JP2010236963A - 固相マイクロ抽出法における採取方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】試料成分を含む気体にファイバ状の試料採取部を接触させて採取し、採取した試料成分を分析する固相マイクロ抽出法における採取方法において、相対速度0.2〜7m/sで相対移動させて前記試料成分を含む気体と前記試料採取部とを接触させることを特徴とする、固相マイクロ抽出法における採取方法。
【選択図】図1
Description
この空気中に存在する微量成分を分析する方法としては、固相マイクロ抽出(SPME)法が挙げられる(たとえば、特許文献1〜2参照)。
固相マイクロ抽出法においては、小型の採取器具を、空気中に定置して空気に曝すのみで、空気中から微量成分(試料成分)を容易に抽出することができる。この小型の採取器具としては、たとえば、SPMEホルダと、ファイバアセンブリとから構成されるサンプリングユニット等が用いられている。ファイバアセンブリは、ニードル(外筒部)に結合し、表面がコーティングされた直径0.5mm程度のファイバ(試料採取部)を備えている。空気中に存在する試料成分は、空気とファイバとの接触により、ファイバに吸着される。
固相マイクロ抽出法は、試料成分を採取した後、試料成分を吸着したファイバをクロマトグラフィ分析装置等に挿し込むことにより、ファイバに吸着された試料成分を分析装置内に直接に導入できることから、分析に要する時間を短縮でき、コスト面でも有利な方法である。
しかし、特許文献1〜2に記載された、固相マイクロ抽出法における採取方法においては、駅構内などの広い空間の空気中に存在する試料成分を採取する際、空気と接触するファイバの表面積が小さいため、一定の時間内に採取できる試料成分の採取量が少なく、充分な検出感度が得られない問題がある。ある程度の検出感度を得るには、採取時間として少なくとも3時間の長時間を費やす必要があり、しかも、採取に長い時間を費やしても、充分な検出感度が得られない場合がある。
また、駅構内の空気環境を評価する場合、特に終電〜始発までの限られた時間内に評価を行わなければならないこともあるため、従来よりも採取時間を短縮できることが求められる。
また、本発明の固相マイクロ抽出法における採取方法においては、前記試料採取部に、前記試料成分を含む気体を吹き付けることで、前記試料成分を含む気体と前記試料採取部とを接触させることが好ましい。
採取装置1は、回転速度を任意に設定できる撹拌機10を利用したものである。
撹拌機10は、撹拌モータ11と、撹拌モータ11に取り付けられた円柱状の回転軸12と、回転軸12の撹拌モータ11と反対側の一端に取り付けられた円板状の撹拌翼13とから構成されており、支持部材15a、15b、15cによって固定されている。
図1に示す採取装置1の撹拌翼13には、2つの採取器具50が取り付けられている。2つの採取器具50は、それぞれ、試料採取部を撹拌モータ11側に向けて回転軸12の長手方向と略平行に配置され、互いに回転軸12を介して対向するように、回転軸12から4cm離れた位置で撹拌翼13に取り付けられている。
図2に示す採取器具50は、外筒部52にファイバ状の試料採取部51が結合したファイバアセンブリ53と、SPMEホルダ54とから構成されている。
試料採取部51の表面にはコーティング層が形成されており、このコーティング層に試料成分が吸着されることにより、気体中から試料成分が抽出される。
コーティング層を形成する材料としては、たとえばポリジメチルシロキサン、ポリアクリレート、ポリエチレングリコール、ジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン、Carboxen分散ポリジメチルシロキサンが挙げられ、分析対象とする試料成分に応じて適宜選択すればよい。
図1において、撹拌機10は、撹拌速度200rpmで回転している。
当該相対速度0.2m/s以上で相対移動させることにより、試料成分を採取するのに要する時間を短縮でき、かつ、検出感度を高くできる。
当該相対速度7m/s以下で相対移動させることにより、たとえば高速で回転すること又は風を吹き付けることによる採取器具の脱落や破損が防止され、かつ、検出感度を高くできる。
試料成分を含む気体と試料採取部51とは、採取効率がより高まることから、相対速度0.2〜0.9m/sで相対移動させて接触させることが好ましく、相対速度0.4〜0.7m/sで相対移動させて接触させることがより好ましい。
本実施形態の「回転条件による採取方法」は、試料採取部51の方を積極的に移動させる方法の一例である。本実施形態においては、試料採取部51を、採取装置1が置かれた床面方向に円形状に移動させる例であるが、これに限定されず、高さ方向に円形状に移動させてもよく、円形状に限らず、線状に移動させてもよい。
屋外で試料成分の採取を行う場合、これまで風の影響によって分析結果が大きく異なる問題があり、風は、固相マイクロ抽出法における試料成分の採取において妨害要因となっていた。これに対し、採取器具をフード等で囲い風が当たらないようにしても、分析データは安定するものの、検出感度が低下するため、採取時間を長く費やさなければならなかった。
これに対して、図3に示すように、フード14が設けられた採取装置を用いた実施形態によれば、屋外の不均一な風の影響を低く抑え、かつ、フード14内で採取器具50を一定速度で回転させることにより、試料成分の採取効率の低下が抑えられるとともに、安定した分析データが得られやすくなる。
図4は、本発明の「固相マイクロ抽出法における採取方法」の他の実施形態例を模式的に示した側面図である。
採取装置2は、吸気口21と、排気方向に向かってテーパー状に広がる排気口22とを、同一の面に有する略直方体状のエアポンプ20からなる。
図4において、採取器具50は、試料採取部51が排気口22とほぼ同じ高さに配置されて排気口22から排気される風が当たるように、エアポンプ20の近傍に配置されている。図4中にある矢印は、風の向きを示す。
図4に示す実施形態は、一方向から気体を吹き付ける例であるが、これに限定されず、気体を多方向から試料採取部51に向けて吹き付けてもよく、風速を適宜変化させながら試料採取部51に向けて吹き付けてもよく、気体を吹き付けながら試料採取部51を移動させてもよい。
本実施形態の「吹き付けによる採取方法」は、試料成分を含む気体の方を積極的に移動させる方法の一例である。
図5は、試料成分の試料採取部への吸着挙動を模式的に示した側面図であり、図5(a)は従来の採取方法の場合における吸着挙動を示す図であり、図5(b)は本発明の採取方法の場合における吸着挙動を示す図である。
図5(a)に示すように、風の自然な流れによる試料成分5と試料採取部51との接触であった従来の採取方法に比べて、本発明の採取方法は、試料採取部51と試料成分5を含む気体の少なくとも一方を積極的に移動させることにより、図5(b)に示すように、試料成分5と試料採取部51との接触頻度が増加するため、また、試料成分5を含む気体が連続的に供給されるため、試料採取部51への試料成分5の吸着効率が高まる。したがって、本発明の効果が得られると考えられる。
本発明の「固相マイクロ抽出法における採取方法」は、駅構内などの広い空間の空気中に存在する試料成分を採取するのに好適な方法である。
図6は、実施例1および比較例1における採取方法を模式的に示した正面図である。
風のない室内(閉鎖空間;ユニットバス脱衣所、幅112cm×奥行118cm×高さ229cm)に、図6に示すように、図1で示した採取装置1と同じ形態の装置に採取器具50aが取り付けられたものと、採取装置に取り付けられた採取器具50aの回転範囲から約30cm離れた位置に支持部材15d、15e、15fによって固定された採取器具50bとを設置した。
採取器具50aと採取器具50bは、いずれも、試料採取部を撹拌モータ11側に向けて回転軸12の長手方向と略平行に配置されている。
下記の実施例1と比較例1の採取方法により採取された試料成分について、それぞれガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)法による分析を行った。
かかる分析は、一般に空気の「臭気」に関係するとされている成分を分析対象として行った。
撹拌機10の回転速度(回転/分)を50,100,150,200rpmと変えて、それぞれの回転速度で各1時間と各3時間、採取器具50aを円形状に移動させることで試料成分の採取を行った。なお、比較として回転速度(回転/分)25rpmについて試料成分の採取を同様にして行った。
図6に示した位置に採取器具50bを固定した状態で、実施例1の採取方法を行うのと同時に試料成分の採取を行った。
測定機器(GC):アジレント6890N(製品名)
測定機器(MS):アジレント5975B(製品名)
カラム:HP−INNOWAX(商品名)、30m
昇温条件:45〜250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラム流量:1.4mL/分
スプリット比:スプリットレス
図7は、各実験条件において検出された試料成分の数(検出ピーク数,本)を示すグラフである。
図8は、採取器具を回転することによる検出強度の増加率を示すグラフである。
「検出強度の増加率」は、ある成分について、実施例1の採取方法における検出強度を、比較例1の方法における検出強度で除した値(回転採取/定置採取)を示す。
また、回転採取/定置採取の観点から、回転速度25rpmの場合よりも、回転速度50,100,150,200rpmの場合の方が、検出ピーク数の増加率が高いことが確認できる。このことから、相対速度0.2m/s以上とすることにより、多くの種類の成分を検出できる効果がより高くなることが分かる。
かかる結果から、本発明に係る「回転条件による採取方法」においては、採取装置周囲の気体(空気)を動かさずに試料成分を採取できることが分かる。このことより、「回転条件による採取方法」によれば、たとえば、臭気の発生源を特定する場合、又は濃度分布を把握するために多点測定する場合、試料成分の採取を、狭い間隔で同時に行うことができ、より正確な測定が可能となる、といえる。
図9は、実施例2および比較例2における採取方法を模式的に示した正面図である。
風のない室内(閉鎖空間;幅112cm×奥行118cm×高さ229cm)に、図9で示したように、エアポンプ20と、その近傍に採取器具50cとを配置し、これらの隣に、エアポンプ20の排気口22から排気される風が当たらないように、ついたて23を設けて、ついたて23の採取器具50c側の反対側に採取器具50dを配置した。
採取器具50cは、試料採取部51cが排気口22とほぼ同じ高さに配置されて排気口22から排気される風が当たるように、エアポンプ20の近傍に配置した。図9中にある矢印は、風の向きを示す。
下記の実施例2と比較例2の採取方法により採取された試料成分について、それぞれ、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)法による分析を行った。GC/MSの条件は、上記と同じ条件で行った。
エアポンプ20から排気される風の風速を7m/sに設定して1時間と3時間、それぞれ試料採取部51cに風を吹き付けることで試料成分の採取を行った。
図9に示した位置に採取器具50dを固定した状態で、実施例2の採取方法を行うのと同時に試料成分の採取を行った。採取器具50dを固定した場所の風速は0.15m/sであった。
比較例2におけるGC/MSの結果を図10(a)、図11(a)に示した。
実施例2におけるGC/MSの結果を図10(b)、図11(b)に示した。
図10、図11に示すクロマトグラム中、横軸は検出時間(分)、縦軸は検出感度をそれぞれ示す。
また、実施例2の採取方法の方が、比較例2の方法に比べて、検出ピーク数が多いことから、実施例2の採取方法によれば、多くの種類の成分を検出できることも確認できた。
図12は、比較例2の採取方法により試料成分の採取を3時間行った際の検出強度を100としたときの、各試料成分における比検出強度を示すグラフである。
グラフ中、当該比検出強度を「エアポンプなし3hを100とした比強度」と表記する。また、グラフ中、実施例2における採取時間が1時間、3時間をそれぞれ「エアポンプあり1h」、「エアポンプあり3h」と表記し;比較例2における採取時間が1時間、3時間をそれぞれ「エアポンプなし1h」、「エアポンプなし3h」と表記する。
また、試料成分の採取をこれまでどおり3時間行った場合でも、実施例2の採取方法によれば、さらに検出強度が増加し、検出される成分の数も増えていることから、より高精度な衛生環境の評価が可能となる、といえる。
Claims (3)
- 試料成分を含む気体にファイバ状の試料採取部を接触させて採取し、採取した試料成分を分析する固相マイクロ抽出法における採取方法において、
相対速度0.2〜7m/sで相対移動させて前記試料成分を含む気体と前記試料採取部とを接触させることを特徴とする、固相マイクロ抽出法における採取方法。 - 前記試料成分を含む気体と前記試料採取部とを接触させる際に、前記試料採取部を円形状に移動させることを特徴とする、請求項1記載の固相マイクロ抽出法における採取方法。
- 前記試料採取部に、前記試料成分を含む気体を吹き付けることで、前記試料成分を含む気体と前記試料採取部とを接触させることを特徴とする、請求項1記載の固相マイクロ抽出法における採取方法。
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