JP2010262303A - 光学素子、液晶装置、電子機器 - Google Patents

光学素子、液晶装置、電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】ワイヤーグリッドの製造を容易にし、優れた光学特性を備える光学素子を提供するとともに、製造プロセスの簡略化及び液晶装置の高機能化を実現可能とする液晶装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】本発明は、入射光の一部を反射するとともに入射光の一部を透過させる光学素子1であって、平面的に区画された複数の第1の領域6Aと複数の第2の領域6Bとを有する基板6を備え、第1の領域6Aに、複数の微細ワイヤー2aからなる第1のグリッドG1が形成され、第2の領域6Bには、複数の溝部4Aを有する回折機能部4と、複数の微細ワイヤー2aからなる第2のグリッドG2とが積層して形成され、溝部4Aは、微細ワイヤー2a間に対応する領域に形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学素子、液晶装置、電子機器に関するものである。
偏光分離機能を備える光学素子の1つとして、ワイヤーグリッド偏光素子(以下、単に偏光素子と呼ぶこともある。)が知られている。これは、光の波長より短いピッチで並べられた多数の導体の微細ワイヤーを持つ素子であり、入射光のうち微細ワイヤーに平行な偏光軸を有する成分(TE)を反射するとともに、微細ワイヤーに垂直な偏光軸を有する成分(TM)を透過する性質を持つ。
このようなワイヤーグリッド偏光素子を半透過反射型の液晶装置に内蔵する場合、1つの画素領域内のうち反射表示領域と対応する領域に、ワイヤーグリッドと散乱層が積層された構造となる。このワイヤーグリッドの表面は、反射表示において良好な表示特性を得ることを目的として、光を散乱させながら反射するために凹凸形状とされている。ワイヤーグリッドの表面が平坦であると、正反射方向でのみ極端に輝度が大きくなる。すると、視認方向での輝度が低下して画像が見え難くなってしまうからである(例えば、特許文献1)。
上記したようなワイヤーグリッドは、反射表示領域に対応する内側の表面が凹凸形状とされた樹脂層上に形成される。ワイヤーグリッドを形成するには、まず、図22(a),(b)に示すような樹脂膜511の凹凸面511A上に、アルミニウムなどの光反射性を有する金属膜512を真空成膜する。金属膜512は、膜厚が約0.1μmで成膜され、その表面は樹脂膜511の表面形状を反映して凹凸形状となり、凸部512a間のピッチPが約10μmとなっている。
続いて、このような凹凸形状を呈する金属膜512上に感光性のレジスト膜513を成膜し、当該レジスト膜513に対して2光束干渉露光及び現像を行うことによって得られたレジストパターンを介して、金属膜512をドライエッチングする。このようにして、多数の微細ワイヤーを形成し、ワイヤーグリッドを形成する。
ところが、図22(a)に示すように金属膜512の凹凸面512Aにおける凹凸の段差Hは約1μm程度あり、この凹凸面512A上にレジストをスピンコートすると、図23に示すようにその殆どが凹部512b内に入り込み、凸部512a上にはあまり塗布されないため、均一な厚さでレジスト膜513を成膜することができない。この場合、レジスト膜513に対する露光量が場所(凸部512a、凹部512b)によって異なってしまい、均一な形状でレジストパターンを得ることができない。つまり、図23に示すレジスト膜513に対して露光を行ったとしても、凸部512a上にはレジスト膜513が塗布されていないため、図24に示すように、凸部512a上に所望のレジストパターンを形成することができない。
さらに図25に、図24に示すレジストパターンをマスクにして金属膜512をエッチングした結果を示す。同図によれば、一方、樹脂膜511の凹部511b上の金属膜512は良好にエッチングされているのに対して、凸部511a上の金属膜512はほとんど除去されてしまい樹脂膜511の凹凸面511Aが露出している。このように、既存の樹脂膜511の凹凸面511A上にワイヤーグリッドを形成することは、上記したようなプロセス上の問題から困難であることが明らかである。
一方、液晶装置の性能面からも問題がある。図22に示したように、樹脂膜511(金属膜512)の凹凸の段差Hは1μm程度であり、凹凸形状により液晶層の厚みにバラツキが出てしまう。通常、液晶層の厚みが約5μm程度で設計されることから、液晶層の厚みは平面内で2割程度のバラツキが生じることになる。これは、画質のコントラストを低減させる要因となる。
特表2002−520677号公報
このような課題に対して、本願発明者は以下に示すような提案を既にしている(特願2007−151225号公報)。これは、基板上にワイヤーグリッドを備え、反射光を散乱させる機能を回折機能層で実現しようとするものである。
具体的な構造を図26及び図27に示す。図27は、図26(a),(b)の断面図である。図26(a)に示すように、基板6上に可視光の波長よりも周期の大きい構造(回折機能層614を設け、その表面に、図26(b)に示すようなグリッド615を設けた構造となっている。この構造によれば、図27に示すように、回折機能層614の段差部616の高さg(高低差)を、0.1μm程度に低減することができる。従来、1μm程度あった段差を1/10程度にすることが可能となり、これによって、グリッド615を形成する際、レジスト塗布時に生じる厚みのバラツキが大幅に軽減され、均一なレジストパターンを得ることができる。同時に、液晶層の厚みのバラツキも低減されるため、コントラストの低下を防止することが可能となる。
上記構造によって、グリッド615が形成される回折機能層614の表面の段差(段差部616の高低差)を、従来の構造よりも大幅に低減することができた。ところが、グリッド615の形成工程において、段差部616の近傍でレジストパターンRの底付きが得られず、グリッド615の形成不良が生じてしまう場合がある。
図28に、上記回折機能層614(段差部616の高低差が約0.1μm)上に、レジストをスピンコートした様子を示す。そして、このレジスト膜617に対して2光束干渉露光を行い、得られたレジストパターンを図29に示す。
図29は、露光後の図28におけるレジスト膜の一部を示す断面図である。図29に示すように、回折機能層614の略全面にレジストパターンRが形成されているように見えるが、段差部616の近傍などではレジスト膜617の底部において一部露光量が足りず、底付きしていない部分が発生することがある。
これは、レジスト表面の段差形状によって露光光の位相変調が生じ、面内の強度分布が生じることが原因と考えられる。先行発明においては、従来よりも段差が大幅に低減されるため、レジスト塗布時に段差を埋めて平坦にレジストを塗布できれば問題はないが、レジスト表面に段差が生じると底付きしない部分が発生してしまう。本願は、先行発明をさらに改良し、製造上の問題点も解決したものである。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、ワイヤーグリッドの製造を容易にし、優れた光学特性を備える光学素子を提供するとともに、製造プロセスの簡略化及び液晶装置の高機能化を実現可能とする液晶装置及び電子機器を提供することを目的としている。
本発明の光学素子は、入射光の一部を反射するとともに前記入射光の一部を透過させる光学素子であって、平面的に区画された複数の第1の領域と複数の第2の領域とを有する基板と、前記第1の領域は、前記基板上に設けられた互いに平行な複数の金属線を備え、前記第2の領域は、前記基板上に設けられ且つ回折機能材料によって形成された互いに平行な複数の凸条部と、前記複数の凸条部が前記基板に当接する面と対向する面に形成される金属線とを備える、ことを特徴とする。
また、前記回折機能材料が、SiO、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれかである構成としてもよい。
また、前記第1の領域および前記第2の領域が、前記基板上でランダムに配置されている構成としてもよい。
光学素子の製造方法は、上記課題を解決するために、入射光の一部を反射するとともに前記入射光の一部を透過させる光学素子であって、平面的に区画された複数の第1の領域と複数の第2の領域とを有する基板を備え、第1の領域は、基板上に、1次元の第1のグリッドが形成され、第2の領域は、基板上に、複数の平行の溝部を有する回折機能部が形成され、回折機能部上の溝部がない領域に、第2のグリッドが形成されていることを特徴とする。
これによれば、第1の領域と第2の領域とで屈折率差が生じるとともに、第2の領域内でも、複数の溝部とこれら溝部同士の間において屈折率差が生じることとなり、入射光の波長に対する反射光の高い拡散効果を得ることができる。また、グリッドに対する溝部の深さを調整することで反射光の拡散効果を調整することが可能である。
また、溝部が、回折機能部の厚さ方向を基板まで貫通していることが好ましい。
これによれば、第1の領域と第2の領域との屈折率差を大きくすることができる。
また、複数の第1の領域と複数の第2の領域とが平面的に区画された基板の、第1の領域に、1次元の第1のグリッドを形成する工程と、基板上に回折機能材料層を形成する工程と、第2の領域の回折機能材料層上に、第2のグリッドを形成する工程と、回折機能材料層を薄膜化して、前記第1の領域で基板表面を露出させる工程と、を有することを特徴とする。
これによれば、段差のない平坦面を有する基板上に第1のグリッドを形成し、同じく段差のない平坦面を有する回折機能材料層上に第2のグリッドを形成するため、各グリッドの製造過程におけるレジストの露光量の面内均一性が向上する。従来、レジストの表面に生じていた凹凸によってレジストの露光不足が生じてしまっていたが、ここでは、基板面からの高さが異なる第1のグリッドと第2のグリッドとの形成工程を分けて行うため、レジストの表面が平坦面となり露光不足をなくすことができる。これにより、所望のレジストパターンを形成することができ、光学特性(光の偏光分離性)の良好な微細ワイヤー(第1のグリッド及び第2のグリッド)を確実に得ることができる。
また、第1の領域と第2の領域における回折機能材料層、つまり回折機能材料層の全体をエッチングする。これにより、第1の領域の回折機能材料層が除去されて第1のグリッドが露出するとともに、第2の領域の、微細ワイヤー間に対応する領域が部分的に除去されて溝部が形成される。このようにして、回折機能部が得られる。
光学素子の製造方法は、上記課題を解決するために、複数の第1の領域と複数の第2の領域とが平面的に区画された基板の、複数の第1の領域に、複数の微細ワイヤーからなる第1のグリッドを複数形成する工程と、複数の第1のグリッドを覆うようにして回折機能材料層を形成する工程と、第2の領域の前記回折機能材料層を薄膜化する工程と、第2の領域の回折機能材料層上に、複数の微細ワイヤーからなる第2のグリッドを複数形成する工程と、第1の領域と第2の領域における回折機能材料層にエッチングを施して、第1のグリッドを露出させる工程と、を有することを特徴とする。
これによれば、段差のない平坦面を有する基板上に第1のグリッドを形成し、同じく段差のない平坦面を有する回折機能材料層上に第2のグリッドを形成するため、各グリッドの製造過程におけるレジストの露光量の面内均一性が向上する。従来、レジストの表面に生じていた凹凸によってレジストの露光不足が生じてしまっていたが、本発明では、基板面からの高さが異なる第1のグリッドと第2のグリッドとの形成工程を分けて行うため、レジストの表面が平坦面となり露光不足をなくすことができる。これにより、所望のレジストパターンを形成することができ、光学特性(光の偏光分離性)の良好な微細ワイヤー(第1のグリッド及び第2のグリッド)を確実に得ることができる。
また、第1の領域と第2の領域における回折機能材料層、つまり回折機能材料層の全体をエッチングすることで、第1の領域の回折機能材料層が除去されて第1のグリッドが露出するとともに、第2の領域の、微細ワイヤー間に対応する領域が部分的に除去されて溝部が形成される。
また、回折機能材料層を部分的に薄くする工程において溝部の深さを調節し、入射光の波長に対する反射光の拡散効果を調整することができる。
また、回折機能材料層と、第1のグリッド及び第2のグリッドとは、エッチング選択比の異なる材料から構成されていることが好ましい。
本発明によれば、回折機能材料層を精度良くエッチングすることができる。
また、第1のグリッドを形成する工程又は第2のグリッドを形成する工程の直前に、グリッドの下地となる下地層を形成することが好ましい。
本発明によれば、下地層は必要に応じて形成されるものであり、各グリッドと、回折機能部あるいは基板と、の間の密着性を、下地層を介すことによって向上させることができる。
また、第1のグリッド及び第2のグリッドを形成する工程が、金属膜と、反射防止膜とを積層して形成する工程と、金属膜と反射防止膜とをグリッド状にパターニングする工程と、を有することが好ましい。
これによれば、第1のグリッド及び第2のグリッドを形成する際、金属膜とレジスト膜とを積層し、当該レジスト膜に対して微細ワイヤーの潜像を露光によりパターン形成するが、レジスト膜の下層に反射防止膜が形成されていることにより、レーザー光が金属膜によって反射され露光が不完全となる不具合が発生することを防止することができる。これにより、所望とする微細ワイヤーを確実に精度よく形成することができる。
本発明の液晶装置は、上記課題を解決するために、光学素子を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、光散乱機能に優れた光学素子を具備した液晶装置を提供できる。
また、一対の基板間に液晶層を挟持してなり、一対の基板のうち少なくとも一方の基板の液晶層側に、光学素子が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、内蔵型の反射偏光層を備えた液晶装置を構成できる。
また、1つの画素で透過表示と反射表示とが可能な半透過反射型の液晶装置であって、光学素子を、反射表示を行うための反射層として備えたことが好ましい。
本発明によれば、透過表示と反射表示の双方で高コントラストの表示が得られる半透過反射型の液晶装置を提供できる。
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上記液晶装置を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、表示品質及び信頼性に優れる表示部ないし光変調手段を備えた電子機器を提供することができる。
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上記光学素子を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、光学特性及び信頼性に優れた偏光光学系を備える電子機器を実現できる。
(a)第1の実施形態に係る光学素子の基板を示す斜視図、(b)回折機能部の形状を示す斜視図、(c)は、(b)にグリッドを設けた状態の斜視図。 (a)の光学素子のX−Z平面に沿った断面図、(b)は、光学素子の一部を拡大した断面図。 (a)は、回折機能部の機能を示す図、(b)は、グリッドG1,G2の機能を示す図。 光学素子における単位パターンの配置の例を示す図。 回折機能層の反射光強度分布の一例を示す図(基板面での回転角度0°〜180°)。 回折機能層の反射光強度分布の一例を示す図(基板面での回転角度210°〜360°)。 光学素子の反射特性評価に用いた測定系の概略構成図。 第1の実施形態に係る光学素子の製造方法のフローチャート図。 第1の実施形態に係る偏光素子の製造工程における断面図。 第2の実施形態に係る光学素子の概略構成を示す断面図。 第2の実施形態に係る光学素子の製造方法を示すフローチャート図。 第2の実施形態に係る光学素子の製造工程における断面図。 第3の実施形態に係る光学素子の概略構成を示す断面図。 第4の実施形態に係る光学素子の概略構成を示す断面図。 第5の実施形態に係る光学素子の概略構成を示す断面図。 本発明に係る液晶装置を構成するマトリクス状に形成された複数のサブ画素領域の等価回路図。 (a)は、本実施形態の液晶装置の任意の1サブ画素領域における平面図、(b)は、液晶装置を構成する各光学素子の光学軸の配置関係を示す説明図。 図17(a)のB−B'線に沿う部分断面図。 プロジェクタの概略構成を示す模式図。 プロジェクタの変形例を示す模式図。 本発明に係る電子機器の一例を示す斜視図。 従来のワイヤーグリッドの形成過程における金属膜を示す斜視図。 図22に示す従来の金属膜上でのレジストの塗布状態を示す断面図。 図23に示すレジストに対して露光を行った後の状態を示す斜視図。 図24に示すレジストパターンをもとに金属膜をエッチングした後の状態を示す斜視図。 (a)は、従来の光学素子の斜視図、(b)は、回折機能部の概略構成を示す斜視図。 図26(a)の光学素子のX−Z平面に沿った断面図。 図26及び図27に示す回折構造体上にレジストを塗布した後の状態を示す斜視図。 図28のレジストに対して露光を行った後のレジストパターンを示す断面図。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
(第1の実施形態の光学素子)
図1(a)は、基板の区画領域を示す(第1の領域及び第2の領域)を示す斜視図、図1(b)は、回折機能部の形状を示す斜視図、図1(c)は、(b)にグリッドを設けた状態の斜視図である。図2(a)は、図1(c)の光学素子のX−Z平面に沿った断面図であって、図2(b)は、光学素子1の一部を拡大した断面図である。なお、図1では、実際にはXY平面より広い範囲にわたって同様の構造が連続している。
本実施形態の光学素子1は、図1及び図2に示すように、ガラス等からなる基板6と、基板6上に平面的に配置された複数の回折機能部4及び複数の第1のグリッドG1と、各回折機能部4上に配置された複数の第2のグリッドG2とを有している。
基板6は、図1(a)に示すように、ガラスなどの透光性を有する材料から構成されており、複数の第1の領域6Aと複数の第2の領域6Bとが平面的に区画されている。第1の領域6A及び第2の領域6Bの配置はランダム(不規則)であり、その形状は、正方形か、又は当該正方形を縦横に不規則に繋ぎ合わせた形状となっている。ここで、第1の領域6A及び第2の領域6Bの最小寸法(すなわち上記正方形の1辺の長さ)δ(図2(a))は、入射光の波長λより長く、可視光に用いる場合には例えば2μmとすることができる。
基板6の各第1の領域6Aには、互いに平行な多数の微細ワイヤー2aから構成される第1のグリッドG1がそれぞれ配置されている。微細ワイヤー2aは、アルミニウムからなり、第1の領域6Aの外周の直線の1つと平行に配置されている。このような微細ワイヤー2aの配置ピッチdは、入射光の波長λより短くなっており、例えば140nmとすることができる。なお、図1においては、説明の便宜上、微細ワイヤー2aの本数を実際より少なく描いている。
基板6の各第2の領域6Bには、回折機能部4と第2のグリッドG2が基板面から順に積層して形成されている。回折機能部4は、第2の領域6Bの外周の直線の1つと平行する複数の溝部4Aを有する。溝部4Aの両側に配置され当該溝部4Aを構成している凸条部4Bは、第1のグリッドG1よりも高さを有し、その上面4bが第1のグリッドG1の微細ワイヤー2aの上面1aよりも基板面から遠ざかっている。各凸条部4Bの上面4bは、基板面に対して平行な面とされていて、短手方向が微細ワイヤー2aの幅と等しい。また、溝部4A(凸条部4B)の配置ピッチは、第1のグリッドG1の微細ワイヤー2aのピッチと等しく、例えば140nmとなっている。
このような回折機能部4の溝部4Aと凸条部4Bとの境界には、段差部8が設けられている。段差部8の高さgは、入射光の波長より小さくなるように設定されている。また、段差部8は、基板面に対して略垂直となっている。
第2のグリッドG2は、回折機能部4上に設けられ、上記第1のグリッドG1と同様、互いに平行な多数の微細ワイヤー2aから構成されている。これら多数の微細ワイヤー2aは、回折機能部4の各凸条部4B上にそれぞれ形成されており、第2のグリッドG2と第1のグリッドG1とは基板面からの高さを異ならせてある。
図2(b)に示すように、第1のグリッドG1及び第2のグリッドG2は、SiO又はSiN等からなる封止層3によって封止されており、凸条部4B、微細ワイヤー2a、及び封止層3によって囲まれた空間は真空状態となっている。
第1のグリッドG1及び第2のグリッドG2の下層には、基板6、回折機能部4、グリッドG1,G2のいずれとも異なる材料からなる下地層(不図示)を形成してもよい。このとき、基板6と下地層との間の密着強度、及び第1のグリッドG1と下地層との間の密着強度は、基板6と第1のグリッドG1との間の密着強度より高いことが好ましい。また、回折機能部4と下地層との間の密着強度、及び第2のグリッドG2と下地層との間の密着強度は、回折機能部4と第2のグリッドG2との間の密着強度より高いことが好ましい。このような構成とすれば、基板6と第1のグリッドG1、及び回折機能部4と第2のグリッドG2との間の密着性を、下地層を介すことによって向上させることができる。下地層の素材としては、例えば、SiO等の誘電体薄膜を用いることができる。
図3は、光学素子の機能を説明するための模式図である。このうち図3(a)は、回折機能部4の機能を示す図であり、図3(b)は、グリッドG1,G2の機能を示す図である。
図3(b)に示すように、グリッドG1(G2)への入射光80は、微細ワイヤーと平行な偏光軸を有する成分pがグリッドG1(G2)によって反射され、微細ワイヤーと垂直な偏光軸を有する成分sがグリッドG1(G2)を透過する。すなわち、グリッドG1,G2を有する光学素子1は偏光分離機能を備えており、入射光80を、偏光状態の異なる反射光80r及び透過光80tに分離することができる。
図3(a)に示す光学素子1においては、黒の領域が第1の領域6Aに相当し、白の領域が第2の領域6Bに相当する。基板6上には、各第1の領域6Aに第1のグリッドG1が複数分布しているとともに、各第2の領域6Bに回折機能部4が複数分布している(図1(b))。回折機能部4は、溝部4Aと凸条部4Bとによって形作られる凹凸の分布によって入射光80を回折させて、図3(a)に示すように、入射方向とは異なる方向に拡散させることができる。より詳しくは、回折機能部4の作用によって、グリッドG1(G2)によって反射された反射光80rと、グリッドG1(G2)を透過した透過光80tの双方を拡散させることができる。そして、後述するように、反射光80r及び透過光80tの拡散特性は調整することが可能である。
図3(a)に示した反射光80rの拡散効果と透過光80tの拡散効果は、回折機能部
4の段差部8の高さgを変えることで制御することができる。入射光80が回折機能部4へ略垂直に入射する状況において、反射光80rの拡散効果が最大となる段差部8の高さgrは以下の式(1)で与えられる。
gr=(2m+1)λ/4n (1)
ただし、mは0以上の整数、λは入射光80の波長、nは光学素子1の周囲媒体の屈折率である。他方で、透過光80tの拡散効果が最大となる段差部8の高さgtは以下の式(2)で与えられる。
gt=(2m+1)λ/2(N−1) (2)
ただし、Nは回折機能部4の屈折率である。
式(1),(2)から、反射光80rの拡散効果が最大となる段差部8の高さgrと、
透過光80tの拡散効果が最大となる段差部8の高さgtとは、互いに異なることがわか
る。したがって、回折機能部4の段差部8の高さをgrに等しくすれば、透過光80tの
拡散効果を抑えることが可能となる。
例えば、λ=600nmの場合は、m=0に対して、式(1)よりgr=100nmと
なり、また式(2)よりgt=600nmとなる。ただし、n=1.5、N=1.5である。ここで、段差部8の高さgを100nm(深さgr)とすれば、回折機能部4による反射光80rの拡散効果を最大とすることができる。このとき、高さgが、透過光80tの拡散効果を最大とする高さgt(600nm)とは異なっているため、透過光80tの拡散効果は大きくならない。したがって、入射光80を偏光状態の異なる反射光80r及び透過光80tに分離しつつ、反射光80rを広範囲に拡散させ、かつ透過光80tの拡散を抑えることができる。
ところで、式(2)のgtが取り得る値の中間値をgt’とすると、gt’は、
gt’=(m+1)λ/(N−1) (3)
を満たす。回折機能部4の段差部8の高さgを上記gt’とすれば、透過光80tの拡散効果を最小とすることができる。すなわち、段差部8の高さgを上記gt’とすることによっても、入射光80を偏光状態の異なる反射光80r及び透過光80tに分離しつつ、反射光80rを拡散させ、かつ透過光80tの拡散を抑えることができる。
上記光学素子1を具体的な表示デバイスに適用する場合、基板6の第1の領域6A及び第2の領域6Bを全範囲で完全にランダムに配置してもよいが、これに代えて次のようにすることもできる。すなわち、複数の第1の領域6Aと複数の第2の領域6Bとが特定のランダムな分布に配置された単位パターンを作成し、複数の当該単位パターンを繰り返し配置するというものである。ここで、単位パターンの大きさは任意であるが、例えば1辺が400μmの正方形とすることができる。このような構成によれば、回折機能部4の製造に用いるフォトマスクも、上記単位パターンに相当するマスクパターンが繰り返し配置された構造とすることができ、当該フォトマスクの作成が容易となる。これにより、光学素子1を容易に製造することが可能となる。
さらに、図4に示すように、隣接する単位パターン1uの方向が互いに異なるように配置してもよい。図4においては、単位パターン1u内の矢印が単位パターン1uの方向を示している。このような配置によれば、回折機能部4の周期性が低く抑えられる結果、単位パターン1uの繰り返し周期に起因する拡散方向の偏りを解消することができ、回折による色づきを実用上問題が生じない程度に緩和することができる。
光学素子1を反射型の装置に適用する場合には、反射特性が重要となる。図5及び図6は、光学素子1(回折機能部4B)の反射光強度分布の一例を示す図である。図7は、光学素子の反射特性評価に用いた測定系の概略構成図である。図5及び図6は反射光の強度測定の結果を示すグラフであり、横軸は反射角度θ[°]であり、縦軸は入射光強度を100%とした際の反射光強度[%]である。
なお、図7では、基板6における第1の領域6A及び第2の領域6Bの平面視形状が正方形とされている。
図7に示すように、光学素子1の斜め上方に光源49を固定し、光源49からの光A1が光学素子1の板面の法線方向Hに対して25°の角度で入射するようにした。そして、照度計51を用いて基板面での回転角度0°〜360°の範囲にて反射光A2の強度を測定した。
図5及び図6に示すように、反射光の最大強度は、反射角度が23〜27°程度のときに反射率1%を超えるピークが得られ、この範囲の前後の角度では強度が急激に低下しているが、その他の角度を全体的に見るとなだらかに低下している。
反射光の分布の広がり(視域角の範囲)φは、基板6の第1の領域6A及び第2の領域6Bの平面視における最小寸法δから決まり、φ=2λ/δの関係が成り立つ。例えば、λ=550nm、δ=2.0μmとすると、φ=32度となり、実用上充分な視域が得られる。
基板6の第1の領域6A及び第2の領域6Bの平面形状を円形にすることにより、方位によらない、完全に等方的な反射強度分布を得ることができる。また、第1の領域6A及び第2の領域6Bの平面形状に異方性を持たせ、例えば、長方形状あるいは楕円形状とすることにより、反射光強度分布に異方性を持たせることも可能である。その場合、各領域6A,6Bの短手方向では分布の広がりが大きく、長手方向では分布の広がりが狭くなる。
以上に述べたように、グリッドG1,G2と回折機能部4とを有する光学素子1は、入射光80を、グリッドG1,G2によって偏光状態の異なる反射光80r及び透過光80tに分離することができるとともに、当該反射光80rを回折機能部4によって拡散させることができる。特に、段差部8の高さgをgr=(2m+1)λ/4nと等しくすること等によって、反射光80rを広範囲に拡散させ、かつ透過光80tの拡散を抑えることができる。すなわち、本実施形態によれば、偏光分離機能と光拡散機能とを併せもち、かつ透過光の拡散のみを抑制することが可能な光学素子1が得られる。また、上記光学素子1は、アルミニウムの微細ワイヤー2aからなるグリッドG1,G2によって偏光分離を行うものであるため、耐光性に優れている。
(製造方法)
まず、図8及び図9を用いて、光学素子1の製造方法について説明する。図8は、光学素子の製造方法のフローチャート図であり、図9は、光学素子の製造工程における断面図である。なお、図9は、光学素子の一部を拡大した断面図であって、実際には基板面全体に亘って同様の構造が連続している。
以下、図8のフローチャート図に沿って図9を参照しつつ説明する。
工程S1では、厚さ0.7mmのガラスからなる基板6上に、スパッタ等により厚さ100〜300nm程度の導体膜としての金属膜2Lを形成する(図9(a))。本実施形態では、金属膜2Lとしてアルミニウム(Al)を用いているが、銀(Ag)、ニッケル(Ni)などを用いても良い。本実施形態における基板6は、その一方の面に、複数の第1の領域6Aと複数の第2の領域6Bとが平面的に区画されたものであって、複数の第1の領域6Aと複数の第2の領域6Bとを覆うようにして金属膜2Lを形成する。ここで、第1の領域6Aと第2の領域6Bは、後段の工程で第1のグリッドG1と第2のグリッドG2とが形成されるべき位置を便宜的に規定しているもので、基板表面に物理的な境界が形成されているわけではない。
なお、基板6と金属膜2Lとの間に、SiO等の誘電体薄膜からなる下地層(不図示)を形成してもよい。下地層は、基板6と金属膜2L(第1のワイヤーグリッド)との密着強度を高めるために機能する。
次に、工程S2では、金属膜2L上に、真空蒸着又はスパッタ等により反射防止膜33を形成する(図9(a))。反射防止膜33としては、例えば、SiCやSiOxNy:H(x、yは組成比)が適している。もしくは、ITO(Indium Tin Oxide)を用いてもよい。また、反射防止膜33として、半導体分野で広く用いられている有機塗布材料を用いても良い。反射防止効果を有するか否かは、素材の複素屈折率に大きく左右され、例えば、複素屈折率の実部の値が1.4以上、複素屈折率の虚部の値が0.1以上1.5以下のものが望ましい。なお、反射防止膜33の最適な膜厚は、同じ素材であっても成膜条件によって異なる。
次に、工程S3では、反射防止膜33上に、スピンコート法等によって、略平坦な平面を有するレジスト膜34を形成する(図9(a))。
次に、工程S4では、レジスト膜34に対してレーザー干渉露光を行い、第1のグリッドG1を構成する微細ワイヤーの形成位置に相当する領域、すなわちピッチが140nmである微細な線状の領域を選択的に露光して、微細ワイヤーの潜像を形成する。レーザー干渉露光に用いる光源としては、波長266nmの連続発振DUV(Deep Ultra Violet)レーザーを用いることができ、入射角θLは、例えば72度とすることができる(図9(a))。このとき、レジスト膜34の下層に反射防止膜33が形成されていることにより、レーザー光が金属膜2Lによって反射され露光が不完全となる不具合を防止することができる。
また、レジスト膜34の全面に微細ワイヤーの潜像を形成した後、第1の領域6Aと平面的に重なる領域をマスクで覆い、第2の領域6Bと重なる領域に対してベタ露光を行う。このように、第2の領域6Bと重なる領域に形成された潜像を露光オーバーとし、第1の領域6Aと平面的に重なる領域のみに微細ワイヤーの潜像を残す。
次に、工程S5では、レーザー干渉露光されたレジスト膜34の現像を行う。先に述べたように、レジスト膜34の、第2の領域6Bと平面的に重なる領域に形成された潜像を露光オーバーとしておくことで、第1の領域6Aと平面的に重なる領域のみにレジストパターン34Rが形成され、第2の領域6Bにおけるレジスト膜34は完全に除去される(図9(b))。このようにして、ピッチが140nmの微細な線状のレジストパターン34Rを、第1の領域6A上に得る。
次に、工程S6では、金属膜2L及び反射防止膜33をパターン形成する。より詳しくは、上記レジストパターン34Rをマスクにしてドライエッチングを行うことにより、反射防止膜33及び金属膜2Lをパターニングし、複数の微細ワイヤー2aを形成する(図9(c))。続く工程S7では、レジストパターン34Rを除去する。これにより、基板6上に、140nmのピッチで配列された複数の微細ワイヤー2aからなる第1のグリッドG1が各第1の領域6Aに形成される(図9(d))。
なお、金属膜2Lと反射防止膜33との間にSiO(厚さ30nm)を形成しておくと、金属膜2Lに対するエッチング選択比がレジスト膜34の場合と比べて向上するため、レジスト膜34のパターンを浅くすることができる。これにより、より安定したレジストパターン34Rを形成することができる。
次に、工程S8では、基板6上に、複数の第1のグリッドG1を覆う回折機能材料層4Mを第1のグリッドG1の高さにより10〜200nm程度の膜厚で形成する(図9(e))。ベーク温度は250℃前後である。本実施形態では、透光性を有するポリマーを膜厚が100nm程度となるように形成する。回折機能材料層4Mの材料としては、SiO、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。この工程では、基板6上にスピンコート法等を用いて回折機能材料層4Mを形成するため、その表面は平坦な面となる。
続く工程S9では、回折機能材料層4M上の、上記第1のグリッドG1と平面的に重ならない領域に複数の第2のグリッドG2を形成する(図9(f))。複数の微細ワイヤー2aからなる第2のグリッドG2は、第1のグリッドG1の形成に用いたレジストパターン34Rを用い、上記第1のグリッドG1と同様の工程(工程S1〜工程S7)を行うことで得られる。
なお、本工程においても、回折機能材料層4Mと第2のグリッドG2との密着強度を高めるため、回折機能材料層4Mと第2のグリッドG2との間に下地層を形成しておくことが好ましい。
次に、工程S10では、基板6の第2の領域6Bに回折機能部4を形成する。本工程は、回折機能材料層4M全体に対してドライエッチングを施す(図9(g))。具体的には、第1の領域6Aの回折機能材料層4Mを全て除去することで第1のグリッドG1の全体を露出させるとともに、第2の領域6Bにおける回折機能材料層4Mの、第2のグリッドG2と平面的に重ならない領域を部分的に除去する(図9(h))。これにより、微細ワイヤー2a同士の間に、回折機能材料層4Mの厚さ方向を貫通する溝部4Aが形成され、同時に、第2のグリッドG2の下層に、各微細ワイヤー2aにそれぞれ対応する複数の凸条部4Bが形成される。このようにして、基板6上の第2の領域6Bに回折機能部4が形成される。
本工程では、CHFとOとの混合ガスを用いてドライエッチングを行う。各グリッドG1,G2と回折機能材料層4Mとは、エッチング選択比の異なる材料から構成されているため、各グリッドG1,G2に影響を与えることなく、回折機能材料層4Mのみを好適にエッチングすることができる。
続く工程S11では、第1のグリッドG1及び第2のグリッドG2上に封止層3(図2(b)参照)を形成する。この工程は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法等により、真空環境下においてグリッドG1,G2上にSiO又はSiN等からなる層を形成することによって行う。この結果、凸条部4B、微細ワイヤー2a、及び封止層3によって囲まれた空間を真空状態で封止することができる。
このようにして本実施形態の光学素子1を形成する。
以上の工程により、基板6の第1の領域6A上に第1のグリッドG1、第2の領域6B上に回折機能部4と第2のグリッドG2とが積層して形成された光学素子1を得ることができる。この製造方法によれば、グリッドG1,G2を構成するアルミニウムと、回折機能材料層4Mを構成するポリマーとはエッチングレート(選択比)が異なるため、レジストパターンを用いることなく回折機能材料層4Mを好適にパターニングすることができる。これにより、製造工程が短縮されて作業効率が向上する。
また、本実施形態では、第1のグリッドG1の形成工程と、第2のグリッドG2の形成工程とを分けて行い、それぞれを平坦な面を有する基板6上及び回折機能材料層4M上に形成するようにしたので、金属膜2L上に積層されるレジスト膜34の露光量の面内均一性が向上し、微細ワイヤー2aを得るための所望のレジストパターン34Rが得られる。これにより、回折機能部4の表面に第1のグリッドG1及び第2のグリッドG2をより確実に形成することができる。
なお、上記製造工程では、レジストパターン34Rを形成する際、レジスト膜34の全面に微細ワイヤーの潜像を形成した後、第2の領域6Bにおける微細ワイヤーの潜像を露光オーバーとすることで、第1の領域6Aと平面的に重なる領域にレジストパターン34Rを形成するとしたが、最初に、レジスト膜34の第1の領域6Aと平面的に重なる領域をマスクで覆い、第2の領域6Bと平面的に重なる領域に対してベタ露光を行った後、全体にレーザー干渉露光を行って、第1の領域6Aと平面的に重なる領域にグリッドパターンの潜像を形成するようにしてもよい。
また、基板面全体に微細ワイヤー2aを形成した後、第2の領域6B上にある微細ワイヤー2aのみをエッチングによって除去するようにしてもよい。この場合、第1の領域6A上にある微細ワイヤー2aをグリッド用のレジスト(膜厚500〜1000nm、ベーク温度100〜200℃)で保護し、第2の領域6B上にある微細ワイヤー2aを塩素系ガス(C12及びBC13)でドライエッチングすることにより除去する。なお、第2のグリッドG2も同様に形成することができる。
(第2の実施形態の光学素子)
図10は、本実施形態の光学素子の概略構成を示す断面図である。図11は、光学素子の製造方法のフローチャート図であり、図12は、フローチャート図に沿う光学素子の製造工程における断面図である。
本実施形態は、段差部8の高さg(溝部4Aの深さ)が上記実施形態と異なる。なお、その他の光学素子の構成及び製造工程は、上記実施形態と同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明及び重複する製造工程は省略する。
(光学素子)
本実施形態の光学素子120は、図10に示すように、基板6に対する第2のグリッドG2の位置が第1の実施形態よりも近くなるよう段差部8の高さgが小さく構成されている。具体的には、第1のグリッドG2における微細ワイヤー2aの高さに対して、回折機能部4における凸条部4Bの高さが低くなっており、凸条部4Bの上面4bが、微細ワイヤー2aの上面1aよりも基板面に近い構成となっている。本実施形態では、回折機能部4の段差部8の高さgが第1のグリッドG1の高さの略半分程度となっている。
(製造方法)
本実施形態の光学素子120の製造方法について、図11及び図12を用いて説明する。
まず、上記第1の実施形態と同様に工程S1〜工程S8までを行い、基板6上に、第1のグリッドG1及び第1のグリッドG1を覆う回折機能材料層4Mを形成する(図12(a))。その後、工程S21において、回折機能材料層4Mの、第1の領域6Aと平面的に重なる領域にレジストパターン37Rを形成し(図12(b))、工程S22では、このレジストパターン37Rをマスクとしてドライエッチングを施し、回折機能材料層4Mの、第2の領域6Bと平面的に重なる領域を薄くして所定の膜厚にする。具体的には、回折機能材料層4Mのエッチング面4mが、微細ワイヤー2aの上面1aよりも基板面に近くなるような膜厚にする(図12(c))。
その後、工程S23により、回折機能材料層4Mの露出部分(第2の領域6Bと平面的に重なる領域)とレジストパターン37Rを覆うようにして、下地層(不図示)、金属膜2L及び反射防止膜33をこの順で積層し(図12(c))、工程S24でレジストパターン37Rを除去する(図12(d))。続けて、工程S25において、回折機能材料層4M上の、第2の領域6Bと平面的に重なる領域に形成したレジストパターン34R(図12(e))をマスクとしてドライエッチングを行った後、レジストパターン34Rを除去し、複数の第2のグリッドG2をパターン形成する(図12(f))。このとき、回折機能材料層4Mの、第1の領域6Aがエッチングされて膜厚が若干減少する。本工程で用いるレジストパターン34Rは、第1のグリッドG1の形成時に用いたレジストパターンと同様のものである。
その後、工程S26において、回折機能材料層4Mの全体にドライエッチングを行うことにより(図12(f))、第1のグリッドG1を露出させるとともに第2の領域6Bに複数の溝部4A(凸条部4B)を形成し、回折機能部4を得る(図12(g))。このようにして本実施形態の光学素子120を得る。
本実施形態によれば、工程22において、第2の領域6Bの回折機能材料層4Mの膜厚を調整することによって段差部8の高さgを調整することができる。図10に示すように、第1のグリッドG1に対する回折機能部4の溝部4Aの深さを小さく(凸条部4Bの高さgを低く)すると、回折機能部4に入射する入射光の波長が高い場合でも反射光の拡散効果を高めることができる。つまり、第1のグリッドG1に対する段差部8の高さgを小さくすることで、回折機能部4による反射光の拡散効果を最大とすることができる波長の許容値が高められる。
(第3の実施形態の光学素子)
図13は、本実施形態の光学素子の概略構成を示す断面図である。
本実施形態は、基板6上の第1の領域6A及び第2の領域6Bを覆う透明絶縁層4Nが設けられており、第1のグリッドG1の下部が透明絶縁層4N内に埋設している点において異なる。なお、その他の光学素子の構成及び製造工程は、上記実施形態と同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明及び重複する製造工程は省略する。
(光学素子)
本実施形態の光学素子130は、図13に示すように、基板6の第1の領域6A及び第2の領域6Bを覆う透明絶縁層4Nを有している。基板6上に設けられた第1のグリッドG1は、下部が透明絶縁層4N内に埋設されている。そのため、透明絶縁層4Nの、第1の領域6Aと平面的に重なる領域では第1のグリッドG1の上部が露出している。一方、透明絶縁層4Nの、第2の領域6Bと平面的に重なる領域には回折機能部4と第2のグリッドG2とが積層して設けられ、複数の溝部4Aと、上面4b上に微細ワイヤー2aを備える凸条部4Bを複数備えている。このような回折機能部4の段差部8の高さgは、各グリッドG1,G2の高さから適宜設定される。
本実施形態では、基板6上に、第1のグリッドG1と、第1のグリッドG1を覆う回折機能材料層4M(図9(e))とを形成した後、この回折機能材料層4Mを所定時間エッチングすることで回折機能部4を得ている。具体的には、図13に示すように、エッチング面4mが、第1のグリッドG1を構成する微細ワイヤー2aの上面1aよりも基板面に近くなるまでエッチングを行い、基板面が露出する前に終了する。このようにして、複数の溝部4A及び複数の凸条部4Bを有する回折機能部4が形成されるとともに基板面を覆う透明絶縁層4Nが形成される。
本実施形態によれば、第1の実施形態において回折機能材料層4Mのエッチングに要していた時間よりも短い時間で形成する。上記実施形態においては、回折機能材料層4Mの膜厚によって段差部8の高さgを調整していたが、本実施形態では、回折機能材料層4Mのエッチング時間によって溝部4Aの深さを調整することができ、その結果段差部8の高さgを簡単に調整することができる。
(第4の実施形態の光学素子)
図14は、本実施形態の光学素子の概略構成を示す断面図である。
本実施形態は、基板6と、回折機能部4及び第1のグリッドG1と、の間に透明絶縁材料層4Lを形成する点において上記実施形態と異なる。なお、その他の光学素子の構成及び製造工程は、上記実施形態と同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明及び重複する製造工程は省略する。
(光学素子)
本実施形態の光学素子140は、図14に示すように、基板6上に、第1の領域6A及び第2の領域6Bを含む面積の透明絶縁材料層4Lを有している。透明絶縁材料層4Lは、回折機能部4と同様の材料を用いて所定の膜厚で形成されている。回折機能部4及び第1のグリッドG1は透明絶縁材料層4L上に配置されており、具体的には、透明絶縁材料層4L上の、第1の領域6Aと平面的に重なる領域に第1のグリッドG1が配置され、第2の領域6Bと平面的に重なる領域に回折機能部4が配置されている。本実施形態では、回折機能部4の段差部8の高さgが第1のグリッドG1の高さより高く設定されている。つまり、第1のグリッドG1を構成する微細ワイヤー2aの上面1aよりも、凸条部4Bの上面4bの方が基板面から遠ざかった構成となっている。
また、本実施形態においても、透明絶縁材料層4Lと第1のグリッドG1との間に、これらの密着性を向上させるための下地層(不図示)を形成しておくことが好ましい。
本実施形態の光学素子140は、第1の実施形態の光学素子の製造方法における、下地層を形成する工程S1(図8参照)の前に、基板6上に透明絶縁材料層4Lを形成する工程を追加することで形成され、その他の製造工程は第1の実施形態の光学素子の製造方法と同様である。このように、まず基板6上に透明絶縁材料層4Lを形成し、この透明絶縁材料層4L上に、回折機能部4、第1のグリッドG1などを順次形成していくことによって本実施形態の光学素子140が得られる。
本実施形態の光学素子140は、基板6上に透明絶縁材料層4Lを備え、この透明絶縁材料層4L上に、第1のグリッドG1及び回折機能部4が設けられている。このような構成によれば、基板6に対する回折機能部4と第1のグリッドG1との密着性がさらに良好なものとなり信頼性の高い光学素子140となる。また、透明絶縁材料層4L上に第1のグリッドG1が形成されるので、表示装置内への組込みが容易となる。
(第5の実施形態の光学素子)
図15は、本実施形態の光学素子の概略構成を示す断面図である。
本実施形態の光学素子150は、基板6上に透明絶縁材料層4Lが形成される点は上記第3の実施形態と同様であるが、段差部8の高さgが第3の実施形態とは異なる。
図15に示すように、本実施形態の光学素子150は、上記第3の実施形態同様、基板6上に透明絶縁材料層4Lを介して回折機能部4と第1のグリッドG1とが設けられているが、第2のグリッドG2の基板6に対する位置が第3の実施形態よりも近くなるよう段差部8の高さgが小さく構成されている。具体的には、回折機能部4の上面4bが第1のグリッドG1の上面1aよりも基板面に近く、回折機能部4の段差部8の高さgが第1のグリッドG1の高さの略半分程度となっている。
本実施形態の光学素子150は、第2の実施形態の光学素子の製造方法における、第1のグリッドG1を形成する工程S1(図11参照)の前に、基板6上に透明絶縁材料層4Lを形成する工程を追加することで形成され、その他の製造工程は第2の実施形態の光学素子の製造方法と同様である。これにより、基板6上に透明絶縁材料層4Lを介して第1のグリッド1G及び回折機能部4がそれぞれ形成され、透明絶縁材料層4L上の第2の領域6Bと平面的に重なる領域に、第1のグリッドG1の高さよりも低い段差部8が形成される。このようにして、本実施形態の光学素子150が得られる。
本実施形態の光学素子150は、上記実施形態同様、透明絶縁材料層4Lによって、基板6に対する回折機能部4と第1のグリッドG1との密着性がさらに良好なものとなり信頼性の高いものとなる。
また、上記実施形態4,5においては、基板6上に、透明絶縁材料層4Lを形成するとしたが、これに代えて均一な膜厚で形成した下地層を設けてもよい。これら透明絶縁材料層4Lや下地層など、基板6全体に均一な厚さで形成される膜は非常に薄い厚さで形成される。そのため、グリッドG2の間に溝を形成する際に回折機能材料層4Mを薄膜化すると、基板6表面が露出したものと実質的に見なすことができる。
さらに、回折機能部4の段差部8の高さg、すなわち溝部4Aの深さを調整することによって、入射光の波長が高い場合でも反射光の拡散効果を最大とすることができる。つまり、低背化された凸条部4Bによって構成される回折機能部4により、入射光を偏光状態の異なる反射光及び透過光に分離しつつ、反射光を広範囲に拡散させ、且つ透過光の拡散を抑えることができる。
なお、上記実施形態では、グリッドG1,G2を構成する微細ワイヤー2a上に反射防止膜33が残っているが、金属膜2Lをエッチングした後に微細ワイヤー2a上から取り除くようにしてもよい。しかし、反射防止膜33は、SiCやSiOxNy:Hなどから形成されているので、封止層3を形成する際、SiO又はSiNなどの材料が微細ワイヤー2a上に付着しやすくなり、良好な封止層3をグリッドG1,G2上に形成することが可能となる。そのため、反射防止膜33をグリッドG1,G2上から完全に除去する必要はなく、残存させておいてもよい。
〔液晶装置〕
次に、本発明に係る光学素子を内蔵型の反射偏光層として備えた液晶装置について図面を参照して説明する。
本実施形態の液晶装置は、液晶に対して基板面方向の電界(横電界)を印加し、配向を制御することにより画像表示を行う横電界方式のうち、FFS(Fringe Field Switching)方式と呼ばれる方式を採用した液晶装置である。また本実施形態の液晶装置は、基板上にカラーフィルタを具備したカラー液晶装置である。
図16は、本実施形態の液晶装置を構成するマトリクス状に形成された複数のサブ画素領域の等価回路図である。図17(a)は、本実施形態の液晶装置の任意の1サブ画素領域における平面図、図17(b)は、液晶装置を構成する各光学素子の光学軸の配置関係を示す説明図である。図18は、図17のB−B'線に沿う部分断面図である。
なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示している。なお、以下の説明においては、図1及び図2を適宜参照するものとする。
図16に示すように、液晶装置200の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数のサブ画素領域には、それぞれ画素電極9と画素電極9をスイッチング制御するためのTFT30とが形成されている。TFT30のソースにはデータ線駆動回路101から延びるデータ線6aが電気的に接続されている。データ線駆動回路101は、画像信号S1、S2、…、Snを、データ線6aを介して各画素に供給する。画像信号S1〜Snはこの順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
TFT30のゲートには、走査線駆動回路102から延びる走査線3aが電気的に接続されており、走査線駆動回路102から所定のタイミングで走査線3aにパルス的に供給される走査信号G1、G2、…、Gmが、この順に線順次でTFT30のゲートに印加されるようになっている。画素電極9は、TFT30のドレインに電気的に接続されている。スイッチング素子であるTFT30が走査信号G1、G2、…、Gmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで画素電極9に書き込まれるようになっている。
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極9と液晶を介して対向する共通電極との間で一定期間保持される。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付与されている。蓄積容量70はTFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。
次に、図17及び図18を参照して液晶装置200の詳細な構成について説明する。
液晶装置200は、図18に示すように、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50を挟持した液晶パネルを含む。液晶層50は、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向する領域の縁端に沿って設けられた図示略のシール材によって基板10,20間に封止されている。TFTアレイ基板10の背面側(図示下面側)には、導光板91と反射板92とを備えたバックライト90が設けられている。
図17(a)に示すように、液晶装置200のサブ画素領域には、データ線6aの延在方向(Y軸方向)に長手の平面視略櫛歯状を成す画素電極9と、画素電極9と平面的に重なって配置された平面略ベタ状の共通電極29とが設けられている。サブ画素領域の図示左上の角部には、TFTアレイ基板10と対向基板20とを所定間隔で離間した状態に保持するための柱状スペーサ40が立設されている。
画素電極9は、データ線6a延在方向に延びる複数本(図示では5本)の帯状電極部9cと、これら複数の帯状電極部9cのTFT30側の各端部に接続されて走査線3aの延在方向に延びる基端部9aと、基端部9aの走査線3a延在方向中央部からTFT30側に延出されたコンタクト部9b(図18参照)とからなる。
共通電極29は、図18に示す画素領域内で平面ベタ状に形成された透明電極であり、かかる共通電極29の一部と平面的に重なる領域に反射偏光層19が形成されている。反射偏光層19は、本発明に係る光学素子からなるものであり、微細なスリット構造を具備した光反射性の微細ワイヤー2a(例えば図1及び図2参照)からなる偏光素子部19Aを備えている。
なお、共通電極29は、サブ画素領域とほぼ同じ大きさの平面視略矩形状であってもよい。この場合には、複数の共通電極に亘って延在する共通電極配線を設け、当該共通電極配線の延在方向に沿って配列された共通電極同士を電気的に接続するとよい。
本実施形態の液晶装置200は、図17(a)に示す1サブ画素領域内のうち、画素電極9が配置された概略矩形状の平面領域のうち反射偏光層19の形成された領域が、対向基板20の外側から入射して液晶層50を透過する光を反射、変調して表示を行う反射表示領域Rとなっている。また、画素電極9が配置された領域のうち、反射偏光層19の非形成領域とされて光を透過する領域が、バックライト90から入射して液晶層50を透過する光を変調して表示を行う透過表示領域Tとなっている。
TFT30は、画素電極9の長手方向(X軸方向)に延びるデータ線6aと、データ線6aと直交する方向(Y軸方向)に延びる走査線3aとに接続されている。走査線3aに隣接して走査線3aと平行に延びる容量線3bが設けられている。TFT30は走査線3aの平面領域内に部分的に形成されたアモルファスシリコン膜からなる半導体層35と、半導体層35と一部平面的に重なって形成されたソース電極6b及びドレイン電極32とを備えている。走査線3aは半導体層35と平面的に重なる位置でTFT30のゲート電極として機能する。
TFT30のソース電極6bは、データ線6aから分岐されて半導体層35に延びる平面視略逆L形に形成されており、ドレイン電極32は、半導体層35と平面的に重なる位置から画素電極9側に延び、その先端には平面視略矩形状の容量電極31が電気的に接続されている。容量電極31上には、画素電極9の端部において走査線3a側に突出するコンタクト部9b(図18参照)が配置されており、両者が平面的に重なる位置に設けられた画素コンタクトホール45を介して容量電極31と画素電極9とが電気的に接続されている。容量電極31は、容量線3bの平面領域内に配置されており、厚さ方向で対向する容量電極31と容量線3bとを電極とする蓄積容量70を構成している。
なお、本実施形態の液晶装置200は、画素電極9と画素電極9に対向する共通電極29とを備えたFFS方式の液晶装置であるため、表示動作時に画素電極9に電圧を印加すると、画素電極9と共通電極29とが平面的に重なる領域に比較的大きな容量が形成される。したがって液晶装置200では、蓄積容量70を省略することもできる。かかる構成とすれば、容量電極31と容量線3bとが形成されている領域も表示に利用できるようになるため、サブ画素の開口率を向上させて表示を明るくすることができる。
図18に示す断面構造をみると、互いに対向して配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10は、ガラスや石英、プラスチック等の透光性の基板本体10Aを基体としてなり、基板本体10Aの内面側(液晶層50側)には、走査線3a及び容量線3bが形成されている。走査線3a及び容量線3bを覆って、シリコン酸化物等の透明絶縁膜からなるゲート絶縁膜11が形成されている。
ゲート絶縁膜11上に、アモルファスシリコンの半導体層35が形成されており、半導体層35に一部乗り上げるようにしてソース電極6bと、ドレイン電極32とが設けられている。容量電極31はドレイン電極32と一体に形成されている。
半導体層35は、ゲート絶縁膜11を介して走査線3aと対向配置されており、当該対向領域で走査線3aがTFT30のゲート電極を構成する。容量電極31は、ゲート絶縁膜11を介して容量線3bと対向配置されており、容量電極31と容量線3bとが対向する領域に、ゲート絶縁膜11をその誘電体膜とする蓄積容量70が形成されている。
半導体層35、ソース電極6b、ドレイン電極32、及び容量電極31を覆って、シリコン酸化物等からなる層間絶縁膜12が形成されている。層間絶縁膜12上に、反射偏光層19が部分的に形成されている。反射偏光層19は、本発明に係る光学素子からなるものであり、微細ワイヤーからなる偏光素子部19Aを備えている。
また、反射偏光層19上を含む層間絶縁膜12上に、平面ベタ状の透明導電膜からなる共通電極29が形成されている。共通電極29と反射偏光層19の偏光素子部19Aとは、透明絶縁膜である封止層3により絶縁されている。
共通電極29を覆って、シリコン酸化物等からなる電極部絶縁膜13が形成されており、電極部絶縁膜13上にITO等の透明導電材料からなる画素電極9が形成されている。
層間絶縁膜12及び電極部絶縁膜13を貫通して容量電極31に達する画素コンタクトホール45が形成されており、画素コンタクトホール45内に画素電極9のコンタクト部9bが一部埋設されることで、画素電極9と容量電極31とが電気的に接続されている。画素コンタクトホール45の形成領域に対応して、少なくとも共通電極29に開口部が設けられており、共通電極29と画素電極9とが接触しないようになっている。また、画素電極9を覆うようにしてポリイミド等からなる配向膜18(水平配向膜)が形成されている。
一方、対向基板20は、ガラスや石英、プラスチック等の透光性の基板本体20Aを基体としてなり、対向基板20の内面側(液晶層50側)には、カラーフィルタ22と配向膜28(水平配向膜)とが積層されている。対向基板20の外面側には、TFTアレイ基板10の外面側に配設された偏光板14と対をなす偏光板24が配設されている。
カラーフィルタ22は、画素領域内で色度の異なる2種類の領域に区画された構成とすることが好ましい。すなわち、透過表示領域Tに対応して配置された第1の色材領域と、反射表示領域Rに対応して配置された第2の色材領域とが区画形成された構成のものを採用することが好ましい。この場合において、透過表示領域に配される第1の色材領域の色濃度は、第2の色材領域の色濃度より大きくされる。このような構成とすることで、カラーフィルタ22を表示光が1回のみ透過する透過表示領域と、2回透過する反射表示領域との間で表示光の色味が異なるのを防止でき、反射表示と透過表示の見映えを同じくして表示品質を向上させることができる。
反射偏光層19は、図17(b)の光学軸の配置図に示すように、液晶装置200において、その透過軸(図1及び図2に示す微細ワイヤー2aの延在方向に直交する方向)157が、対向基板20側の偏光板24の透過軸153と平行となるように配置されており、TFTアレイ基板10側の偏光板14の透過軸と直交する向きに配置されている。また、本実施形態の液晶装置200では、配向膜18,28は平面視同一方向にラビング処理されており、その方向は、図17(b)に示すラビング方向151である。したがって、反射偏光層19の透過軸157と配向膜18,28のラビング方向151とは平行に配置されている。
なお、ラビング方向151は、液晶装置200の画素配列方向(Y軸方向)に平行に延びる帯状電極部9cに対して約30°の角度をなしている。
上記構成を具備した液晶装置200は、FFS方式の液晶装置であり、TFT30を介して画素電極9に画像信号(電圧)を印加することで、画素電極9と共通電極29との間に基板面方向(平面視では図17のX軸方向)の電界を生じさせ、かかる電界によって液晶を駆動して各々のサブ画素の透過率/反射率を変化させることで画像表示を行うものとなっている。
液晶層50を挟持して対向する配向膜18,28は平面視で同一方向にラビング処理されているので、画素電極9に電圧を印加しない状態では、液晶層50を構成する液晶分子は、基板10,20間でラビング方向に沿って水平に配向した状態となっている。このような液晶層50に画素電極9と共通電極29との間に形成した電界を作用させると、図17(a)に示す帯状電極部9cの線幅方向(X軸方向)に沿って液晶分子が再配向する。液晶装置200は、このような液晶分子の配向状態の差異に基づく複屈折性を利用して明暗表示を行うようになっている。なお、液晶装置200の動作時に、共通電極29は画素電極9との間で所定範囲の電圧差を生じさせるべく一定電圧に保持されていればよい。
本実施形態の液晶装置200では、反射偏光層19の作用により、TE偏光成分を反射させ、TM偏光成分を透過させる。同時に、反射光は広く拡散され、高い視認性が実現されている。加えて、透過光も拡散し、拡散した光は隣接する透過領域において利用される。また、反射偏光層19の下方に配置された偏光板14を透過した光(TE偏光)も、反射偏光層19で反射拡散された後、隣接する透過表示領域Tにおいて利用される。そのため、光の利用効率が全体的に20%程度向上する。これにより、透過表示領域Tで使用するバックライト90の光量を節約できることにつながり、低消費電力化が実現可能となる。
本実施形態では、反射表示領域に対応して反射偏光層19が設けられているので、マルチギャップ構造を用いることなく透過表示と反射表示の双方で良好なコントラストを得られる液晶装置となっている。そして、反射偏光層19が、本発明に係るワイヤーグリッド型の光学素子により形成されたものであるから、微細ワイヤー2a上を覆う封止層3(図1及び図2参照)の存在により、反射偏光層19上に形成された共通電極29が微細ワイヤー2a間の開口部2b(例えば図2(b)参照)に入り込んで反射偏光層19の光学特性を低下させるのを防止することができ、反射偏光層19において透過率とコントラスト(偏光選択性)の双方において優れた光学特性が得られる。
さらに、反射表示を行うための反射偏光層19が、TFTアレイ基板10側に設けられているので、TFT30とともにTFTアレイ基板10上に形成される金属配線等で外光が反射されて表示品質を低下させるのを効果的に防止することができる。さらに、画素電極9が透明導電材料を用いて形成されているので、液晶層50を透過してTFTアレイ基板10に入射した外光が画素電極9で乱反射されるのを防止することもでき、優れた視認性を得ることができる。
〔プロジェクタ〕
次に、本発明に係る光学素子を投射型表示装置に適用した例について説明する。図19は、投射型表示装置としてのプロジェクタ210の光学系を示す模式図である。プロジェクタ210は、光源(ランプ)からの射出光を液晶装置211によって変調した後に投写レンズ207から前方に投写する装置である。
図19中の破線は、プロジェクタ210内において光源から射出された光の光路を示す。当該光路には、光学素子205、液晶装置211、光学素子1、投写レンズ207がこの順に配置されている。換言すれば、液晶装置211から投写レンズ207に至る光路のいずれかの位置に光学素子1が配置されている。投写レンズ207の先には、スクリーン209が配置されている。プロジェクタ210は、液晶装置211における表示を投写レンズ207を介してスクリーン209に拡大投写する。
光学素子205は、透光性を有する基板上に導体からなる多数の微細ワイヤーを平行に配置したものである。光学素子205は、入射光80のうち微細ワイヤーと平行な偏光軸を有する成分を反射するとともに、微細ワイヤーと垂直な偏光軸を有する成分を透過する。すなわち、光学素子205は、偏光分離機能を有している。ただし、単に平坦な基板上に微細ワイヤーを形成した素子であるため、反射光及び透過光を拡散させる機能は有していない。入射光80のうち光学素子205を透過した成分は、ほとんど拡散されることなく液晶装置211に入射する。
液晶装置211は、枠状のシール材を介して貼り合わされた素子基板及び対向基板を有しており、素子基板と対向基板との間に液晶が封入されている。この液晶は、素子基板及び対向基板の対向面に形成された電極を介して駆動電圧を印加されることにより配向状態が変化する。液晶装置211は、透過光の偏光状態を、液晶の配向状態に応じて変化させることができる。
液晶装置211を透過した光は、光学素子1に入射する。光学素子1は、上記したように、微細ワイヤーと垂直な偏光軸を有する成分を透過して投写レンズ207へ入射させ、微細ワイヤーと平行な偏光軸を有する成分を反射させる。反射光80rによる液晶装置211の不具合を抑えるために、光学素子1は、液晶装置211からできるだけ離して配置することが好ましい。
〔プロジェクタの変形例〕
本発明の光学素子を備えたプロジェクタの変形例について、図20を用いて説明する。なお、本実施形態においては、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して説明する。
プロジェクタ210は、複数の液晶装置211を用いる構成であってもよい。図20は、3つの液晶装置211を備えたプロジェクタ210の光学系を示す模式図である。当該光学系は、4つの面を有するプリズム53と、プリズム53の1つの面に対向して配置された光学素子1と、プリズム53の他の3つの面にそれぞれ対向して配置された液晶装置211R,211G,211Bとを有している。
プリズム53は、液晶装置211R,211G,211Bから入射した光を屈折させ、いずれも光学素子1に入射させることができる。したがって、プリズム53は、各液晶装置211R,211G,211Bから光学素子1に至る光路に配置されているとも言える。液晶装置211R,211G,211Bは、それぞれ赤色光、緑色光、青色光を強度変調する。これらの強度変調された光をプリズム53によって合成することで、表示光が得られる。液晶装置211R,211G,211Bの、プリズム53とは反対側の位置には、光学素子205が配置されている。上記光学系は、光学素子1から射出された光が入射する投写レンズ207と、ミラー91a,91b,91cと、ダイクロイックミラー92a,92bとをさらに備えている。投写レンズ207は、プリズム53から光学素子1に至る光路の延長線上に配置されている。
図示しない光源から射出された光は、ダイクロイックミラー92aに入射し、青色光のみが透過する。当該青色光は、ミラー91aによって反射された後に光学素子250、液晶装置211Bを順に透過する。ダイクロイックミラー92aによって反射された残りの光は、ダイクロイックミラー92bに入射し、緑色光が反射され、赤色光は透過する。上記緑色光は、光学素子205、液晶装置211Gを順に透過する。また、上記赤色光は、ミラー91b,91cによって反射された後に、光学素子205、液晶装置211Rを順に透過する。液晶装置211R,211G,211Bを透過した赤色光、緑色光、青色光は、プリズム53に入射し、進行方向を変えられていずれも光学素子1へ向けて射出される。
光学素子1は、上記したように、入射光のうち微細ワイヤーと垂直な偏光軸を有する成分を透過して投写レンズ207へ入射させ、微細ワイヤーと平行な偏光軸を有する成分を反射させる。このとき、回折機能部4の作用により、反射光は広く拡散された状態でプリズム53、ひいては液晶装置211R,211G,211Bへ到達するため、液晶装置211R,211G,211Bの安定動作を妨げることがない。また、透過光は、充分に拡散が抑制されているため、スクリーン209へ到達する光量をほとんど犠牲にすることがない。このため、明るく長寿命なプロジェクタ300を実現することができる。
〔電子機器〕
図21は、本発明に係る液晶装置を表示部に備えた電子機器の一例である携帯電話の斜視構成図であり、この携帯電話1300は、先の実施形態の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。
上記実施の形態の液晶装置は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの電子機器においても、高輝度、高コントラスト、広視野角の透過表示及び反射表示を得ることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態の光学素子は、ディスプレイへの応用のみならず、レーザー加工へ用いる回折型ビーム分岐素子やビーム整形素子の反射防止構造としても利用できる。
1…第1の実施形態の光学素子、2a…微細ワイヤー、2b…開口部、3…封止層、4…回折機能部、4A…溝部、4B…凸条部、4L…透明絶縁材料層、4M…回折機能材料層、4m…エッチング面、4b…上面、6…基板、6A…第1の領域、6B…第2の領域、8…段差部、g…段差部の高さ、G1…第1のグリッド、1a…上面、G2…第2のグリッド、33…反射防止膜、34…レジスト膜、34R…レジストパターン、36…レジスト膜、36R…レジストパターン、120…第2の実施形態の光学素子、130…第3の実施形態の光学素子、140…第4の実施形態の光学素子、150…第5の実施形態の光学素子、200…第1の実施形態の液晶装置、210…プロジェクタ(投射型表示装置)、211…液晶装置(プロジェクタのライドバルブ)、R…レジスト、250…光学素子、1300…携帯電話

Claims (8)

  1. 入射光の一部を反射するとともに前記入射光の一部を透過させる光学素子であって、
    平面的に区画された複数の第1の領域と複数の第2の領域とを有する基板と、
    前記第1の領域は、前記基板上に設けられた互いに平行な複数の金属線を備え、
    前記第2の領域は、前記基板上に設けられ且つ回折機能材料によって形成された互いに平行な複数の凸条部と、前記複数の凸条部が前記基板に当接する面と対向する面に形成される金属線とを備える、ことを特徴とする光学素子。
  2. 前記回折機能材料が、SiO、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記第1の領域および前記第2の領域が、前記基板上でランダムに配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子を備えることを特徴とする液晶装置。
  5. 一対の基板間に液晶層を挟持してなり、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の前記液晶層側に、前記光学素子が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
  6. 1つの画素で透過表示と反射表示とが可能な半透過反射型の液晶装置であって、
    前記光学素子を、前記反射表示を行うための反射層として備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の液晶装置。
  7. 請求項4乃至6のいずれか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
  8. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子を備えたことを特徴とする電子機器。
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