[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る伝熱板及び伝熱板の製造方法について図面を適宜参照して詳細に説明する。まず、本発明に係る伝熱板の製造方法によって形成される伝熱板1について説明する。なお、説明中の上下左右前後は、図1の矢印に従う。
伝熱板1は、図1に示すように、本体10の表面10aに第一蓋部材30を、裏面10cに第二蓋部材40を摩擦攪拌接合によって固定して形成される。伝熱板1は、例えば、スパッタリング装置において、ターゲット材を冷却するために使用される。
本体10は、略直方体の外観を呈し、本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている。本体10は、表面(上面)10aに凹設された4つの第一凹部11と、第一凹部11の底面に凹設された4つの第一凹溝12と、裏面(下面)10cに凹設された4つの第二凹部21と、第二凹部21の底面に凹設された4つの第二凹溝22と、第一凹溝12及び第二凹溝22に連通する貫通孔16とを有する。本体10の形状は、本実施形態では外観視略直方体としたが、多角柱体、円柱体等であってもよい。
第一凹部11は、平面視長円状を呈し、本体10の表面10aに凹設されている。第一凹部11は、第一蓋部材30が配置される部位である。第一凹部11は、図2に示すように、底面11aと、底面11aに立設する側壁11bとを有する。側壁11bの深さは、第一蓋部材30の厚みと略同等になっている。4つの第一凹部11は、全て同形状で形成されている。
第一凹溝12は、平面視長円状を呈し、第一凹部11の底面11aの中央に凹設されている。第一凹溝12は、熱を外部に輸送する熱輸送流体(本実施形態では冷却水)が流れる部位である。第一凹溝12は、図2に示すように、底面12aと、底面12aに立設する壁面12bとを有する。第一凹溝12の深さは、伝熱板1の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では本体10の厚みの2/3程度に形成されている。4つの第一凹溝12は、全て同形状で形成されている。
第一凹部11及び第一凹溝12は、第一凹部11及び第一凹溝12の長手方向が本体10の左右方向に対して直交し、所定の間隔をあけて配設されている。本実施形態では、隣り合う第一凹部11同士の間の距離は、第一凹部11の幅よりも大きくなっている。第一凹部11及び第一凹溝12は、本実施形態では四つ設けているが、設置数を限定するものではない。また、第一凹部11及び第一凹溝12は、平面視長円状としたが、他の形状であってもよい。
第二凹部21は、平面視長円状を呈し、本体10の裏面10cに凹設されている。第二凹部21は、第二蓋部材40が配置される部位である。第二凹部21は、図2に示すように、底面21aと、底面21aに立設する側壁21bとを有する。側壁21bの深さは、第二蓋部材40の厚みと略同等になっている。4つの第二凹部21は、全て同形状で形成されている。
第二凹溝22は、平面視長円状を呈し、第二凹部21の底面21aの中央に凹設されている。第二凹溝22は、熱を外部に輸送する熱輸送流体(本実施形態では冷却水)が流れる部位である。第二凹溝22は、図2に示すように、底面22aと、底面22aに立設する壁面22bとを有する。第二凹溝22の深さは、伝熱板1の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では本体10の厚みの2/3程度に形成されている。
第二凹部21及び第二凹溝22は、第二凹部21及び第二凹溝22の長手方向が本体10の左右方向に対して直交し、所定の間隔をあけて配設されている。本実施形態では、隣り合う第二凹部21同士の間の距離は、第二凹部21の幅よりも大きくなっている。第二凹部21及び第二凹溝22は、本実施形態では四つ設けているが、設置数を限定するものではない。また、第二凹部21及び第二凹溝22は、平面視長円状としたが、他の形状であってもよい。
図2に示すように、第二凹部21及び第二凹溝22は、隣り合う第一凹部11及び第一凹溝12の間に交互に配設されている。言い換えると、本体10を平面視した場合において、第一凹溝12を投影した領域と、第二凹溝22を投影した領域とが重ならないように形成されている。また、隣り合う第一凹溝12と第二凹溝22との距離は、均等の間隔をあけて配設されている。これにより、熱輸送流体をバランスよく流通させることができる。
貫通孔16は、図1及び図2に示すように、本体10の外部と第一凹溝12及び第二凹溝22に連通し、熱輸送流体を循環させる。貫通孔16は、本体10の左側の側面10bと第一凹溝12を連通するとともに、本体10の右側の側面10bと第二凹溝22とを連通する。さらに、貫通孔16は、隣り合う第一凹溝12及び第二凹溝22との前端側又は後端側同士を連通するように形成されている。これにより、本体10の一方の側面10bから流入した冷却水は、本体10内をジグザグに流れて他方の側面10bから流出する。
このように、第一凹溝12及び第二凹溝22の端部同士を連通させることにより、伝熱板1の全体に冷却水を流すことができ、冷却効率を高めることができる。貫通孔16の形状、数及び設置位置は、冷却水の種類や流量に応じて適宜変更可能である。貫通孔16は、公知の穴あけ加工によって形成すればよい。
第一蓋部材30は、図1及び図2に示すように、本体10と同等の材料からなる押出形材である。第一蓋部材30は、裏面30aと、側面30bとを備え、第一凹部11の平面形状と同等に形成されている。第一蓋部材30は、本実施形態では、第一凹部11の個数に合わせて4枚設けている。第一蓋部材30は、第一凹部11に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第一凹溝12の開口部を封止する。
第二蓋部材40は、図1及び図2に示すように、本体10と同等の材料からなる押出形材である。第二蓋部材40は、裏面40aと、側面40bとを備え、第二凹部21の平面形状と同等に形成されている。第二蓋部材40は、本実施形態では、第二凹部21の個数に合わせて4枚設けている。第二蓋部材40は、第二凹部21に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第二凹溝22の開口部を封止する。
次に、後記する摩擦攪拌接合に用いる小型の回転ツール(以下、「小型回転ツールF」という。)及び小型回転ツールFよりも大型の回転ツール(以下、「大型回転ツールG」という。)について図3を用いて説明する。
図3に示す小型回転ツールFは、工具鋼など本体10よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。小型回転ツールFの寸法・形状は、本体10の材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、大型回転ツールG(図3の(b)参照)よりも小型にする。このようにすると、大型回転ツールGを用いる場合よりも小さな負荷で摩擦攪拌接合を行うことが可能となるので、摩擦攪拌装置に掛かる負荷を低減することが可能となり、さらには、小型回転ツールFの移動速度(送り速度)を大型回転ツールGの移動速度よりも高速にすることも可能になるので、摩擦攪拌接合に要する作業時間やコストを低減することが可能となる。
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部F1の外径X1の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1よりも小さくなっている。
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンF2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)X2が大型回転ツールGの攪拌ピンG2の最大外径(上端径)Y2よりも小さく、かつ、最小外径(下端径)X3が攪拌ピンG2の最小外径(下端径)Y3よりも小さくなっている。攪拌ピンF2の長さLAは、第一蓋部材30の厚みよりも小さく形成されている。
図3の(b)に示す大型回転ツールGは、工具鋼など本体10よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部G1と、このショルダ部G1の下端面G11に突設された攪拌ピン(プローブ)G2とを備えて構成されている。ショルダ部G1の下端面G11は、小型回転ツールFと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面G11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼G3が形成されている。攪拌ピンG2の長さLBは、第一蓋部材30の厚みよりも大きく形成されている。
次に、伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、(1)第一凹部形成工程、(2)第一凹溝形成工程、(3)第二凹部形成工程、(4)第二凹溝形成工程、(5)貫通孔形成工程、(6)第一蓋部材配置工程、(7)表面側接合工程、(8)第二蓋部材配置工程、(9)裏面側接合工程を実行する。
(1)第一凹部形成工程、(2)第一凹溝形成工程
第一凹部形成工程では、図4の(a)に示すように、アルミニウム合金製の平板の表面に、公知のエンドミル等を用いて第一凹部11を凹設する。第一凹溝形成工程では、第一凹部11の底面11aの中央に第一凹溝12を凹設する。第一凹部11及び第一凹溝12は、所定の間隔をあけて本実施形態では四つ形成する。なお、第一凹溝12を凹設した後に、第一凹部11を凹設してもよい。
(3)第二凹部形成工程、(4)第二凹溝形成工程
第二凹部形成工程では、図4の(a)に示すように、アルミニウム合金製の平板の裏面に、公知のエンドミル等を用いて第二凹部21を凹設する。第二凹溝形成工程では、第二凹部21の底面21aの中央に第二凹溝22を凹設する。第二凹部21及び第二凹溝22は、隣り合う第一凹部11及び第一凹溝12の間の中央に交互に四つ配設する。これにより、隣り合う第一凹溝12と第二凹溝22とは均等の間隔をあけて配設される。
(5)貫通孔形成工程
貫通孔形成工程では、図4の(a)に示すように、本体10の左側の側面10bと第一凹溝12、本体の右側の側面10bと第二凹溝22とを連通する貫通孔16を形成する。また、隣り合う第一凹溝12と第二凹溝22とを連通する貫通孔16を形成する。貫通孔16を形成する位置は特に限定されないが、本実施形態のように、冷却水が平面視してジグザグに流れるように形成すると冷却効率が高まる。
(6)第一蓋部材配置工程
第一蓋部材配置工程では、図4の(b)に示すように、本体10の表面10a側に開口する第一凹部11に第一蓋部材30を配置する。第一蓋部材30を配置すると、第一凹部11の側壁11bと、第一蓋部材30の側面30bとで突合部31が形成される。
(7)表面側接合工程
表面側接合工程では、第一凹部11の側壁11bと、第一蓋部材30の側面30bとが突き合わされた突合部31(31a乃至31d)に対して摩擦攪拌接合を行う。表面側接合工程では、図5に示すように、右回転させた小型回転ツールFを本体10の表面10aの後端側に設定した開始位置SM1に挿入した後、突合部31に沿って移動させる。小型回転ツールFを移動させることにより、表面側塑性化領域W1が形成される。図6の(a)に示すように、小型回転ツールFの軸芯と、突合部31とが重なるように小型回転ツールFを移動させ、第一蓋部材30の回りを一周させたら、既存の表面側塑性化領域W1上に再度ルートを設定し、前端側に設定した終了位置EM1まで移動させる。このように、摩擦攪拌接合によって形成される表面側塑性化領域W1の一部を重複させることで、突合部31に対して確実に摩擦攪拌接合を行うことができる。
表面側接合工程では、小型回転ツールFの移動方向と同じ方向に小型回転ツールFが回動するシアー側(被接合部に対する小型回転ツールFの外周の相対速さが、小型回転ツールFの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側)が、本体10の第一凹溝12から離間した部位に位置するように、小型回転ツールFを回転、移動させる。つまり、小型回転ツールFの回転方向(自転方向)が、移動方向(公転方向)と同じ方向となるようにする。具体的には、本実施形態では、小型回転ツールFを第一凹溝12の開口部に沿って右回りに移動させているので、小型回転ツールFも右回転させる。
なお、小型回転ツールFを第一凹溝12に対して左回りに移動させるときは、小型回転ツールFを左回転させる。かかる方法によれば、小型回転ツールFのシアー側が本体10の第一凹溝12から離間した部位に位置する。第一凹溝12に近い部位は、小型回転ツールFのフロー側(被接合部に対する小型回転ツールFの外周の相対速さが、小型回転ツールFの外周における接線速度の大きさから移動速度の大きさを減算した値となる側)となる。このため、第一凹溝12に近い部位は、メタルの流動量が少なくなり、空洞欠陥が発生しにくくなる。そして、摩擦攪拌によって空洞欠陥が発生したとしても、第一凹溝12から離間した部分に発生することとなり、熱輸送流体が外部に漏れにくくなるので、接合部の密閉性能を低下させることはない。
表面側接合工程では、同様の工程を突合部31b乃至突合部31dに対して行う。なお、表面側接合工程の開始位置SM1乃至SM4及び終了位置EM1乃至EM4は、本実施形態では前記したように設定したが、他の位置であっても構わない。また、第一蓋部材30が比較的大きい部材である場合は、小型回転ツールFよりもさらに小さい回転ツールを用いて摩擦攪拌接合を行って第一蓋部材30を本体10に仮付けした後に、表面側接合工程を行ってもよい。これにより、第一蓋部材30の地位決め精度を高めることができる。
(8)第二蓋部材配置工程
第二蓋部材配置工程では、具体的な図示はしないが、本体10の裏面10c(図1参照)側に開口する第二凹部21に第二蓋部材40を配置する。第二蓋部材40を配置すると、第二凹部21の側壁21bと、第二蓋部材40の側面40bとで突合部41(図6の(b)参照)が形成される。
(9)裏面側接合工程
裏面側接合工程では、図6の(b)に示すように、突合部41(41a乃至41d)に対して摩擦攪拌接合を行う。裏面側接合工程では、右回転させた小型回転ツールFを本体10の裏面10cの後端側に設定した開始位置SM5に挿入した後、突合部41aに沿って移動させる。小型回転ツールFを移動させることにより、裏面側塑性化領域W2が形成される。小型回転ツールFの軸芯と、突合部41とが重なるように小型回転ツールFを移動させ、第二蓋部材40の回りを一周させたら、既存の裏面側塑性化領域W2上に再度ルートを設定し、前端側に設定された終了位置EM5まで移動させる。
裏面側接合工程では、同様の工程を突合部41b乃至突合部41dに対しても行う。なお、裏面側接合工程の開始位置SM5乃至SM8及び終了位置EM5乃至EM8は、本実施形態では前記したように設定したが他の位置であっても構わない。
表面側接合工程及び裏面側接合工程が終了すると、図7に示すように、本体10の表面側には、第一凹溝12と第一蓋部材30とからなる4つの第一流体流路32が形成される。また、本体10の裏面側には、第二凹溝22と第二蓋部材40とからなる4つの第二流体流路42が形成される。表面側塑性化領域W1及び裏面側塑性化領域W2の深さは、本実施形態では、第一蓋部材30及び第二蓋部材40の厚みと略同等となるように設定したが、これに限定されずに適宜設定すればよい。また、大型回転ツールGを用いて、第一凹部11の底面11aと第一蓋部材30の裏面30aとの重ね合わせ部(第二凹部21の底面21aと第二蓋部材40の裏面40aとの重ね合わせ部)に対して摩擦攪拌接合を行ってもよい。
以上説明した伝熱板1によれば、表面側に第一凹溝12を、裏面側に第二凹溝22を設けるとともに、第一凹溝12と第二凹溝22とを交互に形成することで、大きい断面積を備えた第一流体流路32及び第二流体流路42を密に配設することができる。また、表面側の隣り合う第一流体流路32同士、裏面側の隣り合う第二流体流路42同士は、比較的大きい間隔を確保することができる。これにより、摩擦攪拌接合の際の回転ツールの押圧力によって第一凹溝12及び第二凹溝22が変形することなく製造することができる。
また、本実施形態では、第一凹溝12及び第二凹溝22の深さを本体10の厚みの半分よりも大きく設定しつつ、第一凹溝12及び第二凹溝22を本体10の表裏で交互に配設している。これにより、本体10の厚みが薄い場合であっても、第一流体流路32及び第二流体流路42の断面積を大きく確保することで冷却水の流量を多くすることができ、伝熱板1の熱交換効率を高めることができる。
また、仮に表面側のみに摩擦攪拌接合を行うと、塑性化領域の熱収縮によって伝熱板1が歪み表面側が凹状に変形する可能性がある。しかし、本実施形態のように、裏面側にも摩擦攪拌接合を行うことで、伝熱板1の歪みを矯正し伝熱板1の平坦性を高めることができる。
また、本体10の側面10b,10b、隣り合う第一凹溝12及び第二凹溝22に連通する貫通孔16を備えており、冷却水が伝熱板1を平面視してジグザグに流れるように形成されているため、伝熱板1の全体に冷却水を流通させることができ、冷却効率を高めることができる。また、本実施形態では、第一蓋部材30及び第二蓋部材40をアルミニウム合金の押出形材で形成しているため、成形作業が容易になるとともに、伝熱板1の軽量化を図ることができる。
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態について説明する。図8に示すように、第二実施形態に係る伝熱板101は、第一凹溝62及び第二凹溝72の平面形状が、平面視L字状を呈する点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と共通する部分においては詳細な説明は省略する。
本体50は、図8及び図9に示すように、表面(上面)50aに凹設された4つの第一凹部61と、第一凹部61の底面に凹設された4つの第一凹溝62と、裏面(下面)50cに凹設された4つの第二凹部71と、第二凹部71の底面に凹設された4つの第二凹溝72と、第一凹溝62及び第二凹溝72に連通する貫通孔16とを有する。
第一凹部61は、図8及び図9に示すように、平面視逆L字状を呈し、本体50の表面50aに凹設されている。第一凹部61は、第一蓋部材80が配置される部位である。第一凹部61は、図9に示すように、底面61aと、底面61aに立設する側壁61bとを有する。側壁61bの深さは、第一蓋部材80の厚みと略同等になっている。
第一凹溝62は、平面視逆L字状を呈し、第一凹部61の底面61aに凹設されている。第一凹溝62は、冷却水が流れる部位である。第一凹溝62は、図9の(a)に示すように、底面62aと、底面62aに立設する壁面62bとを有する。第一凹溝62の深さは、伝熱板101の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では本体50の厚みの2/3程度に形成されている。
第一凹部61及び第一凹溝62は、第一凹部61及び第一凹溝62の長手部分が本体10の左右方向に対して直交し、所定の間隔をあけて配設されている。第一凹部61及び第一凹溝62は、本実施形態では4つ設けているが、設置数を限定するものではない。
第二凹部71は、図9の(a)及び図10に示すように、平面視逆L字状を呈し、本体50の裏面50cに凹設されている。第二凹部71は、第二蓋部材90が配置される部位である。第二凹部71は、図9の(a)に示すように、底面71aと、底面71aに立設する側壁71bとを有する。側壁71bの深さは、第二蓋部材90の厚みと略同等になっている。
第二凹溝72は、平面視逆L字状を呈し、第二凹部71の底面71aに凹設されている。第二凹溝72は、熱を外部に輸送する冷却水が流れる部位である。第二凹溝72は、図9の(a)に示すように、底面72aと、底面72aに立設する壁面72bとを有する。第二凹溝72の深さは、伝熱板101の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では、本体50の厚みの2/3程度に形成されている。
第二凹部71及び第二凹溝72は、第二凹部71及び第二凹溝72の長手部分が本体10の左右方向に対して直交し、所定の間隔をあけて配設されている。四つの第二凹部71及び第二凹溝72は、全て同形状で形成されている。図10に示すように、本実施形態では、第二凹溝72の長手部分の端部73は、第一凹溝62の短手部分の端部63に対向するように配設されている。また、第二凹溝72の短手部分の端部74は、第一凹溝62の長手部分の端部64に対向するように配設されている。
図9の(a)に示すように、第二凹溝72は、隣り合う第一凹溝62の間に交互に配設されている。言い換えると、図10に示すように、本体50を平面視した場合において、第一凹溝62を投影した領域と、第二凹溝72を投影した領域とが重ならないように形成されている。また、隣り合う第一凹溝62と第二凹溝72との距離は、均等の間隔をあけて配設されている。これにより、熱輸送流体をバランスよく流通させることができる。
貫通孔16は、図10に示すように、本体50の外部と第一凹溝62及び第二凹溝72に連通し、冷却水を循環させる。貫通孔16は、本体50の左側の側面50bと第一凹溝62を連通するとともに、本体50の右側の側面50bと第二凹溝72とを連通する。また、貫通孔16は、第一凹溝62の短手部分の端部63と、第二凹溝72の長手部分の端部73とを連通するとともに、第二凹溝72の短手部分の端部74と、第一凹溝62の長手部分の端部64とを連通する。これにより、本体50の一方の側面50bから流入した冷却水は、本体50内をジグザグに流れて他方の側面50bから流出する。貫通孔16の形状、数及び設置位置は、冷却水の種類や流量に応じて適宜変更可能である。貫通孔16は、公知の穴あけ加工によって形成すればよい。
第一蓋部材80は、図8及び図9に示すように、本体50と同等の材料からなる板状部材である。第一蓋部材80は、裏面80aと、側面80bとを備えている。第一蓋部材80の平面形状は、本体50の第一凹部61の平面形状と同等に形成されている。第一蓋部材80は、第一凹部61に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第一凹溝62の開口部を封止する。
第二蓋部材90は、図9及び図10に示すように、本体50と同等の材料からなる板状部材である。第二蓋部材90は、裏面90aと、側面90bとを備えている。第二蓋部材90の平面形状は、本体50の第二凹部71の平面形状と同等に形成されている。第二蓋部材90は、第二凹部71に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第二凹溝72の開口部を封止する。
次に、本実施形態に係る伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、(1)第一凹部形成工程、(2)第一凹溝形成工程、(3)第二凹部形成工程、(4)第二凹溝形成工程、(5)貫通孔形成工程、(6)第一蓋部材配置工程、(7)表面側接合工程、(8)第二蓋部材配置工程、(9)裏面側接合工程を実行する。
なお、(1)第一凹部形成工程〜(4)第二凹溝形成工程は、第一実施形態と略同等であるため、詳細な説明は省略する。
(5)貫通孔形成工程
貫通孔形成工程では、本体50の左側の側面50bと第一凹溝62、本体の右側の側面50bと第二凹溝72とを連通する貫通孔16を形成する。また、隣り合う第一凹溝62と第二凹溝72とを連通する貫通孔16を形成する。貫通孔16を形成する位置は特に限定されないが、本実施形態のように、冷却水が平面視してジグザグに流れるように形成すると冷却効率が高まる。
(6)第一蓋部材配置工程
第一蓋部材配置工程では、図11の(a)に示すように、本体50の表面50aに開口する第一凹部61に第一蓋部材80を配置する。第一蓋部材80を配置すると、第一凹部61の側壁と第一蓋部材80の側面とで突合部81が形成される。
(7)表面側接合工程
表面側接合工程では、第一凹部61の側壁と、第一蓋部材80の側面とが突き合わされた突合部81(81a乃至81d)に対して摩擦攪拌接合を行う。表面側接合工程では、図11の(a)に示すように、右回転させた小型回転ツールFを本体10の表面10aの後端側に設定した開始位置SM11に挿入した後、突合部81(81a)に沿って移動させる。小型回転ツールFを移動させることにより、表面側塑性化領域W1が形成される。小型回転ツールFの軸芯と、突合部81とが重なるように小型回転ツールFを移動させ、第一蓋部材80の回りを一周させたら、図11の(b)に示すように、既存の表面側塑性化領域W1上に再度ルートを設定し、前端側に設定した終了位置EM11まで移動させる。このように、摩擦攪拌接合によって形成される表面側塑性化領域W1の一部を重複させることで、突合部81に対して確実に摩擦攪拌接合を行うことができる。
表面側接合工程では、同様の工程を突合部81b乃至突合部81dに対して行う。なお、表面側接合工程の開始位置SM11乃至SM14及び終了位置EM11乃至EM14は、本実施形態では前記したように設定したが、他の位置であっても構わない。また、第一蓋部材80が比較的大きい部材である場合は、小型回転ツールFよりもさらに小さい回転ツールを用いて摩擦攪拌接合を行って第一蓋部材80を本体50に仮付けした後に、表面側接合工程を行ってもよい。これにより、第一蓋部材80の地位決め精度を高めることができる。
(8)第二蓋部材配置工程
第二蓋部材配置工程では、具体的な図示はしないが、本体50の裏面50c側に開口する第二凹部71に第二蓋部材90を配置する。第二蓋部材90を配置すると、第二凹部71の側壁71bと、第二蓋部材90の側面90b(図9の(a)参照)とで突合部91(91a乃至91d)が形成される。
(9)裏面側接合工程
裏面側接合工程では、図12に示すように、突合部91(91a乃至91d)に対して摩擦攪拌接合を行う。裏面側接合工程では、右回転させた小型回転ツールFを本体50の裏面50cの後端側に設定した開始位置SM15に挿入した後、突合部91aに沿って移動させる。小型回転ツールFを移動させることにより、裏面側塑性化領域W2が形成される。小型回転ツールFの軸芯と、突合部91とが重なるように小型回転ツールFを移動させ、第二蓋部材90の回りを一周させたら、既存の裏面側塑性化領域W2上に再度ルートを設定し、前端側に設定された終了位置EM15まで移動させる。
裏面側接合工程では、同様の工程を突合部91b乃至突合部91dに対して行う。なお、裏面側接合工程の開始位置SM15乃至SM18及び終了位置EM15乃至EM18は、本実施形態では前記したように設定したが他の位置であっても構わない。
表面側接合工程及び裏面側接合工程が終了すると、図13に示すように、本体50の表面側には、第一凹溝62と第一蓋部材80とからなる第一流体流路82が形成される。また、本体50の裏面側には、第二凹溝72と第二蓋部材90とからなる第二流体流路92が形成される。表面側塑性化領域W1及び裏面側塑性化領域W2の深さは、本実施形態では、第一蓋部材80と第二蓋部材90の厚みと略同等となるように設定したが、これに限定されずに適宜設定すればよい。
以上説明した伝熱板101によれば、本体50に第一流体流路82及び第二流体流路92を密に配設することができるとともに、表面側の隣り合う第一流体流路82同士、裏面側の隣り合う第二流体流路92同士は、比較的大きい間隔を確保することができる。これにより、摩擦攪拌接合の際の回転ツールの押圧力によって第一凹溝62及び第二凹溝72が変形することなく製造することができるとともに、伝熱板101の熱交換効率を高めることができる。また、本実施形態のように、凹部及び凹溝を平面視L字状を呈するように形成してもよい。
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態について説明する。図14に示すように、第三実施形態に係る伝熱板102は、第一凹溝112の平面形状が略W字状を呈し、第二凹溝122の平面形状が略U字状を呈する点で第一実施形態と相違する。第三実施形態では、第一実施形態と共通する部分においては詳細な説明は省略する。
本体110は、図14及び図15に示すように、表面(上面)110aに凹設された第一凹部111と、第一凹部111の底面に凹設された第一凹溝112と、裏面(下面)110cに凹設された第二凹部121と、第二凹部121の底面に凹設された第二凹溝122と、第一凹溝112及び第二凹溝122に連通する貫通孔16とを有する。
第一凹部111は、図14に示すように、平面視略W字状を呈し、本体110の表面110aに凹設されている。第一凹部111は、第一蓋部材130が配置される部位である。第一凹部111は、図16に示すように、底面111aと、底面111aに立設する側壁111bとを有する。側壁111bの深さは、第一蓋部材130の厚みと略同等になっている。
第一凹溝112は、図14に示すように、平面視略W字状を呈し、第一凹部111の底面111aの中央に凹設されている。第一凹溝112は、冷却水が流れる部位である。第一凹溝112は、図16に示すように、底面112aと、底面112aに立設する壁面112bとを有する。第一凹溝112の深さは、伝熱板102の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では本体110の厚みの2/3程度に形成されている。なお、図14に示すように、第一凹溝112のうち、本体110の左右方向に延設された部分を基部112Aとし、基部112Aから前側に延設された部分をそれぞれ肢部112B,112C,112Dとする。
第二凹部121は、図15に示すように、平面視略U字状を呈し、本体110の裏面110cに凹設されている。第二凹部121は、第二蓋部材140が配置される部位である。第二凹部121は、図16に示すように、底面121aと、底面121aに立設する側壁121bとを有する。側壁121bの深さは、第二蓋部材140の厚みと略同等になっている。
第二凹溝122は、図15に示すように、平面視U字状を呈し、第二凹部121の底面121aの中央に凹設されている。第二凹溝122は、熱を外部に輸送する冷却水が流れる部位である。第二凹溝122は、図16に示すように、底面122aと、底面122aに立設する壁面122bとを有する。第二凹溝122の深さは、伝熱板102の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では本体110の厚みの2/3程度に形成されている。なお、第二凹溝122のうち、本体110の左右方向に延設された部分を基部122Aとし、基部122Aから後側に延設された部分をそれぞれ肢部122B,122Cとする。
図16に示すように、第二凹溝122の肢部122B,122Cは、第一凹溝112の肢部112B,112C,112Dの間に交互に配設されている。言い換えると、図17を参照するように、本体110を平面視した場合において、第一凹溝112を投影した領域と、第二凹溝122を投影した領域とが重ならないように形成されている。
貫通孔16は、図14に示すように、本体110の外部と第一凹溝112及び第二凹溝122に連通し、冷却水を循環させる。つまり、貫通孔16は、本体110の側面110bと第一凹溝112とを連通するとともに、第一凹溝112及び第二凹溝122同士に連通する。貫通孔16の形状、数及び設置位置は、冷却水の種類や流量に応じて適宜変更可能である。
第一蓋部材130は、図14に示すように、本体110と同等の材料からなる板状部材である。第一蓋部材130の平面形状は、本体110の第一凹部111の平面形状と同等に形成されている。第一蓋部材130は、裏面130aと、側面130bとを備えている。第一蓋部材130は、第一凹部111に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第一凹溝112の開口部を封止する。
第二蓋部材140は、図15に示すように、本体110と同等の材料からなる板状部材である。第二蓋部材140の平面形状は、本体110の第二凹部121の平面形状と同等に形成されている。第二蓋部材140は、裏面140aと、側面140bとを備えている。第二蓋部材140は、第二凹部121に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第二凹溝122の開口部を封止する。
次に、本実施形態に係る伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、(1)第一凹部形成工程、(2)第一凹溝形成工程、(3)第二凹部形成工程、(4)第二凹溝形成工程、(5)貫通孔形成工程、(6)第一蓋部材配置工程、(7)表面側接合工程、(8)第二蓋部材配置工程、(9)裏面側接合工程を実行する。
なお、(1)第一凹部形成工程〜(6)第一蓋部材配置工程及び(8)第二蓋部材配置工程は、各部材の形状を除いては第一実施形態と略同等であるため、詳細な説明は省略する。
(7)表面側接合工程
表面側接合工程では、第一凹部111の側壁111bと、第一蓋部材130の側面130bとが突き合わされた突合部131に対して摩擦攪拌接合を行う。表面側接合工程では、図17の(a)に示すように、左回転させた小型回転ツールFを本体110の表面110aに設定した開始位置SM31に挿入した後、突合部131に沿って左回りに移動させる。小型回転ツールFを移動させることにより、表面側塑性化領域W1が形成される。第一蓋部材130の回りを一周させたら、既存の表面側塑性化領域W1と重複させた後、終了位置EM31で小型回転ツールFを離脱させる。
(9)裏面側接合工程
裏面側接合工程では、第二凹部121の側壁121bと、第二蓋部材140の側面140bとが突き合わされた突合部141に対して摩擦攪拌接合を行う。裏面側接合工程では、図17の(b)に示すように、左回転させた小型回転ツールFを本体110の裏面110cに設定した開始位置SM41に挿入した後、突合部141に沿って左回りに移動させる。小型回転ツールFを移動させることにより裏面側塑性化領域W2が形成される。第二蓋部材140の回りを一周させたら、既存の裏面側塑性化領域W2と重複させた後、終了位置EM41で小型回転ツールFを離脱させる。
表面側接合工程及び裏面側接合工程が終了すると、図18に示すように、本体110の表面側には、第一凹溝112と第一蓋部材130とからなる第一流体流路132が形成される。また、本体110の裏面側には、第二凹溝122と第二蓋部材140とからなる第二流体流路142が形成される。本実施形態では、第一凹溝112の肢部112B,112C,112Dの間に、第二凹溝122の肢部122B,122Cを入り込ませるように配設したため、伝熱板102の断面には、第一流体流路132と第二流体流路142とが交互に配設される。
以上説明した伝熱板102によれば、本体110に第一流体流路132及び第二流体流路142を密に配設することができるため、伝熱板102の熱交換効率を高めることができる。また、第一凹溝112の肢部112B,112C,112Dは所定の間隔をあけて設けられているため、摩擦攪拌接合を行う際の回転ツールの押圧力によって第一凹溝112が変形することなく製造することができる。同様に、第二凹溝122の肢部122B,122Cは所定の間隔をあけて設けられているため、摩擦攪拌接合を行う際の回転ツールの押圧力によって第二凹溝122が変形することなく製造することができる。
また、第一実施形態及び第二実施形態では、第一凹溝及び第二凹溝ごとに蓋部材を配設するため部品点数が増加するが、本実施形態では、表面又は裏面で各一の蓋部材で足りるため製造作業を容易に行うことができる。
[第四実施形態]
本発明の第四実施形態について説明する。図19に示すように、第四実施形態に係る伝熱板103は、一の第一凹部161の内部に複数の第一凹溝162が形成されており、複数の第一凹溝162を一枚の蓋部材180で封止している点で第一実施形態と相違する。第四実施形態では、第一実施形態と共通する部分においては詳細な説明は省略する。
本体150は、図19に示すように、表面150aに凹設された一の第一凹部161と、第一凹部161の底面に凹設された4つの第一凹溝162と、裏面150cに凹設された一の第二凹部171と、第二凹部171の底面に形成された4つの第二凹溝172と、第一凹溝162及び第二凹溝172に連通する貫通孔16とを有する。
第一凹部161は、平面視長方形を呈し、本体150の表面150aの中央に凹設されている。第一凹部161は、第一蓋部材180が配置される部位である。第一凹部161は、底面161aと、底面161aに立設する4つの側壁161bとを有する。側壁161bの深さは、第一蓋部材180の厚みと略同等になっている。
第一凹溝162は、平面視長円状を呈し、第一凹部161の底面161aに凹設されている。第一凹溝162は、冷却水が流れる部位である。第一凹溝162は、図20に示すように、底面162aと、底面162aに立設する壁面162bとを有する。第一凹溝162の深さは、伝熱板103の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では本体150の厚みの2/3程度に形成されている。
第二凹部171は、平面視長方形を呈し、本体150の裏面150cの中央に凹設されている。第二凹部171は、第二蓋部材190が配置される部位である。第二凹部171は、底面171aと、底面171aに立設する4つの側壁171bとを有する。側壁171bの深さは、第二蓋部材190の厚みと略同等になっている。
第二凹溝172は、平面視長円状を呈し、第一凹部171の底面171aに凹設されている。第二凹溝172は、冷却水が流れる部位である。第二凹溝172は、底面172aと、底面172aに立設する壁面172bとを有する。第二凹溝172の深さは、伝熱板103の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では、本体150の厚みの2/3程度に形成されている。
第一凹溝162及び第二凹溝172は、第一凹溝162及び第二凹溝172の長手方向が本体150の左右方向に対して直交し、所定の間隔をあけて配設されている。図20に示すように、第二凹溝172は、隣り合う第一凹溝162間の中央に配設されている。つまり、隣り合う第一凹溝162と第二凹溝172との距離は均等の間隔をあけて配設されている。
貫通孔16は、第一実施形態と同様に、本体150の側面150b、第一凹溝162及び第二凹溝172に連通し、平面視してジグザグに冷却水が流れるように形成されている。
第一蓋部材180は、図19に示すように、本体150と同等の材料からなる板状部材である。第一蓋部材180は、裏面180aと、側面180bとを備え、第一凹部161の平面形状と同等形状に形成されている。また、図20に示すように、第一蓋部材180の裏面180aには、第一凹溝162に対応する位置に複数のフィン180cが形成されている。フィン180cを備えることで、冷却水との接触面積が増加するため冷却効率を高めることができる。第一蓋部材180を第一凹部161に配置すると、第一蓋部材180の側面180bと、第一凹部161の側壁161bとが突き合わされて突合部181が形成される。また、図20に示すように、第一蓋部材180の裏面180aと、第一凹部161の底面161aとが重ね合わされる部分を重ね合わせ部151とする。第一蓋部材180は、第一凹部161に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第一凹溝162の開口部を封止する。
第二蓋部材190は、図20に示すように、本体150と同等の材料からなる板状部材である。第二蓋部材190は、裏面190aと、側面190bとを備え、第一凹部171の平面形状と同等に形成されている。また、第二蓋部材190の裏面190aには、第二凹溝172に対応する位置に複数のフィン190cが形成されている。第二蓋部材190を第二凹部171に配置すると、第二蓋部材190の側面190bと、第二凹部171の側壁171bとが突き合わされて突合部191が形成される。また、第二蓋部材190の裏面190aと、第一凹部171の底面171aとが重ね合わされる部分を重ね合わせ部152とする。第二蓋部材190は、第一凹部171に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第二凹溝172の開口部を封止する。
次に、伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、(1)第一凹部形成工程、(2)第一凹溝形成工程、(3)第二凹部形成工程、(4)第二凹溝形成工程、(5)貫通孔形成工程、(6)第一蓋部材配置工程、(7)表面側接合工程、(8)第二蓋部材配置工程、(9)裏面側接合工程を実行する。(1)第一凹部形成工程〜(6)第一蓋部材配置工程、(8)第二蓋部材配置工程は、各部材の形状を除いては第一実施形態と略同等であるため詳細な説明を省略する。
(7)表面側接合工程
表面側接合工程は、第一蓋部材180を本体150に固定する蓋部材固定工程と、重ね合わせ部151に対して摩擦攪拌接合を行う第一凹溝密封工程とを含む。
蓋部材固定工程では、図21の(a)に示すように、突合部181に沿って小型回転ツールFを移動させて摩擦攪拌接合を行う。具体的には、本体150の表面150aに設定された開始位置SM51に右回転させた小型回転ツールFを挿入した後、小型回転ツールFの軸芯と突合部181とを重ね合わせた状態で移動させる。小型回転ツールFの移動軌跡には表面側塑性化領域W11が形成される。突合部181に沿って一周したら、図21の(b)に示すように、既存の表面側塑性化領域W11と重複させて、表面150aに設定された終了位置EM51で小型回転ツールFを離脱させる。
第一凹溝密封工程では、図22の(a)に示すように、第一凹溝162の周囲に沿って大型回転ツールGを移動させて摩擦攪拌接合を行う。具体的には、本体150の表面150aに設定した開始位置SM61に右回転させた大型回転ツールGを挿入し、第一蓋部材180側に移動させる。表面側塑性化領域W11を横断したら、第一凹溝162の周囲に沿って大型回転ツールGを移動させて重ね合わせ部151に対して摩擦攪拌接合を行う。
大型回転ツールGによって、表面側塑性化領域W12が形成され、第一凹部161の底面161aと第一蓋部材180の裏面180a(図20参照)とが接合される。第一凹溝162回りを一周させたら、既存の表面側塑性化領域W12上に再度ルートを設定して、表面150aに設定した終了位置EM61で大型回転ツールGを離脱させる。同様の工程を他の第一凹溝162に対しても行う。つまり、図22の(b)に示すように、第一凹溝162の付近に設定された開始位置SM62乃至SM64から、終了位置EM62乃至EM64まで大型回転ツールGを移動させて摩擦攪拌接合を行う。
(9)裏面側接合工程
裏面側接合工程は、第二蓋部材190を本体150に固定する蓋部材固定工程と、重ね合わせ部152に対して摩擦攪拌接合を行う第二凹溝密封工程とを含む。
蓋部材固定工程では、図23に示すように、突合部191に沿って小型回転ツールFを移動させて摩擦攪拌接合を行う。具体的には、本体150の裏面150cに設定された開始位置SM71に右回転させた小型回転ツールFを挿入した後、小型回転ツールFの軸芯と突合部191とを重ね合わせた状態で移動させる。小型回転ツールFの移動軌跡には裏面側塑性化領域W21が形成される。突合部191に沿って一周したら、既存の表面側塑性化領域W11と重複させて、裏面150cに設定された終了位置EM71で小型回転ツールFを離脱させる。
第二凹溝密封工程では、図23に示すように、第二凹溝172の周囲に沿って大型回転ツールGを移動させて摩擦攪拌接合を行う。具体的には、本体150の裏面150cに設定した開始位置SM81に右回転させた大型回転ツールGを挿入し、第二蓋部材190側に移動させる。裏面側塑性化領域W21を横断したら、第二凹溝172の周囲に沿って大型回転ツールGを移動させて重ね合わせ部152に対して摩擦攪拌接合を行う。
大型回転ツールGによって、裏面側塑性化領域W22が形成され、第二凹部171の底面171aと第二蓋部材190の裏面190a(図20参照)とが接合される。第二凹溝172の回りを一周させたら、既存の裏面側塑性化領域W22上に再度ルートを設定して、裏面150cに設定した終了位置EM81で大型回転ツールGを離脱させる。同様の工程を他の第二凹溝172に対しても行う。つまり、図23に示すように、第二凹溝172付近に設定された開始位置SM82乃至SM84から、終了位置EM82乃至EM84まで大型回転ツールGを移動させて摩擦攪拌接合を行う。
表面側接合工程及び裏面側接合工程が終了すると、図24に示すように、本体150の表面側には、第一凹溝162と第一蓋部材180とからなる第一流体流路182が形成される。また、本体150の裏面側には、第二凹溝172と第二蓋部材190とからなる第二流体流路192が形成される。なお、表面側接合工程及び裏面側接合工程では、大型回転ツールGを本体150に挿入する位置に予め下穴(図3の(b)の符号P1参照)を形成してもよい。これにより、大型回転ツールGを押圧する際の挿入抵抗を低減することができる。
以上説明した伝熱板103によれば、本体150に第一流体流路182及び第二流体流路192を密に配設することができるため、伝熱板103の熱交換効率を高めることができる。また、表面側の隣り合う第一流体流路182同士、裏面側の隣り合う第二流体流路192同士は、比較的大きい間隔を確保することができる。これにより、摩擦攪拌接合の際の回転ツールの押圧力によって第一凹溝162及び第二凹溝172が変形することなく製造することができる。
また、本実施形態では、各蓋部材と本体150との突合部181,191の摩擦攪拌接合に加えて、第一凹溝162及び第二凹溝172の周囲において、重ね合わせ部151,152の摩擦攪拌接合を行う。これにより、第一凹溝162及び第二凹溝172の周囲において、重ね合わせ部151,152を密着させることができるため、伝熱板103の水密性及び気密性を高めることができる。また、各蓋部材を固定した状態で、第一凹溝密封工程及び第二凹溝密封工程を行うことができるため、各蓋部材の位置決めを精度よく行うことができる。
また、第一凹部及び第二凹部が複数個形成されていたり、その形状が複雑であったりすると、第一蓋部材及び第二蓋部材の個数及び形状もそれに伴って成形しなければならない。これによると、部品点数の増加や、蓋部材の位置決め作業が煩雑になる可能性がある。しかし、本実施形態によれば、第一凹部161及び第二凹部171の内部に第一凹溝162及び第二凹溝172を形成するとともに、第一凹部161及び第二凹部171の形状を平面視長方形とした。これにより、第一蓋部材180及び第二蓋部材190の形状を単純化することができるため、各蓋部材の成形及び位置決め作業を容易に行うことができる。
なお、本実施形態では、各凹部及び各蓋部材の形状を平面視長方形としたが、これに限定されるものではなく、円形、楕円形、他の多角形状であってもよい。
[第五実施形態]
本発明の第五実施形態について説明する。第五実施形態に係る伝熱板104は、第一凹溝212及び第二凹溝222が枠状を呈する点で第一実施形態と相違する。第五実施形態では、第一実施形態と共通する部分においては詳細な説明は省略する。
本体210は、図25及び図26に示すように、表面210aに凹設された第一凹部211と、第一凹部211の底面に凹設された第一凹溝212と、裏面210cに凹設された第二凹部221と、第二凹部221の底面に凹設された第二凹溝222と、第一凹溝212及び第二凹溝222に連通する貫通孔16とを有する。
第一凹部211は、図25の(a)及び(b)に示すように、平面視円形の枠状(リング状)を呈し、本体210の表面210aに凹設されている。第一凹部211は、第一蓋部材230が配置される部位である。第一凹部211は、底面211aと、底面211aに立設する側壁211bとを有する。
第一凹溝212は、平面視円形の枠状(リング状)を呈し、第一凹部211の底面211aの中央に凹設されている。第一凹溝212は、冷却水が流れる部位である。第一凹溝212は、底面212aと、底面212aに立設する壁面212bとを有する。
第二凹部221は、図26の(a)及び(b)に示すように、平面視円形の枠状(リング状)を呈し、本体210の裏面210cに凹設されている。第二凹部221は、第二蓋部材240が配置される部位である。第二凹部221は、底面221aと、底面221aに立設する側壁221bとを有する。
第二凹溝222は、平面視円形の枠状(リング状)を呈し、第二凹部221の底面221aの中央に凹設されている。第二凹溝222は、冷却水が流れる部位である。第二凹溝222は、底面222aと、底面222aに立設する壁面222bとを有する。第二凹溝222は、第一凹溝212よりも内側に形成されている。つまり、図27の(a)に示すように、本体210を平面視した場合において、第一凹溝212を投影した領域と、第二凹溝222を投影した領域とが重ならないように形成されている。
貫通孔16は、図25の(a)に示すように、本体210の外部と第一凹溝212及び第二凹溝222に連通し、冷却水を循環させる。貫通孔16は、本体210の左側の側面210bと第一凹溝212とを連通するとともに、右側の側面210bと第二凹溝222とを連通する。さらに、貫通孔16は、第一凹溝212と第二凹溝222とを連通する。
第一蓋部材230は、図25の(a)に示すように、本体210と同等の材料からなる板状部材である。第一蓋部材230は、平面視円形の枠状(リング状)を呈し、本体210の第一凹部211の平面形状と略同等に形成されている。第一蓋部材230は、裏面230aと、側面230bとを備えている。第一蓋部材230は、第一凹部211に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第一凹溝212の開口部を封止する。
第二蓋部材240は、図26の(a)に示すように、本体210と同等の材料からなる板状部材である。第二蓋部材240は、平面視円形の枠状(リング状)を呈し、本体210の第二凹部221の平面形状と略同等に形成されている。第二蓋部材240は、裏面240aと、側面240bとを備えている。第二蓋部材240は、第二凹部221に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第二凹溝222の開口部を封止する。
次に、本実施形態に係る伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法は、(1)第一凹部形成工程、(2)第一凹溝形成工程、(3)第二凹部形成工程、(4)第二凹溝形成工程、(5)貫通孔形成工程、(6)第一蓋部材配置工程、(7)表面側接合工程、(8)第二蓋部材配置工程、(9)裏面側接合工程を実行する。
なお、(1)第一凹部形成工程〜(6)第一蓋部材配置工程及び(8)第二蓋部材配置工程は、各部材の形状を除いては第一実施形態と略同等であるため、詳細な説明は省略する。
(7)表面側接合工程
表面側接合工程では、第一凹部211の側壁211bと、第一蓋部材230の側面230bとが突き合わされた突合部231,231に対して摩擦攪拌接合を行う。表面側接合工程では、図27の(a)に示すように、右回転させた小型回転ツールFを突合部231上に設定した開始位置SM91に挿入した後、突合部231に沿って右回りに移動させる。小型回転ツールFを移動させることにより、表面側塑性化領域W1が形成される。第一蓋部材230の回りを一周させたら、既存の表面側塑性化領域W1と重複させた後、任意に設定した終了位置で小型回転ツールFを離脱させる。
(9)裏面側接合工程
裏面側接合工程では、第二凹部221の側壁221bと、第二蓋部材240の側面240bとが突き合わされた突合部241,241に対して摩擦攪拌接合を行う。裏面側接合工程では、図27の(b)に示すように、右回転させた小型回転ツールFを突合部241上に設定した開始位置SM92に挿入した後、突合部241に沿って右回りに移動させる。小型回転ツールFを移動させることにより、裏面側塑性化領域W2が形成される。第二蓋部材240の回りを一周させたら、既存の裏面側塑性化領域W2と重複させた後、任意に設定した終了位置で小型回転ツールFを離脱させる。
表面側接合工程及び裏面側接合工程が終了すると、図28に示すように、本体210の表面側には、第一凹溝212と第一蓋部材230とからなる第一流体流路232が形成される。また、本体210の裏面側には、第二凹溝222と第二蓋部材240とからなる第二流体流路242が形成される。
以上説明した伝熱板104によれば、表面側にリング状の第一凹溝212を、裏面側にリング状の第二凹溝222を設けるとともに、第二凹溝222を第一凹溝212の内側に形成することで、大きい断面積を備えた第一流体流路232及び第二流体流路242を密に配設することができる。これにより、伝熱板104の熱交換効率を高めることができる。また、図28に示すように、表面側に形成された第一凹溝212,212及び裏面側に形成された第二凹溝222,222は、所定の間隔をあけて設けられているため、摩擦攪拌接合の際の回転ツールの押圧力によって隣接する第一凹溝212及び第二凹溝222が変形することなく製造することができる。
なお、本実施形態では、表面側に第一凹溝212を一つ設け、裏面側に第二凹溝222を一つ設けたが、それぞれ複数個配設してもよい。第一凹溝及び第二凹溝を複数個配設する場合は、形成される伝熱板の断面形状において、第一凹溝と第二凹溝とが交互に配設されるようにすることが望ましい。
[第六実施形態]
本発明の第六実施形態について説明する。第六実施形態に係る伝熱板105は、平面視矩形の第一凹部261の内部に枠状の第一凹溝262が形成されている点で第五実施形態と相違する。第六実施形態では、第五実施形態と共通する部分においては詳細な説明は省略する。
本体250は、図29及び図31に示すように、表面250aに凹設された第一凹部261と、第一凹部261の底面に凹設された枠状の第一凹溝262と、裏面250cに凹設された第二凹部271と、第二凹部271の底面に凹設された枠状の第二凹溝272と、第一凹溝262及び第二凹溝272に連通する貫通孔16と、を有する。
第一凹部261は、平面視矩形を呈し、本体250の表面250aの中央に凹設されている。第一凹部261は、第一蓋部材280が配置される部位である。第一凹部261は、底面261aと、底面261aに立設する4つの側壁261bとを有する。側壁261bの深さは、第一蓋部材280の厚みと略同等になっている。底面261aは、第一凹溝262の内側と外側の両方に形成される。
第一凹溝262は、平面視矩形の枠状を呈し、第一凹部261の底面261aの中央に凹設されている。第一凹溝262は、冷却水が流れる部位である。第一凹溝262は、図30に示すように、底面262aと、底面262aに立設する壁面262bとを有する。第一凹溝262の深さは、伝熱板105の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実実施形態では、本体250の厚みの2/3程度に形成されている。
第二凹部271は、図31に示すように、平面視矩形を呈し、本体250の裏面250cの中央に凹設されている。第二凹部271は、第二蓋部材290が配置される部位である。第二凹部271は、底面271aと、底面271aに立設する4つの側壁271bとを有する。側壁271bの深さは、第二蓋部材290の厚みと略同等になっている。底面271aは、第二凹溝272の内側と外側の両方に形成されている。
第二凹溝272は、平面視矩形の枠状を呈し、第二凹部271の底面271aの中央に凹設されている。第二凹溝272は、冷却水が流れる部位である。第二凹溝272は、図30に示すように、底面272aと、底面272aに立設する壁面272bとを有する。第二凹溝272は、第一凹溝262の内側に配設されている。第二凹溝272の深さは、伝熱板105の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では、本体250の厚みの2/3程度に形成されている。
貫通孔16は、図29に示すように、本体250の外部と第一凹溝262及び第二凹溝272に連通し、冷却水を循環させる。貫通孔16は、本体250の左側の側面250bと第一凹溝262とを連通するとともに、右側の側面250bと第一凹溝262とを連通する。さらに、貫通孔16は、第一凹溝262の内側と第二凹溝272とを連通する。
第一蓋部材280は、図29に示すように、本体250と同等の材料からなる板状部材である。第一蓋部材280の平面形状は、本体250の第一凹部261の平面形状と同等に形成されている。第一蓋部材280は、裏面280aと、側面280bとを備えている。図30に示すように、第一蓋部材280を第一凹部261に配置すると、第一蓋部材280の側面280bと、第一凹部261の側壁261bとが突き合わされて突合部281が形成される。また、第一蓋部材280の裏面280aと、第一凹部261の底面261aとが重ね合わされる部分を重ね合わせ部251とする。重ね合わせ部251は、第一凹溝262の内側と外側の両方に形成される。第一蓋部材280は、第一凹部261に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第一凹溝262の開口部を封止する。
第二蓋部材290は、図31に示すように、本体250と同等の材料からなる板状部材である。第二蓋部材290の平面形状は、本体250の第一凹部271の平面形状と同等に形成されている。第二蓋部材290は、裏面290aと、側面290bとを備えている。図30に示すように、第二蓋部材290を第二凹部271に配置すると、第二蓋部材290の側面290bと、第二凹部271の側壁271bとが突き合わされて突合部291が形成される。また、第二蓋部材290の裏面290aと、第二凹部271の底面271aとが重ね合わされた部分を重ね合わせ部252とする。重ね合わせ部252は、第二凹溝272の内側と外側の両方に形成される。第二蓋部材290は、第二凹部271に配置された後に、摩擦攪拌接合によって第二凹溝272の開口部を封止する。
次に、本実施形態に係る伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法は、(1)第一凹部形成工程、(2)第一凹溝形成工程、(3)第二凹部形成工程、(4)第二凹溝形成工程、(5)貫通孔形成工程、(6)第一蓋部材配置工程、(7)表面側接合工程、(8)第二蓋部材配置工程、(9)裏面側接合工程を実行する。
なお、(1)第一凹部形成工程〜(6)第一蓋部材配置工程及び(8)第二蓋部材配置工程は、各部材の形状を除いては第一実施形態と略同等であるため、詳細な説明は省略する。
(7)表面側接合工程
表面接合工程では、第一蓋部材280を本体250に固定する蓋部材固定工程と、重ね合わせ部251に対して摩擦攪拌接合を行う第一凹溝密封工程とを含む。
第一蓋部材固定工程では、第一凹部261の側壁261bと、第一蓋部材280の側面280bとの突合部281に沿って小型回転ツールFを移動させて摩擦攪拌接合を行う。具体的には、図32の(a)に示すように、本体250の表面250aにおいて、突合部281の外側に設定された開始位置SM94に右回転させた小型回転ツールFを挿入した後、小型回転ツールFの軸芯と突合部281とを重ね合わせた状態で移動させる。小型回転ツールFの移動軌跡には表面側塑性化領域W31が形成される。突合部281に沿って一周したら、図32の(a)に示すように、既存の表面側塑性化領域W31と重複させて、表面250aに設定された終了位置EM94で小型回転ツールFを離脱させる。
第一凹溝密封工程では、図32の(a)に示すように、第一凹溝262の内側と外側において、大型回転ツールGを移動させて摩擦攪拌接合を行う。具体的には、本体250の表面250aにおいて、突合部281の外側に設定した開始位置SM95に右回転させた大型回転ツールGを挿入し、第一蓋部材280側に移動させる。表面側塑性化領域W31を横断したら、第一凹溝262の周囲に沿って大型回転ツールGを移動させて重ね合わせ部251に対して摩擦攪拌接合を行う。
大型回転ツールGによって、表面側塑性化領域W32が形成され、第一凹部261の底面261aと、第一蓋部材280の裏面280a(図33参照)とが接合される。第一凹溝262の回りを一周させたら、既存の表面側塑性化領域W32,W31を横断させて、終了位置EM95で大型回転ツールGを離脱させる。
さらに、第一凹溝密封工程では、図32の(a)に示すように、第一凹溝262の内側において、摩擦攪拌接合を行う。具体的には、第一蓋部材280の中央に設定した開始位置SM96に右回転させた大型回転ツールGを挿入し、第一凹溝262の内側の周囲に沿って大型回転ツールGを移動させて重ね合わせ部251に対して摩擦攪拌接合を行う。第一凹溝262の内周を一周したら、終了位置EM96で大型回転ツールGを離脱させる。
(9)裏面側接合工程
裏面側接合工程は、第二蓋部材290を本体250に固定する蓋部材固定工程と、重ね合わせ部252に対して摩擦攪拌接合を行う第二凹溝密封工程とを含む。
蓋部材固定工程では、第二凹部271の側壁271bと、第二蓋部材290の側面290bとの突合部291に沿って小型回転ツールFを移動させて摩擦攪拌接合を行う。具体的には、図32の(b)に示すように、本体250の裏面250cに設定された開始位置SM97に小型回転ツールFを挿入した後、小型回転ツールFの軸芯と突合部291とを重ね合わせた状態で移動させる。小型回転ツールFによって、裏面側塑性化領域W41が形成される。
第二蓋溝密封工程では、図32の(b)に示すように、第二凹溝272の内側と外側において、大型回転ツールGを移動させて摩擦攪拌接合を行う。具体的には、本体250の裏面250cにおいて、突合部291の外側に設定した開始位置SM98に右回転させた大型回転ツールGを挿入し、第二蓋部材290側に移動させる。裏面側塑性化領域W41を横断したら、第二凹溝272の周囲に沿って大型回転ツールGを移動させて重ね合わせ部252に対して摩擦攪拌接合を行う。
大型回転ツールGによって、裏面側塑性化領域W42が形成され、第二凹部271の底面271aと、第二蓋部材290の裏面290a(図33参照)とが接合される。第二凹溝272の回りを一周させたら、既存の裏面側塑性化領域W42,W41を横断させて、終了位置EM98で大型回転ツールGを離脱させる。
さらに、第二凹溝密封工程では、図32の(b)に示すように、第二凹溝272の内側において、摩擦攪拌接合を行う。具体的には、第二蓋部材290の中央に設定した開始位置SM99に右回転させた大型回転ツールGを挿入し、第二凹溝272の内側の周囲に沿って大型回転ツールGを移動させて重ね合わせ部252に対して摩擦攪拌接合を行う。第二凹溝272の内周を一周したら、終了位置EM99で大型回転ツールGを離脱させる。
表面側接合工程及び裏面側接合工程が終了すると、図33に示すように、本体250の表面側には、第一凹溝262と第一蓋部材280とからなる第一流体流路282が形成される。また、本体250の裏面側には、第二凹溝272と第二蓋部材290とからなる第二流体流路292が形成される。
以上説明した伝熱板105によれば、表面側に枠状の第一凹溝262を、裏面側に枠状の第二凹溝272を設けるとともに、第二凹溝272を第一凹溝262の内側に形成することで、大きい断面積を備えた第一流体流路282及び第二流体流路292を密に配設することができる。これにより、伝熱板105の熱交換効率を高めることができる。また、図33に示すように、表面側に形成された第二凹溝262,262及び裏面側に形成された第二凹溝272,272は、所定の間隔をあけて設けられているため、摩擦攪拌接合の際の回転ツールの押圧力によって隣接する第一凹溝262及び第二凹溝272が変形することなく製造することができる。
なお、本実施形態では、表面側に第一凹溝262を一つ設け、裏面側に第二凹溝272を一つ設けたが、それぞれ複数個配設してもよい。第一凹溝及び第二凹溝を複数個配設する場合は、形成される伝熱板の断面形状において、第一凹溝と第二凹溝とが交互に配設されるようにすることが望ましい。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、第一凹溝、第二凹溝、第一凹部、第二凹部、第一蓋部材及び第二蓋部材の形状、個数は、前記した形態に限定されるものではない。また、第一凹溝及び第二凹溝は、本実施形態では本体の厚みの2/3程度に形成したが、少なくとも本体の厚みの半分以上の大きさを備えていることが好ましい。
また、本実施形態では、本体を平面視した場合に、第一凹溝を投影した領域と第二凹溝を投影した領域とが重ならないように本体を形成したが、これに限定されるものではない。第一凹溝及び第二凹溝の深さを本体の厚みの半分よりも浅く設定するとともに、本体を平面視した場合に、第一凹溝を投影した領域と第二凹溝を投影した領域とが重なるように形成してもよい。