JP2010260984A - 樹脂組成物および絶縁電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィラーを添加した場合でも、耐寒性を維持しつつ、耐摩耗性を向上させることが可能な樹脂組成物、また、これを被覆材に用いた絶縁電線を提供する。
【解決手段】ベース樹脂とフィラーとを含有し、ベース樹脂は、メルトフローレイトが10g/10分以下、かつ、メルトフローレートが異なる2つのポリオレフィン系樹脂を主に含んでおり、メルトフローレートの小さいポリオレフィン系樹脂に対するメルトフローレートの大きいポリオレフィン系樹脂の質量比が、1/4以下である樹脂組成物とする。ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンであり、特にホモポリプロピレンであることが好ましい。また、上記樹脂組成物を胴体の外周に被覆して構成される絶縁電線とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物および絶縁電線に関するものであり、さらに詳しくは、自動車、電気・電子機器等に配線される絶縁電線の被覆材として用いて好適な樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた絶縁電線に関するものである。
従来、例えば、自動車や電気・電子機器に配線される絶縁電線等では、被覆材に用いる絶縁材料として、各種の樹脂組成物が用いられている。この種の樹脂組成物では、所望の物性を得るために、当該樹脂組成物を構成するベース樹脂中に各種のフィラーを添加することがある。
例えば、自動車等の絶縁電線においては、近年の地球環境への配慮から、被覆材を構成するベース樹脂として、ポリ塩化ビニル系樹脂に代えてポリオレフィン系樹脂が用いられるようになっている。ポリオレフィン系樹脂自体は難燃性が低いため、難燃性を付与する目的で、ポリオレフィン系樹脂中に非ハロゲン系の難燃剤が添加されることが多い。
例えば、特許文献1〜4には、ポリオレフィン系樹脂に難燃剤として水酸化マグネシウムを添加してなる難燃性樹脂組成物、これを被覆材に用いた絶縁電線が開示されている。
特開2004−83612号公報 特許第3339154号公報 特許第3636675号公報 特開2004−189905号公報
しかしながら、従来の樹脂組成物は以下の点で問題があった。
すなわち、ベース樹脂中にフィラーを添加すると、フィラーの添加量が多くなるにつれて、耐摩耗性等の機械的特性が低下することがある。例えば、ベース樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、非ハロゲン系の難燃剤を用いて十分な難燃性を得ようとすると、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を多量に添加する必要がある。そのため、耐寒性や耐摩耗性が低下するといった問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、フィラーを添加した場合でも、耐寒性を維持しつつ、耐摩耗性を向上させることが可能な樹脂組成物を提供することにある。また、上記樹脂組成物を被覆材に用いた絶縁電線を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る樹脂組成物は、ベース樹脂とフィラーとを含有し、上記ベース樹脂は、メルトフローレイトが10g/10分以下、かつ、メルトフローレートが異なる2つのポリオレフィン系樹脂を主に含んでおり、メルトフローレートの小さいポリオレフィン系樹脂に対するメルトフローレートの大きいポリオレフィン系樹脂の質量比が、1/4以下であることを要旨とする。
ここで、上記メルトフローレートの小さいポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレイトが1g/10分以下であり、上記メルトフローレートの大きいポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレイトが1g/10分超であることが好ましい。
また、上記ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレンであることが好ましい。より好ましくは、上記ポリオレフィン系樹脂はホモポリプロピレンであると良い。
また、上記フィラーは、金属水酸化物を主成分とする難燃剤であることが好ましい。
本発明に係る絶縁電線は、上述した樹脂組成物を導体の外周に被覆してなることを要旨とする。
なお、以下では、「メルトフローレイト」の記載を「MFR」と略記する場合がある。
本発明に係る樹脂組成物は、ベース樹脂とフィラーとを含有し、上記ベース樹脂は、MFRが10g/10分以下、かつ、MFRが異なる2つのポリオレフィン系樹脂を主に含んでおり、MFRの小さいポリオレフィン系樹脂に対するMFRの大きいポリオレフィン系樹脂の質量比が、1/4以下である。そのため、耐寒性を維持しつつ耐摩耗性を向上させることができる。これは以下の理由によるものと推察される。
すなわち、MFRの異なる2つのポリオレフィン系樹脂を主に用いてベース樹脂を構成すると、ベース樹脂がミクロ相分離するとともに、相対的にMFRの大きいポリオレフィン系樹脂にフィラーが偏在しやすくなる。そのため、フィラーの添加効果を得つつ、相対的にMFRの小さいポリオレフィン系樹脂自体の物性を発揮させやすくなり、樹脂組成物全体として、耐寒性を維持しつつ耐摩耗性を向上させやすくなる。
しかしながら、MFRが10g/10分以下というMFRの小さな範囲から2つのポリオレフィン系樹脂を選択した場合には、2つのポリオレフィン系樹脂間のMFR差を大きくとることが困難になる。その結果、2つのポリオレフィン系樹脂が互いに相溶してフィラー分散が均一となりやすく、相対的にMFRの小さいポリオレフィン系樹脂自体の物性発揮効果とフィラー添加効果とのバランスが崩れやすくなる。そのため、耐寒性と耐摩耗性とを両立するのが困難になる。
ところが、本発明で規定されるように、MFRが10g/10分以下というMFRの小さな範囲から2つのポリオレフィン系樹脂を選択する場合であっても、MFRの小さいポリオレフィン系樹脂に対するMFRの大きいポリオレフィン系樹脂の質量比を1/4以下としたときには、2つのポリオレフィン系樹脂の相溶を抑制してMFRの小さいポリオレフィン系樹脂自体の物性を発揮させやすくなり、耐寒性を維持しつつ耐摩耗性を向上させることができるようになるものと推察される。
したがって、本発明に係る樹脂組成物は、耐寒性、耐摩耗性が要求される、電線被覆材、とりわけ、自動車用の電線被覆材等として好適に用いることができる。
ここで、MFRの小さいポリオレフィン系樹脂のMFRが1g/10分以下であれば、分子量が大きく、剛性の高い樹脂の割合が高くなる。そのため、耐摩耗性の向上に寄与しやすくなる。そして、MFRの大きいポリオレフィン系樹脂のMFRが1g/10分超であれば、MFR差を大きくしやすくなるため、両樹脂の相溶抑制効果が大きくなり、耐寒性、耐摩耗性の両立を図りやすくなる。
また、上記ポリオレフィン系樹脂がともにポリプロピレンである場合には、異なるMFRの選択余地が広く、耐寒性、耐摩耗性の調整幅を広くすることが可能となる。とりわけ、上記ポリオレフィン系樹脂がともにホモポリプロピレンである場合には、耐摩耗性の向上に有利である。
また、フィラーが金属水酸化物を主成分とする難燃剤である場合には、難燃性を付与するために比較的多量に添加を行った場合であっても、耐寒性を維持しつつ耐摩耗性を向上させることができる。
本発明に係る絶縁電線は、上述した樹脂組成物を導体の外周に被覆してなる。そのため、フィラー添加効果が十分に発揮されるとともに、耐寒性を維持しつつ良好な耐摩耗性を発揮することができる。
以下、本発明の実施形態に係る樹脂組成物(以下、「本組成物」ということがある。)、本発明の実施形態に係る絶縁電線(以下、「本電線」ということがある。)について詳細に説明する。
本組成物は、ベース樹脂とフィラーとを含有している。ベース樹脂は、2つのポリオレフィン系樹脂を主に含んでいる。2つのポリオレフィン系樹脂は、ともに、MFRが10g/10分以下のものから選択される。また、2つのポリオレフィン系樹脂は、それぞれMFRの値が異なっている。なお、上記MFRとは、JIS K6758に準拠して測定される値である(温度230℃、荷重2.16kg)。
ここで、本組成物において、MFRの小さいポリオレフィン系樹脂に対するMFRの大きいポリオレフィン系樹脂の質量比は1/4以下とされている。耐寒性を維持しつつ耐摩耗性を向上させるためである。上記質量比は、耐寒性と耐摩耗性とのバランスを取りやすい、相溶性等の観点から、好ましくは、1/4.2以下、より好ましくは、1/4.5以下であると良い。
本組成物において、MFRの小さいポリオレフィン系樹脂は、MFRが1g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは、MFRが0.8g/10分以下であると良い。分子量が大きく、剛性の高い樹脂の割合が高くなるため、耐摩耗性の向上に寄与しやすくなるからである。一方、MFRの大きいポリオレフィン系樹脂は、MFRが1g/10分超であることが好ましく、より好ましくは、MFRが1.2g/10分以上、さらに好ましくは、1.5g/10分以上であると良い。MFR差を大きくしやすくなるため、両樹脂の相溶抑制効果が大きくなり、耐寒性、耐摩耗性の両立を図りやすくなるからである。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレン共重合体、ポリエチレン、エチレン共重合体等を例示することができる。上記ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等を例示することができる。プロピレン共重合体としては、エチレン、ビニルアセテート、アクリル酸等の単量体とプロピレンとの共重合体等を例示することができる。エチレン共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等を例示することができる。
ベース樹脂に主に含まれる2つのポリオレフィン系樹脂は、同じ種類のポリオレフィン系樹脂から構成されていても良いし、異なる種類のポリオレフィン系樹脂から構成されていても良い。
同じ種類のポリオレフィン系樹脂から構成される場合としては、具体的には、一方の樹脂がホモポリプロピレンであり、他方の樹脂もホモポリプロピレンである場合、一方の樹脂がブロックポリプロピレンであり、他方の樹脂もブロックポリプロピレンである場合等が挙げられる。また、異なる種類のポリオレフィン系樹脂から構成される場合としては、具体的には、一方の樹脂がホモポリプロピレンであり、他方の樹脂がブロックポリプロピレンである場合、一方の樹脂がポリプロピレンであり、他方の樹脂がプロピレン共重合体である場合、一方の樹脂がポリプロピレンであり、他方の樹脂がポリエチレンである場合、一方の樹脂がポリプロピレンであり、他方の樹脂がエチレン共重合体である場合等が挙げられる。
ベース樹脂に主に含まれる2つのポリオレフィン系樹脂は、好ましくは、同じ種類のポリオレフィン系樹脂から構成されていると良い。耐寒性および耐摩耗性の両立を図りやすくなる等の利点があるからである。ベース樹脂に主に含まれる2つのポリオレフィン系樹脂は、より好ましくは、ともにポリプロピレンであると良い。ポリプロピレンは、異なるMFRの選択の余地が広いため、耐寒性・耐摩耗性の調整幅を広くすることができるからである。とりわけ、ベース樹脂に主に含まれる2つのポリオレフィン系樹脂は、ともにホモポリプロピレンであると良い。ホモポリプロピレンは比較的剛性が高いため、耐摩耗性の向上に有利だからである。
ベース樹脂を構成するポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、1000〜1000000の範囲内にあることが好ましい。上記重量平均分子量が1000以上であると、耐摩耗性の向上効果を得やすくなるからである。一方、分子量が1000000以下であると、良好な加工性を確保しやすくなるからである。なお、上記重量平均分子量は、GPC法により測定することができる。
ベース樹脂を構成するポリオレフィン系樹脂の弾性率は、好ましくは、1000MPa以上、さらに好ましくは、1200MPa以上であると良い。耐摩耗性の向上に有利だからである。一方、上記弾性率の上限は、好ましくは、4000MPa以下、より好ましくは、3800MPa以下、さらに好ましくは、3500MPa以下であると良い。絶縁電線の被覆材に用いたときに、低温での巻き付け試験にてひびが入り難い等、低温特性の向上に有利だからである。なお、上記弾性率は、JIS K7161に準拠して測定することができる。
ベース樹脂を構成するポリオレフィン系樹脂は、コストが低減できるなどの観点から、ともに変性されていない(官能基が導入されていない)ことが好ましい。もっとも、ベース樹脂を構成するポリオレフィン系樹脂は、変性されていても良い。この場合、ベース樹脂を構成するポリオレフィン系樹脂は、ともに変性されていても良いし、未変性のポリオレフィン系樹脂と変性されたポリオレフィン系樹脂とから構成されていても良い。
上記変性によりポリオレフィン系樹脂に導入可能な官能基としては、例えば、カルボン酸基(カルボキシル基)、酸無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、シラン基などを挙げることができる。これらのうち、1種の官能基のみが導入されていても良いし、2種以上の官能基が導入されていても良い。
ポリオレフィン系樹脂に官能基を導入する方法としては、具体的には、官能基を有する化合物をポリオレフィン系樹脂にグラフト重合して、グラフト変性オレフィン重合体とする方法や、官能基を有する化合物とオレフィンモノマとを共重合させてオレフィン共重合体とする方法等が挙げられる。
本組成物において、フィラーは、特に限定されるものでなく、本組成物に付与したい機能等を考慮して選択することができる。上記フィラーとしては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、メラミンシアヌレート、カーボンブラック、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
本組成物に対して難燃性を付与する場合、上記フィラーは、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物を主成分とする難燃剤を好適に用いることができる。
上記金属水酸化物のうち、難燃性、コスト、ハンドリング性などの観点から、水酸化マグネシウムが好ましい。水酸化マグネシウムは、天然鉱物から得られるものであっても良いし、海水中のマグネシウム成分から得られるものであっても良い。
上記フィラーの粒径は、平均粒径で0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μmである。フィラーの平均粒径が0.1μm以上であれば、二次凝集が起り難く、機械的特性の低下も抑制しやすい。また、フィラーの平均粒径が20μm以下であれば、電線被覆材に用いた場合に外観不良となり難い。
上記フィラーとして、金属水酸化物を選択する場合、金属水酸化物の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し、通常、30〜250質量部の範囲であれば、自動車等の絶縁電線に要求される難燃性が得られる。金属水酸化物の配合量は、より好ましくは、ベース樹脂100質量部に対し、50〜200質量部、さらに好ましくは、60〜180質量部である。
上記フィラーとして、金属水酸化物を選択する場合、金属水酸化物は、その表面が表面処理剤により表面処理されていても良い。表面処理剤としては、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンの単独重合体もしくは相互共重合体、あるいは、それらの混合物等を用いることができる。また、上記の表面処理剤は変性されていても良い。
表面処理剤の変性は、例えば、不飽和カルボン酸やその誘導体等を変性剤として用い、上記のαオレフィン重合体等の重合体にカルボキシル基(酸)を導入して酸変性する方法が挙げられる。上記変性剤としては具体的には、不飽和カルボン酸としてはマレイン酸、フマル酸等が挙げられ、その誘導体としては無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル等が挙げられる。上記変性剤としては、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。またこれらの変性剤は、1種または2種以上を併用しても良い。表面処理剤に酸を導入する酸変性方法としては、グラフト重合や直接法等が挙げられる。また、酸変性量としては、変性剤の使用量として、通常、重合体に対して0.1〜20質量%程度であり、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
金属水酸化物を表面処理剤で処理する際の表面処理方法は特に限定されず、各種の処理方法を用いることができる。金属水酸化物の表面処理方法としては、例えば、金属水酸化物の粉砕等と同時に行う方法や、予め粉砕等した金属水酸化物と表面処理剤を混合して後から処理する方法が挙げられる。また、処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理方法、溶媒を用いない乾式処理方法のいずれでも良い。
金属水酸化物の湿式処理に用いられる溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素等が用いられる。また、金属水酸化物の表面処理は、本組成物の調製時に、金属水酸化物とベース樹脂等に表面処理剤を加えて組成物を混練する際に同時に処理を行う方法等であっても良い。
本組成物は、上記成分以外に、物性を損なわない範囲で、必要に応じて、他の樹脂や添加剤を適宜配合することができる。他の樹脂としては、例えば、ポリアミドなどを例示することができる。また、他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、銅害防止剤(金属不活性化剤)、紫外線吸収剤、紫外線隠蔽剤、加工助剤(ワックスなど)、顔料などを例示することができる。
本組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。本組成物は、例えば、各成分と、必要に応じて添加される他の成分とを配合し、これらをタンブラーなどでドライブレンドしたり、もしくは、バンバリミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸混練押出機、ロール等の混練機で溶融混練して均一に分散することで調製することができる。
上述した本組成物の用途としては、例えば、自動車、電気・電子機器等に配線される絶縁電線の被覆材等を例示することができる。
2.本電線
本電線は、本組成物を導体の外周に被覆してなる。被覆材は、単層であっても良いし、2層以上の層により構成されていても良い。なお、本組成物は、導体と接触した状態で被覆されていても良いし、1または2以上の他の組成物を介して導体の外周に被覆されていても良い。
本電線において、導体径や本組成物よりなる被覆材の厚み等は特に限定されず、絶縁電線の用途などに応じて適宜決定することができる。導体は、通常の絶縁電線に使用される銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属が利用できる。
本電線は、自動車、電気・電子機器等に配線される絶縁電線として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(実施例および比較例)
表1および表2に記載の成分組成(質量部)となるように、ベース樹脂、水酸化マグネシウム、添加剤を加え、二軸混練機を用いて200℃で混合した後、ペレタイザーにてペレット状に成形して樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを押出成形機により、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積:0.5mm)の外周に0.2mm厚で押し出し、絶縁電線を得た。
実施例および比較例で得られた絶縁電線を用いて、耐寒性試験および耐摩耗性試験を行った。試験の結果を表1および表2に示す。各試験方法は下記の通りである。
〔耐寒性試験方法〕
耐寒性試験は、JIS C3005に準拠して行った。すなわち、実施例、比較例に係る絶縁電線を38mmの長さに切断し試験片とし、試験片を耐寒性試験機に装着し、所定の温度まで冷却し、打撃具で打撃して、試験片の打撃後の状態を観察した。5本の試験片を用いて、5本の試験片が全て割れた温度を耐寒温度とした。
〔耐摩耗性試験方法〕
耐摩耗性試験は、社団法人自動車技術規格「JASO D611−94」に準拠し、ブレード往復法により行った。すなわち、実施例、比較例に係る絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。そして、23±5℃の室温下で試験片の被覆材に対し軸方向に10mm以上の長さでブレードを毎分50回の速さで往復させ、導体に接するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかかる荷重は7Nとした。往復回数が200回を超えた場合を特に良好である(「◎」)とした。
Figure 2010260984
Figure 2010260984
(ベース樹脂)
・EA9BT :ホモポリプロピレン、日本ポリプロ社製、未変性
・E111G :ホモポリプロピレン、プライムポリマー社製、未変性
・PS207A :ホモポリプロピレン、サンアロマー社製、未変性
・EA6A :ホモポリプロピレン、日本ポリプロ社製、未変性
・FY6C :ホモポリプロピレン、日本ポリプロ社製、未変性
・MA4AHB :ホモポリプロピレン、日本ポリプロ社製、未変性
・EC7 :ブロックポリプロピレン、日本ポリプロ社製、未変性
・EC9 :ブロックポリプロピレン、日本ポリプロ社製、未変性
・BJS−MU :ブロックポリプロピレン、プライムポリマー社製、未変性
・E−185G :ブロックポリプロピレン、プライムポリマー社製、未変性
・PB170A :ブロックポリプロピレン、サンアロマー社製、未変性
・MA3AHTA:ホモポリプロピレン、日本ポリプロ社製、未変性
(金属水酸化物)
・水酸化マグネシウム:協和化学工業社製、商品名「キスマ5A」
(添加剤)
・酸化防止剤:チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1010」
表1および表2によれば、比較例に係る絶縁電線は、いずれも本発明で規定される樹脂組成物が導体の外周に被覆されていない。そのため、水酸化マグネシウム添加による耐摩耗性の低下を抑制することができていないことが分かる。
これらに対し、実施例に係る絶縁電線は、いずれも本発明で規定される樹脂組成物が導体の外周に被覆されている。そのため、水酸化マグネシウムが添加されていても、耐寒性を維持しつつ良好な耐摩耗性を発揮できることが分かる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

Claims (6)

  1. ベース樹脂とフィラーとを含有する樹脂組成物であって、
    前記ベース樹脂は、メルトフローレイトが10g/10分以下、かつ、メルトフローレートが異なる2つのポリオレフィン系樹脂を主に含んでおり、
    メルトフローレートの小さいポリオレフィン系樹脂に対するメルトフローレートの大きいポリオレフィン系樹脂の質量比が、1/4以下であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記メルトフローレートの小さいポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレイトが1g/10分以下であり、
    前記メルトフローレートの大きいポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレイトが1g/10分超であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンであることを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 前記フィラーは、金属水酸化物を主成分とする難燃剤であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂組成物を導体の外周に被覆してなることを特徴とする絶縁電線。
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