JP2010246422A - セルロース系原料の同時糖化発酵法 - Google Patents

セルロース系原料の同時糖化発酵法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010246422A
JP2010246422A JP2009096867A JP2009096867A JP2010246422A JP 2010246422 A JP2010246422 A JP 2010246422A JP 2009096867 A JP2009096867 A JP 2009096867A JP 2009096867 A JP2009096867 A JP 2009096867A JP 2010246422 A JP2010246422 A JP 2010246422A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fermentation
ethanol
raw material
saccharification
enzyme
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009096867A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5711873B2 (ja
JP2010246422A5 (ja
Inventor
Yutaka Sera
豊 世良
Noriko Kira
典子 吉良
Shigeo Tomiyama
茂男 冨山
Kenichi Nakamori
研一 中森
Shunsuke Hayashi
俊介 林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Zosen Corp
Original Assignee
Hitachi Zosen Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Zosen Corp filed Critical Hitachi Zosen Corp
Priority to JP2009096867A priority Critical patent/JP5711873B2/ja
Publication of JP2010246422A publication Critical patent/JP2010246422A/ja
Publication of JP2010246422A5 publication Critical patent/JP2010246422A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5711873B2 publication Critical patent/JP5711873B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E50/00Technologies for the production of fuel of non-fossil origin
    • Y02E50/10Biofuels, e.g. bio-diesel

Abstract

【課題】糖化と発酵を一つの反応槽内で行うことにより原料や酵素のそれぞれの欠点を改善し、セルロース系原料からエタノールを効率的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】セルロース原料を酵素によって加水分解する糖化工程と、発酵菌によるエタノール発酵工程を一つの反応槽内で同時に行う同時糖化発酵方法において、同時糖化反応中に初期反応温度から段階的にまたは連続的に反応温度を低下させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース系原料を酵素によって構成糖であるグルコースまで加水分解(糖化)し、得られた糖を酵母などの発酵微生物によってエタノールに変換する技術に関する。特に本発明は、糖化と発酵を一つの反応槽内で同時に並行して行うことにより原料や酵素のそれぞれの欠点を改善し、セルロース系原料からエタノールを効率的に製造できる同時糖化発酵法に関する。
酵母等によって生物的にエタノールを製造する場合、エタノール発酵が終了した発酵液から残渣や菌などの固形分を除去後、あるいはそれらが懸濁したままで発酵液中のエタノールを蒸留し、エタノール濃度90vol%以上になったものを脱水膜等で処理することで残りの水分を除去し、いわゆる無水エタノールにする方法が一般的である。なお、蒸留に要するエネルギーは、エタノール製造に要する総エネルギー量の大半を占めるうえ、発酵液中のエタノール濃度が5vol%を境に急激に増大する(非特許文献1)。このため、発酵終了時のエタノール濃度が少なくとも5vol%に達することが事業性あるエタノール製造において最も重要な点である。
サトウキビの搾汁やそれ由来の廃糖蜜、あるいは熱で糊化されたトウモロコシデンプンスラリーを酵素(α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼ)で酵素糖化して得られる糖液中のショ糖やグルコースを糖源として供給するバッチ式あるいは連続式発酵によって、エタノール濃度8vol%以上、条件の選択によっては15vol%前後の発酵液を得ることが出来る(非特許文献2)が、これはひとえに上記の原料からは高濃度のショ糖、あるいはグルコース溶液を容易に調製でき、糖源として安定的に供給できるからである。例えばサトウキビ搾汁(ケーンジュース)中の糖濃度は11〜17%、これ由来の廃糖蜜中の糖濃度は45〜50%にも達するため、20〜24%に薄めて発酵させる場合が多い。
一方、セルロースを構成糖であるグルコースまで糖化(加水分解)する手段として、酵素(セルラーゼ)を用いる方法があり、この方法は、硫酸、あるいは超〜亜臨界水による加水分解のように生成糖の過分解が起こらないため、有望な糖化手段として期待されているが、セルラーゼの場合、それ自体の働きによって生成されたグルコースが蓄積すると酵素活性が阻害されて糖化率も低下する「競争阻害」が顕著という欠点がある(デンプンを糖化するアミラーゼの場合は競争阻害がほとんどなく、高濃度の糊化デンプンスラリーを高濃度のグルコース溶液に糖化できる)。また、セルロースは冷水、熱水のいずれにも不溶のうえ、水分を吸収して膨張するため、冷水には不溶だが熱水で糊化することで50dry−wt%以上のスラリーにできるデンプンのように高濃度の原料スラリーにはできないうえ、前述の競争阻害という欠点も加わって、セルロース系原料から濃いグルコース溶液を得ることは極めて困難である。
この対策として同時糖化発酵(Simultaneous Saccharification and Fermentation:以降SSFと表記)という方法がある。この方法によると、酵素によるセルロースの糖化と酵母などの発酵菌による糖化物のエタノール発酵が同時進行することで、生成された糖が蓄積して酵素活性が阻害される前に発酵菌が糖をエタノールに変換してしまうため、酵素活性を維持することができる。しかし、前述した通り、セルロース原料の処理濃度はデンプンの処理濃度よりも大幅に低いことに変わりはないため、SSFを駆使しても、最終的に得られる発酵液中のエタノール濃度は糖蜜あるいはデンプン原料のエタノール濃度には及ばない。また、SSFは糖をエタノールに変換するだけの単反応ではなく、セルロースの糖化も伴う、より複雑な反応であるため、バッチ式であることが望ましい。したがって酵素法をベースとしたセルロース系原料からのエタノール製造の場合、あくまでもバッチ式でエタノール濃度5vol%以上を達成することが現実的、かつ妥当な目標値となる。
酵素糖化とエタノール発酵を同時進行させるSSFの場合、例えば酵素糖化の適温が50℃前後、酵母発酵の適温が30℃前後とすると、それらの中間温度付近で反応させることとなる。つまり、酵母が耐えられる限りは高温の方が反応効率は良く、適用する酵母の耐熱性が重要な鍵となる。反応によってエタノールが生成され、反応槽内のエタノール濃度は目標値である5vol%に近づいていくが、酵母は適温よりも高い温度に絶えず曝されるのみならず、それ自体が生成するエタノール濃度も高まることで2つのストレスが加わり、活性が低下していく。酵母の場合、適温下であれば前述の通り最大15vol%のエタノール濃度にも耐えられるケースもあるが、耐熱温度付近になるとその影響も加わって、エタノール濃度5vol%程度でもストレスとなり得る。
この対策として、発酵槽からもろみ(菌や基質も含む発酵液)を減圧に保持したフラッシュタンクに送り、エタノールを除去した後、もろみを発酵槽に返送し、発酵槽内のエタノール濃度を低く保つフラッシュ連続発酵法が、あるいは連続発酵槽ともろみ塔を組み合わせた装置で発酵と蒸留を並行して行い、連続発酵槽内のエタノール濃度を約5%に保つことでエタノールによる発酵阻害が起こらないBiostilプロセスがあり、後者は実用化されてオーストラリアやインドネシアなどで採用されている(非特許文献2)。同法を適用すればエタノールによるストレスを軽減することは容易に考えられるが、前述の通り、SSFにおけるエタノール濃度は最大で5vol%程度、かつバッチ式反応が前提のため、SSF反応槽にBiostillプロセスを適用するのは非効率、かつ非現実的であり、もうひとつのストレスである温度への対策が妥当、かつ効率的であるのは言うまでもない。
Philip W.Madson and David B.Lococo著,「Recovery of Volatile Products from Dilute High-Fouling Process Streams」、Applied Biochemistry and Biotechnology、2000年、第84−86巻、p.1049−1061 栃倉辰六朗ら著、「発酵ハンドブック」、共立出版株式会社
以上において説明したように、セルロースからエタノールを製造する方法における課題をまとめると以下のようになる。
(1)事業性あるエタノール製造においては、発酵終了時のエタノール濃度が少なくとも5vol%に達することが重要である。
(2)セルロースは冷水、熱水のいずれにも不溶のうえ、水分を吸収して膨張する。これを構成糖まで加水分解できる酵素がかかえる競争阻害という欠点も加わり、セルロース系原料から濃いグルコース溶液を得ることは極めて困難である。
(3)酵素の競争阻害対策としてSSFが有効だが、(2)で述べたセルロースの物性のため、SSFを駆使しても、最終的に得られる発酵液中のエタノール濃度は糖蜜あるいはデンプン原料のように10vol%以上には達しない。あくまでもバッチ式SSFで5vol%以上を達成することが現実的、かつ妥当な目標値である。
(4)SSFの場合、酵母などの発酵菌は適温よりも高い温度に絶えず曝されるほか、それ自体が生成するエタノール濃度も高まるため2つのストレスが加わり、活性が低下する。
(5)ストレスの一つであるエタノールをSSF槽から連続的に留去するのが対策として有効だが、バッチ式、かつエタノール濃度が最大5vol%程度に同法を適用するのは非効率、かつ非現実的である。
セルロースを構成糖であるグルコースまで糖化(加水分解)する手段として、酵素を用いることが一般的であるが、この手段では酵素の働きでグルコースが生成され、それが蓄積することによって酵素活性が阻害され、ひいては糖化率が低下する「競争阻害」という問題がある。この対策としてSSFという方法があり、この方法によれば、酵素による糖化と酵母などの発酵菌による糖化物のエタノール発酵が同時進行することで、生成された糖が蓄積して酵素活性が阻害される前に酵母などの発酵菌が糖をエタノールに変換してしまうため、酵素活性を維持することができる。
SSFの採用は、競争阻害対策のみならず、糖化および発酵を一つの反応槽内で同時に行うことができるため、工程がシンプルかつコンパクトになり、設備に要するイニシャルコストを低減することにも繋がる。なお、糖をエタノールに変換するだけの単発酵よりは複雑な反応となるため、連続式よりもバッチ式、セミバッチ式により行う方が好ましい。
反応槽に投入するセルロース系原料としては、例えば針葉樹、広葉樹などの木材、ヤシ類を中心とした南洋材(幹および実の外殻)、稲藁、麦藁、バガス、コーンストーバー、コーンコブなどの農業残渣、大型藻類や微細藻類等の他、建築廃材、街路樹の剪定枝、紙類など、都市部の廃棄物も含まれる。ただし、これらを効率よく酵素糖化するためには、適切な前処理によって脱リグニンされていることが必須であり、その点において製紙工程において既に脱リグニンされている紙類は、SSFに最適なセルロース系原料である。上記の原料は水に懸濁させて15dry−wt%前後のスラリーに調製したうえでSSFに適用する。
上記の脱リグニンされたセルロース系原料を加水分解する酵素には、トリコデルマ属、および/またはアスペルギルス属、リゾプス属、アクレモニウム属、あるいはこれらの遺伝子組換体由来の市販のセルラーゼ製剤、これらを培養して得られる培養液(菌体を含む)、菌体を除いた培養液上澄を用いてもよい。
酵素の働きによってセルロースから生成される糖をエタノールに変換するため、酵素と同時にサッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、ピキア属、キャンジダ属の酵母、ザイモモナス属、クロストリディウム属の細菌、あるいはそれらの遺伝子組換体をセルロース系原料に接種する。
SSF終了時の発酵液中エタノール濃度が5vol%以上に達するようにするには、植物の種類や前処理法によっても異なってくるが、熱水、酸、アルカリなどによる適切な前処理によって脱リグニンされ、セルロースおよびヘミセルロースが中心となった原料が、後述するエタノール発酵菌やセルラーゼも含んだ状態で10〜30dry−wt%、好ましくは15〜20dry−wt%のスラリーになるように調製して反応槽に充填する。このスラリーを調製する段階で酵素糖化およびエタノール発酵に適したpHに調整しておく。
セルラーゼは、原料の乾燥重量あたり6〜15FPU/g、好ましくは8〜12FPU/g添加する(FPU/gは60分間にろ紙からグルコースを10.8mg生成するセルラーゼ酵素活性の単位)。
セルラーゼと並行して接種するエタノール発酵菌は、例えば酵母サッカロマイセス セレビジエの場合、原料スラリー容積あたり1〜4g wet−wt/L、好ましくは2〜3g wet−wt/L接種する。
原料、セルラーゼおよび酵母を反応槽に投入した後は、物理的動力により、これらが均一に混合するよう、攪拌や混練を施す。15dry−wt%以上の原料スラリーは、実際には流動性が全くない含水率85%の固形分の様相であるが、セルラーゼの働きによるセルロースの低分子化に伴って液化が促進され、流動性の増加と粘度の低下が起こる。そして、最終的には構成糖である単糖、すなわちグルコースが生成される。
並行して接種した発酵菌は、このグルコースを基質として増殖しながら、エタノールを生成する。このときにグルコース以外に必要な栄養塩類を最適量加えることにより、増殖、発酵が促進され、エタノール発酵に好適な条件が整う。具体的な栄養塩類としては、アミノ酸源、窒素源、リン源が挙げられるが、これらの安価な代替品としては、廃糖蜜、コーンスティープリカー、肥料として知られる硫安、過リン酸石灰が挙げられる。
前述した通り、現在市販されている酵素の糖化に適した温度は50℃前後である。これに対し最も一般的な発酵菌である酵母サッカロマイセス セレビジエの生育に適した温度は30℃程度である。このため、発酵菌が耐えられる限り、できるだけ50℃に近い温度でSSFを実施することになるが、その温度に耐えられるだけで決して増殖や発酵に適した条件とはいえないため、発酵菌には絶えず高温というストレスがかかることになる。更には発酵に伴い反応槽内のエタノール濃度は上昇するため、SSF中期から後期になると、それ自体が生成したエタノールおよび高温という2つのストレスが加わり、発酵菌の活性は低下する。この対策として、SSF中期から後期にかけて温度を低下させることが効果的である。具体的には、例えば適用する発酵菌の耐熱温度が40℃、SSF初期から中期の反応温度を38℃と設定している場合、これから3〜10℃、好ましくは5〜8℃の範囲で温度を下げることにより、少なくともストレスの一つを軽減できる。これにより発酵菌の活性が回復し、SSFを終始38℃で反応させた場合よりも、エタノール収率は向上する。なお、SSFに適用する発酵菌の耐熱性の違いによってSSF初期から中期の反応温度ならびに中期から後期にかけての降温幅が変動することは言うまでもないが、発酵菌の耐熱性に基づいて、SSF時の温度を制御する本発明は、適用する発酵菌が代わっても普遍的に有効である。そして、適用する発酵菌の耐熱性が高いほど、酵素糖化に最適な50℃前後により近い温度付近でSSFが実施できるため、より製造効率が高くなる、あるいはSSF中期から後期に降温しなくてもエタノール生成能が低下しない発酵菌の場合は、終始同じ反応温度を維持しても良いことは言うまでもない。なお、温度を下げる時期の目安としては、発酵液中のエタノール濃度が2.0〜4.0vol%、好ましくは2.5〜3.5vol%に達した時期が望ましい。
一方、セルロースの糖化と、発酵菌によるエタノール発酵を一つの反応槽内で行う方法において、先ずセルロース原料と酵素を反応槽に充填して酵素糖化に最適な温度下で攪拌し、次いで、この反応槽に発酵菌を投入する方法では、最初から発酵菌を酵素と共にセルロース原料に投入する前述の方法よりも原料を迅速に液化でき、かつ初期の攪拌動力が大幅に節減できる。そして、液化後にエタノール発酵菌の耐熱温度以下まで下げたうえで発酵菌を接種することにより、同じく前述の方法よりも発酵菌を耐熱温度付近に曝す時間が短くなりストレスが低減できる。なお、本発明の方法では発酵菌の耐熱温度以下に下げた後はSSF終了までその温度を維持することもできるが、前述の方法通り、SSF中期から後期にかけて更に温度を低下させることが、エタノール生成の点で効果的なのは言うまでもない。
バッチ式SSFが前提の場合、初回バッチの発酵菌を次回バッチの種菌として返送することが考えられるが、終始、発酵菌がその耐熱限界付近に絶えず曝されるSSFでは、発酵菌にストレスがかかっており、種菌としては相応しくない。また、雑菌汚染された場合には次回バッチの種菌として使用できなくなるため、常にリスクがつきまとう。この対策として、バッチ毎に少量の種菌をSSF反応槽に接種して増殖されれば、これらのリスクを軽減できる。具体的には、例えばSSF反応槽容量1mの場合、グルコース濃度5〜10%になるように、水、廃糖蜜およびその他の安価な培地成分から成る培養液0.5mを充填する。ここに酵母サッカロマイセス セレビジエの場合、2〜3g wet−wt/L密度になるよう接種して適度に攪拌しながら6〜10時間培養することで、酵母密度は30〜70g wet−wt/Lに達する。ここに原料および酵素を加え、最終的に15wt%の原料スラリー1mに調製した後、SSFを開始する。これにより、種菌培養に必要な前培養槽や、別槽で培養した場合に必要な菌の移送も不要となる。
最後に、セルラーゼにはヘミセルロースを構成糖であるキシロースやアラビノースなどの五炭糖に加水分解できるヘミセルラーゼも含まれているため、セルロース以外にヘミセルロースを含有する原料の場合はこれらの糖も生成されるが、通常の酵母やザイモモナスでは五単糖をエタノールに変換できない。このため、これらの糖を利用できる遺伝子組換体を適用すれば、エタノール収率が更に向上するのは言うまでもない。
本発明は、SSF法において同時糖化反応中に初期反応温度から段階的にまたは連続的に反応温度を低下させるので、少なくとも5vol%以上のエタノール溶液を得ることができる。
酵素添加量毎の実験区および対象区のエタノール濃度の推移を示すグラフである。 50℃で原料を液化後に38℃まで降温して酵母を接種した場合のエタノール濃度の推移(終始38℃のSSFと比較)を示すグラフである。
(実施例)
次に、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。また、今回はセルロース原料にはコクヨ工業製のOA紙(コピー用紙)、発酵菌には酵母サッカロマイセス セレビジエ、セルラーゼにはGenencor製のAccelleraseを用いているが、これら以外であっても構わない。セルロース原料からバッチ式SSFによって、少なくとも5vol%以上のエタノール溶液を得る方法に関するのが本発明である。
(実施例1:SSFにおける温度制御効果)
材料および方法:市販の化学パルプ由来の上質OA紙(コクヨ工業製)の同ロットをまとめて購入し、シュレッダーで細断した後、乾燥機中で絶乾させたものを供試した。これに適量の蒸留水を加えてミキサーで離解させた後に脱水し、ここに酵母サッカロマイセス セレビジエの菌体を原料スラリー容量あたり3g wet−wt/L、トリコデルマ リーゼイ由来のセルラーゼ製剤(商品名:Accellerase、Genencor製)を原料の乾燥重量あたり、それぞれ4、8、12FPU/gになるように加え、最終的にセルロース原料濃度が15dry−wt%になるように調製して200mL容量のサンプル瓶に100mL充填した。なお、pHはミキサーで原料を離解させて脱水する前の段階で6.0に調整した。これらを振とう機にセットして38℃で反応させ、経過時間毎に反応液1mLをサンプリングしてエタノール濃度の推移を計測した。そして、エタノール濃度が3.0vol%に達した後に反応温度を38℃から33℃に下げた実験区と、そのまま38℃を維持した対象区のそれらを比較した。
結果:図1に実験区および対象区のエタノール濃度の推移を示す。発酵によって生成されたエタノール濃度が3.0vol%以上になったのを目安に反応温度を33℃に下げた場合の方が最終的なエタノール濃度は高くなる傾向を示したほか、酵素添加量が多いほど、エタノールの生成速度および濃度は大きい傾向だった。なお、酵素添加量が4FPU/gの場合、エタノール濃度が低かったため温度を下げるには至らず、同等の結果となった。
(実施例2:原料の液化促進)
材料および方法:請求項7の実施例として、実施例1と同様に原料を調製し、ここに酵素Accelleraseを原料の乾燥重量あたり、それぞれ4および8FPU/gになるように加え、最終的にセルロース原料濃度が15dry−wt%になるように調製して200mL容量のサンプル瓶に100mL充填した。なお、この場合もpHはミキサーで原料を離解させて脱水する前の段階で6.0に調整した。これらを振とう機にセットして50℃下で反応させ、原料が液化して流動性が充分になった時点で温度を38℃まで下げた後、酵母サッカロマイセス セレビジエの菌体を原料スラリー容量あたり3g wet−wt/Lになるように接種し、実施例1と同様にエタノール濃度の推移を計測した。そして、同じ量の酵素と酵母を同時期に原料に添加して終始38℃でSSF反応させた対象区のそれと比較した。
結果:図2に50℃で原料を充分に液化した後に38℃まで温度を下げ、酵母を添加して発酵を開始した場合と、対象区として、酵素と酵母を同時期に原料に添加して終始38℃でSSF反応させた場合のエタノール濃度の推移を示す。前者については、液化が進んで温度を38℃に下げた後、酵母を接種するため、後者よりも早く酵母を接種する前者よりも酵母の増殖が遅いはずであるが、エタノールの生成自体に大きな違いはなかった。この結果を受けて酵素添加量8FPU/gのまま酵母接種量を5g wet−wt/Lに増やしたところ、エタノール濃度が5vol%に達する時間が早まるという効果が認められた。
一方、原料の液化・流動化は、酵素添加量8FPU/gで38℃の場合が6時間を要したのに対し、8FPU/gで50℃の場合は2時間程度で同等の液化。流動化が認められた。なお、酵素添加量が5FPU/gになると、液化・流動化は遅くなった。流動性の全くない濃度15dry−wt%の原料を混練、あるいは攪拌する動力に要す電力は多大である。充分な酵素添加量の場合、酵素の働きによって38℃、50℃のいずれにおいても、液化は促進されるが、それに要する時間が大幅に短縮、つまり処理電力を大幅に節減できる点において、50℃下で短時間に液化させることは、経済性の点で非常に利点がある。
(実施例3:種菌の前培養)
材料および方法:酵母培地として一般的なYPD培地(酵母エキス1.0%、ポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)をベースに、グルコース濃度は10.0%の培養液40Lを調製し、100L容量のSSF槽に充填した。ここに酵母サッカロマイセス セレビジエの菌体を3g wet−wt/Lの密度で接種し、30℃、pH4.0、攪拌速度50rpmの条件で8時間培養した。
結果:8時間後に培養液中の菌密度は培養開始時の約13倍の40g wet−wt/Lに達した。ほぼ同条件で実施した100mL規模のラボテストのそれが最大70g wet−wt/L、平均50g wet−wt/L前後であるのと比べると劣っていたが、これはラボテスト時には実施した曝気がなく、培養液の攪拌が不十分だったことに起因すると思われる。8時間後の培養液中のグルコース濃度が約2.0%と全て消費されていなかったことから、もっと攪拌する、あるいは培養時間を8時間以上にすれば、この規模でもラボテストと同程度の菌密度が得られると思われる。以上の方法により、攪拌と温度制御のみの簡易的な方法でも酵母サッカロマイセス セレビジエを大量培養でき、そのまま種菌としてその容器ごとSSFに適用できる。

Claims (8)

  1. セルロース原料を酵素によって加水分解する糖化工程と、発酵菌によるエタノール発酵工程を一つの反応槽内で同時に行う同時糖化発酵方法において、同時糖化反応中に初期反応温度から段階的にまたは連続的に反応温度を低下させることを特徴とする同時糖化発酵方法。
  2. 反応温度を2段階で低下させ、温度を低下させる時期が発酵液中のエタノール濃度が2.0〜4.0vol%に達した時である、請求項1に記載の同時糖化発酵方法。
  3. 低下させる温度が3〜15℃である、請求項1または2に記載の同時糖化発酵法。
  4. 酵素が、トリコデルマ属、および/またはアルペルギルス属、リゾプス属、アクレモニウム属、あるいはそれらの遺伝子組換体の単一種由来のセルラーゼおよび/または複数種混合由来のセルラーゼである、請求項1〜3のいずれか1つに記載の同時糖化発酵法。
  5. 発酵菌がサッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、ピキア属、キャンジダ属の酵母、ザイモモナス属、クロストリディウム属の細菌、あるいはそれらの遺伝子組換体の単一種および/または複数種の混合である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の同時糖化発酵法。
  6. 発酵菌の増殖時に、糖以外の栄養塩類も加える、請求項1〜5のいずれか1つに記載の同時糖化発酵法。
  7. セルロース原料を酵素によって加水分解する糖化工程と、発酵菌によるエタノール発酵工程を一つの反応槽内で行う糖化発酵方法において、
    先ずセルロース原料と酵素を反応槽に充填して酵素糖化を行わせ、次に、該反応槽に発酵菌を投入することを特徴とする糖化発酵方法。
  8. バッチ毎に、発酵菌をSSF反応槽に接種して増殖させた後、SSFを開始する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の同時糖化発酵法。
JP2009096867A 2009-04-13 2009-04-13 セルロース系原料の同時糖化発酵法 Expired - Fee Related JP5711873B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009096867A JP5711873B2 (ja) 2009-04-13 2009-04-13 セルロース系原料の同時糖化発酵法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009096867A JP5711873B2 (ja) 2009-04-13 2009-04-13 セルロース系原料の同時糖化発酵法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2010246422A true JP2010246422A (ja) 2010-11-04
JP2010246422A5 JP2010246422A5 (ja) 2012-03-15
JP5711873B2 JP5711873B2 (ja) 2015-05-07

Family

ID=43309548

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009096867A Expired - Fee Related JP5711873B2 (ja) 2009-04-13 2009-04-13 セルロース系原料の同時糖化発酵法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5711873B2 (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012055302A (ja) * 2010-08-11 2012-03-22 Tsukishima Kikai Co Ltd エタノール製造方法
WO2012114609A1 (ja) * 2011-02-24 2012-08-30 月島機械株式会社 エタノール製造方法
WO2012114610A1 (ja) * 2011-02-24 2012-08-30 月島機械株式会社 エタノール製造方法
JP2012235729A (ja) * 2011-05-11 2012-12-06 Nippon Steel Engineering Co Ltd アルコール発酵性酵母及びこれを用いたエタノール製造方法
US8647850B2 (en) 2009-12-23 2014-02-11 E I Du Pont De Nemours And Company Process for simultaneous saccharification and fermentation for production of ethanol
JP2014030367A (ja) * 2012-08-01 2014-02-20 Honda Motor Co Ltd 蒸留残スラリーの保存方法
WO2015053364A1 (ja) * 2013-10-09 2015-04-16 新日鉄住金エンジニアリング株式会社 エタノール製造設備、エタノール製造方法並びにエタノール及びバイオペレットの製造設備
WO2022119335A1 (ko) * 2020-12-02 2022-06-09 한양대학교에리카산학협력단 비등온 당화 공정을 이용한 기능성 당 및 폴리페놀을 갖는 술의 제조 방법, 및 그 제조 장치
JP7460108B2 (ja) 2018-10-23 2024-04-02 学校法人福岡大学 発酵物の製造方法、エタノールの製造方法および乳酸発酵物の製造方法、ならびに発酵促進剤

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009022165A (ja) * 2007-07-17 2009-02-05 Akita Prefecture エタノール製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009022165A (ja) * 2007-07-17 2009-02-05 Akita Prefecture エタノール製造方法

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6013055170; Biotechnology for Biofuels Vol. 1, No. 7, 2008, P. 1-14 *
JPN6013055171; Bioresource Technology Vol. 100, 20090316, P. 3245-3251 *
JPN7012004864; Process Biochemistry Vol. 39, 2004, P. 1843-1848 *
JPN7012004865; Process Biochemistry Vol. 40, 2005, P. 3693-3700 *
JPN7012004866; Enzyme and Microbial Technology Vol. 37, 2005, P. 195-204 *

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8647850B2 (en) 2009-12-23 2014-02-11 E I Du Pont De Nemours And Company Process for simultaneous saccharification and fermentation for production of ethanol
JP2012055302A (ja) * 2010-08-11 2012-03-22 Tsukishima Kikai Co Ltd エタノール製造方法
US20130337525A1 (en) * 2011-02-24 2013-12-19 Tsukishima Kikai Co., Ltd. Method of Producing Ethanol
JP2012170443A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Tsukishima Kikai Co Ltd エタノール製造方法
JP2012170444A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Tsukishima Kikai Co Ltd エタノール製造方法
WO2012114610A1 (ja) * 2011-02-24 2012-08-30 月島機械株式会社 エタノール製造方法
US20130337526A1 (en) * 2011-02-24 2013-12-19 Tsukishima Kikai Co., Ltd. Method of Producing Ethanol
WO2012114609A1 (ja) * 2011-02-24 2012-08-30 月島機械株式会社 エタノール製造方法
JP2012235729A (ja) * 2011-05-11 2012-12-06 Nippon Steel Engineering Co Ltd アルコール発酵性酵母及びこれを用いたエタノール製造方法
JP2014030367A (ja) * 2012-08-01 2014-02-20 Honda Motor Co Ltd 蒸留残スラリーの保存方法
WO2015053364A1 (ja) * 2013-10-09 2015-04-16 新日鉄住金エンジニアリング株式会社 エタノール製造設備、エタノール製造方法並びにエタノール及びバイオペレットの製造設備
JP2015073487A (ja) * 2013-10-09 2015-04-20 新日鉄住金エンジニアリング株式会社 エタノール製造設備、エタノール製造方法並びにエタノール及びバイオペレットの製造設備
JP7460108B2 (ja) 2018-10-23 2024-04-02 学校法人福岡大学 発酵物の製造方法、エタノールの製造方法および乳酸発酵物の製造方法、ならびに発酵促進剤
WO2022119335A1 (ko) * 2020-12-02 2022-06-09 한양대학교에리카산학협력단 비등온 당화 공정을 이용한 기능성 당 및 폴리페놀을 갖는 술의 제조 방법, 및 그 제조 장치

Also Published As

Publication number Publication date
JP5711873B2 (ja) 2015-05-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5711873B2 (ja) セルロース系原料の同時糖化発酵法
Öhgren et al. A comparison between simultaneous saccharification and fermentation and separate hydrolysis and fermentation using steam-pretreated corn stover
Hernández et al. Saccharification of carbohydrates in microalgal biomass by physical, chemical and enzymatic pre-treatments as a previous step for bioethanol production
He et al. Lignocellulosic butanol production from Napier grass using semi-simultaneous saccharification fermentation
Pensupa et al. A solid state fungal fermentation-based strategy for the hydrolysis of wheat straw
Hsu et al. Pretreatment and hydrolysis of cellulosic agricultural wastes with a cellulase-producing Streptomyces for bioethanol production
ES2823455T3 (es) Proceso para la preparación de un producto de fermentación de material que contiene lignocelulosa
US20100021980A1 (en) Hybrid process for the production of biofuel
BRPI0612207A2 (pt) método para a produção de etanol
KR20110033246A (ko) 효모 바이오매스의 생산 방법
JP2010510800A5 (ja)
Chang et al. Comparison of batch and fed-batch fermentations using corncob hydrolysate for bioethanol production
CN101608192B (zh) 一种利用玉米芯生产丁二酸的方法
AU2016272326B2 (en) Yeast propagation simultaneous with saccharification
US7960153B2 (en) Glucose conversion to ethanol via yeast cultures and bicarbonate ions
CN111118071B (zh) 一种利用未脱毒纤维素原料生产木糖醇和乙醇的发酵方法
Tang et al. Integrated process of starch ethanol and cellulosic lactic acid for ethanol and lactic acid production
US20220315886A1 (en) Methods for propagating microorganisms for fermentation & related methods & systems
Ravinder et al. Fermentative production of acetic acid from various pure and natural cellulosic materials by Clostridium lentocellum SG6
TW202000917A (zh) 用於生產乳酸的方法
JP2014176351A (ja) エタノールの生産方法
CN110373434B (zh) 一种发酵原料中水溶性糖提高纤维素乳酸产量的方法
US9359619B2 (en) Biomass liquefaction processes, and uses of same
JP2015042145A (ja) エタノールの製造方法
JP6322187B2 (ja) セルロース系バイオマスからのエタノール生産方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120126

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120126

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131112

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140109

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140819

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20141119

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20141202

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20141208

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150210

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150309

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5711873

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees