JP2010256337A - 時計 - Google Patents

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Abstract

【課題】時計部品の破損や変形を防止可能な時計を提供する。
【解決手段】時計は、秒CG車軸211、および秒CG車軸211に固定され、復針レバー330の圧接で所定位置に回転するハートカム210を有する秒CG車208と、分CG車軸225、および分CG車軸225に固定され、復針レバー330の圧接で所定位置に回転するハートカム224を有する分CG車220と、秒CG車軸211を回転可能に保持する秒CG軸受部810と、分CG車軸225を回転可能に保持する分CG軸受部820と、を備え、これらの復針レバー330、CG車208,220、およびCG軸受部810,820は、金属ガラス合金により形成される。
【選択図】図4

Description

本発明は、衝突部材が被衝突部材に衝突する構造を有する時計に関する。
従来、指針を備えたアナログ表示式クロノグラフ付時計は、秒クロノグラフ針、分クロノグラフ針などのクロノグラフ針を備えている。そして、時計に設けられている操作ボタンを操作することで、クロノグラフ針を駆動させ、時間計測の開始、停止、および帰零動作を実施する。ここで、クロノグラフ針が停止した状態から、元のゼロ位置に復帰する動作(帰零動作)は、クロノグラフ針が設けられる軸部に固定されたハートカムに対して、復針レバーを圧接させることで実施される(例えば、特許文献1、2参照)。
国際公開第99/054792号パンフレット 実用新案登録第2605696号公報
ところで、上述のようなクロノグラフ付時計では、復針レバーでハートカムを圧接する。この場合、復針レバーが衝突部材となり、ハートカムが被衝突部材となり、復針レバーおよびハートカムに衝突による衝突応力が発生する。また、復針レバーがハートカムに圧接されると、ハートカムの軸部が、軸部を受ける軸受部に衝突する。すなわち、軸部が衝突部材となり、軸受部が被衝突部材となって、これら軸部および軸受部の間に衝突応力が発生する。
このように、衝突部材が被衝突部材に衝突すると、衝突応力により、これらの衝突部材や被衝突部材の時計部品が破損したり、変形したりする場合がある。
例えば、被衝突部材となる軸受部に着目すると、軸受部を高硬度であるルビーなどにより形成した場合、長期使用で軸部および軸受部の衝突が繰り返されると、石割れが発生してしまう問題がある。また、金属製の軸受部を用いることで割れは回避可能であるが、金属製軸受部では耐久性が悪く、軸の回転による磨耗や帰零動作時の衝撃による変形などが発生する。また、磨耗や変形などを改善する一般的な金属材料を用いた場合、加工性が悪く、時計の量産性に適していないという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みて、時計部品の破損や変形を防止可能な時計を提供することを目的とする。
本発明の時計は、衝突部材と、前記衝突部材が衝突する被衝突部材と、を備えた時計であって、前記衝突部材、および前記被衝突部材の少なくともいずれか一つは、金属ガラス合金により形成されたことを特徴とする。
ここで、金属ガラス合金は、金属元素を主成分とし、所定の条件を満たす元素を含む合金であり、元素配列に規則性がなく、無秩序に元素が配列される非結晶性の合金である。このような金属ガラス合金は、溶融状態の原材料を、例えば104K/s以上の極めて急速な冷却速度で冷却した際に形成される。この金属ガラス合金は、高耐摩耗性、高強度、低ヤング率、高耐食性の特性を有する。
そして、本発明では、衝突部材および被衝突部材のうち、少なくともいずれか一方が、上記のような金属ガラス合金を素材として形成される。このような構成では、衝突部材が被衝突部材に衝突して駆動する際、これらの衝突部材および被衝突部材に衝突応力が加えられるが、上記のような金属ガラス合金により形成された部材では、高強度性により変形の問題がなく、低ヤング率を有するため、衝突に対して破損することがない。さらに、衝突時の駆動により摩擦が発生する場合でも、高耐摩耗性により、摺動摩擦による磨耗がない。したがって、長期の使用においても、メンテナンスなどを実施することなく、衝突部材または被衝突部材の変形や破損などの不都合を防止でき、長期間安定して駆動体を駆動させることができる。また、金属ガラス合金は、射出成型により形成可能であるため、成型加工性に優れ、転写性が良い。また、成型金型の面が鏡面に仕上げられていれば、成型品の面状態を高精密に再現することができ、例えば研磨などの後処理も不要となるため、製造効率を向上させることができるので、量産にも適している。
本発明の時計では、前記衝突部材は、軸部、およびこの軸部に固定されるとともに、打ち出し部材が圧接することで、所定位置に回転するハートカムを有する回転体であり、前記被衝突部材は、前記回転体の前記軸部を回転可能に保持する軸受部であることが好ましい。
この本発明では、ハートカムの軸部、およびこの軸部を回転可能に受ける軸受部のうち、少なくともいずれか一方の形成素材として、上述のような金属ガラス合金が用いられる。ハートカムは、打ち出し部材により打たれることで回動し、これに伴い軸部も回動される。このとき、ハートカムと一体的に設けられる軸部は、打ち出し部材の打撃により軸受部に衝突し、軸受部に衝突応力が加えられる。すなわち、軸部が衝突部材となり、軸受部が被衝突部材となる。このような場合であっても、上記のように、金属ガラス合金により形成されている軸部や軸受部は、高強度性により変形の問題がなく、低ヤング率を有するため、衝突に対して破損することがなく、さらに、高耐摩耗性により、軸部の回転による摺動摩擦による磨耗がない。したがって、長期の使用においても、メンテナンスなどを実施することなく、安定して軸部を保持することができる。また、金属ガラス合金は、加工性も良好であるため、部品の量産にも適している。
本発明の時計では、軸部、およびこの軸部に固定されるとともに、打ち出し部材が圧接することで、所定位置に回転するハートカムを有する回転体を備え、前記衝突部材は、前記ハートカムに圧接可能な前記打ち出し部材であり、前記被衝突部材は、前記回転体の前記ハートカムであることが好ましい。
この発明では、ハートカム、およびハートカムに圧接可能な打ち出し部材のうち、少なくとも一方が、上述のような金属ガラス合金により形成されている。この場合、打ち出し部材が衝突部材となり、ハートカムが被衝突部材となる。このような場合でも、打ち出し部材やハートカムが上記のような金属ガラス合金により形成されていれば、変形や破損を防止することができる。また、金属ガラス合金は、上述のように加工性も良好であるため、ハートカムや打ち出し部材の量産にも適している。
ここで、本発明の時計では、前記回転体は、クロノグラフ時間を表示するクロノグラフ針を保持するクロノグラフ車であり、前記打ち出し部材は、前記クロノグラフ車の前記ハートカムに対して、前記ハートカムを圧接する帰零位置、および前記ハートカムから離れた離隔位置に移動可能な復針レバーであることが好ましい。
この発明では、クロノグラフ針を保持するクロノグラフ車にハートカムが設けられ、復針レバーがハートカムに圧接することで帰零動作を実施するクロノグラフ付時計において、クロノグラフ車の軸部、ハートカム、復針レバー、および軸受部の少なくとも1つに上記金属ガラス合金が用いられている。クロノグラフ車では、クロノグラフ針を0位置に戻す度に復針レバーがハートカムに圧接する。この場合、復針レバーが衝突部材、ハートカムが被衝突部材となる。また、復針レバーがハートカムに圧接されると、ハートカムを保持する軸部が軸受部に衝突する。この場合、軸部が衝突部材、軸受部が被衝突部材となる。
このため、クロノグラフ時計では、復針レバー、クロノグラフ車のハートカム、クロノグラフ車の軸部、軸受部において、頻繁に衝突が起こるため、これらの部材には、高強度、低ヤング率の素材を用いる必要がある。これに対して、本願発明では、これらの復針レバー、クロノグラフ車のハートカム、クロノグラフ車の軸部、軸受部の素材として金属ガラス合金を用いるため、各部材の損傷、変形、磨耗をより確実に防止することができ、長期使用においても高精度なクロノグラフ性能を維持することができる。
本発明の時計では、前記金属ガラス合金は、Zr基、Co基、Fe基、Ni基を組成とした金属ガラス合金であることが好ましい。
この発明では、Zr基、Co基、Fe基、Ni基を組成とした金属ガラス合金を用いる。このような組成を有する金属ガラス合金は、特に高強度性、低ヤング率、耐磨耗性に優れており、このような金属ガラス合金を用いて衝突部材や被衝突部材を形成することで、例えば金属により形成される時計部材に比べて、より強靭で、破損や変形や磨耗がない部材を提供することができる。
本発明の一実施形態にかかるクロノグラフ付時計の表外観図。 本発明のムーブメントの全体要部斜視図。 図2のクロノグラフ輪列の要部拡大斜視図。 秒CG車、分CG車部断面図。 帰零時の要部平面図。 図5の主要構成部の斜視図。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る一実施の形態の時計を示す表外観図である。
図1において、このクロノグラフ付時計(本発明の時計)は、同軸上に配置された通常時刻表示用の時針1と分針2は時計体100のケース6の中心に対して6時方向に配置され、通常時刻表示用の基本時計秒針3は略10時方向に配置されている。秒クロノグラフ時間を示すクロノグラフ秒針4(本発明のクロノグラフ針)は時計体100のケース6の中心から12時方向にわずかに偏心した位置に配置される。また、分クロノグラフ時間を表示するクロノグラフ分針5(本発明のクロノグラフ針)は略2時方向に配置され扇形の目盛り上を扇形に運針する。このクロノグラフは45分計となっている。
時計体100の中央面は文字板7で通常時刻を示す目盛りとクロノグラフ時間を示す目盛りが備えられる。時計体100の3時方向には通常時刻を修正するためのりゅうず8が配され、2時方向には、スタート、ストップ操作をするためのスタート・ストップボタン9が配され、4時方向にはクロノグラフ針を帰零するためのリセットボタン10が配されている。
図2は、時計のムーブメント全体の要部斜視図である。図2は、ムーブメント上面の輪
列受、回路押さえ、帰零押さえなどを取り除いた状態であり、通常時刻を表示するための基本時計輪列、クロノグラフ時間表示をするためのクロノグラフ輪列の要部を示している。
まず、通常時刻を示すための基本時計輪列の概構造を説明する。
地板400の上面には合成樹脂製の回路受座700が配置される。基本時計用の駆動源である基本時計用モーター101は、基本時計用コイル102、基本時計用ステーター103、基本時計用ローター104から構成され、電子回路からの駆動信号により1秒に1ステップのタイミングで基本時計用ローター104が回動し、五番車105を経て小秒車106に駆動が減速伝達されて前記小秒車106に保持された基本時計秒針3(図1に示す)によって通常時刻の秒表示がされる。また、五番車105、四番第三中間車107、四番第二中間車108、四番第一中間車109、三番車110を経て二番車111に減速伝達されて前記二番車111に保持された基本時計分針2(図1に示す)によって通常時刻の分表示がなされる。二番車111からは日の裏車を経て筒車に駆動が伝達されて通常時刻の時表示がされる(図は省略)。これらは、一般の電子時計と同じなので詳しくは説明しないが、通常時刻の時・分・秒は、図1のようにレイアウト、表示がなされている。
りゅうず8(図1に示す)に固着された巻真130は地板400と回路受座700との間に支持され、巻真130を引き出すことにより、おしどり131とかんぬき132が連動し、つづみ車133が小鉄車134と噛み合う。小鉄車134は順次、日の裏第三中間車135、日の裏第二中間車136、日の裏第一中間車137、日の裏車138に巻真130の回動を伝達し、通常の時刻修正が行われる。おしどり131には規正レバー139が係合しており巻真130の引き出しに連動して四番第一中間車109を規正する。これら上述した基本時計輪列を構成する車、レバー類は回路受座700と、輪列受401(図4に示すが、基本時計輪列の図は省略している)の間に支持されている。
次に図3にてクロノグラフ輪列について説明する。図3は、図2のクロノグラフ輪列の要部を拡大した斜視図である。
クロノグラフ輪列の駆動源であるクロノグラフモーター201は、クロノグラフコイル202、クロノグラフステーター203、クロノグラフローター204から構成される。電子回路からの駆動信号により、クロノグラフローター204が回転駆動し、秒CG第三中間車205、秒CG第二中間車206、秒CG第一中間車207を経て、本発明の回転体、クロノグラフ車、および被衝突部材を構成する秒CG車208に伝達され、秒CG車208に保持されたクロノグラフ秒針4(図1に示す)にてクロノグラフ秒が表示される。秒CG車208には、帰零のためのハートカム210が形成されている。
一方、本発明の回転体およびクロノグラフ車である分CG車220は、秒CG第一中間車207から分CG第二中間車222、分CG第一中間車221を経てクロノグラフモーター201からのステップ駆動が伝達され、分CG車220に保持されたクロノグラフ分針5(図1)にてクロノグラフ分が表示される。分CG車220には、帰零のためのハートカム224が備えられている。秒CG第一中間車207には、分CG車220に噛み合うかなと、分CG第二中間車222と噛み合うかなが備えられている(図は省略)。
クロノグラフ輪列は、図4にも示すように地板400の上面に載置した回路受座700と、回路押さえ600、回転錘受460(図は省略)の間に支持されている。
図4は、秒CG車208と分CG車220の構成を示す断面図である。
秒CG車208と分CG車220とは、構成は同じなので秒CG車208を例に詳しく説明する。
秒CG車208は、軸部である秒CG車軸211と、ハートカム210と、秒CG歯車209とを備え、これらの秒CG車軸211、ハートカム210、および秒CG歯車209は、金属ガラス合金の射出成型により一体形成されている。
秒CG車軸211に形成されたハートカム210の下部211aには、秒CG歯車209が回動可能に遊嵌され、スリップばね212の弾性力によってハートカム210の下面
段部211bに押圧されている。なお、秒CG車軸211とハートカム210が一体となる構成を例示するが、例えばハートカム210が秒CG車軸211に固定されている構成であれば、別体として構成されていてもよい。
スリップばね212は、スリップばね押さえ座213を秒CG車軸211に押し込み固定することで、一定量の撓みをもって秒CG歯車209を押し付けている。ハートカム210と秒CG歯車209の接触部は、スリップばね212の押圧による摩擦力でクロノグラフ計測中は連動する。一方、帰零時には、ハートカム210は、本発明の衝突部材、および打ち出し部材を構成する復針レバー330で側面を押圧され強制回動される。これにより、秒CG歯車209とハートカム210とがスリップし、ハートカム210と一体の秒CG車軸211が回動しクロノグラフ秒針4を0秒位置まで帰零する。この時、秒CG歯車209と他のクロノグラフ輪列は回動せず通常の噛み合いを保持する。ここで、秒CG車208は、回路受座700と回路押さえ600の間で秒CG軸受部810によって支持されている。
なお、分CG車220は、秒CG車208と同じ構造であり詳しい説明は省略するが、本発明の軸部である分CG車軸225、分CG歯車223、ハートカム224で構成される。また、これらの分CG車軸225、ハートカム224、および分CG歯車223は、金属ガラス合金の射出成型により一体形成されている。分CG歯車223は、スリップばね226の弾性力でハートカム下面段部225bに押圧される構造である。分CG車220は、回路受座700と回転錘受460の間で分CG軸受部820によって支持されている。
帰零時には、ハートカム224は、復針レバー330で強制回動され、分CG歯車223とはスリップし、ハートカム224と一体の分CG車軸225が回動しクロノグラフ分針5を帰零する。分CG歯車223と他のクロノグラフ輪列は回転せず通常の噛み合いを保持する。
なお、本実施形態では、秒CG車軸211、ハートカム210、および秒CG歯車209が射出成型により一体形成されて、秒CG車208を構成する例を示すが、例えばハートカム210と秒CG車軸211とが一体成型され、秒CG歯車209に例えば、ねじ止め、溶着、接着などの固定方法により固定されることで、秒CG車208が形成される構成としてもよい。分CG車220においても同様であり、ハートカム224と分CG車軸225とが一体形成され、分CG歯車223に固定される構成としてもよい。
そして、秒CG車軸211および分CG車軸225は、上記のように、秒CG軸受部810、および分CG軸受部820により回転可能に支持される。
ここで、クロノグラフ輪列が駆動する際、打ち出し部材である復針レバー330がハートカム210,224に衝突し、この衝突によりハートカム210,224が回動し、これにより秒CG車208および分CG車220も回動する。また、復針レバー330でハートカム210の側面が押圧された際、ハートカム210と一体となる秒CG車軸211も押圧方向に応力を受け、秒CG軸受部810に衝突する。分CG車220に対しても同様であり、分CG車軸225が復針レバー330の押圧により、分CG軸受部820に衝突する。
したがって、これらの復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820は、衝突により破損、変形などが生じない強靭性を備える必要があり、かつCG車軸211,225においては、回転した際に摺動摩擦により磨耗しない耐磨耗性を備える必要がある。
これに対して、本実施の形態では、これらの復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820は、Zr基(例えばZr−Al−Ni−Cu)、Co基(例えばCo−Fe−Si−B−Nb)、Fe基(例えばFe−Co−Ni−Si−B−Nb)、Ni基(例えばNi−Nb−Zr−Ti−Co−Cu)等を組成として金属ガラス合金により形成される。
このようなZr基、Co基、Fe基、Ni基などを組成とした金属ガラス合金は、高強度、低ヤング率、高耐磨耗性を備える素材であり、このような金属ガラス合金により形成された復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820は、衝突による破損や変形を防止することができる。また、各CG軸受部810,820においては、CG車軸211,225との摺動による磨耗も防止できる。
ここで、Zr基を主成分とした金属ガラス合金の物性を例示する。Zr基を主成分とした金属ガラス合金は、ヤング率が約90GPaであり、引張り強度が約1600MPaである。
一方、Zr基を主成分とした金属ガラス合金に近いヤング率を有する結晶性金属では、例えばZnでは、ヤング率が80GPaであるのに対し、引張り強度が110〜280MPaであり、Al合金であるジュラルミンでは、ヤング率が71.5GPaであるのに対し、引張り強度が570MPaであり、金属ガラス合金のような強度を持たせることはできない。このような結晶性金属により形成される復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820では、強度不足により、衝突時に変形するなどの問題が発生する。
また、Zr基を主成分とした金属ガラス合金に近い引張り強度を有する結晶性金属では、例えば、ニッケルクロムモリブデン鋼で、ヤング率が204GPaであり、引張り強度が1765MPaである。このような結晶性金属を用いて時計部品を製造する場合、切削加工などの加工工程が必要となる。しかしながら、結晶性金属は、上記のようにヤング率が高いため、微細部品に対する加工性が悪くなり、量産性に適さない。
さらに、例えばCG車208,220を受けるCG軸受部810,820などでは、硬質素材であるルビーを用いて形成する場合があるが、ルビーのヤング率が約400GPaであり、引張り強度が常温において約490MPaとなる。したがって、ルビーを素材としたCG軸受部810,820では、ヤング率が著しく高く、衝突時に破損するおそれがある。また、ルビーを加工する場合、研削加工が必要となり、加工性が悪く、量産性に適さない。
上記のような結晶性金属やルビーなどの硬質素材に対して、金属ガラス合金では、低ヤング率で、高強度を実現することができる。すなわち、金属ガラス合金により形成される復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820では、高強度を有するため、衝突時に変形等が生じず、低ヤング率を有するため、衝突時に、破損することがない。これに加え、金属ガラス合金は、耐磨耗性を有し、秒CG車軸211と秒CG軸受部810との摺接による摩耗、および分CG車軸225と分CG軸受部820との摺接による磨耗を効果的に抑えることができる。
また、このような金属ガラス合金は、射出成型により形成することが可能であり、迅速に復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820を形成することが可能となる。また、金属ガラス合金は、射出成型時の金型転写性が良好であるため、成型金型の時計部品の形成面を鏡面に形成することで、面粗度が向上し、研磨などの表面処理が不要となる。
さらに、射出成型により、秒CG車軸211、ハートカム210、および秒CG歯車209が一体形成された秒CG車208、分CG車軸225、ハートカム224、および分CG歯車223が一体形成された分CG車220を形成することができ、別部材の部品を組み立てる場合に比べて、組み立て作業の効率化を図ることができる。
次に、図5、図6を用いてクロノグラフの構成を説明する。図5は、リセットボタンを押し操作したときのクロノグラフ帰零状態を示す要部平面図、図6は、図5の帰零機構の主要構成部品を取り出して示した要部斜視図である。
図5と図6において、第1の外部操作部材であるスタート・ストップボタン9はボタン押し操作前の初期位置にある。第2の外部操作部材であるリセットボタン10は押し操作したときの状態を示している。帰零押さえ360は、一部を地板方向に折り曲げた帰零押さえばね部360aを形成し、伝達レバー310の先端部310aと当接している。伝達レバー310には、樹脂成形された回路押さえ600に植立した伝達レバー軸600aに対応する位置に穴310bが設けられ伝達レバー軸600aと遊嵌している。伝達レバー310のもう一方の先端部には作動軸310cが伝達レバー310と一体に形成されており、復針伝達レバー320のトラック状の穴320bと係合している。
復針伝達レバー320には、ほぼ中央に穴320aが設けられ、回路押さえ600に一体に形成された回動軸600bに遊嵌している。伝達レバー310とは逆側方向先端には、2つの異なる径の段部を有する作動軸321が植立されている。作動軸321の径大側段部321a部は、復針レバー330の略長方形の穴332に係合している。作動軸321の径小側段部321b(図6参照)は、クリックばね361に係合している。このクリックばね361は、復針伝達レバー320を位置決めする位置決め部材であり、帰零押さえ360に一体に形成されている。
復針伝達レバー320に連動する復針レバー330は、回路押さえ600に形成された回動軸600cに対応する穴330aが明けられ、回動軸600cとは遊嵌している。復針レバー330の時計中心方向には、分CG車220のハートカム224と当接する面(当接面330b)と、秒CG車208のハートカム210と当接する面(当接面330c)とが設けられている。復針レバー330の当接する面330c側は、当接面330b側に対してスリット330dで切断されており、ばね部330eを有している。作動レバー340側には、略三角形の穴331が明けられ、作動レバー340に形成された作動軸340aと係合している。
作動レバー340は、回路押さえ600に形成された回動軸600dに対応する位置に穴340bが明けられ回動軸600dとは遊嵌している。また、第1の外部操作部材であるスタート・ストップボタン9近傍にはボタン押し操作時にボタンが当接する面340cが断面的に折り曲げられ形成されている。ボタン当接面340cと穴340bの間には、スイッチ入力端子340dが一体で形成されており、スタート・ストップボタン9の押し操作時には、図示しない回路基板の側面に設けられたスタート・ストップ入力パターンに
電気的に接続している。さらに、作動レバー340には、同じ面状に軸340eと作動軸340aが形成されており、軸340eは、帰零押さえ360に形成され、作動レバー340を位置決めするクリック部と係合し、作動軸340aは復針レバー330の略三角形の穴331と係合している。
クロノグラフ規正レバー350は、輪列受401に形成された回動軸401aに対応する位置に穴350aを設けてあり回動可能に遊嵌している。
クロノグラフ規正レバー350は、輪列受401にトラック状に形成された突起部401bの側面に当接するばね部350cと、秒CG第二中間車206の近傍にあって、秒CG第二中間車206に断面的に係合する位置まで折り曲げた規正部350bと、作動レバー340の先端部340fと係合するくちばし状の先端部350dとが形成されている。また、復針伝達レバー320の半島状の突出部320dと係合している。
〔本実施の形態の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態のクロノグラフ付時計では、ハートカム210が一体的に設けられる秒CG車軸211を有する秒CG車208と、ハートカム224が一体的に設けられる分CG車軸225を有する分CG車220と、秒CG車軸211を回転可能に保持する秒CG軸受部810と、分CG車軸225を回転可能に保持する分CG軸受部820と、復針レバー330と、を備え、秒CG車208および分CG車220は、復針レバー330がハートカム210,224に圧接することで、帰零動作が実施される。そして、これらの復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820は、それぞれ金属ガラス合金により形成されている。
このため、これらの復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820は、復針レバー330がハートカム210,224に衝突した場合や、CG車軸211,225がCG軸受部810,820に衝突した場合でも、変形や破損を防止することができる。また、秒CG車208および分CG車220の回転による磨耗も抑えることができる。したがって、クロノグラフ付時計を長期使用した場合でも、クロノグラフ機能の精度が悪くなったり、破損したりすることがなく、安定してCG車208,220を駆動させることができ、精度の高いクロノグラフ表示を維持することができる
また、金属ガラス合金は、射出成型により形成可能であり、成型加工性に優れ、転写性が良い。したがって、成型金型の面が鏡面に仕上げられていれば、成型品の面状態を高精密に再現することができ、例えば研磨などの表面処理も不要となる。また、射出成型により、秒CG車軸211、ハートカム210、および秒CG歯車209が一体形成された秒CG車208、分CG車軸225、ハートカム224、および分CG歯車223が一体形成された分CG車220を容易に形成することができ、このようなCG車208,220を用いることで時計の組み立て作業効率も向上させることができる。したがって、復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820の製造効率を向上させることができ、このような時計部品を用いることで、時計の製造効率をも向上させることができる。
また、秒CG軸受部810および分CG軸受部820は、Zr基、Co基、Fe基、Ni基を組成とした金属ガラス合金により構成されている。このような金属ガラス合金では、特に、優れた高強度、低ヤング率、高耐摩擦性の特性を有するため、上記にように復針レバー330からの圧接力が伝達されるCG軸受部810,820として最適であり、CG軸受部810,820の破損、変形、摩耗を効果的に防止することができる。
〔実施の形態の変形〕
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、上述した実施の形態では、復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820を金属ガラス合金にて形成する構成としたが、例えばこれらの復針レバー330、CG車208,220、CG軸受部810,820のうち、いずれか1つのみが金属ガラス合金で形成される構成としてもよい。この場合、上記実施形態に比べて、耐衝撃性は低下するが、従来の金属時計部品を用いた構成に比べると高い耐衝撃性を実現することができる。また、CG軸受部810,820のみを金属ガラス合金で形成する場合、上記のように、従来の構成と比べて高い耐衝撃性を実現することができるとともに、CG車208,220の回転時の摩耗をも効果的に低減することができる。
また、衝撃部材として復針レバー330、被衝撃部材としてハートカム210,224を有するCG車208,220、軸受部としてCG軸受部810,820を例示したが、これに限らない。
すなわち、時計を駆動させた際、衝撃が加わる部分や、歯車の噛み合わせなどが切り替わる部分、圧接する部分など、破損や摩耗、変形などにより長期使用における精度が悪化するおそれがある部分の時計部品に、上述のような金属ガラス合金を用いることができる。具体的には、図示は省略するが、例えばクロノグラフ時計のスタート・ストップボタン9を押下した際の動力をクロノグラフ輪列に伝えるピラーホイール、およびこのピラーホイールに圧接される作動カムジャンパーを金属ガラス合金により形成してもよい。
また、金属ガラス合金として、Zr基、Co基、Fe基、Ni基を組成とした構成を例示したが、他の金属元素により形成される非結晶性の合金であってもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
4…クロノグラフ針であるクロノグラフ秒針、5…クロノグラフ針であるクロノグラフ分針、208…回転体およびクロノグラフ車である秒CG車、211…衝突部材および軸部である秒CG車軸、210,224…被衝突部材であるハートカム、220…回転体およびクロノグラフ車である分CG車、225…衝突部材および軸部である分CG車軸、330…衝突部材および打ち出し部材である復針レバー。

Claims (5)

  1. 衝突部材と、前記衝突部材が衝突する被衝突部材と、を備えた時計であって、
    前記衝突部材、および前記被衝突部材の少なくともいずれか一つは、金属ガラス合金により形成された
    ことを特徴とする時計。
  2. 請求項1に記載の時計において、
    軸部、およびこの軸部に固定されるとともに、打ち出し部材が圧接することで、所定位置に回転するハートカムを有する回転体を備え、
    前記衝突部材は、前記回転体の前記軸部であり、
    前記被衝突部材は、前記軸部を回転可能に保持する軸受部である
    ことを特徴とする時計。
  3. 請求項1に記載の時計において、
    軸部、およびこの軸部に固定されるとともに、打ち出し部材が圧接することで、所定位置に回転するハートカムを有する回転体を備え、
    前記衝突部材は、前記ハートカムに圧接可能な前記打ち出し部材であり、
    前記被衝突部材は、前記回転体の前記ハートカムである
    ことを特徴とする時計。
  4. 請求項2または請求項3に記載の時計において、
    前記回転体は、クロノグラフ時間を表示するクロノグラフ針を保持するクロノグラフ車であり、
    前記打ち出し部材は、前記クロノグラフ車の前記ハートカムに対して、前記ハートカムを圧接する帰零位置、および前記ハートカムから離れた離隔位置に移動可能な復針レバーである
    ことを特徴とした時計
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の時計において、
    前記金属ガラス合金は、Zr基、Co基、Fe基、Ni基を組成とした金属ガラス合金である
    ことを特徴とした時計。
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