JP2010269287A - 液体中の溶存酸素除去方法及び液体中の溶存酸素除去装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 酸素含有液体を送液管2へ導く送液手段4と、送液管2に設けた昇圧部Bと、この昇圧部Bの上流に脱酸素用気体を合流させる合流部Aと、上記昇圧部Bの下流において昇圧された液体を降圧する降圧部Cとを備え、合流部Aで液体に脱酸素用気体を合流させて、液体中に脱酸素用気体を過飽和状態に保つとともに、この液体を昇圧した後に、上記降圧部で当該液体の圧力を降圧して液体中から脱酸素用気体とともに酸素を除去する。
【選択図】 図1
Description
<特許文献1>
特許文献1に記載された方法は、処理対象水と窒素ガスとをスタティックミキサで乱流混合するだけであり、その後、このスタティックミキサに連結した気液分離ラインで上記窒素ガスを混合した処理対象水を減圧して気液分離するものである。
特許文献2に記載された方法は、常温の処理対象水中に、窒素ガス注入装置で窒素ガスを微小気泡状として注入し、配管内で混合撹拌し、被処理水中の溶存酸素を窒素ガスの微小気泡中に放出させる。そして、この窒素ガスの気泡が大きくならないようにしながら、処理対象水を、窒素ガス雰囲気を保持したブレイクタンク内に噴出拡散させる。このようにブレイクタンク内に噴出拡散させることによる圧力低下により溶存酸素を放出するのである。
特許文献3に記載された方法は、処理対象の水を加圧状態のまま第1気液混合槽にて窒素ガスと混合し、第1気液混合槽で混合した気液混合水をただちに減圧して気液を一次分離する。さらに、第1気液分離槽で気液分離された処理水を第二気液混合槽へ移送して窒素ガスと再度混合し、第二気液混合槽で得られた気液混合水をただちに減圧して気液を二次分離するものである。
<特許文献4>
特許文献4に記載された方法は、処理対象の液体を密封式の耐圧容器に収納し、この耐圧容器のヘッドスペースに、高圧の窒素ガスを導入して、液体を直接加圧する。その後に、加圧された液体を、大気圧まで減圧して液体の溶存酸素を除去するものである。
例えば、特許文献1に記載された方法は、処理対象水と窒素ガスとを混合しているだけである。特許文献2に記載された方法は、処理対象水に混合した窒素ガスの気泡が大きくならないようにしているもので、処理対象水に圧力をかけて窒素ガスを溶解させるという考え方はない。特許文献3に記載された方法は、気液混合槽で混合した気液混合水をただちに減圧して気液を分離するものであって、この場合にも、処理対象水に圧力をかけて窒素ガスを溶解させるという考え方はない。
第2の発明は、上記昇圧部で、上記液体を飽和溶解圧力以上に昇圧する点に特徴を有する。
なお、上記飽和溶解圧力とは、気体を完全に液体中に溶解させるために必要な圧力のことである。
第5の発明は、上記降圧部が、気液分離機能を備えた点に特徴を有する。
また、特許文献4のように脱酸素用気体によって液体を加圧する場合と比べて、脱酸素用気体の消費量を抑えることができる。
また、第1の発明では、同一の送液管において、脱酸素用気体を合流させる工程と、液体を昇圧する工程とを連続的に処理できるようにしたので、連続的に溶存酸素を除去することができる。
さらに、第2の発明では、飽和溶解圧力以上に液体を昇圧するので、液体中の脱酸素用気体の溶解度を上げることができる。従って、液体を減圧したときの脱酸素量が多くなり、効率的な溶存酸素の除去ができる。しかも、添加した脱酸素用気体を全量、液体中に溶解することができるので、脱酸素用液体を無駄に消費することがなく、効率的である。
第3の発明によれば、従来のようなバッチ処理とは異なり、連続処理が可能である。
第4の発明では、昇圧ポンプと圧力調整手段とで昇圧部を構成し、脱酸素用気体を混合した液体の圧力を調整することができるので、脱酸素用気体の量に応じた適切な圧力を設定しながら効率のよい処理ができる。
第5の発明では、降圧部に気液分離機能を備えたので、よりいっそうの連続処理が可能になる。
この溶存酸素除去装置は、この発明の液体の溶存酸素除去方法を実現するものであって、酸素を溶存した液体を貯蔵したタンク1に送液管2を接続し、この送液管2中で酸素を除去した脱酸素液を送出口3から排出するようにした装置である。
上記送液ポンプ4とタンク1との間には、これら送液ポンプ4とタンク1との間の送液路を開閉するための弁6を設けているが、この弁6は装置の運転中は開状態にしておくものである。また、図中符号7は、タンク1から酸素を溶存する液体を排出するための排液弁である。
なお、上記送液管2に供給された液体は、上記送出口3から排出されるまでは、大気とは接触しないように構成されている。
上記圧力調整弁8は、この圧力調整弁8と昇圧ポンプ5との間の圧力を調整するものである。
また、上記圧力調整弁8の下流側であって上記昇圧ポンプ5の上流側には、この発明の脱酸素用気体である窒素ガスの供給源11に接続した合流部Aを設けている。そして、この合流部Aには、上記液体に対して過飽和となる量の窒素ガスを供給するようにしている。このように合流部Aでは、送液管2内の液体に対して過飽和となる量の窒素ガスを合流させるので、この合流部Aから昇圧ポンプ5までの間では、飽和量を超えた窒素が気泡として存在する。
なお、上記窒素ガスは、窒素ガスボンベから減圧したものを用いてもよいし、窒素ガス製造装置で空気から製造したものを用いてもよい。ただし、この窒素ガスは、高圧である必要はなく、上記合流部Aにおいて送液管2の液体中に供給可能な圧力を保っていればよい。
合流部Aの圧力を安定的に低く保つための例として、タンク1を合流部Aよりも高い位置に保ち、その位置エネルギーを利用し、送液ポンプ4を用いないでタンク1内の上記液体を合流部Aに直接導く場合が考えられる。
さらに、上記圧力調整弁8と昇圧ポンプ5との間に圧力計10を設け、両者間の圧力を検出できるようにしている。このように圧力計10を設けて、圧力調整弁8と昇圧ポンプ5との間の圧力を検出することによって、上記合流部Aの圧力が窒素ガスを供給するのに最適な状態にあるか否かを常に確認でき、上記合流部Aの圧力を調整し、最適に保つこともできる。
なお、上記昇圧ポンプ5と圧力調整手段12とでこの発明の昇圧部Bを構成するものである。
この昇圧部Bにおいて送液管2内の液体を昇圧して、窒素ガスをより多く溶解させるようにしている。このとき、昇圧部Bの圧力を飽和溶解圧力以上に昇圧すれば、上記合流部Aで合流させた過飽和の窒素ガスを全量溶解させることもでき、窒素ガスを無駄に消費することがない。
また、昇圧部Bには圧力計13を設け、昇圧部Bの圧力を計測している。このように、昇圧部Bの圧力を計測することにより、昇圧部Bにおける圧力を、窒素ガスを溶解させるのに最適な圧力に保つことができる。
この降圧部Cには、送液管2に圧力調整手段14を設けて送出口3に接続するとともに、送液管2から分岐する脱気配管15を設けている。この脱気配管15は、絞り弁16を介して排気口17に接続している。なお、上記送出口3及び排気口17は、降圧部Cの圧力よりも低圧にした環境に開放している。
このとき、排気口17を送液管2と脱気配管15との分岐点よりも上方に位置させておけば、この排気口17から液体が排出されたりしない。
これにより、タンク1に貯蔵されていた酸素溶存液体中の酸素が、窒素ガスとともに液体から分離、除去される。また、上記降圧部Cの圧力を、送出口3側の負荷圧よりも高めに設定しておけば、脱酸素液が送液管2を介して送出口3から外部に送ることができる。
また、符号19は液体中の溶存酸素量を測定する溶存酸素計である。
また、この実施形態では、送液手段として送液ポンプ4を用いているが、例えば、貯蔵タンク1の位置エネルギーや、水道圧など、処理対象となる酸素溶存液体に十分な圧力がある場合には、位置エネルギーを持ったタンクや、水道の蛇口などが送液手段となるもので、このときには上記送液ポンプ4を省略することができる。
送液管2内を通過する液体に、脱酸素用気体を合流させてから、昇圧部を利用して、窒素ガスを溶解させるのに必要な圧力まで積極的に昇圧しているので、酸素除去率を高めることができる。
また、液体を昇圧させるために、窒素ガスの圧力を必要としないので、窒素ガスの使用量が少なくて済む。
さらに、同一の送液管において、脱酸素用気体を合流させる工程と、液体を昇圧する工程とを連続的に処理できるようにし、連続的に溶存酸素を除去することができる。
但し、この計算においては、過飽和の窒素と液体中の溶存酸素との置換は無視している。
先ず、空気中の酸素濃度を20%とすると、大気下で溶解した酸素の分圧は0.2(atm)であり、従って、処理対象となる未処理水中の溶存酸素量は次の通りとなる。
なお、分圧とは、ドルトンの法則から、多成分から成る混合気体における圧力(全圧)に対し、ある成分気体のモル分率を乗じた物理量である。
上記の条件下での溶存酸素量は、
酸素分圧0.2(atm)×酸素溶解度0.031(cm3/cm3)×103(cm3)=6.2(cm3/L)である。
同様に未処理水中の窒素溶存濃度は、
窒素分圧0.8(atm)×窒素溶解度0.016(cm3/cm3)×103(cm3)=12.8(cm3/L)である。
よって、未処理水中の総気体溶解量は、
酸素溶解量6.2(cm3/L)+窒素溶解量12.8(cm3/L)=19.0(cm3/L)である。
窒素分圧3(atm)×窒素溶解量0.016(cm3/cm3)×103(cm3)=48.0(cm3/L)(大気圧換算)
従って、この0.2(MPaG)時の総気体溶解量は、
大気圧酸素溶解量6.2(cm3/L)+0.2(MPaG)時の窒素溶解量48.0(cm3/L)=54.2(cm3/L)である。
なお、「MPaG」とは、圧力計に表示されるゲージ圧を示したもので、絶対圧力から大気圧を差し引いた値である。そして、ここでは、絶対圧力「MPa」と区別している。
窒素ガスの添加後の昇圧はなく、この窒素添加水を大気圧まで減圧すると、酸素分圧が低下し、溶存酸素のうち、過飽和分の酸素は、過飽和分の添加窒素と共に水中から分離し排出される。この場合、脱酸素後の脱酸素水の溶存酸素量は次の通りとなる。
未処理水酸素溶存量6.2(cm3/L)×{大気圧下総気体溶解量19.0(cm3/L)÷0.2(MPaG)時の総気体溶解量54.2(cm3/L)}=2.17(cm3/L)である。
なお、以上の計算で用いた、温度20℃、大気圧1(atm)下での水に対する酸素溶解度、及び、0℃、大気圧1(atm)下での窒素密度は、平成20年11月30日発行の国立天文台編纂『理科年表』による。
上記のように、窒素ガスの添加後に昇圧を行なわなかった場合、すなわち、上記昇圧部Bを備えなかった場合には、脱酸素水の溶存酸素量は、2.889(mg/L)となる。
ここでは、図1に示す溶存酸素除去装置を用い、上記した窒素添加後に昇圧をしない場合と同条件で窒素ガスを合流させる。
従って、上記合流部Aにおける圧力は0.2(MPaG)で、この時の総気体溶解量は、
大気圧酸素溶解量6.2(cm3/L)+0.2(MPaG)時の窒素溶解量48.0(cm3/L)=54.2(cm3/L)である。但し、上記合流部Aでは、液体に対して過飽和溶解状態となる量の窒素ガスを合流させる。例えば、昇圧圧力1(MPaG)すなわち約11(atm)における飽和溶解量に近い量の窒素ガスを添加するようにする。
この窒素ガス量は、1(MPaG)における飽和溶解量に相当するので、0.2(MPaG)である昇圧部Bの上流側では、溶解しない窒素ガス気泡が存在している。
その後、昇圧部Bで上記液体を1(MPaG)まで昇圧すると、気体の溶解度が上がり、上記窒素ガスは液体中にほぼ全量溶解するが、このとき、液体中の総気体溶解量は、大気圧下の酸素溶解量と1(MPaG)における窒素溶解量との和で、以下の通りである。
窒素溶解量は、窒素分圧11(atm)×窒素溶解量0.016(cm3/cm3)×103(cm3)=176(cm3/L)(大気圧換算)である。
従って、1(MPaG)の昇圧部Bにおける総気体溶解量は、
大気圧酸素溶解量6.2(cm3/L)+1(MPaG)時の窒素溶解量176(cm3/L)=182.2(cm3/L)である。
上記のように、合流部Aの圧力を0.2(MPaG)と仮定すると、合流した窒素ガスは過飽和となり、気泡となって水中に存在するが、その後の昇圧によって窒素分圧が高まり完全に溶解する。
この場合の脱酸素水の溶存酸素量は次の通りである。
初期の酸素溶存量6.2(cm3/L)×{(大気圧下総気体溶解量19.0(cm3/L)÷1(MPaG)時の総気体溶解量182.2(cm3/L)}=0.647cm3/L
この酸素溶存量を質量濃度に換算すると、0.647cm3/L×酸素密度1.429mg/cm3×273/(273+20)=0.861(mg/L)となる。
従って、上記窒素ガス合流後に昇圧を実施しない場合の酸素溶存量2.889(mg/L)に比べて少なくなり、昇圧によって大幅に脱酸素量が上がることがわかる。
また、この結果は、表1に示した実験結果からも明らかである。
上記第1実施形態の溶存酸素除去装置を用いて、液体中の溶存酸素を除去する実験1を行なった。
実験1
酸素溶存液体として水道水を用い、図1に示す第1実施形態の装置を用いて脱酸素液として送出口3から排出させるための実験を行った。
なお、未処理の水道水は、含有酸素量が8.5(mg/L)、水温が20(℃)である。
このような水道水に対し、上記合流部Aでの窒素ガスの添加率を10(%Vol)、15(%Vol)、20(%Vol)の3種類のそれぞれについて、以下の同一の手順で実験を行なった。
また、合流部Aにおける圧力は、圧力計10による測定値が0.2(MPaG)となるように窒素ガスの供給源11を調整し、昇圧部Bでは、圧力計13で測定される圧力が1.0(MPaG)となるまで、昇圧ポンプ5と圧力調整手段12を調整して昇圧し、液体中に窒素ガスを完全に溶解させる。その後、降圧部Cで、0.1(MPaG)まで、降圧して、送出口3から脱酸素水を得た。そして、この脱酸素水中の溶存酸素量を、溶存酸素計19で測定した。
その実験結果を表1に示す。
なお、第2工程部IIにおいて、符号20は昇圧ポンプ、21は窒素ガスの供給源、22,23,28は、圧力計、25は脱気配管、26は絞り弁、27は排気口、29は圧力調整手段、30は溶存酸素計で、第2工程部IIには、脱酸素用気体としての窒素ガスを合流させる合流部A2と、昇圧部B2と、降圧部C2とを備えている。これら合流部A2、昇圧部B2、及び降圧部C2は、第1実施形態の合流部A、昇圧部B、及び降圧部Cと、同様の構成と機能を有し、各工程部I、IIの機能は、上記第1実施形態と同様である。
実験2
この時実験2も、上記実験1と同様の水道水を用い、窒素ガスの添加率を10(%Vol)、15(%Vol)、20(%Vol)の3種類のそれぞれについて、以下の手順で実験を行なった。
合流部A及びA2における圧力は、圧力計10及び22による測定値が0.2(MPaG)となるように窒素ガスの供給源11,21を調整し、昇圧部B及びB2では、圧力計13、23で測定される圧力が1.0(MPaG)となるまで、昇圧ポンプ5と圧力調整手段12、昇圧ポンプ20と圧力調整手段24を制御して昇圧して窒素ガスを溶解させる。その後、降圧部C及びC2では、0.1(MPaG)まで、降圧して、送出口3から脱酸素水を得た。
そして、送出口3か送出された脱酸素水中の溶存酸素量を、溶存酸素計30で測定した。
その実験結果を表2に示す。
また、上記実施形態では、脱酸素用気体として窒素を用いているが、脱酸素用気体としては窒素ガスに限らない。アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスのほか、液体中に溶解したときに、原水中の物質と化学反応するようなものでなければ、酸素以外、どのようなものでもかまわない。液体の種類によって、最適なガスを選択することができる。
なお、上記第1、第2実施形態では、合流部A,A2を、昇圧ポンプ5,20の下流側の送液管2に設けているが、上記合流部A,A2を昇圧ポンプ5,20に設けるようにしてもよい。例えば、ケーシングに脱酸素用気体の供給口を形成したポンプを用いることもできる。
また、ボイラー給水やビル給水などの配管の腐食防止にも利用できる。
4 送液ポンプ
5,20 昇圧ポンプ
12,24 圧力調整手段
14,29 圧力調整手段
15,25 脱気配管
17,27 排気口
A,A2 合流部
B,B2 昇圧部
C,C2 降圧部
Claims (5)
- 酸素が溶存する液体の送液管中に、過飽和となる量の脱酸素用気体を添加し、この脱酸素用気体を添加した液体を昇圧部へ供給し、この昇圧部で上記液体を昇圧し、その後、当該液体の圧力を降圧して、液体中から脱酸素用気体とともに酸素を除去する液体中の溶存酸素除去方法。
- 上記昇圧部で、上記液体を飽和溶解圧力以上に昇圧する請求項1に記載の液体中の溶存酸素除去方法。
- 酸素が溶存する液体を送液管へ導く送液手段と、送液管に設けた昇圧部と、この昇圧部の上流に脱酸素用気体を合流させる合流部と、上記昇圧部の下流において昇圧された液体を降圧する降圧部とを備え、脱酸素用気体を合流させて、液体中に脱酸素用気体を過飽和状態に保つとともに、この液体を昇圧した後に、上記降圧部で当該液体の圧力を降圧して液体中から脱酸素用気体とともに酸素を除去する液体中の溶存酸素除去装置。
- 上記昇圧部は、昇圧ポンプと、この昇圧ポンプの下流に送液管を介して接続した圧力調整手段とからなる請求項3記載の液体中の溶存酸素除去装置。
- 上記降圧部は、気液分離機能を備えた請求項3または4に記載の液体中の溶存酸素除去装置。
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