JP2010259393A - 有用物質の製造方法 - Google Patents

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大樹 浦川
Shingo Koyama
伸吾 小山
Hiroyuki Konishi
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Abstract

【課題】高純度の有用物質を効率良く製造できる方法を提供する。
【解決手段】疎水性の有用物質が培養液中で固体状で析出している状態のときに菌体を含む培養液に気体を混入させて気泡を生じさせると気泡界面付近に有用物質が濃縮されること、この気泡を捕集することにより菌体と有用物質とを効率よく分離することが可能となる。精製プロセスが簡略化でき、さらに菌体由来の着色が低減した有用物質を効率よく回収できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、有用物質、特に微生物発酵生産物の製造方法に関する。
医薬成分、香料、香料原料、油脂やそれらの中間体等の有用物質の中には酵素や微生物等の生体触媒を用いて製造されるものが数多く存在する。このとき、製造された有用物質を高品質なものとするには、混在する微生物等由来の成分を混入させないことが重要である。
例えば、3a,6,6,9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン(以下、「化合物A」と表記する)は、抹香鯨の体内に生ずる病的分泌物アンバーグリースに含まれている香気成分で、アンバー系合成香料として欠かせない重要化合物である。化合物Aは、主にクラリーセージ(Salvia sclarea L.)から抽出されたスクラレオールを出発原料として化学合成法により製造されている。化合物Aの中間体としては、3a,6,6,9a−テトラメチルデカヒドロナフト[2,1−b]フラン−2(1H)−オン(以下、「スクラレオリド」と表記する)及び1−(2−ヒドロキシエチル)−2,5,5,8a−テトラメチルデカヒドロナフタレン−2−オール(以下、「ジオール体」と表記する)が知られている。
しかしながら、上記化学合成法では環境負荷が大きく、また収率、純度を十分に確保できないという問題があったため、スクラレオールから微生物変換により化合物A中間体を得、これを環化させて化合物Aを製造する方法が報告されている(例えば特許文献1〜3)。
具体的には、上記特許文献1〜3において、微生物変換により得られたジオール体の分離・精製は、培養液を酢酸エチルにより溶剤抽出した後、乾燥して得られた抽出物を温ヘキサン/酢酸エチル又はヘキサン/クロロホルムに溶解し、溶解液から結晶化することにより行っている。
また、生体反応によって産生する疎水性化合物を水中に溶解させ、気泡界面に捕集して水性媒体から分離するという方法が知られている(特許文献4)。
特開平3−224478号公報 特開昭62−74281号公報 特開平7−132082号公報 特開2008−49243号公報
しかしながら、前記特許文献1〜3による生成物の分離・精製方法では大量の有機溶剤を使用するために、コスト負荷が大きくなるばかりでなく、プロセスの煩雑化も懸念される。
また、微生物変換された有用物質を含む培養液には菌体も含まれているが、この培養液を酢酸エチルに代表される有機溶剤に懸濁することで、却って菌体内の夾雑成分も同時に抽出してしまうことが判明した。このため、得られた有用物質に菌体由来の着色・異臭の成分が混入してしまうので、この有用物質又はこれを原料として製造した化合物について更なる脱臭・脱色などの精製を行なう必要がある。また、培養液を懸濁した有機溶剤から菌体を除去する必要があるため、膜分離などの製造コストが多くかかり、作業効率もよくない。
従って、本発明は、高純度の有用物質を効率良く製造できる方法を提供することを課題とする。
本発明者は、着色成分の有用物質への混入を防ぐためには有機溶剤抽出の前に菌体と有用物質を分離することが重要であると考え、有用物質の効率的な製造方法について検討したところ、疎水性の有用物質が培養液中で固体状で析出している状態のときに菌体を含む培養液に気体を混入させて気泡を生じさせると気泡界面付近に有用物質が濃縮されること、この気泡を捕集することにより菌体と有用物質とを効率よく分離することが可能となり精製プロセスが簡略化できること、さらに菌体由来の着色が低減した有用物質を効率よく回収できること、また製造コストが低減できることを見出した。
すなわち、本発明は、原料基質を水性反応液中で微生物変換し、微生物外に排出されて固体状で析出した疎水性の有用物質を含有する培養液に気体を混入させ、発生する気泡を捕集して有用物質を回収する有用物質の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、培養液から高濃度の有用物質が簡便かつ効率よく分離回収できる。また得られた有用物質は菌体を含まず、かつ菌体由来の着色が低減されていることから工業的に極めて有利である。
本発明において、微生物変換に利用できる微生物としては、水性反応液中で原料基質を変換した結果、疎水性の有用物質を生成する能力を有する微生物であれば特に限定されない。本発明で製造される有用物質とは、香料、香料原料、油脂、油脂誘導体として使用される化合物又はその中間体であり、水性反応液からの生成物の泡沫分離性の点から、疎水性のものである。
本発明においては、一般的に用いられている培養槽(反応槽)にて、水性反応液(培地)中で微生物を用いて原料基質が変換された疎水性の有用物質及び微生物(本明細書では「菌体」ともいう。)を含む培養液を得る。
そして、培養液中において、微生物外に排出された有用物質が固体状で析出した状態で、培養液に気体を混入させることにより気泡(泡沫)を生じさせる。有用物質は気泡の界面付近に移行しつつ濃縮され、菌体及び原料基質を含む同一培養槽から分離される。この有用物質の濃縮された気泡を捕集することにより、有用物質を効率よく回収できる。以下、本方法を「泡沫分離法」、本操作を「泡沫分離操作」ともいう。
気体を混入させる方法としては、培養液に気泡を発生させることができれば特に限定されず、例えば、槽(塔)の底部や側部等といった特定の位置に吹き込み口を設け、ここから気体を吹き込む方法や気体の存在下、攪拌等によって培養液と気体とを混合させる方法が挙げられる。具体的には、培養液を得るために用いた同一培養槽(塔)に、気体を吹き込む方法が簡便な点から好ましく、この場合、槽(塔)内に、気泡を発生させ、培養液から分離させる気泡分離部を別途備えてもよい。また、培養槽とは別に気泡分離槽(塔)を設け、培養槽から培養液を流入させた気泡分離槽に気体を吹き込む方法が、有用物質の生成と回収とが連続的に行える点から好ましい。
前記気体としては、空気、窒素ガス等の不活性気体が挙げられ、コストの点から、空気が好ましい。
気体を混入させる時間は、有用物質の回収率の点から、好ましくは1〜24時間であり、より好ましくは3〜12時間であり、特に好ましくは5〜6時間である。
また、気体を混入させる際の培養液の温度は、有用物質の回収率の点から、好ましくは5〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
また、混入させる気体の通気線速度は、特に限定されないが、有用物質の回収率の点から、好ましくは1〜100cm/分であり、より好ましくは2〜50cm/分であり、特に好ましくは5〜25cm/分である。ここで、通気線速度とは、培養槽へ混入する気体の通気量(cm3/分)を培養槽の断面積(cm2)で割った値であり、通気させる容器の大きさに左右されずに通気量の大小を比較することのできるパラメータである。
このようにして発生させる気泡は、有用物質が高濃縮される点から、ミリサイズ、マイクロサイズやナノサイズといった小さい気泡が好ましいので、多孔板又は多孔管に気体を通過させて小さい気泡を発生させることが好ましい。このときの孔径は0.1〜10000μmが好ましく、更に1〜5000μm、特に5〜1000μm、殊更10〜100μmとするのが好ましい。多孔板又は多孔管の材質は、特に限定されず、具体的には、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどの樹脂製、セラミック製、金属製などが挙げられ、多孔質膜であっても良い。
なお、発生する気泡のサイズや形成速度を調整するため、界面活性剤や消泡剤を用いてもよい。
発生した気泡を捕集する手段としては、オーバーフローした泡を他の容器に捕集する、ポンプにより吸引して他の容器に捕集するなどが挙げられ、ポンプによって吸引して捕集することが好ましい。
本発明において、気体を混入する際に、有用物質は固体状で析出している状態になっていればよい。本発明における有用物質は疎水性であるため水性反応液中では固体状で析出し易いものであるが、析出を促進するため、例えば培養液の冷却、pH調整、濃縮、蒸発及び溶解度低下のための溶剤の添加等の一般的な手段を用いてもよい。
培養液に気体を混入させる際の有用物質の含有量は0.1g/L以上であることが好ましく、更に1〜200g/L、特に5〜100g/L、殊更10〜50g/Lであることが、生成した有用物質のほとんどが固体状で析出し、簡便かつ効率よく分離回収できる点、得られた有用物質が菌体を含まず、かつ菌体由来の着色・異臭が生じない点から好ましい。
従来、泡沫分離法を用いれば、培養液や反応液等に微量又は少量含まれる疎水性物質を効率よく回収することができるといわれている。本発明においては、生成される有用物質は、25℃の培養液中の、有用物質の含有量が0.1g/L以上の場合に固体状で析出する程度の疎水性であることが好ましい。その程度の疎水性であると、気泡中に有用物質が高濃縮される一方で菌体はほとんど混入しておらず、菌体の分離工程を簡略化することができる点、培養液や菌体に由来する着色や異臭の成分の有用物質への混入を低減できる点、高純度かつ高品質の有用物質を得ることができる点から、好ましい。有用物質の疎水性の度合いは、25℃の培養液中の、有用物質の含有量が、更に0.05g/L以上、特に0.03g/L以上の場合に固体状で析出するものであることが好ましい。培養液中で有用物質が固体状で析出している程度は、25℃の培養液に含有される全有用物質のうち90質量%以上であることが好ましく、更に95質量%以上、特に98質量%以上であることが、有用物質の回収率、培養液や菌体に由来する着色や異臭の成分の有用物質への混入を低減できる点から好ましい。
なお、本発明でいう「疎水性」とは、水に対する親和性が低い性質、即ち水に溶解し難い性質(難水溶性)、水と混合し難い性質、あるいは水をはじく性質をいう。また、固体状で析出しているものは、結晶であると非結晶であるとを問わないが、結晶状態であることが好ましい。
本発明においては、培養液に気体を混入させる際又はこれに先立ち、培養液に対して、破砕・粉砕などの物理的処理、アルカリや界面活性剤処理などの化学的処理、溶菌酵素などの生化学的処理などを行なわないことが好ましい。従来の泡沫分離技術においては、その分離効率を向上させるために、前記処理を単独で又は組み合わせて行うのが通常であるが、本発明においては、菌体内に存在する夾雑物の溶出抑制の点、製造される有用物質の匂い及び色相を良好なものとする点、有用物質の回収率の向上の点から、当該処理を行わないことが好ましい。
また、本発明においては、泡沫分離操作を行う際の培養液中の有用物質の粒径が1〜1000μmであることが好ましく、更に5〜500μm、特に10〜200μmとすることが、菌体内に存在する夾雑物の溶出抑制の点、製造される有用物質の匂いや色相を良好なものとする点、有用物質の回収率向上の点から好ましい。
以下に、本発明の有用物質の製造方法の好ましい実施態様の一例として、次の式(1a)及び/又は(1b)
Figure 2010259393
で表される化合物(以下、「スクラレオール」とする)を基質として、前記化合物Aの中間体である次の式(2)
Figure 2010259393
で表されるジオール体の製造方法を説明する。ジオール体の製造法において、微生物変換に利用できる微生物としては、スクラレオールを基質としてジオール体を生成する能力を有する微生物であれば特に限定されないが、例えば子嚢菌網(Ascomycetes)に属する微生物、クリプトコッカス(Cryptococcus)属に属する微生物、担子菌網に属する微生物、ハイホジーマ(Hyphozyma)属に属する微生物等が挙げられる。これらのうち、化合物A中間体であるジオール体の生成効率の点から、子嚢菌網に属する微生物、ハイホジーマ属に属する微生物が好ましい。子嚢菌網に属する微生物としては、例えば、Ascomycete sp. KSM-JL2842と命名され、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM P-20759として2006年1月12日に寄託された微生物が挙げられる。ハイホジーマ属に属する微生物としては、例えば特許第2547713号明細書に記載のATCC20624株が挙げられる。
上記微生物は、化合物A中間体であるジオール体の生成能を指標として土壌から単離することができる。化合物A中間体であるジオール体の生成能は供試微生物を前記式(1a)及び/又は(1b)で表される化合物含有培地にて培養し、培地中に含まれる化合物A中間体であるジオール体を検出することで評価することができる。化合物A中間体であるジオール体の検出は、例えばガスクロマトグラフィー(GC)、気液クロマトグラフィー(GLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、赤外スペクトル(IR)、核磁気共鳴(NMR)等従来公知の分析方法を用いることができる。
微生物を培養する際の培養条件としては、特に限定されず、例えば、振盪培養、嫌気培養、静置培養、醗酵槽による培養の他、休止菌体反応も用いることができる。また、スクラレオールを含み、該微生物が生育可能である培地であればいかなる組成の培地をも使用することができる。使用可能な培地としては、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、有機酸塩等の炭素源;無機・有機アンモニウム塩、窒素含有有機物、アミノ酸等の窒素源;塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等の金属ミネラル類及びビタミン類等を含有する液体培地等を挙げることができる。該組成の培地に、培養条件等に応じて界面活性剤や消泡剤を添加してもよい。
培地に添加するスクラレオールの濃度は、化合物Aの中間体であるジオール体の生成効率の点から、培地中、1〜200g/Lとすることが好ましく、5〜100g/Lとすることがより好ましく、10〜50g/Lとすることが特に好ましい。基質は培養に先立って培地に添加してもよく、培養途中で添加してもよい。
培養の際の至適pH範囲及び至適温度は、特に限定されず、例えばpH範囲は好ましくはpH3〜8、より好ましくはpH4〜8、特に好ましくはpH5〜7であり、また温度範囲は好ましくは10〜35℃、より好ましくは15〜30℃、特に好ましくは20〜30℃である。培養日数は、培地中のジオール体が所望の濃度以上になるまで培養するのが好ましく、具体的には、好ましくは2〜8日、より好ましくは6〜8日である。
前記泡沫分離方法に従って培養液から泡沫分離操作を行うことにより、泡沫を捕集してジオール体を回収する。捕集された気泡に含まれるジオール体は、有機溶剤によって溶解させるが、気泡に含まれるジオール体は高濃度となっているため用いる有機溶剤の使用量を低減することができる。更に必要に応じてジオール体の溶解液に混入している菌体や不溶物を遠心分離や濾過などの分離手段により除去してもよい。
前記有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル等が挙げられ、メタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましく、特にエタノールが好ましい。これら有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
このとき、有機溶剤の使用量は、泡沫分離前の培養液100体積部に対し、25〜50体積部が好ましく、35〜45体積部がより好ましい。また、有機溶剤の使用量は、ジオール体の回収率及び効率的製造の点から、捕集した泡沫中に存在するジオール体が完全溶解するのに必要な溶剤量の2体積倍以上、更に3〜200体積倍とすることが好ましい。
前記遠心分離は、分離板型、円筒型、デカンター型等の一般的な遠心分離機を用いることが好ましい。遠心分離条件としては、温度が5〜60℃、更に20〜30℃であるのが好ましく、回転数と時間は、回転数と時間は、例えば円筒型の場合、2000〜12000r/min、更に3000〜12000r/min、特に10000〜12000r/minで、1〜30分、更に2〜10分、特に5〜10分であるのが好ましい。
また、前記濾過は、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過や自然濾過などの一般的な手段を用いればよく、当該濾過に用いる濾過フィルターの大きさは、ジオール体の回収率及び純度向上の点から、目開き0.1〜10μmが好ましく、特に目開き0.2〜1μmが好ましい。フィルターの材質としては、特に限定されず、具体的には、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどの樹脂製、セラミック製、金属製などが挙げられる。
得られた濾液や上澄み液を乾燥又は晶析することにより、着色・異臭の低減した高純度のジオール体を収率良く得ることができる。当該ジオール体は、粉末状、固体状、液体状の何れの状態であってもよい。
前記乾燥は、例えば、噴霧乾燥、伝熱乾燥、流動乾燥、回転式ドラム乾燥、凍結乾燥、気流乾燥及び減圧乾燥など一般的に知られている乾燥手段を用いればよい。これらのうち、減圧乾燥を用いるのが好ましい。加熱する際の乾燥温度は室温〜90℃が好ましい。
また、前記濾過は、上記のような濾過手段を用いればよい。
前記晶析の方法は、特に制限されない。一例として、有機溶剤に溶解後、必要により活性炭濾過や精密濾過を行う。次いで有機溶剤の存在下、冷却、濃縮、貧溶剤の添加等により、ジオール体の結晶を析出させる。具体的には、有機溶剤を加えた後、20〜80℃、更に好ましくは40〜70℃に昇温する。その後、室温まで放冷して結晶を析出させる。なお、昇温、冷却は一定速度で行う必要はなく結晶が析出しはじめれば、その温度でしばらく保持するのが好ましい。そして、結晶を有機溶剤と分離するため、上記のような濾過や遠心分離などを行い、ケークを得、適宜、有機溶剤でこれを洗浄する。得られたケークを上記のような乾燥を行い、ジオール体の結晶物を得る。当該乾燥によりジオール体結晶物の異臭の低減をすることができる。
前記晶析に用いられる有機溶剤としては、前述の泡沫中のジオール体を溶解させるために用いられる有機溶剤が挙げられる。
貧溶剤の添加による場合は、水を用いることが好ましい。
ケークを洗浄する有機溶剤は、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等を用いることが好ましい。当該溶剤の量は、ジオール体の純度向上の点から、ケーク100gに対して50〜300mLとするのが好ましく、また洗浄に用いる溶剤の温度は5〜90℃が好ましい。
得られたジオール体は、酸性触媒、例えばp−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸クロリド、触媒量の硫酸又は酸性イオン交換体を用いて、種々の溶剤中で脱臭環化により化合物Aに変換される。
実施例1〜3、比較例1及び2
[微生物変換]
Ascomycete sp. KSM-JL2842株を2.1質量%YMブロスに1白金耳植菌し、24℃にて3日間振盪培養したものを種菌とした。次に、2.1質量% YMブロス、0.1質量%硫酸マグネシウム・7水和物を含む培地へ2質量%植菌し、2日間リード培養を行った後、10質量%Tween80、20質量%スクラレオールからなる基質を用い、培養液中のスクラレオール濃度が43g/L、22g/L、1.5g/L及び0.044g/Lと4種類の濃度となるように添加し、それぞれ基質添加から8日間、24℃、200rpmにて振盪培養を行った。
得られた培養液を基質濃度が高い方から培養液1〜4とした。なお、培養液1〜3については生成したジオール体が結晶として析出しており、培養液4についてはジオール体の結晶は認められず、溶解していた。
[泡沫分離操作]
円筒容器(500mL)の底に気泡を発生させるためのメッシュ(孔径20μm)を設置し、前記培養液1〜4(250mL)をそれぞれ円筒容器内に注いだ。ここで、培養後であって泡沫分離操作前の培養液1〜4の初期ジオール体濃度を表2に示した。温度20〜25℃の培養液に空気を通気線速度8cm/分で6時間通気し、円筒容器から溢れる泡沫を吸引して捕集し、培養液から泡沫分離操作により捕集した泡沫と捕集後の残りの培養液を得た。
「泡沫分離操作により捕集した泡沫」について、以下に示す測定方法に従い、[ジオール体の含有量]、[ジオール体への菌体の混入度合い]、[ジオール体回収率]及び[ジオール体収量]について、求めた結果を表2に示す。
また、培養液1は、「泡沫分離前の培養液」について[ジオール体への菌体の混入度合い]を求め、結果を表1に示す。
[ジオール体含有量の測定方法]
上記「培養後であって泡沫分離操作前の培養液」、「培養液から泡沫分離操作により捕集した泡沫」及び「泡沫分離操作後の残りの培養液」を、それぞれ「泡沫分離前の培養液」、「捕集した泡沫」及び「泡沫分離後の培養液」と略す。
表2中の「培養後のジオール体濃度(g/L)」とは、泡沫分離前の培養液中のジオール体濃度、すなわち「培養液中のジオール体の含有量(ジオール体g/培養液L)」である。
泡沫分離前の培養液を、遠心分離(3000rpm、10分間)した後に上澄み液を除き、沈殿物を得た。次に、得られた沈殿物に、泡沫分離前の培養液100体積部に対して蒸留水を40体積部加えて混合攪拌してこの沈殿物を分散し、再び遠心分離(3000rpm、10分間)した後に上澄み液を除き、沈殿物を得た。この操作をもう一回繰り返した後、得られた沈殿物に、泡沫分離前の培養液100体積部に対してエタノールを40体積部加えて混合攪拌して沈殿物中の可溶化物を溶解させ、エタノール抽出液とした。
エタノール抽出液中のジオール体含有量をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、泡沫分離前の培養液中のジオール体含有量(g/L)を求めた。
GC分析装置は6890N GC System(Agilent technologies社)を用い、分析条件は次の通りとした。
検出器:FID(Flame Ionization Detector、Agilent technologies社)
カラム:DB-WAX(φ0.1mm×10m、J&W社)
オーブン温度:250℃
注入口温度:250℃
注入法:スプリットモード(スプリット比100:1)
トータルフロー:200mL/分
カラム流速:0.4mL/分
また、捕集した泡沫、及び泡沫分離後の培養液について、「泡沫分離前の培養液100体積部」を基準として蒸留水及びエタノールをそれぞれ40体積部使用し、上記と同様にして、これらのジオール体の含有量(ジオール体g/培養液L)を求めた。
[ジオール体への菌体の混入度合いの測定方法]
菌体が存在する混合物にエタノールを添加すると、菌体由来の夾雑成分が抽出され、エタノールが黄色を呈するようになり、この夾雑成分の濃度が高いほど黄色が濃くなる。よって、エタノール抽出液について黄色の吸収波長である420nmの吸光度を測定することにより、ジオール体へ菌体が混入している度合いを評価することができる。
そこで、ジオール体単位質量当たりの420nmの吸光度を「ジオール体への菌体の混入度合い」と定義し、次の式(3)に従って算出した。即ち、当該値が大きいほど、ジオール体への菌体の混入度合いが高く、ジオール体と菌体の分離効率が低いことを示している。
ジオール体への菌体の混入度合い[ABS420nm/g-ジオール体]=エタノール抽出液の420nmにおける吸光度[ABS]/エタノール抽出液中のジオール体質量[g] 式(3)
吸光度の測定は、U-2000型ダブルビーム分光光度計(日立製作所社製)を用い、分析条件は次の通りとした。
使用セル:石英セル
光路長:10mm
測定波長:420nm
また、エタノール中のジオール体質量は、前記[ジオール体含有量の測定方法]記載の方法に従って求めた。
また、ジオール体と菌体との分離効率の点から、「ジオール体への菌体の混入度合い」は、0.05以下が好ましく、0.015以下がさらに好ましい。
[ジオール体回収率の測定方法]
前記[ジオール体の含有量の測定方法]に従って求めた各培養液中のジオール体含有量に基づき、次の式(4)に従ってジオール体の回収率を算出した。
ジオール体回収率[%]={(初期ジオール体質量[g]−残存ジオール体質量[g])/初期ジオール体質量[g]}×100 式(4)
ここで、初期ジオール体質量とは、泡沫分離操作前の培養液中のジオール体質量のことである。また、残存ジオール体質量とは、培養液に通気して、泡沫分離操作をした後に培養液中に残存するジオール体質量のことである。下記実施例においては6時間通気後に回収率を測定した。
[ジオール体収量の算出方法]
前期「ジオール体回収率」と培養後のジオール体濃度から次の式(5)に従ってジオール体収量を算出した。
ジオール体収量[g/L]=(培養後のジオール体濃度[g/L]×ジオール体回収率[%])/100 式(5)
Figure 2010259393
Figure 2010259393
表1の結果から、泡沫分離操作を行うことで、ジオール体への菌体の混入度合いは0.078 ABS420nm/g-ジオール体から0.005 ABS420nm/g-ジオール体にと約94%減となった。このことから、泡沫分離操作が有用物質と菌体を分離するのに非常に効率的な方法であることがわかった。
表2の結果から、生成したジオール体が培養液中に結晶として析出していた培養液1〜3と、ジオール体が培養液中に溶解していた培養液4について、その泡沫分離操作の効果を比較すると、ジオール体が結晶として析出している状態だと、ジオール体への菌体の混入度合いが極めて低く、ジオール体と菌体との分離効率が高くなることが分かった(実施例1〜3)。特に、培養液中のジオール体濃度が高くなるほど、その分離効率が著しく良くなることも分かった。
一方、ジオール体の回収率及びジオール体収量に関しては、ジオール体が培養液中に結晶として存在し、その濃度が高くなることによって極めて良くなることが分かった。なお、ジオール体が培養液中に溶解している場合は、ジオール体の回収率自体はある程度良いものの、ジオール体の収量を比較すると極端に低く、製造効率は極めて悪いことが分かった(比較例2)。
以上から、生成した有用物質が培養液中に結晶で存在し、かつその濃度が高くなると、有用物質の菌体との分離効率が、有用物質の回収率及び収量が、共に極めて良くなることが分かった。

Claims (7)

  1. 原料基質を水性反応液中で微生物変換し、微生物外に排出されて固体状で析出した疎水性の有用物質を含有する培養液に気体を混入させ、発生する気泡を捕集して有用物質を回収する有用物質の製造方法。
  2. 前記培養液に気体を混入させる際に有用物質が0.1g/L以上含有されているものである請求項1記載の製造方法。
  3. 前記培養液に対して、物理的処理、化学的処理又は生化学的処理を行わずに気体を混入させる請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記培養液に気体を混入させる際、孔径0.1〜10000μmの多孔板又は多孔管を通して行う請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
  5. 前記培養液に混入する気体の通気線速度が、1〜100cm/分である、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
  6. 前記培養液に気体を混入する時間が、1〜24時間である、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
  7. 前記原料基質が、次の式(1a)及び/又は(1b)
    Figure 2010259393
    で表される化合物であり、製造される有用物質が式(2)
    Figure 2010259393
    で表される1−(2−ヒドロキシエチル)−2,5,5,8a−テトラメチルデカヒドロナフタレン−2−オールである請求項1〜6のいずれか1項記載の有用物質の製造方法。
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