロダニン系化合物の詳細な構成について説明する。
化学式(2)中で説明した−R5−(COOH)n2は、上記したようにアンカー基として機能するものであり、その詳細は、化学式(1)中の−R1−(COOH)n1と同様である。化学式(2)中で説明したR6の詳細についても、化学式(1)中のR2と同様である。
化学式(2)中で説明したR7は、炭素数1以上7以下のメチン鎖を骨格とする連結基のうち、メチン鎖の炭素数が偶数のものである。すなわち、R7は、その炭素骨格として、=C−C=、=C−C=C−C=、あるいは=C−C=C−C=C−C=を有するものである。メチン鎖の炭素数が2以上6以下であるのは、紫外光から近赤外光までの広い範囲における光の吸収が良好となるからである。R7としては、例えば、=CH−CH=、=CH−CH=CH−CH=、あるいは=CH−CH=CH−CH=CH−CH=が挙げられる。R7は、さらに置換基を有していてもよいし、その置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。R7に導入される置換基としては、例えば、上記した化学式(1)中のR3に導入されるものと同様の基が挙げられる。なお、上記したように化学式(2)に示したロダニン系化合物も共鳴構造をとることから、R7が炭素骨格として、−C=C−、−C=C−C=C−、あるいは−C=C−C=C−C=C−を有していてもよい。
化学式(2)中で説明したn3は0または1であり、n3=0の場合、チアゾリジン環骨格の5位の炭素原子とR8中の芳香族環あるいは複素環の骨格を構成する原子とは直接2重結合を介して結合し、n3=1の場合、チアゾリジン環骨格の5位の炭素原子とR8中の芳香族環あるいは複素環の骨格を構成する原子とはR7を介して連結することになる。
化学式(2)中で説明したR8中に含まれる芳香族環あるいは複素環の種類は任意であるが、R8全体として電子供与性あるいは電子受容性を有するようになっていることが好ましい。このようなR8のうち、電子受容性の基としては、例えば、ロダニン骨格を有する基、チオヒダントイン骨格を有する基あるいはヒダントイン骨格を有する基などが挙げられ、電子供与性の基としては、例えば、キノリン骨格を有する基、ピリジン骨格を有する基、インドレニン骨格を有する基、イミダゾール骨格を有する基、チアゾール骨格を有する基、あるいはオキサゾール骨格を有する基などが挙げられる。中でも、R8は、キノリン骨格を有する基であることが好ましい。金属酸化物半導体層2からの剥離が抑えられるため、十分な耐久性が得られるからである。具体的には、R8のうち、電子供与性の基としては、例えば、化学式(7−1)あるいは化学式(7−2)で表されるキノリン骨格を有する基や、化学式(7−3)あるいは化学式(7−4)で表されるピリジン骨格を有する基や、化学式(7−5)あるいは化学式(7−6)で表されるインドレニン骨格を有する基や、化学式(7−7)で表されるイミダゾール骨格を有する基や、化学式(7−8)あるいは化学式(7−9)で表されるチアゾール骨格を有する基や、化学式(7−10)あるいは化学式(7−11)で表されるオキサゾール骨格を有する基などが挙げられる。これらの化学式(7−1)〜化学式(7−11)に示した基は、さらに置換基が導入された誘導体であってもよい。
(R37〜R48は各々独立に水素基を含む1価の基である。)
なお、化学式(7−1)〜化学式(7−11)中で説明したR37〜R48としては、例えば、化学式(6−1)〜化学式(6−21)中で説明したR16〜R36と同様のものが挙げられる。
化学式(2)示したロダニン系化合物としては、例えば、化学式(2−1)〜化学式(2−9)で表される化合物などが挙げられる。
なお、化学式(2)に示したロダニン系化合物は、上記した化学式(2−1)〜化学式(2−9)に示した化合物に限定されるものではなく、例えば、その立体異性体であってもよいし、それらの共鳴構造であってもよい。ここで、化学式(2)に示したロダニン系化合物を代表して、化学式(2−1)に示した化合物について、その共鳴構造を示すと、化学式(II−1)で表されるようになる。すなわち、化学式(2−1)に示した化合物は、化学式(2−1A)で表される共鳴構造をとっていてもよい。
また、色素3は、上記したロダニン系化合物の他に、他の色素を含んでいてもよい。他の色素は、金属酸化物半導体層2と化学的に結合することができるアンカー基を有する色素が好ましい。他の色素としては、例えば、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、ローダミンB、ピロガロール、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB(エリスロシンは登録商標)、フルオレシン、マーキュロクロム、シアニン系色素、メロシアニンジスアゾ系色素、トリスアゾ系色素、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、インジゴ系色素、ジフェニルメタン系色素、トリメチルメタン系色素、キノリン系色素、ベンゾフェノン系色素、ナフトキノン系色素、ペリレン系色素、フルオレノン系色素、スクワリリウム系色素、アズレニウム系色素、ペリノン系色素、キナクリドン系色素、無金属フタロシアニン系色素または無金属ポルフィリン系色素などの有機色素などが挙げられる。
また、他の色素としては、例えば、有機金属錯体化合物も挙げられる。有機金属錯体化合物の一例としては、芳香族複素環内にある窒素アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合との両方を有する有機金属錯体化合物や、酸素アニオンもしくは硫黄アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合との両方を有する有機金属錯体化合物などが挙げられる。具体的には、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン系色素、金属ナフタロシアニン系色素、金属ポルフィリン系色素、ならびにビピリジルルテニウム錯体、ターピリジルルテニウム錯体、フェナントロリンルテニウム錯体、ビシンコニン酸ルテニウム錯体、アゾルテニウム錯体あるいはキノリノールルテニウム錯体などのルテニウム錯体などが挙げられる。
また、色素3は、上記した色素の他に、1種あるいは2種以上の添加剤を含んでいてもよい。この添加剤としては、例えば、色素3中の色素の会合を抑制する会合抑制剤が挙げられ、具体的には、化学式(8)で表されるコール酸系化合物などである。これらは単独で用いもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
(R50は酸性基を有するアルキル基である。R51は式中のステロイド骨格を構成する炭素原子のいずれかに結合する基を表し、水酸基、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アシル基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、オキソ基あるいは酸性基またはそれらの誘導体であり、それらは同一であってもよいし異なっていてもよい。tは1以上5以下の整数である。式中のステロイド骨格を構成する炭素原子と炭素原子との間の結合は、単結合であってもよいし、二重結合であってもよい。)
この電極では、色素3に対して光(例えば紫外光、可視光あるいは近赤外光)が照射されると、その光を吸収して励起した色素3が電子を金属酸化物半導体層2へ注入する。
この電極は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、基板1A上に、スパッタリング法などにより導電層1Bを形成することにより、導電性基板1を作製する。
次に、導電性基板1の導電層1Bが形成されている面に多孔質構造を有する金属酸化物半導体層2を電解析出法や焼成法により形成する。電解析出法により金属酸化物半導体層2を形成する場合には、例えば、金属酸化物半導体材料となる金属塩を含む電解浴を、酸素や空気によるバブリングを行いながら、所定の温度とし、その中に導電性基板1を浸漬し、導電層1Bと対極との間で一定の電圧を印加する。これにより、導電層1Bの上に、多孔質構造を有するように金属酸化物半導体材料を析出させる。この際、対極は、電解浴中において適宜運動させるようにしてもよい。また、焼成法により金属酸化物半導体層2を形成する場合には、例えば、金属酸化物半導体材料の粉末を分散媒に分散させることにより調製された金属酸化物スラリーを導電性基板1の導電層1Bの上に塗布して乾燥させたのち焼成し、多孔質構造を有するようにする。
次に、上記した化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物のうちの少なくとも1種と、必要に応じて他の増感色素や添加剤とを有機溶媒中に溶解させた色素溶液を調製する。この色素溶液に金属酸化物半導体層2が形成された導電性基板1を浸漬することにより、金属酸化物半導体層2に色素3を担持させる。以上により、図1に示した電極が完成する。
本実施の形態の電極では、色素3が化学式(1)に示したロダニン系化合物および化学式(2)に示したロダニン系化合物のうちの少なくとも1種を含んでいる。これらのロダニン系化合物は、チアゾリジン環骨格中の窒素原子に結合した複数のカルボン酸基を有する炭素数1以上5以下のアルキル鎖をもっている。このアルキル鎖に導入された複数のカルボン酸基が、ロダニン系化合物を金属酸化物半導体層2に吸着させるためのアンカー基として機能し、ロダニン系化合物が光を吸収して励起されると、これらのカルボン酸基を介して担持体へ電子を注入する。金属酸化物半導体層2に担持された色素3が、上記した構造を有する化学式(1)あるいは化学式(2)に示したロダニン系化合物を含むことにより、これらのロダニン系化合物の代わりに、カルボン酸基を1つだけ有する色素を用いた場合や、複数のカルボン酸基を有する一方でロダニン構造部分をもたない色素(例えば、フタロシアニン系色素)を用いた場合と比較して、金属酸化物半導体層2に対する色素3の吸着性が向上する。よって、金属酸化物半導体層2および色素3が水分を多く含む環境に曝されても、金属酸化物半導体層2から色素3が剥離する割合が低くなる。その上、ロダニン構造部分をもたない色素を用いた場合と比較して、光を吸収して励起された場合の金属酸化物半導体層2への電子注入効率が向上する。すなわち、本実施の形態の電極によれば、耐久性を向上させることができる。また、この電極を例えば色素増感型の光電変換素子の電極として用いれば、長期間使用しても変換効率の低下が抑制され、その上、ロダニン構造部分をもたない色素を用いた場合と比較して、金属酸化物半導体層2への電子注入効率が向上するため、変換効率を向上させることもできる。
この場合、化学式(1)中のn1および化学式(2)中のn2が2であれば、金属酸化物半導体層2に対する吸着性が十分に確保できると共に、n1およびn2が3の場合と比較して、安定性が高いため、容易に耐久性を向上させることができる。
また、化学式(1)中のR4は、ロダニン骨格、チオヒダントイン骨格、ヒダントイン骨格、インドール骨格、インドリジン骨格、インドリン骨格、フェニルアミン骨格、クマリン骨格あるいはキノリン骨格を含んでいてもよく、化学式(2)中のR8は、キノリン骨格を含んでいていてもよい。
さらに、金属酸化物半導体層2が酸化亜鉛を含んでいれば、例えば酸化チタンを含む場合と比較して、色素3の吸着性がさらに向上する。
次に、本実施の形態に係る電極の使用例について説明する。ここで、光電変換素子を例に挙げると、上記した電極は、以下のようにして用いられる。
図2は、光電変換素子の断面構成を模式的に表すものであり、図3は、図2に示した作用電極の主要部を抜粋および拡大して表すものである。図2および図3に示した光電変換素子は、いわゆる色素増感型太陽電池の主要部である。この光電変換素子は、作用電極10と対向電極20とが電解質含有層30を介して対向配置されたものであり、作用電極10および対向電極20のうちの少なくとも一方は、光透過性を有する電極である。
作用電極10は、導電性基板11と、その一方の面(対向電極20の側の面)に設けられた金属酸化物半導体層12と、金属酸化物半導体層12を担持体として担持された色素13とを有している。作用電極10は、外部回路に対して、負極として機能するものであり、図1に示した電極と同様の構成を有している。すなわち、導電性基板11は、例えば、絶縁性の基板11Aの表面に導電層11Bを設けたものであり、基板11Aおよび導電層11Bの構成は、それぞれ上記した電極の基板1Aおよび導電層1Bと同様である。金属酸化物半導体層12は、色素13を担持する担持体であり、例えば、図3に示したように多孔質構造を有している。金属酸化物半導体層12は、緻密層12Aと多孔質層12Bとを有し、緻密層12Aおよび多孔質層12Bの構成および形成方法は、それぞれ上記した電極における緻密層2Aおよび多孔質層2Bと同様である。さらに、色素13の構成も、上記した電極の色素3と同様であり、増感色素として化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物のうちの少なくとも1種を含んでいる。
対向電極20は、例えば、導電性基板21に導電層22が設けられたものであり、外部回路に対して正極として機能するものである。導電性基板21の材料としては、例えば、図1に示した電極の導電性基板1の材料と同様のものが挙げられる。導電層22は、1種あるいは2種以上の導電材と、必要に応じて結着材を含んで構成されている。導電層22に用いられる導電材としては、例えば、白金、金、銀、銅(Cu)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)あるいはインジウム(In)などの金属、炭素(C)、または導電性高分子などが挙げられる。また、導電層22に用いられる結着材として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、メラミン樹脂、フロロエラストマーまたはポリイミド樹脂などが挙げられる。なお、対向電極20は、例えば、導電層22の単層構造であってもよい。
電解質含有層30は、例えば、酸化還元対を有するレドックス電解質を含んで構成されている。レドックス電解質としては、例えば、I- /I3 -系、Br- /Br3 -系またはキノン/ハイドロキノン系などが挙げられる。具体的には、ヨウ化物塩とヨウ素単体とを組み合わせたもの、または臭化物塩と臭素とを組み合わせたものなどのハロゲン化物塩とハロゲン単体とを組み合わせたものなどである。ハロゲン化物塩としては、ハロゲン化セシウム、ハロゲン化四級アルキルアンモニウム類、ハロゲン化イミダゾリウム類、ハロゲン化チアゾリウム類、ハロゲン化オキサゾリウム類、ハロゲン化キノリニウム類あるいはハロゲン化ピリジニウム類などが挙げられる。これらのヨウ化物塩としては、例えば、ヨウ化セシウムや、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラペンチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラへプチルアンモニウムヨージドあるいはトリメチルフェニルアンモニウムヨージドなどの4級アルキルアンモニウムヨージド類や、3−メチルイミダゾリウムヨージドあるいは1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージドなどのイミダゾリウムヨージド類や、3−エチル−2−メチル−2−チアゾリウムヨージド、3−エチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾリウムヨージドあるいは3−エチル−2−メチルベンゾチアゾリウムヨージドなどのチアゾリウムヨージド類や、3−エチル−2−メチル−ベンゾオキサゾリウムヨージドなどのオキサゾリウムヨージド類や、1−エチル−2−メチルキノリニウムヨージドなどのキノリニウムヨージド類や、ピリジニウムヨージド類などが挙げられる。また、臭化物塩としては、例えば、四級アルキルアンモニウムブロミドなどが挙げられる。レドックス電解質としては、ハロゲン化物塩とハロゲン単体とを組み合わせたものの中でも、上記したヨウ化物塩のうちの少なくとも1種とヨウ素単体との組み合わせたものが好ましい。
また、レドックス電解質は、例えば、イオン性液体とハロゲン単体とを組み合わせたものでもよい。この場合には、さらに上記したハロゲン化物塩などを含んでいてもよい。イオン性液体としては、電池や太陽電池などにおいて使用可能なものが挙げられ、例えば、「Inorg.Chem」1996,35,p1168〜1178、「Electrochemistry」2002,2,p130〜136、特表平9−507334号公報、または特開平8−259543号公報などに開示されているものが挙げられる。中でも、イオン性液体としては、室温(25℃)より低い融点を有する塩、または室温よりも高い融点を有していても他の溶融塩などと溶解することにより室温で液状化する塩が好ましい。このイオン性液体の具体例としては、以下に示したアニオンおよびカチオンなどが挙げられる。
イオン性液体のカチオンとしては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、オキサジアゾリウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、カルバゾリウムあるいはインドリウム、またはそれらの誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい。イオン性液体のカチオンの具体例としては、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
イオン性液体のアニオンとしては、AlCl4 -あるいはAl2 Cl7 -などの金属塩化物や、PF6 -、BF4 -、CF3 SO3 -、N(CF3 SO2 )2 -、F(HF)n -あるいはCF3 COO- などのフッ素含有物イオンや、NO3 -、CH3 COO- 、C6 H11COO- 、CH3 OSO3 -、CH3 OSO2 -、CH3 SO3 -、CH3 SO2 -、(CH3 O)2 PO2 -、N(CN)2 -あるいはSCN- などの非フッ素化合物イオンや、ヨウ化物イオンあるいは臭化物イオンなどのハロゲン化物イオンが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい。中でも、このイオン性液体のアニオンとしては、ヨウ化物イオンが好ましい。
電解質含有層30は、上記したレドックス電解質を例えば溶媒に溶解させた液状の電解質(電解液)であってもよいし、電解液を高分子物質中に保持させた固体高分子電解質であってもよい。また、電解質含有層30は、電解液とカーボンブラックなどの粒子状の炭素材料とを混合して含む擬固体状(ペースト状)の電解質であってもよい。なお、炭素材料を含む擬固体状の電解質では、炭素材料が酸化還元反応を触媒する機能を有するため、電解質中にハロゲン単体を含まなくてもよい。このようなレドックス電解質は、上記したハロゲン化物塩やイオン性液体などを溶解する有機溶媒のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。この有機溶媒としては、電気化学的に不活性なものが挙げられ、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、バレロニトリル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ペンタノール、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシドあるいは1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
この光電変換素子では、作用電極10に担持された色素13に対して光(太陽光または、太陽光と同等の紫外光、可視光あるいは近赤外光)が照射されると、その光を吸収して励起した色素13中の色素が電子を金属酸化物半導体層12へ注入する。その電子が隣接した導電層11Bに移動したのち外部回路を経由して、対向電極20に到達する。一方、電解質含有層30では、電子の移動に伴い酸化された色素(電子を放出した色素)を基底状態に戻す(還元する)ように、電解質が酸化される。この酸化された電解質が上記した電子を受け取ることによって還元される。このようにして、作用電極10および対向電極20の間における電子の移動と、これに伴う電解質含有層30における酸化還元反応とが繰り返される。これにより、連続的な電子の移動が生じ、定常的に光電変換が行われる。
この光電変換素子は、例えば、以下のように製造することができる。
まず、作用電極10を上記した電極と同様にして作製する。次に、導電性基板21の片面に導電層22を形成することにより、対向電極20を作製する。導電層22は、例えば、導電材をスパッタリングすることにより形成する。
最後に、作用電極10の色素13を担持した面と、対向電極20の導電層22を形成した面とが所定の間隔を保つと共に対向するように、封止剤などのスペーサ(図示せず)を介して貼り合わせ、例えば、電解質の注入口を除いて全体を封止する。続いて、作用電極10と対向電極20との間に、電解質を注入したのち注入口を封止することにより、電解質含有層30を形成する。これにより図2および図3に示した光電変換素子が完成する。
この光電変換素子では、金属酸化物半導体層12に担持された色素13が、上記した構造を有する化学式(1)に示したロダニン系化合物および化学式(2)に示したロダニン系化合物のうちの少なくとも1種を含むことにより、これらのロダニン系化合物の代わりに、カルボン酸基を1つだけ有する色素を用いた場合や、複数のカルボン酸基を有する一方でロダニン構造部分をもたない色素(例えば、フタロシアニン系色素)を用いた場合と比較して、金属酸化物半導体層12に対する色素3の吸着性が向上する。このため、素子中に水分が残存していたり、素子中に水分が侵入しても、金属酸化物半導体層12から色素13が剥離する割合が低くなる。よって、本実施の光電変換素子によれば、長期間使用しても、色素13の剥離による変換効率の低下が抑えられるため、耐久性を向上させることができる。その上、ロダニン構造部分をもたない色素を用いた場合と比較して、色素13の金属酸化物半導体層12への電子注入効率が向上するため、変換効率も向上させることができる。この場合、特に、金属酸化物半導体層12が酸化亜鉛を含むようにすれば、酸化亜鉛を含まない場合(例えば酸化亜鉛に代えて酸化チタンを含む場合)と比較して、耐久性をより向上させることができる。
この光電変換素子における他の作用効果は、上記した電極の作用効果と同様である。
なお、上記した光電変換素子では、電解質含有層30としてレドックス電解質を含むものを用いた場合について説明したが、電解質含有層30としては、レドックス電解質に代えて固体電解質として固体電荷移動層を設けてもよい。この場合、固体電荷移動層は、例えば、固体中のキャリア移動が電気伝導にかかわる材料を有している。この材料としては、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料などが好ましい。
正孔輸送材料としては、芳香族アミン類や、トリフェニレン誘導体類などが好ましく、例えば、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール、ポリアセチレンあるいはその誘導体、ポリ(p−フェニレン)あるいはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)あるいはその誘導体、ポリチエニレンビニレンあるいはその誘導体、ポリチオフェンあるいはその誘導体、ポリアニリンあるいはその誘導体、ポリトルイジンあるいはその誘導体などの有機導電性高分子などが挙げられる。
また、正孔輸送材料としては、例えば、p型無機化合物半導体を用いてもよい。このp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに、2.5eV以上であることがより好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素の正孔を還元できる条件から、作用電極10のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下の範囲内であることが好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下の範囲内であることがより好ましい。
p型無機化合物半導体としては、例えば、1価の銅を含む化合物半導体などが挙げられる。1価の銅を含む化合物半導体の一例としては、CuI、CuSCN、CuInSe2 、Cu(In,Ga)Se2 、CuGaSe2 、Cu2 O、CuS、CuGaS2 、CuInS2 、CuAlSe2 などがある。このほかのp型無機化合物半導体としては、例えば、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi2 O3 、MoO2 またはCr2 O3 などが挙げられる。
このような固体電荷移動層の形成方法としては、例えば、作用電極10の上に直接、固体電荷移動層を形成する方法があり、そののち対向電極20を形成付与してもよい。
有機導電性高分子を含む正孔輸送材料は、例えば、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法または光電解重合法などの手法により電極内部に導入することができる。無機固体化合物の場合も、例えば、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法または電解メッキ法などの手法により電極内部に導入することができる。このように形成される固体電荷移動層(特に、正孔輸送材料を有するもの)の一部は、金属酸化物半導体層12の多孔質構造の隙間に部分的に浸透し、直接接触する形態となることが好ましい。
電解質含有層30として固体電荷移動層を設けた光電変換素子においても、レドックス電解質を用いた場合と同様に、耐久性を向上させることができる。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実験例1−1〜1−12)
以下の手順により、図1に示した電極を作製した。
最初に、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO2 )よりなる導電性基板1を用意した。次に、導電性基板1に、縦0.5cm×横0.5cmの四角形を囲むように厚さ70μmのマスキングテープを貼り、この部分に金属酸化物スラリー3cm3 を一様の厚さとなるように塗布して乾燥させた。この場合、金属酸化物スラリーとしては、10重量%となるように酸化亜鉛粉末(表面積60m2 /g、平均一次粒径50nm以下;堺化学工業社製FINEX−30)を、非イオン性界面活性剤としてTriton X-100(Tritonは登録商標)を1滴添加した水に懸濁して調製したものを用いた。続いて、導電性基板1上のマスキングテープを剥がし取り、この基板を電気炉により450℃で焼成し、厚さ約5μmの金属酸化物半導体層2を形成した。
続いて、ロダニン系化合物とデオキシコール酸とを無水エタノールに溶解させて、色素溶液を調整した。この場合、色素溶液中におけるロダニン系化合物の濃度を3×10-4mol/dm3 、デオキシコール酸の濃度を1×10-3mol/dm3 となるようにした。各実験例において用いた色素(ロダニン系化合物)の種類は、表1に示した通りである。続いて、金属酸化物半導体層2が形成された導電性基板1を色素溶液に浸漬し、色素3を担持させた。これにより、図1に示した電極が完成した。
(実験例1−13〜1−25)
表1に示したように、化学式(1−1)に示した化合物に代えて、以下の化学式(9)〜化学式(21)に示した化合物を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。
これらの実験例1−1〜1−25の電極について、色素の剥離試験により耐久性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
色素の剥離試験は、以下の手順により行った。まず、金属酸化物半導体層2の色素3が担持された表面をUVスペクトルメータにより、測定波長350nm〜850nmの範囲における吸収スペクトルを測定し、ピーク波長における初期の吸光度を求めた。次に、電極を10重量%の割合で水を含むアセトニトリル混合液100cm3 に2時間浸漬したのち、同様に吸収スペクトルを測定し、ピーク波長における10重量%水含有アセトニトリル2時間浸漬後の吸光度を求めた。最後に、ピーク波長における初期の吸光度と10重量%水含有アセトニトリル2時間浸漬後の吸光度から、色素残存率(%)=(10重量%水含有アセトニトリル2時間浸漬後の吸光度/初期の吸光度)×100を算出した。なお、この一連の吸収スペクトルの測定には、島津製作所製UV−3101PCを用いて、スリット幅5nmとして行った。
表1に示したように、金属酸化物半導体層2が酸化亜鉛を含む場合には、色素としてロダニン骨格と共に複数のカルボン酸基を有する化学式(1−1)に示した化合物等を用いた実験例1−1〜1−12では、カルボン酸基を1つだけ有する化学式(9)〜化学式(19)に示した化合物を用いた実験例1−13〜1−23よりも、色素残存率が著しく高くなった。また、実験例1−13では、ロダニン骨格を持たない化学式(20)に示した化合物を用いた実験例1−24よりも色素残存率が高くなり、実験例1−1〜1−12では、複数のカルボン酸を有する一方でロダニン骨格を持たない化学式(21)に示した化合物を用いた実験例1−25よりも、色素残存率が著しく高くなった。
これらの結果は、以下のことを表している。すなわち、色素として用いたロダニン系化合物がロダニン骨格と共に複数のカルボン酸基を有することにより、複数のカルボン酸基を有する一方でロダニン骨格を持たない色素や、ロダニン骨格を有していてもカルボン酸を1つだけ有する色素と比較して、金属酸化物半導体層2に対する吸着性が著しく向上する。この金属酸化物半導体層2に対するロダニン系化合物の吸着性は、ロダニン構造部分の骨格(R2,R6)や、メチン鎖の炭素数(R3,R7)あるいはメチン鎖の有無(n3)や、メチン鎖等に結合する芳香族環あるいは複素環(R4,R8)の種類などに依存することなく、向上する。
また、化学式(1)に示したロダニン系化合物の構造に着目すると、R4がインドリン骨格、フェニルアミン骨格あるいはクマリン骨格を有する基の場合、その他の骨格を有する場合と比較して、色素残存率が高くなる傾向がみられた。また、R2がチオキソ基あるいはロダニン骨格を有する基のいずれであっても、高い色素残存率が得られた。さらに、化学式(1)に示したロダニン系化合物と化学式(2)に示したロダニン系化合物とを比較すると、化学式(1)に示したロダニン系化合物において、色素残存率が高くなる傾向がみられた。
これらのことから、酸化亜鉛を含む金属酸化物半導体層2を有する電極では、色素3が化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物のうちの少なくとも1種を含むことにより、ロダニン系化合物の構造に依存することなく、耐久性が向上することが確認された。この場合、化学式(1)に示したロダニン系化合物では、R4がインドリン骨格、フェニルアミン骨格あるいはクマリン骨格を含むようにすれば、耐久性がより向上することが確認された。
(実験例2−1〜2−25)
金属酸化物半導体層2を形成する際に、酸化亜鉛粉末に代えて、酸化チタン(TiO2 )粉末を含む金属酸化物スラリーを用いたことを除き、実験例1−1〜1−25と同様の手順を経た。この場合、酸化チタン粉末を含む金属酸化物スラリーは、以下のように調製した。まず、チタンイソプロポキシド125cm3 を、0.1mol/dm3 硝酸水溶液750cm3 に攪拌しながら添加し、80℃で8時間激しく攪拌した。得られた液体をテフロン(登録商標)製の圧力容器に注ぎ入れ、その圧力容器を230℃、16時間オートクレーブにて処理した。そののちオートクレーブ処理した沈殿物を含む液体(ゾル液)を攪拌することにより再懸濁させた。続いて、この懸濁液を吸引濾過して再懸濁しなかった沈殿物を除き、ゾル状の濾液をエバポレータで酸化チタン濃度が11質量%になるまで濃縮した。こののち、濃縮液に導電性基板1への塗れ性を高めるためにTriton X-100を1滴添加した。続いて、平均粒径30nmの酸化チタン粉末(日本アエロジル社製P−25)をこのゾル状の濃縮液に、酸化チタンの含有率が全体として33質量%となるように加え、自転公転を利用した遠心撹拌を1時間行い、分散させた。
これらの実験例2−1〜2−25の電極について、実験例1−1〜1−25と同様に色素の剥離試験により耐久性を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
表2に示したように、金属酸化物半導体層2が酸化チタンを含む場合においても、表1に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、色素としてロダニン骨格と共に複数のカルボン酸基を有する化学式(1−1)に示した化合物等を用いた実験例2−1〜2−12では、カルボン酸基を1つだけ有する化学式(9)〜化学式(19)に示した化合物を用いた実験例2−13〜2−23よりも、色素残存率が著しく高くなった。また、実験例2−13では、ロダニン骨格を持たない化学式(20)に示した化合物を用いた実験例2−24よりも色素残存率が高くなり、実験例2−1〜2−12では、複数のカルボン酸を有する一方でロダニン骨格を持たない化学式(21)に示した化合物を用いた実験例2−25よりも、色素の残存率が著しく高くなった。
これらのことから、酸化チタンを含む金属酸化物半導体層2を有する電極では、色素3が化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物のうちの少なくとも1種を含むことにより、ロダニン系化合物の構造に依存することなく、耐久性が向上することが確認された。この場合、化学式(1)に示したロダニン系化合物では、R4がインドリン骨格、フェニルアミン骨格あるいはクマリン骨格を含むようにすれば、耐久性がより向上することが確認された。
また、表1および表2の結果から、色素3を担持する金属酸化物半導体層2を有する電極では、色素3が化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物のうちの少なくとも1種を含むことにより、ロダニン系化合物の構造や、金属酸化物半導体層2の材料に依存することなく、耐久性が向上することが確認された。この場合、特に、金属酸化物半導体材料として酸化亜鉛を用いた場合に、酸化チタンを用いるよりも、色素残存率が高かったことから、金属酸化物半導体層2が酸化亜鉛を含むようにすれば、耐久性がより向上することが確認された。
(実験例3−1〜3−3)
上記した実施の形態で説明した光電変換素子の具体例として色素増感型太陽電池を以下の手順により作製した。
まず、作用電極10を実験例1−1,1−7,1−8で作製した電極と同様に作製した。次に、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO2 )よりなる導電性基板21の片面に、スパッタリングにより白金よりなる100nmの厚さの導電層22を形成することにより、対向電極20を作製した。この場合、予め、導電性基板21には、電解液注入用の穴(φ1mm)を2つ開けておいた。
次に、電解液を調製した。アセトニトリルに対して、ジメチルヘキシルイミダゾリウムヨージド(0.6mol/dm3 )、ヨウ化リチウム(0.1mol/dm3 )、ヨウ素(0.05mol/dm3 )の濃度になるように調製した。
次に、厚さ50μmのスペーサを金属酸化物半導体層12の周りを囲むように配置したのち、作用電極10の色素13を担持した面と、対向電極20の導電層22を形成した面とを対向させると共に、スペーサを介して貼り合わせた。こののち、対向電極20に開けておいた注入口から調製した電解液を注入し、電解質含有層30を形成した。最後に全体を封止することにより、図2および図3に示した色素増感型太陽電池が完成した。
(実験例3−4,3−5)
化学式(1−1)に示した化合物に代えて、化学式(9)あるいは化学式(21)に示した化合物を用いたことを除き、実験例3−1と同様の手順を経た。
これらの実験例3−1〜3−5の色素増感型太陽電池について、変換効率の維持率を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
変換効率の維持率を調べる際には、まず、色素増感型太陽電池の初期の変換効率を測定した。続いて、初期の変換効率を測定した色素増感型太陽電池を分解したのち、作用電極10を、10重量%の割合で水を含むアセトニトリル混合液100cm3 に2時間浸漬した。続いて、アセトニトリル混合液から引き上げた作用電極10を用いて再び色素増感型太陽電池を上記した手順と同様に組み立てたのち、水含有アセトニトリル浸漬処理後の変換効率を測定した。最後に、変換効率の維持率(%)=(水含有アセトニトリル浸漬処理後の変換効率/初期の変換効率)×100を算出した。
変換効率は、光源AM1.5(1000W/m2 )のソーラーシュミレータを用いて、以下の算出方法により求めた。まず、色素増感型太陽電池の電圧をソースメータにて掃引し、応答電流を測定した。続いて、この電圧と応答電流とから、電圧と電流との積である最大出力を算出し、この最大出力を1cm2 あたりの光強度で除した値に100を乗じてパーセント表示とし、この値を変換効率(η:%)とした。すなわち、変換効率(η:%)=(最大出力/1cm2 あたりの光強度)×100で表される。
表3に示したように、酸化亜鉛を含む金属酸化物半導体層12を有する作用電極10を用いた場合において、色素としてロダニン骨格と共に複数のカルボン酸基を有する化学式(1−1)に示した化合物等を用いた実験例3−1〜3−3では、初期の変換効率が1%以上であり、この変換効率が水含有アセトニトリル浸漬処理後でも90%以上維持されていた。一方、カルボン酸基を1つだけ有する化学式(9)に示した化合物を用いた実験例3−4では、初期の変換効率は実験例3−1よりもわずかに高くなったが、この変換効率は水含有アセトニトリル浸漬処理後には20%程度しか維持されなかった。また、複数のカルボン酸を有する一方でロダニン骨格を持たない化学式(21)に示した化合物を用いた実験例3−5では、初期の変換効率およびその維持率ともに、実験例3−1〜3−3よりも著しく低くなった。
これらの結果から、以下のことが示唆された。色素では、アンカー基として機能するカルボン酸基を複数有すると、1つだけカルボン酸基を有する場合よりも、変換効率が低下しやすくなり、金属酸化物半導体層12への吸着性もほとんど向上しない。ところが、ロダニン骨格を併せて有すると、複数のカルボン酸基を有することによる変換効率の低下を抑えられ、その上、金属酸化物半導体層12への吸着性が著しく向上する。このため、長期間使用した際に素子内へ水分が侵入しても、変換効率が良好に維持される。
これらのことから、酸化亜鉛を含む金属酸化物半導体層12を有する作用電極10を用いた色素増感型太陽電池では、色素13が化学式(1)および化学式(2)に示したロダニン系化合物のうちの少なくとも1種を含むことにより、ロダニン系化合物の構造に依存することなく、変換効率が長期間良好に維持されるため、耐久性が向上することが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明の電極の使用用途は、必ずしも光電変換素子に限らず、他の用途であってもよい。他の用途としては、カラーセンサ、撮像素子あるいは表示デバイスのフィルタなどが挙げられる。また、本発明の光電変換素子の使用用途は、必ずしも色素増感型の太陽電池に限らず、他の用途であってもよい。他の用途としては、例えば、光センサなどが挙げられる。