以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態では、本発明にかかる画像記録装置の一例として複合機10が示されているが、本発明の実施態様が複合機10に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。
[第1実施形態]
以下に本発明の第1実施形態が説明される。
[複合機10の概略構成]
図1及び図2に示されるように、複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備え、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。
前述されたプリンタ部11が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、プリンタ部11以外の機能は任意であり、例えば、スキャナ部12がなく、スキャン機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明にかかる画像記録装置が実施されてもよい。
複合機10には、下側にプリンタ部11が配置され、上側にスキャナ部12が配置されている。プリンタ部11は、主にコンピュータなどの外部情報機器と接続されて、外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、被記録媒体に画像や文字を記録する。スキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナである。
複合機10は、高さ(矢印102)より横幅(矢印101)及び奥行き(矢印103)が大きい幅広薄型の概ね直方体の外形である。プリンタ部11は、正面に開口13が設けられている。開口13の内部には、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が設けられている。給紙トレイ20に収容された記録用紙が、プリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、画像記録後の記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
複合機10の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14において、プリンタ部11及びスキャナ部12に所望の動作をさせるための所定の入力が行われる。操作パネル14は、入力を行うための複数のボタンや、複合機10の状態やエラー表示などを行うためのディプレイを有する。なお、複合機10に外部情報機器が接続されていると、外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどの通信ソフトを通じて送信される指示に基づいても、複合機10は動作する。
[プリンタ部11]
図2に示されるように、複合機10の最も底側に給紙トレイ20が設けられている。排紙トレイ21は、給紙トレイ20の上側に上下二段に配置されている。給紙トレイ20と排紙トレイ21とは、用紙搬送路23によって記録用紙などの被記録媒体が搬送可能に連続されている。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24へ搬送され、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21へ排出される。
給紙トレイ20は上側が開口された容器形状であり、その内部空間に、記録用紙などのシート形状の被記録媒体が積層状態で収容される。給紙トレイ20には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。
排紙トレイ21は、トレイ形状であり、その上面に記録用紙が排出される。排紙トレイ21は、奥行き方向(矢印103)において給紙トレイ20より装置正面側に配置されている。したがって、装置奥部側においては、給紙トレイ20の上側に排紙トレイ21は存在しない。
給紙トレイ20の装置奥部側には、給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、LFモータ128(図16参照)から駆動伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に回転可能に支持されている。給紙アーム26は、給紙ローラ25側を回動先端として回動可能であり、この回動により、給紙ローラ25が給紙トレイ20に接離する方向へ上下動する。給紙アーム26は、給紙ローラ25の重量又はバネなどに付勢されて下側へ回動されており、給紙トレイ20に収容された記録用紙の量に応じて上側へ移動する。これにより、給紙ローラ25が給紙トレイ20における最上位置の記録用紙に接触する。その状態で給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が用紙搬送路23へ送り出される。
用紙搬送路23は、給紙トレイ20の装置奥部側から上方へ延び、続いて装置正面側へ湾曲して、複合機10の背面側から正面側へ延び、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。用紙搬送路23は、画像記録ユニット24などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、装置奥部側において用紙搬送路23が湾曲している部分は、装置フレームなどに固定された外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とによって構成されている。
図2及び図3に示されるように、画像記録ユニット24は、主として記録ヘッド39とプラテン42とが所定間隔で対向配置されて構成されている。画像記録ユニット24の詳細な構成は後述される。
画像記録ユニット24より正搬送向き104の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。なお、図2及び図3においては、ピンチローラ61が他の部材に隠れて現れていないが、図14に示されるように、ピンチローラ61は搬送ローラ60の下側に配置されて、搬送ローラ60に対して接離可能に設けられており、バネなどの弾性部材に付勢されて搬送ローラ60に圧接されている。搬送ローラ60は、LFモータ128(図16参照)から駆動伝達されて回転する。なお、本実施形態においては、正搬送向き104に記録用紙が搬送される態様についてのみ説明がなされるが、本発明における画像記録装置が正搬送又は逆搬送のいずれか一方のみにシートを搬送するものに限定されないことは言うまでもない。
記録用紙は、搬送ローラ60とピンチローラ61とで挟まれた状態で、搬送ローラ60の回転により正搬送向き104へ搬送される。このとき、ピンチローラ61は、記録用紙の搬送に伴って回転する。
画像記録ユニット24より正搬送向き104の下流側には、一対の排紙ローラ62及び拍車が設けられている。なお、図2及び図3においては、拍車が他の部材に隠れて現れていないが、拍車は排紙ローラ62の上側に配置されて、排紙ローラ62に対して接離可能に設けられており、バネなどの弾性部材に付勢されて排紙ローラ62に圧接されている。拍車は、軸方向から視ると径方向へ山形に突出する複数の突部が円周方向に配列された形状である。この山形の突部の先端が記録用紙の記録面と接触する。排紙ローラ62は、LFモータ128(図16参照)から駆動伝達されて回転する。この排紙ローラ62の回転は、前述された搬送ローラ60の回転と同期されている。排紙ローラ62及び拍車は、記録済みの記録用紙を挟んだ状態で排紙トレイ21へ搬送する。
画像記録に際して、搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、間欠駆動される。間欠駆動とは、所定の目標搬送量に相当する回転量だけ搬送ローラ60及び排紙ローラ62が連続して駆動され、目標搬送量に到達すると所定時間だけ回転が停止される。目標搬送量は、記録すべき画像の解像度によって変動され、例えば、インタレース方式で画像記録を行う場合には、中程度の解像度である通常モードの画像記録より高解像度のファインモードの画像記録の方が目標搬送量が少なく設定されることが一般的である。
なお、画像記録を行っていない間においては、搬送ローラ60及び排紙ローラ62は間欠駆動される必要はない。したがって、画像記録前の給紙の際や、画像記録後の排紙の際には、搬送ローラ60及び排紙ローラ62は連続して回転されてよい。
図2に示されるように、用紙搬送路23における搬送ローラ60より正搬送向き104の上流側には、レジストセンサ37が設けられている。レジストセンサ37は、用紙搬送路23を通過する記録用紙の有無を検出する。レジストセンサ37からのオン/オフの信号変化によって、記録用紙の先端又は後端がレジストセンサ37が設けられた位置に到達したか否かが判断される。
[画像記録ユニット24の構成]
図3及び図4に示されるように、画像記録ユニット24は、主として、キャリッジ38、記録ヘッド39、フィルムキャリッジ41及びプラテン42により構成されている。キャリッジ38が、本発明における第1キャリッジに相当し、フィルムキャリッジ41が、本発明における第2キャリッジに相当する。
図2から図4に示されるように、搬送ローラ60及びピンチローラ61より正搬送向き104の下流側であって、排紙ローラ62及び拍車より上流側の用紙搬送路23において、その上側にキャリッジ38及びフィルムキャリッジ41が配置され、その下側にプラテン42が配置されている。キャリッジ38及びフィルムキャリッジ41とプラテン42とは、キャリッジ38及びフィルムキャリッジ41を上側として用紙搬送路23に対して上下に隔てられて対向している。
キャリッジ38は、概ね直方体形状の6面体であり、インクジェット方式の記録ヘッド39を搭載する。キャリッジ38は、正搬送向き104と直交する水平方向(往復動方向105)へ往復動する。この往復動方向105が本発明における第1方向に相当する。また、正搬送向き104に沿った方向が本発明における第2方向に相当する。
各図には現れていないが、複合機10の内部には、記録ヘッド39とは独立してインクカートリッジが配置されている。このインクカートリッジから不図示のインクチューブを通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが記録ヘッド39に供給される。
図6に示されるように、記録ヘッド39の一部は、キャリッジ38がプラテン42と対向する面において露出されている。この露出された面が、本明細書においてノズル面40と称される。同図には詳細に現れていないが、ノズル面40には複数のノズル口が開口している。各ノズル口は、C・M・Y・Bkの各色インクに対応して記録用紙の正搬送向き104に沿って夫々1列に配置されている。記録ヘッド39の内部に設けられたピエゾ素子の振動によって、各ノズル口から各色インクのインク滴が噴出される。キャリッジ38が往復動される間に、記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に噴出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。なお、各ノズルの正搬送向き104に沿ったピッチや数は、記録される画像の解像度などに応じて適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じて各色に対応したノズル口の列数が増減される。
図6に示されるように、キャリッジ38には用紙検出センサ32が設けられている。用紙検出センサ32は、反射型の光学センサである。同図には詳細に現れていないが、用紙検出センサ32は発光素子と受光素子とを有する。この発光素子から光がプラテン42へ向かって照射され、プラテン42からの反射光を受光素子が受光する。そして、用紙検出センサ32は、受光素子の受光レベルに対応した電気信号を出力する。
プラテン42の上面は記録用紙の反射率と異なる反射率である。一般に、記録用紙は白色であるから、プラテン42の上面は黒色に着色されている。このように、プラテン42の反射率と記録用紙の反射率とが異なることから、用紙検出センサ32から出力される信号レベル又は信号の変化によって、プラテン42上に記録用紙が有るかが判断される。
図3及び図4に示されるように、用紙搬送路23の上側において、一対のガイドレール43、44が配置されている。ガイドレール43、44は、記録用紙の正搬送向き104に沿って所定距離が隔てられて、キャリッジ38及びフィルムキャリッジ41の往復動方向105を長手方向として配置されている。ガイドレール43、44は、プリンタ部11の筐体内に設けられており、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成する。
正搬送向き104の上流側に配設されたガイドレール43は、ほぼ平板形状である。ガイドレール43における長手方向(往復動方向105)の長さは、キャリッジ38及びフィルムキャリッジ41の往復動範囲より長く設定されている。正搬送向き104の下流側に配設されたガイドレール44も、ほぼ平板形状であり、その長手方向の長さはガイドレール43の長さと同等である。また、ガイドレール44における正搬送向き104の上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。
キャリッジ38及びフィルムキャリッジ41は、ガイドレール43,44を跨ぐようにしてそれぞれが配置されている。つまり、キャリッジ38の正搬送向き104の上流側端部がガイドレール43上に載置され、キャリッジ38の正搬送向き104の下流側端部がガイドレール44上に載置されている。同様に、フィルムキャリッジ41の正搬送向き104の上流側端部がガイドレール43上に載置され、フィルムキャリッジ41の正搬送向き104の下流側端部がガイドレール44上に載置されている。各図には現れていないが、キャリッジ38は、ガイドレール44の縁部45を、高摺動性の樹脂部材などによってそれぞれ挟み込んでいる。これにより、キャリッジ38は、正搬送向き104に対してそれぞれが位置決めされ、かつ、往復動方向105へ摺動可能である。
ガイドレール44の上面にベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47、従動プーリ48及び無端環状のベルト49を有する。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、ガイドレール44の長手方向における両端付近に夫々配置されている。ベルト49は、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に架け渡されている。ベルト49の内側には複数の歯が設けられており、この歯が駆動プーリ47の歯と噛合する。駆動プーリ47は、CRモータ119(図16参照)から駆動伝達されて回転される。駆動プーリ47の回転に伴ってベルト49が周運動する。このベルト駆動機構46が、本発明における駆動機構に相当する。
図6に示されるように、キャリッジ38におけるノズル面40側に、クリップ36が設けられている。このクリップ36がベルト49を狭持することにより、キャリッジ38がベルト49と連結されている。したがって、ベルト49の周運動に基づいてキャリッジ38がガイドレール43,44上を往復動する。前述のように記録ヘッド39がキャリッジ38に搭載されていることから、キャリッジ38の往復動とともに、記録ヘッド39が往復動方向105へ往復動する。
図3及び図4に示されるように、リニアエンコーダ123(図16参照)のエンコーダストリップ51がガイドレール44に配設されている。エンコーダストリップ51は帯状に形成され、その長手方向に沿って透光部と遮光部とが所定ピッチで交互に配置されている。エンコーダストリップ51は、ガイドレール44の長手方向の両端に設けられた支持部33、34に支持されて、ガイドレール44の上側に長手方向へ延びるように配置されている。キャリッジ38の上面には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。光学センサ35は、エンコーダストリップ51に対応して配置され、キャリッジ38が往復動する際にエンコーダストリップ51のパターンを検知する。光学センサ35の検知信号は、キャリッジ38に搭載された不図示のヘッド制御基板からパルス信号として出力される。このパルス信号に基づいてキャリッジ38の移動方向及び速度が算出され、キャリッジ38の往復動が制御される。
図7及び図8に示されるように、フィルムキャリッジ41は、キャリッジ38を記録ヘッド39と反対側、つまり上側から覆うようにして、キャリッジ38へ組み付けられている。フィルムキャリッジ41は、フレーム63に、4個のローラ72〜75が組み付けられてなる。フレーム63は、正搬送向き104に沿った方向へ離間された2つのブラケット76,77が、正搬送向き104に沿った方向へ延びる4つの支持材64により連結されてなる。このブラケット76,77間に回動軸が支持されることにより、各ローラ72〜75が、正搬送向き104に沿った方向を軸方向としてフレーム63に回転自在に固定されている。
各ローラ72〜75の軸方向の長さは、後述されるガイドフィルム71の幅と同程度乃至若干長い。各ローラ72〜75は、ブラケット76,77における往復動方向105の両側において、上端付近又は下端付近の四隅に夫々配置されている。各ローラ72〜75は、フレーム63と共に往復動し、フレーム63の往復動によってガイドフィルム71に対して回転しつつ移動する。このガイドフィルム71が本発明における長尺部材に相当する。また、ローラ72〜75が、本発明におけるガイド部材に相当する。
正搬送向き104の上流側に配置されたブラケット76には、正搬送向き104と反対向きへ突出する2つのクリップ67が、往復動方向105に離間されて設けられている。このクリップ67は、ガイドレール43における正搬送向き104の下流側の端部を挟み込んで、ガイドレール43に沿って往復動方向105へ摺動可能である。
正搬送向き104の下流側に配置されたブラケット77には、正搬送向き104へ突出する一対の突部68,69が、往復動方向105に離間されて設けられている。一対の突部68,69は、高さ方向102へ離間されており、この離間距離は、ガイドレール44における端部45の高さに対応されている。したがって、一対の突部68,69は、ガイドレール44の端部45を挟み込んで、ガイドレール44に沿って往復動方向105へ摺動可能である。
前述されたように、キャリッジ38と、フィルムキャリッジ41とは、ガイドレール43,44に対してそれぞれが位置決めされているので、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とは、ガイドレール43,44に対してそれぞれが独立して摺動可能である。そして、キャリッジ38に対してフィルムキャリッジ41が組み付けられることによって、キャリッジ38の往復動にフィルムキャリッジ41が従動する。キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とが組み付けられた状態において、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41との間には、高さ方向102及び往復動方向105に対して、それぞれ隙間138,139が形成されている(図12,13参照)。
図12,13に示されるように、往復動方向105の隙間138は、キャリッジ38の往復動方向105の両端側又は一端側に形成される。キャリッジ38の往復動方向105の両端側又は一端側のいずれに形成されるかは、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41との相対的な位置関係によって決定される。同図には、キャリッジ38の両端に隙間138が形成された状態が示されている。フィルムキャリッジ41のフレーム63には、各ブラケット76,77におけるキャリッジ38と対向する面に、当接部145,146が設けられている。この当接部145,146は、各ブラケット76,77からキャリッジ38へ向かって往復動方向105に沿って突出されており、その先端面が高さ方向102及び正搬送向き104に沿った平面をなしている。キャリッジ38とフィルムキャリッジ41との相対的な位置関係が変動されることによって、当接部145,146のいずれかがキャリッジ38の往復動方向105の一方の側面に当接する。
前述されたクリップ67及び一対の突部68,69によって、フレーム63がガイドレール43,44に対して高さ方向102に位置決めされている。図18に示されるように、突部68、69の往復動方向105及び高さ方向102の離間距離と、ガイドレール44の端部45の厚さによって、フィルムキャリッジ41がガイドレール44に対して相対的に傾くことのできる最大角度θが決まる。具体的には、突部68、69の高さ方向102に沿った離間距離と端部45の厚さとの差と、突部68、69の往復動方向105に沿った離間距離との比がtanθとなるような角度がθである。フィルムキャリッジ41はガイドレール44に対して角度θ以上に傾くことはできない。この角度θが本発明における第1角度に相当する。なお図18では突部68、69とガイドレール44の端部45と角度θとの関係を示したが、クリップ67とガイドレール43との関係によっても同様に最大の傾き角度が考えられる。本実施例ではこの角度はθよりも大きく、従ってフィルムキャリッジ41全体としての最大傾き角度はθであるものとする。逆にクリップ67とガイドレール43との関係から与えられる角度の方が小さい場合にはこの角度を第1角度とみなせば本発明の主旨は変更されないのはもちろんである。クリップ67及び突部68、69が本発明における規制部材に相当する。また、ブラケット76,77がガイドレール43,44の端部と当接することによって、フレーム63が正搬送向き104に対して位置決めされている。なお、ブラケット76,77とガイドレール43,44との間には適当な隙間が設けられてもよい。
一方、ガイドレール43、44が無い状態でフィルムキャリッジ41をキャリッジ38に対して上記と同じ回転中心まわりに傾ける場合には、クリップ67や突部68,69とガイドレール43、44によってフィルムキャリッジ41の回転が規制されることがない。また他にフィルムキャリッジ41のガイドレール43、44に対する相対回転を規制するものがないように構成されているので、フィルムキャリッジ41はキャリッジ38に対しθよりも大きな角度だけ相対回転することができる。ただしここでフィルムキャリッジ41がキャリッジ38に対して回転する向きは、θの定義に際してフィルムキャリッジ41をガイドレール43、44に対して回転させた向きと同じ向き(図18の矢印107の向き)について考えるものとする。
[ガイドフィルム71]
図4から図6に示されるように、ガイドフィルム71は、薄膜の平帯形状である。ガイドフィルム71は、キャリッジ38が往復動する領域における往復動方向105の両側に夫々接続されている。ガイドフィルム71の一端はプリンタ部11のフレームなどに固定具65を介して接続されてプラテン42に対して相対移動しないように固定されており、他端はローラ66に巻かれて下方へ延出されて、一端と同様に不図示の固定具によりフレームなどに接続されてプラテン42に対して相対移動しないように固定されている。各図には現れていないが、他端の固定具においてガイドフィルム71の張力が調整可能である。このガイドフィルム71が、本発明における長尺部材に相当する。また、固定具65が、本発明における支持部材に相当する。
ガイドフィルム71は、フィルムキャリッジ41に設けられた各ローラ72〜75へ巻かれて、フィルムキャリッジ41とキャリッジ38とが組み付けられた状態において、記録ヘッド39のノズル面40以外を囲むように変形されている。フィルムキャリッジ41の周囲においてガイドフィルム71が変形した一部が、本明細書において変形部分80と称される。ガイドフィルム71においてプラテン42の上面と対向する変形部分80以外の一部が対向部分81と称される。
図12,13に示されるように、ガイドフィルム71の変形部分80は、フィルムキャリッジ41の往復動方向105の両側夫々において下面付近の各ローラ72,75に夫々巻かれて高さ方向102に沿ってプラテン42から離間又は接近され、上面付近の各ローラ73,74に巻かれて往復動方向105に沿って延出されている。ガイドフィルム71の変形部分80において、各ローラ72,75に夫々巻かれて高さ方向102に沿ってプラテン42から離間及び近接する方向が、本明細書において変形方向106(図12参照)と称される。この変形方向106が、本明細書における第3方向に相当する。なお、この変形方向106は、必ずしも高さ方向102と合致しなくともよい。
図5に示されるように、ガイドフィルム71の対向部分81は、記録ヘッド39のノズル面40より若干プラテンに近い高さにおいて、フィルムキャリッジ41の両側から往復動方向105へ夫々延出されている。このように変形部分80以外においてガイドフィルム71が延出されている方向が長手方向であり、ガイドフィルム71の短手方向は正搬送向き104に沿っている。また、対向部分81の表裏面はほぼ水平方向に延びており、本明細書においては、ガイドフィルム71の表裏面のうち、プラテン42と対向している面が対向面82と称される。対向面82が、本発明における長尺部材の平面に相当する。
図6に示されるように、ガイドフィルム71の幅83(正搬送向き104に沿った長さ)は、記録ヘッド39におけるノズル面40の正搬送向き104の長さ84より広い。そして、ガイドフィルム71は、その幅83内にノズル面40が収まるようにフィルムキャリッジ41に対して配置されている。また、キャリッジ38に設けられた用紙検出センサ32も、ガイドフィルム71の幅83に収まる位置に配置されている。
図12,13に示されるように、キャリッジ38の近傍においては、ガイドフィルム71の対向面82からプラテン42の上面までの第1間隔85は、記録ヘッド39のノズル面40からプラテン42の上面までの第2間隔86より若干小さい。なお、図13に示される位置が、記録ヘッド39のノズル面40が記録ヘッド39においてプラテン42に最近接する位置である。
フィルムキャリッジ41が往復動することにより、ガイドフィルム71は、その変形部分80をフィルムキャリッジ41の往復動に追従させるように変形する。例えば、図17に示されるように、フィルムキャリッジ41が矢印117(図17における左向き)へ移動すると、ガイドフィルム71は、各ローラ72〜75に案内されてフィルムキャリッジ41に追従して変形部分80を矢印117へ移動するように変形する。つまり、フィルムキャリッジ41のローラ72に巻かれることにより、ガイドフィルム71の対向部分81が変形部分80となり、フィルムキャリッジ41のローラ74を通過することにより変形部分80が対向部分81となる。このように変形部分80がフィルムキャリッジ41の往復動に追従しても、対向部分81は、プラテン42に対して往復動方向105へ相対移動しない。このように、フィルムキャリッジ41の移動に伴って、変形部分80がガイドフィルム71における位置を変えながら動き、かつ常に記録ヘッド39のノズル面40をプラテン42に直接対向させる動作が、本発明において、記録ヘッド39をプラテン42に直接対向させるようにフィルムキャリッジ41の移動にガイドフィルム71が従動すると表現される。
図14に示されるように、搬送ローラ60より正搬送向き104の下流側からガイドフィルム71へ向かって導入フィルム87が設けられている。導入フィルム87は薄膜形状であり、正搬送向き104において上流側となる第1端88が、搬送ローラ60のローラ面より直下流側であって搬送ローラ60とピンチローラ61とのニップ位置より若干上方に配置されている。導入フィルム87の正搬送向き104において下流側となる第2端89は、ガイドフィルム71の下側へ進入している。第2端89の位置は、ガイドフィルム71の上流端70より下流側であって、記録ヘッド39のノズル面40及び用紙検出センサ32に対応する位置まで到達しない範囲で設定されている。搬送ローラ60及びピンチローラ61にニップされてプラテン42へ搬送される記録用紙は、導入フィルム87に案内されて、ガイドフィルム71とプラテン42との間に導かれる。
図9〜図11に示されるように、キャリッジ38は、記録ヘッド39を搭載するキャリッジ本体185と、ガイドフレーム43,44にそれぞれ摺接してキャリッジ本体185を所定の高さに支持する摺動部材186と、摺動部材186を上方へ弾性付勢するコイルバネ187と、キャリッジ本体185と摺動部材186との間に介設されたギャップ調整部材188とを具備する。摺動部材186、コイルバネ187、ギャップ調整部材188は、ガイドフレーム43,44に対応して、キャリッジ本体185の正搬送向き104の上流側及び下流側にそれぞれ組み付けられているが、これらは同様の構成なので、以下、正搬送向き104の下流側の構成を例に詳細な構成が説明される。この摺動部材186、コイルバネ187及びギャップ調整部材188によって、本発明におけるギャップ調整機構が構成されている。なお、図10及び図11ではフィルムキャリッジ41が省略されている。
図9に示されるように、摺動部材186は、ガイドフレーム43,44と摺接する摺接板189と、摺接板189から延出された足部190とを有する。摺接板189は短手方向の長さがギャップ調整部材188の短手方向の長さと略同一の矩形の平板であり、その底面がガイドフレーム43,44に接触しながら摺動される。摺接板189の上面には、長手方向の縁部に沿って一対の突条191が形成されており、一対の突条191がギャップ調整部材188の底面に均等に当接することにより、摺接板189の底面がガイドフレーム43,44の上面と平行に位置決めされる。
足部190は、摺接板189の上面の略中央から該上面と略直交する方向へ延出されている。足部190は、摺接板189の長手方向に延びる平板形状であり、その平板形状の厚み方向に貫通する案内溝192が、足部190の延出方向に形成され、足部190の延出端(図9の上側)において開口している。この案内溝192に、後述されるキャリッジ本体185の支持リブ198が嵌挿され、摺動部材186が案内溝192に沿って上下方向へ移動可能に支持される。足部190の延出端の両側には、摺接板189の長手方向の外側へ向かって突出する係止部193が形成されている。係止部193により、摺接板189が留め板194に係止される。留め板194には、足部190を挿入するための貫通孔195が穿設されている。貫通孔195の幅は、一対の係止部193の外縁の間より狭い。一対の係止部193は、いわばスナップフィットのように、案内溝192の溝幅を狭めるように内側へ押圧されることにより弾性変形されて、留め板194の貫通孔195に挿通され、その押圧が解除されると、弾性復帰して貫通孔195の周縁より外側へ突出する。この一対の係止部193により、足部190が貫通孔195から抜け出ないように、摺接板189が留め板194に係止される。
図10に示されるように、キャリッジ本体185における搬送方向下流側には、キャリッジ38のスライド方向(図10における左右方向)に隔てられて、摺動部材186を上下動可能に支持する支持部材196がそれぞれ設けられている。支持部材196は、コイルバネ187の外径より若干大きい内径の凹部が下方向に凹陥されたものであり、該凹部の底面に、摺動部材186の足部190が挿通される貫通孔197と、摺動部材186の案内溝192に嵌入される支持リブ198とが形成されている。この支持リブ198が、摺動部材186の案内溝192に嵌入されることにより、摺動部材186が、案内溝192に沿って上下動可能に支持部材196に支持される。
図9及び図10に示されるように、ギャップ調整部材188は、細長棒状の平板であり、摺動部材186と支持リブ198との間に介設される。ギャップ調整部材188は、その長手方向に隔てられて2段階の調整部位199が形成されている。2段階の調整部位199は、その肉厚(図9における上下方向)がギャップ調整部材188のスライド方向に2段階に変化されている。詳細には、薄肉部210と厚肉部211とが、一方向に肉厚が段階的に変化するように隣接して形成されている。薄肉部210及び厚肉部211の各上面は水平面であり、各上面の長手方向の長さは、摺動部材186の足部190の長手方向の長さより若干長くなっている。
薄肉部210の上面と厚肉部211の上面の境界には、厚み変化を緩やかにするために傾斜面212がそれぞれ形成されている。この傾斜面212は、薄肉部210の上面及び厚肉部211の上面に連続して形成されている。傾斜面212によって、調整部位199の肉厚が緩やかに変化するので、ギャップ調整部材188のスライド移動が円滑となる。薄肉部210及び厚肉部211の各上面は、図10に示されるように、ギャップ調整部材188がキャリッジ本体185に組み付けられた状態においてほぼ水平である。
各調整部位199には、薄肉部210及び厚肉部211に渡って厚み方向に貫通する長孔113が、ギャップ調整部材188の短手方向の略中央に形成されている。長孔113の短手方向の幅(図10における紙面垂直方向)は、摺動部材186の足部190の厚みより若干広く、この長孔113に足部190が貫通される。長孔113に貫通された足部190の延出端は、キャリッジ本体185の支持部材196の貫通孔197に挿通される。また、足部190の案内溝192には、支持リブ198が嵌入される。そして、足部190の係止部193が留め板194に係止される。
留め板194と支持部材196との間には、コイルバネ187が介設されており、コイルバネ187により、留め板194には支持部材196に対して上方向の弾性付勢力が付与される。この弾性付勢力が、留め板194を介して摺動部材186に作用し、摺動部材186は、支持リブ198が許容する上下動範囲内で最も上側に位置するように弾性付勢される。また、支持リブ198と摺動部材186の摺接板189との間には、ギャップ調整部材188が介設されているので、ギャップ調整部材188の調整部位199の肉厚分だけ、摺動部材186が弾性付勢力に反して下側へ移動される。調整部位199には、前述したように長孔113が形成されているので、ギャップ調整部材188は、摺動部材186の足部190を肉厚方向に貫通させた状態でスライド移動可能である。ギャップ調整部材188がスライド移動することにより、支持リブ198と摺接板189との間に位置する調整部位199の肉厚が変化され、その肉厚変化により、摺動部材186の上下方向の位置が変化される。つまり、図10に示されるように、支持リブ198と摺接板189との間に薄肉部210が介在することにより、支持リブ198と摺接板189との間隔が狭められる。図11に示されるように、支持リブ198と摺接板189との間に厚肉部211が介在することにより、支持リブ198と摺接板189との間隔が拡げられる。
摺動部材186は、足部190の案内溝192に支持リブ198が嵌入されることにより、ギャップ調整部材188のスライド方向に対して位置決めされる。さらに、足部190がギャップ調整部材188の調整部位199の長孔113に貫通されることにより、摺動部材186は、正搬送向き104に対して位置決めされる。さらに、摺接板189がギャップ調整部材188の底面に当接されることにより、摺接板189の摺接面(底面)がガイドフレーム43,44の上面に対して平行に位置決めされる。これにより、摺動部材186の上下動に際して捻れや回転が生じず、キャリッジ38をガイドフレーム43,44上に水平に支持することができる。また、支持リブ198が、摺動部材186が上下動可能に支持されるとともに、ギャップ調整部材188と当接されることにより、キャリッジ38の往復動方向の幅を小さくして、摺動部材186を上下動させる構成が実現される。
図10及び図11に示されるように、摺動部材186と支持リブ198との間に介設されたギャップ調整部材188は、そのスライド方向両端がキャリッジ本体185からそれぞれ突出する長さである。このスライド方向両端が、ガイドフレーム43,44の両端を切り起こして形成された壁147,148(図3及び図4参照)に当接されることにより、ギャップ調整部材188のスライド位置が変化される。
図7に示されるように、前述された摺動部材186、コイルバネ187、及びギャップ調整部材188がキャリッジ本体185の正搬送向き104の上流側及び下流側にそれぞれ設けられ、キャリッジ本体185には、摺動部材186を支持するための支持部材196がそれぞれ設けられている。キャリッジ本体185の正搬送向き104の下流側には、2つの摺動部材186が配設され、この2つの摺動部材186が一つのギャップ調整部材188のスライド位置により上下動されるように構成されている。一方、キャリッジ本体185の正搬送向き104の上流側には、1つの摺動部材186が配設され、この1つの摺動部材186を上下動すべく、ギャップ調整部材188の中央に調整部位199が形成されている。
正搬送向き104の上流側及び下流側の各ギャップ調整部材188が、各摺動部材186を所定の高さに保持する位置は連係されており、キャリッジ38のスライド移動により、各ギャップ調整部材188のスライド方向両端が当接されて変動するスライド位置は、3つの摺動部材186が同じ高さに保持するものとなっている。したがって、キャリッジ本体185は、常にガイドフレーム43,44の上面に対して平行に維持され、キャリッジ本体185に搭載された記録ヘッド39を水平に維持した状態で、キャリッジ本体185が上下動される。
ガイドレール43,44の下側に、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38が往復動する領域のうち、記録用紙が通過する中央部分を占めるように配設されている。プラテン42は、その上面において記録用紙を支持する。プラテン42の上面の幅(往復動方向105)は、プリンタ部11において使用可能な記録用紙の最大幅より十分に幅広である。プラテン42の上面に支持された記録用紙は、記録ヘッド39との距離が一定に保持される。
後述される制御部110(図16参照)から記録ヘッド39のヘッド制御基板への記録用信号などの伝送は、フラットケーブル52を通じて行われる。フラットケーブル52は、制御部110とヘッド制御基板とを電気的に接続する。フラットケーブル52は、電気信号を伝送する複数本の導電線をポリエステルフィルムなどの合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものである。フラットケーブル52は、インクチューブと同様に、キャリッジ38の往復動に追従して撓む。
前述されたように、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が停止されている間にキャリッジ38が往復動される。このキャリッジ38の往復動の間に、記録ヘッド39の各ノズル口から各色インクが微小なインク滴として選択的にプラテン42へ向かって噴出される。図5に示されるように、ノズル面40からインク滴が噴出される噴出向き108は鉛直下方である。従って、噴出向き108は、正搬送向き104及び往復動方向105に直交する。ノズル面40から選択的に噴出されたインク滴がプラテン42上の記録用紙に着弾することにより、記録用紙に所望の画像が記録される。
[パージ機構130、ワイパ131及び廃インクトレイ132]
図4及び図15に示されるように、プラテン42に対して往復動方向105の両側には、パージ機構130、ワイパ131及び廃インクトレイ132が夫々配置されている。なお、図4においては、ガイドフィルム71に隠れてパージ機構130、ワイパ131及び廃インクトレイ132が現れていないので、図中において点線でこれらの配置が示されている。パージ機構130及びワイパ131は、プラテン42に対して往復動方向105の同じ側(図15における右側)に配置され、一方、廃インクトレイ132のみが、プラテン42に対して往復動方向105の反対側(図15における左側)に配置されている。
パージ機構130は、主としてキャップ133,134と吸引ポンプ135とから構成されている。また、不図示の駆動機構によって、キャップ133,134は、記録ヘッド39のノズル面40に対して接離する方向(矢印109)へ移動される。このキャップ133,134の移動は、LFモータ128(図16参照)からの駆動伝達により実現される。
各キャップ133,134は、ノズル面40に密着して、各ノズル口を密閉空間で覆う。キャップ133は、カラーインクであるC・M・Yの各色インクを噴出するノズル口を一体に覆い、キャップ134は、黒色(Bk)インクを噴出するノズル口を一体に覆う。各キャップ133,134がノズル面40と密着するリップ部分はゴムなどの弾性部材からなり、各キャップ133,134がノズル面40に対して押圧されることによって弾性変形する。このリップ部分の弾性変形によって、リップ部分とノズル面40とが密着されて、各キャップ133,134の内部空間が密閉空間となる。
各キャップ133,134の底面には開口が夫々設けられており、この開口に通ずる流路136,137を夫々通じて各キャップ133,134が吸引ポンプ135と連結されている。吸引ポンプ135は、いわゆるチューブポンプであり、LFモータ128(図16参照)からの駆動伝達により動作される。吸引ポンプ135が動作されると、各流路136,137を通じて各キャップ133,134の内部空間に吸引圧が発生する。各キャップ133,134がノズル面40に密着されていると、この吸引圧によって、記録ヘッド39の各ノズル口から各色のインクが各キャップ133,134内へ夫々吸引される。記録ヘッド39から各色のインクが吸引される際に、記録ヘッド39内に生じた気泡やゴミなどがインクとともに各キャップ133,134内へ吸引される。本明細書において、このような吸引動作がパージと称される。
ワイパ131は、記録ヘッド39のノズル面40に当接して、ノズル面40に付着したインクを拭うものである。ワイパ131は、ゴムなどの弾性部材からなる平板形状の部材であり、ノズル面40において搬送方向104へ並ぶ全ノズル口の範囲より長い幅を有し、その幅方向が搬送方向104となるように配置されている。また、不図示の駆動機構によって、ワイパ131は、記録ヘッド39のノズル面40に対して接離する方向(矢印109)へ移動される。このワイパ131の移動は、LFモータ128(図16参照)からの駆動伝達により実現される。
ワイパ131は、パージ機構130よりプラテン42側に配置されている。ワイパ131は、主としてパージ機構130によってパージされたノズル面40に残留するインクを拭い取るために用いられる。したがって、ワイパ131は、後述されるように、パージが終了した記録ヘッド39が、キャリッジ38とともにプラテン42と対向する位置へ戻る際にメンテナンス位置へ移動される。本明細書において、このようにノズル面40のインクを拭い取る動作がワイピングと称される。
廃インクトレイ132は、メンテナンスのために記録ヘッド39から噴出されるインク滴を受けるものである。廃インクトレイ132は、記録ヘッド39のノズル面40に対応するトレイ形状であり、その内部空間にインク吸収材が充填されている。インク吸収材は、記録ヘッド39から噴出されたインク滴を吸収して保持する。例えばパージが行われてワイパ131によってノズル面40のインクが拭い取られると、各ノズル口に、対応するインク色以外のインクが若干混入するおそれや、各ノズル口におけるインクのメニスカスが正常でない状態となるおそれがある。したがって、パージの後に記録ヘッド39の全ノズル口からインク滴を噴出することによって、混入したインクを排出したり、各ノズル口のメニスカスを正常な状態に復帰させる。本明細書において、このようなインク滴の噴出動作がフラッシングと称される。
図15に示されるように、ガイドフィルム71は、前述されたパージ機構130の各キャップ133,134、ワイパ131及び廃インクトレイ132をも覆う位置まで往復動方向105へ延出されている。また、キャリッジ38は、パージ機構130の各キャップ133,134、ワイパ131及び廃インクトレイ132と対向する位置まで移動可能である。前述されたように、このキャリッジ38の移動に伴って、変形部分80がガイドフィルム71における位置を変えながら動き、記録ヘッド39のノズル面40が、パージ機構130、ワイパ131又は廃インクトレイに直接対向される。
[制御部110]
制御部110は、プリンタ部11のみでなくスキャナ部12も含む複合機10の全体動作を制御するものである。なお、スキャナ部12の制御に関する構成は、本発明の主要な構成ではないので、その詳細な説明は省略される。
図16に示されるように、制御部110は、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)114を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部110は、バス115を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)116に接続されている。
ROM112には、後述される画像記録動作などの複合機10の各種動作を制御するためのプログラムなどがROM112に格納されている。RAM113は、CPU111が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。EEPROM114に、電源オフ後も保持すべき設定やフラグなどが格納される。
ASIC116は、CPU111からの指令に従い、LFモータ128に通電するPWM信号などを生成する。この信号は、LFモータ128の駆動回路118に付与され、この駆動回路118を介して駆動信号がLFモータ128に通電される。このようにして、LFモータ128の回転制御が行われる。LFモータ128は、給紙ローラ25、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の駆動源であり、且つパージ機構130及びワイパ131の駆動源でもある。
駆動回路118は、LFモータ128を所望の回転で駆動させるものである。駆動回路118は、ASIC116からの出力信号を受けて、LFモータ128を回転するための電気信号を生成する。この電気信号を受けてLFモータ128が回転する。LFモータ128の回転が給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、パージ機構130及びワイパ131へ伝達される。
ASIC116は、CPU111からの指令に従い、CRモータ119に通電するPWM信号などを生成する。この信号は、CRモータ119の駆動回路120に付与され、この駆動回路120を介して駆動信号がCRモータ119に通電される。このようにして、CRモータ119の回転制御が行われる。
駆動回路120は、CRモータ119を所望の回転で駆動させるものである。駆動回路120は、ASIC116からの出力信号を受けて、CRモータ119を回転するための電気信号を生成する。この電気信号を受けてCRモータ119が回転する。CRモータ119の回転力は、ベルト駆動機構46を介してキャリッジ38へ伝達され、これにより、キャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部110により制御される。
駆動回路121は、記録ヘッド39を所定のタイミングで駆動させるものである。CPU111から出力される駆動制御手順に基づいて、ASIC116が出力信号を生成する。この出力信号に基づいて駆動回路121が記録ヘッド39を駆動制御する。この駆動回路121は、ヘッド制御基板に搭載されている。駆動回路121から出力される信号は、フラットケーブル52を介して制御部110を構成するメイン基板からヘッド制御基板へ伝送される。これにより、記録ヘッド39は、所定のタイミングで各色インクを記録用紙に対して選択的に噴出する。
搬送ローラ60の回転量は、ロータリーエンコーダ122の検出信号に基づいて判定される。図3及び図4に示されるように、ロータリーエンコーダ122は、搬送ローラ60と同軸に設けられて回転するエンコーダディスク53の光学パターンを光学センサ57で検知して、その光学パターンに応じた電気信号をエンコーダ量として出力する。制御部110は、用紙検出センサ32又はレジストセンサ37の検出信号及びロータリーエンコーダ122が検出するエンコーダ量に基づいて記録用紙の先端又は後端の位置を把握する。制御部110は、記録用紙の先端がプラテン42の所定の位置に到達すると、記録用紙を所定の改行幅ごとに間欠搬送すべくLFモータ128の回転を制御する。この改行幅は、画像記録の条件として入力された解像度などに基づいて設定される。
キャリッジ38の位置は、リニアエンコーダ123の検出信号に基づいて判定される。図3及び図4に示されるように、リニアエンコーダ123は、キャリッジ38を案内するガイドレール43,44に沿って設けられたエンコーダストリップ51の光学パターンを、キャリッジ38に搭載された光学センサ35で検知して、その光学パターンに応じた電気信号をエンコーダ量として出力する。キャリッジ38は、複合機10の電源オンにより、往復動範囲の一方の端まで移動され、リニアエンコーダ123による検知位置が初期化される。キャリッジ38が初期位置からガイドレール43,44に沿って移動すると、キャリッジ38に設けられた光学センサ35がエンコーダストリップ51の光学パターンを検知して位相の異なる複数のパルス信号を出力する。制御部110は、これらパルス信号に基づいて、キャリッジ38の移動方向及び速度を把握する。また、制御部110は、この移動方向及び速度に基づいてキャリッジ38の往復動を制御すべく、CRモータ119の回転を制御する。
スキャナ部12、複合機10の操作指示を行うための操作パネル14、パソコンなどの外部情報機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース124及びUSBインタフェース125などがASIC116に接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)126やモデム(MODEM)127もASIC116に接続されている。
[画像記録動作]
以下にプリンタ部11による画像記録動作が説明される。
画像記録の開始が操作パネル14に入力されると、給紙ローラ25の回転によって給紙トレイ20に貯蔵された記録用紙90(図17参照)が用紙搬送路23へ供給される。用紙搬送路23へ供給された記録用紙90は、搬送ローラ60及びピンチローラ61にニップされてプラテン42へ搬送される。なお、記録用紙90がレジストセンサ37を通過する過程において記録用紙90の先端位置が把握される。
搬送ローラ60及びピンチローラ61にニップされて搬送される記録用紙90の先端は、導入フィルム87に案内されて、ガイドフィルム71とプラテン42との間に導かれる。記録用紙90の先端が記録ヘッド39による画像記録領域へ進入すると、搬送ローラ60が所定の搬送量毎に間欠して回転される。搬送ローラ60が間欠して停止している間にキャリッジ38が往復動方向105へ往復動される。キャリッジ38が往復動する間に、記録ヘッド39の各ノズル面40から各色のインク滴が選択的に噴出向き108へ噴出される。インク滴の噴出は、キャリッジ38が往復動する両方向において行われても片方向においてのみ行われてもよい。ノズル面40から噴出されたインク滴はプラテン42上の記録用紙90に着弾する。これにより、1パス分の画像記録が終了する。
キャリッジ38が1回往復動されると、搬送ローラ60が再び所定の搬送量だけ回転されてプラテン42上を記録用紙90が正搬送向き104へ搬送される。そして、搬送ローラ60が間欠して停止している間にキャリッジ38が往復動方向105へ往復動され、同様にして記録ヘッド39のノズル面40からインク滴が選択的に噴出されて2パス目の画像記録が行われる。これが繰り返されて記録用紙90に所望の画像が記録される。
なお、記録用紙90に縁無し印刷を行う場合には、キャリッジ38に搭載された用紙検出センサ32の出力信号に基づいて、プラテン42上の記録用紙の縁が検出される。前述されたように、用紙検出センサ32は、キャリッジ38の下面側においてガイドフィルム71の幅83に収まる位置に配置されているので、用紙検出センサ32から照射される光は、導入フィルム87に遮られることなくプラテン42上の記録用紙90へ到達し、その反射光も導入フィルム87に遮られることなく用紙検出センサ32へ到達する。そして、検出された記録用紙90の縁に対応する位置まで記録ヘッド39からインク滴が噴出されて、記録用紙90に縁無し印刷が行われる。
前述されたような画像記録において、キャリッジ38が往復動する領域にはガイドフィルム71が設けられている。図17に示されるように、キャリッジ38が矢印117向きに移動されると、フィルムキャリッジ41に対してキャリッジ38が相対移動した後、キャリッジ38の側壁とフィルムキャリッジ41の当接部145とが当接する。そして、キャリッジ38の側壁に押されるようにして、フィルムキャリッジ41が矢印117向きへ移動する。ガイドフィルム71の変形部分80は、フィルムキャリッジ41の移動に追従する。フィルムキャリッジ41の移動に変形部分80が従動することによって、記録ヘッド39のノズル面40が常にプラテン42に直接対向されるので、記録ヘッド39から所望のタイミングでプラテン42上の記録用紙90にインク滴が噴出される。一方、ガイドフィルム71の対向部分81は、フィルムキャリッジ41が往復動してもプラテン42に対して往復動方向105へ相対移動しない。したがって、プラテン42上の記録用紙90は、ガイドフィルム71の対向部分81によって記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42側へ位置せしめられる。
前述されたように、キャリッジ38の往復動にフィルムキャリッジ41が従動する動作において、フィルムキャリッジ41の進行向き(矢印117)の前側と後側とにおいてガイドフィルム71の張力が変動することがある。具体的には、ガイドフィルム71において、フィルムキャリッジ41が進行する向き(矢印117)の前側の張力より後側の張力が大きくなる。これにより、図18に矢印107で示されるように、フィルムキャリッジ41を回転運動させるモーメントが発生する。フィルムキャリッジ41は、このモーメントによって、ガイドレール43,44との間で許容されているガタツキ角度θの範囲内で矢印107へ回転する。つまり、フィルムキャリッジ41が矢印107へ傾く。
前述されたように、フィルムキャリッジ41は、キャリッジ38に対して矢印107の向きに角度θより大きな角度の相対回転が可能なので、フィルムキャリッジ41が矢印107へ角度θより小さな角度傾いたとしても、その傾きがキャリッジ38へは伝達されず、キャリッジ38はガイドレール43,44に対して安定した姿勢を維持する。つまり、記録ヘッド39のノズル面40が、プラテン40上の記録用紙90に対して水平に維持される。
また、前述されたギャップ調整部材188がスライドされることによって、図19に示されるように、記録ヘッド39のノズル面40からプラテン42の上面までの距離、つまりヘッドギャップが変動されても、キャリッジ38は、フィルムキャリッジ41に対して高さ方向102へ相対移動可能なので、キャリッジ38が高さ方向102へ移動されても、フィルムキャリッジ41は高さ方向102に移動されない。つまり、キャリッジ38の高さ方向102への移動がフィルムキャリッジ41に伝達されず、キャリッジ38は、フィルムキャリッジ41に対して相対移動するのみである。これにより、ヘッドギャップが変動されても、ガイドフィルム71が高さ方向102へ引っ張られて斜めになることがないので、キャリッジ38の高さ方向102への移動がガイドフィルム71の張力に影響しない。したがって、ヘッドギャップの変更によって、キャリッジ38が傾いたり、キャリッジ38が移動されるときの摺動抵抗が変動したりすることがない。
[本実施形態の作用効果]
前述されたように、プリンタ部11によれば、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とがフィルムキャリッジ41のガイドレール43,44に対する最大回転可能量よりも大きく相対回転可能に連結されているので、フィルムキャリッジ41の移動に伴ってガイドフィルム71の張力が変動し、フィルムキャリッジ41がガイドレール43,44に対して傾いたとしても、キャリッジ38に搭載された記録ヘッド39が安定した姿勢で移動されるので、高精度な画像記録が実現される。
また、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とが高さ方向102に対して相対移動可能に連結されているので、ヘッドギャップが調整されてキャリッジ38が高さ方向102へ移動されても、フィルムキャリッジ41は高さ方向102へ移動されないので、ガイドフィルム71の張力が変動せず、キャリッジ38の姿勢が乱されたり、キャリッジ38を移動させるときの摺動抵抗が変動したりすることがない。これにより、ギャップ調整機構が設けられても、キャリッジ38に搭載された記録ヘッド39が安定した姿勢で移動されるので、高精度な画像記録が実現される。また、ヘッドギャップの調整のためにガイドフィルム71を延出方向へ長くする必要がないので、ヘッドギャップに拘わらず、ガイドフィルム71を安定して往復動方向105へ延出させることができる。
また、ガイドフィルム71とプラテン42との第1間隔85は、記録ヘッド39のノズル面40とプラテン42との第2間隔86以下なので、プラテン42上の記録用紙90が記録ヘッド39に接触しないようにガイドフィルム71でおさえることができる
また、ガイドフィルム71が平帯形状なので、プラテン42上の記録用紙90を平面で押さえることができる。
また、ガイドフィルム71は、正搬送向き104に沿った方向の幅が、記録ヘッド39の正搬送向き104に沿った方向の長さよりも広いので、これにより、記録ヘッド39がプラテン42上の記録用紙50と接触することを原因として紙詰まりが生ずることを確実に防止できる。また、記録ヘッド39のノズル面40に対して、記録用紙90が所定の距離に位置せしめられるので、高精度な画像記録が実現される。
なお、本実施形態において、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とが高さ方向102へ相対移動するための設けられる隙間139は、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41との相対回転を妨げず、且つヘッドギャップの調整のために必要な寸法があれば十分である。したがって、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とが高さ方向102に対して係合するように組み付けられるものであっても、その係合部分において、ヘッドギャップの調整のために必要な隙間139が設けられることにより、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とが高さ方向102へ相対移動可能である態様であっても、本実施形態と同様の作用効果が奏される。
[第1実施形態の変形例]
前述された第1実施形態では、キャリッジ38に対して高さ方向102へ相対移動可能に組み付けられたフィルムキャリッジ41の当接部145,146のいずれかが、キャリッジ38の一方の側面に当接してキャリッジ38の移動がフィルムキャリッジ41へ伝達され、他方には隙間が形成される構成が示されているが、このような当接部145,146に代えて、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とが、弾性変形可能なゴム149,150によって連結されてもよい。
図20に示されるように、ゴム149は、往復動方向105へ延出されて、キャリッジ38の往復動方向105における一方の側面とフィルムキャリッジ41とを連結するものであり、ゴム150は、往復動方向105へ延出されて、キャリッジ38の往復動方向105における他方の側面とフィルムキャリッジ41とを連結するものである。キャリッジ38が矢印117へある程度相対移動すると、ゴム149が弾性変形して伸びると共にゴム150が弛む。弾性変形して伸びたゴム149によって、キャリッジ38の矢印117への移動がフィルムキャリッジ41へ伝達される。キャリッジ38が矢印117と反対向きへ移動する場合は、ゴム149とゴム150の伸びと撓みが入れ替わる他は同様である。
キャリッジ38及びフィルムキャリッジ41がガイドフレーム43,44に対して許容されているガタツキやヘッドギャップの調整などによって傾いたり高さ方向102へ移動されても、ゴム149,150において弾性変形により発生する力の高さ方向102に沿った成分は小さいため、キャリッジ38又はフィルムキャリッジ41の重量などの抵抗力によって、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とは往復動方向105へ相対移動するのみである。これにより、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とが相対回転可能且つ高さ方向102へ相対移動可能に連結し、且つフィルムキャリッジ41をキャリッジ38の往復動方向105への移動に従動させることができるので、前述された第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
また、仮に、ガイドフィルム71がプラテン42上の記録用紙90に接触するなどして、フィルムキャリッジ41の速度が急激に変化したとしても、フィルムキャリッジ41の速度変動がゴム149,150の弾性変形によって吸収されて、キャリッジ38が大きく速度変動することが抑制される。
また、フィルムキャリッジ41がキャリッジ38に対して正搬送向き104周りに回転したり高さ方向102へ移動したりした場合にゴム149,150において発生する高さ方向102の力を、往復動方向105の力に比べて非常に小さく設計することが可能である。この高さ方向102の力が、キャリッジ38に働く重力やキャリッジ38がガイドレール43,44に対して高さ方向102へ移動する際に生じる摩擦力などの抵抗力より十分に小さければ、フィルムキャリッジ41が高さ方向102へ移動しても、キャリッジ38が高さ方向102へ移動することがない。
また、キャリッジ38が往復動方向105へ高速で往復動すると、その移動向きが切り替わる往復動範囲の両端において、キャリッジ38とフィルムキャリッジ41とが往復動方向105へ相対移動して衝突音が生じ得るが、その衝突音がゴム149,150によって軽減される。
なお、前述されたゴム149,150に代えて、コイルバネなどの他の弾性変形部材が用いられてもよい。
[第2実施形態]
以下に本発明の第2実施形態が説明される。第2実施形態は、前述された第1実施形態に対して、主としてガイドフィルム91,92の構成が異なる。したがって、以下には第2実施形態におけるガイドフィルム91,92の構成について説明がされ、第1実施形態と同様の構成については説明が省略される。後述されるガイドフィルム91,92が、本発明における長尺部材に相当する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一の符号で示された部材は、第1実施形態と同一のものである。
[ガイドフィルム91,92]
図21に示されるように、フィルムキャリッジ41には2個の巻取ローラ93,94が設けられている。各巻取ローラ93,94は、正搬送向き104に沿った方向(図21における紙面と垂直な方向)を軸方向としてキャリッジ38に回転自在に固定されている。図21には現れていないが、各巻取ローラ93,94の軸方向の長さは、後述されるガイドフィルム91,92の幅と同程度乃至若干長い。各巻取ローラ93,94は、キャリッジ38における往復動方向105の両側において、そのローラ面の最下点が記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42に近い高さとなるように夫々配置されている。
図21には現れていないが、各巻取ローラ93,94には、ガイドフィルム91,92を夫々巻き取る回転向きへ付勢するコイルバネが夫々設けられている。各コイルバネによって、巻取ローラ93は図21において矢印で示される反時計回りへ付勢され、巻取ローラ94は図18において矢印で示される時計回りへ付勢されている。この2個の巻取ローラ93,94に、ガイドフィルム91,92が夫々巻き取り又は引き出しされる。
ガイドフィルム91,92は、第1実施形態におけるガイドフィルム71と同様の平帯形状である。ガイドフィルム91,92は、キャリッジ38が往復動する領域における往復動方向105の両側に夫々接続されている。ガイドフィルム91,92におけるフィルムキャリッジ41側の各端部は、巻取ローラ93,94に巻かれている。したがって、ガイドフィルム91,92は、記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42に若干近い高さにおいて、フィルムキャリッジ41の両側から往復動方向105へ夫々延出されている。
ガイドフィルム91は、フィルムキャリッジ41が往復動する領域の端において固定具65によりプラテン42に対して相対移動しないように固定されて巻取ローラ93へ向かって往復動方向105に沿って延出されて巻取ローラ93に巻き取られている。ガイドフィルム92はフィルムキャリッジ41が往復動する領域の端において固定具65によりプラテン42に対して相対移動しないように固定されて巻取ローラ94へ向かって往復動方向105に沿って延出されて巻取ローラ94に巻き取られている。各ガイドフィルム91,92が延出されている方向が長手方向であり、各ガイドフィルム91,92の短手方向は正搬送向き104に沿っている。
フィルムキャリッジ41が往復動する領域の両端から延出されたガイドフィルム91,92が2個の巻取ローラ93,94に夫々巻回されることにより、ガイドフィルム91,92がフィルムキャリッジ41が往復動する全領域に渡って設けられている。ガイドフィルム91,92は、フィルムキャリッジ41の往復動に追従して各巻取ローラ93,94から引き出され、又は巻き取られる。ガイドフィルム91,92が各巻取ローラ93,94に夫々巻き取られることにより、ガイドフィルム91,92がフィルムキャリッジ41の両側においてプラテン42から変形方向106へ離間され、また、ガイドフィルム91,92が各巻取ローラ93,94から夫々引き出されることにより、ガイドフィルム91,92がフィルムキャリッジ41の両側においてプラテン42に接近する。
各ガイドフィルム91,92の表裏面はほぼ水平方向へ延びており、本明細書においては、ガイドフィルム91の表裏面のうち、プラテン42と対向している面が対向面95と称され、また、ガイドフィルム92の表裏面のうち、プラテン42と対向している面が対向面96と称される。これら対向面95,96が、本発明における長尺部材の平面に相当する。
また、ガイドフィルム91のうち巻取ローラ93に巻き取られている部分が変形部分97と称され、変形部分97以外のプラテン42の対向している部分が対向部分98と称される。また、ガイドフィルム92のうち巻取ローラ94に巻き取られている部分が変形部分99と称され、変形部分99以外のプラテン42の対向している部分が対向部分100と称される。
図21には現れていないが、ガイドフィルム91,92の幅83(正搬送向き104に沿った長さ)は、記録ヘッド39におけるノズル面40の正搬送向き104に沿った長さ84より広い。そして、ガイドフィルム91,92は、その幅内にノズル面40が収まるようにキャリッジ38に対して配置されている。また、キャリッジ38に設けられた用紙検出センサ32も、ガイドフィルム91,92の幅に収まる位置に配置されている。
前述された第1実施形態と同様の画像記録動作において、フィルムキャリッジ41が往復動する領域にはガイドフィルム91,92が設けられており、巻取ローラ93,94は、キャリッジ38に従動するフィルムキャリッジ41の往復動に追従してガイドフィルム91,92を巻き取ったり引き出したりする。これにより、キャリッジ38の移動に変形部分97,99が従動するので、記録ヘッド39のノズル面40が常にプラテン42に直接対向される。一方、ガイドフィルム91,92の各対向部分98,100は、フィルムキャリッジ41とが往復動してもプラテン42に対して往復動方向105へ相対移動しない。したがって、プラテン42上の記録用紙90は、ガイドフィルム91,92の各対向部分98,100によって記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42側へ位置せしめられる。
また、前述された第1実施形態と同様に、フィルムキャリッジ41は、キャリッジ38に対してフィルムキャリッジ41のガイドレール43,44に対する最大回転可能量よりも大きく相対回転可能なので、フィルムキャリッジ41が矢印107へ傾いたとしても、その傾きがキャリッジ38へは伝達されず、キャリッジ38はガイドレール43,44に対して安定した姿勢を維持する。つまり、記録ヘッド39のノズル面40が、プラテン40上の記録用紙90に対して水平に維持される。
また、ヘッドギャップが変動されても、ガイドフィルム91,92が高さ方向102へ引っ張られて斜めになることがないので、キャリッジ38の高さ方向102への移動がガイドフィルム91,92の張力に影響しない。したがって、ヘッドギャップの変更によって、キャリッジ38が傾いたり、キャリッジ38が移動されるときの摺動抵抗が変動したりすることがない。これにより、前述された第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
[第3実施形態]
以下に本発明の第3実施形態が説明される。第3実施形態は、前述された第1実施形態に対して、主としてガイドフィルム141の構成が異なる。したがって、以下には第3実施形態におけるガイドフィルム141の構成について説明がされ、第1実施形態と同様の構成については説明が省略される。後述されるガイドフィルム141が、本発明における長尺部材に相当する。なお、第3実施形態において第1実施形態と同一の符号で示された部材は、第1実施形態と同一のものである。
[ガイドフィルム141]
図22に示されるように、フィルムキャリッジ41の移動範囲の両側には2個のローラ142,143が設けられている。図22には現れていないが、各ローラ142,143は、正搬送向き104に沿った方向(図22における紙面と垂直な方向)を軸方向としてプリンタ部11のフレームに回転自在に固定されている。また、各ローラ142,143の軸方向の長さは、後述されるガイドフィルム141の幅と同程度乃至若干長い。各ローラ142,143は、フィルムキャリッジ41における往復動方向105の両側において、そのローラ面の最下点が記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42に近い高さとなるように夫々配置されている。
ガイドフィルム141は、第1実施形態におけるガイドフィルム71と同様の平帯形状である。ガイドフィルム141の両端は、フィルムキャリッジ41の往復動方向105の両側に夫々接続されている。フィルムキャリッジ41におけるガイドフィルム141の接続位置は、記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42に近い高さであり、前述された各ローラ142,143のローラ面の最下点と同じ高さである。
ガイドフィルム141は、フィルムキャリッジ41の両側から往復動方向105へ夫々延出されて、フィルムキャリッジ41の移動範囲の両端において各ローラ142,143に巻回されてフィルムキャリッジ41の上方へ戻されることによって、全体として無端環状を形成している。ガイドフィルム141が延出されている方向が長手方向であり、ガイドフィルム141の短手方向は正搬送向き104に沿っている。
フィルムキャリッジ41の両端から延出されたガイドフィルム141が2個のローラ142,143に夫々巻回されて無端環状を形成することにより、ガイドフィルム141がフィルムキャリッジ41が往復動する全領域に渡って設けられている。ガイドフィルム141は、フィルムキャリッジ41の往復動に追従してローラ93,94間を周運動する
ガイドフィルム141の表裏面はほぼ水平方向へ延びており、本明細書においては、ガイドフィルム141の表裏面のうち、プラテン42と対向している面が対向面144と称される。対向面144が、本発明における長尺部材の平面に相当する。
図22には現れていないが、ガイドフィルム141の幅83(正搬送向き104に沿った長さ)は、記録ヘッド39におけるノズル面40の正搬送向き104に沿った長さ84より広い。そして、ガイドフィルム141は、その幅内にノズル面40が収まるようにキャリッジ38に対して配置されている。また、キャリッジ38に設けられた用紙検出センサ32も、ガイドフィルム141の幅に収まる位置に配置されている。
前述された第1実施形態と同様の画像記録動作において、キャリッジ38が往復動する領域にはガイドフィルム141が設けられており、ガイドフィルム141は、キャリッジ38の往復動に従動するフィルムキャリッジ41に追従して周運動し、プラテン42に対向する対向面144はフィルムキャリッジ41と共に往復動方向105へ移動する。これにより、キャリッジ38の移動にガイドフィルム141が従動するので、記録ヘッド39のノズル面40が常にプラテン42に直接対向される。また、ガイドフィルム141の対向面144がプラテン42から一定の距離に維持された状態で、キャリッジ38が往復動方向105へ移動する。したがって、プラテン42上の記録用紙90は、ガイドフィルム141の対向面144によって記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42側へ位置せしめられる。
また、前述された第1実施形態と同様に、フィルムキャリッジ41は、キャリッジ38に対してフィルムキャリッジ41のガイドレール43,44に対する最大回転可能量よりも大きく相対回転可能なので、フィルムキャリッジ41が矢印107へ傾いたとしても、その傾きがキャリッジ38へは伝達されず、キャリッジ38はガイドレール43,44に対して安定した姿勢を維持する。つまり、記録ヘッド39のノズル面40が、プラテン40上の記録用紙90に対して水平に維持される。
また、ヘッドギャップが変動されても、フィルムキャリッジ41の往復動方向105の両端側においてガイドフィルム141が高さ方向102へ引っ張られて斜めになることがないので、キャリッジ38の高さ方向102への移動がガイドフィルム141の張力に影響しない。したがって、ヘッドギャップの変更によって、キャリッジ38が傾いたり、キャリッジ38が移動されるときの摺動抵抗が変動したりすることがない。これにより、前述された第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
なお、本実施形態では、平帯形状をなす1本のガイドフィルム141の両端がキャリッジ38に接続され、ローラ142,143に巻回されることによって、フィルムキャリッジ41も含めてガイドフィルム141が無端環状をなす態様が示されているが、ガイドフィルム141自体が無端環状をなしてローラ142,143に巻回されており、そのガイドフィルム141の一部にノズル面40に対応する貫通孔が形成されて、その貫通孔とノズル面40とを合致させてフィルムキャリッジ41が無端環状のガイドフィルム141に接続される態様が、本発明において採用されてもよい。
[第4実施形態]
以下に本発明の第4実施形態が説明される。第4実施形態は、前述された第1実施形態に対して、主としてガイドフィルム151,152の構成が異なる。したがって、以下には第4実施形態におけるガイドフィルム151,152の構成について説明がされ、第1実施形態と同様の構成については説明が省略される。後述されるガイドフィルム151,152が、本発明における長尺部材に相当する。なお、第4実施形態において第1実施形態と同一の符号で示された部材は、第1実施形態と同一のものである。
[ガイドフィルム151,152]
図23に示されるように、フィルムキャリッジ41の移動範囲の両端には2個の巻取ローラ153,154が設けられている。図23には現れていないが、各巻取ローラ153,154は、正搬送向き104に沿った方向(図23における紙面と垂直な方向)を軸方向として、プリンタ部11のフレームに回転自在に固定されている。また、各巻取ローラ153,154の軸方向の長さは、後述されるガイドフィルム151,152の幅と同程度乃至若干長い。各巻取ローラ153,154は、キャリッジ38の移動範囲の両端において、そのローラ面の最下点が記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42に近い高さとなるように夫々配置されている。
図23には現れていないが、各巻取ローラ153,154には、ガイドフィルム151,152を夫々巻き取る回転向きへ付勢するコイルバネが夫々設けられている。各コイルバネによって、巻取ローラ153は図23において矢印で示される時計回りへ付勢され、巻取ローラ154は図23において矢印で示される反時計回りへ付勢されている。この2個の巻取ローラ153,154に、ガイドフィルム151,152が夫々巻き取り又は引き出しされる。
ガイドフィルム151,152は、第1実施形態におけるガイドフィルム71と同様の平帯形状である。各巻取ローラ153,154から引き出されたガイドフィルム151,152の端は、キャリッジ38における往復動方向105の両側に夫々接続されている。フィルムキャリッジ41におけるガイドフィルム151,152の各接続位置は、記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42に近い高さであり、前述された各巻取ローラ153,154のローラ面の最下点と同じ高さである。したがって、ガイドフィルム151,152は、記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42に若干近い高さにおいて、フィルムキャリッジ41の両側から往復動方向105へ夫々延出されている。各ガイドフィルム151,152が延出されている方向が長手方向であり、各ガイドフィルム151,152の短手方向は正搬送向き104に沿っている。
フィルムキャリッジ41における往復動方向105の両端から夫々延出されたガイドフィルム151,152が、フィルムキャリッジ41の移動範囲の両端に夫々配置された2個の巻取ローラ153,154に夫々巻回されることにより、ガイドフィルム151,152がフィルムキャリッジ41が往復動する全領域に渡って設けられている。ガイドフィルム151,152は、フィルムキャリッジ41の往復動に追従して各巻取ローラ153,154から引き出され、又は巻き取られる。
各ガイドフィルム151,152の表裏面はほぼ水平方向へ延びており、本明細書においては、ガイドフィルム151の表裏面のうち、プラテン42と対向している面が対向面155と称され、また、ガイドフィルム152の表裏面のうち、プラテン42と対向している面が対向面156と称される。これら対向面155,156が、本発明における長尺部材の平面に相当する。
図23には現れていないが、ガイドフィルム151,152の幅83(正搬送向き104に沿った長さ)は、記録ヘッド39におけるノズル面40の正搬送向き104に沿った長さ84より広い。そして、ガイドフィルム151,152は、その幅内にノズル面40が収まるようにフィルムキャリッジ41に対して配置されている。また、キャリッジ38に設けられた用紙検出センサ32も、ガイドフィルム151,152の幅に収まる位置に配置されている。
前述された第1実施形態と同様の画像記録動作において、キャリッジ38が往復動する領域にはガイドフィルム151,152が設けられており、各巻取ローラ153,154は、キャリッジ38の往復動に従動するフィルムキャリッジ41に追従してガイドフィルム151,152を巻き取ったり引き出したりする。そして、ガイドフィルム151,152の各対向面155,156は、キャリッジ38と共に往復動方向105へ移動する。これにより、キャリッジ38の移動にガイドフィルム151,152が従動するので、記録ヘッド39のノズル面40が常にプラテン42に直接対向される。また、ガイドフィルム151,152の各対向面155,156がプラテン42から一定の距離に維持された状態で、キャリッジ38が往復動方向105へ移動する。したがって、プラテン42上の記録用紙90は、ガイドフィルム151,152の各対向面155,156によって記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42側へ位置せしめられる。
また、前述された第1実施形態と同様に、フィルムキャリッジ41は、キャリッジ38に対してフィルムキャリッジ41のガイドレール43,44に対する最大回転可能量よりも大きく相対回転可能なので、フィルムキャリッジ41が矢印107へ傾いたとしても、その傾きがキャリッジ38へは伝達されず、キャリッジ38はガイドレール43,44に対して安定した姿勢を維持する。つまり、記録ヘッド39のノズル面40が、プラテン40上の記録用紙90に対して水平に維持される。
また、ヘッドギャップが変動されても、フィルムキャリッジ41の往復動方向105の両端側においてガイドフィルム151,152が高さ方向102へ引っ張られて斜めになることがないので、キャリッジ38の高さ方向102への移動がガイドフィルム151,152の張力に影響しない。したがって、ヘッドギャップの変更によって、キャリッジ38が傾いたり、キャリッジ38が移動されるときの摺動抵抗が変動したりすることがない。これにより、前述された第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
[第5実施形態]
以下に本発明の第5実施形態が説明される。第5実施形態は、前述された第1実施形態に対して、主としてガイドワイヤ54の構成が異なる。したがって、以下には第5実施形態におけるガイドワイヤ54の構成について説明がされ、第1実施形態と同様の構成については説明が省略される。後述されるガイドワイヤ54が、本発明における長尺部材(索条)に相当する。なお、第5実施形態において第1実施形態と同一の符号で示された部材は、第1実施形態と同一のものである。
[ガイドワイヤ54]
第1実施形態と同様に、フィルムキャリッジ41には4個のローラ72〜75が設けられている。図24に示されるように、ガイドワイヤ54は、索条である。ガイドワイヤ54は、フィルムキャリッジ41が往復動する領域における往復動方向105の両側に夫々接続されて、所定の張力で往復動方向105に沿って張られている。本実施形態では複数のガイドワイヤ54が、正搬送向き104に対して所定の間隔で並んで張られている。なお、図24においては、パージ機構130、ワイパ131及び廃インクトレイ132が省略されているが、ガイドワイヤ54は、パージ機構130、ワイパ131及び廃インクトレイ132を覆う位置まで延出されている。
ガイドワイヤ54はフィルムキャリッジ41に設けられた各ローラ72〜75へ巻かれて、フィルムキャリッジ41の下側以外を囲むように変形されている。フィルムキャリッジ41の周囲においてガイドワイヤ54が変形した一部が、本明細書において変形部分55と称される。ガイドワイヤ54においてプラテン42の上面と対向する変形部分55以外の一部が対向部分56と称される。ガイドワイヤ54の変形部分55において、各ローラ72,75に夫々巻かれてプラテン42に対して離間及び接近する方向は、前述された変形方向106である。
ガイドワイヤ54の対向部分56は、記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42に近い高さにおいて、フィルムキャリッジ41の両側から往復動方向105へ夫々延出されている。そして、往復動領域の両側において、固定具65及びローラ66によりプラテン42に対して相対移動しないように固定されている。このように変形部分55以外においてガイドワイヤ54が延出されている方向が長手方向である。複数のガイドワイヤ54が張られた領域における正搬送向き104に沿った長さは、記録ヘッド39におけるノズル面40の正搬送向き104の長さ84より広い。
図24には現れていないが、ガイドワイヤ54の対向部分56からプラテン42の上面までの間隔は、記録ヘッド39のノズル面40からプラテン42の上面までの間隔より若干小さい。
第1実施形態のガイドフィルム71と同様にして、キャリッジ38の往復動にフィルムキャリッジ41が従動することにより、ガイドワイヤ54は、その変形部分55をキャリッジ38の往復動に従動させる追従させるように変形する。つまり、キャリッジ38の移動に変形部分55が従動するので、記録ヘッド39のノズル面40が常にプラテン42に直接対向される。一方、変形部分55がキャリッジ38の往復動に追従しても、対向部分56は、プラテン42に対して往復動方向105へ相対移動しない。したがって、プラテン42上の記録用紙90は、ガイドワイヤ54の対向部分56によって記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42側へ位置せしめられる。
また、前述された第1実施形態と同様に、フィルムキャリッジ41は、キャリッジ38に対してフィルムキャリッジ41のガイドレール43,44に対する最大回転可能量よりも大きく相対回転可能なので、フィルムキャリッジ41が矢印107へ傾いたとしても、その傾きがキャリッジ38へは伝達されず、キャリッジ38はガイドレール43,44に対して安定した姿勢を維持する。つまり、記録ヘッド39のノズル面40が、プラテン40上の記録用紙90に対して水平に維持される。
また、ヘッドギャップが変動されても、フィルムキャリッジ41の往復動方向105の両端側において各ガイドワイヤ54が高さ方向102へ引っ張られて斜めになることがないので、キャリッジ38の高さ方向102への移動が各ガイドワイヤ54の張力に影響しない。したがって、ヘッドギャップの変更によって、キャリッジ38が傾いたり、キャリッジ38が移動されるときの摺動抵抗が変動したりすることがない。これにより、前述された第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
また、複数のガイドワイヤ54が正搬送向き104に沿って並べられているので、プラテン42上において正搬送向き104に沿った複数箇所で記録用紙90をプラテン42から所定の距離に位置せしめることができる。
なお、本実施形態では、ガイドワイヤ54が複数設けられることとしたが、ガイドワイヤ54は1本であっても、プラテン42上の記録用紙90を、記録ヘッド39のノズル面40よりプラテン42側へ位置せしめることができる。