JP2010249894A - 光学補償用フィルム、これを用いた偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】横1軸延伸、または、縦1軸延伸したものを裁断して横方向に遅相軸を得るような煩雑な工程を必要とせずに、縦1軸延伸によりフィルム短尺方向(幅方向)に遅相軸を有し、かつ、厚み位相差がゼロ以上の値を示す光学補償用のフィルムを提供することである。さらには、そのフィルムを用いて製造した偏光板、液晶表示装置を提供することである。
【解決手段】遅相軸がフィルム短尺方向(幅方向)にあり、以下の数式1及び数式2を満たすことを特徴とするフィルム長尺方向1軸延伸フィルムを光学補償層とすること。
1≦Re≦600 (数式1)
0.5≦Nz≦4.0 (数式2)
(式中、Reは延伸フィルムの面内位相差(nm)を表す。また、延伸フィルムの厚み位相差をRth(nm)とした時、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5で算出される数値を表す。)
【選択図】なし
【解決手段】遅相軸がフィルム短尺方向(幅方向)にあり、以下の数式1及び数式2を満たすことを特徴とするフィルム長尺方向1軸延伸フィルムを光学補償層とすること。
1≦Re≦600 (数式1)
0.5≦Nz≦4.0 (数式2)
(式中、Reは延伸フィルムの面内位相差(nm)を表す。また、延伸フィルムの厚み位相差をRth(nm)とした時、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5で算出される数値を表す。)
【選択図】なし
Description
本発明は、液晶表示装置等の光学装置に好適に用いることが可能な光学補償用フィルムに関するものである。または、これを用いた偏光板、液晶表示装置に関するものである。
液晶表示装置等の各種光学装置には、液晶セル、偏光子等と共に、各種膜が用いられている。なお、本願明細書において膜とは、他の基材上に直接形成した層、これを基材から剥離して取り出したフィルム、更には直接溶液流延、溶融流延等により単独で形成したフィルム等が含まれるものとする。
特に、装置中の他の構成により生じる複屈折を補償するための光学補償用のフィルムが一般的に用いられている。このような光学補償用のフィルムの用途としては、例えば、視野角の拡大、黒表示時の光漏れ防止等がある。また、このような光学補償用のフィルムを形成するための材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン等のポリマーが用いられ、一般的には、製膜工程(フィルム化)、延伸工程(位相差付与)、貼り合わせ工程を経て各種装置に組み込まれている。
装置構成としては、例えば、IPS(In−Plane Switching)モードのアクティブマトリクス型液晶表示装置であり、正面方向の特性を低下させることなく、方位角45度の方向から画面を斜めに見るときのコントラストの低下を防止するため、λ/2板として機能する光学補償フィルムが備えられ、その光学補償フィルムの遅相軸の方向が上下のクロスニコル状態にある偏光板の透過軸に対して同一方向または垂直方向に配置された液晶表示装置の例が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
本ケースにおいて、光学補償フィルムの遅相軸の方向を、上下のクロスニコル状態にある偏光板の透過軸に対して同一方向または垂直方向に簡便に配置するためには、それぞれの方向に容易に合わせるため、遅相軸を光学補償フィルムの長尺方向に有するもの、または、遅相軸を光学補償フィルムの短尺方向(幅方向)に有するものが必要になる。遅相軸を光学補償フィルムの長尺方向に有するものは、例えば、正の固有複屈折値を有する高分子(高分子の主鎖が延びきって理想状態まで配向した時、(高分子主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(高分子主鎖の配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)>0となる高分子。例えば、ポリ塩化ビニル)フィルムを2対の延伸ロールを用いて所定の倍率に延伸するような縦1軸延伸により製造することができる(例えば、特許文献2参照)。また、遅相軸を光学補償フィルムの短尺方向(幅方向)に有するものは、例えば、正の固有複屈折値を有する高分子フィルムをテンター法による横1軸延伸することにより製造することができる(例えば、特許文献3参照)。
また、VA(Vertical Alignment)モードの液晶セルと、該液晶セルの上下に相互の吸収軸が直交するように配置された一対の偏光フィルムと、該液晶セルと該偏光フィルムとの少なくとも一方の間に1枚または2枚の位相差フィルムから構成される視野角補償用位相差フィルムが配置されてなる液晶表示装置であり、視野角補償用位相差フィルムが、R=(nx−ny)×d(nx:フィルム面内の遅相軸方向の屈折率、ny:フィルム面内でnxと垂直方向の屈折率、d:フィルムの厚み)で示されるフィルム面内のレターデーション(R)値が0nmを越え、100nm以下であり、かつ、R’=[(nx+ny)/2−nz]×d(nz:フィルムの厚み方向の屈折率)で示される(R’)値が100nm以上である位相差フィルムであって、フィルム面内の遅相軸が隣接する偏光フィルムの吸収軸に対して並行または直交していることを特徴とする液晶表示装置の例も挙げられる(例えば、特許文献4参照)。
本ケースにおいても、位相差フィルムの遅相軸の方向を、上下のクロスニコル状態にある偏光フィルムの吸収軸に対して並行方向または直交方向に簡便に配置するためには、それぞれの方向に容易に合わせるため、遅相軸を位相差フィルムの長尺方向に有するもの、または、遅相軸を位相差フィルムの短尺方向(幅方向)に有するものが必要になる。
遅相軸を光学補償フィルムの短尺方向(幅方向)に有するものは、テンターのような大型の延伸制御設備によって横1軸延伸する必要があり、煩雑である。縦1軸延伸したものを裁断し、横方向に遅相軸を有する形状にして用いることも可能であるが、1枚ずつのバッチ処理になり、これも煩雑である。また、遅相軸を光学補償フィルムの短尺方向(幅方向)に有するものは、負の固有複屈折値を有する高分子(高分子の主鎖が延びきって理想状態まで配向した時、(高分子主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(高分子主鎖の配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)<0となる高分子。例えば、ポリスチレン)フィルムを、例えば、2対の延伸ロールを用いて所定の倍率に延伸するような縦1軸延伸により製造することもできるが、正の固有複屈折値を有する高分子フィルムを横1軸延伸したものとは特性の異なるものとなる。具体的には、遅相軸を傾斜中心軸として水平な位置から傾斜させた場合、一般に、正の固有複屈折値を有する高分子フィルムの横1軸延伸品は、傾斜角度の増加とともに位相差は増加し(厚み位相差は正の値を示す)、負の固有複屈折値を有する高分子フィルムの縦1軸延伸品は、傾斜角度の増加とともに位相差は減少し(厚み位相差は負の値を示す)、遅相軸の方向のみを合わせても光学補償の要求レベルを満たさない場合がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、横1軸延伸、または、縦1軸延伸したものを裁断して横方向に遅相軸を得るような煩雑な工程を必要とせずに、縦1軸延伸によりフィルム短尺方向(幅方向)に遅相軸を有し、かつ、厚み位相差がゼロ以上の値を示す光学補償用のフィルムを提供することである。さらには、そのフィルムを用いて製造した偏光板、液晶表示装置を提供することである。
このような課題を解決するために本発明者は鋭意研究の結果、正の配向複屈折を示す素材基板上に、負の配向複屈折を示す膜を形成してなるフィルムを長尺方向に1軸延伸することにより、遅相軸をフィルム短尺方向(幅方向)に有する延伸フィルムが得られ、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。尚、本明細書においては、(延伸方向(高分子主鎖の配向方向)に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(延伸方向(高分子主鎖の配向方向)に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)>0の関係が得られる時に正の配向複屈折を示すとし、(延伸方向(高分子主鎖の配向方向)に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(延伸方向(高分子主鎖の配向方向)に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)<0の関係が得られる時に負の配向複屈折を示すとする。
ここで、遅相軸をフィルム短尺方向(幅方向)に得るためには、1軸延伸した際、正の配向複屈折を示す素材基板よりも負の配向複屈折を示す膜の方が大きな面内位相差を示す必要がある。大きな面内位相差を得やすい、換言すれば、配向複屈折が大きく、薄膜でも大きな面内位相差が得られる負の配向複屈折を示す高分子を上記膜とすれば上記面内位相差の関係を得やすく、そのような負の配向複屈折を示す高分子として特にセルロース N−置換カーバメートが有効であることも見出した。
また、延伸フィルムの厚み位相差がゼロ以上の値を示すためには、1軸延伸した際、正の配向複屈折を示す素材基板の厚み位相差の絶対値が負の配向複屈折を示す膜の厚み位相差の絶対値以上の値を示す必要がある。厚み位相差は、(厚み方向の複屈折)×(厚み)で表され、延伸した際、正の配向複屈折を示す素材基板の厚み方向の複屈折の絶対値が負の配向複屈折を示す膜の厚み方向の複屈折の絶対値以上になる場合は、それぞれの膜厚を制御することにより容易に延伸フィルムの厚み位相差をゼロ以上の値にすることができる。逆に、正の配向複屈折を示す素材基板の厚み方向の複屈折の絶対値が負の配向複屈折を示す膜の厚み方向の複屈折の絶対値より小さい場合でも、それぞれを構成する素材種の選択及び膜厚を制御することにより、延伸フィルムの厚み位相差がゼロ以上の値となるようにすることができる。
すなわち本発明は、以下に関する。
(i)遅相軸がフィルム短尺方向(幅方向)にあり、以下の数式1及び数式2を満たすことを特徴とするフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
1≦Re≦600 (数式1)
0.5≦Nz≦4.0 (数式2)
(式中、Reは延伸フィルムの面内位相差(nm)を表す。また、延伸フィルムの厚み位相差をRth(nm)とした時、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5で算出される数値を表す。)。
(ii)正の配向複屈折を示す素材基板及び負の配向複屈折を示す膜との積層フィルムであることを特徴とする(i)に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
(iii)負の配向複屈折を示す膜が、セルロース N−置換カーバメートを含有してなる膜であることを特徴とする(ii)に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
(iv)前記セルロース N−置換カーバメートは、セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されており、かつ、カーバメート基の窒素原子に結合した水素原子の少なくとも一つが下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基で置換されており(Nに結合した置換基)、かつ、複数のN−置換カーバメート基の該Nに結合した置換基は同一または異なって下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基であることを特徴とする(iii)に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
0.5≦Nz≦4.0 (数式2)
(式中、Reは延伸フィルムの面内位相差(nm)を表す。また、延伸フィルムの厚み位相差をRth(nm)とした時、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5で算出される数値を表す。)。
(ii)正の配向複屈折を示す素材基板及び負の配向複屈折を示す膜との積層フィルムであることを特徴とする(i)に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
(iii)負の配向複屈折を示す膜が、セルロース N−置換カーバメートを含有してなる膜であることを特徴とする(ii)に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
(iv)前記セルロース N−置換カーバメートは、セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されており、かつ、カーバメート基の窒素原子に結合した水素原子の少なくとも一つが下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基で置換されており(Nに結合した置換基)、かつ、複数のN−置換カーバメート基の該Nに結合した置換基は同一または異なって下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基であることを特徴とする(iii)に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
(式中R1、R2、R3、R4、R5は、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
(式中R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
(式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
(v)正の配向複屈折を示す高分子を含有してなるフィルムのNzが下限0.8、上限8の範囲であるものを正の配向複屈折を示す素材基板とすることを特徴とする(i)〜(iv)のいずれか1項に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
(vi)偏光子の少なくとも片面に、(i)から(v)のいずれか1項に記載の長尺方向1軸延伸フィルムを偏光子の保護材として装着したことを特徴とする偏光板。
(vii)(i)から(v)に記載の長尺方向1軸延伸フィルム、(vi)に記載の偏光板から選ばれる1以上の構成を備えた液晶表示装置。
(v)正の配向複屈折を示す高分子を含有してなるフィルムのNzが下限0.8、上限8の範囲であるものを正の配向複屈折を示す素材基板とすることを特徴とする(i)〜(iv)のいずれか1項に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
(vi)偏光子の少なくとも片面に、(i)から(v)のいずれか1項に記載の長尺方向1軸延伸フィルムを偏光子の保護材として装着したことを特徴とする偏光板。
(vii)(i)から(v)に記載の長尺方向1軸延伸フィルム、(vi)に記載の偏光板から選ばれる1以上の構成を備えた液晶表示装置。
本発明によれば、横1軸延伸、または、縦1軸延伸したものを裁断して横方向に遅相軸を得るような煩雑な工程を必要とせずに、縦1軸延伸によりフィルム短尺方向(幅方向)に遅相軸を有し、かつ、厚み位相差がゼロ以上の値を示す光学補償用のフィルムを提供することができる。さらには、そのフィルムを用いて製造した偏光板、液晶表示装置を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、遅相軸がフィルム短尺方向(幅方向)にあり、以下の数式1及び数式2を満たすことを特徴とするフィルム長尺方向1軸延伸フィルムに関する
1≦Re≦600 (数式1)
0.5≦Nz≦4.0 (数式2)
(式中、Reは延伸フィルムの面内位相差(nm)を表す。また、延伸フィルムの厚み位相差をRth(nm)とした時、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5で算出される数値を表す。)。以下、本発明の長尺方向1軸延伸フィルムを「延伸フィルム」または「積層延伸フィルム」と称する場合がある。
1≦Re≦600 (数式1)
0.5≦Nz≦4.0 (数式2)
(式中、Reは延伸フィルムの面内位相差(nm)を表す。また、延伸フィルムの厚み位相差をRth(nm)とした時、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5で算出される数値を表す。)。以下、本発明の長尺方向1軸延伸フィルムを「延伸フィルム」または「積層延伸フィルム」と称する場合がある。
初めに、正の配向複屈折を示す素材基板について説明する。基板としては、用途から考えると透明であることが好ましい。基板に使用される正の配向複屈折を示す高分子を具体的に例示すると、ポリカーボネート系重合体;アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合体またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエンの水素添加物等のポリオレフィン系重合体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アセチル基による置換度が2から2.9のセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアリレート;ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。
また、上記高分子の数平均分子量の下限は好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限は好ましくは1000000、より好ましくは500000、さらに好ましくは300000である。数平均分子量が5000より小さいと該基板の強度が低下する傾向にあり、数平均分子量が1000000より大きいと加工性が劣る傾向にある。尚、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本発明では、数平均分子量が異なる同種の高分子の2種以上を併用してもよい。また、先に述べた正の配向複屈折の定義が成立するならば、後述の負の配向複屈折を示す高分子の1種以上が併用されていてもよい。
基板としては、これらの高分子を溶液流延法、溶液流延後乾燥品の1軸延伸法、溶液流延後乾燥品の2軸延伸法、溶液流延後乾燥品に収縮性フィルムを接着し、加熱延伸後、収縮性フィルムを剥離する方法、押出法、押出品の1軸延伸法、押出品の2軸延伸法、押出品に収縮性フィルムを接着し、加熱延伸後、収縮性フィルムを剥離する方法、カレンダー法等によりフィルム化したものが挙げられる。
正の配向複屈折を示す素材基板は、負の配向複屈折を示す膜との積層延伸フィルムが前述の(数式1)及び(数式2)を満たせば特に制限されないが、本発明のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム製造時と同一温度、同一延伸倍率で縦1軸延伸した場合に、Nzが0.8以上が好ましく、1以上となる素材基板であることがさらに好ましい。上限は8であり、さらに好ましくは6以下である。
次に、負の配向複屈折を示す膜について説明する。該膜としては、用途から考えると透明であることが好ましい。該膜に使用される負の配向複屈折を示す高分子を具体的に例示すると、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のスチレン系重合体;アクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、メタクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体等のスチレン共重合体;後述のセルロース N−置換カーバメート等が挙げられる。該膜としては、これらの高分子を溶液流延法、溶融流延法等により製膜したものが挙げられる。
また、上記高分子の数平均分子量の下限は好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限は好ましくは1000000、より好ましくは500000、さらに好ましくは300000である。数平均分子量が5000より小さいと該膜の強度が低下する傾向にあり、数平均分子量が1000000より大きいと製膜時の加工性が劣る傾向にある。尚、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本発明では、数平均分子量が異なる同種の高分子の2種以上を併用してもよい。また、先に述べた負の配向複屈折の定義が成立するならば、前述の正の配向複屈折を示す高分子の1種以上が併用されていてもよい。
次に、セルロース N−置換カーバメートについて説明する。
以下、本発明において炭素数1から20のアルキル基とは例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−クロロエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−ブロモエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基などが挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基とは例えばフェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基などが挙げられる。
炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2−トリルオキシ基、3−トリルオキシ基、4−トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニリルオキシ基などが挙げられる。
炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
炭素数7〜20のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などが挙げられる。
炭素数1〜21のアシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
本発明において使用するセルロース N−置換カーバメートは、例えば、各種木材パルプ、綿リンター、綿リント等から得られるセルロースを原料とし、ピリジン、トリエチルアミン等の塩基触媒存在下でイソシアネート系化合物を反応させる既知の方法により製造することができる(例えば、特開昭62−64801参照)。また、反応生成物を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリにより部分加水分解することによって、N−置換カーバメート化率の制御されたものを製造することもできる。尚、前記の反応時に使用する塩基触媒は溶媒としても使用することができる。その他の合成時の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒を好適に用いることができる。更に、セルロースの溶媒に対する溶解性を向上させるために塩化リチウム等の無機塩を添加することもできる。また、イソシアネート系化合物の例としては、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物が挙げられる。
(式中R20、R21、R22、R23、R24は、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
(式中R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31は、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
(式中R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38は、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜21のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基を表す。)
これらのイソシアネート系化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのイソシアネート系化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明では、上記イソシアネート系化合物の入手性の観点から、R20、R21、R22、R23、R24が、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数1〜16のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のアリールオキシ基、炭素数7〜16のアラルキル基、炭素数7〜16のアラルキルオキシ基、炭素数1〜17のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(4)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートまたはR25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38が、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数1〜16のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜17のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(5)、(6)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを用いることが好ましい。R20、R21、R22、R23、R24が、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、炭素数1〜13のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(4)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを用いることがより好ましい。またはR25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38が、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜13のアシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基である、一般式(5)、(6)で表されるイソシアネート系化合物を反応させ、前記セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されたセルロース N−置換カーバメートを用いることがより好ましい。
一般式(4)〜(6)で表されるイソシアネート系化合物を具体的に例示すると、フェニルイソシアネート、o−トリルイソシアネート、m−トリルイソシアネート、p−トリルイソシアネート、2−エチルフェニルイソシアネート、3−エチルフェニルイソシアネート、4−エチルフェニルイソシアネート、2−プロピルフェニルイソシアネート、3−プロピルフェニルイソシアネート、4−プロピルフェニルイソシアネート、2−ブチルフェニルイソシアネート、3−ブチルフェニルイソシアネート、4−ブチルフェニルイソシアネート、2,3−ジメチルフェニルイソシアネート、2,4−ジメチルフェニルイソシアネート、2,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、3,4−ジメチルフェニルイソシアネート、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート、2,3−ジエチルフェニルイソシアネート、2,4−ジエチルフェニルイソシアネート、2,5−ジエチルフェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニルイソシアネート、3,4−ジエチルフェニルイソシアネート、3,5−ジエチルフェニルイソシアネート、2,4,6−トリメチルフェニルイソシアネート、2−メトキシフェニルイソシアネート、3−メトキシフェニルイソシアネート、4−メトキシフェニルイソシアネート、2−エトキシフェニルイソシアネート、3−エトキシフェニルイソシアネート、4−エトキシフェニルイソシアネート、2−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(フルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(クロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(ブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(ヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジフルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジクロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(ジヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリクロロメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリブロモメチル)フェニルイソシアネート、2−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、3−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、4−(トリヨードメチル)フェニルイソシアネート、2−ビフェニリルイソシアネート、3−ビフェニリルイソシアネート、4−ビフェニリルイソシアネート、2−フェノキシフェニルイソシアネート、3−フェノキシフェニルイソシアネート、4−フェノキシフェニルイソシアネート、2’−ベンジルフェニルイソシアネート、3’−ベンジルフェニルイソシアネート、4’−ベンジルフェニルイソシアネート、2−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、3−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、4−ベンジルオキシフェニルイソシアネート、2−アセトキシフェニルイソシアネート、3−アセトキシフェニルイソシアネート、4−アセトキシフェニルイソシアネート、2−フルオロフェニルイソシアネート、3−フルオロフェニルイソシアネート、4−フルオロフェニルイソシアネート、2−クロロフェニルイソシアネート、3−クロロフェニルイソシアネート、4−クロロフェニルイソシアネート、2−ブロモフェニルイソシアネート、3−ブロモフェニルイソシアネート、4−ブロモフェニルイソシアネート、2−ヨードフェニルイソシアネート、3−ヨードフェニルイソシアネート、4−ヨードフェニルイソシアネート、2,4−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,5−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,6−ジフルオロフェニルイソシアネート、3,4−ジフルオロフェニルイソシアネート、3,5−ジフルオロフェニルイソシアネート、2,4−ジクロロフェニルイソシアネート、2,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2,6−ジクロロフェニルイソシアネート、3,4−ジクロロフェニルイソシアネート、3,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2,4−ジブロモフェニルイソシアネート、2,5−ジブロモフェニルイソシアネート、2,6−ジブロモフェニルイソシアネート、3,4−ジブロモフェニルイソシアネート、3,5−ジブロモフェニルイソシアネート、2,4−ジヨードフェニルイソシアネート、2,5−ジヨードフェニルイソシアネート、2,6−ジヨードフェニルイソシアネート、3,4−ジヨードフェニルイソシアネート、3,5−ジヨードフェニルイソシアネート、2,3,4−トリフルオロフェニルイソシアネート、2,3,4−トリクロロフェニルイソシアネート、2,3,4−トリブロモフェニルイソシアネート、2,3,4−トリヨードフェニルイソシアネート、2−フルオロ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−フルオロ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−フルオロ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−フルオロ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−フルオロ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−クロロ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−クロロ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−クロロ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−クロロ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−クロロ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ブロモ−5−メチルフェニルイソシアネート、2−ブロモ−6−メチルフェニルイソシアネート、3−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、3−ブロモ−4−メチルフェニルイソシアネート、4−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、4−ブロモ−3−メチルフェニルイソシアネート、5−ブロモ−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ヨード−5−メチルフェニルイソシアネート、2−ヨード−6−メチルフェニルイソシアネート、3−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、3−ヨード−4−メチルフェニルイソシアネート、4−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、4−ヨード−3−メチルフェニルイソシアネート、5−ヨード−2−メチルフェニルイソシアネート、2−ニトロフェニルイソシアネート、3−ニトロフェニルイソシアネート、4−ニトロフェニルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、2−ナフチルイソシアネート、1−メチル−2−ナフチルイソシアネート、2−メチル−1−ナフチルイソシアネート、1−メトキシ−2−ナフチルイソシアネート、2−メトキシ−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリフルオロメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリフルオロメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリクロロメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリクロロメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリブロモメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリブロモメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−(トリヨードメチル)−2−ナフチルイソシアネート、2−(トリヨードメチル)−1−ナフチルイソシアネート、1−アセトキシ−2−ナフチルイソシアネート、2−アセトキシ−1−ナフチルイソシアネート、1−フルオロ−2−ナフチルイソシアネート、2−フルオロ−1−ナフチルイソシアネート、1−クロロ−2−ナフチルイソシアネート、2−クロロ−1−ナフチルイソシアネート、1−ブロモ−2−ナフチルイソシアネート、2−ブロモ−1−ナフチルイソシアネート、1−ヨード−2−ナフチルイソシアネート、2−ヨード−1−ナフチルイソシアネート、1−ニトロ−2−ナフチルイソシアネート、2−ニトロ−1−ナフチルイソシアネート等が挙げられる。これら及び前記イソシアネート系化合物を反応して得られるセルロース N−置換カーバメートは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、セルロースはその構成単位であるグルコース残基当たり3個の水酸基を有している。したがって、これらの水酸基を置換する場合に、グルコース残基当たりの置換度(以下、DSと称する)は最大3になる。本発明においては、DSの下限は好ましくは0.05、より好ましくは1.0、さらに好ましくは1.9であり、上限は3がより好ましい。DSが0.05より低いと、例えば、溶液流延によって延伸前の膜を形成する際、溶媒に溶け難くなる傾向がある。本発明では、DSが異なるセルロース N−置換カーバメートの2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
さらに、セルロース N−置換カーバメートの数平均分子量の下限は好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限は好ましくは1000000、より好ましくは500000、さらに好ましくは300000である。数平均分子量が5000より小さいと該膜の強度が低下する傾向があり、数平均分子量が1000000より大きいと製膜時の加工性が劣る傾向がある。なお、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本発明では、数平均分子量が異なるセルロース N−置換カーバメートの2種以上を併用してもよく、単独で使用してもよい。
次に、負の配向複屈折を示す膜の製膜方法について詳細に説明する。製膜方法としては、前記の負の配向複屈折を示す高分子、または、そのブレンド体の中で最も高い融点を有する高分子の融点以上の温度で溶融し、製膜する溶融流延法、前記の負の配向複屈折を示す高分子を含む溶液を流延し、製膜する溶液流延法等が挙げられる。製膜の簡便さ、高分子の加熱時に発生する変性異物の混入防止等の観点から、溶液流延法が好ましい。
溶液流延時に溶液とするための溶媒としては、前記の負の配向複屈折を示す高分子が可溶であれば特に限定されるものではないが、具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼンの異性体混合物等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1,1−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸n−ヘキシル、酢酸n−ヘプチル、酢酸n−オクチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン等のアミド系溶媒;ピロリジン、ピペリジン、ピロール等のアミン系溶媒等が挙げられる。これらの中でも乾燥性の観点から、ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸n−ヘキシルが好ましい。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒量は、前記の負の配向複屈折を示す高分子と溶媒の総重量に対する前記の負の配向複屈折を示す高分子の割合が下限1重量%、上限70重量%の範囲で用いるのが好ましく、下限2重量%、上限60重量%の範囲で用いるのがより好ましく、下限3重量%、上限50重量%の範囲で用いるのがさらに好ましい。前記の負の配向複屈折を示す高分子の割合が1重量%より小さい場合は溶液流延時の膜厚が薄くなり、必要な膜厚が得られ難くなる傾向があり、70重量%より大きい場合は溶液流延時の溶液の粘度が高くなり、作業性が劣る傾向がある。
尚、上記溶媒は、正の配向複屈折を示す素材基板を溶液流延法で製造する際にも用いることができる。
また、溶液流延法を用いる場合、前記の正の配向複屈折を示す素材基板上に直接行ってもよく、一旦、剥離性基板上に製膜し、その後、前記の正の配向複屈折を示す素材基板上に転写してもよい。
剥離性基板としては、溶液流延・乾燥後の膜の剥離性を有するものであり、製膜時に該基板の物性が損なわれるものでなければ特に限定されるものではない。剥離性基板を形成する具体的な化合物の例としては、ポリカーボネート系重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル;アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合体又はラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のスチレン系重合体;アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエンの水素添加物等のポリオレフィン系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリエーテルイミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリフェニレンオキシド;ポリアリレート;ポリアセタール;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂;鉄、アルミニウム、銅等の金属、ガラス等が挙げられる。
これらの材料は、例えば溶液流延法、溶融流延法、押出法、カレンダー法、圧延、溶融成型等によりシート状に成形し、無延伸、または一軸延伸法、二軸延伸法等により延伸し、剥離性基板として用いることができる。前記化合物の中では、成形品の高温使用時の熱収縮率が低い、または比較的低く、安定性がよいことから、ポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸とエチレングリコールの縮合体)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールの縮合体)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアリレート;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;鉄、アルミニウム、銅等の金属、ガラス等が好ましい。
尚、上記剥離性基板は、正の配向複屈折を示す素材基板を溶液流延法で製造する際にも用いることができる。
また、剥離性基板作製後、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキル四級アンモニウム塩、リン酸エステル、流動パラフィン、ワックス、高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルコール、ビスアミド類、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物等の外部離型剤を片面又は両面に塗布し、形成した膜の剥離性を向上させた剥離性基板とすることができる。さらに、前記剥離性基板作製用化合物に、該外部離型剤を内部離型剤として添加した後、上記成形を行うことにより、膜の剥離性を向上させた剥離性基板とすることもできる。
また、前記の負の配向複屈折を示す高分子を含む溶液を溶液流延して製膜する方法としては、グラビヤロールコート法、マイヤーバーコート法、ドクターブレードコート法、リバースロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カレンダーコート法、スキーズコート法、キスコート法、バーコート法、スロットダイコート法、スピンコート法等が挙げられる。
尚、上記製膜方法は、正の配向複屈折を示す素材基板を溶液流延法で製造する際にも用いることができる。
また、この溶液流延後の乾燥方法としては、例えば空気中または窒素等の不活性ガス中に放置(風乾)する方法、熱風オーブン、赤外線加熱炉等で加熱乾燥する方法、真空乾燥機等で減圧乾燥する方法等により、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。
乾燥温度条件としては、定温、多段階昇温のいずれも用いることができる。定温の場合、下限−30℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限0℃、上限280℃がより好ましく、下限10℃、上限260℃がさらに好ましい。乾燥温度が−30℃より低いと乾燥時間が長くなる傾向があり、300℃より高いと形成した膜や正の配向複屈折を示す素材基板、剥離性基板の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。このような定温乾燥を用いることができるが、効果的に乾燥させるためには多段階に温度を上げることが好ましく、経済的観点から1次乾燥、2次乾燥の2段乾燥が特に好ましい。
2段乾燥を行う場合、1次乾燥は、下限0℃、上限40℃の温度範囲が好ましく、下限5℃、上限35℃がより好ましく、下限10℃、上限30℃がさらに好ましい。また、その乾燥時間は3分以上であることが好ましい。1次乾燥温度が0℃より低いと形成した膜が発泡しないようにするための初期乾燥時間が長くなる傾向があり、40℃より高いと発泡し易くなる傾向がある。
2次乾燥においては、下限60℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限70℃、上限280℃がより好ましく、下限80℃、上限260℃がさらに好ましい。2次乾燥温度が60℃より低いと乾燥時間が長くなる傾向があり、300℃より高いと形成した膜や正の配向複屈折を示す素材基板、剥離性基板の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
尚、上記乾燥方法、乾燥温度条件は、正の配向複屈折を示す素材基板を溶液流延法で製造する際にも用いることができる。
さらに、前記の負の配向複屈折を示す高分子を含む溶液を正の配向複屈折を示す素材基板、または、剥離性基板に塗布後、溶媒の蒸気にさらして形成した膜をアニーリングした後、上記の乾燥を行うことにより延伸前の膜の形成方法とすることもできる。
次に、フィルム長尺方向の1軸延伸について説明する。延伸方法としては、例えば、フィルムの両端を固定してトンネル型炉で予熱を行い、その後、1.01倍から3倍程度の倍率に縦1軸延伸する方法、多数のロール間をフィルムを通過させることによってフィルムの予熱を行い、続いて2対の延伸ロールにより1.01倍から3倍程度の倍率に縦1軸延伸する方法、多数のロール間をフィルムを通過させる間に予熱と段階的な延伸を並行して行いながら、1.01倍から3倍程度の倍率まで縦1軸延伸する方法等の公知の縦1軸延伸を用いることができる。
次に、本発明の延伸フィルムの特性を改質する目的で加えることが可能な添加剤について説明する。添加剤としては、酸化防止剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGANOX 1010、IRGANOX 1135、IRGANOX 1330等のヒンダードフェノール類)、加工安定剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製HP−136、IRGANOX E201、IRGAFOS 168等)、光安定剤(例えば、三共ライフテック製サノールLS−765、サノールLS−770等のヒンダードアミン類)、紫外線吸収剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製TINUVIN P、TINUVIN 213、TINUVIN 326等のベンゾトリアゾール類)、接着性改良剤(例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤)、シラノール縮合触媒(例えば、川研ファインケミカル製アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM等のアルミニウムキレート類)、可塑剤(例えば、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジn−オクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)等のエステル類)、界面活性剤(例えば、住友スリーエム製Fluorad FC−430、Fluorad FC−4430等のフッ素系化合物)、帯電防止剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGASTAT P18、IRGASTAT P22等)等が挙げられ、これらは本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
次に、本発明の延伸フィルム(本願明細書においてフィルムとは、厚さに関わらず、薄板状のものを指すものとする)の特性について説明する。
まず、特性を表す用語について定義する。
一般に、高分子は延伸の際に作用する引張応力により、高分子主鎖が配向し、複屈折を生じる性質がある。これは、前記のような応力を受けた高分子の主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率と配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率が異なることによるものである。高分子フィルムの1軸延伸品を例に挙げて具体的に説明すると、延伸フィルムの面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをnyとし(nxとnyの方向は直交)、厚み方向の屈折率をnz、膜厚をd(nm)とした時、延伸フィルムの面内の複屈折はnx−nyであり、面内位相差:Reは(nx−ny)×d(nm)で表され、延伸フィルムの厚み方向の複屈折は(nx+ny)/2−nzであり、厚み位相差:Rthは〔(nx+ny)/2−nz〕×d(nm)で表される。また、本発明において得られる積層延伸フィルムの正の配向複屈折を示す素材基板の面内位相差をRe(P)(nm)、厚み位相差をRth(P)(nm)とし、負の配向複屈折を示す膜の面内位相差をRe(N)(nm)、厚み位相差をRth(N)(nm)とすると、延伸フィルムの面内位相差は|Re(N)−Re(P)|、厚み位相差はRth(P)+Rth(N)で表される。さらに、延伸方向と延伸フィルムの面内の屈折率が最大となる方向(本明細書では、遅相軸と称する場合あり。)の角度を配向角とし、延伸方向を0度方向としてこの配向角を測定すると、延伸フィルムの面内の屈折率が最大となる方向がわかる。すなわち、延伸方向(高分子主鎖の配向方向)と延伸フィルムの面内の屈折率が最大となる方向がおよそ平行な場合、配向角はほぼ0度となり、延伸方向(高分子主鎖の配向方向)と延伸フィルムの面内の屈折率が最大となる方向がおよそ垂直な場合、配向角はほぼ90度、または、ほぼ−90度となる(延伸方向から左回りの角度を正の値とし、右回りの角度を負の値として表す。)。
本発明の延伸フィルムは、下記数式3及び4の光学特性を有する。
1≦Re(N)−Re(P)≦600 (数式3)
0≦Rth(P)+Rth(N) (数式4)
本発明の延伸フィルムの光学特性を得るためには、素材基板単体、膜単体を長尺方向に縦1軸延伸した場合、正の配向複屈折を示す素材基板単体の面内位相差をRe’(P)(nm)、厚み位相差をRth’(P)(nm)とし、負の配向複屈折を示す膜単体の面内位相差をRe’(N)(nm)、厚み位相差をRth’(N)(nm)とした時、
1≦Re’(N)−Re’(P)≦600 (数式5)
0≦Rth’(P)+Rth’(N) (数式6)
を満たすことを基準としてフィルム延伸時の温度、延伸倍率等の条件、正の配向複屈折を示す素材基板の厚み、負の配向複屈折を示す膜の厚みを選択し、本発明のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム製造条件に反映させ、必要に応じて製造条件を微調整すればよい。言うまでもなく正の配向複屈折を示す素材基板単体及び負の配向複屈折を示す膜単体の延伸条件は、同じである。
0≦Rth(P)+Rth(N) (数式4)
本発明の延伸フィルムの光学特性を得るためには、素材基板単体、膜単体を長尺方向に縦1軸延伸した場合、正の配向複屈折を示す素材基板単体の面内位相差をRe’(P)(nm)、厚み位相差をRth’(P)(nm)とし、負の配向複屈折を示す膜単体の面内位相差をRe’(N)(nm)、厚み位相差をRth’(N)(nm)とした時、
1≦Re’(N)−Re’(P)≦600 (数式5)
0≦Rth’(P)+Rth’(N) (数式6)
を満たすことを基準としてフィルム延伸時の温度、延伸倍率等の条件、正の配向複屈折を示す素材基板の厚み、負の配向複屈折を示す膜の厚みを選択し、本発明のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム製造条件に反映させ、必要に応じて製造条件を微調整すればよい。言うまでもなく正の配向複屈折を示す素材基板単体及び負の配向複屈折を示す膜単体の延伸条件は、同じである。
このように定義した時、本発明の延伸フィルムの面内位相差は590nmの光による測定において、下限1nm、上限600nmが好ましく、下限10nm、上限500nmがより好ましく、下限20nm、上限400nmがさらに好ましい。面内位相差が1nmより小さい、または、600nmより大きいと液晶セル等の複屈折による位相差の補償が困難になる傾向がある。また、本発明の延伸フィルムのNzの上限は好ましくは4、より好ましくは3、さらに好ましくは2であり、下限は0.5がより好ましい。Nzが4より大きいと液晶セル等の複屈折による位相差の補償が困難になる傾向がある。また、Nzが0.5より小さい場合は、厚み位相差が負の値となり、本発明の目的である、厚み位相差がゼロ以上の値を示す光学補償用のフィルムとならない。
さらに、偏光板の透過軸と必要な相対的位置関係が得やすいという観点から、延伸フィルムの配向角は、遅相軸が完全なフィルム短尺方向(幅方向)を示す90度または−90度に対して、±5度以内の振れの範囲にあることが好ましく、±3度以内の範囲にあることがより好ましく、±1度以内の範囲にあることがさらに好ましい。
次に、本発明の偏光板について説明する。偏光板としては、例えば、偏光子の両面にポリエステル系接着剤、ポリアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等の接着剤を用いて保護材を貼り合わせたもの等が挙げられる。偏光子の例としては、親水性高分子フィルムにヨウ素及び/または二色性染料を吸着配向して作製した偏光子、ポリビニルアルコール系フィルムを脱水処理してポリエンを形成させ、配向して作製した偏光子、ポリ塩化ビニルフィルムを脱塩酸処理してポリエンを形成させ、配向して作製したものが挙げられる。偏光子に使用される親水性高分子フィルムとしては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物フィルム等が挙げられる。保護材としては、両面に本発明の延伸フィルムを用いることもできるし、片面に本発明の延伸フィルムを使用し、反対の面には他の透光性フィルムを用いることもできる。
透光性フィルムとしては、透明であれば各種のものが使用可能である。透光性フィルムを形成する具体的な化合物の例としては、ポリカーボネート系重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル;アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合体またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のスチレン系重合体;アクリル酸エステルとスチレンとの共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエンの水素添加物等のポリオレフィン系重合体;アセチル基による置換度が2から3のセルロースアセテート等のセルロースエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアリレート;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;国際公開第01/37007号パンフレットに記載される化合物等が挙げられる。
また、これらの偏光板、または、両面に透光性フィルムが保護材として用いられた偏光板に本発明の延伸フィルムを別途、設けることもできる。
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。液晶表示装置としては、例えば、光源/導光板/光拡散フィルム/レンズフィルム/輝度向上フィルム/偏光板/液晶セル/偏光板の順に構成された表示装置等が挙げられるが、液晶セルの入射光側及び/または出射光側に本発明の延伸フィルムを装着すること及び/または液晶セルの入射光側及び/または出射光側の偏光板に本発明の偏光板を装着することにより本発明の液晶表示装置とすることができる。液晶セルの方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式等挙げられる。
なお、本発明の延伸フィルム、該延伸フィルムを用いて製造した偏光板は、TN方式、VA方式、IPS方式、OCB方式等の液晶セルを用いた液晶表示装置の視野角拡大、黒表示時の光漏れ防止用途に使用できる。本発明における延伸フィルムの光学特性の性能を十分に発揮するためには、VA方式、IPS方式が特に好ましい。また、本発明の延伸フィルム、該延伸フィルムを用いて製造した偏光板は、ビデオ、カメラ、携帯電話、パソコン、テレビ、モニター、自動車のインパネ等の液晶表示装置作製部品等に好適に使用できる。
以下に、本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(1)面内位相差、厚み位相差の測定
王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRを用いて、25℃下で590nmの光による測定を行い、3次元屈折率を算出した。得られた結果から、面内位相差:Reを(nx−ny)×dにより求めた。また、厚み位相差:Rthを〔(nx+ny)/2−nz〕×dにより求めた。尚、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5より算出した。
王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRを用いて、25℃下で590nmの光による測定を行い、3次元屈折率を算出した。得られた結果から、面内位相差:Reを(nx−ny)×dにより求めた。また、厚み位相差:Rthを〔(nx+ny)/2−nz〕×dにより求めた。尚、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5より算出した。
(2)配向角の測定
サンプルの延伸方向が測定装置の0度方向となるように、王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRに装着し、波長590nmの光により、配向角(0度方向とサンプルの遅相軸のなす角度)を測定した。尚、配向角は0度方向から左回りの角度を正の値とし、右回りの角度を負の値として表した。
サンプルの延伸方向が測定装置の0度方向となるように、王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRに装着し、波長590nmの光により、配向角(0度方向とサンプルの遅相軸のなす角度)を測定した。尚、配向角は0度方向から左回りの角度を正の値とし、右回りの角度を負の値として表した。
(合成例1)セルロース N−フェニルカーバメート(1)の合成
冷却管、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた500mlの4つ口フラスコに、60℃で7時間真空乾燥したセルロース(旭化成ケミカルズ製アビセルTG−F20)3.0gを入れ、ピリジン300mlを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)23.1gを加えた。窒素を導入し、攪拌しながら110℃に昇温した後、7時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をエタノール1200ml中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られたポリマーにアセトン90mlを加えて溶解した後、純水1200ml中に滴下して沈殿を生じさせた。濾別後水洗し、60℃で8時間真空乾燥した後、ポリマーをソックスレー抽出器に入れた。メタノールによるソックスレー抽出を20回行った後、25℃で8時間真空乾燥することによって、5.7gのセルロース N−フェニルカーバメート(1)を得た(以下、合成品(1)と呼ぶことがある。)。合成品(1)のDSはプロトンNMR分析の結果、3であった。なお、DSは、セルロース骨格由来のプロトンの化学シフト(3.4〜5.5ppm)面積とフェニル基のプロトンの化学シフト(6.7〜7.8ppm)面積を比較することによって決定した。
冷却管、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた500mlの4つ口フラスコに、60℃で7時間真空乾燥したセルロース(旭化成ケミカルズ製アビセルTG−F20)3.0gを入れ、ピリジン300mlを加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)23.1gを加えた。窒素を導入し、攪拌しながら110℃に昇温した後、7時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応液をエタノール1200ml中に滴下して沈殿を生成させた。濾別後、得られたポリマーにアセトン90mlを加えて溶解した後、純水1200ml中に滴下して沈殿を生じさせた。濾別後水洗し、60℃で8時間真空乾燥した後、ポリマーをソックスレー抽出器に入れた。メタノールによるソックスレー抽出を20回行った後、25℃で8時間真空乾燥することによって、5.7gのセルロース N−フェニルカーバメート(1)を得た(以下、合成品(1)と呼ぶことがある。)。合成品(1)のDSはプロトンNMR分析の結果、3であった。なお、DSは、セルロース骨格由来のプロトンの化学シフト(3.4〜5.5ppm)面積とフェニル基のプロトンの化学シフト(6.7〜7.8ppm)面積を比較することによって決定した。
(実施例1)
エチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD−100,数平均分子量:63400,DS:2.5)0.15g、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製CAP−482−20,アセチル基による置換度:0.09,プロピオニル基による置換度:2.60)0.255g及びフタル酸ジエチル0.04gを混合し、塩化メチレン5.756gを加えて25℃下で溶解した。この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板Aとした。その後、この塗布基板Aを25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。次に、合成品(1)0.36gに4−メチル−2−ペンタノン5.111g及びフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)0.072gを加え、25℃下で溶解した塗布液を用意し、この塗布液をバーコーターを用いて塗布基板Aの塗布膜形成面に塗布し、塗布基板Bとした。その後、この塗布基板Bを25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、155℃で1.53倍、ポリエチレンテレフタレートフィルムといっしょに長尺方向に1軸延伸した。次に、形成された延伸フィルム上にアクリル系感圧性接着剤層を形成して、この感圧性接着剤層を介して圧着によってガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、ガラス基板上に延伸フィルムが積層されたサンプルを作製した。このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した結果及びNzの算出結果を表1に示す。尚、フィルム断面観察の結果、最初の塗布層の厚みは39000nmであり、2度目の塗布層の厚みは26300nmであった。本サンプルは配向角がほぼ90度であり、延伸方向と垂直方向(フィルム幅方向)に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
エチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD−100,数平均分子量:63400,DS:2.5)0.15g、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製CAP−482−20,アセチル基による置換度:0.09,プロピオニル基による置換度:2.60)0.255g及びフタル酸ジエチル0.04gを混合し、塩化メチレン5.756gを加えて25℃下で溶解した。この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板Aとした。その後、この塗布基板Aを25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。次に、合成品(1)0.36gに4−メチル−2−ペンタノン5.111g及びフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)0.072gを加え、25℃下で溶解した塗布液を用意し、この塗布液をバーコーターを用いて塗布基板Aの塗布膜形成面に塗布し、塗布基板Bとした。その後、この塗布基板Bを25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、155℃で1.53倍、ポリエチレンテレフタレートフィルムといっしょに長尺方向に1軸延伸した。次に、形成された延伸フィルム上にアクリル系感圧性接着剤層を形成して、この感圧性接着剤層を介して圧着によってガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、ガラス基板上に延伸フィルムが積層されたサンプルを作製した。このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した結果及びNzの算出結果を表1に示す。尚、フィルム断面観察の結果、最初の塗布層の厚みは39000nmであり、2度目の塗布層の厚みは26300nmであった。本サンプルは配向角がほぼ90度であり、延伸方向と垂直方向(フィルム幅方向)に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
(実施例2)
最初の塗布層の厚みが20000nmであり、2度目の塗布層の厚みが29000nmであること以外は、実施例1と同様の操作を行った。ガラス基板上に延伸フィルムが積層されたサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した結果及びNzの算出結果を表1に示す。本サンプルは配向角がほぼ−90度であり、延伸方向と垂直方向(フィルム幅方向)に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
最初の塗布層の厚みが20000nmであり、2度目の塗布層の厚みが29000nmであること以外は、実施例1と同様の操作を行った。ガラス基板上に延伸フィルムが積層されたサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した結果及びNzの算出結果を表1に示す。本サンプルは配向角がほぼ−90度であり、延伸方向と垂直方向(フィルム幅方向)に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
(比較例1)
エチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD−100,数平均分子量:63400,DS:2.5)0.15g、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製CAP−482−20,アセチル基による置換度:0.09,プロピオニル基による置換度:2.60)0.255g及びフタル酸ジエチル0.04gを混合し、塩化メチレン5.756gを加えて25℃下で溶解した。この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、155℃で1.53倍、ポリエチレンテレフタレートフィルムといっしょにフィルム長尺方向に1軸延伸した。次に、形成された延伸フィルム上にアクリル系感圧性接着剤層を形成して、この感圧性接着剤層を介して圧着によってガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、ガラス基板上に延伸フィルムが積層されたサンプルを作製した。このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した結果及びNzの算出結果を表2に示す。本サンプルは配向角がほぼ0度であり、延伸方向に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
エチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD−100,数平均分子量:63400,DS:2.5)0.15g、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製CAP−482−20,アセチル基による置換度:0.09,プロピオニル基による置換度:2.60)0.255g及びフタル酸ジエチル0.04gを混合し、塩化メチレン5.756gを加えて25℃下で溶解した。この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、155℃で1.53倍、ポリエチレンテレフタレートフィルムといっしょにフィルム長尺方向に1軸延伸した。次に、形成された延伸フィルム上にアクリル系感圧性接着剤層を形成して、この感圧性接着剤層を介して圧着によってガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、ガラス基板上に延伸フィルムが積層されたサンプルを作製した。このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した結果及びNzの算出結果を表2に示す。本サンプルは配向角がほぼ0度であり、延伸方向に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
(比較例2)
合成品(1)0.36gに4−メチル−2−ペンタノン5.111g及びフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)0.072gを加え、25℃下で溶解した。この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、155℃で1.53倍、ポリエチレンテレフタレートフィルムといっしょにフィルム長尺方向に1軸延伸した。次に、形成された延伸フィルム上にアクリル系感圧性接着剤層を形成して、この感圧性接着剤層を介して圧着によってガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、ガラス基板上に延伸フィルムが積層されたサンプルを作製した。このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した結果及びNzの算出結果を表2に示す。本サンプルは配向角がほぼ−90度であり、延伸方向と垂直方向(フィルム幅方向)に遅相軸を有していたが、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は減少傾向にあり、厚み位相差が負となる、負の配向複屈折を有するものであった。
合成品(1)0.36gに4−メチル−2−ペンタノン5.111g及びフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)0.072gを加え、25℃下で溶解した。この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、155℃で1.53倍、ポリエチレンテレフタレートフィルムといっしょにフィルム長尺方向に1軸延伸した。次に、形成された延伸フィルム上にアクリル系感圧性接着剤層を形成して、この感圧性接着剤層を介して圧着によってガラス基板(平均屈折率:1.52,面内位相差:0nm,厚み位相差:1nm)に貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、ガラス基板上に延伸フィルムが積層されたサンプルを作製した。このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した結果及びNzの算出結果を表2に示す。本サンプルは配向角がほぼ−90度であり、延伸方向と垂直方向(フィルム幅方向)に遅相軸を有していたが、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は減少傾向にあり、厚み位相差が負となる、負の配向複屈折を有するものであった。
(比較例3)
ポリカーボネート2.0gに塩化メチレン8.0gを加え、25℃下で溶解した。この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、ポリカーボネートフィルムのみを165℃で1.12倍、フィルム長尺方向に1軸延伸した。次に、このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した。その結果及びNzの算出結果を表2に示す。本サンプルは配向角がほぼ0度であり、延伸方向に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
ポリカーボネート2.0gに塩化メチレン8.0gを加え、25℃下で溶解した。この塗布液をバーコーターを用いて50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を25℃で17時間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、120℃で30分間、空気中で乾燥した。その後、ポリカーボネートフィルムのみを165℃で1.12倍、フィルム長尺方向に1軸延伸した。次に、このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した。その結果及びNzの算出結果を表2に示す。本サンプルは配向角がほぼ0度であり、延伸方向に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
(比較例4)
比較例3で作製したポリカーボネートフィルムを同一条件でフィルム短尺方向(幅方向)に1軸延伸(横1軸延伸)した。次に、このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した。尚、ここでは比較例3と比べるため、サンプルの長尺方向が王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRの0度方向となるように装着した。測定結果及びNzの算出結果を表2に示す。本サンプルは配向角の測定値がほぼ90度を示し、フィルム幅方向に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
比較例3で作製したポリカーボネートフィルムを同一条件でフィルム短尺方向(幅方向)に1軸延伸(横1軸延伸)した。次に、このサンプルの面内位相差、厚み位相差、配向角を測定した。尚、ここでは比較例3と比べるため、サンプルの長尺方向が王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRの0度方向となるように装着した。測定結果及びNzの算出結果を表2に示す。本サンプルは配向角の測定値がほぼ90度を示し、フィルム幅方向に遅相軸を有していた。また、遅相軸を傾斜中心軸として傾斜した際の位相差は増加傾向にあり、厚み位相差が正となる、正の配向複屈折を有するものであった。
(実施例3)
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を含浸させ、延伸することにより偏光子を作製した。この偏光子の片面にポリアクリル系接着剤を用いてアセチル基による置換度が2.5のセルロースアセテートフィルム(80μm厚)を貼り合わせた。さらに、偏光子の反対の面に実施例2で作製した延伸フィルムをアクリル系感圧性接着剤を用いて貼り合わせ、光学補償層を有する偏光板を作製した。また、ロール状の上記偏光子の片面にポリアクリル系接着剤を用いてアセチル基による置換度が2.5のセルロースアセテートフィルム(80μm厚)を貼り合わせ、反対の面に別途用意した、実施例2に示したポリエチレンテレフタレートフィルム付き延伸フィルムでロール状のものをアクリル系感圧性接着剤を用いて貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、ロールtoロールで貼り合わされた、光学補償層の遅相軸が幅方向にあるロール状の偏光板を作製した。
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を含浸させ、延伸することにより偏光子を作製した。この偏光子の片面にポリアクリル系接着剤を用いてアセチル基による置換度が2.5のセルロースアセテートフィルム(80μm厚)を貼り合わせた。さらに、偏光子の反対の面に実施例2で作製した延伸フィルムをアクリル系感圧性接着剤を用いて貼り合わせ、光学補償層を有する偏光板を作製した。また、ロール状の上記偏光子の片面にポリアクリル系接着剤を用いてアセチル基による置換度が2.5のセルロースアセテートフィルム(80μm厚)を貼り合わせ、反対の面に別途用意した、実施例2に示したポリエチレンテレフタレートフィルム付き延伸フィルムでロール状のものをアクリル系感圧性接着剤を用いて貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、ロールtoロールで貼り合わされた、光学補償層の遅相軸が幅方向にあるロール状の偏光板を作製した。
(実施例4)
IPS方式の液晶セルを装着した液晶表示装置を用意し、実施例2で作製したポリエチレンテレフタレートフィルム付き延伸フィルムを液晶セルの出射光側にアクリル系感圧性接着剤を用いて貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、表示装置を作製した。表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても黒表示時の光もれはなく、色表示が変わることもなく、良好な画像が得られた。
IPS方式の液晶セルを装着した液晶表示装置を用意し、実施例2で作製したポリエチレンテレフタレートフィルム付き延伸フィルムを液晶セルの出射光側にアクリル系感圧性接着剤を用いて貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、表示装置を作製した。表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても黒表示時の光もれはなく、色表示が変わることもなく、良好な画像が得られた。
(実施例5)
IPS方式の液晶セルを装着した液晶表示装置を用意し、出射光側の偏光板をはずして代わりに実施例3で作製した偏光板を延伸フィルム装着面が液晶セルの出射光側になるように液晶セルに貼り合わせた表示装置を作製した。表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても黒表示時の光もれはなく、色表示が変わることもなく、良好な画像が得られた。
IPS方式の液晶セルを装着した液晶表示装置を用意し、出射光側の偏光板をはずして代わりに実施例3で作製した偏光板を延伸フィルム装着面が液晶セルの出射光側になるように液晶セルに貼り合わせた表示装置を作製した。表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても黒表示時の光もれはなく、色表示が変わることもなく、良好な画像が得られた。
(比較例5)
実施例2で作製した延伸フィルムを使用しないこと以外は実施例4と同様の操作を行った。その結果、斜め方向から見た際、黒表示時に光もれがみられた。
実施例2で作製した延伸フィルムを使用しないこと以外は実施例4と同様の操作を行った。その結果、斜め方向から見た際、黒表示時に光もれがみられた。
(比較例6)
実施例3で作製した偏光板を使用せず、出射光側に、厚み位相差が60nmのセルロースアセテートフィルムが保護材として両面に装着された偏光板を用いたこと以外は実施例5と同様の操作を行った。その結果、斜め方向から見た際、黒表示時に光もれがみられた。
実施例3で作製した偏光板を使用せず、出射光側に、厚み位相差が60nmのセルロースアセテートフィルムが保護材として両面に装着された偏光板を用いたこと以外は実施例5と同様の操作を行った。その結果、斜め方向から見た際、黒表示時に光もれがみられた。
Claims (7)
- 遅相軸がフィルム短尺方向(幅方向)にあり、以下の数式1及び数式2を満たすことを特徴とするフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
1≦Re≦600 (数式1)
0.5≦Nz≦4.0 (数式2)
(式中、Reは延伸フィルムの面内位相差(nm)を表す。また、延伸フィルムの厚み位相差をRth(nm)とした時、Nzは、Nz=Rth/Re+0.5で算出される数値を表す。) - 正の配向複屈折を示す素材基板及び負の配向複屈折を示す膜との積層フィルムであることを特徴とする請求項1記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
- 負の配向複屈折を示す膜が、セルロース N−置換カーバメートを含有してなる膜であることを特徴とする請求項2に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
- 前記セルロース N−置換カーバメートは、セルロースの水酸基の少なくとも一つがN−置換カーバメート化されており、かつ、カーバメート基の窒素原子に結合した水素原子の少なくとも一つが下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基で置換されており(Nに結合した置換基)、かつ、複数のN−置換カーバメート基の該Nに結合した置換基は同一または異なって下記一般式(1)〜(3)から選ばれる基であることを特徴とする請求項3に記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
- 正の配向複屈折を示す高分子を含有してなるフィルムのNzが下限0.8、上限8の範囲であるものを正の配向複屈折を示す素材基板とすることを特徴とする請求項1〜4記載のフィルム長尺方向1軸延伸フィルム。
- 偏光子の少なくとも片面に、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の長尺方向1軸延伸フィルムを偏光子の保護材として装着したことを特徴とする偏光板。
- 請求項1から請求項5に記載の長尺方向1軸延伸フィルム、請求項6に記載の偏光板から選ばれる1以上の構成を備えた液晶表示装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009096637A JP2010249894A (ja) | 2009-04-13 | 2009-04-13 | 光学補償用フィルム、これを用いた偏光板及び液晶表示装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014065294A1 (ja) * | 2012-10-26 | 2014-05-01 | 日本ゼオン株式会社 | 積層体及びその製造方法、位相差フィルム、偏光板並びにips液晶パネル |
WO2014136529A1 (ja) * | 2013-03-07 | 2014-09-12 | コニカミノルタ株式会社 | 光学フィルム、並びにこれを含む偏光板およびva型液晶表示装置 |
JP2014224926A (ja) * | 2013-05-16 | 2014-12-04 | 東ソー株式会社 | ポリマー組成物を用いた光学フィルム |
-
2009
- 2009-04-13 JP JP2009096637A patent/JP2010249894A/ja active Pending
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US9523794B2 (en) | 2013-03-07 | 2016-12-20 | Konica Minolta, Inc. | Optical film of cellulose ester and cellulose ether for vertical alignment liquid crystal displays |
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