JP2010235963A - レーザ切断用厚板プレコート鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザーで切断した場合にレーザー切断性が高く、かつ防錆性にも優れた、プライマーが塗布された塗装鋼材を提供する。
【解決手段】鋼材の表面にプライマーが塗布されてなる塗装鋼材において、前記プライマーの塗膜に含有されるアルミニウム粉末量を1〜30g/m2および亜鉛粉末量を1〜15g/m2とし、前記亜鉛粉末に含まれる金属亜鉛に対する前記アルミニウム粉末に含まれる金属アルミニウムの質量比を0.4〜2.0とし、前記プライマーの膜厚を5〜40μmとしたことを特徴とするレーザー切断性および一次防錆性に優れた塗装鋼材。
【選択図】なし

Description

本発明は、優れたレーザ切断性および一次防錆性を兼備した塗装鋼材に関する。
造船、橋梁、建築、産業機械などのファブリケーターでは、寸法精度が高く(±0.5mm)、部材への熱影響が少なく、さらには無人化レベルの自動化が比較的容易である等の利点から厚鋼板の切断方法としてレーザ切断の採用が増加している。
しかし、レーザ切断には、プラズマ切断と比較すると切断速度が遅い、ガス切断に比べて切断可能板厚が限定されるといった問題点がある。さらには、ファブリケーターで広く行われる一次防錆処理としてのプライマー処理が施されると、安定的に作業可能なレーザ切断速度と切断できる板厚の上限が低下するという問題がある。
このメカニズムについては明確になっておらず、各々のファブリケーターで経験的に得られた手法をもとに対処しているのが現状である。その一つに、ファブリケーターで切断予定部分の塗膜へ低出力レーザを事前照射する先行焼と称する前処理方法がある。この前処理方法によりレーザ切断性は向上するが、実切断線に沿って2度のレーザ照射を必要とするため、工程的にも、投入エネルギー的にもロスが大きく、経済的な損失も大きい。
これまでに、レーザ切断性に優れた鋼材の前処理方法として、特許文献1が知られている。この文献では、防錆剤として添加されている塗膜中のZn量を制限することで、レーザ切断性の向上を図っているが、Zn量を制限することによる防錆性の低下を補う方法については記載されておらず、Zn量を制限することで防錆性が著しく低下するおそれがある。
特許文献2には、耐熱・防食塗料としてZn65〜85wt%、Al3〜15wt%の混合粉末による高耐食性塗料について述べられているが、実施例では、塗装する際の膜厚を、高耐食性を確保するために75μmに設定しており、塗膜に含まれる(Zn+Al)量が多くなるためレーザ切断性は低いと考えられる。
特許文献3には、Zn−Al−Mgの合金粉末による高耐食性塗料について述べられているが、ZnとAlとMgとを合金粉末化するため、単体のZn粉末、Al粉末を使用する場合と比較して塗料製造コストが上昇する。また、実施例では、塗装する際の膜厚を、高耐食性を確保するために60μmに設定しており、塗膜に含まれる(Zn+Al)量が多くなるため、レーザ切断性は低いと考えられる。
さらに、1次防錆性とレーザ切断性を高めた技術も開示されている。特許文献4には、亜鉛粉末を主体としてさらにアルミニウム粉末を添加した塗膜を有する鋼材が開示されている。
また、特許文献5および特許文献6には、亜鉛粉末を主体とし、アルミニウム粉末およびチタニア粉末を添加した塗膜を有する鋼材が開示されている。
特開平10−226846号公報 特開昭59−221361号公報 特開2001−164194号公報 特開2006−205512号公報 特開2007−290129号公報 特開2008−100427号公報
たしかに、特許文献4乃至特許文献6に記載の技術では、レーザ切断性と防錆性(あるいは一次防錆性)との両立について検討されており、一応の改善がなされた。しかしながら、塗装鋼材のレーザ切断作業性の改善および一次防錆性との両立に関するファブリケーターからの要求は年々高まる一方であるため、一次防錆性とレーザ切断性をさらに高いレベルで両立できる技術の確立が望まれている。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、レーザ切断性を高く維持し、かつ、屋外暴露において良好な1次防錆性を有するプライマー塗装鋼材を提供することを目的とする。
一般に、ショットブラストした鋼材の表面にジンク(Zn)リッチプライマーが塗布された鋼材をレーザ切断した場合には、切断速度の低下と切断可能板厚の低下が生じることが知られている。この際のレーザ切断速度と切断可能板厚の低下のメカニズムは必ずしも明確になっているわけではないが、本発明者らは、一次防錆処理として行われるプライマー塗装により、(a)一次防錆処理剤によるレーザ吸収率の低下、(b)切断時の加熱による一次防錆処理剤中のバインダー樹脂や亜鉛粉末の分解や蒸発によるレーザ光の散乱・吸収、(c)発生したガスによるアシストガス(酸素)の分圧の低下等がレーザ切断速度と切断可能板厚の低下の要因であると推定した。
本発明者らは、このような推定結果を基に検討した結果、要因(a)についてはプライマー中にレーザ吸収性の高いチタニア粉末を添加してレーザの吸収率を高めることによりレーザ切断性が良好になるということに想到した。
即ち、レーザ切断の初期においては、レーザ光を切断部に集光することにより、その光エネルギーが吸収されて、切断部の温度が局所的に上昇し溶融するが、このとき、レーザ吸収性が高いチタニア粉末および/またはジルコニア粉末が含まれる塗膜で切断部を覆うと、光エネルギーが効率的に塗膜に吸収されるので、レーザ切断効率を上昇させることができる。
また、チタニア粉末および/またはジルコニア粉末の添加により、切断時に発生する溶融スラグの粘性が低下し、切断溝内から溶融スラグが効率的に排出されることにより、切断面の美麗さの向上や切断部裏面に付着するドロスの発生を抑止できることも知見した。
一方、上述した要因(b)、(c)を解決するために亜鉛(Zn)粉末の添加量を少なくすると、一次防錆性が低下するが、アルミニウム(Al)粉末および/または、Mo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nbの中から選ばれる1種または2種以上の元素を単独物質として、あるいは化合物として添加することにより、要因(b)、(c)の問題を引き起こさずに一次防錆性を確保できることに想到した。
この場合に、塗膜にレーザ吸収性が高いチタニア粉末および/またはジルコニア粉末を含有させると、亜鉛粉末に加えてアルミニウム粉末および/またはMo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Coの中から選ばれる1種または2種以上の元素を単独物質として、あるいは化合物としてさらに添加しても、レーザ切断の初期においてチタニア粉末によってレーザ光の光エネルギーを効率的に吸収することができ、レーザ切断性に優れる特性は維持されることに想到した。
本発明は、以上のような知見を元にして完成されたものであり、レーザ切断性に悪影響を及ぼす亜鉛錆の低減を図ることによりレーザ切断性を高く維持し、かつ、ある一定の割合以上にアルミニウムを添加することにより、屋外暴露において良好な1次防錆性を有することを特徴とする。本発明の要旨は、下記の通りである。
第一の発明は、鋼材の表面にプライマーが塗布されてなる塗装鋼材において、前記プライマーの塗膜に含有されるアルミニウム粉末量を1〜30g/m2および亜鉛粉末量を1〜15g/m2とし、前記亜鉛粉末に含まれる金属亜鉛に対する前記アルミニウム粉末に含まれる金属アルミニウムの質量比を0.4〜2.0とし、前記プライマーの膜厚を5〜40μmとしたことを特徴とするレーザ切断性および一次防錆性に優れた塗装鋼材である。
第二の発明は、前記プライマー塗膜に、さらにチタニア粉末、ジルコニア粉末の1種または2種を合計で5〜30g/m2含有することを特徴とする第一の発明に記載のレーザ切断性および一次防錆性に優れた塗装鋼材である。
第三の発明は、前記プライマー塗膜に、さらにMo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nbの中から選ばれる1種または2種以上の元素を単独物質として、あるいはその化合物として各元素の元素換算で合計0.1〜5g/m2含有することを特徴とする第一または第二の発明に記載のレーザ切断性および一次防錆性に優れた塗装鋼材である。
本発明によれば、鋼材の表面に形成される塗膜中のアルミニウム粉末量および亜鉛粉末量を最適に設定したので、鋼材の防食性を有し、かつ亜鉛の白錆発生が少ないため、レーザ切断性の低下が少ない。さらに、塗膜へのMo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nbを添加する場合には、鋼材の防錆性が向上するため、鉄錆の発生もいっそう抑えることができる。また、レーザ吸収性の高いチタニアおよびジルコニウムを含有する場合には、レーザによる切断効率が高まり、レーザ切断性が向上する。
以下、本発明について具体的に説明する。
[プライマー組成]
以下に本発明のプライマー組成の限定理由について述べる。
アルミニウム粉末:1〜30g/m、亜鉛粉末:1〜15g/m
一次防錆剤である亜鉛粉末を極力少なくしてレーザ切断性を向上させる組み合わせである。亜鉛粉末の減少により防錆性を低下させるおそれがあるので、アルミニウム粉末を増加させて1次防錆性能を維持する。
亜鉛粉末は1g/m未満では、アルミニウム粉末を添加しても耐食性が著しく劣化するため、1g/m以上とした。また、亜鉛粉末の添加量が15g/mを超えると、鋭角的にレーザ切断する箇所において切断後の角部裏面でドロス(切断時にレーザ照射面と反対側の表面の切断線に沿って発生するガスを内包した溶融金属が冷えて固化した付着物)が付着する場合があるので、これを防ぐために、15g/m以下とした。
アルミニウム粉末が1g/m未満ではアルミニウムによる耐食性向上効果が認められず、1g/m以上とした。また、アルミニウム粉末添加量が、30g/mを超えるとレーザ切断性が良好な範囲において、短期間で赤錆が発生して耐食性が劣化する場合があるため、30g/m以下とした。
アルミニウム、亜鉛混合粉末:5〜40g/m、金属アルミニウム/金属亜鉛:0.4〜2.0
金属亜鉛に対する金属アルミニウムの質量比は耐食性に大きく影響する。亜鉛含有量が9g/m未満であり、金属亜鉛に対する金属アルミニウムの質量比が0.4未満の場合には耐食性が不十分であり、2.0超えの場合には均一な塗膜が形成されずかえって耐食性が劣化する場合があった。
また亜鉛含有量が9g/m以上15g/m以下であり、金属亜鉛に対する金属アルミニウムの質量比が0.4未満の場合には赤錆の発生は抑えられるものの鋼板の表面で白さびの発生により、最終的な仕上げ塗装での塗膜密着性が劣化する場合があり、2.0超えの場合にはレーザ切断性が劣化する場合があった。よって、金属亜鉛に対する金属アルミニウムの質量比は0.4以上であり、かつ2.0以下とした。
なお、また亜鉛含有量が9g/m以上15g/m以下である場合、金属亜鉛に対する金属アルミニウムの質量比が0.6超えであると、耐食性がさらに向上するので好ましい。さらに、亜鉛含有量が9g/m以上15g/m以下である場合、アルミニウム粉末添加量が10g/mを超えていると、優れた耐食性がさらに安定するため、いっそう好ましい。
なお、アルミニウムと亜鉛との混合粉末量が3.5g/m未満では、短期間で白錆と赤錆が発生し、十分な耐食性が発揮できないため、混合粉末量は3.5g/m以上が好ましく、5g/m以上がより好ましい。一方、混合粉末量が40g/mを超えるとレーザ切断性が劣化するため、40g/m以下であることが好ましい。
チタニア粉末および/またはジルコニア粉末:5〜30g/m
これらは、いずれも、レーザ光の吸収効率を増大させることによりレーザ切断性を向上されるために添加することができる。また、切断時に発生する溶融スラグの粘性が低下させ、結果としてドロスの発生を抑止する効果もあるため、添加することが好ましい。
チタニア(TiO)粉末を単独でプライマーに添加することにより、レーザ切断性を格段に向上させる効果を有効に発揮させるためには、チタニア粉末の塗布量は3〜20g/mの範囲とする。チタニア粉末の塗布量が3g/m未満ではレーザ切断性の向上効果が小さく、逆に20g/mを超えると均一な塗膜の形成が阻害され、防錆性向上を妨げるおそれがある。チタニア粉末の塗布量のさらに好ましい範囲は、5〜15g/mである。
ジルコニア粉末を単独添加する場合は、レーザ切断性を格段に向上させる効果を有効に発揮させるためには、ジルコニア粉末の塗布量は5〜20g/mの範囲とする。ジルコニア粉末の塗布量が5g/m未満ではレーザ切断性の向上効果が小さく、逆に20g/mを超えると均一な塗膜の形成が阻害され、防錆性向上を妨げるおそれがある。ジルコニア粉末の塗布量のさらに好ましい範囲は、7〜15g/mである。
チタニアとジルコニアを複合添加する場合は、レーザ切断性を格段に向上させる効果を有効に発揮させるためには、チタニア粉末とジルコニア粉末との合計塗布量を5〜30g/mの範囲とする。チタニア粉末とジルコニア粉末との合計塗布量が5g/m未満ではレーザ切断性の向上効果が小さく、逆に30g/mを超えると膜中でのアルミニウム粉末および亜鉛粉末の存在比率が少なくなり、耐食性が劣化する場合がある。ここで、チタニア粉末とジルコニア粉末との合計塗布量が30g/mを超える条件の下で、耐食性向上を目的としてアルミニウム粉末および亜鉛粉末の添加量を増加することは、膜厚が厚くなりかえってレーザ切断性が劣化してしまうので好ましくない。
Mo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nb元素について
アルミニウム粉末および亜鉛粉末を含有する塗膜に、Mo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nbの中から選ばれる1種または2種以上の元素を単独物質として、あるいは化合物として添加することにより、防錆性を向上させることができる。
この場合において、その合計塗布量が元素換算で0.1g/m未満では、防錆性向上効果が小さく、5g/mを超えると均一な塗膜の形成が阻害され、防錆性を低下させるおそれがある。このため、Mo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nbの中から選ばれる1種または2種以上の元素を単独物質として、あるいは化合物として添加する場合において、それらの合計塗布量の範囲は、元素換算で0.1〜5g/mとする。より好ましい範囲は、元素換算で0.5〜5 g/mである。
なお、これら元素を化合物として添加する場合、たとえば、Moについては、モリブデン酸やその塩、および/または、リンモリブデン酸やその塩、などを、Wについては、タングステン酸ナトリウムのようなタングステン酸塩、および/または、リンタングステン酸やその塩などを、適用可能である。
Niについては、硫酸ニッケル、りん酸ニッケルが、Cuについては、硫酸銅などが、また、Crについては硫酸Crなどが適用可能である。Pは、リン酸やリン酸カルシウムなどにより添加可能である。マグネシウムは、硝酸マグネシウムや硫酸マグネシウムなどを、Vについては硫酸バナジルまたはバナジン酸ナトリウムなどが、また、Coについては、硫酸コバルトなどが適用可能である。さらに、Snは、酸化Snや硫酸Snなどにより、Sbは三酸化アンチモンなどにより、そしてNbは酸化ニオブなどにより、それぞれ添加することが可能である。
チタニア粉末およびジルコニア粉末とMo等元素を含む場合について
アルミニウム粉末および亜鉛粉末を含有する塗膜に、さらにチタニア粉末およびジルコニア粉末を添加し、さらにMo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nbの中から選ばれる1種または2種以上の元素を単独物質として、あるいは化合物として添加する場合には、Mo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nbの中から選ばれる1種または2種以上の元素の合計塗布量が元素換算で0.1g/m未満では、防錆性向上効果が小さく、5g/mを超えると均一な塗膜の形成が阻害され、防錆性を低下させるおそれがあり、さらに膜厚が厚くなってしまいレーザ切断性が劣化する場合もある。より好ましい範囲は、元素換算で0.1〜3 g/mである。
[プライマー塗装膜の膜厚]
上述したプライマー塗装の塗布量を満足する塗膜の乾燥後の膜厚は、5〜40μmとする。5μm未満では一次防錆性が低く、40μm超えの場合、樹脂量の増加によりレーザ切断性が低下する。より好ましい範囲は、10〜25μmである。ここで、膜厚は、ダミーの磨き板に塗装し,膜厚計で測定して求めればよい。膜厚計としては,電磁膜厚計等を用いることができる。
[添加する粉末の粒径等]
亜鉛粉末、アルミニウム粉末、チタニア粉末としては、アトマイズ法や機械的粉砕法などによって加工されたものを用いることができ、平均粒径が15μm以下に制御されたものが望ましい。これら粉末は、必要に応じて、塗料中の分散性を高めるためのAl、Zr、ポリオールなどによる表面処理をしてもよい。これら粉末とバインダー樹脂以外の塗料添加剤としては、着色顔料、分散剤、湿潤剤、消泡剤、沈殿防止剤、増粘剤などを必要に応じて適宜添加してもよい。
JISK 5552(2002)ジンクリッチプライマーに相当する市販のジンクリッチプライマー(塗料液とZn粉末)を使用し、亜鉛粉末が1〜15g/m、一次防錆性向上のためのアルミニウム粉末は1〜30g/m、チタニア粉末および/またはジルコニア粉末を合計で5〜30g/mをアルキルシリケート系のバインダー樹脂とシンナーからなる塗料液と混合し、鋼材表面にスプレー塗装した。比較鋼についても、同様の方法で鋼材表面にスプレー塗装した。
表1に各塗装鋼材(発明例としてNo.1〜No.27および比較例としてNo.28〜No.33)に塗布する塗料に含有される物質の塗布量および膜厚及び1次防錆性、レーザ切断性を示す。
Figure 2010235963
調合した塗料を、エアスプレー式塗装装置により、200mm×100mmの面積の鋼板に対して乾燥後の膜厚が5〜40μmとなるように、スプレーの吐出量とスプレー速度を調整して、スプレーすることにより、表1に示す塗布量の塗膜を得た。 下地の鋼材としては、溶接構造用圧延鋼材のSM490A級であり、200mm×100mm×厚さ12mmの寸法を有するもの使用し、表面にショットブラスト処理を施したものを用いた。
また、以上のような塗装鋼材についてレーザ切断により切断性試験を行った。板厚12mmのレーザ切断は、三菱電機株式会社製炭酸ガスレーザ装置を用いて、出力2.1KWでアシストガスとして酸素を0.1MPaにて噴射した。
また、切断速度は1000mm/min(従来のジンクリッチプライマー塗布材では切断できなかった切断速度)で評価した。耐食性は上記方法で塗装した鋼材を海岸から約5m離れた場所で3ヶ月間屋外暴露して錆の発生状況により評価した。
切断面性状の評価は、◎は最も良好な切断面であり、ドロスの発生が皆無または極微量で切断面が整っている状態を示し、〇はほぼ良好な切断面であり、一部でドロスが発生したが切断面が整っている状態を示し、×は切断線のほぼ全面にドロスが発生し、一部が切断不能であった状態を示している。
なお、ドロスとは、切断時にレーザ照射面と反対側の表面の切断線に沿って発生するガスを内包した溶融金属が冷えて固化した付着物のことである。また、塩水噴霧試験による防錆性の評価は、JIS K 5552(2002)に定める塩水噴霧試験による赤さびの発生状況で評価した。その結果を表1に併記する。1次防錆性の評価は、◎は錆発生無し、〇は錆発生が全面積の5%以下、×は5%錆発生が全面積の以上である。
実施例1〜27は本発明例である。実施例1〜5は主要成分として亜鉛とアルミニウムを含有する場合で、3ヶ月間の屋外暴露で赤錆はほとんど形成されず、n数が5枚で試験をした時1〜2枚で5%未満の赤錆発生が見られる場合があった程度である。レ−ザ切断性では小さなドロス付着が発生する場合があったが、簡単に剥離する事ができ、問題となるほどのドロスの付着がなくレ−ザ切断性は良好であった。実施例6〜10は主要成分として亜鉛およびアルミニウムに加えて、更にチタニアおよび/またはジルコニアを含有する場合で、屋外暴露での1次防錆性は実施例1〜5とほぼ同等であったが、レ−ザ切断性ではほとんどドロスの付着がなく良好であった。
実施例11〜22は主要成分として亜鉛およびアルミニウムに加えて、更にMo等の元素からなる化合物を含有する場合で、レ−ザ切断性は実施例1〜5とほぼ同等であったが、1次防錆性については3ヶ月間の屋外暴露で赤錆がほとんど形成せず、良好な耐食性を呈した。さらに、実施23〜27は主要成分として亜鉛およびアルミニウムに加えてチタニアあるいはジルコニアを含有し、更にMo等の元素からなる化合物を含有する場合である。各元素に対応する化合物としては、前述の化合物から適宜選択して使用した。1次防錆性およびレ−ザ切断性について良好な特性を示した。
一方、実施例28では亜鉛含有量は本発明範囲内であるが、アルミニウム/亜鉛の比率が高く、屋外暴露2ヶ月目に5%以上の赤錆面積となり、耐食性が不良であった。実施例29ではアルミニウムの含有量が0.5g/mと少なく、腐食初期から白錆が発生しその白錆の中から赤錆が発生し、屋外暴露3ヶ月以内に5%以上の赤錆面積となり、耐食性が不良となる場合があった。実施例30では亜鉛の含有量が23g/mと多いため、レ−ザ切断性が充分ではなかった。特に、鋭角的にレーザ切断する箇所において切断後の角部裏面でドロスが付着する場合があり、ドロス除去の手直しが必要となった。
実施例31ではアルミニウムの添加が多い場合でレーザ切断性は良好であったが、屋外暴露においては耐食性のばらつきが多く、短期間で赤錆が発生する場合があり、耐食性が良好でなかった。実施例32は膜厚が平均で4μmと薄く、部分的に鉄素地が露出している部分が存在したため、屋外暴露において初期から赤錆が発生し、耐食性が不良であった。実施例33は膜厚が平均で50μmと厚い場合であるが、レ−ザ切断性が悪く切断時に発生するガスまたはレ−ザ散乱によるものと推定されるが、切断作業終了後に切断できていない部分が存在する場合があった。
造船、橋梁、建築、産業機械等の鋼構造物を建造する際に、本発明のレーザ切断性と一次防錆性に優れた塗装鋼材あるいはその塗料を使用することによって、鋼材の切断処理コストの低減や、切断処理量の増加が可能となる。このことは、鋼構造物の建造コスト低減に寄与できるため、産業上大きな効果を奏する。

Claims (3)

  1. 鋼材の表面にプライマーが塗布されてなる塗装鋼材において、前記プライマーの塗膜に含有されるアルミニウム粉末量を1〜30g/m2および亜鉛粉末量を1〜15g/m2とし、前記亜鉛粉末に含まれる金属亜鉛に対する前記アルミニウム粉末に含まれる金属アルミニウムの質量比を0.4〜2.0とし、前記プライマーの膜厚を5〜40μmとしたことを特徴とするレーザー切断性および一次防錆性に優れた塗装鋼材。
  2. 前記プライマー塗膜に、さらにチタニア粉末、ジルコニア粉末の1種または2種を合計で5〜30g/m2含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザー切断性および一次防錆性に優れた塗装鋼材。
  3. 前記プライマー塗膜に、さらにMo、W、Ni、Cu、Cr、P、Mg、V、Co、Sn、Sb、Nbの中から選ばれる1種または2種以上の元素を単独物質として、あるいはその化合物として各元素の元素換算で合計0.1〜5g/m2含有することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー切断性および一次防錆性に優れた塗装鋼材。
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