JP5191797B2 - 光学補償フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示装置、光ピックアップ等の光学装置に好適に用いることが可能な光学補償フィルムおよびその製造方法に関するものである。
液晶表示装置等の各種光学装置には、液晶セル、偏光子等と共に、各種膜が用いられている。なお、本願明細書において膜とは、他の基材上に直接形成した層、これを基材から剥離して取り出したフィルム、更には直接溶液キャスティング、溶融キャスティング等により単独で形成したフィルム等が含まれるものとする。
特に、装置中の他の構成により生じる複屈折を補償するための光学補償用のフィルムが一般的に用いられている。このような光学補償用のフィルムの用途としては、例えば、視野角の拡大、黒表示時の色漏れ防止等がある。また、このような光学補償用のフィルムを形成するための材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン等のポリマーが用いられ、一般的には、製膜工程(フィルム化)、延伸工程(位相差付与)、貼り合わせ工程を経て各種装置に組み込まれている。
ところで、光学補償用のフィルムを液晶表示装置等の表示時における変色防止に用いるためには光の各波長に対する位相差(位相差の波長分散)が制御されていることが必要である。そのようなものの例としては、光の各波長に対し、位相差がその波長の1/4になるような位相差板等が挙げられる。このように広帯域で必要な位相差に制御されたものとしては、例えば、(波長450nmの光におけるリタデーション)/(波長550nmの光におけるリタデーション)の値及びリタデーションが異なるフィルムをそれらの光軸が交差した状態で積層された位相差板が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
また、他の例として、正の固有複屈折値を有するポリマーと負の固有複屈折値を有するポリマーの混合物から形成されるフィルムを1軸延伸して作製した1/4波長膜が挙げられる(例えば、特許文献2や非特許文献1参照)。ここで、正の固有複屈折値を有するポリマーとは、ポリマーの主鎖が延びきって理想状態まで配向した時、(ポリマー主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(ポリマー主鎖の配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)>0 となるポリマーであり、例えば、ポリ塩化ビニルである。また、負の固有複屈折値を有するポリマーとは、ポリマーの主鎖が延びきって理想状態まで配向した時、(ポリマー主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(ポリマー主鎖の配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)<0となるポリマーであり、例えば、ポリメチルメタクリレートである。
また、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とを含む高分子から構成されるフィルムの例も挙げられる(例えば、特許文献3参照)。また、内部に液晶をほぼ均一に分散させた高分子フィルムを一方向に延伸したフィルムの例も挙げられる(特許文献4参照)。
さらに、他の例として、構造複屈折を利用した表面レリーフ型ホログラムが挙げられる(例えば、特許文献5参照)。
特開平5−27118号公報(1993年2月5日公開) 特開昭56−125702号公報(1981年10月2日公開) 国際公開第WO00/26705号パンフレット(2000年5月11日公開) 特開平5−257013(1993年10月8日公開) 特開昭62−212940号公報(1987年9月18日公開) 井上隆、斉藤拓、「低複屈折性プラスチックの設計」、機能材料、第7巻、第3号、p21−29、1987年
しかしながら、特許文献1に記載のフィルムでは、複数のフィルムの光軸を合わせる煩雑さがある。
また、特許文献2や非特許文献1に記載のフィルムでは、1軸延伸した時、それぞれのポリマー単体の位相差の符号が逆になるため、フィルム全体の位相差は足し合わせの結果小さくなり、必要な位相差を得るためには膜厚を厚くする必要がある。その結果、材料のコスト高や表示装置の厚みが増す等の問題が生じる。
さらに、特許文献3に記載のフィルムでも、それぞれのモノマー単位からなる部分の位相差の符号が逆のため、フィルム全体の位相差は足し合わせの結果小さくなり、上記例と同様に必要な位相差を得るためには膜厚を厚くする必要がある。
特許文献4に記載の位相差板は、延伸された高分子フィルムの屈折率およびその波長依存性と、その延伸方向に分子が配向した液晶の屈折率およびその波長依存性とを合成した特性になり、必要な波長依存性を得るためには、高分子フィルムと液晶との選択が限られるという問題が生じる。
特許文献5に記載の技術の場合、光の波長レベルサイズに微細加工する必要があり、加工による継ぎ目のないロール状のフィルムを作製することは困難である。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光軸を合わせて2枚の位相差フィルムを貼り合わせるような煩雑な工程を必要とせず、かつ、安価で、使用時に光学装置の厚みが不必要に増すことのない、光の各波長に対する位相差の制御が容易な光学補償フィルムおよびその製造方法を実現することにある。
本発明に係る光学補償フィルムは、上記課題を解決するために、配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる複数種の高分子を含み、フィルム面に平行な方向に沿って複数の単位領域に分割したときに、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域が複数存在し、各単位領域における位相差の波長依存性と、全ての単位領域を含む全体領域における合成位相差の波長依存性とが異なることを利用したことを特徴とする。
また、本発明の光学補償フィルムは、次のようにも表現できる。すなわち、配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる複数種の高分子を含む光学補償フィルムであって、上記複数種の高分子の全ての合計量に対する、各々の高分子の合計量の割合を配合比率としたとき、対応する配合比率よりも大きい混合比率の高分子の種類が異なる複数種の単位領域がフィルム面に沿って分布しており、各単位領域における位相差の波長依存性と、全ての単位領域を含む全体領域における合成位相差の波長依存性とが異なることを利用したことを特徴とする。
なお、ここで述べる位相差とは、光学補償フィルムのフィルム面に垂直な方向から見た際の位相差である。また、合成位相差とは、全体領域を巨視的にみたときの位相差のことである。また、「利用」とは、全体領域を1つの素子として合成位相差の波長依存性を利用することを意味している。
上記の構成によれば、単位領域が人間の目で視認できない程度になるように、光学補償フィルムとこれを視る人間との距離を確保した場合に、人間は、全ての単位領域を含む全体領域を巨視的に視ることとなる。すなわち、単位領域を視認できない距離からみた場合に、人間は、巨視的に合成位相差の波長分散を示す光学素子として認識することとなる。
このとき、全体領域の合成位相差Rは、各単位領域の位相差rによる複屈折性の平均の複屈折性に対応する位相差を示す。そのため、各単位領域の位相差の波長依存性と、全ての単位領域を含む全体領域における合成位相差の波長依存性とが異なることとなる。
この合成位相差の波長依存性(波長分散)は、単位領域の位相差、および、全体領域に対する各単位領域の面積比率によって決定される。そのため、合成位相差の波長分散を、光軸を合わせて2枚の位相差フィルムを貼り合わせるような煩雑な工程を必要とせず、かつ、材料の制約を受けることなく、容易に制御することができる。
また、光学補償フィルムは、配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる複数種の高分子を含むものである。複数種の高分子は、製造過程において相分離しやすい。そして相分離することで位相差の異なる単位領域を容易に存在させることができる。つまり、光学補償フィルムを容易に製造することができ、特許文献5のような複雑な加工技術を必要とせず、安価で製造することができる。
さらに、光学補償フィルムに含まれる複数種の高分子の各々の配向複屈折値が全て同一符号であるため、合成位相差が小さくなりすぎることがなく、必要な合成位相差を得るために、光学補償フィルムの膜厚を厚くする必要がない。その結果、光学補償フィルムが適用される光学装置の厚みを不必要に増すことがない。
このように、本発明によれば、光軸を合わせて2枚の位相差フィルムを貼り合わせるような煩雑な工程を必要とせず、かつ、安価で、使用時に光学装置の厚みが不必要に増すことのない、光の各波長に対する位相差の制御が容易な光学補償フィルムを提供することができる。
さらに、本発明の光学補償フィルムにおいて、隣接する2つの上記単位領域は、含有する上記複数種の高分子の混合比率が異なることが好ましい。
上述したように、複数種の高分子は、相分離しやすい。そのため、光学補償フィルムの製造過程において、フィルム面に平行な方向に沿って、当該複数種の高分子の混合比率を容易に変化させることができる。その結果、フィルム面に平行な方向に沿って複数の単位領域に分割したときに、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域を複数存在させることを容易に実現できる。
さらに、本発明の光学補償フィルムは、全体領域における波長λnmの光に対する合成位相差をR(λ)としたとき、以下の数式(1)
R(548)≦350nm 数式(1)
を満たすことが好ましい。
高画質の液晶表示装置用の光学補償のための位相差フィルムとしては、位相差が一般に350nm以下であることが必要である。そのため、上記の構成により、液晶表示装置に好適に使用することができる。
さらに、本発明の光学補償フィルムは、上記複数種の単位領域の各々について、当該単位領域の主成分である高分子単体で成形されたフィルムを1軸延伸した延伸品の波長λnmの光に対する位相差をR(λ)としたとき、以下の数式(2)
(548)<R(447) 数式(2)
を満たすとともに、上記全体領域における波長λnmの光に対する合成位相差をR(λ)としたとき、以下の数式(3)
R(548)≧R(447) 数式(3)
を満たすことが好ましい。
多くの高分子を1軸延伸させたときの位相差は、正の波長分散を示す。そのため、数式(2)を満たすことから、多くの高分子を使用することができ、材料の選択の幅が広がることとなる。
一方、上述したように、合成位相差の波長分散は、上記複数種の単位領域間の位相差の差、および、全体領域に対する各種の単位領域の面積比率によって決定されるものであり、これらを適宜選択することで、容易に制御される。そして、数式(3)を満たすとき、合成位相差は逆の波長分散を示すこととなる。すなわち、光学補償フィルムを逆の波長分散を示す位相差膜として使用することができる。
さらに、本発明の光学補償フィルムは、上記全体領域における波長λnmの光に対する合成位相差をR(λ)としたとき、以下の数式(4)
R(628)≧R(548)≧R(447) 数式(4)
を満たすことが好ましい。
これにより、広い範囲の波長領域において逆の波長分散を示す光学補償フィルムを実現することができる。
本発明の光学補償フィルムの製造方法は、上記の光学補償フィルムの製造方法であって、配向複屈折値の符号が同一であり、かつ、配向複屈折値の異なる複数種の高分子を混合して液体状の混合品を作製し、当該混合品をフィルム状に成形する第1工程と、フィルム状に成形された成形品を延伸し、延伸品を上記光学補償フィルムとする第2工程とを含み、上記第1工程において、上記混合品に含まれる上記複数種の高分子を相分離させることで、上記第2工程において、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域を複数存在させることを特徴とする。
一般に、異種の高分子は相分離を起し易い。そのため、複数種の高分子を混合して液体状の混合品を作製し、当該混合品をフィルム状に成形している間に相分離する。その結果、フィルム面に平行な方向に沿って、当該複数種の高分子の混合比率を容易に変化させることができる。そして、相分離した状態の成形品を延伸することで、相分離した各領域の位相差が異なることとなる。そのため、フィルム面に平行な方向に沿って複数の単位領域に分割したときに、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域を容易に複数存在させることができる。
また、本発明の光学補償フィルムの製造方法は、上記の光学補償フィルムの製造方法であって、配向複屈折値の符号が同一であり、かつ、配向複屈折値の異なる複数種の高分子を混合して液体状の混合品を作製し、当該混合品をフィルム状に成形する第1工程と、フィルム状に成形された成形品を延伸し、延伸品を上記光学補償フィルムとする第2工程とを含み、上記第1工程において上記混合品に含まれる複数種の高分子を相分離させることで、上記第2工程において、上記複数種の単位領域をフィルム面に沿って分布させることを特徴とする。
上述したように、、異種の高分子は相分離を起し易いため、対応する配合比率よりも大きい混合比率の高分子の種類が異なる複数種の単位領域がフィルム面に沿って分布させることが容易に実現できる。
さらに、本発明の光学補償フィルムの製造方法は、上記複数種の高分子の各々の単体を上記光学補償フィルムと同条件で製造したときの製造品について波長548nmの光で測定した配向複屈折値のうち、最大値をΔnmax、最小値をΔnminとしたとき、上記第1工程において、以下の数式(5)
0.0002≦|Δnmax−Δnmin|≦0.07 数式(5)
を満たす複数種の高分子を用いることが好ましい。
上記の構成によれば、隣接する単位領域間の位相差の差を10nm以上にするために光学補償フィルムの厚みが厚くなりすぎることがない。さらに、光学補償するための合成位相差の値が大きくなりすぎることがない。
さらに、本発明の光学補償フィルムの製造方法は、上記第1工程において、上記複数種の高分子として、高分子単体で形成されたフィルムを1軸延伸したときの位相差が以下の数式(6)
(548)<R(447) 数式(6)
(R(548)は、波長548nmの光で測定したフィルム面に垂直な方向の位相差を示し、R(447)は、波長447nmの光で測定したフィルム面に垂直な方向の位相差を示す。)
を満たす高分子を用いることが好ましい。
多くの高分子を1軸延伸させたときの位相差は、数式(6)を満たす。そのため、多くの高分子を使用することができ、材料の選択の幅が広がることとなる。
本発明に係る光学補償フィルムは、配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる複数種の高分子を含み、フィルム面に平行な方向に沿って複数の単位領域に分割したときに、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域が複数存在し、各単位領域における位相差の波長依存性と、全ての単位領域を含む全体領域における合成位相差の波長依存性とが異なることを利用したものである。
また、本発明の光学補償フィルムの製造方法は、上記の光学補償フィルムの製造方法であって、配向複屈折値の符号が同一であり、かつ、配向複屈折値の異なる複数種の高分子を混合して液体状の混合品を作製し、当該混合品をフィルム状に成形する第1工程と、フィルム状に成形された成形品を延伸し、延伸品を上記光学補償フィルムとする第2工程とを含み、上記第1工程において、上記混合品に含まれる複数種の高分子を相分離させることで、上記第2工程において、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域を複数存在させる。
それゆえ、光軸を合わせて2枚の位相差フィルムを貼り合わせるような煩雑な工程を必要とせず、かつ、安価で、使用時に光学装置の厚みが不必要に増すことのない、光の各波長に対する位相差の制御が容易な光学補償フィルムおよびその製造方法を提供することができる。
本発明の光学補償フィルムの製造方法および光学補償フィルムに関する実施の一形態について図1〜図4に基づいて説明すれば以下のとおりである。
(配向複屈折値について)
まず、配向複屈折値について説明する。
一般に、高分子は延伸の際に作用する引張応力、加熱成形後の収縮応力等の応力により、高分子の主鎖が配向し、複屈折を生じる性質がある。これは、前記のような応力を受けた高分子の主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率と配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率とが異なることによるものである。配向複屈折値とは、配向による複屈折を示すものであり、この2つの屈折率の差で表される。本明細書においては、(高分子主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(高分子主鎖の配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)>0の関係が得られる時の配向複屈折値を正の値とし、(高分子主鎖の配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率)−(高分子主鎖の配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率)<0の関係が得られる時の配向複屈折値を負の値とする。
次に、高分子フィルムの1軸延伸品を例に挙げて具体的に説明する。1軸延伸して高分子主鎖を配向させた高分子フィルムにおいて、延伸方向を0度方向とし、当該延伸方向に対する、フィルム面内で偏波成分に関する屈折率が最大となる方向の角度を「配向複屈折の方位角」と表現する。この場合、フィルム面内で偏波成分に関する屈折率が最大となる方向が高分子主鎖の配向方向(延伸方向)に平行な方向とほぼ一致する時、上記定義より、配向複屈折値は正の値となる。そして、配向複屈折の方位角はほぼ0度となる。また、フィルム面内で偏波成分に関する屈折率が最大となる方向が高分子主鎖の配向方向(延伸方向)に垂直な方向とほぼ一致する時、上記定義より、配向複屈折値は負の値となる。そして、配向複屈折の方位角は、ほぼ90度又はほぼ−90度となる(延伸方向から左回りの角度を正の値とし、右回りの角度を負の値として表す)。したがって、配向複屈折の方位角を測定することにより、配向複屈折値の符号(正または負)が判断できる。
また、(位相差)=(複屈折)×(厚み)の関係より、位相差及び厚みを測定することにより、配向複屈折値の絶対値を求めることができる。本明細書では、波長548nmの光で測定したフィルム面に垂直な方向の位相差(R(548)(nm))をそのフィルムの厚み(d(nm))で割った値を配向複屈折値の絶対値とする。また、本明細書において、特にフィルム面に対する角度の言及がない場合、「位相差」はフィルム面に垂直な方向から見た際の位相差を意味するものとする。
(光学補償フィルムの構成)
次に、本実施形態に係る光学補償フィルムの構造について図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る光学補償フィルム1の一例の断面図である。図1に示されるように、光学補償フィルム1は、複数種の高分子を含むものであり、各種の高分子が相分離している。なお、後述するように、光学補償フィルム1に含まれる各種の高分子は、配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる。
図1は、配合比率が相対的に大きい高分子Aが海部を形成し、配合比率が相対的に小さい高分子Bが島部を形成しているときの状態を示している。ただし、各種の高分子の相分離状態は、これに限定されるものではなく、様々な相分離状態が含まれる。この相分離状態は、光学補償フィルム1に含まれる複数種の高分子の全ての合計量に対する各種の高分子の合計量の割合である配合比率等によって変わる。例えば、2種の高分子種、配合比率、相分離時の温度条件等を制御することで、フィルムの厚み方向に沿って、フィルムの一方の面から他方の面まで連続して同一種の高分子が存在する状態にすることもできる。
図1に示されるように、光学補償フィルム1は、配向複屈折値の異なる複数種の高分子A・Bを相分離させた状態で存在させることで、フィルム面に平行な方向に沿って、当該複数種の高分子A・Bの混合比率が変化し、位相差が変化する。この変化量は、単一の高分子からなるフィルムにおける製造バラツキに起因する位相差の変化の程度を超えるものである。すなわち、光学補償フィルム1は、フィルム面(光入射面)に平行な方向に沿って、同一波長の光に対する位相差の異なる単位領域を複数存在させている。そして、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域が複数存在させることが好ましい。
ここで、単位領域の分割方法について説明する。
例えば、全ての種類の高分子の各々がフィルムの厚み方向に沿ってフィルムの一方の面から他方の面まで連続して存在するように相分離している場合には、各種の高分子が連続して存在している領域を一つの単位領域とすればよい。
一方、図1に示されるように、全ての種類の高分子A・Bがフィルム面に沿ってフィルムの一方の面から他方の面まで連続して存在していない場合には、次のようにして単位領域を分割すればよい。
まず、光学補償フィルム1を構成する複数種の高分子A・Bの各々について、当該高分子の合計量の当該複数種の高分子の全ての合計量に対する割合である配合比率を特定する。この配合比率は、光学補償フィルム1の製造時に使用する各種の高分子量から決定される。ただし、各種の高分子A・Bは相分離しているため、光学補償フィルム1のフィルム面の任意の点において、厚み方向に存在する各種の高分子の混合比率は、当該配合比率からずれている場合がほとんどである。例えば、図1の光学補償フィルム1において、高分子Aの配合比率が0.8、高分子Bの配合比率が0.2であるが、点xにおける高分子Aの混合比率は1.0であり、点yにおける高分子Bの混合比率は約0.5である。
そこで、対応する配合比率よりも大きい混合比率を有する高分子が同じであり、かつ、フィルム面に沿って連続している領域を一つの単位領域として設定する。
例えば、図1の場合、領域aでは、高分子Aの混合比率が対応する配合比率(ここでは0.8)よりも大きい。そのため、領域aを一つの単位領域として設定すればよい。一方、領域bでは、高分子Bの混合比率が対応する配合比率(ここでは0.2)よりも大きい。そのため、領域bを一つの単位領域として設定すればよい。
なお、光学補償フィルム1を構成する高分子の種類が3種以上である場合、対応する配合比率よりも大きい混合比率であり、当該混合比率と当該配合比率との差が最も大きい高分子が同じであり、かつ、フィルム面に沿って連続している領域を一つの単位領域として設定すればよい。
このように単位領域を設定することで、隣接する2つの単位領域は、含有する複数種の高分子の混合比率が異なることとなる。ここで、上述したように、各高分子の配向複屈折値が異なるため、隣接する2つの単位領域間では位相差が異なることとなる。そして、本実施形態では、位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域が複数存在するように、複数種の高分子を選定している。
図2は、上記のようにして単位領域に分割された光学補償フィルム1を示す図であり、(a)が斜視図、(b)がフィルム面に垂直な面で切ったときの断面図である。ただし、図2は、光学補償フィルム1の構造を分かり易く示すために、四角形の単位領域をマトリクス状に配列させた場合の例を示しているが、本発明は、単位領域の形状や配列状態に何ら限定されるものではない。
図2(a)(b)に示されるように、本実施形態に係る光学補償フィルム1は、一方のフィルム面を光入射面として使用するものであり、フィルム面に平行な方向に沿って、同一波長の光に対する位相差の異なる単位領域2(図では、2a・2bの2種類の単位領域)が分布している。
また、光学補償フィルム1の隣接する単位領域間において、同一波長の光に対する位相差は10nm以上異なることが好ましい。ただし、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。
そして、本実施形態に係る光学補償フィルム1は、各単位領域2における位相差の波長分散(波長依存性)と、全ての単位領域2を含む全体領域3を巨視的にみたときの位相差である合成位相差の波長分散とが異なることを利用するものである。
すなわち、複数の単位領域を含むスポットの光束が光学補償フィルム1を通過したときの合成位相差の波長依存性が、各単位領域を通過したときの光束の位相差の波長依存性の何れとも実質的に異なるものである。
単位領域2が人間の目で視認できない程度になるように、光学補償フィルム1とこれを視る人間との距離を確保した場合に、人間は、全ての単位領域2をまとめた全体領域3を巨視的に視ることとなる。すなわち、単位領域2を視認できない距離からみた場合に、人間は、光学補償フィルム1を、合成位相差の波長分散を示すフィルムとして認識することとなる。
後述するように、この合成位相差の波長分散は、各単位領域2の位相差、および、全体領域3に対する各単位領域2の面積比率によって決定され、各単位領域2の波長分散と異ならせることができる。これにより、光学補償フィルム1を巨視的に見たときの位相差の波長分散を容易に制御することができる。
また、本実施形態に係る光学補償フィルム1に含まれる高分子の配向複屈折値は、同じ符号である。これにより、合成位相差が小さくなりすぎることがなく、必要な合成位相差を得るために、光学補償フィルム1の膜厚を厚くする必要がない。
このように、本実施形態の光学補償フィルム1は、配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる複数種の高分子A・Bを含み、フィルム面に平行な方向に沿って複数の単位領域に分割したときに、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域が複数存在し、各単位領域における位相差の波長依存性と、全ての単位領域を含む全体領域における合成位相差の波長依存性とが異なることを利用するものである。
または、本実施形態の光学補償フィルム1は、次のようにも表現できる。すなわち、光学補償フィルム1は、配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる複数種の高分子を含むフィルムであって、上記複数種の高分子の全ての合計量に対する、各々の高分子の合計量の割合を配合比率としたとき、対応する配合比率よりも大きい混合比率の高分子の種類が異なる複数種の単位領域がフィルム面に沿って分布しており、各単位領域における位相差の波長依存性と、全ての単位領域を含む全体領域における合成位相差の波長依存性とが異なることを利用するものである。
(位相差の波長分散について)
本実施形態の光学補償フィルム1では、フィルム面に平行な方向に沿って分布する各単位領域2a・2bの位相差、ならびに、全体領域3に対する単位領域2a・2bの面積比率を適宜設計することにより、容易に全体領域3の合成位相差の波長分散を制御できる。そこで、本実施形態の光学補償フィルム1において、全体領域3の合成位相差の波長分散がどのようにして決定されるかについて説明する。なお、この原理の詳細については、本発明者らによる国際出願:PCT/JP2007/073246に記載している通りであるため、ここでは簡略化して説明する。
本実施形態の光学補償フィルム1は、フィルム面に平行な方向に沿って異なる位相差を有する単位領域2a・2bが分布しており、同一波長(ここでは、548nm)の光に対する位相差が隣接する単位領域2a・2b間で10nm以上異なる。そして、単位領域2a・2bにおける位相差r(λ)の波長分散と異なる、全体領域3における合成位相差R(λ)の波長依存性を利用するものである。
尚、r(λ)は、波長λ(nm)の光で測定した各単位領域2a・2bの位相差であり、R(λ)は波長λ(nm)の光で測定した合成位相差である。
このとき、合成位相差R(λ)は、各単位領域2の位相差による複屈折性の平均の複屈折性に対応する位相差を示す。ここで、位相差が同じであってもそこに入射する光の波長が異なれば、異なる複屈折性を示すこととなる。
例えば、複屈折性を示す特徴量として、偏光板の偏光軸が互いに平行(平行ニコル状態)にした2枚の偏光板の間に、位相差r(nm)を有するフィルムを、その遅相軸が偏光板の透過軸と角度θ(rad)を成すように置いたときの、波長λ(nm)の透過率I(θ,λ)を考える。このとき、透過率は次式で与えられる。
I(θ,λ)=cosθ+sinθ+1/2・cos(2πr/λ)・sin(2θ)
ここで、θをπ/4rad(=45°)とすると、透過率は次式となり、三角関数で示される。
I(π/4,λ)=1/2+1/2・cos(2πr/λ)
ただし、その周期は、波長によって異なる。各単位領域2a・2bにおいて位相差が波長に拘わらず同じ値であったとしても、合成位相差は波長によって変化する。逆に、各単位領域2a・2bにおいて位相差が正の波長分散を示していたとしても、合成位相差が波長によって変化しない場合もありえる。なお、本明細書では、「正の波長分散」とは波長548nmの光で測定した位相差を1として他の波長の光で測定した位相差をその相対値として表した時、長波長になるにしたがってその相対値が小さくなることを意味する。反対にその相対値が大きくなる場合を「逆の波長分散」と称する。
この合成位相差の波長分散は、各単位領域2a・2bの位相差と全体領域3に対する各単位領域2a・2bの面積比率によって決定される。各単位領域2a・2bの位相差は、複屈折又は厚さによって制御すればよい。後述するように、各単位領域2a・2bの複屈折は、光学補償フィルム1を製造する際に用いる高分子の種類に依存する。そのため、使用する高分子を適宜選択することで、各単位領域の複屈折を選択することができる。このとき、合成位相差の波長分散が各単位領域2a・2bの位相差と面積比率とで決定されるため、使用する高分子単体による複屈折の波長分散についてはそれほど考慮する必要がない。その結果、使用する高分子の選択の幅が広がる。よって、波長分散以外の特性、例えばガラス転移温度、光弾性係数等の諸物性が目的のものになるように高分子を選択できる。尚、後述するように、前記面積比率は高分子の配合比率で任意に変えることができる。
このように、本発明は全体領域3を1つの素子として、巨視的にみた合成位相差R(λ)の波長依存性を利用するものである。
また、光学補償フィルム1は、上記合成位相差R(λ)の波長依存性が、
R(447)≦R(548)≦R(628)
を満たすものであってもよい。
これにより、逆の波長分散を示す光学補償フィルム1を容易に実現することができるとともに、波長分散の度合いも制御できる。また、従来材料により波長分散を制御していた場合に比べて、より大きな逆の波長分散を容易に実現することができる。
また、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式等の高画質を有する液晶表示装置の光学補償としてを用いる場合、位相差としては一般に350nm以下が必要される。そのため、合成位相差R(548)は350nm以下であることが好ましい。
尚、光学補償フィルム1の単位領域2a・2bの位相差r(λ)は、例えば以下のようにして求められる。
偏光方向が平行な一対の偏光板の間に位相差ref(nm)の光学補償フィルム1を遅相軸が上記偏光板の偏光方向と45°ずれるように配置し、一方の偏光板からの波長λ(nm)の直線偏光が膜及び他方の偏光板を透過するときの透過率I(λ)と、波長λの光に対する位相差refとの関係は、
I(λ)=1/2+1/2・cos(2πref/λ)
で表されることから、フィルム面に平行な方向に沿って、周辺部より高位相差部位と低位相差部位からなる単位領域2a・2bが複数存在する本発明の光学補償フィルム1の場合、位相差r(λ)に起因する透過率を求め、該透過率を示す位相差を上記関係式に基づいて算出し、その値を位相差r(λ)とすればよい。
又は、微小な単位領域2a・2bの位相差を測定する場合、顕微偏光分光光度計を用いて測定することができる。例えば、(株)オーク製作所の顕微偏光分光光度計を用いた液晶セルギャップ測定装置(TFM−120AFT−PC)を用いることにより、約10μm角までの微小領域の位相差を測定することが可能である。
また、
R(548)−R(447)>r(548)−r(447)
の関係を得る観点から、隣接する単位領域2a・2bの位相差の差、つまり、主成分が異なる単位領域2a・2b間の位相差の差は、上述したように、下限10nmが好ましく、下限50nmがより好ましく、下限100nmがさらに好ましい。
更に、各単位領域2a・2bの光軸は同一方向とすることが好ましいことから、光軸のバラツキは、±5度以内が好ましく、±3度以内がより好ましく、±1度以内がさらに好ましい。
(適用例)
次に、光学補償フィルム1が適用できる表示装置について説明する。表示装置としては、ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等が挙げられる。液晶ディスプレイとしては、例えば、光源/導光板/光拡散板/プリズムシート/輝度向上フィルム/偏光板/液晶セル/偏光板の順に構成された液晶表示装置等が挙げられるが、液晶セルの入射光側及び/又は出射光側に本発明の光学補償フィルムを装着することにより光学補償のされた表示装置とすることができる。液晶セルの方式としては、TN方式、VA方式、IPS方式、OCB方式等挙げられる。
尚、本発明の光学補償フィルム1は、TN方式、VA方式、IPS方式、OCB方式等の液晶セルを用いた液晶ディスプレイの視野角拡大用途に使用できる。また、光学補償フィルム1は、ビデオ、カメラ、携帯電話、パソコン、テレビ、モニター、自動車のインパネ等の液晶表示装置作製部品等に好適に使用できる。
なお、光学補償フィルム1は、これらを適用する表示装置の表示セルに対応する領域に複数の単位領域2a・2bを存在させることが望ましい。ただし、表示装置を実際に視認する際に、複数の単位領域2a・2bが平均化されて見えることが必要であり、その絶対的な大きさは適用される装置に依存し限定的ではない。ここで、表示セルとは、表示装置の最小の表示単位(ドット)を示すものである。例えば、1つの液晶セルに3原色(RGB)のカラーフィルターのいずれかの色を重ね、3色の液晶セルが合わさり、一画素を形成している場合、該一画素を構成するサブピクセルであるR,G,B各々の液晶セルを表示セルという。なお、表示セルはELセルであってもよい。
(製造方法)
次に、本発明の光学補償フィルム1の製造方法について説明する。製造方法としては、溶融キャスティング法または溶液キャスティング法を用いることができる。
溶融キャスティング法の場合、配向複屈折値の符号が同一である少なくとも2種の高分子を混合し、溶融ブレンド品(混合品)に含まれる高分子の中で最も高い融点を有する高分子のその融点以上の温度で溶融し、押出して冷却することでフィルム状に成形する(第1工程)。その後、フィルム状の成形品を延伸する(第2工程)。
一般に、異種の高分子は相分離を起こしやすい。そこで、溶融ブレンド品の溶融押出しを行い、ガラス状態まで冷却している間に、異種の高分子を相分離させる。これにより、図1に示されるように、フィルム面に沿って混合比率を変化させることができる。相分離したそれぞれの高分子の配向複屈折値が異なることにより、延伸した後には、フィルム面に沿って位相差が変化することとなる。これにより、フィルム面に平行な方向に沿って複数の単位領域に分割したときに、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域を複数存在させた光学補償フィルムを容易に製造することができる。
また、溶液キャスティング法の場合、配向複屈折値の符号が同一である少なくとも2種の高分子を含む溶液(塗布溶液:混合品)を塗布・乾燥させてフィルム状に成形する(第1工程)。その後、フィルム状の成形品を延伸する(第2工程)。
この場合は、使用する溶媒種、溶媒の混合比、濃度等を調整することにより、塗布膜の乾燥時にそれぞれの高分子を容易に相分離させることができる。これを延伸すると溶融キャスティング法のときと同様に、フィルム面に平行な方向に沿って複数の単位領域に分割したときに、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域を複数存在させた光学補償フィルムを製造することができる。
なお、いずれの製造方法においても、隣接する単位領域の位相差の差を10nm以上とするためには、溶融ブレンド品または塗布溶液に含まれる複数種の高分子の配向複屈折値が以下の条件を満たすことが好ましい。すなわち、上記溶融キャスティング法または溶液キャスティング法の製造条件と同条件で、溶融ブレンド品または塗布溶液を構成するそれぞれの高分子単体のフィルムを製膜し、1軸延伸した際に、得られた延伸品の548nmの光により測定した配向複屈折値のうち、最大値をΔnmax、最小値をΔnminとする。このとき、|Δnmax−Δnmin|は、下限0.0002、上限0.07であることが好ましく、下限0.0003、上限0.06であることがより好ましく、下限0.0004、上限0.05であることがさらに好ましい。|Δnmax−Δnmin|の値が0.0002より小さいと、隣接する単位領域2間の位相差の差を10nm以上とするためには、光学補償フィルム1の厚みが厚くなりすぎ、当該光学補償フィルム1を適用できる表示装置が限られてしまう。また、|Δnmax−Δnmin|の値が0.07より大きい場合は、光学補償するための合成位相差が大きくなり過ぎる傾向にある。
また、各種の高分子の配合比率を変化させることで、最終的に製造される光学補償フィルム1の全体領域に対する各種の単位領域2の面積比率を制御することができる。また、各単位領域2の位相差は、当該単位領域2を構成する高分子の配向複屈折値および混合比率、ならびに厚みに依存する。そのため、混合する高分子の種類、各高分子の配合比率、厚みを適宜変化させることで、光学補償フィルム1の合成位相差の波長分散を制御することができる。変化可能なパラメータが多いため、波長分散の制御が容易となる。
次に、溶液キャスティング法での塗布膜の乾燥方法について説明する。この乾燥方法としては、例えば空気中又は窒素等の不活性ガス中に放置(風乾)する方法、熱風オーブン、赤外線加熱炉等で加熱乾燥する方法、真空乾燥機等で減圧乾燥する方法等により、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。
乾燥温度条件としては、定温、多段階昇温のいずれも用いることができる。定温の場合、下限10℃、上限200℃の温度範囲が好ましく、下限15℃、上限180℃がより好ましく、下限20℃、上限160℃がさらに好ましい。乾燥温度が10℃より低いと乾燥時間が長くなる傾向があり、200℃より高いと塗布膜の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。このような定温乾燥を用いることができるが、効果的に乾燥させるためには多段階に温度を上げることが好ましい。
多段階乾燥を行う場合、1次乾燥は、下限10℃、上限50℃の温度範囲が好ましく、下限15℃、上限45℃がより好ましく、下限20℃、上限40℃がさらに好ましい。1次乾燥は、その後の高温乾燥時の発泡を抑制するのに有効である。1次乾燥温度が10℃より低いと発泡を抑制するために必要な乾燥時間が長くなる傾向があり、50℃より高いと発泡し易くなる傾向がある。
多段階乾燥の最終乾燥においては、下限55℃、上限200℃の温度範囲が好ましく、下限65℃、上限180℃がより好ましく、下限75℃、上限160℃がさらに好ましい。最終乾燥は、溶媒をほぼ完全に除去するのに有効である。最終乾燥温度が55℃より低いと乾燥時間が長くなる傾向があり、200℃より高いと塗布膜の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
(材料)
次に、本実施形態の光学補償フィルム1を製造する際に用いられる高分子、溶媒、添加剤の具体例を示す。
(高分子)
正の配向複屈折値を示す高分子と負の配向複屈折値を示す高分子を具体的に以下に例示する。正の配向複屈折値を示す高分子としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。
また、負の配向複屈折値を示す高分子としては、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、アクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、メタクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体等が挙げられる。
上記高分子の数平均分子量の下限は好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限は好ましくは1000000、より好ましくは500000、さらに好ましくは300000である。数平均分子量が5000より小さいと光学補償フィルムの強度が低下する傾向にあり、数平均分子量が1000000より大きいと加工性が劣る傾向にある。尚、当該数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値である。本実施形態では、数平均分子量が異なる同種の高分子の2種以上を併用してもよい。
(溶媒)
次に、溶液キャスティング法を用いる場合に使用する、塗布溶液とするための溶媒の具体例を示す。ただし、当該溶媒としては、上記高分子が可溶であれば特に限定されるものではないことはいうまでもない。溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼンの異性体混合物等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;塩化メチレン、クロロフィルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1,1−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸n−ヘキシル、酢酸n−ヘプチル、酢酸n−オクチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルフィルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン等のアミド系溶媒;ピロリジン、ピペリジン、ピロール等のアミン系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、塗布後の膜の乾燥性の観点から、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、クロロフィルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸n−ヘキシルを用いることが好ましい。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、溶媒量は、上記高分子と溶媒の総重量に対する上記高分子の割合が下限1重量%、上限70重量%の範囲で用いるのが好ましく、下限2重量%、上限60重量%の範囲で用いるのがより好ましく、下限3重量%、上限50重量%の範囲で用いるのがさらに好ましい。前記高分子の割合が1重量%より小さい場合は塗布膜厚が薄くなり、必要な膜厚が得られ難くなる傾向があり、70重量%より大きい場合は塗布溶液の粘度が高くなり、作業性が劣る傾向がある。
(添加剤)
次に、光学補償フィルム1の特性を改質する目的で加えることが可能な添加剤について説明する。添加剤としては、酸化防止剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGANOX 1010、IRGANOX 1135、IRGANOX 1330等のヒンダードフェノール類)、加工安定剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製HP−136、IRGANOX E201、IRGAFOS 168等)、光安定剤(例えば、三共ライフテック製サノールLS−765、サノールLS−770等のヒンダードアミン類)、紫外線吸収剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製TINUVIN P、TINUVIN 213、TINUVIN 326等のベンゾトリアゾール類)、接着性改良剤(例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤)、シラノール縮合触媒(例えば、川研ファインケミカル製アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM等のアルミニウムキレート類)、可塑剤(例えば、ジ2−エチルヘキシルフタレート、ジイソブチルアジペート等のエステル類)、界面活性剤(例えば、住友スリーエム製Fluorad FC−430、Fluorad FC−4430等のフッ素系化合物)、帯電防止剤(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGASTAT P18、IRGASTAT P22等)等が挙げられ、これらは本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
溶液キャスティング法を用いて塗布後に延伸して製膜する場合、例えば上記各成分を前記高分子とともに溶媒の融点以上、沸点以下の温度で、混合後静置又は攪拌混合等することによって塗布溶液とすることにより、使用することができる。また、溶融キャスティング法を用いて製膜する場合は、例えば直接、ブレンド品に添加し、ミキシングすることにより用いることができる。
以下に、本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。まず、最初に、各種のパラメータの測定方法について説明する。
(1)合成位相差(R(447),R(548),R(628))及び高分子単体フィルムの面内の位相差(R(447)、R(548))の測定
王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRを用いて、25℃下で波長447nmの光、波長548nmの光、波長628nmの光による測定をスポット5.8mm角の条件で行った。なお、R(λ)は、波長λnmの光に対する、高分子単体フィルムの位相差を示す。
(2)配向複屈折の方位角の測定
試料の延伸方向が測定装置の0度方向となるように、王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRに装着し、波長590nmの光により、配向角(0度方向とサンプルの遅相軸のなす角度)を測定した。尚、KOBRA−WRでは、配向複屈折の方位角は「配向角」として表示される。また、配向複屈折の方位角は0度方向から左回りの角度を正の値とし、右回りの角度を負の値として表した。
(3)単位領域の位相差(r(548)、r’(548))の測定
オーク製作所の顕微偏光分光光度計を用いた液晶セルギャップ測定装置(TFM−120AFT−PC)を用いて、25℃下で波長548nmの光による測定をスポット10μm角の条件で行った。なお、r(548)は、位相差が高い方の単位領域2の、波長548nmの光に対する位相差であり、r’(548)は、位相差が低い方の単位領域2の、波長548nmの光に対する位相差である。なお、スポットの中心と各単位領域2の中心とが一致するような条件で測定した。また、光学補償フィルム1の中心付近に位置する単位領域2について位相差を測定した。
(4)位相差が分布した光学補償フィルムの偏光顕微鏡による観察
偏光顕微鏡の偏光板をクロスニコル状態にし、位相差の異なる単位領域2が面方向に分布した光学補償フィルムの光軸が偏光板の吸収軸に対して45度になるように偏光板の間に配置して観察した。
(実施例1)
エチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD型Premium FPグレード,品番:100,数平均分子量:63400,置換度DS(digree of substitution):2.5)2.443gにシクロヘキサノン29.9gを加え、25℃下で溶解した。また、下記の化学式(1)で示されるシクロオレフィンポリマー(ガラス転移温度:170℃、数平均分子量:約60000)1.557gに1,1,2−トリクロロエタン16.1gを加え、25℃下で溶解した。すなわち、エチルセルロースの配合比率は重量比で0.61であり、シクロオレフィンポリマーの配合比率が重量比で0.39である。
次に、これらの溶液を混合してよく攪拌した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を23℃で90分間、空気中で静置乾燥し、続いて60℃で5分間、更に、130℃で30分間、空気中で乾燥した。これにより、エチルセルロースとシクロオレフィンポリマーを相分離させた。その後、155℃で1.2倍、1軸延伸した。次に、延伸した塗布膜をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして塗布膜の物性測定を行った。その結果を表1に示し、偏光顕微鏡観察写真を図3に示す。図3において、淡色部は、濃色部よりも高位相差であることを示している。図3より、光学補償フィルム1は、フィルム面内で位相差が分布していることがわかる。
(実施例2)
ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス製ユーピロン S−3000R)2.5gに塩化メチレン10.0gを加え、25℃下で溶解した。また、実施例1で用いたシクロオレフィンポリマー(ガラス転移温度:170℃)2.269gに塩化メチレン12.856gを加え、25℃下で溶解した。すなわち、ポリカーボネートの配合比率は重量比で0.52であり、シクロオレフィンポリマーの配合比率が重量比で0.48である。
次に、これらの溶液を混合してよく攪拌した後、ポリエチレンナフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、この塗布基板を25℃で15時間、空気中で乾燥後、ポリエチレンナフタレートフィルムから塗布膜を剥がし、続いて60℃で30分間、100℃で30分間、更に、130℃で30分間、空気中で乾燥した。これにより、ポリカーボネートとシクロオレフィンポリマーを相分離させた。その後、165℃で1.15倍、1軸延伸した。延伸した塗布膜である光学補償フィルムの物性測定の結果を表1に示し、偏光顕微鏡観察写真を図4に示す。図4において、淡色部は、濃色部よりも高位相差であることを示している。図4より、光学補償フィルム1は、フィルム面内で位相差が分布していることがわかる。
(比較例1)
実施例1で用いたエチルセルロース(ダウケミカル製ETHOCEL STD型Premium FPグレード,品番:100,数平均分子量:63400,置換度DS:2.5)5.0gを塩化メチレン45.0gに溶解した後、この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、実施例1と同じように、この塗布基板を23℃で15時間、空気中で乾燥し、更に、100℃で5分間、空気中で乾燥した後、155℃で1.2倍、1軸延伸した。次に、延伸した塗布膜をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして塗布膜の物性測定を行った。その結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1で用いたシクロオレフィンポリマー(ガラス転移温度:170℃)7.5gを塩化メチレン42.5gに溶解した後、この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、実施例1と同じように、この塗布基板を23℃で15時間、空気中で乾燥し、更に、100℃で5分間、空気中で乾燥した後、155℃で1.2倍、1軸延伸した。次に、延伸した塗布膜をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして塗布膜の物性測定を行った。その結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例2で用いたポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス製ユーピロン S−3000R)10.0gを塩化メチレン40.0gに溶解した後、この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、実施例2と同じように、この塗布基板を23℃で15時間、空気中で乾燥し、更に、100℃で5分間、空気中で乾燥した後、165℃で1.15倍、1軸延伸した。次に、延伸した塗布膜をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして塗布膜の物性測定を行った。その結果を表2に示す。
(比較例4)
実施例2で用いたシクロオレフィンポリマー(ガラス転移温度:170℃)7.5gを塩化メチレン42.5gに溶解した後、この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布基板とした。その後、実施例2と同じように、この塗布基板を23℃で15時間、空気中で乾燥し、更に、100℃で5分間、空気中で乾燥した後、165℃で1.15倍、1軸延伸した。次に、延伸した塗布膜をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして塗布膜の物性測定を行った。その結果を表2に示す。
比較例1・2のフィルムは、実施例1に含まれる2つの高分子(エチルセルロース及びシクロオレフィンポリマー)のそれぞれの単体からなるフィルムであり、実施例1と同一の条件で製膜されたものである。表2から、比較例1のエチルセルロースの配向複屈折値は、R(548)/d≒0.0095であり、比較例2のシクロオレフィンポリマーの配向複屈折値は、R(548)/d≒0.0053であり、エチルセルロースの方が配向複屈折値が大きいことがわかる。このことから、実施例1において、|Δnmax−Δnmin|は、(比較例1のR(548)/d)−(比較例2のR(548)/d)より、0.0042となる。また、比較例1,2の結果から、実施例1に含まれる2つの高分子、エチルセルロース及びシクロオレフィンポリマーは、いずれも配向複屈折の方位角が略0度であるため、正の配向複屈折値を示すことがわかる。
また、図3に示されるように、実施例1の光学補償フィルム1は、淡色で示される位相差の大きい単位領域2と、濃色で示される位相差の小さい単位領域2とに分けられる。これは、塗布膜を乾燥させる間に相分離したことによる。つまり、対応する配合比率(ここでは0.61)よりも大きい混合比率のエチルセルロースを含む単位領域2と、対応する配合比率(ここでは0.39)よりも大きい混合比率のシクロオレフィンポリマーを含む単位領域2とに分離している。上述したように、エチルセルロースの方がシクロオレフィンポリマーよりも配向複屈折値が大きいため、実施例1において、位相差が大きい方の単位領域2、つまり、図3において淡色を示し、84nmの位相差r(548)を示す単位領域2は、対応する配合比率(ここでは0.61)よりも大きい混合比率のエチルセルロースを含む領域である。一方、位相差が小さい方の単位領域2、つまり、図3において濃色を示し、52nmの位相差r’(548)を示す単位領域2は、対応する配合比率(ここでは0.39)よりも大きい混合比率のシクロオレフィンポリマーを含む領域である。
一方、比較例3・4のフィルムは、実施例2に含まれる2つの高分子(ポリカーボネート及びシクロオレフィンポリマー)のそれぞれの単体からなるフィルムであり、実施例2と同一の条件で製膜されたものである。表2から、比較例3のポリカーボネートの配向複屈折値は、R(548)/d≒0.0064であり、比較例4のシクロオレフィンポリマーの配向複屈折値は、R(548)/d≒0.0033であり、ポリカーボネートの方が配向複屈折値が大きいことがわかる。このことから、実施例2において、|Δnmax−Δnmin|は、(比較例3のR(548)/d)−(比較例4のR(548)/d)より、0.0031となる。また、比較例3,4の結果から、実施例2に含まれる2つの高分子、ポリカーボネート及びシクロオレフィンポリマーは、いずれも配向複屈折の方位角が略0度であるため、正の配向複屈折値を示すことがわかる。
また、図4に示されるように、実施例2の光学補償フィルム1もまた、乾燥時に相分離しており、対応する配合比率(ここでは0.52)よりも大きい混合比率のポリカーボネートを含む単位領域2と、対応する配合比率(ここでは0.48)よりも大きい混合比率のシクロオレフィンポリマーを含む単位領域2とに分けられる。上述したように、ポリカーボネートの方がシクロオレフィンポリマーよりも配向複屈折値が大きいため、実施例2において、位相差が大きい方の単位領域2、つまり、図4において淡色を示し、167nmの位相差r(548)を示す単位領域2は、対応する配合比率(ここでは0.52)よりも大きい混合比率のポリカーボネートを含む領域である。一方、位相差が小さい方の単位領域2、つまり、図4において濃色を示し、118nmの位相差r’(548)を示す単位領域2は、対応する配合比率(ここでは0.48)よりも大きい混合比率のシクロオレフィンポリマーを含む領域である。
このように、複数の高分子を含む塗布溶液を塗布し、乾燥時に相分離させることで、対応する配合比率よりも大きい混合比率を有する高分子が異なる複数種の単位領域2をフィルム面に平行な方向に沿って分布させることができる。そして、各種の単位領域2の位相差は、当該単位領域を構成する各種高分子の配向複屈折値および混合比率と膜厚とに依存する。膜厚は各単位領域2で同一であるため、各単位領域を構成する各種高分子の配向複屈折値および混合比率によって、異なる高分子を主成分とする複数種の単位領域2間で位相差に差が生じる。そして、塗布溶液に含める高分子の種類、ならびに、塗布膜の膜厚を適宜設定することで、主成分が異なる単位領域間の位相差の差を10nm以上にすることができる。
ところで、比較例1−4の全てのフィルムでは、R(447)>R(548)を満たしており、正の波長分散を示すことが確認された。しかしながら、実施例1及び2の光学補償フィルム1では、R(447)<R(548)<R(628)を示している。すなわち、実施例1・2の光学補償フィルム1を巨視的にみたとき、逆の波長分散を示すことが確認された。
これは、上述したように、位相差の異なる単位領域2がフィルム面に平行な方向に沿って分布している場合、全ての単位領域2を含む全体領域3を巨視的に見た時の合成位相差の波長分散は、各単位領域2の位相差と全体領域3に対する各種の単位領域2の面積比率によって決定され、各単位領域2の位相差の波長分散と異なることを利用しているからである。このように、正の波長分散を示す高分子を用いたとしても、合成位相差が逆の波長分散を示す光学補償フィルム1を作製できることが確認された。
また、配向複屈折値の符号が同一の高分子であるため、それぞれの高分子の混合比率に応じた位相差の足し合わせの結果、光学補償フィルム1全体の合成位相差が小さくなるようなことはなく、必要な合成位相差を得るために膜厚を厚くする必要がない。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、液晶表示装置等の各種光学装置中の他の構成により生じる複屈折を補償するためのフィルムに適用できる。
本発明の一実施形態に係る光学補償フィルムの断面図である。 本発明の一実施形態に係る光学補償フィルムを示すものであり、(a)が斜視図、(b)は断面図である。 実施例1(エチルセルロース/シクロオレフィンポリマー)の光学補償フィルムの偏光顕微鏡観察写真を示す図である。 実施例2(ポリカーボネート/シクロオレフィンポリマー)の光学補償フィルムの偏光顕微鏡観察写真を示す図である。
符号の説明
1 光学補償フィルム
2(2a・2b) 単位領域
3 全体領域
A・B 高分子

Claims (10)

  1. 配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる複数種の高分子を含み、
    フィルム面に平行な方向に沿って複数の単位領域に分割したときに、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域が複数存在し、
    各単位領域における位相差の波長依存性と、全ての単位領域を含む全体領域における合成位相差の波長依存性とが異なり、当該合成位相差の波長依存性を利用したことを特徴とする光学補償フィルム。
  2. 隣接する2つの上記単位領域は、含有する上記複数種の高分子の混合比率が異なることを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルム。
  3. 配向複屈折値の符号が同一であり、配向複屈折値が異なる複数種の高分子を含む光学補償フィルムであって、
    上記複数種の高分子の全ての合計量に対する、各々の高分子の合計量の割合を配合比率としたとき、対応する配合比率よりも大きい混合比率の高分子の種類が異なる複数種の単位領域がフィルム面に沿って分布しており、
    各単位領域における位相差の波長依存性と、全ての単位領域を含む全体領域における合成位相差の波長依存性とが異なり、当該合成位相差の波長依存性を利用したことを特徴とする光学補償フィルム。
  4. 全体領域における波長λnmの光に対する合成位相差をR(λ)としたとき、以下の数式(1)を満たすことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光学補償フィルム。
    R(548)≦350nm 数式(1)
  5. 上記複数種の高分子の各々の単体で成形されたフィルムを1軸延伸した延伸品の波長λnmの光に対する位相差をR(λ)としたとき、以下の数式(2)を満たすとともに、上記全体領域における波長λnmの光に対する合成位相差をR(λ)としたとき、以下の数式(3)を満たすことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光学補償フィルム。
    (548)<R(447) 数式(2)
    R(548)≧R(447) 数式(3)
  6. 上記全体領域における波長λnmの光に対する合成位相差をR(λ)としたとき、以下の数式(4)を満たすことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光学補償フィルム。
    R(628)≧R(548)≧R(447) 数式(4)
  7. 請求項1または2に記載の光学補償フィルムの製造方法であって、
    配向複屈折値の符号が同一であり、かつ、配向複屈折値の異なる複数種の高分子を混合して液体状の混合品を作製し、当該混合品をフィルム状に成形する第1工程と、
    フィルム状に成形された成形品を延伸し、延伸品を上記光学補償フィルムとする第2工程とを含み、
    上記第1工程において上記混合品に含まれる複数種の高分子を相分離させることで、上記第2工程において、同一波長の光に対する位相差が隣接する単位領域と10nm以上異なる単位領域を複数存在させることを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
  8. 請求項3に記載の光学補償フィルムの製造方法であって、
    配向複屈折値の符号が同一であり、かつ、配向複屈折値の異なる複数種の高分子を混合して液体状の混合品を作製し、当該混合品をフィルム状に成形する第1工程と、
    フィルム状に成形された成形品を延伸し、延伸品を上記光学補償フィルムとする第2工程とを含み、
    上記第1工程において上記混合品に含まれる複数種の高分子を相分離させることで、上記第2工程において、上記複数種の単位領域をフィルム面に沿って分布させることを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
  9. 上記複数種の高分子の各々の単体を上記光学補償フィルムと同条件で製造したときの製造品について波長548nmの光で測定した配向複屈折値のうち、最大値をΔnmax、最小値をΔnminとしたとき、
    上記第1工程において、以下の数式(5)を満たす複数種の高分子を用いることを特徴とする請求項7または8に記載の光学補償フィルムの製造方法。
    0.0002≦|Δnmax−Δnmin|≦0.07 数式(5)
  10. 上記第1工程において、上記複数種の高分子として、高分子単体で形成されたフィルムを1軸延伸したときの位相差が以下の数式(6)を満たす高分子を用いることを特徴とする請求項7から9の何れか1項に記載の光学補償フィルムの製造方法。
    (548)<R(447) 数式(6)
    (R(548)は、波長548nmの光で測定した位相差を示し、R(447)は、波長447nmの光で測定した位相差を示す。)
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