JP2010266464A - 検体の採取方法、検査方法、およびこれに用いられるスポイト、検体採取器具 - Google Patents

検体の採取方法、検査方法、およびこれに用いられるスポイト、検体採取器具 Download PDF

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Abstract

【課題】 衛生状態を適切に保つことが可能な検体の採取方法、検査方法およびこれに用いられるスポイト、検体採取器具を提供すること。
【解決手段】 検体貯蔵部Srとこの検体貯蔵部Srを封じる栓Stとを備える真空採血管Cnに対して、栓Stに中空針を穿刺することにより血液Blを注入する工程と、少なくともその一部が検体を収容するための検体収容空間10aとされており、かつ可撓性を有する弾性変形部12によって規定された容積変化空間10bを含んでいる内部空間10と、内部空間10に繋がる貫通孔21aを有しかつ栓Stに穿刺孔Hlを形成しえない構成とされた導入部21とを備えたスポイトAを用いるとともに、上記栓に形成された上記中空針の穿刺孔Hlに導入部21を貫通させることにより、真空採血管Cn内の血液Blの少なくとも一部を検体収容空間10aに導入する工程と、を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、たとえば真空採血管に採取された血液を検体とする検体の採取方法、検査方法、さらにこれに用いられるスポイトおよび検体採取器具に関する。
人体の病状や健康状態を把握するために、血液の含有成分を検査することが広く行われている。この検査を行うには、人体から検体となる血液をたとえば真空採血管に採取する(たとえば、特許文献1)。真空採血管に採取された血液は、たとえばヘモグロビン(以下Hb)やC反応タンパク(以下CRP)などを対象とした光学的手法による検査、あるいは白血球、赤血球、および血小板などを対象とした血球計数を行う検査がなされる。
図16は、真空採血管Cnに採取された血液(図示略)を検査装置へと移す前に事前処理を行うための栓抜装置の一例を示している(たとえば、特許文献2)。図示された栓抜装置Xは、検体貯蔵部Srが保持された真空採血管Cnから栓Stを引き抜くためのものである。栓抜装置Xは、ロッド91と1対のレバー92とを備えている。ロッド91は、たとえばゴム製の先端部91aを有しており、昇降自在とされている。1対のレバー92は、各々の先端に爪部92aが形成されており、昇降および開閉自在とされている。栓Stを引き抜くには、まずロッド91を下降させることにより、先端部91aを栓Stに押し付ける。次いで、開状態とされた1対のレバー92を閉状態とすることにより、爪部92aを栓Stの下端に係合させる。この状態で、ロッド91および1対のレバー92を上昇させる。これにより、栓Stと検体貯蔵部Srとを分離することができる。この後は、検体貯蔵部Srを上記検査装置にセットすることにより、検体としての血液の検査を行う。
しかしながら、真空採血管Cnの気密性を高めるために、栓Stは検体貯蔵部Srに対して強固に押し込まれている。このため、栓Stを引き抜くには大きな力が必要である。この引き抜き力の反動で、栓Stに付着していた血液が周囲に飛散するおそれがある。飛散した血液は、伝染病の感染源となる可能性があるため、適切に拭き取った上で消毒する
などの処置が必要となる。また、血液の飛散は、栓抜装置Xを用いた場合に限らず、たとえば人手によって栓Stを引き抜く場合であっても生じるおそれがある。このように、真空採血管Cnから栓Stを引き抜く作業は、周囲の衛生状態を保つ上で問題となっていた。
特開2005−224366号公報 特開平5−228379号公報
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、衛生状態を適切に保つことが可能な検体の採取方法、検査方法およびこれに用いられるスポイト、検体採取器具を提供することをその課題とする。
本発明の第1の側面によって提供される検体の採取方法は、検体貯蔵部とこの検体貯蔵部を封じる栓とを備える検体容器に対して、上記栓に中空針を穿刺することにより検体を注入する工程と、少なくともその一部が検体を収容するための検体収容空間とされており、かつ可撓性を有する弾性変形部によって規定された容積変化空間を含んでいる内部空間と、上記内部空間に繋がる貫通孔を有しかつ上記栓に穿刺孔を形成しえない構成とされた導入部と、を備えたスポイトを用いるとともに、上記栓に形成された上記中空針の穿刺孔に上記導入部を貫通させることにより、上記検体容器内の上記検体の少なくとも一部を上記検体収容空間に導入する工程と、を有することを特徴としている。
本発明の第2の側面によって提供される検体の検査方法は、請求項1に記載の検体の採取方法を行った後に、上記検体収容空間に収容された上記検体を対象とした検査を行う工程をさらに有することを特徴としている。
本発明の第3の側面によって提供されるスポイトは、少なくともその一部が検体を収容するための検体収容空間とされており、かつ可撓性を有する弾性変形部によって規定された容積変化空間を含んでいる内部空間と、上記内部空間に繋がる貫通孔を有する導入部と、を備えたスポイトであって、上記導入部は、検体容器の栓に穿刺孔を形成しえない構成とされており、かつ中空針によって上記栓に形成された穿刺孔に貫通させられることが可能とされていることを特徴としている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導入部は、その先端に向かうほど断面が小とされた部分を有している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導入部は、その先端周縁が曲面とされている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導入部は、その先端に上記貫通孔の軸方向に対して傾斜した傾斜面が形成されている。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導入部は、上記貫通孔の軸方向においてその周囲部よりも断面が大である大断面部を有している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導入部は、上記貫通孔の軸方向に直交する断面寸法が3mm以下である。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導入部は、その長さが30mm以下である。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導入部は、樹脂製である。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記樹脂は、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、またはナイロン系樹脂である。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記樹脂は、ポリアセタール、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12)をはじめとする自己潤滑性材料、またはシリコーンを混入させた材料である。
本発明の第4の側面によって提供される検体採取器具は、本発明の第3の側面によって提供されるスポイトと、略円筒形状とされており、かつその内部空間の中心軸上に上記導入部を収容するように上記スポイトと嵌合可能とされたガイドと、を備えることを特徴としている。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
本発明に係るスポイトおよび検体採取器具の一例を示す断面図である。 本発明に係るスポイトおよび検体採取器具の一例を示す分解斜視図である。 本発明に係るスポイトの一例に用いられる本体を示す一部断面正面図である。 図3のIV−IV線に沿う断面図である。 本発明に係るスポイトの一例に用いられるキャップを示す一部断面正面図である。 本発明に係る検体採取器具の一例に用いられるガイドを示す一部断面正面図である。 本発明に係る検体の検査方法の一例において、真空採血管に血液を注入する工程を示す断面図である。 本発明に係る検体の検査方法の一例において、真空採血管に検体採取器具を取り付ける工程を示す断面図である。 本発明に係る検体の検査方法の一例において、弾性変形部を押しつぶす工程を示す断面図である。 本発明に係る検体の検査方法の一例において、血液を採取する工程を示す断面図である。 本発明に係るスポイトの他の例に用いられるキャップを示す一部断面正面図である。 本発明に係るスポイトの他の例に用いられるキャップを示す一部断面正面図である。 本発明に係るスポイトの他の例に用いられるキャップを示す一部断面正面図である。 本発明に係るスポイトの他の例を示す断面図である。 本発明に係るスポイトの他の例を示す断面図である。 従来の検体の検査方法の一例に用いられる栓抜装置を示す概略図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1および図2は、本発明に係る検体採取器具の一例を示している。図示された検体採取器具Cは、スポイトA1およびガイドBを備えており、検体容器の一例である真空採血管Cnに貯蔵された検体としての血液Blを採取するために用いられるものである。真空採血管Cnは、本発明で言う検体容器の一例であり、検体貯蔵部Srと栓Stとを備えている。
スポイトA1は、本体1およびキャップ2を具備して構成されており、内部空間10を有している。本体1とキャップ2とは、図2に示すように、ねじ込み、嵌合、または接着などの手段により互いに連結されている。スポイトA1は、検体貯蔵部Srから栓Stを引き抜くこと無く血液Blを採取するためのものである。
本体1は、たとえば低密度ポリエチレンなどの半透明かつ比較的軟質な樹脂からなり、ホルダ11と弾性変形部12とを有している。ホルダ11は、略円筒形状であり、本体1とキャップ2とを連結するときに支持される部分である。このようなホルダ11は、本発明で言う高剛性部の一例である。ホルダ11には、図3および図4に示すように複数の凹
溝11aが形成されている。複数の凹溝11aは、ホルダ11の剛性を高めるためのものである。これにより、ホルダ11は、たとえば本体1をキャップ2にねじ込むための力が作用してもほとんど変形しないものとされている。
弾性変形部12は、ホルダ11に繋がる円筒状の部分とこれに繋がるドーム状の部分からなり、指で挟む程度の力で容易に弾性変形可能とされている。弾性変形部12は、内部空間10の一部である容積変化空間10bを規定している。弾性変形部12が変形させられることにより、容積変化空間10bの容積が変化する。
弾性変形部12には、凹溝12aが形成されている。凹溝12aは、弾性変形部12を一回りしており、検査に適した量の血液Blを採取するための目安として用いられる。本実施形態においては、図1および図3に示すように、内部空間10のうち凹溝12aよりも下方にある部分が、血液Blなどの検体を収容するための検体収容空間10aとされている。検体収容空間10aに収容可能な血液Blの量は、たとえば200〜300μlである。
ホルダ11の一端には、フランジ13が形成されている。フランジ13は、ホルダ11および弾性変形部12よりも直径が大とされており、本体1のキャップ2への取付深さを規定するための部分である。さらに、フランジ13は、採血作業の後に、本体1を遠心分離機に取り付けるために利用できる。この種の遠心分離機は、本体1を取り付けるための深穴状のポートを有している。このポートの縁にフランジ13を引っ掛けることにより、本体1が上記ポートの奥方に入り込んでしまうという不具合を回避することができる。
キャップ2は、たとえばポリプロプレンなどの比較的硬質な樹脂からなり、導入部21とフランジ22とが形成されている。導入部21は、栓Stに形成された穿刺孔Hlに進入させられる部分であり、キャップ2の導入部21以外の部分や本体1よりも細状とされている。導入部21には、貫通孔21aが形成されている。貫通孔21aは、検体貯蔵部Srの血液Blの一部を本体1内の内部空間10へと導入するための部分である。図5によく表れているように、導入部21は、その先端に向かうほど断面が小とされている。また、導入部21の先端周縁には、曲面21bが形成されている。本実施形態においては、導入部21は、その長さLが10mm程度、その外形Doが1mm程度、その内径Diが20μm程度とされている。なお、これらの寸法としては、長さLが30mm以下、外径Doが3mm以下、内径Diが10μm以上であることが望ましい。
フランジ22は、キャップ2のうち導入部21とは反対側の端部に形成されている。フランジ22は、ガイドBに対してキャップ2を嵌め込むために用いられる部分である。図2および図5に示すように、フランジ22には2つの突起22aが形成されている。2つの突起22aは、ガイドBの一部と係合させられる部分である。
ガイドBは、スポイトA1を真空採血管Cnに対して略同軸上に位置させるためのものであり、2つの円筒部61,62とこれらの円筒部61,62を連結する段差部63とを有している。図1に示すように、円筒部61は、真空採血管Cnの栓Stを収容するための部分である。図6に示すように、円筒部61には、複数の凹部61aが形成されている。複数の凹部61aは、円筒部61の剛性を高める効果を発揮する。また、各凹部61aの下端は、図1に示された真空採血管Cnとは異なる形状を有する他の真空採血管の取り付け深さを規定するために用いることができる。段差部63は、栓Stが当接させられる部分であり、真空採血管Cnの取り付け深さを規定するためのものである。ガイドBは、たとえばポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、ナイロン系樹脂などの比較的硬質な樹脂によって形成されている。このような材質によって形成されることにより、ガイドBは、スポイトA1や真空採血管Cnを取付けるときに作用する力によっては、ほとんど変形し
ない程度の剛性を有している。ガイドBは、本実施形態の形状のほかに、円筒部61に相当する部分が円筒部62から延びる複数本の枝部によって構成されたものであってもよい。これらの枝部の具体的形状は、たとえば円筒部62から遠ざかるほど互いの距離が大きくなる、いわゆる末広がり状とすることが好ましい。このような形状であれば、サイズが異なる複数種類の真空採血管Cnを適切に取り付けることができる。
円筒部62は、スポイトA1が取付けられる部分であり、円筒部61よりも小径とされている。図2に示すように円筒部62には、2つの切り欠き62aおよび2つのひさし部62bが形成されている。2つの切り欠き62aは、円筒部62の一端寄りに円筒部62の中心軸を挟んで形成されており、それぞれ略矩形状とされている。2つのひさし部62bは、それぞれ2つの切り欠き62aに隣接しており、円筒部62の端縁から円筒部62の中心軸に向かって延出している。
スポイトA1をガイドBに取付けるには、スポイトA1の2つの突起22aとガイドBの2つの切り欠き62aとの位置を合わせた状態で、スポイトA1の導入部21をガイドB内に進入させる。そして、2つの突起22aを2つの切り欠き62aにそれぞれ収容させた後に、スポイトA1をガイドBに対してその中心軸周りに回転させる。すると、スポイトA1の2つの突起22aとガイドBの2つのひさし部62bとが互いに係合する。これにより、スポイトA1をガイドBに取付けることができる。また、この取付けにより、図1に示すようにスポイトA1のフランジ22とガイドBの円筒部62の内面とが嵌合状態となる。この結果、円筒部61,62と導入部21とが同軸上に配置される。
次に、本発明に係る検体の検査方法の一例について、以下に説明する。
図7は、真空採血管Cnの検体貯蔵部Srに血液Blを注入する工程を示している。まず、室温に保たれた真空採血管Cnと採血針Ndを有する採血ホルダHdとを準備する。血液Blを採取すべき患者の腕(図示略)に駆血帯(図示略)をかける。そして、上記駆血帯がかけられた腕に、採血針Ndの上方部分を刺す。この状態で、採血ホルダHdを固定する。次いで、採血ホルダHdに真空採血管Cnを挿入する。この挿入により、採血針Ndの下方部分が栓Stの略中央に穿刺される。この結果、上記患者の腕から血液Blが真空採血管Cnの検体貯蔵部Srに流入し始める。検体貯蔵部Sr内に所望の量の血液Blを注入し終えたら、採血ホルダHdから真空採血管Cnを抜き取る。栓Stには、採血針Ndの穿刺によって穿刺孔Hlが形成される。ただし、栓Stは、一般的にゴムからなり、検体貯蔵部Srに圧入されている。このため、採血針Ndが引き抜かれると、穿刺孔Hlは直ちに閉じた状態となる。
次に、図8に示すように、真空採血管Cnに検体採取器具Cを取付ける。この取付けは、たとえば、真空採血管Cnを図7に示された状態とは天地逆とした状態で、栓StをホルダBの円筒部61内に挿入することにより行う。円筒部61内に栓Stの先端が進入すると、円筒部61と栓Stとが同軸上に配置されることとなる。これにより、スポイトA1の導入部21を栓Stの穿刺孔Hlの直下に位置させることができる。さらに、真空採血管Cnを下降させると、穿刺孔Hlを押し広げるようにして導入部21が進入する。そして、栓Stが段差部63に当接するまで栓Stを挿入し、図1に示すように導入部21が栓Stを貫通する状態とする。
次に、図9に示すように、指FgによってスポイトA1の弾性変形部12を押しつぶす。弾性変形部12は、比較的軟質な樹脂である低密度ポリエチレンからなるため、人力によって容易に押しつぶすことが可能である。弾性変形部12が押しつぶされると、容積変化空間10bの容積が減少する。この容積減少分に相当する空気が、真空採血管Cn内に放出される。
次に、図10に示すように、弾性変形部12を押しつぶしていた指Fgを開く。指Fgから作用していた力が解放されると、弾性変形部12は、押しつぶされる前の形に復元する。これにより、容積変化空間10bの容積が増大する。この結果、内部空間10の圧力が、検体貯蔵部Sr内の圧力に対して負圧状態となる。これにより、検体貯蔵部Srに貯蔵された血液Blの一部が導入部21を通してスポイトA1の内部空間10に導入される。検体収容空間10aに収容された血液Blが凹溝12aに達する程度まで、血液Blの導入を行う。以上より、真空採血管Cnから検査に必要な血液BlをスポイトA1内に採取することができる。
この後は、検体採取器具Cから真空採血管Cnを抜き取る。また、所望により、スポイトA1をガイドBから取り外してもよい。そして、スポイトA1に採取した血液Blを検査装置(図示略)に導入する。この検査装置においては、たとえばHbやCRPなどを対象とした光学的手法による検査や、白血球、赤血球、および血小板などの血球計数などの検査を行う。
次に、スポイトA1、検体採取器具C、およびこれらを用いた検体の検査方法の作用について説明する。
本実施形態によれば、栓Stに形成された穿刺孔HlにスポイトA1の導入部21を進入させることによって真空採血管Cnから血液Blを採取する。このため、真空採血管Cnから栓Stを全く引き抜くことなく、血液Blを採取することができる。これにより、栓Stを引き抜く際に懸念される血液Blの飛散が起こるおそれがない。したがって、真空採血管Cnから血液Blを採取する場所や、血液Blを検査するための検査装置などの衛生状態を適切に保つことができる。
真空採血管Cnから血液Blを採取するために用いられるスポイトA1は、たとえば真空採血管Cnから自動的に血液Blを採取する装置などに備えられた恒久的な部品とは異なり、人力のみで操作しうる比較的簡便な構造のものである。また、一般的な樹脂材料であるポリエチレン、ポリプロピレンによって形成されているため、比較的安価に製造することができる。したがって、スポイトA1は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。ディスポーザブルタイプであれば、使用するごとに洗浄や殺菌などを行う必要がなく便利である。また、真空採血管Cnから血液Blを採取する場所や、血液Blを検査するための検査装置などの衛生状態を適切な状態に保つのに都合がよい。
スポイトA1の導入部21は、その先端に曲面21bが形成されている。これにより、導入部21が栓Stの穿刺孔Hlに押し付けられたときに、穿刺孔Hlの端縁に対して導入部21の先端が不当に引っ掛かることがない。したがって、導入部21の穿刺孔Hlへの進入をスムースに開始することができる。また、導入部21は、全体的に先端に向かうほど断面が小とされている。これにより、導入部21は穿刺孔Hlに進入させられながら、穿刺孔Hlを押し広げる作用を発揮する。これにより、比較的細長状である導入部21を穿刺孔Hlに継続的かつスムースに進入させることができる。
導入部21は、ポリプロピレンによって形成されていることにより、比較的硬質とされている。このような導入部21は、ゴム製であることが一般的である栓Stの穿刺孔Hlに進入させられても不意に折損してしまうなどのおそれが小さい。また、導入部21の外形を3mm以下とすることは、導入部21のスムースな進入と折損防止とを両立させるのに適している。また、導入部21の長さを30mm以下とすれば、人力による進入動作によって導入部21が座屈することを適切に回避できる。さらに、導入部21の先端に曲面
21bが形成されていること、およびキャップ2が樹脂であるポリプロピレンによって形成されていることは、導入部21の先端によってスポイトA1や検体採取器具Cの使用者の人体を不当に傷つけてしまうことを防止するのに適している。導入部21の材料はポリプロピレンのほかに、たとえばゴム製である栓Stの穿刺孔Hlに対する導入に適した材料であればよい。このような材料として、ポリスチレン系樹脂、ナイロン系樹脂を用いてもよい。このような材料を用いれば、導入部21を比較的硬質なものとすることができる。また、導入部21を、自己潤滑性材料(たとえば、ポリアセタール、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12など))、あるいはシリコーンを混入させた材料を用いて形成してもよい。このような材料を用いれば、栓Stに対する潤滑性を高めることができる。さらに、導入部21に対して、コーティング、熱処理、または赤外線照射などの手法を用いて表面改質を行ってもよい。
スポイトA1を本体1およびキャップ2の2部品が結合された構成とすることにより、導入部21を比較的硬質としつつ、弾性変形部12を比較的軟質とすることが可能である。これにより、導入部21をゴム製の栓Stの穿刺孔Hlにスムースに進入させることを可能としつつ、弾性変形部12を指Fgによって押しつぶす程度を容易に加減することができる。このような効果を発揮させる他の例として、スポイトA1を樹脂などによって一体品として形成してもよい。この場合、導入部21に相当する部分を厚肉とし、弾性変形部12に相当する部分を薄肉とする。
導入部21を形成するポリプロピレンは、疎水性および撥水性が比較的高い材料である。これにより、導入部21に付着した血液Blなどの検体を容易に液切れさせることができる。したがって、検体の飛散および液ダレを防止するのに適している。
スポイトA1がガイドBに取り付けられた構成の検体採取器具Cを用いることにより、スポイトA1の導入部21を栓Stの穿刺孔Hlと略同軸上に位置させることが可能である。これにより、目視によって穿刺孔Hlと導入部21との位置合わせなどを行うことなく、導入部21を穿刺孔Hlに進入させることが可能である。また、ガイドBの円筒部61の内面に沿って栓Stが進行させられることとなる。この結果、導入部21と穿刺孔Hlとが互いに大きく傾いてしまうことを適切に回避することが可能である。
ホルダ11は、複数の凹溝11aが形成されていることにより比較的高剛性とされている。これは、本体1とキャップ2とを合体させるときに作用する力や、弾性変形部12を押しつぶすときに作用する力などによってホルダ11が不当に変形することを回避するのに適している。また、本体1は、複数の凹溝11aを形成する領域を限定することにより、比較的高剛性であるホルダ11と、可撓性を有する弾性変形部12との双方を備えた一体構造となっている。これは、スポイトA1を構成する部品の削減を図るのに有利である。
さらに、血液Blを採取する前に、あらかじめ本体1内に分離剤を入れておく方法としてもよい。この分離剤は、血液Blを血漿と血球成分とに分離することを促進するためのものである。内部空間10において分離剤と混合された血液Blがたとえば遠心分離機にかけられると、検体収容空間10aから容積変化空間10bに向かって、血球成分、分離剤、血漿の順に分離される。この状態で、弾性変形部12を指でつまむと、血漿、分離剤、血球成分の順で導入部21へと向かわされる。このとき、内部空間10のうち凹溝11aが形成された区間にある部分は、弾性変形部10aよりも断面が小である。このため、凹溝11aが形成された区間に分離剤が到達すると、分離剤の本体1中心軸方向寸法が伸張される。これにより、内部空間10において血球成分が分離剤を追い越して血漿と混合してしまうことを防止することができる。さらに、分離剤に凝固促進剤を加えた場合は、血液Blは、血清と凝固因子であるたんぱく質とに分離される。この場合においても、内
部空間10においてたんぱく質が分離剤を追い越して血清と混合してしまうことを防止することができる。
この他には、本体1内にガラス繊維を挿入しておく方法としてもよい。ガラス繊維は、血液中の赤血球を吸着しやすいという性質を有する。これにより、本体1内の血液Blを検査のために吐出するときに、赤血球が吐出されることを抑制することができる。たとえばヘマトクリット値が高い検体など、赤血球が多い検体は、生化学検査において誤差を生じるおそれが大きい。ガラス繊維を挿入しておくことにより、赤血球の影響を小さくすることが可能であり、検査の精度を高めることができる。
図11〜図15は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
図11は、スポイトA1の導入部21の他の例を示している。同図に示された導入部21には、大断面部21dが形成されている点が、上述した実施形態と異なっている。大断面部21dは、貫通孔21aの中心軸方向、すなわち導入部21の長手方向においてその前後部分よりも断面が大とされた部分である。さらに、本実施形態の大断面部21dは、導入部21の先端寄りの端面が、導入部21の長手方向に直角な面とされている。また、大断面部21dは、導入部21の先端に向かうほどその断面が大とされている。
このような実施形態によれば、導入部21を栓Stの穿刺孔Hlに進入させる際に、栓Stと大断面部21dの先端面とが当接することにより、大きな抵抗力が発生する。この抵抗力によって、導入部21が穿刺孔Hlに進入しすぎることを防止することができる。また、大断面部21dが導入部21の先端に向かうほど断面が大であることは、大断面部21dによって大きな抵抗力を生じさせるのに適している。このような構成は、検体採取器具Cによって血液Blの採取する場合のみに限らず、スポイトA1のみを用いて血液Blを採取する場合においても、導入部21が進入しすぎることを防止する効果を期待できる。
図12は、導入部21のさらに他の例を示している。同図に示された導入部21には、図11に示されたものとは異なる大断面部21dが形成されている。本実施形態の大断面部21dは、断面半円形状の環状形状とされている。このような構成は、導入部21の進入深さを目視によって管理する場合に、導入部21の適切な進入深さの目安として用いることができる。また、穿刺孔Hl内に大断面部21dを侵入させると、穿刺孔Hlと大断面部21とが高い圧力で接することとなる。これにより、穿刺孔Hlと導入部21との間に不当な隙間が生じることを回避可能であり、血液Blが漏れ出すことを防止することができる。
図13は、導入部21のさらに他の例を示している。同図に示された導入部21は、その先端に傾斜面21cが形成されている点が、上述したいずれの実施形態とも異なっている。傾斜面21cは、導入部21の長手方向に対して傾斜させられた面である。このような実施形態によっても、導入部21を栓Stの穿刺孔Hlにスムースに進入させることができる。
図14は、本発明に係るスポイトの他の例を示している。本実施形態のスポイトA2は、本体1とキャップ2との接触状態が上述した実施形態と異なっている。具体的には、本体1のうちフランジ13より先端寄りにある部分の長さが上記実施形態よりも長いものとされている。これにより、本体1の先端は、キャップ2の内面に接触している。この結果、本体1は、キャップ2に対して本体1の先端およびフランジ13の2箇所において接触することとなる。本体1とキャップ2との接触部分を増やすことにより、スポイトA2の
機密状態をさらに保ちやすくすることが可能である。これは、血液の飛沫を回避するのに適しており、感染防止に有利である。
図15は、本発明に係るスポイトのさらに他の例を示している。本実施形態のスポイトA3は、キャップ2の構成が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、キャップ2には、内リブ23が設けられている。内リブ23は、導入部21側からフランジ22側に延びる円筒状であり、外側円筒部との間に本体1の先端部分が嵌合可能な隙間を形成している。この隙間に本体1の先端部分を嵌め込むことにより、本体1の先端部分と内リブ23およびキャップ2の外側円筒部とが互いに圧着することとなる。これにより、スポイトA3の機密状態を高めることができる。また、スポイト2には、環状突起24が形成されている。環状突起24は、フランジ13に対向する部分に配置されている。本体1がキャップ2に嵌め込まれると、フランジ13が環状突起24を押しつぶす格好となる。これにより、押しつぶされた環状突起24が、シール材の役割を果たす。したがって、スポイトA3の機密性をさらに高めるのに好適である。
本発明に係る検体の検査方法、およびスポイト、検体採取器具は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る検体の検査方法、およびスポイト、検体採取器具の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
本発明に係るスポイトは、本体とキャップとからなるものに限定されず、一体構造のものや、上述した本体が互いに別部品とされたホルダと弾性変形部とからなるものであってもよい。上述した実施形態においては、容積変化空間に検体収容空間が含まれた構成となっているが、これに限定されず、検体収容空間と容積変化空間がたとえば絞りを介して独立して設けられた構成であってもよい。スポイトの材質は、樹脂製であることが好ましいが、これに限定されない。本発明で言う検体容器は、真空採血管に限定されず、血液をはじめとする検体を内部に蓄えるためのものを広く指す。本発明で言う高剛性部は、凹溝を形成することによって構成されたものに限定されず、たとえば厚さあるいは材質などを適切に設定することにより、弾性変形部よりも剛性が高い部分とされているものであればよい。
本発明に係る検体の検査方法は、スポイトとガイドとが組み合わされた検体採取器具を用いるものに限定されず、たとえばスポイトのみを用いて真空採血管などの検体容器から検体を採取する構成であってもよい。本発明で言う検体とは、血液に限定されず、様々な検査の対象となる試料液を含む概念である。

Claims (13)

  1. 検体貯蔵部とこの検体貯蔵部を封じる栓とを備える検体容器に対して、上記栓に中空針を穿刺することにより検体を注入する工程と、
    少なくともその一部が検体を収容するための検体収容空間とされており、かつ可撓性を有する弾性変形部によって規定された容積変化空間を含んでいる内部空間と、上記内部空間に繋がる貫通孔を有しかつ上記栓に穿刺孔を形成しえない構成とされた導入部と、を備えたスポイトを用いるとともに、上記栓に形成された上記中空針の穿刺孔に上記導入部を貫通させることにより、上記検体容器内の上記検体の少なくとも一部を上記検体収容空間に導入する工程と、を有することを特徴とする、検体の採取方法。
  2. 請求項1に記載の検体の採取方法を行った後に、
    上記検体収容空間に収容された上記検体を対象とした検査を行う工程をさらに有することを特徴とする、検体の検査方法。
  3. 少なくともその一部が検体を収容するための検体収容空間とされており、かつ可撓性を有する弾性変形部によって規定された容積変化空間を含んでいる内部空間と、
    上記内部空間に繋がる貫通孔を有する導入部と、を備えたスポイトであって、
    上記導入部は、検体容器の栓に穿刺孔を形成しえない構成とされており、かつ中空針によって上記栓に形成された穿刺孔に貫通させられることが可能とされていることを特徴とする、スポイト。
  4. 上記導入部は、その先端に向かうほど断面が小とされた部分を有している、請求項3に記載のスポイト。
  5. 上記導入部は、その先端周縁が曲面とされている、請求項3または4に記載のスポイト。
  6. 上記導入部は、その先端に上記貫通孔の軸方向に対して傾斜した傾斜面が形成されている、請求項3ないし5のいずれかに記載のスポイト。
  7. 上記導入部は、上記貫通孔の軸方向においてその周囲部よりも断面が大である大断面部を有している、請求項3ないし6のいずれかに記載のスポイト。
  8. 上記導入部は、上記貫通孔の軸方向に直交する断面寸法が3mm以下である、請求項3ないし7のいずれかに記載のスポイト。
  9. 上記導入部は、その長さが30mm以下である、請求項3ないし8のいずれかに記載のスポイト。
  10. 上記導入部は、樹脂製である、請求項3ないし9のいずれかに記載のスポイト。
  11. 上記樹脂は、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、またはナイロン系樹脂である、請求項10に記載のスポイト。
  12. 上記樹脂は、ポリアセタール、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12)をはじめとする自己潤滑性材料、またはシリコーンを混入させた材料である、請求項10に記載のスポイト。
  13. 請求項3ないし12のいずれかに記載のスポイトと、
    略円筒形状とされており、かつその内部空間の中心軸上に上記導入部を収容するように上記スポイトと嵌合可能とされたガイドと、を備えることを特徴とする、検体採取器具。
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