JP2010241770A - イソインドリン中間誘導体の合成方法 - Google Patents

イソインドリン中間誘導体の合成方法 Download PDF

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Masahito Nishimura
雅人 西村
Norimitsu Sugawara
紀充 菅原
Yasuko Nigorikawa
泰子 濁川
Norito Inomiya
憲人 伊野宮
Koji Ueda
浩司 植田
Akihisa Ishii
章央 石井
Noriaki Kanemitsu
範昌 金光
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Abstract

【課題】最終化合物であるイソインドリン最終誘導体を、工業的かつ経済的に量産可能とする、イソインドリン中間誘導体及びイソインドリン最終誘導体の全合成経路を提供する。
【解決手段】インダンジカルボン酸と下記式(a)
Figure 2010241770

との反応後、更にアニリンを反応させて得られるイソインドリン中間誘導体の合成方法。
Figure 2010241770

【選択図】なし

Description

本発明は、イソインドリン中間誘導体の合成方法に関する。
中枢神経系に作用する薬剤としてこれまでにイソインドリン骨格を有する多くの化合物が知られている。これらの多くの化合物のうち麻酔作用を発現する化合物としては、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1に記載されたイソインドリン誘導体が有用であることが示されている。
イソインドリン誘導体の合成経路について特許文献1、特許文献2及び非特許文献1では、下記に示すように、ジカルボン酸無水物にアミンを反応させた後、等モル量以上の水素化ホウ素ナトリウムを用いてカルボニル基を還元し、さらにWittig試薬で炭素骨格を導入するとともに、次いでエステルを加水分解することでイソインドリン誘導体の前駆体として重要な中間体を合成している。
Figure 2010241770
上述のように特許文献1、特許文献2及び非特許文献1においては、一応の合成経路は確立されているものの、合成スケールとしては実験室レベルであり、工業的かつ経済的に最終化合物を充分に量産可能な合成経路が確立されているとはいえず、そのような合成経路を含めた全合成ルートの確立が望まれていた。
また、抗不安剤に有用とされる縮合ピロリノン誘導体を開示する特許文献3においても、上記合成経路における式(V)で表される化合物から式(II−1a)で表される化合物までの反応経路が開示されている。しかし、その反応経路では4つの工程を経るように合成されており、やはり、経済的にかつ量産可能とはいえない合成経路設計であった。
特開2004−189733号公報 特開2006−76913号公報 特開昭58−189163号公報
Chem.Phar.Bull.,55(12),1682−1688(2007)
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、最終化合物であるイソインドリン最終誘導体を工業的かつ経済的に量産可能なイソインドリン中間誘導体及びイソインドリン最終誘導体の全合成経路を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、ジカルボン酸無水物に特定のWittig試薬を反応させ、その後接触水素還元を行うことにより、工程数を1つ削減することができるとともに、二工程を1バッチで行い反応を連続的に進め得る工程を設けることでさらに反応手順を簡素化することができる経済的かつ効率的な全合成経路を見出し、本発明を完成した。
すなわち、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係るイソインドリン中間誘導体の合成方法は、
式(5):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸無水物と下記式(a):
Figure 2010241770
(式(a)中、Phはフェニル基、Bnはベンジル基を示す)
で示されるWittig試薬とを反応させて、式(6):
Figure 2010241770
(式(6)中、Bnは式(a)と同じ置換基を示す)
で示されるベンジルエステル誘導体を得る工程;
上記ベンジルエステル誘導体とアニリンとを反応させて、式(7):
Figure 2010241770
(式(7)中、Bnは式(a)と同じ置換基を示す)
で示される第1のイソインドリン誘導体を得る工程;
上記第1のイソインドリン誘導体を第1の遷移金属触媒の存在下、接触水素化し、式(8):
Figure 2010241770
で示される第2のイソインドリン誘導体を得る工程;並びに
上記第2のイソインドリン誘導体を光学活性なフェニルエチルアミン、光学活性なナフチルエチルアミン又は光学活性なp−トルイルエチルアミンを用いた光学分割に付し、式(9):
Figure 2010241770
で示されるイソインドリン中間誘導体を得る工程を含むことを特徴とする。
本発明のイソインドリン中間誘導体の合成方法において、上記第1の遷移金属触媒は、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の周期表第VIII族金属(第8族、第9族、第10族元素)、又は、これらの金属を活性炭、アルミナ等に担持させた触媒がよく、この中でもパラジウム−炭素(Pd−C)であることが望ましい。
本発明のイソインドリン中間誘導体の合成方法では、金属触媒の存在下、式(1):
Figure 2010241770
で示されるインダンとハロゲンとを反応させて、式(2):
Figure 2010241770
(式(2)中、X及びYはそれぞれ独立して、Cl、Br又はIを示す)
で示されるジハロゲノインダンを得る工程;
第2の遷移金属触媒及び塩基の存在下、上記ジハロゲノインダンと一酸化炭素及び水とを反応させ、式(4):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸を得る工程;並びに
上記インダンジカルボン酸と無水酢酸とを反応させて、式(5):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸無水物を得る工程、又は、
金属触媒の存在下、式(1):
Figure 2010241770
で示されるインダンとハロゲンとを反応させて、式(2):
Figure 2010241770
(式(2)中、X及びYはそれぞれ独立して、Cl、Br又はIを示す)
で示されるジハロゲノインダンを得る工程;
第3の遷移金属触媒及び塩基の存在下、上記ジハロゲノインダンと、一酸化炭素及びアルコールとを反応させ、式(3):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸アルキルエステルを得る工程
(式(3)中、Rは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す);
上記インダンジカルボン酸アルキルエステルを加水分解して、式(4):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸を得る工程;並びに
上記インダンジカルボン酸と無水酢酸とを反応させて、式(5):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸無水物を得る工程をさらに含むことが望ましい。
本発明のイソインドリン中間誘導体の合成方法において、上記金属触媒は、鉄であり、上記第2の遷移金属触媒は、酢酸パラジウムであることが望ましい。
本発明のイソインドリン中間誘導体の合成方法では、上記第3の遷移金属触媒は、酢酸パラジウムであることが望ましい。
本発明には、上記イソインドリン中間誘導体の合成方法により得られる上記イソインドリン中間誘導体と塩素化剤とを反応させ、得られる生成物とN−メチルピペラジンとを反応させることにより、式(10):
Figure 2010241770
で示されるイソインドリン最終誘導体を合成するイソインドリン最終誘導体の合成方法も含まれる。
(第一実施形態)
以下、本発明のイソインドリン中間誘導体及びイソインドリン最終誘導体の合成方法の実施形態である第一実施形態を説明する。下図に、出発原料である式(1)で表されるインダンから最終生成物である式(10)で表されるイソインドリン最終誘導体までの全合成経路を示す。
Figure 2010241770
第一実施形態では、出発原料であるインダンからインダンジカルボン酸無水物を得るのに、式(3)で表されるインダンジカルボン酸アルキルエステルを経た経路(すなわち、式(2)で表されるジハロゲノインダン;式(3)で表されるインダンジカルボン酸アルキルエステル;次いで、式(4)で表されるインダンジカルボン酸の順で進行する経路)ではなく、第2の遷移金属触媒、塩基及び水の存在下での一酸化炭素の挿入反応を経由した合成経路(式(2)で表されるジハロゲノインダン;式(4)で表されるインダンジカルボン酸の順で進行する経路)を採用している。以下、工程順に説明する。
まず本実施形態では、金属触媒の存在下、式(1):
Figure 2010241770
で示されるインダンとハロゲンとを反応させて、式(2):
Figure 2010241770
(式(2)中、X及びYはそれぞれ独立して、Cl、Br又はIを示す)
で示されるジハロゲノインダンを得る。この工程を第1工程とする。
出発原料であるインダンは工業的に入手が容易であり、市販品を購入してこれを従来公知の精製法にて精製して用いればよい。このインダンのジハロゲン化は、例えば、M.J.Camenzind et al.,J.Heterocyclic Chem.,1985,22,575に記載された方法を参考にして行うことができる。すなわち、金属触媒の存在下、クロロホルム中に投入したインダンをハロゲンと遮光氷冷下にて反応させることにより式(2)で表されるジハロゲノインダンが得られる。
金属触媒としては特に限定されないものの、例えば、鉄、アルミニウム、塩化鉄や臭化鉄等のハロゲン化鉄、塩化アルミニウムや臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム等を好適に用いることができる。この中でも、特に鉄が好ましい。
XYで表されるハロゲンとしては、例えば、X=BrかつY=BrであるBr、X=IかつY=IであるI、X=BrかつY=Iのインターハロゲン化合物であるBrI等が挙げられる。これらハロゲンのうち、入手容易性や後工程でのベンゼン環からの脱離の容易性を考慮するとBrが好ましい。
第1工程で用いる溶媒としては上述のクロロホルムの他、ジクロロメタン、四塩化炭素等の塩素系溶媒、酢酸等が挙げられる。
ハロゲン化の反応温度(反応系内温度)としては、反応が急激に進行することを抑制するように氷冷下の温度であればよく、好ましくは、0〜10℃であり、より好ましくは0〜5℃である。
次いで、第2の遷移金属触媒及び塩基の存在下、第1工程で得られた式(2):
Figure 2010241770
(式(2)中、X及びYは上述と同義)
で示されるジハロゲノインダンと一酸化炭素及び水とを反応させることで、式(4):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸を得ることができる。この工程を第2工程とする。
第2の遷移金属触媒は周期表第VIII族金属(第8族、第9族、第10族元素)であり、具体的にはニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。また、これらの金属を錯体の形態にした触媒がより好ましく、特にパラジウム錯体が好ましい。
上記パラジウム錯体としては、例えば、酢酸パラジウム(Pd(CHCO)、塩化パラジウム(PdCl)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh;式中、Phはフェニル基を示す)等を好適に用いることができる。これら列挙した遷移金属触媒のうち、入手容易性や工業的に量産するには経済的であることが必要であることを考慮すると、酢酸パラジウムが特に好ましい。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の第三アミン類、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩、あるいは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられる。なかでも、第3アミン類が好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
触媒の活性化及び安定化のためにホスフィン配位子を反応系内に共存させるとよい。ホスフィン配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリエチルホスフィンなどが挙げられる。
第2工程では、一酸化炭素存在下でのベンゼン環上のハロゲンのカルボン酸への変換に水の存在が必須となっている。この変換は水が存在していれば進行するものの、水溶性の有機溶媒を共存させることによりベンゼン環への水の接近が容易となって反応速度が増加し、反応に要する時間や収率が向上するので望ましい。水溶性の有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル溶媒;アセトン等のケトン溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリジノン等の含窒素溶媒;γ−ブチロラクトン等のラクトン溶媒;炭酸ジメチル等の炭酸エステル溶媒が挙げられる。これらの水溶性の有機溶媒のうち特に好ましいのはテトラヒドロフランである。
次に、上記インダンジカルボン酸と無水酢酸とを反応させて、式(5):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸無水物を得る工程を行う。この工程を第3工程とする。
第3工程では、無水酢酸の存在下でインダンジカルボン酸を熱するとジカルボン酸部分の分子内脱水反応が生じて、インダンジカルボン酸無水物が得られる。脱水反応が終了した後にそのまま生成物を濾取してもよいが、反応後に氷冷してから生成物を濾取するのが望ましい。氷冷することにより生成物であるインダンジカルボン酸無水物の溶解度が低下して当該無水物が析出しやすくなって、収率が向上するからである。
次いで、第3工程に続いて第4工程を行う。第4工程では、式(5):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸無水物と下記式(a):
Figure 2010241770
(式(a)中、Phはフェニル基、Bnはベンジル基を示す)
で示されるWittig試薬とを反応させて、式(6):
Figure 2010241770
(式(6)中、Bnは式(a)と同じ置換基を示す)
で示されるベンジルエステル誘導体を得る。
第4工程においては、Wittig試薬によるカルボニル位の炭素への炭素−炭素結合の導入にベンジル基を有するWittig試薬を用いることが必須となっている。この理由としては、第4工程にて導入したベンジル基を接触水素還元して脱保護する後工程において、ベンジル基以外の置換基では脱保護されないことが挙げられる。すなわち、ベンジル基以外の置換基では、この置換基を脱保護してカルボン酸に変換するために、別途加水分解して脱保護する工程が必要となり、従来の工程数と変わらないという結果となってしまう。また、加水分解工程を別途設けることで収率の低下のおそれもある。第4工程においてベンジル基を有する特定のWittig試薬を用いることにより、後述する第6工程における第1のイソインドリン誘導体のオレフィン部分の還元と、ベンジルエステル部分の脱保護とを同時に行うことが可能となる。このように、当該Wittig試薬の使用により上記のような従来の工程数と変わらないという事態を回避することができ、工程数の削減及び収率の向上を達成することができる。
なお、第4工程に続く第5工程としてのアニリンによるアミド結合の導入工程を行う前に、上記ベンジルエステル誘導体を単離及び精製してから第5工程の反応を行ってもよいが、単離及び精製を行うことなくそのまま第5工程に移ることが望ましい。この理由としては、反応器から生成物を抜き出したり、生成物を単離したりする手間を省くことができ、操作を簡素化することができることが挙げられる。
次に、第4工程の生成物である上記ベンジルエステル誘導体とアニリンとを反応させて、式(7):
Figure 2010241770
(式(7)中、Bnは式(a)と同じ置換基を示す)
で示される第1のイソインドリン誘導体を得る第5工程を行う。
第5工程では、酸を触媒として環状エステル結合の部分をアニリンにより環状アミド結合に変換する反応を行う。上述のように、第5工程を第4工程に続いて連続的に行っていることから、第5工程の生成物である第1のイソインドリン誘導体の収率を向上させることができる。
次いで、上記第1のイソインドリン誘導体を第1の遷移金属触媒の存在下、接触水素化し、式(8):
Figure 2010241770
で示される第2のイソインドリン誘導体を得る第6工程を行う。
第6工程では、第1のイソインドリン誘導体のオレフィン部分の還元とベンジルエステル部分の脱保護とを第1の遷移金属触媒を用いた反応により同一工程内で並行して行うことができる。従来では、(1)インダンジカルボン酸無水物からのアミド化、(2)水素化ホウ素ナトリウムによるカルボニル基の還元工程とともに、(3)炭素−炭素結合導入後の(4)エステル加水分解工程の四工程を行う必要があった。これに対し、本実施形態では、(1)インダンジカルボン酸無水物への炭素−炭素結合導入、(2)アミド化、(3)オレフィンの還元及びベンジルエステルの脱保護の三工程で目的とする第2のイソインドリン誘導体を得ることができる。このように、本実施形態の第6工程を設けることによりオレフィンの還元及びベンジルエステルの脱保護を一工程にて進めることができ、従来の工程に比して一工程を削減することができる。
このように、第1の遷移金属触媒の存在下での接触水素化により、オレフィン部分の還元とともにベンジル基の脱保護が可能となる。しかし、上述のように、ベンジル基以外の置換基では脱保護が進行せず、別途加水分解工程が必要となることから、第5工程でのWittig試薬にはベンジル基の存在が重要となる。
第1の遷移金属触媒としては接触水素化が可能な触媒であれば特に限定されず、例えば、パラジウム、白金、ロジウム等の周期表第VIII族(第8族、第9族、第10族元素)金属又はこれらの錯化合物が挙げられる。このうち、入手容易性や還元力の程度等を考慮すると、パラジウムが好ましい。さらに、これらの金属触媒を活性炭やアルミナ等に担持させて表面積を向上させた触媒を用いてもよい。第6工程における第1の遷移金属触媒に好適な触媒としては、パラジウム−炭素(Pd−C)を用いることができる。
第6工程における溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル等が挙げられる。これらの溶媒のうちでは、次の第7工程での反応手順の容易性を考慮すると、メタノールが好ましい。
ここで、第7工程に供するために、生成された第2のイソインドリン誘導体の単離、精製を行ってもよい。しかし、第6工程の反応直後において、上記第2のイソインドリン誘導体のメタノールへの溶解度は低くなっていることから、第2のイソインドリン誘導体は溶媒中に析出してしまっている。第6工程の反応直後では、生成物である第2のイソインドリン誘導体の他、第1の遷移金属触媒もメタノール中に固体として存在していることから、系内ではこれらの懸濁物として存在している。このような状態から生成物を収率良く分離、回収することは困難であるので、第6工程の反応後の反応系を維持しながら次工程に移り、生成物を所定の光学活性なアミンとの塩形成により可溶化し、可溶化した生成物と第1の遷移金属触媒とを固液分離してから、その後上記光学活性なアミンを取り除くことで、目的の生成物を得ることが望ましい。
第6工程で得られる第2のイソインドリン誘導体はラセミ体として得られるので、第2のイソインドリン誘導体と光学活性なアミンとの塩を形成させ、光学的に分割する第7工程を行うことで、イソインドリン中間誘導体を得ることができる。
第7工程では、上記第2のイソインドリン誘導体を光学活性なフェニルエチルアミン、光学活性なナフチルエチルアミン又は光学活性なp−トルイルエチルアミンを用いた光学分割に付し、式(9):
Figure 2010241770
で示されるイソインドリン中間誘導体を得る。
第7工程では、第2のイソインドリン誘導体と塩を形成させる光学活性なアミンとして、光学活性なフェニルエチルアミン、光学活性なナフチルエチルアミン又は光学活性なp−トルイルエチルアミンを用いている。まず、第2のイソインドリン誘導体におけるカルボン酸部分と光学活性なアミンとを反応させて、光学活性なアミン塩の混合物とし、次いで、これらの溶媒中での溶解度の差を利用して、光学的に分割する。そして、得られた光学活性なアミン塩に酸を加え遊離酸とすることで、目的とするイソインドリン中間誘導体が得られる。
溶媒への溶解度が低い第2のイソインドリン誘導体を光学活性なアミンとの塩とすることで、R体アミン塩とS体アミン塩との溶解度の差を利用した光学分割に供することができる。また、第2のイソインドリン誘導体の光学活性なアミン塩とすることで溶解度が増し、パラジウム−炭素等の第1の遷移金属触媒との分離を容易にすることができる。
得られたアミン塩の光学分割の手法としては、目的物であるイソインドリン中間誘導体の光学活性なアミン塩を種結晶ないしは析出誘導剤として溶媒中に投入し、より目的生成物のみの析出を促進させるようにした手法を好適に採用することができる。もちろんR体アミン塩とS体アミン塩との溶解度の差のみを利用して光学分割をすることも可能であるものの、目的物であるイソインドリン中間誘導体の光学活性なアミン塩を種結晶として添加することで目的とする光学活性体の析出が促進されることになることから、反応時間や収率の面で有利である。
このようにして光学分割されたイソインドリン中間誘導体の光学活性なアミン塩に酸を加え遊離酸とすることで目的のイソインドリン中間誘導体を得ることができる。酸としては、例えば、塩酸や硫酸等の強酸が挙げられる。
本実施形態では、さらに、上記イソインドリン中間誘導体の合成方法により得られる上記イソインドリン中間誘導体と塩素化剤とを反応させ、得られる生成物とN−メチルピペラジンとを反応させることにより、式(10):
Figure 2010241770
で示されるイソインドリン最終誘導体を合成する第8工程を行う。
第8工程では、上記イソインドリン中間誘導体を塩素化剤を用いて酸塩化物とすることで、N−メチルピペラジンとの反応性を高めている。塩素化剤としては特に限定されず、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リンを好適に用いることができる。
得られた酸塩化物とN−メチルピペラジンとを反応させることにより立体障害の小さいN原子側でアミド結合が生成されて、最終目的物であるイソインドリン最終誘導体を得ることができる。
以下に、本実施形態のイソインドリン中間誘導体の合成方法及びイソインドリン最終誘導体の合成方法の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態の合成方法では、第4工程において、インダンジカルボン酸無水物のカルボニル基への炭素−炭素結合の導入にベンジル基を有するWittig試薬を用いている。これにより、その後の第6工程での接触水素化を行うことで、ベンジル基の脱保護とオレフィンの還元とを同一工程にて行うことができ、一工程を削減することができる。
(2)また、第4工程から第5工程への移行、及び、第6工程から第7工程への移行の際に、第4工程及び第6工程における反応生成物をそれぞれ単離、精製することなくそのまま第5工程及び第7工程の出発物質としているので、反応生成物の単離工程を削減することができ、反応手順の効率化を図ることができる。
(第二実施形態)
本実施形態のイソインドリン中間誘導体の合成方法では、出発原料であるインダンからインダンジカルボン酸無水物を得るのに第3の遷移金属触媒、塩基及びアルコールの存在下での一酸化炭素の挿入反応によりエステル体を生成し、続く加水分解によりインダンジカルボン酸を得るという経路を採用した手順について、工程順に説明する。この経路は、第一実施形態において示した全合成経路のうち、式(3)で表されるインダンジカルボン酸アルキルエステルを経由する経路(すなわち、式(2)で表されるジハロゲノインダン;式(3)で表されるインダンジカルボン酸アルキルエステル;次いで、式(4)で表されるインダンジカルボン酸の順で進行する経路)である。なお、その他の工程については第一実施形態と同じであるので、第一実施形態と異なる工程のみ説明する。
本実施形態では、金属触媒の存在下、式(1):
Figure 2010241770
で示されるインダンとハロゲンとを反応させて、式(2):
Figure 2010241770
(式(2)中、X及びYはそれぞれ独立して、Cl、Br又はIを示す)
で示されるジハロゲノインダンを得る工程;
第3の遷移金属触媒存在下、上記ジハロゲノインダンと、一酸化炭素及びアルコールとを反応させ、式(3):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸アルキルエステルを得る工程
(式(3)中、Rは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す);
上記インダンジカルボン酸アルキルエステルを加水分解して、式(4):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸を得る工程;並びに
上記インダンジカルボン酸と無水酢酸とを反応させて、式(5):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸無水物を得る工程を行う。
本実施形態において、金属触媒の存在下、式(1):
Figure 2010241770
で示されるインダンとハロゲンとを反応させて、式(2):
Figure 2010241770
(式(2)中、X及びYはそれぞれ独立して、Cl、Br又はIを示す)
で示されるジハロゲノインダンを得る工程は第一実施形態の第1工程と同じ手順を採用することができるので、ここでの説明は省略する。
次いで、第3の遷移金属触媒及び塩基の存在下、上記ジハロゲノインダンと、一酸化炭素及びアルコールとを反応させ、式(3):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸アルキルエステルを得る工程
(式(3)中、Rは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す)を行う。この工程を第2´工程(a)とする。
第3の遷移金属触媒は周期表第VIII族金属(第8族、第9族、第10族元素)であり、具体的にはニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。また、これらの金属を錯体の形態にした触媒がより好ましく、特にパラジウム錯体が好ましい。
上記パラジウム錯体としては、例えば、酢酸パラジウム(Pd(CHCO)、塩化パラジウム(PdCl)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh;式中、Phはフェニル基を示す)等を好適に用いることができる。これら列挙した遷移金属触媒のうち、入手容易性や工業的に量産するには経済的であることが必要であることを考慮すると、酢酸パラジウムが特に好ましい。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の第三アミン類、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩、あるいは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられる。なかでも、第3アミン類が好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
触媒の活性化及び安定化のためにホスフィン配位子を反応系内に共存させるとよい。ホスフィン配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリエチルホスフィンなどが挙げられる。
上記アルコールとしては特に限定されず、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられる。これらのアルコールのうち、反応性や後の除去の容易性を考慮すると、メタノールが好ましい。
なお、第2´工程(a)に続く第2´工程(b)としての加水分解工程を行う前に、上記インダンジカルボン酸アルキルエステルを単離及び精製してから第2´工程(b)の反応を行ってもよいが、単離及び精製を行うことなくそのまま第2´工程(b)に移ることが望ましい。この理由としては、反応器から生成物を抜き出したり、生成物を単離したりする手間を省くことができ、操作を簡素化することができることが挙げられる。
続く第2´工程(b)として、上記インダンジカルボン酸アルキルエステルを加水分解して、式(4):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸を得る工程を行う。
加水分解には酸及びアルカリのいずれを用いてもよい。酸としては塩酸や硫酸が挙げられる。また、アルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。反応性や収率の面を考慮すると、アルカリによる加水分解を行うことが好ましく、また、アルカリのうちでは水酸化ナトリウムが好ましい。
次の上記インダンジカルボン酸と無水酢酸とを反応させて、式(5):
Figure 2010241770
で示されるインダンジカルボン酸無水物を得る工程については、第一実施形態の第3工程と同じであるので、説明を省略する。
本実施形態においても第一実施形態と同様の作用効果(1)、(2)を得ることができる。
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
第一実施形態において示した第1工程から第8工程の反応経路に従って、イソインドリン最終誘導体を合成した。
(第1工程)
次に示す反応式に従って、インダンからジブロモインダンを合成した。
Figure 2010241770
10Lガラス製反応器にインダン1.08kg(9.1mol)、クロロホルム3.2L、鉄25.6g(5mol%)を投入し、遮光氷冷下、臭素3.0kg(2.05eq)を2時間かけて滴下した。滴下完了後、一晩室温で攪拌した。再度氷冷し、3N−水酸化ナトリウム水溶液を2時間かけて滴下した。全量を滴下後、反応液をセライト濾過し、濾液から分離した有機相をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、濃縮した。次に再結晶精製(クロロホルム/メタノール=1/1(体積比))し、5,6−ジブロモインダンを1.67kg得た(収率66%、GC純度99%)。
H NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)δ(ppm):2.08(2H,quintet),2.85(4H,t),7.46(2H,s)
(第2工程)
次の反応式に従ってジブロモインダンからインダンジカルボン酸を合成した。
Figure 2010241770
10Lオートクレーブにテトラヒドロフラン(THF)2.9L、5,6−ジブロモインダン800g(2.9mol、1eq)、酢酸パラジウム16g(2.5mol%)、トリフェニルホスフィン78g(10mol%)、トリエチルアミン1.32kg(4.5eq)、水1.44kg(28eq)を投入し、窒素置換及び一酸化炭素(CO)置換の後、内温120℃に昇温し、COを導入して内圧0.9MPaに調節した。内圧変化がなくなったのち内温を50℃まで自然冷却し、窒素置換後、反応液を全量抜き出した。セライト濾過した反応液を濃縮しTHFおよびトリエチルアミンを留去した。残渣にトルエン1.5L、水0.8Lを加え、二層分離した水層を再度トルエンで洗浄した。水層に濃塩酸440gを滴下投入し、析出物を濾過、水洗浄した後、乾燥することで5,6−インダンジカルボン酸の粗体535gを得た(収率90%、GC純度>99%)。
H NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)δ(ppm):2.05(2H,quintet),2.91(4H,t),7.49(2H,s)
(第3工程)
次の反応式に従ってインダンジカルボン酸からインダンジカルボン酸無水物を合成した。
Figure 2010241770
10Lガラス製三口フラスコに無水酢酸3.5L、5,6−インダンジカルボン酸1.56kg(7.6mol)を入れ、内温110℃まで昇温し、4時間撹拌した。終夜撹拌しながら降温し、氷冷して内温5℃以下でさらに4時間撹拌した。反応液を濾過、洗浄、乾燥することにより5,6−インダンジカルボン酸無水物の粗体1.22kgを得た(収率86%)。
H NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)δ(ppm):2.24(2H,quintet),3.08(4H,t),7.79(2H,s)
(第4工程及び第5工程)
次に示す反応式に従って、インダンジカルボン酸無水物とWittig試薬とを反応させ、その後連続的に、得られた生成物とアニリンとを反応させることにより、ベンジルエステル誘導体を合成した。
Figure 2010241770
(第4工程)
10Lガラス製反応器に5,6−インダンジカルボン酸無水物の粗体550g(2.9mol)、Wittig試薬(PhP=CHCOBn;式中、Phはフェニル基、Bnはベンジル基を示す)1.26kg(1.1eq)、テトラヒドロフラン5.5Lを投入して12時間加熱還流したのち、溶媒を全量留去し、残留物を得た。なお、得られた残留物は本工程で単離精製せずに、続く第5工程の出発原料として用いた(なお、この時点では収率を算出しなかった)。
(第5工程)
第4工程で得られた残留物に、酢酸4.7L、アニリン286g(1eq)を加え110℃で3時間撹拌した。次いで、内温を60℃まで冷却した後、メタノール1.7Lを加え、室温まで自然降温し、その後5℃以下で1時間撹拌した。次いで、濾過し、洗浄、乾燥することによりベンジルエステル誘導体として(3−オキソ−2−フェニル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−2−アザ−s−インダセン−1−イリデン)酢酸ベンジルエステルを収量1.04kgで得た(第4工程及び第5工程の両工程を通じて求めた収率は90%)。
H NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)δ(ppm):2.19(2H,quintet),3.03(2H,t),3.05(2H,t),5.19(2H,s),5.49(1H,s),7.2−7.6(10H),7.76(1H,s),8.94(1H,s)
(第6工程及び第7工程)
次に示す反応式に従って、遷移金属触媒存在下、ベンジルエステル誘導体を接触水素化し、生成物を連続的に(−)−フェニルエチルアミンによる光学分割に付して、第2のイソインドリン誘導体を合成した。
Figure 2010241770
(第6工程)
10Lのオートクレーブにベンジルエステル誘導体である(3−オキソ−2−フェニル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−2−アザ−s−インダセン−1−イリデン)酢酸ベンジルエステル675g(1.7mol、1eq)、メタノール6.7L、触媒としてパラジウム−炭素(Pd−C)を33.8g(5wt%)投入し、水素雰囲気下、60℃で12時間撹拌した。次いで自然冷却し、内温44℃の時に窒素置換した。なお、本工程では単離せずに、続けて第7工程を行った。
(第7工程)
第6工程における窒素置換後の反応液に対し(−)−フェニルエチルアミン217g(1.05eq)を添加し、1.5時間撹拌後、セライト濾過した。濾過後、メタノール0.7Lで洗浄した。次に、生成物である(−)−フェニルエチルアミン塩を含む濾液を、3.9kgまで減圧濃縮し、これにメタノール/水=10/1(体積比)になるよう水を加え、内温68℃まで加熱して溶解させた。自然冷却し内温55℃時に種結晶として第7工程の目的物であるR−(3−オキソ−2−フェニル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−2−アザ−s−インダセン−1−イル)酢酸の(−)−フェニルエチルアミン塩を0.15g添加した。内温45℃に達するまで自然冷却し、同温度を保ちながら18時間撹拌した。生じた沈殿物を濾過、洗浄、乾燥することにより177gのR−(3−オキソ−2−フェニル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−2−アザ−s−インダセン−1−イル)酢酸の(−)−フェニルエチルアミン塩(固体生成物)を得た(第6工程及び第7工程を通じて求めた固体生成物の収率は23%)。
得られた固体生成物を精製するために、固体生成物をメタノール/水=3/1(体積比)中で3時間加熱還流した。室温まで自然冷却した後、内温10℃に冷却して3時間撹拌し、生じた沈殿物を濾過した。メタノール洗浄後、乾燥することで161gのR−(3−オキソ−2−フェニル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−2−アザ−s−インダセン−1−イル)酢酸の(−)−フェニルエチルアミン塩を得た(第6工程及び第7工程を通じて求めた収率は21%)。
ここで得られた光学活性なアミン塩の一部を続く第8工程の出発原料として用いるために、酸を加え遊離酸とした。R−(3−オキソ−2−フェニル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−2−アザ−s−インダセン−1−イル)酢酸の(−)−フェニルエチルアミン塩693gに、メタノール/水=3/1(体積比)の溶液(メタノール2.1L、水0.7L)を加え、氷冷した後、pH=1〜2となるように濃塩酸0.78Lを滴下(滴下時内温16〜20℃)し、滴下終了後に1.5時間撹拌した(15℃〜2℃)。生じた沈殿物を濾過、水洗し、終夜風乾の後、80℃、5時間減圧乾燥することにより、イソインドリン中間誘導体であるR−(3−オキソ−2−フェニル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−2−アザ−s−インダセン−1−イル)酢酸517gを定量的に得た。
H NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)δ(ppm):2.09(2H,quintet),2.87(1H,dd),2.95(2H,t),2.97(2H,t),5.60(1H,dd),7.24(1H,t),7.46(2H,t),7.50(1H,s),7.59(1H,s),7.60(2H,d)
(第8工程)
次に示す反応式に従って、イソインドリン中間誘導体からイソインドリン最終誘導体を合成した。
Figure 2010241770
5Lガラス製反応器にR−(3−オキソ−2−フェニル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−2−アザ−s−インダセン−1−イル)酢酸250g(0.8mol)、トルエン2.5L、DMF0.4gを入れ、塩化チオニル205g(1.7mol)添加し、70℃で1時間加熱した。次いで、50℃に内温を下げてトルエン1Lを減圧下留去した。次に室温まで降温させ、酢酸エチル2.3Lを添加した後、4℃でN−メチルピペラジン166g(1.7mol)を滴下し、滴下終了後、室温で2時間撹拌した。
反応液に2N−塩酸1.3L、水3Lを加えて二相分離し、分離後の下相を酢酸エチル1.5Lで洗浄した。この下相に、4N−NaOH水溶液を45分かけて滴下した。生じた沈殿物を濾過し、水1.5Lで洗浄し、乾燥してイソインドリン最終誘導体の粗体を得た(302g,0.78mol、収率96%)。これを再結晶精製(アセトン/水=9/1(体積比))することで、イソインドリン最終誘導体として181gの(−)−2−(2−フェニル)−3−[2−(4−メチル−1−ピペラジル)−2−オキソエチル]−3,5,6,7−テトラヒドロシクロペンタ[f]イソインドリン−1(2H)−オンを得た(再結晶回収率60%)。
H NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)δ(ppm):2.17(4H,m),2.26(3H,s),2.40(3H,m),2.89(1H,dd),2.99(4H,t),3.23(2H,m),3.68(2H,m),5.81(1H,dd),7.21(1H,m),7.44(3H,m),7.66(2H,m),7.73(1H,s)
以下、本発明の第二実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例)
第一実施形態において示した反応経路のうち第2工程に代えて上述の第2´工程(a)及び第2´工程(b)を行った。具体的には、ジブロモインダンからインダンジカルボン酸ジアルキルエステルを経て、インダンジカルボン酸を合成した。その他の工程については第一実施形態と同じであるので、記載は省略している。
(第2´工程(a)及び第2´工程(b))
次に示す反応式に従って、ジブロモインダンからインダンジカルボン酸ジアルキルエステルを合成し、その後連続的に、アルカリによる加水分解を行ってインダンジカルボン酸を合成した。
Figure 2010241770
(第2´工程(a))
10Lオートクレーブにメタノール3.8L、5,6−ジブロモインダン750g(2.7mol)、酢酸パラジウム15g(2.5mol%)、トリフェニルホスフィン35.7g(5mol%)、トリエチルアミン830g(3eq)を投入し、一酸化炭素(CO)雰囲気下、内温120℃に昇温した。さらにCOを導入して内圧0.9MPaに調節し5時間反応させた。5時間後、室温まで自然冷却し、窒素置換後、反応液を全量抜き出した。抜き出した反応液をセライト濾過し、濾過後の反応液中のメタノールおよびトリエチルアミンを留去することで濃縮した。残渣に2N−塩酸3.8kg、酢酸エチル3Lを加えて溶解し、二層分離した有機層を乾固しない程度に濃縮して、濃縮物を得た。なお、得られた濃縮物については本工程で単離せず、そのまま第2´工程(b)の出発原料として用いた(なお、この時点では収率を算出しなかった)。
(第2´工程(b))
第2´工程(a)で得られた濃縮物に水酸化ナトリウム326g(3eq)、水4.3Lを加え80℃で2時間加熱した。2時間後、室温まで降温させた後、トルエン1Lを加え二層分離した。次に水層に10℃以下で濃塩酸870g滴下投入し、生じた沈殿物を濾過、乾燥して5,6−インダンジカルボン酸455gを得た(第2´工程(a)及び第2´工程(b)の両工程を通じて求めた収率は81%であった)。
H NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)δ(ppm):2.05(2H,quintet),2.91(4H,t),7.49(2H,s)
なお、上述のように、工業的には第2´工程(a)の生成物であるインダンジカルボン酸ジアルキルエステルを単離、精製することなく、第2´工程(b)に移ればよいが、参考として、本実施列で合成した5,6−インダンジカルボン酸ジメチルエステルのNMRデータを以下に示す。
H NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)δ(ppm):2.13(2H,quintet),2.95(4H,t),3.88(6H,s),7.55(2H,s)

Claims (6)

  1. 式(5):
    Figure 2010241770
    で示されるインダンジカルボン酸無水物と下記式(a):
    Figure 2010241770
    (式(a)中、Phはフェニル基、Bnはベンジル基を示す)
    で示されるWittig試薬とを反応させて、式(6):
    Figure 2010241770
    (式(6)中、Bnは式(a)と同じ置換基を示す)
    で示されるベンジルエステル誘導体を得る工程;
    前記ベンジルエステル誘導体とアニリンとを反応させて、式(7):
    Figure 2010241770
    (式(7)中、Bnは式(a)と同じ置換基を示す)
    で示される第1のイソインドリン誘導体を得る工程;
    前記第1のイソインドリン誘導体を第1の遷移金属触媒の存在下、接触水素化し、式(8):
    Figure 2010241770
    で示される第2のイソインドリン誘導体を得る工程;並びに
    前記第2のイソインドリン誘導体を光学活性なフェニルエチルアミン、光学活性なナフチルエチルアミン又は光学活性なp−トルイルエチルアミンを用いた光学分割に付し、式(9):
    Figure 2010241770
    で示されるイソインドリン中間誘導体を得る工程
    を含むイソインドリン中間誘導体の合成方法。
  2. 前記第1の遷移金属触媒は、パラジウム−炭素である請求項1に記載のイソインドリン中間誘導体の合成方法。
  3. 金属触媒の存在下、式(1):
    Figure 2010241770
    で示されるインダンとハロゲンとを反応させて、式(2):
    Figure 2010241770
    (式(2)中、X及びYはそれぞれ独立して、Cl、Br又はIを示す)
    で示されるジハロゲノインダンを得る工程;
    第2の遷移金属触媒及び塩基の存在下、前記ジハロゲノインダンと、一酸化炭素及び水とを反応させ、式(4):
    Figure 2010241770
    で示されるインダンジカルボン酸を得る工程;並びに
    前記インダンジカルボン酸と無水酢酸とを反応させて、式(5):
    Figure 2010241770
    で示されるインダンジカルボン酸無水物を得る工程、又は、
    金属触媒の存在下、式(1):
    Figure 2010241770
    で示されるインダンとハロゲンとを反応させて、式(2):
    Figure 2010241770
    (式(2)中、X及びYはそれぞれ独立して、Cl、Br又はIを示す)
    で示されるジハロゲノインダンを得る工程;
    第3の遷移金属触媒及び塩基の存在下、前記ジハロゲノインダンと、一酸化炭素及びアルコールとを反応させ、式(3):
    Figure 2010241770
    で示されるインダンジカルボン酸アルキルエステルを得る工程
    (式(3)中、Rは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す);
    前記インダンジカルボン酸アルキルエステルを加水分解して、式(4):
    Figure 2010241770
    で示されるインダンジカルボン酸を得る工程;並びに
    前記インダンジカルボン酸と無水酢酸とを反応させて、式(5):
    Figure 2010241770
    で示されるインダンジカルボン酸無水物を得る工程
    をさらに含む請求項1又は2に記載のイソインドリン中間誘導体の合成方法。
  4. 前記金属触媒は、鉄であり、前記第2の遷移金属触媒は、酢酸パラジウムである請求項3に記載のイソインドリン中間誘導体の合成方法。
  5. 前記第3の遷移金属触媒は、酢酸パラジウムである請求項3に記載のイソインドリン中間誘導体の合成方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のイソインドリン中間誘導体の合成方法により得られる前記イソインドリン中間誘導体と塩素化剤とを反応させ、得られる生成物とN−メチルピペラジンとを反応させることにより、式(10):
    Figure 2010241770
    で示されるイソインドリン最終誘導体を合成するイソインドリン最終誘導体の合成方法。
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